特許第5689580号(P5689580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689580
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】グラム陽性菌の不活化
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20150305BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20150305BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   A61L2/08 104
   A61N5/06 Z
   A61L9/18
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2008-523460(P2008-523460)
(86)(22)【出願日】2006年7月28日
(65)【公表番号】特表2009-507525(P2009-507525A)
(43)【公表日】2009年2月26日
(86)【国際出願番号】GB2006002841
(87)【国際公開番号】WO2007012875
(87)【国際公開日】20070201
【審査請求日】2009年7月24日
(31)【優先権主張番号】0515550.2
(32)【優先日】2005年7月29日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500480746
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オヴ ストラスクライド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ジョン ギャロウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ウルジー ジェラルド アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マグレガー スコット ジョン
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/049138(WO,A1)
【文献】 再公表特許第2003/037504(JP,A1)
【文献】 特開2004−275927(JP,A)
【文献】 特開2004−261595(JP,A)
【文献】 特表2007−511279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00− 2/28
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を不活化するための可視光源の使用であって、光増感剤を使用せずに可視光源をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に照射することを含み、可視光の波長が400〜500nmであり、ヒト又は動物の体には行われない、使用
【請求項2】
可視光の波長が400〜450nmである、請求項記載の使用。
【請求項3】
可視光の波長が400〜420nmである、請求項記載の使用。
【請求項4】
可視光の波長が405nmである、請求項記載の使用。
【請求項5】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を不活化することによる空気滅菌、接触面及び材料消毒のための、波長が400〜500nmである可視光の使用であって、光増感剤を使用せずに可視光をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に照射することを含み、ヒト又は動物の体には行われない、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及びメチシリン(多剤)耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus)(CONS)、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の種を含む医学的に重要なグラム陽性菌を不活化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は問題のある微生物となってきており、感染率は上昇し、効果的なコントロール方法は限定されつつある。MRSAの抗生物質に対する抵抗性に加えて、利用可能性な環境汚染除去(例えば、空中で、及び接触面で)のための効果的な消毒方法が少ないことによる重大な問題がある。MRSAの感染及びコントロールへの世の中の関心及びメディアの関心はエスカレートし、医療産業界で最も重大な問題の1つとなってきている。病院及び老人ホームは最も汚染のひどいエリアである。さらに、地域感染型MRSAも今では深刻化する問題として認識されてきており、感染は公共のジムやスポーツセンターなどの公共の場や社会地区で生じている。
MRSA以外にも、他のグラム陽性菌が、特に病院環境で健康障害を引き起こすことが知られている。例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus)(CONS)である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)は、特に人工装具移植手術を受ける幼児及び入院患者において感染を引き起こすことができる。化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、咽頭炎、膿皮症、猩紅熱、丹毒、蜂巣炎、連鎖球菌毒素性ショック症候群、リウマチ熱、糸球体腎炎、菌血症及び壊疽性筋膜炎などの感染に共通して関連するグラム陽性球菌であり、しばしば「人喰いバクテリア」とも呼ばれる。大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)(別のグラム陽性球菌)は、重病入院患者における菌血症、心内膜炎及び髄膜炎などの他の感染と同様に、尿路感染及び傷創感染の共通する原因である。複数の抗生物質に対する抵抗性も腸球菌感染に関連する十分に裏付けされた問題になってきている。クロストリジウム属(Clostridium)の種、特にクロストリジウムディフィシル(C. difficile)は、下痢に関連した脱水症による高齢の患者における高い死亡率と関連しており、抗生物質関連偽膜性大腸炎として医学上知られている。
【0003】
