【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 刊行物名 IDW’08 Proceedings of The 15th International Display Workshops 発行日 2008年12月3日 発行所 The Institute of Image Information and Television Engineers (ITE)、The Society for Information Display (SID)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合性液晶組成物が、少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物、及び、1つの重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物を含有する請求項1又は2記載の光学異方体。
前記重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物が、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する円盤状液晶化合物を2種類以上含有することを特徴とする請求項1記載の光学異方体。
少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する円盤状液晶化合物がベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体又はシクロヘキサン誘導体を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基、直鎖のアルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基がその側鎖として放射状に置換した構造であることを特徴とする請求項9記載の光学異方体。
前記重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物が、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有するバナナ型液晶化合物を2種類以上含有することを特徴とする請求項1記載の光学異方体。
少なくとも有機材料からなる基材、光配向膜、前記基材を溶解させる溶剤を含有する重合性液晶組成物を塗布乾燥した後に重合してなる重合した液晶層が順次積層され、さらに光配向膜、前記基材を溶解させる溶剤を含有する重合性液晶組成物を塗布乾燥した後に重合してなる重合した液晶層が順次された請求項1〜16のいずれか一項に記載の光学異方体。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光学異方体は、少なくとも、有機材料からなる基材、光配向膜、及び少なくとも1種以上の重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物の重合膜が順次積層されてなる光学異方体である。
(有機材料からなる基材)
本発明で使用する基材は、光学異方体に通常使用する基材であって、光学異方体製造時における加熱に耐えうる耐熱性を有する有機材料であれば、特に制限はない。そのような基材としては、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン、ポリスチレン等を使用することができる。中でもポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネートが好ましい。
【0012】
また、本発明で用いる基材を得るために表面処理を行うことが好ましく、得られた基材のぬれ張力は、前記基材上に積層される光配向膜に用いられる光配向膜用組成物の表面張力より大きいことが、さらに好ましく、具体的なぬれ張力は40〜65mN/mであることが好ましい。なお、本発明で用いるぬれ張力は、JIS K6768(プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験)で定義される。
【0013】
また、上記基材の表面処理の方法としては、簡便で、且つ、乾式であるコロナ処理、プラズマ処理、UV処理、オゾン処理などが挙げられる。
コロナ処理は、コロナ放電により高エネルギーの電子やイオンが基材表面に衝突してラジカルやイオンを生成させる。これらに周囲のオゾン、酸素、窒素、水分などが反応して、基材表面にカルボニル基、カルボキシル基、ヒロドキシル基、などの極性官能基が導入される。プラズマ処理の場合は、コロナ放電ではなく、アーク放電によって基材表面に極性官能基が導入される。UV処理は、紫外線により基材表面の分子を励起させ、光反応や光分解がおこることによって、基材表面が変質する。オゾン処理の場合、通常短波長の紫外線によりオゾンを発生させ、コロナ処理と同様に極性官能基が基材表面に導入される。
【0014】
UV処理は、一般的には254nmや313nmの紫外線が用いられ、光源には高圧水銀ランプや超高圧水銀ランプなどが用いられる。240nm以下の紫外線が用いられと、酸素が分解され、オゾンが発生する。前記の場合、光源には低圧水銀ランプやキセノンエキシマランプなどが用いられる。
これらの処理は相互に組み合わせて使用しても良いが、UV処理とオゾン処理を組み合わせた処理を行うことが好ましい。
【0015】
本発明の光学異方体は有機材料からなる基材、光配向膜、及び少なくとも1種以上の重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物の重合膜が順次積層されてなるが、前記重合膜と比較して光配向膜が非常に薄いため、基材の表面状態が前記重合膜にまで影響を及ぼしたと考えられる。
【0016】
上記基材の表面処理を行う際に、基材を放電部や紫外線発生部に近づけすぎると、表面処理のみでなく、基材内部の有機材料の分解まで起こることがありうるので、一定の距離を置いて処理を行うことが一般的である。距離は、各々の装置の性能に大きく左右されるため、用いる処理装置に合わせる必要がある。
表面処理を行い得られた基材のぬれ張力の測定方法は、接触角測定法、ぬれ試薬法、プレート法、リング法等が挙げられるが、JIS K6768で定められているぬれ試薬法が、非常に簡便であり、好ましい。
