(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700957
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ベアリングアセンブリのためのケージ
(51)【国際特許分類】
F16C 33/46 20060101AFI20150326BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C33/66 Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-134997(P2010-134997)
(22)【出願日】2010年6月14日
(65)【公開番号】特開2010-286117(P2010-286117A)
(43)【公開日】2010年12月24日
【審査請求日】2012年10月19日
(31)【優先権主張番号】61/186,997
(32)【優先日】2009年6月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510099028
【氏名又は名称】コーヨー ベアリングス ノース アメリカ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジー.ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ガンター ジェイ.ジンケン
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−041757(JP,A)
【文献】
特開2000−352423(JP,A)
【文献】
特開2004−011689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/46
F16C 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体の軸線方向長さがL1であるベアリングケージであり、
第一の端部であって前記ベアリングケージの径方向の最も外側の直径に規定された第一の径方向外側の接触面を規定しており且つ第一の軸線方向の接触長さを有している第一の端部と、
第二の端部であって前記第一の端部からある距離だけ隔てられており且つ前記ベアリングケージの径方向最も外側の直径に規定された第二の径方向外側の接触面を規定しており且つ第二の軸線方向の接触長さを有している第二の端部と、
複数のスパン部であって、前記第一の端部と第二の端部との間に延びており、各々が該スパン部の軸線方向の接触長さCspanを規定しており、該軸線方向の接触長さCspanは、ベアリングケージの径方向最も外側の直径に、一対の遠位の接触パッドと該スパン部の前記一対の遠位の接触パッドの間、且つ前記スパン部の軸線方向の中心に配置された少なくとも1つの中間の接触パッドによって規定されているスパン部の軸方向の接触長さを規定している複数のスパン部とを有し、
前記少なくとも1つの中間の接触パッドは、前記一対の遠位の接触パッドの一方よりも円周方向に幅が広く、
前記第一の軸線方向の接触長さと前記第二の軸線方向の接触長さと前記スパン部の軸線方向の接触長さCspanとを合計した値がベアリングケージ全体の接触長さCtotalを規定しており、
前記ベアリングケージ全体の接触長さCtotalの前記ベアリングケージ全体の軸線方向の長さL1に対する比率が少なくとも0.380の値である、ことを特徴とするベアリングケージ。
【請求項2】
前記スパン部の軸線方向の接触長さCspanが、前記一対の遠位の接触パッドの長さと一つの中間の接触パッドの長さとを合計した値によって規定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のベアリングケージ。
【請求項3】
前記複数のスパン部の各々が該スパン部の軸線方向の長さL2を規定しており、前記スパン部の軸線方向の接触長さCspanの前記スパン部の軸線方向の長さL2に対する比が少なくとも0.370であることを特徴とする請求項1に記載のベアリングケージ。
【請求項4】
前記スパン部の軸線方向の接触長さCspanの前記スパン部の軸線方向の長さL2に対する比が0.370〜0.621であることを特徴とする請求項3に記載のベアリングケージ。
【請求項5】
