(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1腹側係合部と第2背側係合部との端部は、前記帯状体の周方向に対し時計方向に30〜60度傾斜して固着され、第2腹側係合部と第1背側係合部との端部は、前記帯状体の周方向に対し反時計方向に30〜60度傾斜して固着されている請求項1記載のウエストバンド。
150%伸張時において、前記帯状体のウエスト部に付設された伸縮部材の伸縮応力は、10〜35gであり、腰下部に付設された伸縮部材の伸縮応力は、4〜15gである請求項1または2記載のウエストバンド。
前記帯状体の端部外面および周方向の中央部外面に認識可能な目印が付され、前記帯状体環状にした場合に、腹側中央部および背側中央部にそれぞれ目印を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウエストバンド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載されたウエストバンドは着用者の側部で接合するため、硬直のために関節の自由が利かず体位変換が容易でない着用者に吸収性本体の交換をする場合、着用者の体位変換をする必要がないため介護補助者の負担を軽減する利点がある。
【0008】
特許文献3,4に記載されたウエストバンドは関節の自由が利き体位変換が行える着用者が使用する場合、ウエストバンドに脚を通してウエスト部に固定し、吸収性本体をウエストバンドに容易に固定できるため着用者および介護補助者の負担を軽減する利点がある。
【0009】
しかし、いずれの着用者であっても吸収性本体の交換には羞恥心があり、強い羞恥心を感じた場合、着用者は吸収性本体の交換を嫌がり、介護補助者に暴力を振る等のいわゆる介護抵抗に至る恐れがあることから、着用者の背側から吸収性本体の交換を行なうことができるウエストバンドが希求されている。
【0010】
そこで、本発明の主たる課題は、着用者の背側から容易に吸収性本体の交換を行なうことができるウエストバンドを提供することにあり、次なる課題は、使用時に装着位置にズレを発生しないウエストバンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
着用者に吸収性本体を装着するウエストバンドであって、
帯状の不織布と、前記不織布の周方向に沿って伸張状態に付設された伸縮部材とを有する帯状体と、
前記帯状体の周方向の一方の端部に付設されたメカニカルファスナーのフック材と、前記帯状体の周方向の他方の端部に前記フック材と係合可能な係合部とを有し、
着用者の右側腸骨に対向する前記帯状体の部位に、前記吸収性本体の腹側面に係合する第1腹側係合部と、前記吸収性本体の背側面に係合する第1背側係合部とを有し、
着用者の左側腸骨に対向する前記帯状体の部位に、前記吸収性本体の腹側面に係合する第2腹側係合部と、前記吸収性本体の背側面に係合する第2背側係合部とを有し、
前記第1,2腹側係合部および前記第1,2背側係合部の内面には、それぞれ前記吸収性本体の外面に係合可能なメカニカルファスナーのフック材が付設され、
前記第1,2腹側係合部および前記第1,2背側係合部は、それぞれ前記帯状体の縦方向に対し傾斜して付設され、前記帯状体の腰下部開口縁を超えて延在し
、
前記第1,2腹側係合部と前記帯状体との固着部が、着用者の腸骨に対向する部位に形成され、前記固着部の形状が腸骨の略三角形形状に近似し、
前記帯状体の両端部には、それぞれ腰下部の端片から第1切欠き部が形成され、前記帯状体の周方向の中央部には、腰下部の端片から第2切欠き部が形成され、前記帯状体環状にした場合に、一対の第1切欠き部からなる腹側切欠き部と、第2切欠き部からなる背側切欠き部を有する、
ことを特徴とするウエストバンド。
【0012】
(作用効果)
請求項1記載の発明は、帯状体の周方向の一方の端部に付設されたフック材と帯状体の周方向の他方の端部にフック材と係合可能な係合部とを有し、着用者の右側腸骨に対向する帯状体の部位に、吸収性本体の腹側面に係合する第1腹側係合部と吸収性本体の背側面に係合する第1背側係合部とを有し、着用者の左側腸骨に対向する帯状体の部位に、吸収性本体の腹側面に係合する第2腹側係合部と吸収性本体の背側面に係合する第2背側係合部とを有していることから、介護補助者は着用者にウエストバンドを背側から装着し着用者の腹側中央部で帯状体を環状にできる。
【0013】
第1,2腹側係合部および第1,2背側係合部の内面には、それぞれ吸収性本体の外面に係合可能なメカニカルファスナーのフック材が付設され、第1,2腹側係合部および第1,2背側係合部は、それぞれ帯状体の縦方向に対し傾斜して付設され、帯状体の腰下部開口縁を超えて延在していることから、着用者にウエストバンドを装着する場合、ウエストバンドの第1,2腹側係合部および第1,2背側係合部を着用者の鼠蹊部に沿って容易に装着できる。また、吸収性本体を交換する場合、吸収性本体をウエストバンドの第1,2腹側係合部および第1,2背側係合部に容易に係合でき、しかも吸収性本体との係合位置を微調整できるため、着用者に吸収性本体を簡易にフィットさせることができる。
