特許第5672391号(P5672391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5672391強誘電性液晶組成物及び強誘電性液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672391
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】強誘電性液晶組成物及び強誘電性液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/54 20060101AFI20150129BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20150129BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20150129BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20150129BHJP
   G02F 1/141 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C09K19/54 B
   C09K19/54 Z
   C09K19/34
   C09K19/38
   G02F1/13 500
   G02F1/141
【請求項の数】21
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2013-537994(P2013-537994)
(86)(22)【出願日】2012年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2012079506
(87)【国際公開番号】WO2013073572
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2013年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-249742(P2011-249742)
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-22977(P2012-22977)
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】初阪 一輝
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 宣
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和則
(72)【発明者】
【氏名】西山 伊佐
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−239402(JP,A)
【文献】 特開2005−338804(JP,A)
【文献】 特開2004−184522(JP,A)
【文献】 特開2001−226674(JP,A)
【文献】 特開2010−090277(JP,A)
【文献】 特開2003−098504(JP,A)
【文献】 特開2004−021098(JP,A)
【文献】 特開2003−280041(JP,A)
【文献】 特開2001−091719(JP,A)
【文献】 特開2003−277754(JP,A)
【文献】 特開平05−341266(JP,A)
【文献】 特開平07−028042(JP,A)
【文献】 特開2007−231167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/34
C09K 19/30
C09K 19/38
C09K 19/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種又は二種以上の液晶性化合物を含有しキラルスメクチックC相を有する強誘電性液晶組成物において、該強誘電性液晶組成物を基板に挟持した際のキラルスメクチックC相のレイヤーノーマル方向が該基板面に対して80°以上90°以下であり、該液晶性化合物が、下記の一般式(LC−IV)
【化1】
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
環Aは各々1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、
環Bは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基を表し、
環Cは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基を表し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a、b及びcの合計は1、2または3を表す。)で表される少なくとも一種以上の化合物であり、不斉原子をもつ化合物として、一般式(Ch−I)
【化2】
(式中、R100およびR101は互いに独立して、水素原子、シアノ基、NO、ハロゲン、OCN、SCN、SF、炭素原子数1〜30個のキラル又はアキラルなアルキル基又は重合性を表すが、該アルキル基中の1個又は2個以上の隣接していないCH基は互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−または−C≡C−により置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子は互いに独立して、ハロゲン又はシアノ基によって置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖状であっても、分岐していてもよく、
100は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、
100は、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)、
(b) 1,4−フェニレン基又は
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、インダン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(これら(c)群の基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−又は−S−に置き換えられてもよく、これら(c)群の基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)からなる群より選ばれる基を表すが、これらの全ての基は、非置換であるか、ハロゲン、シアノ基、NO又は、1個若しくは2個以上の水素原子がF若しくはClにより置換されていてもよい炭素原子数1〜7個のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル若しくはアルコキシカルボニル基で一置換若しくは多置換されていてよく、
11及び12は0であり、m11は0、1、2、3、4又は5であり、100およびR101の少なくとも1つは、キラルなアルキル基(該アルキル基中の1個又は2個以上の隣接していないCH基は互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−または−C≡C−により置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子は互いに独立して、ハロゲン又はシアノ基によって置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖状であっても、分岐していてもよい)又は重合性基を含むキラルな基である。)で表される光学活性化合物を含有し、該強誘電性液晶組成物を基板に挟持した際のキラルスメクチックC相の選択波長が500nm以下であるか、又は760nm以上5μm以下である、強誘電性液晶表示素子の基板間に挟持されて使用される強誘電性液晶組成物。
【請求項2】
該強誘電性液晶組成物を基板に挟持した際のキラルスメクチックC相の螺旋ピッチがセルギャップ以下である用途に用いられる請求項1記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項3】
該強誘電性液晶組成物が、等方性液体−キラルネマチック相−スメクチックA相−キラルスメクチックC相、等方性液体−キラルネマチック相−キラルスメクチックC相、等方性液体−ブルー相−キラルネマチック相−スメクチックA相−キラルスメクチックC相、等方性液体−ブルー相−キラルネマチック相−キラルスメクチックC相、又は等方性液体−キラルスメクチックC相のうち、少なくとも1つの相系列を発現する請求項1又は2記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項4】
キラルネマチック相又はキラルスメクチックC相におけるピッチをキャンセルする添加剤であるピッチキャンセラーを含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項5】
重合性化合物を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項6】
二軸性化合物を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項7】
無機粒子を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項8】
有機無機ハイブリッド粒子を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項9】
イオン及び極性化合物のトラップ材料を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項10】
偏光面が互いに直交する二枚の偏光板を配置した一対の基板の少なくとも一方に、一対の画素電極と共通電極を有し、該一対の基板間に請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物を挟持し、該強誘電性液晶組成物のキラルスメクチックC相のレイヤーノーマル方向が該基板面に対して80°以上90°以下であることを特徴とする強誘電性液晶表示素子。
【請求項11】
一対の基板の両方に、一対の画素電極と共通電極を有する請求項10記載の強誘電性液晶表示素子。
【請求項12】
0.2mmあたり1kg以下の圧力に対して表示復元能力を有する請求項10又は11記載の強誘電性液晶表示素子。
【請求項13】
配向膜がポリイミド、ポリアミド、ポリアミック酸、光配向膜のいずれかである請求項10〜12のいずれか1項に記載の強誘電性液晶表示素子。
【請求項14】
LEDを光源に用いた請求項10〜13のいずれか1項に記載の強誘電性液晶表示素子。
【請求項15】
位相差膜を使用した請求項10〜14のいずれか1項に記載の強誘電性液晶表示素子。
【請求項16】
タッチパネルを有する請求項10〜15のいずれか1項に記載の強誘電性液晶表示素子。
【請求項17】
請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物を使用した光学素子。
【請求項18】
請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物を使用した光路スイッチング素子。
【請求項19】
請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物を使用した波長変換素子。
【請求項20】
請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物を使用したエネルギー変換素子。
【請求項21】
請求項1〜のいずれか1項に記載の強誘電性液晶組成物を使用した電子材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電性液晶表示素子に有用な強誘電性液晶組成物及び強誘電性液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性液晶(FLC:Ferroelectric Liquid Crystal)は、一般的なネマチック液晶より高速応答性に優れることから、クラーク(Clark)及びラガウォール(Lagerwall)により表面安定化強誘電性液晶(SSFLC:Surface-stabilized FLC)が提案されて以来、活発に検討がなされるようになっている。
【0003】
強誘電性液晶とは、自発分極を有して強誘電性を示す液晶のことであるが、分子長軸方向に垂直な方向に永久双極子モーメントを有する液晶がキラルスメクチックC(以下、SmCと省略する)相となるときに、永久双極子モーメントが全体で平均化しても打ち消されず、自発分極が発生して強誘電性を示すことが知られている。このため、強誘電性液晶としては、SmC相のものが広く用いられている。また、スメクチック液晶自体に光学活性(キラリティー)を付与する代わりに、光学活性化合物を添加することでもSmC相を発現することができ、光学活性化合物はそれ自体が液晶性を示さない(液晶化合物でない)ものでもよい。この場合、キラルでないスメクチックC(以下、SmCと省略する)相を示す母体液晶が一般に使用される。
SmC相は、層構造を有するスメクチック相の中でも、液晶分子の配向方向がレイヤーノーマル(層法線)に対して一定の傾き(チルト)を有する。また、層平面に対して傾く角度(方位角)は層ごとに少しずつずれることにより、分子配向に螺旋構造を生じる。
【0004】
SSFLCでは、平行配向処理が施された基板を用いてレイヤーノーマルがセルの基板面と平行になるように液晶を配向し(ホモジニアス配向)、かつ液晶層の厚さを薄くすることにより、螺旋構造が解け、方位角の取り得る範囲が2通りに抑制され、表面安定化の作用により配向のメモリー性(双安定性)が発現してメモリー性を有する黒と白の二値表示のディスプレイが得られる。しかしながら、双安定性を有することは、液晶TVに用いる場合においては、高品位の階調表示を実現することが難しく、製造過程においても、昇温した液晶を基板間に挟持した後、降温して液晶がSmC相となると、チルトが生じて層間隔が減少することにより層平面が「く」の字状に折れ曲がるシェブロン構造が現われ、ジグザグ欠陥が生じやすい(非特許文献1参照)。また、SSFLCは耐圧力性が弱く、表示素子を指で押さえるとレイヤー構造が壊れ、自己修復しないという大きな問題があった。
【0005】
双安定性に起因する階調表示の困難性を解決するために、方位角の取り得る範囲を抑制しないねじれ螺旋(あるいは変形螺旋)強誘電性液晶(DHFLC:Distorted (or Deformed) Helix FLC)も知られている(非特許文献2参照)。この方式においては、FLCの螺旋ピッチを基板間の液晶層の厚みよりも十分に短くし、電圧無印加時には螺旋軸方向に軸を有する1軸性の複屈折を有するが、電圧印加時には液晶配向の螺旋配列から徐々に外れて複屈折を変化させるため、連続的な階調表示が得られる。しかし、非特許文献2記載のDHFLCはレイヤー層が基板面に対して垂直、すなわち、レイヤーノーマル方向が基板面に対して略水平であるため、表示素子の視野角の点で問題を有していた。
【0006】
ネマチック液晶表示素子の視野角を改善する方法として、基板に垂直配向処理を施し、液晶分子が基板面に対して略垂直になるように配向(ホメオトロピック配向)させることによる垂直配向(VA:Vertically Alignment)方式やインプレインスイッチング(IPS)方式等の表示方式が新たに実用化されてきた。垂直配向方式は、基板に対して垂直な方向の電界を用いるが液晶分子の垂直配向を利用して視野角の改善を図った方式である。また、IPSは、水平配向した液晶分子を基板に対して水平方向の横電界を用いて液晶分子をスイッチングさせることで視野角の改善を図った方法である。