2つの中間の接触パッドが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のベアリングケージ。
【請求項6】
前記スパン部が潤滑溝を備えていることを特徴とする請求項1に記載のベアリングケージ。
【請求項7】
1以上の保持部材を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のベアリングケージ。
【請求項8】
前記1以上の保持部材の各々が、転動体を導入した際に撓むように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のベアリングケージ。
【請求項9】
前記複数の保持部材の各々が、前記転動体をベアリングケージの外部から装填した際に径方向内方へ撓むことを特徴とする請求項7記載のベアリングケージ。
【請求項10】
ベアリングケージであり、
第一の端部と、
第二の端部であって、前記第一の端部からある距離だけ隔てられてベアリングケージ全体の軸線方向長さL1を規定している第二の端部と、
複数のスパン部であって、前記第一の端部と第二の端部との間に延びている複数のスパン部とを備えており、
前記複数のスパン部の各々が、一対の遠位の接触パッドと少なくとも1つの中間の接触パッドとを規定しており、前記少なくとも1つの中間の接触パッドは、前記スパン部の軸線方向の中心に配置され、且つ前記一対の遠位の接触パッドの一方よりも円周方向に幅が広く、各接触パッドが該ベアリングケージの径方向最も外側の直径に配置されている、ことを特徴とするベアリングケージ。
【請求項11】
請求項10に記載のベアリングケージであり、
前記第一の端部が、第一の径方向外側の接触面であって前記ベアリングケージの径方向最も外側の直径に配置されて第一の軸線方向の接触長さに亘って延びている第一の径方向外側の接触面を規定しており、前記第二の端部が、第二の径方向外側の接触面であって該ベアリングケージの径方向最も外側の直径に配置されて第二の軸線方向の接触長さに亘って延びている第二の径方向外側の接触面を規定しており、前記スパン部の各々が、スパン部の軸線方向の接触長さCspanであって前記一対の遠位の接触パッドと前記少なくとも1つの中間の接触パッドとによって規定されているスパン部の軸線方向の接触長さCspanを規定しており、該ベアリングケージは、ベアリングケージ全体の接触長さCtotalを規定しており、該全体の接触長さCtotalは、第一の軸線方向の接触長さと第二の軸線方向の接触長さと前記スパン部の軸線方向の接触長さCspanとの合計であり、前記ベアリングケージ全体の接触長さCtotalの前記ベアリングケージ全体の軸線方向の長さL1に対する比が少なくとも0.351である、ことを特徴とするベアリングケージ。
【請求項12】
前記複数のスパン部の各々が、スパン部の軸線方向の長さL2と、前記一対の遠位の接触パッドと前記少なくとも1つの中間の接触パッドとによって規定されているスパン部の軸線方向の接触長さCspanとを規定しており、前記スパン部の軸線方向の接触長さCspanの前記スパン部の軸線方向の長さL2に対する比が少なくとも0.338である、ことを特徴とする請求項11に記載のベアリングケージ。
【請求項13】
ベアリングケージであり、
第一の端部と、
第二の端部であって前記第一の端部からある距離だけ隔てられている第二の端部と、
複数のスパン部であって、前記第一の端部と前記第二の端部との間に延びていてスパン部の軸線方向の長さL2を規定しており、各スパン部がスパン部の軸線方向の接触長さCspanであって該ベアリングケージの径方向最も外側の直径に一対の遠位の接触パッドと前記スパン部の前記一対の遠位の接触パッドの間に配置され、且つ前記スパン部の軸線方向の中心に配置された少なくとも1つの中間の接触パッドによって規定されている前記スパン部の軸線方向の長さCspanを規定している複数のスパン部とを備えており、
前記少なくとも1つの中間の接触パッドは、前記一対の遠位の接触パッドの一方よりも円周方向に幅が広く、
前記スパン部の軸線方向の接触長さCspanの前記スパン部の軸線方向の長さL2に対する比が少なくとも0.370であることを特徴とするベアリングケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベアリングケージに関し、更に特定すると、改良されたPV(圧力×速度)機能を備えたベアリングケージに関する。
【0002】
(優先権の主張)