MRSAのような有害細菌を破壊するための多くの技術が提案されている。例えば、米国特許第6,251,127号には、メチレンブルー又はトルイジンブルーを用いる細菌及び真菌創傷感染の光力学不活化方法が記載されている。光エネルギーは、光増感剤と組み合わせて、癌及び微生物学的病原体などの生きている組織の病状を治療又は検出するために使用される。使用される光の波長は、約450nm〜約850nmである。試験は、インビボ感染創での黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の破壊のための、及び抗生物質耐性スタヒロコッカス属(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、大腸菌(E. coli)、シュードモナス菌(Pseudomonas)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)及びカンジダアルビカンス(Candida albicans)のインビトロ破壊のための光増感剤と組み合わせた光治療の有効性を示す。さらに、種々の濃度の上記細菌及びカンジダ属の存在下でのメチレンブルー及びトルイジンブルーの活性化の波長スペクトルが与えられている。
ある環境において、米国特許第6,251,127号の方法は有用であるかもしれないが、それでもなお、光増感剤が不活化される細菌に適用されなければならないという実用上の大きなデメリットを伴う。光増感剤と光とを組合せて用いることが必要な米国特許出願第2005/0049228号(この場合には、500nm〜580nmの範囲の光)でも同様の問題がある。光増感剤を必要とすることは、これらの技術の大きな制限となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、選択される細菌、特にMRSA、より一般的にはスタヒロコッカス属(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の種を不活化するための簡単かつ効果的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要約)
1又は2以上の病原性グラム陽性菌を不活化する方法であって、光増感剤を用いることなく前記菌に可視光を照射することを含む前記方法。
好ましくは、前記菌は、スタヒロコッカス属(Staphylococcus)、特にMRSA、CONS、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の種から選ばれる。
当然のことながら、病原性という用語は、グラム陽性菌種及び/又は菌株との関連で使用され、ヒト又は動物の被験者において病気又は感染症の原因となり得る。また、当然のことながら、ある細菌は、コロニーを作ることができ、及び/又は健康な宿主に寄生することができるが、病気又は損傷、例えば創傷のいくつかのその他の形態によって、宿主が免疫無防備状態及び/又は不健康にならない限り、又はそうなるまで、病原性とはならない点でしばしば片利共生である。このような「潜在的」病原菌も本発明によって包含される。
さらに、不活化という用語は、細菌複製を低減又は阻害するために前記細菌を死滅させ、又は損傷を与えることを意味すると理解される。したがって、本明細書において教示される方法及びシステムは、殺菌及び/又は静菌と考えることができ、これは、細菌の種/菌株、光の波長、用量などに依存し得る。
これらの細菌に青色光を照射し、又は青色光を含む白色光を照射することは、不活化プロセスを刺激することが分かった。可視波長領域において光を用いる利点は、ヒト又は動物の健康に有害な効果がないことである。したがって、前記方法は、空気滅菌、接触面及び材料消毒及び最も注目すべき創傷保護及び組織消毒のような広範囲の用途で使用できる。
【0006】
本発明の別の局面によれば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus)(CONS)、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の種の少なくとも1つを含む病原性グラム陽性菌を不活化する方法であって、前記菌に波長が400〜500nmである可視光を照射することを含む前記方法を提供する。可視光の波長は、400〜450nmであってもよい。可視光の波長は、400〜420nmであってもよい。可視光の波長は、405nmであってもよい。
本発明のさらに別の局面によれば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus)(CONS)、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の種を含む病原性グラム陽性菌を不活化するためのシステムであって、前記菌に波長が400〜500nmである可視光を照射するための手段を含む前記システムを提供する。使用される光の波長は、好ましくは400〜500nmである。前記波長は、400〜450nmであってもよく、特に400〜420nmであり、最適には405nmである。
本発明のさらに別の局面によれば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus)(CONS)、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の種の少なくとも1つを含む病原性グラム陽性菌を不活化するための、波長が400〜500nm、特に400〜420nmである可視光の使用が提供される。
以下で、本発明の種々の局面をほんの一例として、添付の図面を参照して記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(図面の詳細な説明)
MRSAに青色光を照射することにより、明らかな不活化が生じることが分かった。この狭い領域の波長は白色光スペクトルの一部である。すべての白色光光源について、光出力のごくわずかな部分のみがこの領域であり、典型的には1又は2%である。それゆえ、十分な量の光を提供し、この技術の有効性を示すために、光源としてキセノンランプ(Hamamatsu Photonics UK Limited)を使用した。このランプの発光スペクトルを図1及び2に示す。このランプは、可視光の特定の波長を黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)懸濁液に照射することができるように、光ファイバーライトガイド及び光学フィルターの選択と組合せて使用された。ライトガイドの出力は、すべての実験でサンプルから5cmの距離に固定された。