これらの方法をDHFLCに応用した例として、非特許文献3及び4には、垂直配向膜を用いて、液晶分子を略垂直配向させたDHFLCに対し、下側の基板に一対の櫛歯電極からなるインプレイン電極を配置して横電界を印加する液晶表示素子が報告されている。
又、非特許文献5には、液晶分子を略垂直配向させたDHFLCに横電界を印加した状態で、種々の方向から読出し(readout)のためのレーザ光を入射(light incidence)することによる光変調器が報告されている。しかしながら、スメクチックC液晶およびキラルスメクチックC液晶は液晶分子が傾斜配向しながら層構造を形成することが特徴となっており、垂直配向膜を用いていても液晶分子が基板面に垂直になるわけではなく、基板面に対して垂直に配向させるべきはレイヤーノーマルであるにも関わらず、スメクチック液晶のレイヤーノーマルを制御することについては全く検討がなされてこなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chenhui Wang and Philip J. Bos、“5.4: A Defect Free Bistable C1 SSFLC Display”、SID 02 Digest、2002年、p.34−36
【非特許文献2】J Funfschilling and M. Schadt、“Fast responding and highly multiplexible distorted helix ferroelectric liquid-crystal displays”、J. Appl. Phys.、1989年10月、第66巻、第8号、p.3877−3882
【非特許文献3】Ju Hyun Lee, Doo Hwan You, Jae Hong Park, Sin Doo Lee, and Chang Jae Yu、“Wide-Viewing Display Configuration of Helix-Deformed Ferroelectric Liquid Crystals”、Journal of Information display、2000年12月、第1巻、第1号、p.20−24
【非特許文献4】John W. McMurdy, James N. Eakin, and Gregory P. Crawford、“P-127: Vertically Aligned Deformed Helix Ferroelectric Liquid Crystal Configuration for Reflective Display Device”、SID 06 Digest、2006年、p.677−680
【非特許文献5】A. Parfenov、“Deformation of ferroelectric short-pitch helical liquid crystal by transverse electric field: Application for diffraction-based light modulator”、Applied Physics Letters、1998年12月、第73巻、第24号、p.3489−3491
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、タッチパネル式の表示素子の用途が拡大しており、液晶表示素子にタッチパネル用の電極(スイッチ)を組み込む場合、液晶層に繰り返し押圧力が加わっても、配向の復元力に優れることが求められている。また、光路スイッチング素子、波長変換素子、エネルギー変換素子などの光学素子においても、信頼性を高めるために耐圧力性が高いことが求められている。
本発明は、配向の復元力に優れる強誘電性液晶組成物及び強誘電性液晶表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、前述の課題を解決するために種々の強誘電性液晶組成物の物性値について検討を行った結果、SmC相のレイヤーノーマル方向を制御することにより、基板に対して押圧力が加わっても、スメクチック相の層間隔が局所的に又は全体的に縮小することがあっても層構造が維持されている限りその復元力によりSmC相の有する螺旋構造を保つことができることを見出し、本発明の完成に至った。本発明は、少なくとも一種又は二種以上の液晶性化合物を含有しキラルスメクチックC相を有する強誘電性液晶組成物において、該強誘電性液晶組成物を基板に挟持した際のキラルスメクチックC相のレイヤーノーマル方向が該基板面に対して80°以上90°以下であることを特徴とする強誘電性液晶組成物を提供する。また、本発明は、この強誘電性液晶組成物を用いた強誘電性液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の強誘電性液晶組成物及び強誘電性液晶表示素子によれば、配向の復元力に優れるため、繰り返し押圧力が加わる用途にも有用となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<強誘電性液晶組成物>
本発明の強誘電性液晶組成物は、後述する液晶化合物やキラル化合物等を配合して、基板に挟持した際のキラルスメクチックC相のレイヤーノーマル方向が該基板面に対して80°以上90°以下となるように調製することで得ることができる。本発明においてレイヤーノーマルとは強誘電性液晶組成物が形成するスメクチックレイヤー(層)に対しての法線と定義される。液晶のレイヤーは熱運動によって揺らぐことが知られているが、この場合にはエックス線やリタデーション測定によって表示素子中の強誘電性液晶バルクを平均的に見たときに、レイヤーノーマルが基板に対して垂直であればよい。
本発明の強誘電性液晶は、基板に挟持した際のSmC相のレイヤーノーマル方向が該基板面に対して80°以上90°以下であれば、SmC相の層間隔が、基板への押圧力によって基板間隔が局所的に、又は全体的に縮小することがあっても、レイヤー構造が破壊することなくその復元力を維持することができる。すなわち、本発明の強誘電性液晶組成物を用いた液晶光学素子においては、基板に対して押圧力が加わったとき、力の方向はレイヤーノーマルに対して略垂直となるため、レイヤー構造を保ったまま螺旋ピッチは短くなると考えられる。圧力から開放されたとき、本発明の強誘電性液晶組成物は使用したキラル化合物の種類と添加量、温度によって定まる固有の螺旋構造を有することから、螺旋ピッチ間隔を反映したレイヤー間隔となる圧力印加前と同じ状態に復元する。また、加圧時、および圧力開放時のどちらの場合においても、力の方向はレイヤーノーマルに対して垂直であることから液晶の転移や転傾などの欠陥が発生しない方向に対して力が加わるため、レイヤー構造を乱す原因とはならない。
一方、レイヤーノーマル方向が該基板面に対して傾いていた場合、レイヤー間にある分子が交差して体積が減少するため、層構造が破壊されレイヤー構造を維持したまま螺旋構造を保つことができなくなる。そのため、螺旋ピッチ間隔の復元力に起因した配向復元力を有さないものある。
本発明においては、レイヤーノーマル方向は、該基板面に対して80°以上90°以下であるが、85°以上90°以下が好ましく、88°以上90°以下がより好ましい。
セル内で強誘電性液晶組成物の螺旋構造が解けないようにするため、基板に挟持した際のキラルスメクチックC相の螺旋ピッチは、セルギャップ以下であることが好ましい。表示素子に用いる該螺旋ピッチを反映した選択反射としては、500nm以下の波長が好ましい。また、用途によっては、該選択反射が、760nm以上5μm以下であってもよい。さらに好ましくは、該選択反射は人間の目で識別できない波長であることが好ましい。この面では、ショートピッチでは360〜400nm以下の選択波長が好ましく、ロングピッチでは760〜830nm以上の選択反射が好ましい。光学素子に用いる場合は、信号波長に応じた選択反射となることが好ましく、上記の波長に限定しない。
【0012】
液晶表示素子を製造する工程において、液晶を配向欠陥無く基板間に充填するためには、ネマチック相から除冷してスメクチック相へ相転移させることが好ましい。そのためには、等方性液体−キラルネマチック相−スメクチックA相−キラルスメクチックC相(ISO−N−SmA−SmC)、又は等方性液体−キラルネマチック相−キラルスメクチックC相(ISO−N−SmC)の相系列を発現することが好ましい。この場合、ネマチック相より高温側にブルー相(BP)等の他の相を発現してもよく、等方性液体−ブルー相−キラルネマチック相−スメクチックA相−キラルスメクチックC相、等方性液体−ブルー相−キラルネマチック相−キラルスメクチックC相などの相系列を例示することができる。また、等方性液体−キラルスメクチックC相(ISO−SmC)の相系列を発現する液晶も採用可能である。
液晶化合物のチルト角を大きくする観点からは、相系列にスメクチックA相が存在しないことが好ましく、その具体例としては、INC(ISO−N−SmC)又はIC(ISO−SmC)が挙げられる。
【0013】
良好な配向を得る目的では、キラルネマチック相あるいはキラルスメクチックC相のピッチをなるべく長くすることも可能である。その目的のためには、ピッチをキャンセルする添加剤であるピッチキャンセラーとして、掌性が異なる2種類以上の複数のキラル化合物を組み合わせ用いて、ピッチをキャンセルすることによりピッチを長くするのがよい。その場合は、自発分極がキャンセルしないように同一の符号をもつものを選ぶか、あるいは、自発分極の符号が逆であっても、自発分極の大きなものと、小さなものの組み合わせで、差し引き十分な自発分極が得られるようにすることが好ましく、目的とする選択波長と自発分極の大きさに応じて、キラルネマチック相あるいはキラルスメクチックC相の螺旋の向き、自発分極の向きを考慮して2つ以上のキラルを適切に組み合わせることが好ましい。また、このようなピッチキャンセルを行わなくても十分良い配向が得られるようなキラル化合物を選ぶことも好ましい。また、温度によるピッチの変化を抑制する添加剤を加えることも好ましい。
【0014】
本発明の強誘電性液晶組成物は、少なくとも一種又は二種以上の液晶性化合物を含有しSmC相を有する強誘電性液晶組成物であって、好ましくは強誘電性液晶表示素子などの光学素子において、基板間に挟持されて使用される。光学素子は表示素子であっても非表示素子であってもよく、表示用の光学素子の場合は液晶テレビ、液晶モニター、タブレットPCモニター、携帯電話モニター、計器モニター、パチンコ等の娯楽用品用のモニター、券売機用のモニター、自動販売機用のモニター、リモコン、給湯器、炊飯器、エアコン等の家電製品用のモニター、デジタルサイネージ、Point of purchase advertising(POP)、電子時刻表、電子掲示板、電子値札、電子黒板、電子ノート、電子教科書、電子書籍、電子カルテなどに利用でき、非表示の光学素子の場合は、光路スイッチング素子、波長変換素子、エネルギー変換素子、紫外線・赤外線・近赤外線・遠赤外線・可視光・電子線波長変換素子、あるいは抵抗、コンデンサ、トランジスタ、電子・ホール輸送層などの電子材料などに利用できる。
本発明においては、基板に対して押圧力が加わっても、SmC相の有する螺旋構造の変化が少ない特徴を有する。このため、本発明の光学素子は外圧がかからない光学素子にも利用できるが、好ましくはタッチパネル等の外圧が加わる用途で用いる表示用の光学素子に用いることが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる強誘電性液晶組成物は、ホスト液晶(母体液晶)にキラル化合物(ドーパント)を含むことができ、さらに、高分子安定化を実現するためのモノマー(重合性化合物)を任意に加えることができる。
液晶が配向膜等で配向させた状態を配向欠陥無く固定化させるためには、少なくとも、ネマチック相から徐冷してスメクチック相へ相転移させることが好ましく、用いる液晶セルの基板面が平坦であることがより好ましい。また、モノマーを添加した場合は、ネマチック相やスメクチック相等の液晶相中で該モノマーを網目状、又は分散した状態に重合させる必要がある。更に、相分離構造形成を避けるためには、モノマーの含有量を少なくして、液晶が配向している状態で液晶分子間に高分子が形成できるよう該高分子前駆体含有量や該前駆体の組成を調整することが好ましく、さらに、光重合の場合は、UV露光時間、UV露光強度、及び温度を調整して網目状の高分子を形成させて液晶配向欠陥が無いようにすることが好ましい。このような強誘電性液晶組成物を用いることで、押圧力に対しても信頼性の高い光学素子を得ることができ、特に表示素子の場合は、駆動電圧が低く、中間調表示が可能で、且つ押圧力に対しても信頼性が高く、高コントラストの液晶表示素子を得ることができる。
【0016】
<液晶性化合物>
ホストとなる液晶性化合物としては、下記の一般式
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
【0019】
Aは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
nは1、2、3、4又は5である。)で表される液晶性化合物が好ましい。
また、下記の一般式
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
【0022】
Xは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFを表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−I)〜(LC−III)が好ましい。
ここで、Cycloはシクロヘキサン(シクロへキシレン基)であることが好ましく、例えば下記一般式
【0023】
【化3】
【0024】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
Xは各々独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4である。)で表される液晶性化合物(LC−I′)〜(LC−III′)が好ましい。
【0025】
液晶性を発現するためには、環に対して1,4−置換であることが好ましい。すなわち該液晶性化合物に含まれる環式2価基が1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2,5−ピリミジンジイル基などであることが好ましい。
例えば下記一般式
【0026】
【化4】
【0027】
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
11〜X22は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
11〜L14は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
、b、c、dは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、cが1の場合はaは0であり、b=c=1の場合はa=d=0であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−Ia)〜(LC−IIIa)が好ましい。
また、下記一般式
【0028】
【化5】
【0029】
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
環Aは各々1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、
環Bは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基を表し、
環Cは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基を表し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a、b及びcの合計は1、2または3を表す。)で表される液晶性化合物(LC−IV)、