本願は2009年6月15日に出願された米国仮特許出願第61/186,997号に基づく優先権を主張しており、これに言及することによってその全開示内容が参考として本願に組み入れられている。
【背景技術】
【0003】
ベアリングは、一般的に、2つの接触部品が相対的に回転するとき例えば自動変速装置及び遊星歯車装置においてはいつでも使用される。部品の組立中において、個々の転動体の取り扱いは煩雑であり且つ時間がかかる。これらの問題に対処するために、転動体は、ベアリングケージ内に取り付けられて、転動体の取り付けが簡素化でき且つ部品の組立て及び作動中に等しい転動体間隔を維持することができる軽量で操作し易いアセンブリが形成される。
【0004】
ベアリングアセンブリは、ひとたび取り付けられると、遊星歯車装置の通常の作動によって遊星歯車軸及びキャリヤ歯車軸に対して同時に回転せしめられる。ベアリングケージの体積のために、回転によって大きな向心加速度従ってベアリングケージの径方向外方への動きが生じてベアリングケージが該ベアリングケージが受け入れられる穴の内面に接触せしめられる。枠の速度が増大するにつれて、各々の穴の内面に接触しているケージの内面の圧力も同様に増大する。最終的には、付加される速度に加えて、圧力によって、ベアリングケージが受けるPV(圧力×速度)が増大せしめられ且つベアリングアセンブリの作動エンベロープが制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改良されたPV(圧力×速度)機能を備えたベアリングケージを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの遊星歯車装置を備えている変速装置において使用するためのベアリングアセンブリに関する。該ベアリングアセンブリは、大きな外側面領域を備えている通常の動作状態で小さなPVを生じさせるベアリングケージを備えている。特別な幾何学的構造例えば接触領域、接触領域の配置及び接触位置の数は、ベアリングケージが受けるPVをより効率良く増大させるように処理される。該ベアリングケージは更に、各転動体がケージの外部から装填されるようにする機能をも備えている。
【0007】
一つの実施例においては、該ベアリングケージは、第一の端部であって前記ベアリングケージの径方向最も外側の直径に規定されており且つ第一の軸線方向の接触長さを有している第一の端部と、第二の端部であって前記第一の端部からある距離だけ隔てられており且つ前記ベアリングケージの径方向最も外側の直径において規定されており且つ第二の軸線方向の接触長さを有している第二の端部と、複数のスパン部であって前記第一の端部と第二の端部との間に延びている複数のスパン部とを備えている。各々のスパン部は、スパン部の軸線方向の接触長さC
spanを規定しており、該スパン部の軸線方向の接触長さは、ベアリングケージの径方向最も外側の直径に該スパン部上の少なくとも1つの接触パッドによって規定されている。前記第一の軸線方向の接触長さと第二の軸線方向の接触長さとスパン部の軸線方向の接触長さC
spanとを合計した値は、ベアリングケージの全体の接触長さを規定しており、該全体の接触長さC
totalの前代の軸線方向の長さL
1に対する比は少なくとも0.380である。
【0008】
別の実施例においては、前記ベアリングケージは、第一の端部と、第二の端部であって前記第一の端部からある距離だけ隔てられていて全体の軸線方向長さL
1を規定している第二の端部と、複数のスパン部であって前記第一の端部と第二の端部との間に延びている複数のスパン部とを備えている。前記複数のスパン部は、一対の遠位の接触パッドと少なくとも1つの中間の接触パッドとを規定しており、各接触パッドはベアリングケージの径方向最も外側の直径に配置されている。
【0009】
更に別の実施例においては、ベアリングケージは、第一の端部と、該第一の端部からある距離だけ隔てられている第二の端部と、複数のスパン部であって前記第一の端部と第二の端部との間に延びていてスパン部の軸線方向の長さL
2を規定している複数のスパン部とを備えている。各スパン部はスパン部の軸線方向の接触長さC
spanを規定しており、該軸線方向の接触長さC
spanは、ベアリングケージの径方向最も外側の直径にスパン部上の少なくとも1つの接触パッドによって規定されており、前記スパン部の軸線方向の接触長さC
spanの前記スパン部の軸線方向の長さL