【0014】
【0015】
第1、2腹側係合部と帯状体との固着部が、着用者の腸骨に対向する部位に形成され、固着部の形状が腸骨の略三角形形状に近似していることから、第1,2腹側係合部と帯状体との固着部が、着用者の凹部をなす腸骨上に位置してウエストバンドが支持されるため、使用時にウエストバンドが下方にズレ下がる恐れがない。
また、帯状体環状にした場合に、一対の第1切欠き部からなる腹側切欠き部と、第2切欠き部からなる腹側切欠き部を有することから、着用者の背側から吸収性本体の交換を行なうことができ、ウエストバンドに覆われる吸収性本体の面積を少なくでき、吸収性本体の内側のほぼ全域を吸収面として利用することができる。
【0016】
<請求項
2記載の発明>
第1腹側係合部と第2背側係合部との端部は、前記帯状体の周方向に対し時計方向に30〜60度傾斜して固着され、第2腹側係合部と第1背側係合部との端部は、前記帯状体の周方向に対し反時計方向に30〜60度傾斜して固着されている請求項
1記載のウエストバンド。
【0017】
(作用効果)
請求項
2記載の発明は、第1腹側係合部と第2背側係合部との端部は、帯状体の周方向に対し時計方向に30〜60度傾斜して固着され、第2腹側係合部と第1背側係合部との端部は、帯状体の周方向に対し反時計方向に30〜60度傾斜して固着されていることから、ウエストバンドに吸収性本体を係合した場合、吸収性本体には着用者に向かう吊上げ力が発生し、着用者と吸収性本体との高いフィット性を維持することができ、また、ウエストバンドをより容易に装着でき、吸収性本体をウエストバンドにより容易に係合させることができる。
【0018】
<請求項
3記載の発明>
150%伸張時において、前記帯状体のウエスト部に付設された伸縮部材の伸縮応力は、10〜35gであり、腰下部に付設された伸縮部材の伸縮応力は、4〜15gである請求項1
または2記載のウエストバンド。
【0019】
(作用効果)
請求項
3記載の発明は、150%伸張時において、帯状体のウエスト部に付設された伸縮部材の伸縮応力は、10〜35gであり、腰下部に付設された伸縮部材の伸縮応力は、4〜15gであることから、帯状体のウエスト部を着用者の腸骨上部のくびれ部位に強固に装着でき使用時にウエストバンドの装着位置がズレ下がる恐れがない。また、吸収性本体が重なる帯状体の腰下部の過度の圧迫を防止することができる。
【0020】
<請求項
4記載の発明>
前記帯状体の端部外面および周方向の中央部外面に認識可能な目印が付され、前記帯状体環状にした場合に、腹側中央部および背側中央部にそれぞれ目印を有する請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のウエストバンド。
【0021】
(作用効果)
請求項
4記載の発明は、帯状体環状にした場合に、腹側中央部および背側中央部にそれぞれ目印を有することから、介護補助者が目印を目安に吸収性本体をウエストバンドに容易に取付けることができる。
【0022】
【0023】
【0024】
<請求項
5記載の発明>
着用者の右側腸骨に対向する前記帯状体の内面に第1肌保護部が付設され、着用者の左側腸骨に対向する前記帯状体の内面に第2肌保護部が付設されている請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のウエストバンド。
【0025】
(作用効果)
請求項
5記載の発明は、着用者の右側腸骨に対向する帯状体の内面に第1肌保護部が付設され、着用者の左側腸骨に対向する帯状体の内面に第2肌保護部が付設されていることから、着用者の皮膚に第1,2腹側係合部および前記第1,2背側係合部が擦れることがなく着用者の皮膚に外傷を及ぼす恐れがない。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、着用者の背側から容易に吸収性本体の交換を行なうことができ、使用時に装着位置にズレを発生しないウエストバンドを提供することが提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、「内面」とは着用者面側を、「外面」とは着用者面側とは反対面側をいい、「縦方向」とは上下方向を、「周方向(幅方向)」とは縦方向と直交する左右方向をいい、「近似」とは、腸骨形状と同じの略三角形
状をいい、「150%伸張」とは、伸縮部材の自然長さ(L0)、伸張時長さ(L1)とした場合、「伸張時長さ(L1)/伸縮部材の自然長さL0)×100[%]」で算出した値である。
また、「股間部」とは着用者の股間と対応する部分をいい、「腹側(前側)」は股間部よりも腹側の部分をいい、「背側(後側)」とは股間部よりも背側の部分をいう。
【0029】
<ウエストバンド>
図1〜
