【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されたガラス基板の割断方法は、上面が吸着面とされた第1ステージ及び第2ステージを相互に接近及び離反可能に設置すると共に、この両ステージの上面に跨るようにガラス基板を載置し、ガラス基板の割断予定線に対して、初期亀裂の形成やレーザービームの照射及び冷却水の噴射を行うものである。
【0009】
しかしながら、この特許文献1に開示されたガラス基板の割断方法は、一般的手法と同様に、ガラス基板の下面にスクライブを入れて、このスクライブを境としていわゆる折割りを行うものであるため、割断端面に微小クラックが発生するなどしてその面性状が悪化するとういう難点がある。しかも、この割断方法は、初期亀裂を形成する工程と、スクライブラインを進展させる工程と、折割りをする工程との3つの工程が必要となるため、割断作業の煩雑化や装置の複雑化を招き、生産性の低下やコスト高などの致命的な問題を惹き起こす。さらに、この割断方法では、連続的に送られる帯状の板状ガラスを、連続的に割断しようとしたならば、極めて困難な作業を強いられるという難点をも有している。
【0010】
一方、特許文献2に開示された割断方法によれば、初期亀裂を形成する工程と、この初期亀裂を熱応力により進展させてガラス基板をフルボディ切断する工程との2つの工程を実行するだけで、ガラス基板の割断を終えることができるため、割断作業を迅速化することが期待できると共に、割断端面を鏡面もしくはこれに準じる面性状とすることができるため、割断端面を適正化することが期待できる。しかしながら、同公報には、ガラス基板がどのような態様で支持されているかについては、何ら開示も示唆もされておらず、フルボディ熱応力割断を適正に行うための手法の具体性が欠落している。
【0011】
すなわち、フルボディ熱応力割断をより確実に適正化するには、ガラス基板の支持態様が極めて重要な要因となるが、従来においては、
図11(a)に示すように、定盤20の上面にガラス基板gを載置して、その上方から、矢印zで示すように、レーザー等による局部加熱と冷却水等による加熱領域の冷却とを行って、初期亀裂を進展させることが一般的とされていた。なお、このような手法は、本発明者等が従来より長期間に亘って実施していた手法であって、刊行物に発表するなどの行為は行っていない。
【0012】
しかしながら、このような単純な手法では、ガラス基板gに対して局部加熱を行った場合に、
図11(b)に示すように、当該ガラス基板gの加熱部位gaが膨張によって上方に隆起する一方、その後にガラス基板gに対して冷却を行った場合には、同図(c)に示すように、当該ガラス基板gの冷却部位gbが収縮によって窪むという事態を招く。そして、この定盤20上でガラス基板gに冷却に伴う窪み部gbが発生したならば、定盤20が邪魔になって初期亀裂が蛇行したり方向性に狂いが生じたりして進展する等の事態を招き、これに起因してガラス基板gが割断予定線に沿って正確に割断されなくなるという問題が生じる。しかも、ガラス基板gが定盤20と面接触或いは略面接触することに起因して、熱が定盤20に吸収されて充分な局部加熱が行われ得ず、このような状態で冷却を行っても温度勾配が不十分となって、熱効率が悪化することから、割断予定線に沿う正確な割断をより一層妨げるという不具合を招く。このような事態は、ガラス基板gの厚みが薄くなると顕著になる。
【0013】
そして、フルボディ熱応力割断においては、多量の熱量を必要とするため、局部加熱時における定盤等の支持部材とガラス基板との接触状態が極めて重要となるが、このような観点からは、適切な対策が講じられていないのが実情である。この場合、上述の特許文献1に開示された技術は、フルボディ熱応力割断を行うものではなく、局部加熱時の熱の逃げに対する対策を講じる必要性に乏しいことから、そのガラス基板の支持態様は、このような問題の解決を企図したものではない。
【0014】
すなわち、同公報に開示された技術は、支持部材が第1ステージと第2ステージとに分離しており、ガラス基板の割断予定線上にスクライブラインを形成するために必要な圧縮応力及び引張応力を作用させるために、第2ステージが第1ステージに対して、10μm以上且つ100μm以下の相対移動距離で接近すると共に、10μm以上且つ50μm以下の相対移動距離で離間するように構成されている。
【0015】