この技術の有効性を示すために、種々の研究を行った。使用した細菌は次の通りである:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NCTC 4135;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)LMG 15975;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)16a(臨床分離株)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)NCTC 7944、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)NCTC 8198、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)及びウェルシュ菌(Clostridium perfringens)13124。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて各サンプルを逐次適切な濃度に希釈し、寒天培地(NA)を用いて培養し、次いで37℃で24時間インキュベートした。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)LMG 15975及び臨床分離株16aの懸濁液を調製し、可視光を照射した。この光を、細菌懸濁液に照射する前に、400nm長波長パスフィルター(400nmでの透過率を50%カットオフ)に通した。これにより、400nm以上の波長(可視光)のみサンプルに照射できた。これらの実験の結果を図3及び4に示す。これらから、光処理により、培養株保存MRSA(LMG 15975)及び高耐性臨床分離株(16a)の両方の数の明らかな低減が生じることが分かる。コントロールデータは、同じ時間間隔にわったって処理されないサンプルを参照する。
【0008】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NCTC 4135の懸濁液も可視光処理に供した。この場合もまた、光ビームを、細菌懸濁液に照射する前に、400nm長波長パスフィルターに通し、400nm以上の波長の透過のみ可能にした。図5から、ミリリットル当たり約107コロニー形成単位(cfu/ml)の高始動(high starting)微生物集団でも、キセノン光源により、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)数の明らかな減少を生じることが分かる。表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)NCTC 7944、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)NCTC 8198及び大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)を用いて、同様の実験を行った。微生物集団における関係した減少は、図6、7及び8に示される。それぞれについて、細菌数の明らかな減少が観測される。
様々なフィルターを用いる照射テストを行った。細菌懸濁液に最大90分間次の波長領域の光を照射した:550nmよりも大きい(550nm長波長パスフィルターを使用);500nmよりも大きい(500nm長波長パスフィルターを使用);500nmよりも小さい(500nm短波長パスフィルターを使用);400〜500nm(400nm長波長パスフィルター及び500nm短波長パスフィルターの組み合わせを使用);450〜500nm(450nm長波長パスフィルター及び500nm短波長パスフィルターの組み合わせを使用);450nmよりも大きい(450nm長波長パスフィルターを使用)、及び400nmよりも大きい(400nm長波長パスフィルターを使用)。各フィルターは波長をシャープにカットオフせず、懸濁液に照射される光強度が曲線ごとに異なるために、図9の得られた不活化曲線は、定性的比較のみ可能にする。しかしながら、結果は、400nm〜500nmの波長領域が高い確率の黄色ブドウ球菌(S. aureus)不活化を提供することを示している。
【0009】
また、それぞれ10nmFWHM(半値全幅)を有するバンドパスフィルターを用いて、実験を行った。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)LMG 15975の懸濁液(約105cfu/ml集団)に、次のバンドパスフィルターを通した可視光を照射した:400nm、405nm、410nm、415nm、420nm、430nm、440nm及び450nm。各フィルターでランプの強度を変え、懸濁液での光強度が各測定で同じになるようにし、結果の直接比較を可能にした。これらの実験の結果は、400nm、405nm及び415nmのバンドパスフィルターを用いて照射したサンプルが減少したコロニー形成単位数/mlをもつことを示した。すなわち、これらの狭いバンド幅内の波長の光は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)菌株に対して不活化効果を持っていた。
黄色ブドウ球菌(S. aureus)NCTC 4135の懸濁液を用いて、波長感度のより詳細な分析を行い、これを図10に示す。結果は、400nm、405nm、410nm、415nm及び420nmバンドパスフィルターを用いて照射されたサンプルが減少したコロニー形成単位数/mlをもつことを示す。すなわち、これらの狭いバンド幅内の波長の光は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)菌株に対して不活化効果を持つ。これらの結果から、400〜450nmの波長範囲にわたる可視光照射は、ブドウ球菌(Staphylococcal)不活化の主要な誘導因子であり、高められた不活化は400〜420nmの範囲にわたって起こり、最適な不活化は405nmで起こることを導くことができる。さらに、この波長では、要求される照射量は少なく、典型的には、照射量は200J/cm2未満であり、例えば100J/cm2未満であることが観測された。
別の実験では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NCTC 4135懸濁液を異なる強度の可視光処理に供した。400nm長波長パスフィルターを用いて、すなわち400nmよりも大きい波長で、これらの測定を行った。図11は、これらの実験の結果を示す。光の強度が増すと不活化率も増えることが分かる。異なるフィルター及び光強度を用いて、ブドウ球菌(Staphylococcal)、連鎖球菌(Streptococcal)及び腸球菌(Enterococcal)の種の完全な不活化に必要な具体的な照射量を決定した。サンプルの結果を下記表に示す。