【0030】
【化6】
【0031】
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R21とR22が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X27は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
21〜L24は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、Yの定義は式(LC−IV)におけるのと同じであり、
、b、c及びdは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、b=c=1の場合はa=d=0である。)で表される液晶性化合物(LC−V)が好ましい。
【0032】
フェニルピリミジン系化合物のうち、強誘電性の発現に必要な傾いたスメクチック相を得るため、あるいは、分子の傾き角を大きくするため、もしくは融点を低下させるためには分子の環の部分に置換基として、少なくとも1つ以上のフッ素原子、CF基、あるいはOCF基が導入されることが好ましい。置換基としては形状の小さなフッ素を導入することが、液晶相を安定に保ち、また、高速応答性も保持する面で好ましい。置換基の数は1〜3が好ましい。
粘度が低く高速応答するため、環をつなぐ連結基(−Z−Y−Z−、又は−Y−L−Y−)としては、単結合、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、又は、−C≡C−からなるより選択されることが好ましく、特に、単結合であることが好ましい。分子の局部的な分極を抑制しスイッチング挙動への悪影響を少なくする面でも単結合が好ましい。一方、層構造の安定性を保つための材料としては粘度が高い方が好ましく、その場合には、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−からなるより選択されることが好ましく用いられ、特に、−CO−O−、−O−CO−が好ましく用いられる。
【0033】
一方、融点を低下させる効果を大きくするという点では、側鎖(R、R11、R12、R21、R22)の一方または両方に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、イソプロピル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニルオキシ基を用いることが好ましい。
【0034】
Δnを大きくするのに適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
【0035】
【化7】
【0036】
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子、又はフッ素原子を表し、
該アルキル基中の、1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X24は各々独立に水素原子、ハロゲン、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を示し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、Yの定義は式(LC−IV)におけるのと同じであり、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a+b+cの合計は1又は2を表し、a=1のときc=0であり、c=1のときa=0である)で表される液晶性化合物(LC−VI)が好ましい。
【0037】
上記一般式(LC−I)〜(LC−VI)におけるYは、好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜7のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0038】
TFT駆動に適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
【0039】
【化8】
【0040】
(式中、eは0又は1を示し、
21〜X26は各々独立に水素原子、又はフッ素原子基を表すが、eが0のときX21〜X24の少なくとも1つはフッ素原子で、eが1のときX21〜X26の少なくとも1つはフッ素原子であり、
21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の、1つの−CH−基が−O−で置き換えられてもよく、
25は単結合、−CHO−、又は−OCH−を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を表す。)で表される液晶性化合物(LC−VII)が特に好ましい。
【0041】
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる液晶性化合物は、上記の(LC−0)、(LC−I)〜(LC−III)、(LC−IV)、(LC−V)、(LC−VI)、(LC−VII)等のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。
【0042】
<キラル化合物>
本発明の液晶表示装置における強誘電性液晶組成物は、キラル化合物を含有してもよい。キラル化合物としては、不斉原子をもつ化合物、軸不斉をもつ化合物、面不斉をもつ化合物のいずれでもよく、該キラル化合物は重合性基を有していても、重合性基を有していなくてもよく、該キラル化合物は1種又は2種以上用いてもよい。ここで、軸不斉をもつ化合物には、アトロプ異性体を含むものとする。
これらのキラル化合物としては不斉原子をもつ化合物又は軸不斉をもつ化合物が好ましく、不斉原子をもつ化合物が特に好ましい。不斉原子をもつ化合物において、不斉原子は不斉炭素原子であると立体反転が起こりにくく好ましいが、ヘテロ原子が不斉原子となっていてもよい。不斉原子は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていてもよい。螺旋誘起力が強いことを特に要求される場合には軸不斉をもつ化合物が好ましい。
【0043】
不斉原子をもつ化合物としては、側鎖部分に不斉炭素を持つ化合物、環構造部分に不斉炭素を持つ化合物及びその両方を持つ化合物が挙げられる。具体的には一般式(Ch−I)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化9】
【0045】
100およびR101は互いに独立して、水素原子、シアノ基、NO、ハロゲン、OCN、SCN、SF、炭素原子数1〜30個のキラル又はアキラルなアルキル基、重合性基又は環構造を含むキラルな基を表すが、該アルキル基中の1個又は2個以上の隣接していないCH基は互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−または−C≡C−により置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子は互いに独立して、ハロゲン又はシアノ基によって置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖状であっても、分岐していても又は環構造を含んでいてもよい。
【0046】
キラルなアルキル基としては、以下の式(Ra)〜(Rk)が好ましい。
【0047】
【化10】
【0048】
【化11】
【0049】
【化12】
【0050】
及びRは、各々独立に炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、又は水素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはシアノ基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよい。重合性基としては、下記の式(R−1)〜(R−15)で表される構造が好ましい。
【0051】
【化13】
【0052】
これらの重合性基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、及びアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)、式(R−2)がより好ましい。環構造を含むキラルな基において環構造は芳香族であっても脂肪族であってもよい。アルキル基が取り得る環構造としては単環構造、縮合環構造またはスピロ(spirocyclic)環構造をとることができ、また1個または2個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0053】
また、X及びXは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、フェニル基(該フェニル基の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。)、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFであることが好ましい。ただし、一般式(Rc)及び(Rh)において、アステリスク*を付した位置が不斉原子となるためには、XはXと異なる基が選択される。
また、nは0〜20の整数であり、nは0または1であり、
一般式(Rd)及び(Ri)におけるRは、水素原子又はメチル基が好ましく、
一般式(Re)及び(Rj)におけるQは、メチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などの二価の炭化水素基が挙げられ、
一般式(Rk)におけるkは、0〜5の整数であり、
より好ましくは、R=C,C13,C17などの炭素原子数4〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基が挙げられる。また、Xとしては、F、CF、CHが好ましい。
中でも特に、
【0054】
【化14】
【0055】
(式中、oは0または1であり、nは2〜12、好ましくは3〜8、より好ましくは4、5または6の整数であり、アステリスク*は、キラルな炭素原子を表す。)が好ましい。
上記一般式(Ch−I)においてR100及びR101の両方がキラルな基である、ジキラル化合物がより好ましい。ジキラル化合物としては、エステル結合をもつ化合物は自発分極を大きくするために好ましく、エーテル結合をもつ化合物はチルト角を大きくする、あるいは電圧印加時の配向を安定化するために好ましい。
100及びZ101は互いに独立して、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表すが、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−CF=CF−、−COO−、−OCO−、−CH−CH−、−C≡C−又は単結合であるのが好ましい。
【0056】
100及びA101は互いに独立して、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)又は
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、インダン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(これら(c)群の基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−又は−S−に置き換えられてもよく、これら(c)群の基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)からなる群より選ばれる基を表すが、これらの全ての基は、非置換であるか、ハロゲン、シアノ基、NO又は、1個若しくは2個以上の水素原子がF若しくはClにより置換されていてもよい炭素原子数1〜7個のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル若しくはアルコキシカルボニル基で一置換若しくは多置換されていてよい。
【0057】
一般式(Ch−I)におけるA100及びA101は、1,4−フェニレン又はトランス−1,4−シクロヘキシレンが好ましいが、これらの環が、非置換であるか、あるいは1〜4位において、F、Cl、CNあるいは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルで置換されているのが好ましい。
11は0又は1を表し、n11が0のとき、m12は0であり、かつm11は0、1、2、3、4又は5であり、n11が1のとき、m11とm12は各々独立に0、1、2、3、4または5であり、n11が0のとき、R100およびR101の少なくとも1つは、キラルなアルキル基、重合性基または環構造を含むキラルな基である。
11及びm12が0のとき、m11は1、2又は3であるのが好ましく、n11が1のとき、m11及びm12は各々独立に1、2又は3であるのが好ましい。
【0058】
Dは、式(D1)〜(D8)
【0059】
【化15】
【0060】
(式中、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、炭素原子数1〜20のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基またはアルコキシ基の水素原子は任意にフッ素原子に置換されていてもよく、また該アルキル基またはアルコキシ基中のメチレン基は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−または−C≡C−により、酸素原子または硫黄原子が互いに直接結合しないように置換されていてもよい。)で表される。)で表される置換基である。
【0061】
一般式(Ch−I)における部分構造、−(A100−Z100)m11−(D)n11−(Z101−A101)m12−においてn11が0である場合には、該部分構造は以下の構造が好ましい。
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
(但し、これらの式においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよく、これらの置換基および窒素原子の導入は結晶性の低下および誘電異方性の向きや大きさを制御するのに好ましい。Zの定義は式(Ch−I)におけるZ100及びZ101と同じである。)が挙げられる。信頼性の面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環よりもベンゼン環やシクロヘキサン環の方が好ましい。誘電率異方性を大きくするという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことが良いが、その場合には化合物の持つ分極性が比較的大きく、結晶性を低下させ液晶性を安定化するために好ましく、ベンゼン環やシクロヘキサン環等の炭化水素環である場合には、化合物の持つ分極性が低い。このため、キラル化合物の分極性に応じて、適切な含有量を選択することが好ましい。
【0065】
11及びm12が0のとき、一般式(Ch−I)で表される化合物の好ましい形態は、以下のようである。
【0066】
【化18】
【0067】
【化19】
【0068】
【化20】
【0069】
【化21】
【0070】
【化22】
【0071】
式中、R100、R101及びZ100は、一般式(Ch−I)におけるR100、R101及びZ100と同じ意味を表し、R100及びR101の少なくとも一つはキラルな基を表し、L100〜L105は各々独立に水素原子又はフッ素原子を表す。
11が1を表すとき、一般式(Ch−I)で表される化合物は環構造部分に不斉炭素を持つ構造となるが、キラルな構造Dは式(D5)が好ましい。
