特許第5719599号(P5719599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719599
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20150430BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01L21/302 101H
   H01L21/68 N
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-2251(P2011-2251)
(22)【出願日】2011年1月7日
(65)【公開番号】特開2012-146743(P2012-146743A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】山涌 純
(72)【発明者】
【氏名】輿水 地塩
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−251723(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0213171(US,A1)
【文献】 特開2008−244274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理室と、前記処理室内に配置された基板の周縁を囲むフォーカスリングと、レーザ光を透過するレーザ光透過部材と、該レーザ光透過部材にレーザ光を照射するレーザ光照射装置とを備える基板処理装置であって、
前記フォーカスリングは、前記基板に隣接して配置され且つ冷却される内側フォーカスリングと、該内側フォーカスリングを囲み且つ冷却されない外側フォーカスリングとを有し、
前記レーザ光透過部材は、前記外側フォーカスリングの下のみに配置され、且つ前記内側フォーカスリング及び前記外側フォーカスリングの隙間に対向する対向面を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記レーザ光透過部材は石英からなり、前記外側フォーカスリングは珪素又は炭化珪素からなり、前記レーザ光の波長は1100nm以下であることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記レーザ光照射装置は前記波長が1100nm以下のレーザ光とは他のレーザ光も照射することを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記内側フォーカスリング及び前記外側フォーカスリングは珪素又は炭化珪素からなり、前記レーザ光の波長は1100nmより大きいことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスリングを備える基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスが製造される半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)の大口径化が進むに連れてウエハの周縁部、例えば、ウエハの周縁から中心方向10mm以下の範囲からも半導体デバイスを得ることが求められている。ところで、ウエハにプラズマ処理を施すプラズマ中のラジカルの分布は対象物の温度分布に影響を受けるため、ウエハ全体にラジカルによって均一な処理を施すためにはウエハの周縁部の温度を該ウエハの他の部分の温度とほぼ同じになるように制御する必要がある。そこで、従来、フォーカスリングの輻射熱を減少させるために、フォーカスリングを温度調整して冷却する技術が開発されてきた。
【0003】
但し、フォーカスリングを冷却することによってウエハ全体の温度が極端に低下するとウエハに塗布されたパターンマスクとしてのレジスト膜がプラズマによって削られやすくなるため、ウエハ全体の温度が極端に低下するのを防止するために冷却されるフォーカスリング(以下、「内側フォーカスリング」という。)の外側にさらに別のフォーカスリング(以下、「外側フォーカスリング」という。)を設け、該別のフォーカスリングを冷却しない技術、寧ろ積極的に加熱する技術が出願人によって開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−021079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、堆積物は温度差の大きい2つの部品の隙間において低温の部品に付着しやすいため、上述した内側フォーカスリングと外側フォーカスリングとからなる、いわゆる2分割フォーカスリングを用いる場合、2つのフォーカスリングの隙間において内側フォーカスリングに堆積物が付着しやすいことが本発明者によって確認されている。
【0006】
内側フォーカスリング及び外側フォーカスリングの隙間は狭く、プラズマが進入しにくいため、内側フォーカスリングに付着した堆積物をアッシング等によって除去するのは困難である。したがって、堆積物を除去するためにチャンバを大気開放して内側フォーカスリングを取り出し、該内側フォーカスリングから堆積物を拭き取る必要がある。その結果、基板処理装置の稼働率を低下させるという問題がある。
【0007】
また、基板処理装置では、内側フォーカスリングや外側フォーカスリングが載置されるサセプタは冷却されて内側フォーカスリングよりもさらに温度が低くなるため、内側フォーカスリング及びサセプタの温度差は大きくなり、内側フォーカスリングとサセプタとの隙間においても堆積物がサセプタに付着する。
【0008】