図4に示すように、本発明の実施形態であるウエストバンド100は、帯状体50と、吸収パッド200の腹側を取付ける第1,2腹側係合部70,72と、吸収パッド200の背側を取付ける第1,2背側係合部71,73とからなる。
【0030】
ウエストバンド100を着用者に装着する場合、先ず帯状体50の周方向中心部を着用者の背側に当てた後、帯状体50周方向の両端部をそれぞれ着用者のウエストの右側と左側に伸張させながら着用者のウエストを囲装し、最後に着用者の腹側で帯状体50のフック材56とループ材57を係合し環状にする。
【0031】
ウエストバンド100のサイズによって異なるが、ウエストバンド100の環状状態における幅W1は概して130〜400mmであり、帯状体50の縦方向長さT1は60〜160mmであり、帯状体50の縦方向上部をなすウエスト部Wの縦方向長さT2は15〜40mmであり、縦方向下部をなす腰下部Uの縦方向長さT3は45〜120mmである。
【0032】
<帯状体>
図5,6に示すように、ウエストバンド100の帯状体50は外面を形成する上層不織布51と内面を形成する下層不織布52とからなり、上層不織布51と下層不織布52との間には複数の伸縮部材が付設されている。
なお、上下層不織布51,52を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、上層不織布51には不織布に替えて伸縮性を有するプラスチックシートを用いることができる。
【0033】
帯状体50のウエスト部Wには、周方向に沿って4〜10本のウエスト伸縮部材53が2〜6mm間隔で付設されている。ウエスト部Wを着用者の腸骨上部のくびれ部位に確実に装着するため、ウエスト伸縮部材53としては、150%伸張時の伸縮応力が10〜35gで、太さ620dtex以下の伸縮部材を用いるのが好ましい。
【0034】
帯状体50の腰下部Uには、周方向に沿って5〜20本の腰下伸縮部材54が10〜20m間隔で付設されている。着用者の腰下部に作用する過度の圧迫さけるため、腰下伸縮部材54としては、150%伸張時の伸縮応力が4〜15gで、太さ620dtex以下の伸縮部材を用いるのが好ましい。
【0035】
後述するフック材56およびループ材57と帯状体50との剥がれを防止するため、ウエスト伸縮部材53および腰下伸縮部材54はフック材56およびループ材57が付設される帯状体50の部位には延在させないようにするのが好ましい。
なお、本実施形態の帯状体50のウエスト伸縮部材53には糸ゴムを用いているが、糸ゴムに替えてテープ状の伸縮部材を用いることもできる。
【0036】
帯状体50の周方向の一方の外面端部には、支持部材55を介してメカニカルファスナーのフック材56が付設されており、帯状体の周方向の他方の内面端部にはメカニカルファスナーのループ材57が付設されている。
【0037】
サイズによって異なるが、所要の係合強度を付与するため、フック材56の形状は概して、幅10〜25mm、縦方向長さ55〜155cmの矩形形状であり、ループ材57の形状は概して、幅5〜15mm、縦方向長さ50〜150cmの矩形形状である。
なお、係合強度とは、フック材56とループ材57との係合面に作用するせん断力に対する強さをいうものであり、着用者の歩行、着座等にともなう動作によりフック材56とループ材57との係合面の剥がれを防止するため、通常の着用者である場合、フック材56とループ材57とのせん断応力は5N/cm
2以上であり、係合強度は60N以上であるのが好ましい。
【0038】
支持部材55としては、不織布、織布、網布等の種々の材料を用いることができるが、着用者にウエストバンド100を密着して装着させるため、周方向に伸縮する伸縮性不織布を用いるのが好ましい。
本実施形態のフック材56と支持部材55の外面およびループ材57と帯状体50の内面はサーマルボンドにより固着しているが、公知の接着剤、ウルトラソニックボンドを用いることもできる。
【0039】
ウエストバンド100に吸収パッド200を容易に取付けるため、帯状体50の外面中央部およびループ材57が付設されている帯状体50の周方向の外面端部には認識可能な目印60が付設されている。
【0040】
また、吸収パッド200の透液性トップシート22の全域を体液吸収面として有効利用するため、帯状体50の周方向両端部の腰下部Uには第1切欠き部61が形成され、帯状体50の周方向中央部の腰下部Uには第2切欠き部62が形成されており、ウエストバンド100を環状にした場合、着用者の腹側および背側の腰下部Uには略台形形状の切欠き部が形成され、腰下部Uが吸収パッド200の透液性トップシート22を覆うことがない。
【0041】
さらに、着用者の皮膚と後述する第1,2腹側係合部70,72および第1,2背側係合部71,73とが接触による着用者の皮膚を保護するため、第1腹側係合部70および第1背側係合部71と第2腹側係合部72および第2背側係合部73と対向する帯状体50の内面に保護シート(図示省略)を付設することができる。