Dが式(D5)を表す場合の一般式(Ch−I)で表される化合物は、具体的には以下の式(D5−1)〜(D5−8)
【0072】
【化23】
【0073】
【化24】
【0074】
(Rは各々独立して、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0075】
軸不斉化合物としては、以下の一般式(Ch−II)、(Ch−III)及び(Ch−IV)で表される化合物が好ましい。
【0076】
【化25】
【0077】
81、R82、R83及びY81は、各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
81、Z82、Z83、Z84及びZ85は各々独立に炭素原子数が1〜40個であるアルキレン基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上のCH基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CF−又は−C≡C−により置き換えられていてもよく、
81、X82及びX83は、各々独立に−O−、−S−、−P−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CF=CF−、−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−、又は単結合を表し、
81、A82及びA83は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
81、m82、m83はそれぞれ0又は1であり、m81+m82+m83は1、2又は3である。
CH*81、CH*82及びCH*83は以下の基を表す。
【0078】
【化26】
【0079】
63、R64、R65、R66、R67及びR68は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、R63、R64及びR65のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖、又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、R66、R67及びR68のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖、又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R65とR66が共に水素原子の場合は除く。
【0080】
より具体的には、以下の一般式(IV−d4)、(IV−d5)、(IV−c1)及び(IV−c2)で表される化合物が好ましい。ここで軸不斉の軸は、(IV−d4)、(IV−d5)、(IV−c2)の場合、2つのナフタレン環のα位を結ぶ結合であり、(IV−c1)の場合、2つのベンゼン環を結ぶ単結合である。
【0081】
【化27】
【0082】
【化28】
【0083】
一般式(IV−d4)及び(IV−d5)中、R71及びR72は各々独立に、水素、ハロゲン、シアノ(CN)基、イソシアネート(NCO)基、イソチオシナネート(NCS)基又は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、このアルキル基中の任意の1つ又は2つ以上の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
71及びA72は各々独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3、6ないし8員環、又は、炭素原子数9以上の縮合環を表すが、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素原子数1〜3のアルキル基又はハロアルキル基で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH−は−O−、−S−、又は−NH−で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、
71及びZ72は各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基を表すが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
71及びX72は各々独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は−CHCH−を表し、
71及びm72は各々独立に1〜4の整数を表す。ただし、一般式(IV−d5)におけるm71及びm72のいずれか一方は0でもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、または−X71−(A71−Z71)−R71と同じ意味を表す。
【0084】
一般式(IV−c1)及び(IV−c2)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。
また、一般式(IV−c1)において、R61及びR62は、各々独立に、アルキル基、アルコキシル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を表し、
63、R64、R65、R66、R67及びR68は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、R63、R64及びR65のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖、又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、R66、R67及びR68のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖、又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R65とR66が共に水素原子の場合は除く。
螺旋誘起力が強いことを特に要求される場合には一般式(IV−d4)及び(IV−d5)、で表される化合物が特に好ましい。
【0085】
軸不斉化合物は、具体的には以下の式(E−1)〜(E−3)
【0086】
【化29】
【0087】
(Rは独立して、炭素原子数3〜10のアルキル基であり、このアルキル基中の環に隣接する−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)で表される化合物が好ましい。ここで軸不斉の軸は、(E−1)、(E−2)、(E−3)の場合、2つのナフタレン環のα位を結ぶ結合である。
【0088】
面不斉化合物としては、例えば下記に示すヘリセン(Helicene)誘導体
【0089】
【化30】
【0090】
(式中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。)
が好ましい。このようなヘリセン誘導体においては、前後に重なり合う環の前後関係が自由に変換することができないため、環が右向きの螺旋構造をとる場合と左向きの螺旋構造をとる場合とが区別され、キラリティーを発現する。
【0091】
<重合性化合物>
本発明の液晶表示装置における強誘電性液晶組成物は、重合性化合物を1種又は2種以上含有してもよい。重合性化合物としては、シクロヘキサン骨格やベンゼン骨格等の環構造(メソゲン性支持基)を有する重合性化合物及びメソゲン性支持基を有しない化合物を用いることができる。
【0092】
メソゲン性支持基を有する重合性化合物としては、一般式(PC1)
【0093】
【化31】
【0094】
(式中、Pは重合性基を表し、Spは炭素原子数0〜20のスペーサー基を表し、Qは単結合、−O−、−OCH−、−CHO−、−C−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CO−、−OCOO−、−NH−、−NHCOO−、−OCONH−、−OCOCH−、−CHOCO−、−COOCH−、−CHCOO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−CH=CCH−COO−、−COO−CCH=CH−、−COOC−、−OCOC−、−COCO−、−CCOO−、−C≡C−、−CFO−及び−OCF−を表し、n11、n12は各々独立に1、2又は3を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、
10は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜25のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−より置き換えられていても良く、あるいはR10はP−Sp−Q−(式中、P、Sp、Qはそれぞれ独立してP、Sp、Qと同じ意味を表す。)を表す。)で表される重合性化合物であるのが好ましい。
【0095】
一般式(PC1)においてMGが以下の構造
【0096】
【化32】
【0097】
(式中、C〜Cはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン2,7−ジイル基又はフルオレン2,7−ジイル基を表し、該1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン2,7−ジイル基及びフルオレン2,7−ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF、OCF、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、Y及びYはそれぞれ独立して−COO−、−OCO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CHCHCOO−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−OCOCHCH−、−CONH−、−NHCO−又は単結合を表し、n13は0、1又は2を表す。)で表されるのが好ましく、
Sp及びSpがそれぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキレン基を表すのが好ましく、該アルキレン基に存在する1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ独立してハロゲン原子、シアノ基、メチル基又はエチル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つ又は2つ以上のCH基は酸素原子が直接隣接しないように−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、P及びPがそれぞれ独立して以下の式(R−1)〜一般式(R−15)
【0098】
【化33】
【0099】
で表される構造であるのが好ましい。これらの重合基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、及びアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)、式(R−2)がより好ましい。
【0100】
メソゲン性支持基を有する一般式(PC1)で表される重合性化合物は、重合性基を分子内に1個有する一般式(PC1)−0を取り得る。
【0101】
【化34】
【0102】
式中、R11は水素原子又はメチル基を表し、6員環T、T及びTはそれぞれ独立的に、
【0103】
【化35】
【0104】
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、n14は0又は1の整数を表し、
、Y及びYはそれぞれ独立して単結合、−O−、−OCH−、−OCH−、−C−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CO−、−OCOO−、−NH−、−NHCOO−、−OCONH−、−OCOCH−、−CHOCO−、−COOCH−、−CHCOO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−CH=CCH−COO−、−COO−CCH=CH−、−COOC−、−OCOC−、−COCO−、−CCOO−、−C≡C−、−CFO−及び−OCF−を表し、Yは単結合、−O−、−COO−、又は−OCO−を表し、
12は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数1から20のアルケニル基、炭素原子数1から20のアルコキシ基、又は炭素原子数1から20の炭化水素基を表す。
【0105】
メソゲン性支持基を有する一般式(PC1)で表される重合性化合物は、重合性基を分子内に2個以上有する一般式(PC1)−1又は一般式(PC1)−2を取り得る。
【0106】
【化36】
【0107】
式中、P、Sp、Q、P、Sp、Q及びMGは一般式(PC1)と同じ意味を表し、n及びnはそれぞれ独立して1、2又は3を表す。
【0108】
一般式(PC1)−1としては、一般式(PC1)−3から一般式(PC1)−11
【0109】
【化37】
【0110】
【化38】
【0111】
(式中、P、P、Sp、Sp、Q及びQは一般式(PC1)と同じ意味を表し、Wはそれぞれ独立してF、CF、OCF、CH、OCH、炭素原子数2〜5のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、COOW、OCOW又はOCOOWを表し(式中、Wはそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。)、n21はそれぞれ独立して1、2又は3を表し、n22はそれぞれ独立して1、2又は3を表し、nはそれぞれ独立して0、1、2、3又は4を表し、同一環上におけるn21+n及びn22+nは5以下である。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の重合性化合物であるのが好ましい。
【0112】
一般式(PC1)−3から一般式(PC1)−11においてSp、Sp、Q、及びQは単結合であるのが好ましい。n21+n22は1〜3が好ましく、1又は2が好ましい。P及びPは式(R−1)又は(R−2)であるのが好ましい。WはF、CF、OCF、CH又はOCHであるのが好ましい。nは1、2、3又は4が好ましい。
【0113】
具体的には次に記載する化合物が好ましい。
【0114】
【化39】
【0115】
また、さらに上記(PC1−3a)〜(PC1−3i)のベンゼン環の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0116】
また、一般式(PC1)−1としては一般式(II−a)
【0117】
【化40】
【0118】
(式(II−a)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、nは、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)、及び一般式(II−b)
【0119】
【化41】
【0120】
(式(II−b)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
はベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、nは、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の重合性化合物であるのも好ましい。
【0121】
一般式(II−a)で表される化合物としては、一般式(II−d)及び(II−e)
【0122】
【化42】
【0123】