【0017】
(光配向膜)
本発明に用いられる光配向膜は、公知慣用の光配向性の化合物を用いることができ、具体的には、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等、光異性化、もしくは、光二量化する化合物が挙げられるが、特にアゾ化合物が好ましい。
【0018】
(重合性液晶化合物)
本発明の光学異方体を構成する重合性液晶組成物は、少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物を2種類以上含有する重合性液晶組成物、少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物、及び、1つの重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する円盤状液晶化合物を2種類以上含有する重合性液晶組成物、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有するバナナ型液晶化合物を2種類以上含有する重合性液晶組成物が好ましい。
本発明で用いる重合性液晶組成物中に含有する重合性液晶化合物については、特に制限はなく使用することができる。重合性液晶化合物として棒状重合性液晶化合物又は円盤状重合性液晶化合物を使用することが好ましく、棒状重合性液晶化合物が特に好ましい。
棒状重合性液晶化合物は、一般式(1)
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1〜20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、R
1は、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜25のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良く、あるいはR
1は一般式(1-a)
【0021】
【化2】
(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1〜20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表す。)で表される構造を表す。)で表される化合物を含有することが好ましく、一般式(1)において、Spがアルキレン基を表し、(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良い。)MGが一般式(1-b)
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基又はフルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH
2 CH
2-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COO CH
2CH
2-、-OCOCH
2CH
2-、-CONH-、-NHCO-又は単結合を表し、nは0、1又は2を表す。)で表される構造を表し、Pが一般式(1-c)、一般式(1-d)及び一般式(1-e)
【0024】
【化4】
【0025】
(式中、R
21、R
22、R
23、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42及びR
43はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基で表される化合物を含有することがさらに好ましい。
ここで、重合性液晶組成物に含有される化合物として、より具体的には一般式(2)
【0026】
【化5】
【0027】
(式中、mは0又は1を表し、W
1及びW
2はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立的に-COO-又は-OCO-を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物を用いると、機械的強度や耐熱性に優れた光学異方体が得られるので好ましい。
又、一般式(3)
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、Z
1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Z
2は水素原子又はメチル基を表し、tは0又は1を表し、A、B及びCはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y
3及びY
4はそれぞれ独立的に単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH
2)
4-、-CH
2CH
2CH
2O-、-OCH
2CH
2CH
2-、-CH=CHCH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COO CH
2CH
2-又は-OCOCH
2CH
2-を表し、Y
5は単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表す。)で表される化合物を用いると、重合性液晶組成物の粘度低減や液晶温度範囲を室温もしくは室温付近まで低減することができるので好ましい。
又、一般式(4)
【0030】
【化7】
【0031】
(式中、Z
3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子1〜20の炭化水素基を表し、Z
4は水素原子又はメチル基を表し、W
3はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-、-OCO-を表し、vは2〜18の整数を表し、uは0又は1の整数を表し、D、E及びFはそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表し、これらのD、E及びFは、さらに炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y
6及びY
7はそれぞれ独立的に単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH
2)
4-、-CH