したがって、同公報に開示されたガラス基板の支持態様は、ガラス基板の局部加熱時における熱効率を適正に高めるためのものではなく、しかもフルボディ切断をするために充分な温度勾配を付与するためのものでもないため、ガラス基板のフルボディ熱応力切断を適正に行い得るものではない。具体的には、この支持態様は、ガラス基板のフルボディ割断に要する多量の熱量に対処可能であるか否かが不明であるばかりでなく、第2ステージが第1ステージに対して接近移動及び離間移動しなければ、ガラス基板を切断することができないため、支持構造ひいては支持装置の複雑化という致命的な問題が生じる。
【0016】
なお、以上のような問題或いはこれに類する問題は、ガラス基板等を溶断する場合にも同様にして生じ得る。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑み、ガラス基板等の板状ガラスを、切断予定線に対して少なくとも局部加熱を行うことにより切断するに際して、支持構造の複雑化や生産性の低下等を招くことなく適正に当該板状ガラスを切断できるようにすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記技術的課題を解決するために創案され
た本発明
に係る方法は、板状ガラスの切断予定線に沿って少なくとも局部加熱を行うことにより、該板状ガラスを切断する方法において、前記板状ガラスの切断予定線から両側に離隔した部位を裏面側からそれぞ
れ支持する支持部材を、前記切断予定線の裏面側に空間が形成されるように相互に離隔して配置
すると共に、前記支持部材を、前記板状ガラスを搬送する搬送手段の搬送用部材とし、且つ、前記搬送用部材が前記板状ガラスを搬送しながら、前記板状ガラスの切断予定線に沿って少なくとも局部加熱を行うことにより、該板状ガラスをフルボディ切断することに特徴づけられる。なお、「板状ガラスのフルボディ切断」には、板状ガラスの溶断も含まれる(以下、同様)。
【0019】
この場合、前記離隔して配置された各支持部材は、前記板状ガラスの切断予定線から両側に離隔した部位を裏面側からそれぞれ吸着して支持することが好ましい。
【0020】
また、前記離隔して配置された各支持部材の相互間の離隔寸法は、前記各支持部材によって前記板状ガラスが支持されている二箇所の部位における何れの部位の前記離隔方向に沿う方向の寸法よりも短くされていることが好ましい。
【0021】
以上
の構成によれば、板状ガラスは、切断予定線から両側に離隔した部位が、裏面側からそれぞれ支持部材により支持され、且つ、支持されている時には、切断予定線の裏面側に空間が形成されているため、板状ガラスの切断予定線に沿う局部加熱によってフルボディ切断する場合には、支持部材による熱の影響を受け難くなる。詳述すると、局部加熱を利用して板状ガラスをフルボディ切断しようとしたならば、多量の熱量が必要となるため、この熱量の多くが支持部材に吸収されたのでは、無駄が生じるばかりでなく、円滑なフルボディ切断に支障を来たす。そこで、本発明では、支持部材の支持面と板状ガラスとの接触部位を、切断予定線から両側に離隔させ、その双方の接触部位の間に空間を形成しているため、フルボディ切断に必要な多量の熱量で局部加熱を行っても、支持部材による熱の吸収が可及的に低減される。これにより、熱効率が改善された状態で板状ガラスの切断が行われ、フルボディ切断であることとの相乗作用に伴って、迅速化が推進されるため、生産性の向上等を図る上で極めて有利となる。しかも、大きな熱勾配が生じることにより板状ガラスの切断予定線の周辺が変形を来たしても、その裏面側の空間の存在により板状ガラスの支持に支障が生じなくなることから、切断予定線に正確に沿った高精度なフルボディ切断が可能になると共に、切断面の面性状が極めて良好なものとなる。加えて、このようなフルボディ切断であると、双方の支持部材を互いに接近移動及び離反移動させる必要がなくなり、支持構造或いは支持装置の複雑化が回避される。
そして、以上のようなフルボディ切断が行われる際には、支持部材が、板状ガラスを搬送する搬送手段の搬送用部材とされるため、板状ガラスは、その搬送用部材によって搬送される。なお、支持部材
(搬送用部材)の支持面は平坦面であることが好ましく、また当該支持面は負圧吸引等により板状ガラスを吸着保持可能な吸着面であることが好ましい。また、板状ガラスの厚みが例えば200μm以下のガラスフィルムの場合における支持部材の相互間の離間寸法(空間の幅方向寸法)は、好ましくは2mm〜50mmとされ、より好ましくは上限が20mm、下限が5mmとされる。