なお、保護シートは、不織布で形成され、不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0042】
<係合部>
図1〜
図4に示すように、第1腹側係合部70は着用者の右側腸骨に対向する帯状体50の上層不織布51の外面に固着され、第1背側係合部71は第1腹側係合部70より内方の帯状体50上層不織布51の外面に第1腹側係合部70と対称に固着されている。
第2腹側係合部72は着用者の左側腸骨に対向する帯状体50の上層不織布51の外面に固着され、第2背側係合部73は第2腹側係合部72より内方の帯状体50上層不織布51の外面に第2腹側係合部72と対称に固着されている。
また、第1腹側係合部70と第2背側係合部73とは同一形状に形成されており、第2腹側係合部72と第1背側係合部71とは同一形状に形成されている。
【0043】
使用時にウエストバンド100が下方へのズレ下がりを防止するため、第1,2腹側係合部70,72の取付けシート80の固着部74は、それぞれ着用者の右側腸骨、左側腸骨の形状に近似する
略三角形状に付設されている。
【0044】
第1,2腹側係合部70,72を帯状体50の上層不織布51に固着する固着部74は、ウエスト伸縮部材53および腰下伸縮部材54の影響による伸張が小さく、着用者体型が凹部状になる左右腸骨上に固着部74を位置させた場合、着用者体型が凹部状により固着部74の移動が制限され
る。
【0045】
ウエストバンド100に吸収パッド200を容易に取付け、着用者と吸収パッド200の優れたフィット性を維持するため、第1腹側係合部70および第2背側係合部73の取付けシート80の上片を帯状体50の上層不織布51の周方向に対して時計方向に30〜60度傾斜して固着し、第2腹側係合部72および第1背側係合部の取付けシート80の上片を帯状体50の上層不織布51の周方向に対して反時計方向に30〜60度傾斜して固着するのが好ましい。
【0046】
図7に示すように、第1,2腹側係合部70,72および第1,2背側係合部71,73は、いずれも取付けシート80と伸縮シート81からなり、伸縮シート81の先端部内面にはサーマルボンドによりメカニカルファスナーのフック材84が付設されている。
【0047】
取付けシート80は不織布、織布、網布等の種々の材料を用いることができ、伸縮シート81は外面を形成する上層不織布82と内面を形成する下層不織布83とからなり、吸収パッド200を容易に取付け、着用者と吸収パッド200とのフィット性を高めるため、上層不織布82と下層不織布83との間には複数の伸縮部材85が付設されている。
なお、上下層不織布82,83を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、上下層不織布52には不織布に替えて伸縮性を有するプラスチックシートを用いこともできる。
【0048】
図8に示すように、第1,2腹側係合部70,72および第1,2背側係合部71,73の伸縮シート81は同一形状としているため、一枚の矩形形状の不織布シートからロータカッタを用いて連続生産でき、また、廃棄する不織布シートの量も削減することができる。
【0049】
<吸収パッド>
図9〜
図16は、本発明に係る吸収パッド例200を示している。この吸収パッド200は、股間部C2と、その縦方向両側に延在する腹側部分F2及び背側部分B2とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(縦方向長さ)Mは350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より狭い)とすることができ、この場合における股間部C2の縦方向長さは10〜150mm程度、腹側部分F2の縦方向長さは50〜350mm程度、及び背側部分B2の縦方向長さは50〜350mm程度とすることができる。
【0050】
吸収パッド200は、外面に外装シート32が積層された不透液性バックシート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有している。
【0051】
吸収体23の裏面側には、不透液性バックシート21が吸収体23の周縁より若干食み出すように付設されている。不透液性バックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0052】
また、不透液性バックシート21の外面は、不織布からなる外装シート32により覆われており、この外装シート32は、所定の食み出し幅をもってバックシート21の周縁より外側に食み出している。外装シート32としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0053】