(式(II−d)及び(II−e)中、mは、0又は1を表し、
11及びY12はそれぞれ独立して単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、Y13及びY14はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、Y15及びY16はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、r及びsはそれぞれ独立して2〜14の整数を表す。式中に存在する1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)のいずれかで表される化合物を用いると、機械的強度や耐熱性に優れた光学異方体が得られるので好ましい。
【0124】
一般式(II−a)で表される化合物の具体例としては、以下の式(II−1)から(II−10)で表される化合物を挙げることができる。
【0125】
【化43】
【0126】
式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。
【0127】
また、一般式(II−d)及び(II−e)のいずれかで表される化合物の具体例としては、以下の式(II−11)〜(II−20)で表される化合物を挙げることができる。
【0128】
【化44】
【0129】
式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。
【0130】
メソゲン性支持基を有さない重合性化合物としては、一般式(PC2)
【0131】
【化45】
【0132】
(式中、Pは重合性基を表し、Aは単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
、Zは単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から30のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から17のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、kは0から40を表し、
、B及びBは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個もしくは2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い)、又は−A−P(式中、Aは単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)で表される基を表す。ただし、2k+1個あるB、B及びBのうち前記−A−Pで表される基となるものの個数は0〜3個である。)で表される重合性化合物であることが好ましく、一般式(PC2)で表されるものの中で、主鎖長やアルキル側鎖長の異なるものを複数含有させても良い。
【0133】
一般式(PC2)で表される重合性化合物の好ましい構造として、下記一般式(PC2)−1
【0134】
【化46】
【0135】
(式中、Pは重合性基を表し、A12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
13及びA16はそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、
14及びA17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
15は炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表す。)で表される化合物、一般式(PC2)−2
【0136】
【化47】
【0137】
(式中、Pは重合性基を表し、aは、6〜22の整数を表す。)で表される化合物、一般式(PC2)−3
【0138】
【化48】
【0139】
(式中、Pは重合性基を表し、b及びcはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、eは0〜6の整数を表す。)で表される化合物、及び一般式(PC2)−4
【0140】
【化49】
【0141】
(式中、Pは重合性基を表し、m,n,p及びqはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、式(PC2)−1で表される化合物を含むことが好ましい。
重合性基Pとしては、以下の式(R−1)〜(R−15)
【0142】
【化50】
【0143】
を取り得るが、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)、式(R−2)がより好ましい。更に、式(R−1)が重合速度がより速くなる点で特に好ましい。
【0144】
12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基であることが好ましい。二つの重合性基間距離は、A12及びA18とA15とで独立的にそれぞれ炭素数の長さを変えて調整することができる。一般式(PC2)−1で表される化合物の特徴は、重合性官能基間の距離(架橋点間の距離)が長いことであるが、この距離があまりに長いと重合速度が極端に遅くなって相分離に悪い影響が出てくるため、重合性官能基間距離には上限がある。一方、A13及びA16の二つの側鎖間距離も主鎖の運動性に影響がある。すなわちA13及びA16の間の距離が短いと側鎖A13及びA16がお互いに干渉するようになり、運動性の低下をきたす。従って、一般式(PC2)−1で表される化合物において重合性官能基間距離はA12、A18、及びA15の和で決まるが、このうちA12とA18を長くするよりはA15を長くした方が好ましい。
一方、側鎖であるA13,A14,A16,A17においては、これらの側鎖の長さが次のような態様を有することが好ましい。
【0145】
一般式(PC2)−1において、A13とA14は主鎖の同じ炭素原子に結合しているが、これらの長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA13と呼ぶものとする(A13の長さとA14の長さが等しい場合は、いずれが一方をA13とする)。同様に、A16の長さとA17の長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA16と呼ぶものとする(A16の長さとA17の長さが等しい場合は、いずれが一方をA16とする)。
このようなA13及びA16は、本願においてはそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)とされているが、
好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数2から18の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数3から15の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0146】
側鎖は主鎖に比べて運動性が高いので、これが存在することは低温での高分子鎖の運動性向上に寄与するが、前述したように二つの側鎖間で空間的な干渉が起こる状況では逆に運動性が低下する。このような側鎖間での空間的な干渉を防ぐためには側鎖間距離を長くすること、及び、側鎖長を必要な範囲内で短くすることが有効である。
さらにA14及びA17については、本願においてはそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)とされているが、好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から7のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、さらに好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から3のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
このA14及びA17についても、その長さが長すぎることは側鎖間の空間的な干渉を誘起するため好ましくない。この一方でA14及びA17が短い長さを持ったアルキル鎖である場合、高い運動性を持った側鎖になり得ること、及び隣接する主鎖同士の接近を阻害する働きを有することが考えられ、高分子主鎖間の干渉を防ぐ作用があり主鎖の運動性を高めているものと考えられ、アンカリングエネルギーが低温で増加して行くことを抑制することができ、高分子安定化液晶光学素子の低温域における特性を改善する上で有効である。
【0147】
二つの側鎖間に位置するA15は、側鎖間距離を変える意味からも、架橋点間距離を広げてガラス転移温度を下げる意味からも、長い方が好ましい。しかしながらA15が長すぎる場合は一般式(PC2)−1で表される化合物の分子量が大きくなりすぎ液晶組成物との相溶性が低下してくること、及び重合速度が遅くなりすぎて相分離に悪影響が出ること等の理由から自ずとその長さには上限が設定される。
よって、本願発明においてA15は、炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であることが好ましい。
すなわち、本願発明においてA15のアルキレン鎖長は炭素原子数9から16であることが好ましい。A15は構造上の特徴として、アルキレン基中の水素原子が炭素原子数1から10のアルキル基で置換された構造を有する。アルキル基の置換数は1個以上5個以下であるが、1個から3個が好ましく、2個又は3個置換されていることがより好ましい。置換するアルキル基の炭素原子数は、1個から5個が好ましく、1個から3個がより好ましい。
例えば、一般式(PC2)−1において、A14及びA17が水素である化合物は、エポキシ基を複数有する化合物と、エポキシ基と反応し得る活性水素を有するアクリル酸やメタクリル酸等の重合性化合物とを反応させ、水酸基を有する重合性化合物を合成し、次に、飽和脂肪酸と反応させることにより得ることができる。
更に、複数のエポキシ基を有する化合物と飽和脂肪酸とを反応させ、水酸基を有する化合物を合成し、次に水酸基と反応し得る基を有するアクリル酸塩化物等の重合性化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0148】
またラジカル重合性化合物が、例えば、一般式(PC2)−1のA14及びA17がアルキル基であり、A12及びA18が炭素原子数1であるメチレン基である場合は、オキセタン基を複数有する化合物と、オキセタン基と反応し得る脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法や、オキセタン基を一つ有する化合物と、オキセタン基と反応し得る多価の脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法等により得ることができる。
また、一般式(PC2)−1のA12及びA18が炭素原子数3であるアルキレン基(プロピレン基;−CHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにフラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。更に、一般式(PC2)−1のA12及びA18が炭素原子数4であるアルキレン基(ブチレン基;−CHCHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにピラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。
【0149】
本発明の液晶表示装置における強誘電性液晶組成物に用いられる重合性化合物としては、上述のようなアキラルな物質に限らず、カイラルな物質を用いてもよい。カイラル性を示す光重合性化合物としては、例えば、下記の一般式(II−x)、又は(II−y)で表される重合性化合物を用いることができる。
【0150】
【化51】
【0151】
上記一般式(II−x)及び(II−y)において、Xは水素原子又はメチル基を表す。また、n10は0又は1の整数を表し、n11は、0、1又は2の整数を表す。ただし、n11が2を表す場合、複数あるT14及びY14は同じであっても異なっていても良い。
また、6員環T11,T12,T13,T14は、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基等の6員環構造を有する置換基を表す。ただし、6員環T11,T12,T13は、これらの置換基にのみ限定されるものではなく、下記構造
【0152】
【化52】
【0153】
を有する置換基のうち、何れか一種の置換基を有していればよく、互いに同じであっても異なっていても構わない。なお、上記置換基において、mは1〜4の整数を示す。
また、一般式(II−y)におけるT15は、ベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基などの環式3価基を表す。
また、一般式(II−x)及び(II−y)におけるY11、Y12、及びY14は、それぞれ独立して、炭素原子数が1〜10である直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基であり、この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個のCH基は、−O−、−S−、−CO−O−又は−O−CO−により置き換えられていてもよく、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、又は−CHCHCH=CH−を含んでいてもよい。また、不斉炭素原子を含んでいてもよく、含まなくても良い。すなわち、Y11及びY12は、上記したいずれかの構造を有していれば、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
また、Y10及びY13は、単結合、−O−、−OCO−、−COO−を表す。
11は、不斉炭素原子を持ちかつ分枝鎖構造を含む炭素原子数3〜20のアルキレン基を表す。
12は、炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、不斉炭素原子を含んでいてもよく、含まなくても良い。
【0154】
また、重合性化合物は下記一般式(PC1)−9で表される円盤状液晶化合物
【0155】
【化53】
【0156】
(式中、Rはそれぞれ独立してP−Sp−Q又は一般式(PC1−e)の置換基を表し(式中、P、Sp及びQは般式(PC1)と同じ意味を表し、R81及びR82はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R83は炭素原子数1〜20アルコキシ基を表し、該アルコキシ基中の少なくとも1つの水素原子は前記式(R−1)〜(R−15)で表される置換基で置換されている。)であることも好ましい。
これらの重合性化合物の使用量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0157】
本発明の強誘電性液晶組成物が重合性化合物を含有する場合の重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を用いることが可能であるが、ラジカル重合により重合することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;
ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
【0158】