2CH
2CH
2O-、-OCH
2CH
2CH
2-、-CH=CHCH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COOCH
2CH
2-又は-OCOCH
2CH
2-を表し、Y
8は単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表す。)で表される化合物を用いると、重合性液晶組成物の粘度を大幅に増加させることなく液晶物性を調節することができるので好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に挙げることができる。
【0032】
【化8】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す。)
又、一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に挙げることができる。
【0033】
【化9】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す。)
又、一般式(3)で表される化合物の具体的な例として、化合物の構造と相転移温度を以下に挙げることができる。
【0034】
【化10】
【0035】
【化11】
【0036】
【化12】
【0037】
(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、数字は相転移温度を表し、Cは結晶相、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体相をそれぞれ表す。)
又、一般式(4)で表される化合物の具体例を以下に挙げることができる。
【0038】
【化13】
【0039】
(式中、X
1は水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数1から20のアルキル基表す。)
また、本発明に用いられる重合性基を有する円盤状液晶化合物は、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体又はシクロヘキサン誘導体を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基、直鎖のアルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基がその側鎖として放射状に置換した構造を有することが好ましく、一般式(5)
【0040】
【化14】
(式中、R
5はそれぞれ独立して一般式(5-a)で表される置換基を表す。)
【0041】
【化15】
【0042】
(式中、R
6及びR
7はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R
8は炭素原子数1〜20アルコキシ基を表すが、該アルコキシ基中の水素原子は一般式(5-b)、一般式(5-c)又は一般式(5-d)で表される置換基によって置換されていても良い。)
【0043】
【化16】
【0044】
(式中、R
81、R
82、R
83、R
84、R
85、R
86、R
87、R
88及びR
89はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される構造を有することがさらに好ましく、一般式(5)においてR
8の内少なくとも一つは一般式(5-b)、一般式(5-c)又は一般式(5-d)で表される置換基によって置換されたアルコキシ基を表すことが好ましく、R
8の全てが一般式(5-b)、一般式(5-c)又は一般式(5-d)で表される置換基によって置換されたアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
さらに、一般式(5-a)は具体的には一般式(5-e)
【0045】
【化17】
(式中nは2〜9の整数を表す。)で表される構造を有することが特に好ましい。
また、本発明で用いられる重合性基を有するバナナ型液晶化合物は、一般式(6)
【0046】
【化18】
【0047】
(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1〜20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表し、MG
1、MG
2はメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、BAは化合物に屈曲構造を付与する二価環状基であり、R
9は、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜25のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良く、あるいはR
9は一般式(6-a)
【0048】
【化19】
【0049】
(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1〜20のスペーサー基を表し、nは0又は1を表す。)で表される構造を表す。)で表される化合物を含有することが好ましく、一般式(6)において、Spがアルキレン基を表し、(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良い。)MG1、MG2がそれぞれ一般式(6-b)
【0050】
【化20】
【0051】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基又はフルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH
2 CH
2-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COO CH
2CH
2-、-OCOCH
2CH
2-、-CONH-、-NHCO-又は単結合を表し、lは0、1又は2を表す。)で表される構造を表し、Pが一般式(6-c)、一般式(6-d)及び一般式(6-e)
【0052】
【化21】
(式中、R
91、R
92、R
93、R
94、R
95、R
96、R
97、R
98及びR
99はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基で表される化合物を含有することが好ましい。