外装シート32の腹側部分F2および背側部分B2の両隅部には、それぞれウエストバンド100の第1,2腹側係合部70,72および第1,2背側係合部71,73のフック材84と係合するループ部材からなる係合部材93がサーマルボンドにより固着され、外装シート32の周方向中心部および縦方向中心部にはそれぞれ認識可能な目印60が付設されている。
【0054】
ウエストバンド100に吸収パッド200を容易に取付けるため、係合部材93はウエストバンド100の第1,2腹側係合部70,72および第1,2背側係合部71,73の傾斜角度に合わせて外装シート32に固着するのが好ましく、着用者の歩行、着座等にともなう動作によりフック材84と係合部材93との係合面の剥がれを防止するため、通常の着用者である場合、フック材84と係合部材93とのせん断応力は5N/cm
2以上であり、係合強度は60N以上であるのが好ましい。
【0055】
吸収体23の表面側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0056】
トップシート22と吸収体23との間には、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、吸収体23により吸収した尿の逆戻りを防止するために付設されるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えばメッシュフィルム等を用いるのが望ましい。トップシート22の前端を0%としトップシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅25wは後述する上層吸収体23Uの幅L2の50〜90%程度であるのが好ましい。
【0057】
吸収パッド200の縦方向両端部では、外装シート32および透液性トップシート22が吸収体23の腹側端および背側端よりも縦方向両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。
【0058】
吸収した尿が吸収パッド200の縦方向両端部からの漏れ出しを防止するため、エンドフラップ部EFには、それぞれ漏れ防止シート91が付設され、さらに漏れ防止シート91の外面には、ループ部材からなる仮止部材92がサーマルボンドにより固着されている。
【0059】
漏れ防止シート91の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
なお、漏れ防止シート91を付設することなく、エンドフラップ部EFに仮止部材92を付設することができる。そのような場合、エンドフラップ部EFを透液性トップシート22に向かって折り曲げ、仮止部材92を透液性トップシート22に仮止することのより吸収した尿が吸収パッド200の縦方向両端部からの漏れ出しを防止することができる。
【0060】
吸収パッド200の両側部では、外装シート32が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からトップシート22の側部までの部分の内面にはバリヤシート24の幅方向外側の部分24xが縦方向全体にわたり貼り付けられ、吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これら貼り合わせ部分は、
図9では点模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。これらエンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFは、本発明の周縁部をなし、これらにより囲まれる部分が本発明の本体部をなす。外装シート32を付設しない場合、外装シート32に代えて不透液性バックシート21をサイドフラップ部SFまで延在させ、サイドフラップ部SFの外面側を形成することができる。
【0061】
バリヤシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0062】
バリヤシート24の幅方向中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24Gが縦方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0063】
また、両バリヤシート24,24は、幅方向外側の部分24xが縦方向全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面および外装シート32内面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、縦方向の両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ縦方向の両端部間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、