2に対する比率は少なくとも0.370である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、遊星歯車装置の斜視図であり、該遊星歯車装置は本発明を実施したベアリングアセンブリを備えている。
【
図2】
図2は、
図1の遊星歯車装置のベアリングアセンブリの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のベアリングアセンブリのベアリングケージの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のベアリングケージの代替実施例の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図3のベアリングケージの代替実施例の断面図である。
【
図7a】
図7aは、従来技術によるベアリングケージの断面図である。
【
図7b】
図7bは、従来技術によるベアリングケージの断面図である。
【
図7c】
図7cは、別の従来技術によるベアリングケージの斜視図である。
【0011】
本発明の実施例を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が以下に説明若しくは記載され又は図面に示されている構成要素の構造及び配置の細部に限定されないことは理解されるべきである。本発明は、他の実施例による実施ができ且つ限定的なものとみなされるべきではないことも理解されるべきである。本明細書においては、“含んでいる”、“備えている”又は“有している”及びこれらを変形させた表現は、列挙されている物品、それらの等価物及び付加的な物品をも包含することを意味している。否定して特定され又は限定されていない限り、“取り付けられる”、“支持される”及び“結合される”並びにこれらを変形させた表現が広く使用され、直接的取り付け及び間接的取り付けの両方、結合、支持及び連結が包含されている。更に、“結合された”及び“連結された”という用語は、物理的又は機械的な結合又は連結に限定されない。
【実施例1】
【0012】
図1及び2には、自動変速装置の遊星歯車装置14において使用するためのベアリングアセンブリ10が示されている。しかしながら、当業者は、該ベアリングアセンブリはまた他の用途においても使用することができることがわかるであろう。ベアリングアセンブリ10は、中心軸線18と中心軸線18と同軸のベアリングケージ22と複数の転動体24(例えば、針状ころ)とを備えており、転動体24は、ベアリングケージ22に収容され且つベアリングケージ22に対して回転可能である。図示されている実施例においては、遊星歯車装置14は1以上の遊星歯車26を備えており、遊星歯車26の各々はベアリングアセンブリ10を受け入れることができる形状とされている中心穴30を備えている。ベアリングアセンブリ10はその代わりとして歯車軸34を収容しており、歯車軸34は遊星歯車26及び中心軸線18と同軸である。ベアリングアセンブリ10は、遊星歯車26が歯車軸34に対して相対的に回転するのを許容する一方でそれらの間の回転摩擦を最少にしている。通常の動作中においては、複数の転動体24は、中心穴30の内面31と歯車軸34の外径36との両方に接触している。
【0013】
図2〜4aを参照すると、ベアリングケージ22は、各転動体24を収容しており且つ遊星歯車装置14の製造、組立て及び作動中に軽量で取り扱いが容易なアセンブリとして機能する。ベアリングケージ22は、転動体24の各々を外側から受け入れ、更に、転動体24をベアリングケージ22内の全ての他の転動体24に対して一定の相対的な位置に維持している。遊星歯車アセンブリ14の通常の動作中に、ベアリングケージ22は転動体24の回転を制限していない。
【0014】
ベアリングケージ22は、ほぼ円筒形であり且つ第一の端部38であって実質的に環状であり且つ中心軸線18と同軸である第一の端部38と、第二の端部42であって第一の端部38からある距離だけ隔てられており且つ中心軸線18と同軸の第二の端部42と、複数のスパン部分又は部材46であって前記第一の端部38と第二の端部42との間に軸線方向に延びている複数のスパン部とを備えている。通常の動作中に、ベアリングケージ22は、中心軸線18と遊星歯車装置14の中心に配置されているキャリヤの軸線19との両方を中心として同時に回転する。通常の変速速度では、ベアリングケージ22は向心加速度を受け、この向心加速度はケージ22を潜在的に変形させる。更に特定すると、この向心加速度によって、ケージ22の径方向最も外側の領域が中心穴30の内面に接触するまで径方向外方へ拡張せしめられる。遊星歯車装置14の全体の回転速度が付加的に増大すると大きな力が生じ、これによって、ケージ22の径方向外側の面は中心穴30の内面と接触する。従って、ベアリングケージ22が受けるPVは枠速度に対して増大する。