【0053】
(重合開始剤)
本発明の重合性液晶組成物を重合させるには、一般には紫外線等の光照射あるいは加熱により行う。光照射によって行う場合に使用する光重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア907」)。ベンジルメチルケタ−ル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)。2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ−ドプレキンソップ社製「カンタキュア−ITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)、などが挙げられる。光重合開始剤の使用量は重合性液晶化合物に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0054】
また、熱重合の際に使用する熱重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、例えば、メチルアセトアセテイトパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカーボネイト、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパ−オキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、p−ペンタハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネイト、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル化合物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオン−アミジン)ジハイドロクロライド等のアゾアミジン化合物、2,2’アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、2,2’アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアルキルアゾ化合物等を使用することができる。熱重合開始剤の使用量は重合性液晶化合物に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0055】
(溶剤)
本発明に用いられる溶剤は、有機材料からなる基材の一部を溶解することができる溶剤であれば使用する溶剤としては特に限定はないが、重合性液晶化合物が良好な溶解性を示す溶媒が使用できる。例えば、トルエン、キシレン、クメン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
溶剤の比率は、本発明に用いられる重合性液晶組成物が通常塗布により行われることから、塗布した状態を著しく損なわない限りは特に制限はないが、重合性液晶組成物の固形分と溶剤の比率が0.1:99.9〜80:20が好ましく、塗布性を考慮すると、1:99〜50:50がさらに好ましい。
【0056】
(その他成分)
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有していない液晶化合物を必要に応じて添加してもよい。しかし、添加量が多すぎると、得られた光学異方体から液晶化合物が溶出して積層部材を汚染する恐れがあり、加えて光学異方体の耐熱性が下がるおそれがあるので、添加する場合は、重合性液晶化合物全量に対して30質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0057】
本発明で使用する重合性液晶組成物は、重合性基を有するが重合性液晶化合物ではない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0058】
本発明で使用する重合性液晶組成物は、光学活性を有する化合物、すなわちキラル化合物を添加してもよい。該キラル化合物は、それ自体が液晶相を示す必要は無く、また、重合性基を有していても、有していなくても良い。また、キラル化合物の螺旋の向きは、重合体の使用用途によって適宜選択することができる。
具体的には、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社製の「CB−15」、「C−15」、メルク社製の「S−1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」、キラル基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、チッソ社製の「CM−21」、「CM−22」などを挙げることができる。また、重合性基を有するキラル化合物を用いることもできる。
【0059】
キラル化合物を添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物の重合体の用途によるが、得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量を添加することが好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
本発明で使用する重合性液晶組成物を均一に塗布し、膜厚の均一な光配向膜を得るために、汎用の添加剤を使用することもできる。例えば、レベリング剤、チキソ剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、表面処理剤、等の添加剤を液晶の配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
【0060】
(光配向膜)
本発明に用いられる光配向膜は、公知慣用の光配向性の化合物を用いることができ、具体的には、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等、光異性化、もしくは、光二量化する化合物が挙げられるが、特にアゾ化合物が好ましい。
アゾ化合物としては、より具体的には、一般式(7)で表されるアゾ化合物を含有する。
【0061】
【化22】
【0062】
一般式(7)中、R
1及びR