本発明においては、重合性液晶化合物(PC1)のほかに多官能液晶性モノマーを添加することもできる。この多官能液晶性モノマーとしては、重合性官能基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH−、CH=CCl−、CHCl=CH−、RCH=CHCOO−(ここでRは塩素、フッ素、又は炭素原子数1〜18の炭化水素基を表す)が挙げられるが、これらの中でもアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基が特に好ましく、アクリロイルオキシ基が最も好ましい。
【0159】
多官能液晶性モノマーの分子構造としては、2つ以上の環構造を有することを特徴とする液晶骨格、重合性官能基、さらに液晶骨格と重合性官能基を連結する柔軟性基を少なくとも2つ有するものが好ましく、3つの柔軟性基を有するものがさらに好ましい。柔軟性基としては、−(CH−(ここでnは1〜30の整数を表す)で表されるようなアルキレンスペーサー基や−(Si(CH−O)−(ここでnは1〜30の整数を表す)で表されるようなシロキサンスペーサー基を挙げることができ、この中ではアルキレンスペーサー基が好ましい。これらの柔軟性基と液晶骨格、もしくは重合性官能基との結合部分には、−O−、−COO−、−CO−のような結合が介在していても良い。
【0160】
液晶組成物の応答速度の向上、配向安定性の向上、閾値電圧の低下、低温での応答速度低下の改善、レイヤー構造の安定化等の目的として、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子等のナノ粒子を添加することもできる。有機粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシアクリレート、ジビニルベンゼン等のポリマー粒子が挙げられる。無機粒子としては、チタン酸バリウム(BaTiO)、SiO、TiO、Al等の酸化物や、Au、Ag、Cu、Pd等の金属が挙げられる。有機粒子や無機粒子は、表面を他の材料でコーティングしたハイブリッド粒子であってもよく、無機粒子の表面を有機材料でコーティングした有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。無機粒子の表面に付与する有機物が液晶性を示すと、周囲の液晶分子が配向しやすくなり、好ましい。
その他、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。また、二軸性化合物や、イオン及び極性化合物のトラップ材料等を含有するものとすることもできる。
【0161】
二軸性化合物において二軸性を示す分子構造としては、板状構造、円盤と棒を組み合わせた構造、半円盤と棒を組み合わせた構造、バナナ型液晶などの折れ曲がった構造、Lateral connection(分子側鎖で連結した構造)などが好ましく、具体的な二軸性化合物としてはJ. Mater. Chem., 2010, 20, 4263、The Chemical Record, Vol. 4, 10 (2004)などの文献に記載されている化合物などが挙げられる。
【0162】
強誘電性液晶組成物は不純物等を除去したり、又は比抵抗値を更に高くしたりする目的で、シリカ、アルミナ等による精製処理を施しても良い。液晶組成物の比抵抗値としては、THTで駆動するためには、1011Ω・cm以上が好ましく、1012Ω・cm以上がより好ましく、1013Ω・cm以上がより好ましい。また、液晶組成物中に不純物として存在するカチオンの影響を防止する方法として、クラウンエーテル、ポダンド、コロナンド、又はクリプタンド等のカチオン包接化合物を添加することもできる。
【0163】
低温環境下でも液晶光学素子の性能を維持できるようにするため、強誘電性液晶組成物が低温保存安定性を有することが好ましい。液晶組成物の低温保存安定性は、0℃以下、24時間以上の環境でSmCを維持することが好ましく、より好ましくは−20℃以下、500時間以上、さらに好ましくは−30℃以下、700時間以上の環境でSmCを維持することが好ましい。
【0164】
<強誘電性液晶表示素子>
本発明の液晶光学素子においては、基板に対して押圧力が加わっても、該強誘電性液晶組成物を基板に挟持した際のSmC相のレイヤーノーマル方向が該基板面に対して80°以上90°以下である。またSSFLCでみられるようなジグザク欠陥やシェブロン構造をもたず、安定な配向となり得る。これにより、圧力が加わって一時的に表示が乱れることがあったとしても、圧力から解放された後に表示が復元する表示復元能力を有するものとなる。このため、タッチパネルなど表示画面上で押圧による操作を行う機器に好適である。
液晶光学素子は、0.2mmあたり1kg(9.8N)以下の圧力に対して表示復元能力を有することができる。
【0165】
本発明の強誘電性液晶を用いた表示用の光学素子は、偏光面が互いに直交する二枚の偏光板を配置した一対の基板の少なくとも一方に、一対の画素電極と共通電極を有し、該一対の基板間に本発明の強誘電性液晶組成物が挟持されている。表示素子中に印加される電界はレイヤーノーマルに水平方向に印加されることが好ましく、このような電界を実現する電極構造として、IPS(In-Plaine Switching)方式などの櫛型構造をもった電極構造が好ましい。S−IPS(Super IPS)、AS−IPS(Advanced Super IPS)、IPS−Pro(IPS-Provectus)など、櫛型電極の構造を屈曲させることによって、レイヤーノーマルの水平方向に印加する横電界の向きを制御することは、駆動電圧の低下、高画質化、高輝度化、超高輝度化などの観点から好ましい。櫛形電極は、金属電極を用いることが可能であるが、電極部分の光の利用効率を上げるためには、ITO、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)、グラフェンなどの透明電極を用いることが好ましい。表示素子ないで電界強度の分布を少なくすることは、駆動電圧の低下、応答速度の向上、高コントラスト化、高画質化の観点から好ましい。電界強度の分布を少なくする方法として、一対の基板の両方に、一対の画素電極と共通電極を有する構成とすることもできる。
【0166】
具体的には、次のような方法がある。
一対の基板の両方にIPS、S−IPS、AS−IPS、IPS−Pro電極を設けることが好ましく、電極は平滑であるよりもセル内部に突起した電極である方が、セル内部での電界強度分布が低下しにくい素子となり好ましい。突起した電極構造としては、球状、半球状、立方状、直方状、三角状、台形状、円柱状、円錐状、3〜20角柱状、3〜20角錐状、非対称な形状でもよく、表面は平滑でも凹凸があってもよく、それぞれの電極の角は曲線からなる角部でも直線からなる角部でもよく、突起の高さは、セルギャップの1/100、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/2、3/4以上でもよく、あるいは突起部分が対向基板と接してもよく、突起した電極は基板に直接設置あるいは樹脂、絶縁物、誘電体、半導体あるいはこれらの複合体などの土台の上に設置されてもよく、画素電極は土台の上部、中部、下部の何れにあってもよい。
【0167】
さらに具体的な突起した電極構造としては、第1基板と、第1基板の板厚方向に突起した形状を有し、互いに離間して上記第1基板の一方面側に設けられる一対の電極と、一方面側が上記第1基板の一方面側と対向するように配置される第2基板を有する構造(特開2007−171938)、第1の基板と強誘電性液晶層との間に設けられる画素電極層(第1の電極層)及び共通電極層(第2の電極層)を重ならないように配置し、画素電極層は第1の基板の強誘電性液晶層側の面から液晶層に突出して設けられたリブ状の第1の構造体の上面側面を覆って形成され、共通電極層は第1の基板の強誘電性液晶層側の面から強誘電性液晶層に突出して設けられたリブ状の第2の構造体の上面側面を覆って形成する構造(特開2011−133876)、強誘電性液晶層を対向する開口パターン(スリット)を有する第1の共通電極層及び第2の共通電極層と、開口パターンを有する画素電極層とで挟持し、画素電極層は第1の基板の強誘電性液晶層側の面から強誘電性液晶層に突出して設けられた構造体の上部に形成され、強誘電性液晶層中において画素電極層は第1の共通電極層と第2の共通電極層との間に配置する構造(特開2011−133874)、少なくとも一対の電極は、最大電界領域が、上記基板界面から離間した位置に形成されるように設けられていることを特徴とする構造(特開2005−227760)、第1の電極層(画素電極層)上に第1の構造体、同様に第2の電極層(共通電極層)上に第2の構造体を設ける構成とする。第1の構造体及び第2の構造体は、液晶層に用いられる液晶材料の誘電率より高い誘電率を有する絶縁体であり、液晶層に突出するように設ける構造(特開2011−8241)、などが使用できる。また、基板に窪みを設けることで、結果として画素電極が突起することと同義となる構造も利用できる。例えば、Double-penetrating Fringe Field(Journal of Display Thecnology, 287-289, Vol. 6, 2010)などを利用できる。上記の他に駆動電圧を低下する方法としては、電極間にある強誘電性液晶を小さな樹脂空間に封じ込めた形状となるConfined geometry(Lee,S.-D.、2009、IDW '09-Proceeding of the 16th International Display Workshots 1、pp.111-112)を利用する方法や、periodic corrugated electrodes(Appl. Phys. Lett. 96, 011102 (2010))を利用したり、一対の基板の片方または両方にFFS(Fringe-Field Switching)電極を設けたりすることができる。
【0168】
液晶セルの2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。大型テレビなどで臨場感を高めるためには、アモルファスシリコンに比べて電子の動きの指標である電子移動度が1ケタ大きい酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)を用いることが好ましい。
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
基板は、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られるセルの厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。セル厚は、1〜10μmが更に好ましく、2〜4μmがなお好ましい。
二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積(Δnd)を調整することが好ましい。また、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。
2枚の基板間に強誘電性液晶組成物を狭持させる方法は、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。この時、高分子安定化強誘電性液晶組成物は、各種成分が相溶していれば良く、均一なアイソトロピック状態か、又は(キラル)ネマチック相であることが好ましい。
【0169】
液晶を挟持する基板面には、配向膜を設けることができる。配向膜としては、一般的なポリイミド等の配向膜や光配向膜が使用できる。
配向膜としては、垂直配向性を有する配向膜が好ましい。
垂直配向性を有するポリイミド系の配向膜が好ましく、具体的にはアルキル長鎖もしくは脂環基が置換した酸無水物、アルキル長鎖もしくは脂環基が置換したジアミンを酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸、又は該ポリアミック酸を脱水開環して得られるポリイミドが挙げられる。このような嵩高い基を有するポリイミド、ポリアミド又はポリアミック酸からなる液晶配向剤を基板上で膜形成することにより、垂直配向性を有する液晶配向膜を製造することができる。
【0170】
酸無水物としては、例えば次の一般式(VII−a1)〜(VII−a3)で表される化合物が挙げられる。また、ジアミンとしては、例えば次の一般式(VII−b1)〜(VII−b3)で表される化合物が挙げられる。
【0171】
【化54】
【0172】
【化55】
【0173】
式(VII−a1)〜(VII−a3)及び(VII−b1)〜(VII−b3)中、R301、R302、R303及びR304は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、
301、Z302、Z303及びZ304は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、
301及びA302は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
301及びn302は各々独立に0又は1を表し、n303は0〜5の整数を表す。
また、一般式(VII−a2)〜(VII−a3)及び(VII−b2)〜(VII−b3)において、ステロイド骨格の−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、ステロイド骨格が任意の位置に1つ又は2つ以上の不飽和結合(C=C)を有していてもよい。
【0174】
電界を横方向に印加する横電界型液晶表示素子においては、配向膜の好ましい態様として、式(VII−c1)及び(VII−c2)で表される構造を有するポリアミック酸又はポリイミドを液晶配向剤として用いたものであると、優れた残像特性を有し、電界無印加時の暗状態における光線透過率が低減される点で好ましい。
【0175】
【化56】
【0176】
式(VII−c1)中、R121は各々独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、
122は各々独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はカルボキシル基を表し、
121は1〜10の整数を表し、n122は各々独立に0〜4の整数を表し、
「*」は結合手であることを表す。
式(VII−c2)中、R123は各々独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、
124、R125は各々独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はカルボキシル基を表し、
123は0〜5の整数を表し、n124は0〜4の整数を表し、n125は0〜3の整数を表し、「*」は結合手であることを表す。
【0177】
分子内の少なくとも一部に式(VII−c1)で表される構造と式(VII−c2)で表される構造をともに有するポリアミック酸は、例えば式(VII−c1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物と式(VII−c2)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を、ジアミンとを反応させるか、あるいは式(VII−c1)で表される構造を有するジアミンと式(VII−c2)で表される構造を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることにより得ることができる。
(VII−c1)又は式(VII−c2)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、「*」で表される結合手を有する両末端のベンゼン環が、各々無水フタル酸基である化合物が挙げられる。
(VII−c1)又は式(VII−c2)で表される構造を有するジアミンとしては、具体的には、「*」で表される結合手を有する両末端のベンゼン環が、各々アニリン基である化合物が挙げられる。
【0178】