【0022】
この場合、前記板状ガラスの切断予定線上に初期亀裂を形成した後、該切断予定線に沿う局部加熱及びその加熱領域に対する冷却に伴って発生する応力により、前記初期亀裂を進展させて前記板状ガラスをフルボディ切断することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、板状ガラスに対する局部加熱による加熱領域とその加熱領域に対応する冷却領域とが切断予定線に沿って走査されていくに連れて、応力(熱応力)の発生領域も切断予定線に沿って移動し、これにより初期亀裂が切断予定線に沿って進展して、板状ガラスがフルボディ切断される。このような切断過程においては、板状ガラスの上述の支持態様に由来して、加熱と冷却とに起因する温度勾配を充分に確保できるため、熱量の無駄を可及的に低減させつつ、板状ガラスを円滑かつ適正にフルボディ切断することが可能となる。また、厚みが200μm以下等の薄肉の板状ガラス、即ちガラスフィルムを対象とする場合には、当該板状ガラスの切断予定線近傍の裏面が非接触状態となって支持部材の支持面上における吸着や摩擦により拘束されないことになるため、局部加熱により板状ガラスは最大限膨張し、その後の冷却で最大限収縮し得ることになる。そして、この膨張と収縮との差が初期亀裂を進展させてフルボディ切断を行うための引張応力の主因となることから、極めて効率的な加熱及び冷却によって生じた最大限の歪みを有効利用して板状ガラスを切断(割断)することが可能となる。
【0024】
上記の構成において、前記板状ガラスが、連続的に送られる帯状の板状ガラスであると共に、前記切断予定線が該帯状の板状ガラスの送り方向に沿って延びており、且つ、該帯状の板状ガラスを前記切断予定線に沿って連続的にフルボディ切断するという手法を採用するようにしてもよい。
【0025】
このようにすれば、従来は不可能であった連続的に送られる帯状の板状ガラスの送り方向に沿うフルボディ切断が可能となり、従来のように矩形のガラス基板の一辺の長さが制限された状態で切断を行う必要がなくなるため、切断効率が大幅に向上する。すなわち、既述の支持態様でフルボディ切断を行うが故に、このような連続切断が可能となるのであって、これにより切断後における板状ガラスの取り扱いや使用態様の多様化が図られる。
【0026】
そして、このような連続切断を行う場合には、前記支持部材が、前記帯状の板状ガラスを連続して送るように駆動されることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、支持部材の送り駆動に伴って帯状の板状ガラスが送られることになるため、支持部材と板状ガラスとの間に摺動等が生じ難くなり、当該板状ガラスに擦れ傷等が付くおそれがなくなると共に、当該板状ガラスの送りが安定して行われる。これにより、ガラス品位の良質化が図られると共に、切断作業の高速化及び円滑化をも図ることが可能となる。
【0028】
また、このような連続切断を行う場合には、前記切断予定線を、前記帯状の板状ガラスを幅方向の任意の部位で連続的に分断する位置に存在させることができる。
【0029】
このようにすれば、帯状の板状ガラスを幅方向(送り方向と直交する方向)の任意の部位で分割することができるため、幅方向寸法が長く成形された帯状の板状ガラスから、所望の幅方向寸法を有する帯状の板状ガラスを複数得ることが可能となる。これにより、成形装置での帯状の板状ガラスの成形能力を高めつつ、要求に応じた幅の板状ガラスを迅速且つ効率よく製作することが可能となる。
【0030】
さらに、このような連続切断を行う場合には、前記切断予定線を、前記帯状の板状ガラスの幅方向両端に形成された耳部を連続的に切除する位置に存在させることもできる。
【0031】
このようにすれば、成形装置での帯状の板状ガラスの十分な成形効率を維持した上で、当該板状ガラスにおける不要な厚肉部分である耳部を切除する作業が連続的に行えることになるため、耳部の切除作業を効率よく且つ円滑に行うことが可能となる。
【0032】
加えて、以上のような連続切断を行う場合には、前記連続的に送られる帯状の板状ガラスを、成形装置の徐冷ゾーンを経て冷却された後の帯状の板状ガラスとすることができる。
【0033】