2は、各々独立して、ヒドロキシ基、又は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基及びマレイミド基からなる群から選ばれる重合性官能基を表す。R
1及びR
2は、ヒドロキシ基を表すことが好ましいが、光や熱に対する安定性を重視する場合は、R
1及びR
2が重合性官能基を表すことが好ましく、重合性官能基の中では、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。またマレイミド基は、重合開始剤が不要となるのでより好ましい。
【0063】
m及びnは各々独立して0〜4の整数を表すが、R
1がヒドロキシ基を表す場合mは0を表すことが好ましく、R
2がヒドロキシ基を表す場合nは0を表すことが好ましい。一方、R
1が重合性官能基の場合、mは1〜4の整数を表すことが好ましく、R
2が重合性官能基の場合nは1〜4の整数を表すことが好ましい。
【0064】
A
1及びA
2は各々独立して単結合、又は二価の炭化水素基を表すが、二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基の如き炭素数1〜18の直鎖状アルキレン基;1−メチルエチレン基、1−メチルトリエチレン基、2-メチルトリエチレン基、1-メチルテトラエチレン基、2−メチルテトラエチレン基、1−メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基の如き炭素数1〜18の分枝状アルキレン基;p−フェニレン基の如きフェニレン基;2−メトキシ−1,4−フェニレン基、3−メトキシ-1,4−フェニレン基、2−エトキシ−1,4−フェニレン基、3−エトキシ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリメトキシ−1,4−フェニレン基の如き炭素数1〜18の直鎖状又は分枝上アルコキシ基を有するフェニレン基;2,6−ナフタレンジイル基の如きアリーレン基が挙げられる。
【0065】
R
3〜R
6は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アリルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基若しくはそのアルカリ金属塩、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化メトキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基又は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニル基、ビニルオキシ基及びマレイミド基からなる群から選ばれる重合性官能基を表す。
【0066】
ハロゲン原子としては、フッ素原子や塩素原子が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、トリクロロメチル基やトリフルオロメチル基が挙げられる。ハロゲン化メトキシ基としては、クロロメトキシ基やトリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0067】
アルコキシ基としては、アルキル基部分が、炭素原子数1〜6の低級アルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基又は炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6の低級アルキル基が挙げられる。また、炭素原子数1〜6の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルエチル基等が挙げられる。炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6の低級アルキル基としては、メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0068】
ヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数1〜4のヒドロキシアルキル基が挙げられ、具体的にはヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、アルキル基部分が炭素原子数1〜6のものが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルエチル基等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシメチル基、カルバモイル基、ジメチルカルバモイル基又はシアノ基が好ましく、カルボキシ基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基は良好な配向性が得られる点で特に好ましい。
【0070】
また、R
3及びR
4は、4,4‘−ビス(フェニルアゾ)ビフェニル骨格の両端のフェニレン基のメタ位に置換していると、優れた光配向膜が得られ、R
5及びR
6は、4,4’−ビス(フェニルアゾ)ビフェニル骨格の2、2’位に置換していると、優れた光配向性が得られ、特に好ましい。
一般式(7)で表されるアゾ化合物は、具体的には下記構造のアゾ化合物が好ましい。
【0071】
【化23】
【0072】
一般式(7)で表される化合物は、水あるいは極性有機溶媒に高い溶解性を示し、基材に塗布した後、水あるいは極性有機溶媒を除去するだけで、基材上に一様で、かつ安定な光配向膜を形成することができる。また、一般式(7)で表される化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上の化合物を混合して使用することもできる。
(親水性基を有する(メタ)アクリレート)
本発明で使用する親水性基を有する(メタ)アクリレートの親水性基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基等が挙げられるが、水酸基あるいはカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートが、一般式(1)で表される化合物との混和性の面から好ましい。1分子あたりの(メタ)アクリロイル基の数には特に制限はなく、1つでも2つ以上でも良い。