【0010】
【表1】
また、表面汚染除去に対する可視光照射の効果を調べた。これは、寒天培地で培養した黄色ブドウ球菌(S. aureus)細胞を、インキュベーションの前に光処理する(400nm長波長パスフィルターに通す)ことによって行った。結果の例は、図12に培養皿状の増殖阻害の領域として示される。
【0011】
キセノンランプで使用されたものと同様の処理システムを、光源として405nmのLEDアレーを用いて組み立てた。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NCTC 4135、MRSA 16a、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)NCTC 8198及びウェルシュ菌(Clostridium perfringens)13124を用いて、実験を行った。微生物集団の関連した減少を、それぞれ図13、14、15及び16に示す。405nmのLEDアレーを用いるスタヒロコッカス属(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の種の完全な不活化に必要な具体的な照射量を決定した。サンプルの結果を下記表に示す。
【表2】
【0012】
キセノンランプからの400nmよりも大きい波長の光及び405nmのLEDアレーを用いて、細菌不活化(5-log 減少)に必要な照射量の比較を下記表に示す。
【表3】
400〜500nm、特に400〜450nmの波長の可視光(青色光)の使用は、MRSAを含むスタヒロコッカス属(Staphylococcus)菌株及びCONS、連鎖球菌(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びクロストリジウム属(Clostridium)の不活化の効果的な手段であることを示し、400〜420nmの範囲、特に約405nmで阻害率を高める。これは、これらの範囲の波長の出力をもつ光源(連続源、フラッシュランプ、レーザーなど)が、空気中及び接触面及び材料に存在するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及びその他の医学上重要なグラム陽性菌種のレベルの減少のために臨床環境で使用され得る可能性があること、最も重要なことは創傷保護及び組織処理で使用できることを示す。使用される光の波長及び光強度のような、必要な正確なパラメータは細菌の菌株に依存する。これらは、実験的に容易に決定できる。
開示された処置の変更は、本発明から離れることなしに可能である。例えば、種々の異なるフィルターを用いたキセノンランプ及び405nmのLEDアレーの両方が不活化源として使用されたが、当然のことながら、適切な光源であればいずれも使用できる。同様に、特定の実験処置が本明細書に記載されているが、使用される光源が、例えば携帯用デバイスに含まれてもよく、又はMRSAから保護されなければならない場所で処置するように意図され得ることは明らかである。したがって、具体的な実施態様の上記説明はほんの一例であって、限定するためのものではない。小さな変更が記載された処置への重大な変更なしになされても良いことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ハママツキセノンランプの全発光スペクトルを示す。
図2図1のキセノンランプの紫外発光スペクトルをより詳細に示す。
図3】波長が400nmよりも大きい光を照射する時間の関数としてのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)菌株の細菌数のプロットである。
図4】波長が400nmよりも大きい光を照射する時間の関数としての2番目のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)菌株の細菌数のプロットである。
図5】波長が400nmよりも大きい光を照射する時間の関数としての黄色ブドウ球菌(S. aureus)NCTC 4135の細菌数のプロットである。
図6】波長が400nmよりも大きい光を照射する時間の関数としての表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)NCTC 7944の細菌数のプロットである。
図7】波長が400nmよりも大きい光を照射する時間の関数としての化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)NCTC 8198の細菌数のプロットである。
図8】波長が400nmよりも大きい光を照射する時間の関数としての大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)の細菌数のプロットである。
図9】異なる波長範囲の光を照射する時間の関数としての黄色ブドウ球菌(S. aureus)NCTC 4135の懸濁液の細菌数のプロットである。
図10】黄色ブドウ球菌(S. aureus)NCTC 4135について、波長(400〜500nm)の関数としての細菌の対数減少のプロットである。
図11】異なる光強度について、波長が400nmよりも大きい光を照射する時間の関数としての黄色ブドウ球菌(S. aureus)NCTC 4135の懸濁液における細菌数のプロットである。
図12】波長が400nmよりも大きい光を照射することによる黄色ブドウ球菌(S. aureus)NCTC 4135の表面不活化の目視結果である。表面不活化は、この光を照射した領域における黄色ブドウ球菌(S. aureus)増殖の抑制によって示される。
図13】405nmの光を照射する時間の関数としての黄色ブドウ球菌(S. aureus)NCTC 4135の細菌数のプロットである。
図14】405nmの光を照射する時間の関数としてのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)菌株の細菌数のプロットである。
図15】405nmの光を照射する時間の関数としての化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)NCTC 8198の細菌数のプロットである。
図16】405nmの光を照射する時間の関数としてのウェルシュ菌(Clostridium perfringens)13124の細菌数のプロットである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12
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