【0015】
図2〜4aを連続して参照すると、第一の端部38及び第二の端部42は外径50(
図4を参照)を規定しており、外径50は遊星歯車26の中心穴30の直径にほぼ相当している。第一の端部38及び第二の端部42は、各々、第一の面58及び第二の面62を有しており、これらの面は外径50から径方向に内方へ向かって延びていて内径54を規定しており、内径54は歯車軸34の外径36にほぼ相当している。第一の面58及び第二の面58は、ほぼ環状であり且つ中心軸線18に対して直角である。内径54と外径50との差は、ケージ内に配置されているときの複数の転動体24(後で説明する)の外径に等しいか又はそれより小さい。第一の端部38及び第二の端部42はまた、第一の径方向外側の接触面59及び第二の径方向外側の接触面63をも規定しており、これらの接触面は、外径50の少なくとも一部分上の第一の接触長さE
1及び第二の接触長さE
2(
図4a参照)に亘って軸線方向内方へと延びている。更に、第一の端部38及び第二の端部42は、各々の導入面又は面取り面60,64をも有している。
【0016】
複数のスパン部46の各々は、第一の端部38と第二の端部42との間を軸線方向に伸長しており、直径が、外径50と少なくとも1つの第二の直径66との間で変化して1以上の接触パッド70と1以上の中間スパン74とを規定している。各接触パッド70は、スパン部46の一部分として、ニードルベアリングケージアセンブリ10の標準的な動作中に潜在的に中心穴30と接触する位置に(すなわち、外径50に)規定されている。各接触パッド70は、中心穴30の内面31との接触面積を所与量の軸線方向長さに関して最大にするための形状及び大きさとされている。更に特定すると、接触パッド70の幅は隣接する中間のスパン74よりも広い。幾つかの特別な実施例においては、ベアリングケージ22は、可能な最大の外側表面積の少なくとも20%を、中心穴30の内面31と接触する位置に有している。この最大の外側表面積は、一体の円筒形部品の外側表面積(SA
max=πDL)として規定されており、この場合、該一体の円筒形部品は、特定されているベアリングケージ22と同一の外径D(すなわち、外径50)及び同一の軸線方向全長L(すなわち、軸線方向長さL
1)を有する部品である(
図4及び4a参照)。
【0017】
図2〜4aを続けて参照すると、各々のスパン部46は、複数の接触パッド70a,b,cであって第一の端部38と第二の端部42との間に配置されている複数の接触パッド70a,b,cを規定している。更に特定すると、この実施例においては、各スパン部46は、各々、第一の端部38及び第二の端部42に隣接している一対の遠位の接触パッド70a,cと、この遠位の接触パッド同士間に配置されている1以上の中間の接触パッド70bとを規定している。単一の中間の接触パッド70bを使用している実施例においては、接触パッドは、その各々のスパン部46の長さに沿った軸線方向の中心に配置されて、通常の動作中に生じる圧力を比較的良好に分布させ且つ/又はベアリングケージ22の起こり得る変形を最少にしているのが好ましい。しかしながら、付加的な特定の実施例においては、各スパン部46は、複数の接触パッド70を、スパン部46の軸線方向の長さL
2に沿った不規則な位置に規定している。更に別の実施例においては、単一のベアリングケージ22の各スパン部46は、同じケージ22の他のスパン部とは異なる独特の数及び/又は配置の中間及び遠位の接触パッドを規定している。これと対照的に、
図7a,b,cの従来技術によるケージは、如何なる中間接触パッドも規定していない。
【0018】
図5及び6の例示構造においては、各中間接触パッド70bは、遠位の接触パッド70a,cよりも接触面積(例えば、外側の穴30の内面31と接触する面積の大きさ)が大きく且つ幾何学的接触構造(例えば、外側穴30の内面31と接触するパッドの形状)の幅が広い。しかしながら、代替的な構造においては、各接触パッド70は、特別な実施例の特別な用途に応じた類似した接触面積及び/又は特別な幾何学的接触構造を規定している(