【0073】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、水酸基を2つ以上有するものが親水性が高く特に好ましい。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレートなどの1価のエポキシ(メタ)アクリレート;プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールAなどの2価のアルコールのジグリシジルエーテル;トリメチロールプロパン、エトキシ化トリメチロールプロパン、プロポキシ化トリメチロールプロパン、グリセリンなど、3価アルコールのトリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を付加せしめて得られるエポキシアクリレート化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート及びジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられ、エポキシ樹脂とカルボン酸から誘導されるものとして、グリシジル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル酸付加物、
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス2―ヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどの、ヒドロキシル残基を有するアルコール性ジ(メタ)アクリレート、
【0074】
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレートなどの、ヒドロキシル残基を有するアルコール性多官能(メタ)アクリレート、
【0075】
少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を付加させて得られた(メタ)アクリレート、芳香族エポキシアクリレートの水添タイプの脂環式エポキシアクリレート等が挙げられる。尚、ここでいう多価フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物又はビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加体、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を用いることができる。
【0076】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートは、カルボキシル基の親水性が十分高いため1分子あたりのカルボキシル基の数に特に制限はなく、1つでも2つ以上でも良い。しかしカルボキシル基の数が増えていくと溶剤に対する溶解性が悪くなり、化合物の結晶性も高くなるので、接着部材あるいは溶剤に対する耐性が悪化しない範囲でカルボキシル基の数は少ないものが好ましい。特に芳香環に直結したカルボキシル基を持つ化合物の場合には1分子あたりのカルボキシル基の数は2以下が特に好ましい。
【0077】
具体的には、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−メタクリロイルオキシエチルフタレート、EO変性琥珀酸アクリレート等、カルボキシ基及び一分子中に少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トの如き水酸基含有ビニル単量体に、無水フタル酸等の酸無水物を付加させて得られる化合物、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたアルキル(オキシ)基で置換された安息香酸誘導体が挙げられる。置換基の数は1つでもそれ以上でも良いが、置換基の数は1〜3であることが合成の容易さの面から好ましい。また、複数の置換基を導入する場合には、置換する位置として分子の対称性を低くするような位置を選択することが、結晶性を高くしすぎないという面で好ましい。具体的には、2−(ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、2,3−ジ(ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、2,4−ジ(ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、2,5−ジ(ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、3−(ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、3,4−ジ(ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、4−(ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸で、アルキル鎖のメチレン基の数が1〜14のものが挙げられる。特にメチレン基の数が2〜10のものがさらに好ましい。
【0078】
カルボキシ基及び一分子中に少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性化合物の市販品としては、例えば共栄社油脂化学工業社製の商品名「ライトアクリレートHOAHH」、「ライトアクリレートHOHH」、「ライトアクリレートHOMPL」、「ライトアクリレートHOMPP」、「ライトアクリレートHOA−MS」などが挙げられる。
【0079】
前記親水性基を有する(メタ)アクリレートは1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
また、前記親水性基を有する(メタ)アクリレートは親水性が高いため、一般式(1)で表されるアゾ化合物との相溶性は良好であるが、まれに結晶化が生じる組み合わせがある。その場合、平滑な塗膜が得られないため配向規制力に影響が生じるおそれがあるので、配合した状態で結晶性が著しく高くならないような前記親水性基を有する(メタ)アクリレートと一般式(1)で表されるアゾ化合物との組み合わせが好ましい。結晶化の有無は、例えば、光学的観察や分光分析、散乱実験等により判断が可能である。