図9に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能なバリヤ部となる部分であり、その起立基端24bはバリヤシート24における幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0064】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、吸収体23はクレープ紙等の包装シート(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に腹側の部分が背側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。
【0065】
吸収体23は、下層吸収体23Bの上に、下層吸収体23Bの幅Lよりも幅L2が狭く且つ少なくとも股間部C2から背側部分B2にかけて縦方向に延在する上層吸収体23Uが積層された二層構造となっている。上層吸収体23Uの縦方向長さM4は下層吸収体23Bの縦方向長さM3と同じであっても良いが、70〜85%程度とするのが望ましい。また、上層吸収体23Uの全幅L2は下層吸収体23Bの全幅Lの40〜60%程度とするのが望ましい。
【0066】
吸収体23における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m
2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m
2程度とするのが好ましい。より詳細には、下層吸収体23Bの繊維目付けは例えば80〜400g/m
2程度、高吸収性ポリマーの目付けは例えば50〜400g/m
2程度とすることができ、上層吸収体23Uの繊維目付けは例えば80〜300g/m
2程度、高吸収性ポリマーの目付けは例えば10〜200g/m
2程度とすることができる。
【0067】
下層吸収体23Bは、股間部C2を含む縦方向中間の所定部分が幅の狭い括れ部分23nとして形成されている。この括れ部分23nの最小幅L3は、括れ部分23nの縦方向に位置する非括れ部分の幅L1の50〜65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、括れ部分23nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの最小幅L3となる部位(最小幅部位)は25〜30%の範囲に位置しているのが好ましい。また、下層吸収体23Bは、少なくとも次述の上層スリット40と重なる位置にスリットを有しないものであり、この部位以外にスリットを有していても良いが、全体にわたりスリットを有しないのが望ましい。
【0068】
上層吸収体23Uは、幅方向中央線の左右両側に、表裏面に貫通する上層スリット40が、股間部C2から背側部分B2にかけてそれぞれ延在されており、この上層スリット40は、下層吸収体23Bの括れ部分23nのうち背側に向かうにつれて幅が拡大し始める背側拡幅開始位置(最小幅部位)23wよりも背側において、背側に向うにつれてより幅方向外側に位置するように延在するか、又は幅方向に沿って幅方向中央側から幅方向外側に向かって延在する拡散促進部分41を有している。この拡散促進部分41は図示例のように下層吸収体23Bの括れ部分23nに沿う円弧状等の曲線状をなしているのが好ましいが、直線状であっても良い。また、図示形態の上層吸収体23Uは、長方形状をなしているが、下層吸収体と同様に前後方向中間部に括れ部分を有していても良い(図示略)。
【0069】
このような構造を有していると、座位時のように厚さ方向の圧縮力が加えられた状態でも、上層スリット40が尿の拡散経路として確保されるため、
図15に矢印で示すように、股間部C2の排泄位置(図中の黒塗り星マーク)において局所的に吸収体23に至った尿が上層スリット40に沿って背側に拡散する過程で、上層スリット40の拡散促進部分41に沿って幅方向外側にも拡散し、より幅の広い下層吸収体23Bに対して幅方向に広範囲に拡散供給される。よって、逆戻りが発生し難く成る。また、上層スリット40が股間部C2まで存在していることにより、物品の股間部C2と身体とのフィット性が良好となる。
なお、このような観点から、上層スリット40の拡散促進部分41の前端は、下層吸収体23Bの括れ部分23nにおける背側拡幅開始位置23wを通る幅方向線上またはその近傍に位置しているのが好ましい。また、上層スリット40の拡散促進部分41における幅方向外側縁の接線と縦方向とのなす角をθ1とし、下層吸収体23Bの括れ部分23nの側縁の接線と縦方向とのなす角をθ2としたとき、上層スリット40の拡散促進部分41と対応する縦方向範囲内の各縦方向位置において、次の関係式、
0° ≦ θ1 ≦ 90°
θ1−20° ≦ θ2 ≦ θ1+20°
を満足するように構成されているのが好ましく、
特に、次の関係式、
0° ≦ θ1 ≦ 40°
θ1−10° ≦ θ2 ≦ θ1+5°
を満足するように構成されているのが好ましい。