図2〜4a参照)。更に別の実施例においては、各中間接触パッド70bは、潤滑溝80によって分離されている(
図4a参照)。
【0019】
ベアリングケージ22の各接触パッド70は、1以上の保持部材78(
図3参照)であって少なくとも1つの転動体24を収容し且つ保持するように配置されている1以上の保持部材78を備えている。各保持部材78は、少なくとも1つの隣接している保持部材78及び好ましくは少なくとも1つの中間スパン74と協働して、転動体24がベアリングケージ22に対して動くのを制限している。保持部材78は、転動体24がベアリングケージ22内へ外部から装填できるようにされており、ケージ22内に装填されつつある転動体24の少なくとも一部分を収容するときに外れるのを制限している。
【0020】
幾つかの特別な実施例においては、各保持部材78は、転動体24を導入したときに撓むように配置されている。更に特定すると、各保持部材78は、端部38,42から隔置されている1以上の中間接触パッド70bのうちの1つの上に配置されて撓みを促進することができる。保持部材78をこれらの保持部材が転動体24の導入時に撓むように配置することによって、転動体24は比較的緊密な公差で保持され、それによって、各転動体24がひとたび転動体が保持されるとベアリングケージ22に関して呈する撓み量を減すことができる。減少せしめられた転動体の撓みは、高容量の設置用途であって典型的には自動化された機械を使用している用途においては望ましい。代替的な外部からの装填技術においては、固定の保持部材は転動体に関して比較的大きな公差を必要とし、その結果、比較的大きな転動体の撓みを許容し、これはしばしば部材の中心穴30との干渉を生じさせて設置行程を妨害する。本発明においては、保持部材78は、転動体の撓みを最少化させることによって自動化されたアセンブリを補助している。
【0021】
図2〜4aに示されているように、各中間接触パッド70bには、1以上の潤滑溝80が側部に配置されている。各潤滑溝80は、ベアリングケージ22の外面に対して実質的に開いていて径方向内方へと延びている。潤滑溝80は、接触パッド70bに対して接線方向に伸長していて、ベアリングケージ22の内壁31と外面との間の潤滑油の流れを容易にする。潤滑溝80は、中間接触パッド70b間にのみ示されているけれども、接触パッド70に隣接して且つ/又は第一及び第二の端部38,42に隣接して含まれていて、潤滑油の流れ及び/又はベアリングアセンブリ10と遊星歯車26との間の相対的な回転を容易にすることができる。潤滑溝80はまた、潤滑油の流れを最適化するための形状及び/又は向きに設けることができる(例えば、“X”形状とされる)。更に、ベアリングケージ22は、ケージ22が使用されている特別な用途によって許容される場合には、如何なる潤滑溝80(
図5参照)の隙間であっても良い。
【0022】
図3及び4を連続して参照すると、前記1以上の中間スパンのうちの各中間スパン74が、スパン部46の一部分として規定されている。この部分は、その径方向最も外側の面を有し、この面は、1以上の第二の直径66(例えば、外径50よりも小さい)に配置されている。中間スパン74は、ほぼ“U”字形状であり且つ各転動体24の位置を維持するための横方向のガイドとして機能することに加えて、内側径方向の閾値をも規定している。この構造においては、各中間スパン74は、ほぼ等しい長さに亘って延びており且つ一対の接触パッド70が側部に配置されているけれども、代替実施例においては、各スパン部46は中間スパン74を規定しており、該中間スパンは第一の端部38と第二の端部42との間で特有の長さを有している。
【0023】
(実施例2,3)
特別な構造においては、スパン部46は、十分な大きさ及び/又は特性の接触パッド70を規定していて、スパン部の全長L
2の約15〜20%よりも長い長さに亘って延びている個々の中間スパン74が一つも存在しないようになされている(
図4a参照)。付加的な好ましい実施例においては、個々の中間スパン74は、一つもベアリングケージ22の軸線方向の全長L
1の約14〜23%よりも長い長さに亘って延びておらず、起こり得る変形を少なくし且つベアリングケージ22が受ける起こり得るPVを最小にしている。更に別の特別な実施例においては、中間スパン74は、ベアリングケージ22の全長(L
1)が増加しても軸線方向の長さが一定のままである。このような実施例においては、ベアリングケージ22の軸線方向の長さ(L
1)の増加は、1以上の中間パッド70bにおいてのみ生じる(