【0080】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物と親水性基を有する(メタ)アクリレートとの配合比は特に限定はないが、該アゾ化合物の添加量があまりに少なすぎると十分な配向規制力が得られない可能性があり、親水性基を有する(メタ)アクリレートの添加量があまりに少なすぎると接着部剤あるいは溶剤に対する耐性が十分得られない可能性があるので、通常は前記一般式(1)で表されるアゾ化合物:親水性基を有する(メタ)アクリレートが90:10〜5:95となるように配合するのが好ましく、70:30〜10:90となるように配合するのがさらに好ましく、60:40〜10:90となるように配合するのが特に好ましい。また、前記理由と同様に、配合した状態で結晶性が著しく高くならないような前記一般式(1)で表されるアゾ化合物と親水性基を有する(メタ)アクリレートの配合比にするのが好ましい。
【0081】
(光学異方体)
本発明の光学異方体は、少なくとも、有機材料からなる基材、光配向膜、及び少なくとも1種以上の重合性液晶化合物及び溶剤を含有する重合性液晶組成物の重合体を順次積層した光学異方体であって、前記溶剤が前記基材の一部を溶解させることができることを特徴とする光学異方体である。
以下に本発明をより具体的に説明する。
【0082】
(塗布)
塗布法としては、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング等、公知慣用の方法を行うことができる。通常は、有機溶剤で希釈した溶液を塗布するので、塗布後は乾燥させ、光配向膜用塗膜を得る。
【0083】
(光配向膜の光配向工程)
前記方法により得た塗膜に、異方性を有する光を照射(以下、光異性化工程と略す)して、光配向膜用組成物からなる層に光照射して本発明の基板を作成する。光異方性化工程で使用する、異方性を有する光としては、直線偏光や楕円偏光等の偏光、もしくは基材面に対して斜めの方向から非偏光があげられる。偏光は直線偏光、楕円偏光のいずれでも良いが、効率よく光配向を行うためには、消光比の高い直線偏光を使用することが好ましい。
また、光照射装置において偏光を得るためには偏光フィルタ等を使用する必要があるので、膜面に照射される光強度が減少するといった欠点があるが、膜面に対して斜め方向から非偏光を照射する方法では、照射装置に偏光フィルタ等を必要とせず、大きな照射強度が得られ、光配向のための照射時間を短縮することができるという利点がある。このときの非偏光の入射角は基材法線に対して10°〜80°の範囲が好ましく、照射面における照射エネルギ−の均一性、得られるプレチルト角、配向効率等を考慮すると、20°〜60°の範囲が更に好ましく、45°が最も好ましい。
【0084】
照射する光は、使用する化合物の光配向性基が吸収を有する波長領域の光であれば良い。例えば光配向性基がアゾベンゼン構造を有する場合は、アゾベンゼンのπ→π
*遷移による強い吸収がある、波長330〜500nmの範囲の紫外線が特に好ましい。
照射光の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レ−ザ−等が挙げられる。本発明においては光配向性基がアゾベンゼン構造であるので、365nmの紫外線の発光強度が特に大きい超高圧水銀ランプを有効に使用することができる。
前記光源からの光を偏光フィルタやグラントムソン、グランテ−ラ−等の偏光プリズムを通すことで紫外可視光の直線偏光を得ることができる。
【0085】
また、偏光、非偏光のいずれを使用する場合でも、照射する光は、ほぼ平行光であることが特に好ましい。
また、偏光を照射する際に、フォトマスクを使用すれば、光配向膜にパターン状に2以上の異なった方向に液晶配向能を生じさせることができる。具体的には、本発明の光配向膜用組成物を塗布乾燥した後に、基材にフォトマスクを被せて全面に偏光もしくは非偏光を照射し、パターン状に露光部分に液晶配向能を与える。必要に応じてこれを複数回繰り返すことで、複数方向に液晶配向能を生じさせることができる。さらにフォトマスクが350nm以下の短波長を吸収する場合には、照射された350nmを超える紫外可視光のみが光配向膜に吸収されるため、短波長由来の副反応を低減することができ、より好ましい液晶配向能を生じさせることができる。
【0086】
(光配向膜の重合工程)
本発明の基材上に接触している配向膜が光異性化反応を経由して異方性を有する配向膜となる場合であって予め重合させる場合は、光異方性化工程後、重合させる。この場合は、後述の光重合開始剤を添加しておくことが好ましい。重合方法は光照射又は熱でよいが、光照射で行う場合は、光異性化工程で得られた配向状態を乱さないようにする。例えば、アゾ化合物の場合には、アゾベンゼン骨格が持つ吸収帯以外の波長で行われることが好ましいとされる。このような光は、具体的には320nm以下の紫外光であるが、320nm以下の紫外光により光配向膜及び重合性液晶組成物が分解などを引き起こす場合は、320nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。
【0087】
320nm以上の紫外光によって、既に得られたアゾベンゼン骨格の配向が乱されないようにするためには、通常は、アゾベンゼン骨格が有する光の吸収帯とは異なる光吸収波長帯域を持つ光重合開始剤を使用するのが好ましい。また、通常の光重合開始剤の吸収帯よりも長波長の光を吸収し、重合開始剤へのエネルギー移動を起こすことによって重合反応を誘起する化合物を混合しても良い。これらにより、光配向操作で固定されている光配向膜用組成物の配向状態を乱さずに、重合させることができる。一方、重合のための光を光配向操作と同じ方向から照射する場合や、アゾベンゼン骨格の吸収遷移モーメントと直交する偏波面を有する偏光照射を行えば、得られた配向状態を乱す恐れがないので、任意の波長を使用することができる。
【0088】
例えば、光配向材料に光重合開始剤を添加しておき光配向材料を配向させるような光を照射すると、光配向と光重合を同時に行うことができる。また、光配向を重合阻害をおこすような雰囲気、例えば空気中で行うことにより、光配向のみ行い、その後、雰囲気を重合阻害を及ぼさない、例えば、窒素中に変更することにより、光重合を開始させることもできる。この場合は、光配向の時の照射量を調整し、重合阻害の雰囲気で光配向を行っているうちに、すべての光重合開始剤を消費しないようにすることが好ましい。