【0070】
さらに、上層スリット40の拡散促進部分41の後端は下層吸収体23Bの側縁から離間しているのが好ましい。この場合、その幅方向離間距離L1が、下層吸収体23Bにおける括れ部分23nの後端の幅をLとしたとき、10mm ≦ L1 ≦ L/3の関係を満足するように構成されているのが好ましく、特に50mm ≦ L1 ≦ L/3の関係を満足するように構成されているのが好ましい。このように、上層スリット40の拡散促進部分41の後端を下層吸収体23Bの側縁からある程度離間させつつ、十分に下層吸収体23Bの側部まで延在させることにより、上層スリット40による幅方向の拡散が過大とならない範囲で、下層吸収体23Bに対して十分に広範囲に尿を拡散することができるようになる。
【0071】
また、吸収パッド200の全長をMとし、上層スリット40の拡散促進部分の後端よりも背側部分B2の縦方向長さをM1とし、上層スリット40の拡散促進部分41の後端よりも腹側部分の縦方向長さをM2としたとき、M/2 ≦ M2 < Mの関係を満足するように構成されているのが好ましく、特にM/7 ≦ M2 < M/3の関係を満足するように構成されているのが好ましい。このように、上層スリット40の拡散促進部分41の後端を十分に背側に延在させつつも、物品後端から十分に離間させることにより、上層スリット40による背側への拡散が適度となる。上層スリット40をあまりに物品背側まで延在させると、背側への拡散が過大となって、いわゆる背漏れが発生するおそれがある。
【0072】
上層スリット40の幅wは適宜定めることができるが、通常の場合10〜30mmの範囲内にあるのが好ましく、特に10〜15mmの範囲内にあるのが好ましい。上層スリット40の幅wが狭過ぎるとスリットが幅方向に潰れ易くなり、狭過ぎるとスリット40内に上下部材(例えば吸収体23の包装シート)が入り込み、いずれにせよ拡散のための空間が減少するため好ましくない。
【0073】
一方、上層スリット40は、拡散促進部分41の腹側に連続する部分として、左右のスリット間隔dが20〜40mmである導入部分42を有しているのが好ましい。より好ましい間隔dは10〜40mmである。この導入部分42の縦方向長さは、物品全長の10〜35%程度、特に12〜35%程度であるのが好ましい。
【0074】
さらに、上層スリット40は、この導入部分42の前端から幅方向外側に向きを変えて、上層吸収体23Uの側縁に向かって延在する腹側間隔拡大部43を有している。腹側間隔拡大部43は、腹側に向うにつれてより幅方向外側に位置するように延在するか、又は幅方向に沿って幅方向中央側から幅方向外側に向かって延在する曲線状又は直線状をなしているのが好ましい。また、この腹側間隔拡大部43は先端が図示形態のように上層吸収体23Uの側縁に貫通しているのが好ましいが、上層吸収体23Uの側縁までは到達させずに、側縁から離間させることもできる。
【0075】
股間部C2へのフィット性を高めるために、吸収パッド200の幅方向両側部におけるサイドフラップSFに外装シート32の腹側部分F2の係合部材93から背側部分B2の係合部材93にわたり延在する脚周り伸縮部材90を付設されている。
【0076】
<吸収性物品>
図17,18に示すように、吸収性物品300は、ウエストバンド100と吸収パッド200とから構成される。ウエストバンド100の第1,2腹側係合部70,72のフック材84に吸収パッド200の腹側部分F2の係合部材93を係合して取付け、ウエストバンド100の第1,2背側係合部71,73のフック材84に吸収パッド200の背側部分B2の係合部材93を係合して取付けることにより吸収性物品300となる。
【0077】
介護補助者が着用者の背側から吸収性物品300を装着させる場合、先ずウエストバンド100の第1,2背側係合部71,73のフック材84に吸収パッド200の背側部分B2係合部材93を係合し取付け、次にウエストバンド100の帯状体50の中心部を着用者の背側に当て、次に帯状体50周方向の両端部をそれぞれ着用者のウエストの右側と左側に伸張させながら着用者のウエストを囲装し、次に着用者の腹側で帯状体50のフック材56とループ材57を係合し環状にし、次にウエストバンド100の第1,2腹側係合部70,72のフック材84に吸収パッド200の腹側部分F2の係合部材93を係合して取付け吸収性物品300を装着する。この際、前述したウエストバンド100の目印60、吸収パッド200の目印94を縦方向に一致させることにより吸収性物品300を着用者に容易に装着させることができる。
【0078】
また、ウエストバンド100の第1,2背側係合部71,73のフック材84に吸収パッド200の背側部分B2係合部材93を係合し取付けに先立ち前述した吸収パッド200の仮止部材92をウエストバンド100の帯状体50に仮止めすることにより介護補助者は自由に両腕が使用できるため、吸収性物品300を着用者にさらに容易に装着させることができる。