このようにすれば、溶融ガラスが成形装置で成形されて徐冷ゾーンを通過して冷却されるという一連の連続した成形工程を経ることにより、帯状となった板状ガラスが連続的に送られている間に、当該板状ガラスが局部加熱を伴って連続的にフルボディ切断されていくことになる。これにより、成形装置による帯状の板状ガラスの成形工程と、その板状ガラスに対するフルボディ切断とが、一連の連続した作業として行われることになり、作業効率が大幅に改善される。なお、成形装置としては、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法を実施可能な装置であることが好ましい。但し、フロート法等を実施可能な成形装置が排除されるわけではない。
【0034】
更に、以上のような連続切断を行う場合には、前記連続的に送られる帯状の板状ガラスが前記切断予定線に沿って連続的にフルボディ切断されながら、巻芯の廻りにロール状に巻き取られるように構成することもできる。
【0035】
このようにすれば、既述のように耳部が切除された後における帯状の板状ガラス、または幅方向寸法が所望の寸法となるように分割された後におけるそれぞれの帯状の板状ガラスが、巻芯の廻りにロール状に巻き取られることになるので、特に帯状の薄肉板状ガラス、即ちガラスフィルムの収納や梱包をコンパクトに且つ容易に行うことが可能となる。なお、この巻き取りに際しては、帯状の板状ガラスに帯状の保護シート(例えば有機樹脂フィルム)を重ねながらロール状に巻き取っていくことが板状ガラス同士の接触による傷防止の観点から好ましい。また、幅方向において分割された後のそれぞれの帯状の板状ガラスについては、それぞれの送り方向を異ならせて別々の巻芯の廻りにそれぞれをロール状に巻き取っていくことが好ましい。
【0036】
以上の構成において、前記板状ガラスの表面側に、前記支持部材とそれぞれ対向して配置され且つ前記板状ガラスを前記支持部材との間で挟持する押え部材を配設してもよい。
【0037】
このようにすれば、板状ガラスが平置き姿勢にある場合のみならず、縦姿勢にある場合でも、該板状ガラスを支持部材と押え部材とにより挟持して保持した状態で局部加熱を伴うフルボディ切断を行うことが可能となり、板状ガラスの姿勢に関係なく適切な切断が行われ得ることになる。なお、この場合には、押え部材を、実質的に支持部材と同一の部材及び同一の構造とすることができる。
【0038】
以上の構成において、前記板状ガラスの裏面と前記支持部材の支持面との間に有機層を介在させることが好ましく、また押え部材を使用する場合にも、前記板状ガラスの表面と前記押え部材の押え面との間に有機層を介在させることが好ましい。ここで、上記の「有機層」には、有機フィルム(例えば、有機樹脂フィルム)等が含まれる。
【0039】
このようにすれば、有機層の存在により、板状ガラスの切断予定線に対する局部加熱時における支持部材及び押え部材への熱伝導が抑制されると共に、板状ガラスの支持部材及び押え部材との接触に伴う傷の発生が回避される。
【0040】
以上の構成において、前記板状ガラスの厚みは、200μm以下であれば好適である。
【0041】
すなわち、厚みが200μm以下の薄肉の板状ガラス、即ちガラスフィルムであれば、例えばホイールカッターを弱い押圧力で回転させてスクライブを刻設するに際して、当該板状ガラスが粉砕しないようにすることは困難である。また、上記のホイールカッターの押圧力が必要以上に強くなった場合には、折割りに必要な垂直クラックのみならず、切断端面の強度低下の原因となる水平方向のマイクロクラックが容易に発生する。更に、厚みが200μm以下のガラスフィルムをロール状に巻き取りつつ、長手方向に延びる切断予定線に沿って折割りを行う場合には、長距離に亘ってスクライブを形成する必要性が生じ、作業の煩雑化や困難化を余儀なくされる。このように、厚みが200μm以下のガラスフィルムにスクライブを刻設して折割りを行おうとした場合の問題は、上記の本願発明に係る方法によって一挙に解決することができ、その結果、この種の薄肉のガラスフィルムとして曲げ強度が高く且つ高品位のものを得ることが可能となる。なお、ガラスフィルムの厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0042】
以上の構成において、前記局部加熱は、炭酸ガスレーザーにより行われることが好適である。
【0043】