一方、熱による重合の場合は、80〜250℃で行うのが好ましく、80〜160が好ましい。この場合は、熱重合開始剤を添加しておくのが好ましい。
本発明で使用する光重合開始剤は公知慣用のものが使用できる。
【0089】
320nm以下の紫外光で使用できる光重合開始剤としては1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)などが挙げられる。
【0090】
また、アゾベンゼン骨格が有する光の吸収帯とは異なる光吸収波長帯域を持つ光重合開始剤としては、例えば、特許第3016606号に記載の近赤外線吸収色素と有機ホウ素を組み合わせたもの等が挙げられる。
【0091】
その他の光重合開始剤としては、例えば、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア907」)。ベンジルメチルケタ−ル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)。2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ−ドプレキンソップ社製「カンタキュア−ITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)、などが挙げられる。光重合開始剤の使用量は添加剤に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0092】
また、熱重合の際に使用する熱重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、例えば、メチルアセトアセテイトパ−オキサイド、キュメンハイドロパ−オキサイド、ベンゾイルパ−オキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ−ボネイト、t−ブチルパ−オキシベンゾエイト、メチルエチルケトンパ−オキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパ−オキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、p−ペンタハイドロパ−オキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、ジクミルパ−オキサイド、イソブチルパ−オキサイド、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パ−オキシジカ−ボネイト、1,1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル化合物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオン−アミジン)ジハイドロクロライド等のアゾアミジン化合物、2,2’アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、2,2’アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアルキルアゾ化合物等を使用することができる。熱重合開始剤の使用量は添加剤に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0093】
(重合性液晶組成物の重合工程)
本発明の重合性液晶組成物の重合操作については、重合性液晶組成物中の溶剤を加熱等で除去した後、一般に紫外線等の光照射あるいは加熱によって行われる。重合を光照射で行う場合は、具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により光配向膜及び重合性液晶組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。
この光は、既に得られた光配向性基の配向を乱さないために、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。
【0094】
一方、加熱による重合は、重合性液晶組成物が液晶相を示す温度又はそれより低温で行うことが好ましく、特に加熱によりラジカルを放出する熱重合開始剤を使用する場合にはその開裂温度が上記の温度域内にあるものを使用することが好ましい。また該熱重合開始剤と光重合開始剤とを併用する場合には上記の温度域の制限と共に光配向膜と重合性液晶膜の両層の重合速度が大きく異なることの無い様に重合温度と各々の開始剤を選択することが好ましい。加熱温度は、重合性液晶組成物の液晶相から等方相への転移温度にもよるが、熱による不均質な重合が誘起されてしまう温度よりも低い温度で行うことが好ましい。ただし、有機材料からなる基材のガラス転移点を越えると基材の熱変形が著しくなるので、室温〜基材のガラス転移点が好ましい。また例えば、重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合は、90℃よりも低い温度で行うことが好ましい。
【0095】
得られた光学異方体の耐溶剤特性や耐熱性の安定化のために、光学異方体を加熱処理することもできる。この場合、前期重合性液晶膜のガラス転移点以上で加熱することが好ましい。通常は、有機材料からなる基材のガラス転移点を越えない範囲での加熱が好ましい。
【0096】
本発明の光学異方体を、例えば、偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、本発明で使用する重合性液晶組成物にはその目的に応じて、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、などを添加してもよい。
【0097】
本発明の光学異方体は、基板から剥離して単体で光学異方体として使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。特に、他の部材を汚染し難いので、被積層基板として使用したり、他の基板に貼り合わせて使用したりするときに有用である。場合によっては、光学異方体を数層にわたり積層することもできる。その場合は前記工程を複数繰り返せばよく、光学異方体の積層体を形成することができる。