また、光配向膜としては、アゾベンゼン、スチルベン、α−ヒドラゾノ−β−ケトエステル、クマリン等の構造を有し、光異性化を用いる光配向膜;アゾベンゼン、スチルベン、ベンジリデンフタルジイミド、シンナモイルの構造を有し、光幾何異性化を用いる光配向膜;スピロピラン、スピロオキサジン等の構造を有し、光開閉環反応を用いる光配向膜;シンナモイル、カルコン、クマリン、ジフェニルアセチレン等の構造を有し、光二量化を用いる光配向膜;可溶性ポリイミド、シクロブタン型ポリイミド等の構造を有し、光照射による光分解を用いる光配向膜;ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル(BPDA/DPE)を反応させて得られるポリイミドに光照射してなる光配向膜などが挙げられる。
【0179】
光配向膜は、光配向性基を有する化合物を含有する塗膜に異方性を有する光を照射して、光配向性基を配列させ、光配向状態を固定化することにより、製造することができる。
光配向性基を有する化合物が重合性基を有する場合は、液晶配向能を付与する光照射処理の後に重合を行うことが好ましい。重合方法は光重合、熱重合のいずれでも良い。光重合の場合は、光配向剤に光重合開始剤を添加し、光照射処理後に、例えば異なる波長の光を照射することで光重合反応を行う。一方、熱重合の場合は光配向剤に熱重合開始剤を添加し、光照射処理後に加熱することで熱重合反応を行う。
光配向膜において光配向状態を固定化するためには、光架橋性高分子を用いてもよい。光架橋性高分子光配向膜としては、次に記載する化合物が挙げられる。
【0180】
【化57】
【0181】
(式中、R201及びR202は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
201及びZ202は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
201及びA202は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
201及びn202は各々独立に1〜3の整数を表し、
201及びP202は各々独立に、シンナモイル、クマリン、ベンジリデンフタルジイミド、カルコン、アゾベンゼン、スチルベン等の光配向性基を表し、P201は1価基、P202は2価基である。
【0182】
より好ましい化合物として、シンナモイル基を有する式(VII−c)、クマリン基を有する式(VII−d)、ベンジリデンフタルジイミド基を有する式(VII−e)の化合物が挙げられる。
【0183】
【化58】
【0184】
式(VII−c)、(VII−d)、及び(VII−e)中、R201、R202、A201、A202、Z201、Z202、n201及びn202の定義は式(VII−a)及び(VII−b)におけるのと同じであり、
203、R204、R205、R206及びR207は各々独立にハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCF、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、又はヒドロキシ基を表し、
203は0〜4の整数を表し、n204は0〜3の整数を表し、n205は0〜1の整数を表し、n206は0〜4の整数を表し、n207は0〜5の整数を表す。
【0185】
液晶表示素子の光源は、特に限定されるものではないが、低消費電力であることからLEDが好ましい。LEDは液晶表示素子の長辺よりも短辺に設置することが好ましく、LEDの設置は2辺よりは1辺が好ましく、さらに液晶表示素子の角のみに設置することがより好ましい。さらに消費電力を抑制するため、点滅制御(暗い領域の光量を下げたり消灯したりする技術)や、マルチフィールド駆動技術(駆動周波数を、動画を表示する場合と静止画を表示する場合とで区別する技術)、屋内と屋外あるいは夜間と昼間で光量のモード切り替えを行う技術、液晶表示素子のメモリー性を利用して駆動を一時停止する技術等を用いることが好ましい。また、反射型表示素子では、機器に光源を備えなくとも外部の照明(日光や室内光など)を利用できるため、好ましい。光源の光のロスを防ぐためには、導光板やプリズムシートを用いることが好ましい。導光板やプリズムシートは同盟樹脂を用いることが好ましく、透明樹脂としては、例えばメタクリル樹脂(PMMA等)、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、ポリスチレン樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0186】
コントラストの向上に関しては、点滅制御(暗い領域の光量を下げたり消灯したりする技術)や、開口率が50%以上である素子、高配向性の配向膜やアンチグレア膜を用いたり、フィールドシーケンシャル方式(カラーフィルターを用いずにRGB3色のLEDを、人間の目の時間的分解能以下の短時間で順次点灯させ、色を認識させるカラー化方式)を用いることが好ましい。開口率を高くするためには能動素子を小さくすることが好ましく、600cm/Vs以上の移動度の高い半導体を用いることで能動素子を小さくすることが好ましい。
【0187】
高速応答性のためには、オーバードライブ機能(階調を表現する際の電圧を、立ち上がり時に高く、立ち下がり時は低くする)を用いたり、基板にプレチルトを付与したり、負の誘電異方性をもつ強誘電性液晶を用いたりすることが好ましい。
【0188】
本発明の液晶表示素子は、タブレットPC用途に用いるタッチパネル表示素子にも用いることが可能で、その場合には耐衝撃性、耐振動性、撥水・撥油性、防汚性、耐指紋性を有することが好ましく、ATM(自動預金支払機)、自動販売機、自動券売機、トイレ用モニター、コピー機、公衆電話など不特定多数の人が利用する用途や医療・介護・乳幼児用途ではインフルエンザウイルス、ノロウイルス、RSウイルスなどのウイルスに対する耐ウイルス性、サルモネラ菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌などに対する抗菌性を有することが好ましく、より好ましくは表示素子の殺菌などの洗浄で目的に対する耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性を有することが好ましく、倉庫、運輸・流通、製造、整備工場、工事現場、海洋調査、消防や警察、救命(レスキュー)、防災などの用途では防塵性、防水性、耐塩性、防爆性、耐放射線の性能を有することが好ましく、より好ましくは欧州防爆規格(ATEX Zone2 Category3)、防水防塵規格(IP65)、米軍用規格(MIL-STD-810F)を満たすことが好ましい。
【0189】
耐衝撃性は、コンクリート上での3フィート落下をクリアする表示素子に用いることが好ましく、表示素子のケースには耐衝撃性マグネシウム合金またはマルチレイヤマグネシウム合金を用いることが好ましく、耐衝撃性・耐振動性の確保のため、ストレージにはSSDを用いることが好ましい。直射日光の屋外でも視認性を高めるためには、Dual-Mode AllVue(TM) Xtremeテクノロジーを用いることが好ましい。
汚れによる表示品質の低下を抑制するため、撥水・撥油性、防汚性、耐指紋性、消指紋性などを有するフィルムを使用することが好ましく、フィルムの基材材料としては透明基材フィルムが好ましく、透明基材フィルムを形成する樹脂材料として具体的には、ポリ(メタ)アクリレート等のアクリル系樹脂、トリアセテートセルロース(TAC)・ジアセチルセルロース・セロファン等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン・ポリ塩化ビニル・ポリイミド・ポリビニルアルコール・ポリカーボネート・エチレンビニルアルコール等の有機高分子、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン等の共重合系樹脂等が挙げられる。それらの中でも、汎用性などの観点からトリアセテートセルロース(TAC)系樹脂及びポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂が好ましい。
【0190】
耐擦傷性を高めるため、フィルムにハードコート性あるいは自己修復性塗膜を付与することが好ましい。ハードコート層形成用組成物に含まれる樹脂としては、公知の樹脂を用いることができるが、表面硬度を向上させることを考慮すると、電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート等が挙げられる。また、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。上記のうち、表面硬度を向上させることを考慮すると、多官能(メタ)アクリルモノマーを用いることが好ましい。ここで、多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物が好ましい。その他には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものや、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどが挙げられる。また、メラミンやイソシアヌル酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いることができる。また、本発明の多官能(メタ)アクリルモノマーは、オリゴマーであっても構わない。市販されている多官能アクリル系モノマーとしては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、ナガセケムテックス株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村化学工業株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成株式会社;(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
また、他の電離放射線硬化性樹脂としては、重合性基を有する含フッ素化合物が挙げられる。ハードコート層形成用組成物が重合性基を有する含フッ素化合物を含むことにより、そのハードコート層形成用組成物により形成されたハードコート層表面に防汚特性を付与することができる。重合性基を有しないフッ素系添加剤を用いる場合、添加剤がハードコート層表面に浮いて存在する状態となるため、布等で拭くことでハードコート表面から取り去られてしまうこととなる。このことから、一度布等で表面を拭取ってしまうと、防汚性が無くなるという欠点を有している。そこで、防汚特性を有するフッ素化合物に重合性基を持たせることで、ハードコート層形成時にフッ素系添加剤も合せて重合することとなり、布等で表面を拭いても防汚特性が維持されるという利点を有している重合性基を有する含フッ素化合物として、さらに好ましくは、この重合性基が(メタ)アクリレート基を有する化合物である。これは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと共重合することも可能となり、電離放射線によるラジカル重合によって高硬度化が図れるためである。重合性基を有する含フッ素化合物として、さらに好ましくは、この重合性基が(メタ)アクリレート基を有する化合物である。これは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと共重合することも可能となり、電離放射線によるラジカル重合によって高硬度化が図れるためである。このような重合性基を有する含フッ素化合物としては、オプツールDAC(ダイキン工業(株)製)、SUA1900L10、SUA1900L6(新中村化学(株)製)、UT3971(日本合成(株)製)、ディフェンサTF3001、ディフェンサTF3000、ディフェンサTF3028(大日本インキ(株)製)、ライトプロコートAFC3000(共栄社化学(株)製)、KNS5300(信越シリコーン(株)製)、UVHC1105、UVHC8550(GE東芝シリコーン(株)製)などが挙げられる。重合性基を有する含フッ素化合物の使用量は、ハードコート層形成用組成物の多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、0.01重量%以上10重量%以下が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は、十分な防汚特性を発現せず、表面エネルギーも20mN/mよりも大きい値を示し、10重量%を超える場合は、重合性モノマー、溶剤との相溶性が良くないために、塗液の白濁化、沈殿発生が起こってしまい、塗液・ハードコート層の欠陥発生などの不都合を招く場合がある。
【0191】
ハードコート層形成用組成物は、上記電離放射線硬化型樹脂の重合反応を開始するための光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、電離放射線を照射することで、ラジカルを発生し、電離放射線硬化型樹脂の重合反応を開始する。光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成用組成物の上記電離放射線硬化型樹脂に対して、0.01重量%以上10重量%以下が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は電離放射線を照射した際に十分な硬化反応が進行せず、10重量%を超える場合はハードコート層下部まで十分に電離放射線が届かなくなってしまう。
【0192】
ハードコート層形成用組成物は、必要に応じて、上述した各成分の他にも、電離放射線による反応を損なわない範囲内で、ハードコート層の特性を改良するための改質剤や、ハードコートフィルムの製造時の熱重合や、ハードコート層形成用組成物の貯蔵時の暗反応を防止するための熱重合防止剤を含有してもよい。改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これら改質剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物の固形分100重量%中、0.01重量%以上5重量%以下が好ましい。熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどが挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物の固形分100重量%中、0.005重量%以上0.05重量%以下が好ましい。
【0193】
また、ハードコート層形成用組成物は、ハードコート層に防眩性の機能を付与するために、各種粒子を含んでもよい。粒子としては、例えば、アクリル粒子、アクリルスチレン粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子、メラミン粒子といった有機粒子や、シリカ粒子タルク、各種アルミノケイ酸塩、カオリンクレー、MgAlハイドロタルサイト、などの無機粒子から適宜選択される。上記粒子の平均粒子経としては、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、このときのハードコート層の平均膜厚は、2μm以上20μm以下であることが好ましい。粒子の平均粒子径が0.5μmに満たない場合、ハードコート層の表面に凹凸を形成することが困難となる。一方、粒子の平均粒子径が10μmを超えるような場合、得られるハードコートフィルムの質感が粗くなってしまい、高精細なディスプレイ表面に適さないハードコートフィルムとなってしまうことがある。また、ハードコート層の平均膜厚が2μmに満たない場合、ディスプレイ表面に設けられるだけの十分な耐擦傷性を得ることができなくなってしまうことがある。一方、ハードコート層の平均膜厚が20μmを超えるような場合、製造されるハードコートフィルムのカールの度合いが大きくなってしまい、取り扱いが困難となることがある。