このように、板状ガラスの切断予定線に対する局部加熱手段として、炭酸ガスレーザーを使用すれば、ガラス(特に無アルカリガラス)がレーザーのエネルギーを効率よく吸収できるので、簡易に安定した状態で局部加熱を行うことができ、且つコストも低廉となる。
【0044】
以上の方法を使用(実施)すれば、それぞれの方法に応じた板ガラスを得る(製造する)ことができる。
【0045】
以上の方法を使用(実施)すれば、少なくとも一辺が切断されてなり且つ厚みが200μm以下である板状ガラスを得る(製造する)ことができる。
【0046】
この板状ガラス、即ちガラスフィルムは、その切断面の曲げ強度が高いことから、小さい曲率半径での曲げ等による強い引張応力に耐えることができ、従来に比して広範囲に亘って利用可能になると共に、取り扱い性に優れたものとなる。
【0047】
また、以上の方法を使用(実施)すれば、少なくとも一辺が切断されてなり且つ切断面の曲げ強度が200MPa以上であると共に厚みが200μm以下である板状ガラスを得る(製造する)ことができる。
【0048】
この板状ガラス、即ちガラスフィルムは、切断面の曲げ強度が200MPa以上であることから、より小さい曲率半径での曲げ等によるより強い引張応力に確実に耐え得ることができると共に、200MPa以上という高い値として曲げ強度が明確になることにより、この板状ガラスの取り扱いを適切な態様で具体化することができる。
【0049】
更に、以上の方法を使用(実施)すれば、巻芯の廻りにロール状に巻き取られてなる板状ガラス巻回体を得ることができる。
【0050】
この板状ガラス巻回体によれば、収納やハンドリングが容易化されると共に、輸送効率も向上する。なお、一の板状ガラス巻回体から帯状の板状ガラスを引き出しつつ他の巻芯の廻りにロール状に巻き取る手法(ロールtoロール)を実行しつつ、長手方向に延びる切断予定線に沿ってフルボディ切断する場合のプロセスが、円滑且つ容易に行い得ることになる。
【0051】
また、以上の方法により得られた(製造された)板状ガラスの切断面及び表裏面の少なくとも一面に有機層を形成するようにしてもよい。
【0052】
すなわち、得られた板状ガラスの切断面や表面或いは裏面に有機層を形成した場合には、その切断面や表裏面の強度が高められるため、例えば厚みが200μm以下の板状ガラス、即ちガラスフィルムにおいては、撓みに対して十分な強度を確保することができ、薄肉の板状ガラスが有するフレキシビリティを有効に活用することが可能となる。
【0053】
上記技術的課題を解決するために創案され
た本発明
に係る装置は、板状ガラスの切断予定線に沿って局部加熱を行う局部加熱手段を備えた板状ガラスの切断装置において、前記板状ガラスの切断予定線から両側に離隔した部位を裏面側からそれぞ
れ支持する支持部材を、前記切断予定線の裏面側に空間が形成されるように相互に離隔して配置すると共に、
前記支持部材を、前記板状ガラスを搬送する搬送手段の搬送用部材とし、且つ、前記搬送用部材が前記板状ガラスを搬送しながら、前記板状ガラスの切断予定線に沿って少なくとも局部加熱手段により局部加熱を行うことにより、該板状ガラスをフルボディ切断するように構成したことに特徴づけられる。
【0054】
この場合、前記離隔して配置された各支持部材は、前記板状ガラスの切断予定線から両側に離隔した部位を裏面側からそれぞれ吸着して支持するように構成されていることが好ましい。
【0055】
また、前記離隔して配置された各支持部材の相互間の離隔寸法は、前記各支持部材によって前記板状ガラスが支持されている二箇所の部位における何れの部位の前記離隔方向に沿う方向の寸法よりも短くなるように構成されていることが好ましい。
【0056】
以上
の構成を備えた装置についての作用効果を含む説明事項は、これらの装置と実質的に構成要素が同一である上述の本発明に係る方法について説明した事項と本質的に同一である。
【0057】
これらの装置については、前記板状ガラスの切断予定線上に初期亀裂を形成する亀裂形成手段と、前記局部加熱手段により局部加熱された加熱領域を冷却する冷却手段とをさらに備え、前記局部加熱手段及び冷却手段によって応力を発生させることにより、前記初期亀裂を進展させて前記板状ガラスをフルボディ切断するように構成してもよい。
【0058】
この構成を備えた装置についての作用効果を含む説明事項も、この装置と実質的に構成要素が同一である上述の本発明に係る方法について説明した事項と本質的に同一である。