図6参照)。
【0024】
図4aを参照すると、複数のスパン部の各スパン部46は軸線方向の長さL
2を規定しており、複数の接触パッドの各接触パッド70a,b,cは各々軸線方向の接触長さC
1,C
2,C
3を規定している。接触パッドの軸線方向の長さC
1,C
2,C
3の合計は、スパン部全体の接触長さC
spanを規定している。次いで、軸線方向の長さL
2とスパン部全体の接触長さC
spanとが比較されてスパン部の接触率(C
span/L
2)が求められる。このスパン部の接触率は、ベアリングケージ22が有する作動状態におけるPVを小さくする機能を表わす補助となる。スパン部のより大きな接触率は、中心穴30の内面31とのより大きな値の接触面積とより小さいPVとに関係する。特別なPV低減構造においては、各スパン部は、約0.338〜約0.621の範囲のスパン部の接触率(C
span/L
2)をもたらす。しかしながら、幾つかの特別な実施例においては、スパン部の接触率は0.370である。これと対照的に、
図7a,b,cの従来技術によるケージは、ほんの約0.314〜約0.357のスパン部の接触率をもたらす。
【0025】
スパン部の接触率(C
span/L
2)を決定することに加えて、ベアリングケージ22に対する全接触率を計算することができる。
図4aにおいて、外径の接触面59,63は、各々、外径50における第一及び第二の軸線方向の接触長さE
1,E
2を規定している。第一及び第二の軸線方向の接触長さE
1,E
2がスパン部全体の接触長さC
spanに加算されて全体の接触長さ(E
1+E
2+C
span=C
total)が計算される。ベアリングケージ22の軸線方向の全長L
1に対する全接触長さC
totalの比は、全体の接触率(C
total/C
1)を規定する。特別なPV低減構造においては、各ベアリングケージ22は、約0.351〜約0.611の範囲の全接触率をもたらす。幾つかの特別な実施例においては、この接触率は約0.380である。これと対照的に、
図7a,b,cの従来技術によるケージは、約0.324〜約0.369の接触率をもたらす。
【0026】
図示されている実施例においては、ベアリングケージ22は、従来技術において公知の巻き付け溶接技術によって作られている。しかしながら、代替実施例においては、当業者に知られている如何なる製造技術も上記したベアリングケージ22を形成するために使用できる。更に、上記したベアリングケージ22は、如何なる数の転動体のタイプ及び/又はその変形形態例えばボール等を収容するようにし且つ種々のベアリング用途に使用することができる。
【0027】
図2を参照すると、ベアリングアセンブリ10は複数の転動体24を備えている。複数の転動体の各々の転動体24は、ほぼ円筒形であり且つベアリングケージ22の全軸線方向長さL
1(
図4a参照)よりも短い軸線方向長さに亘って延びている。組立中に、各転動体24は、ベアリングケージ22内へ外部から径方向内側に向かって装填される(例えば、外径50を介して導入される)。装填されつつある間に、各転動体24は、少なくとも1つの保持部材78と、転動体24の少なくとも一部分を受け入れ且つベアリングケージ22によって隣接しているスパン部46間に実質的に保持されるまで係合し且つ撓ませる。さらに特定すると、軸34の外径の転動体24の外径に対する比が1:3未満である実施例においては、外側からの装填は比較的容易であり、従って、組立の時間及びコストが低減される。ひとたび全ての転動体24がケージ22内に装填されると、ベアリングアセンブリ10全体が2つの相対的に回転する構成要素間例えば遊星歯車26と歯車軸34との間に設置される。
【0028】
本発明の種々の特徴は添付の特許請求の範囲に記載されている。
【符号の説明】
【0029】
10 ベアリングアセンブリ、
14 自動変速装置の遊星歯車装置、
18 中心軸線、
19 枠の軸線、
22 ベアリングケージ、
24 転動体、
26 遊星歯車、
30 中心穴、
31 中心穴の内面、
34 歯車軸、
36 歯車軸の外径、
38 第一の端部、
42 第二の端部、
46 スパン部、
50 外径、
54 内径、
58 第一の面、
59 第一の径方向外側の接触面、
62 第二の面、
63 第二の径方向外側の接触面、
60,64 引き込み又は面取り面、
66 第二の直径、
70 接触パッド、
70a,b,c 接触パッド、
74 中間スパン、
78 保持部材、
80 潤滑溝