耐擦傷性の点では、自己修復機能をもつフィルムなどを付与することも好ましく、傷をつけてもフィルムの弾性によって自己修復することが好ましく、例えば「マジックフィルム」(サンクレスト)などが付与できる。
【0194】
抗ウイルス、抗菌性に対しては、光触媒やAg粒子を用いる手法が好ましく、光触媒は酸化チタンなどの無機粒子が好ましく、Ag粒子はナノ粒子であることがさらに好ましく、抗ウイルス性にはe(アースプラス)などのセラミックス複合材料で光分解能力をもつものが好ましく、これらの抗ウイルス、抗菌性を示すコーティングまたはフィルムは透明でない場合には表示部以外に付与することが好ましく、透明である場合には表示素子全体に付与することが好ましい。
防指紋性に対しては、脂質をはじく性質をもった化合物をフィルム添加することが好ましく、パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物などのフッ素置換あるいはパーフルオロ基をもつ化合物をフィルムに添加することが好ましい。あるいは「クリアタッチ」(日油化学)、消指紋(登録商標)Film(ツジデン)などの機能性フィルムを表示素子に付与することもできる。
【0195】
本発明の表示素子が具備する機能としては、3軸ジャイロ、加速度センサー、環境光センサー、Wi−Fi、3Gなどの携帯電話通信、デジタルコンパス、GPS機能を有することが好ましい。
本発明の表示素子を用いたタブレットPCに用いるUPUとしては、低消費電力で発熱が少なく演算回数が多い方が好ましく、シングルコア、デュアルコアが好ましく、より好ましくは、クアッドコア、8−コア、12−コア、24−コア、48−コア、96−コア、192−コアが好ましい。
【0196】
また、本発明の表示素子は、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC、モニター、計器、家庭のエアコン、テレビ、洗濯機、炊飯器、コンポ、携帯型音楽プレーヤー、家庭用太陽電池、家庭用燃料電池などの家電製品、ハイブリッド自動車、電気自動車、介護用ロボット、介護用ボディースーツ、地震、火災、水害、土砂崩れ、噴火、火砕流、土石流、ゲリラ豪雨、原子炉事故、原子炉事象などの災害時に使われるロボット、観測機器をコントロールする通信機能を有することが好ましく、通信はWi−Fi、3G、第四世代通信、第五世代通信、第六世代通信などの無線LAN、高速通信網、電話回線、インターネット、ブルートゥース、赤外線によって行うことが好ましく、スマートグリッド、スマートシティ、スマートタウンなど、火力・原子力発電などの「集中型発電」と需要地の近くに分散配置して発電を行う「分散型発電」を最新のIT技術を駆使し効率的に管理する次世代送電システムなどをコントロールする機能をもつことが好ましく、火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電、地熱発電、太陽電池発電、地熱発電、燃料電池発電、海流発電、波浪発電、圧電発電、再生可能エネルギーなどによって発電された電気と、この電気を使用して稼働する自動車、電車、工場、住宅、病院、学校、役所、照明、空調、機械、装置、家電製品などをいつでもどこでもコントロールするための情報末端として利用できることが好ましい。また、電子書籍、電子教科書、電子カルテ、電子ノートなどに利用することも好ましく、指やペン入力など押圧力が加わるタッチパネル方式であることが最も好ましい。
押圧力としては0.2mmのシャープペンシルやタブレットPC用のスタイラスタペンなどの尖った先端で表示素子の表面を1kg以下の圧力で押さえつけても表示が復元することが好ましく、人差し指や親指などで表示素子の表面を押さえつけても表示が復元することが好ましく、指の面積として4×3cm以下で2kg以下の圧力でも表示が復元することが好ましく、繰り返し耐性が1万回以上、10万回以上、10万回以上が好ましく、より好ましくは1000万回以上の耐性があることが好ましい。
【0197】
本発明の表示素子は、デスクトップパソコンや、大中小型制御装置、自動販売装置など、据え置きタイプの表示素子に用いることができるが、この他にも、デジタルサイネージ(電子看板)、Pint of purchase advertising(POP)、電子時刻表、電子掲示板、電子値札、電子黒板、計器表示などに利用することができ、表示面が片面、両面、sea-throughディスプレイでもよく、特に好ましくは指やペン入力など押圧力が加わるタッチパネル方式であることが最も好ましい。いつでもどこでも手軽に利用するためには、ノートパソコン、タブレットPC、スマートフォンや携帯電話のような形態が好ましく、特に好ましくは、指やペン入力など押圧力が加わるタッチパネル方式である表示素子が最も好ましい。
液晶表示素子はフレキシブル表示素子でもよく、その場合の電極基板は、プラスチック基板や薄膜ガラス基板等のフレキシブル基板を使用することが好ましい。電極としては、グラフェン(炭素の単原子層からなるシート)や有機半導体など、フレキシブルな電極材料を用いることが好ましい。
【0198】
有機TFTの構造は,トップコンタクト、ボトムコンタクトか好ましく、より好ましくはボトムゲート・ボトムコンタクト型が好ましく、中核となる有機半導体は、金属(Cu,Pb,Ni)フタロシアニン誘導体、金属ポルフィリン誘導体、ペンタセン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、アントラジチオフェン誘導体、ヘキサベンゾコロネン誘導体、ルブレン誘導体などの多環芳香族化合物や、テトラシアノジキメタンなどの低分子化合物、ポリアセチレンやポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリピロールなどのポリマー、ポリチオフェン誘導体、ペリレンテトラカルボキシルジイミド誘導体(PTCDI)、ペリレンテトラカルボン酸二無水物誘導体(PTCDA)、フッ素置換フタロシアニン誘導体、カーボンナノチューブ、ポリアニリン誘導体、グラフェン、ナフタレンテトラカルボニル化合物、ペリレンテトラカルボニル化合物、クアテリレンテトラカルボニル化合物、フラーレン化合物、ヘテロ5員環化合物(オリゴチオフェン、TTF類縁体)などが好ましく、より好ましくはペンタセンが好ましい。またこれらの有機半導体にはドーピングすることが可能であり、ヨウ素をドーピングしたポリピロールや、ヨウ素をドープしたポリアセチレンなどが好ましい。有機半導体化合物の特性を向上させるためには、分子の配向性を高めることが好ましく、上記の化合物に液晶性を付与した有機半導体化合物を用いることが好ましい。これらの液晶性有機半導体化合物は、低分子系、高分子系、超分子系でもよく、電子やホールを輸送するためにはカラムナー構造やレイヤー構造をもつことが好ましい。
【0199】
グラフェン材料の製造は、トップダウンでもボトムアップでもよく、トップダウンでは、スコッチテープ法、Modified Hummers法、超臨界法でもよく、ボトムアップでは、熱CVD法、SiC上グラフェン成長法でもよく、グラフェンを利用したトランジスタの作製は、剥離・転写法、CVD・転写法、SiC表面熱分解法が好ましく、低温で製造する場合には、650℃と低い温度で絶縁基板上にグラフェンをCVD形成し、グラフェントランジスタを基板全面に直接形成する技術が好ましい(富士通研究所)。単層であり,かつキャリアのモビリティの高い大面積のグラフェンシートを得るためには、薄いCuフィルム上にCVDによるグラフェン膜を作り、それを他の基板に転写する方法が好ましく、具体的には、直径8インチ以上の円筒形の石英チューブ内にCuフィルムを貼付け,その上でCVDを行い取り出し,ポリマーフィルムと密着させた後に剥がす(ロール・ツー・ロール方式)という手法が好ましい(X. Li et al., Science, 324, 1312-1314 (2010))。
【0200】
ゲート電極には金,ソースとドレイン電極には白金/金を,ゲート絶縁膜とパッシベーション膜にはポリマー材料が好ましく、パッシベーション膜を除いた全ての層を形成した後に,ペンタセン膜を蒸着によって形成することがより好ましい。有機TFTの性能向上には,ペンタセンと有機ゲート絶縁膜および電極との界面を制御することが重要であり,有機絶縁膜中にシランカップリング剤を添加して撥水性とすることによって移動度を高めたり,ソース・ドレイン電極とペンタセンの間の接触抵抗を下げるために積層構造の電極とするなどの工夫を加えることが好ましい。有機TFTをトップエミッション構造の有機ELと高精細に集積化することが表示素子として好ましい。
さらに、有機半導体を用いた表示素子の作製方法は、印刷方式(プリンタブルエレクトロニクス)が好ましく、印刷方式によって作製されたグラフェンのトランジスタを用いることが好ましい。フレキシブル表示素子に用いる印刷配線には、ナノ銀粒子、ナノ銅粒子などの金属ナノ粒子材料を用いることも好ましい。また、アモルファスシリコンを超える有機半導体を得る印刷方式としては、有機半導体を溶かしたインクと、有機半導体の結晶化を促すインクの2種類を交互に滴下する「ダブルショット」印刷法も好ましく、この場合の半導体インクには、C8−BTBT(ジオクチルベンゾチエノベンゾチオフェン)が好ましい(Nature 475, 364-367, 21 July 2011)。
【0201】
液晶表示素子は、フィールドシーケンシャル方式等の時間分割、偏光方式、視差バリア方式、インテグラルイメージング方式等のスペース分割、分光方式やアナグリフ等の波長分割、FPSモード等により、3D表示を行うことも可能である。
液晶表示素子の部品削減(コスト削減)や外部回路との接続箇所が減少することによる耐振動性や耐衝撃性を向上させるためには、SOG(System on Glass)が好ましい。ガラス基板に載せる回路としては、ICやLSIとして供給されているDACやパワーアンプ、論理回路、マイクロプロセッサ、メモリを載せたもの、液晶制御回路や電源回路、入出力インターフェイス回路、信号処理回路、パワーアンプなどを、1つのガラス基板上に載せることでシステム化した周辺回路をガラス基板上に形成したものなどが好ましい。
【実施例】
【0202】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、特に断りのない場合、「%」は「質量%」を意味する。
【0203】
(強誘電性液晶組成物の調製)
参考例1の強誘電性液晶組成物(組成物1)は、強誘電性液晶組成物LC−1(合計65%)とキラル化合物(CH−1)35%とを配合して調製した。
【0204】
実施例2の強誘電性液晶組成物(組成物2)は、強誘電性液晶組成物LC−1(合計65%)とキラル化合物(CH−2)35%とを配合して調製した。
参考例3の強誘電性液晶組成物(組成物3)は、強誘電性液晶組成物LC−1(合計65%)とキラル化合物(CH−3)35%とを配合して調製した。
実施例4の強誘電性液晶組成物(組成物4)は、強誘電性液晶組成物LC−1(合計65%)とキラル化合物(CH−4)10%とキラル化合物(CH−5)15%とキラル化合物(CH−6)10%を配合して調製した。
【0205】
【化59】
【0206】
【化60】



【0207】
比較例1の強誘電性液晶組成物(組成物5)は、強誘電性液晶組成物LC−2(合計65%)とキラル化合物(CH−1)35%とを配合して調製した。
比較例2の強誘電性液晶組成物(組成物6)は、強誘電性液晶組成物LC−2(合計65%)とキラル化合物(CH−2)35%とを配合して調製した。
比較例3の強誘電性液晶組成物(組成物7)は、強誘電性液晶組成物LC−2(合計65%)とキラル化合物(CH−3)35%とを配合して調製した。
【0208】
【化61】
【0209】
なお、LC−1、LC−2、CH−1及びCH−2の式中で、C13、C17、及びC19は、いずれも直鎖状のアルキル基を表す。
【0210】
参考例5の強誘電性液晶組成物(組成物1M)は、実施例1記載の強誘電性液晶組成物(合計94部)と下記モノマー混合物(合計6.12部)とを配合して調製した。
実施例6の強誘電性液晶組成物(組成物2M)は、実施例2記載の強誘電性液晶組成物(合計94部)と下記モノマー混合物(合計6.12部)とを配合して調製した。
参考例7の強誘電性液晶組成物(組成物3M)は、実施例3記載の強誘電性液晶組成物(合計94部)と下記モノマー混合物(合計6.12部)とを配合して調製した。
実施例8の強誘電性液晶組成物(組成物4M)は、実施例4記載の強誘電性液晶組成物(合計94部)と下記モノマー混合物(合計6.12部)とを配合して調製した。
【0211】
【化62】
【0212】
比較例4の強誘電性液晶組成物(組成物5M)は、比較例1記載の強誘電性液晶組成物(合計94部)と上記モノマー混合物(合計6.12部)とを配合して調製した。
比較例5の強誘電性液晶組成物(組成物6M)は、比較例2記載の強誘電性液晶組成物(合計94部)と上記モノマー混合物(合計6.12部)とを配合して調製した。
比較例6の強誘電性液晶組成物(組成物7M)は、比較例3記載の強誘電性液晶組成物(合計94部)と上記モノマー混合物(合計6.12部)とを配合して調製した。
【0213】
(液晶表示素子の作製)
垂直配向のポリイミドを配向膜とする液晶セルに、加熱による毛細管現象を利用して、参考例1、3、実施例2、4又は比較例1〜3記載の強誘電性液晶組成物を注入し、注入後は液晶セルを封止した。垂直配向の液晶セルとしては、S−0088−4−N−W(サントレーディング,セルギャップ4μm)を用いた。
【0214】
(高分子安定化表示素子の作製方法)
参考例5、7、実施例6、8又は比較例4〜6記載の強誘電性液晶組成物を用いて、上記液晶表示素子の製造方法と同様にして液晶表示素子を作製した後、セルサンプル表面の照射強度が5mW/cmとなるように調整されたメタルハライドランプを300秒間照射して、高分子安定化強誘電性液晶組成物の重合性化合物を重合させて高分子分安定化液晶表示素子を得た。紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介して、石英ガラスの光ファイバーで顕微鏡ステージに設置してある液晶セルに紫外線を導いて露光した。
【0215】
(レイヤーノーマルの確認方法)
レイヤーノーマルの角度は、液晶セルのリタデーションの入射角依存性を測定することで決定した。具体的には、T.J. Scheffer and J Nehringによる文献(“Accurate determination of liquid-crystal tilt bias angles”、J. Appl. Phys., Vol. 48, No.5, May 1977, p1783-1792)中の式(3)である下記式
【0216】
【数1】
【0217】
(ただし、a=1/n、b=1/n、c=acosα+bsinα)で表されるように、リタデーションの入射角(ψ)依存性が極値(ψでの微分がゼロ)を示すところで、レイヤーノーマルの角度となる値αをカーブフィッティングによって求めた。ただし、異常光線の屈折率n及び常光線の屈折率nは、チルト角を考慮した。
リタデーションの測定には、液晶特性評価装置OMS−DI4RD(中央精機)を用いた。
【0218】
(耐圧力配向性)
2枚の偏光板を直交ニコルにし、その間に設置した液晶セルに直径0.5mm×200mmのプラスチック棒(断面積は約0.2mm)を押し当て、3N/cm(1cmあたり300g、0.2mmあたり6g)の圧力を3秒間加えた。3秒後に圧力を解放し、配向の復元性を目視で確認した。配向が乱れるもの(×)は白く光が漏れ、配向が復元するもの(◎)は暗視野となることから判定した。
【0219】
【表1】



【0220】
以上の結果を表1に示す。実施例1〜8によれば、圧力の解放後、速やかに配向が復元し、暗視野に戻った。比較例1〜6の場合は、圧力の解放後も白く光が漏れた。これは、電圧を印加していないにもかかわらず、配向の乱れにより光が散乱し、直交ニコルにした偏光板を透過する光量が生じるためである。したがって、本発明によれば耐圧力配向性の優れる強誘電性液晶組成物が得られることを確認することができた。