内側フォーカスリングとサセプタとの隙間も狭いため、堆積物を除去するためにチャンバを大気開放して内側フォーカスリングを取り出し、サセプタを露出させてから堆積物を拭き取る必要がある。その結果、やはり、基板処理装置の稼働率を低下させるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、温度差の大きい2つの部品の隙間において低温の部品に付着した堆積物を、基板処理装置の稼働率を低下させることなく除去することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理装置は、基板を収容する処理室と、前記処理室内に配置された基板の周縁を囲むフォーカスリングと、レーザ光を透過するレーザ光透過部材と、該レーザ光透過部材にレーザ光を照射するレーザ光照射装置とを備える基板処理装置であって、前記フォーカスリングは、前記基板に隣接して配置され且つ冷却される内側フォーカスリングと、該内側フォーカスリングを囲み且つ冷却されない外側フォーカスリングとを有し、前記レーザ光透過部材は、前記外側フォーカスリングの下のみに配置され、且つ前記内側フォーカスリング及び前記外側フォーカスリングの隙間に対向する対向面を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記レーザ光透過部材は石英からなり、前記外側フォーカスリングは珪素又は炭化珪素からなり、前記レーザ光の波長は1100nm以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の基板処理装置は、請求項2記載の基板処理装置において、前記レーザ光照射装置は前記波長が1100nm以下のレーザ光とは他のレーザ光も照射することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記内側フォーカスリング及び前記外側フォーカスリングは珪素又は炭化珪素からなり、前記レーザ光の波長は1100nmより大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レーザ光を透過するレーザ光透過部材が内側フォーカスリング及び外側フォーカスリングの隙間に対向する対向面を有するので、レーザ光透過部材を透過したレーザ光が内側フォーカスリング及び外側フォーカスリングの隙間に向けて照射されて内側フォーカスリング及び外側フォーカスリングの隙間における堆積物の温度を上昇させ、堆積物の分解除去を促進することができる。これにより、内側フォーカスリングに付着した堆積物を拭き取る必要がないので、温度差の大きい内側フォーカスリング及び外側フォーカスリングの隙間において低温の内側フォーカスリングに付着した堆積物を、基板処理装置の稼働率を低下させることなく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
図2】本実施の形態に係る基板処理装置が有するフォーカスリング近傍の構成を概略的に示す拡大断面図であり、図2(A)は本実施の形態に係る基板処理装置を示し、図2(B)は本実施の形態に係る基板処理装置の変形例を示す。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置が有するフォーカスリング近傍の構成を概略的に示す拡大断面図であり、図3(A)は本実施の形態に係る基板処理装置を示し、図3(B)は本実施の形態に係る基板処理装置の変形例を示す。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置が有するフォーカスリング近傍の構成を概略的に示す拡大断面図であり、図4(A)は本実施の形態に係る基板処理装置を示し、図4(B)は本実施の形態に係る基板処理装置の第1の変形例を示し、図4(C)は本実施の形態に係る基板処理装置の第2の変形例を示し、図4(D)は本実施の形態に係る基板処理装置の第3の変形例を示す。
図5】堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図であり、図5(A)は第1例を示し、図5(B)は第2例を示し、図5(C)は第3例を示し、図5(D)は第4例を示し、図5(E)は第5例を示し、図5(F)は第6例を示す。
図6】堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図であり、図6(A)は第7例を示し、図6(B)は第8例を示し、図6(C)は第9例を示し、図6(D)は第10例を示す。
図7】堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図であり、図7(A)は第11例を示し、図7(B)は第12例を示す。
図8】堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置の第13例が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す図である。本基板処理装置は、基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)にプラズマエッチング処理を施す。
【0028】
図1において、基板処理装置10は、例えば、直径が300mmのウエハWを収容するチャンバ11を有し、該チャンバ11内にはウエハWを載置する円柱状のサセプタ12(載置台)が配置されている。基板処理装置10では、チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路13が形成される。この側方排気路13の途中には排気プレート14が配置される。
【0029】
排気プレート14は多数の貫通孔を有する板状部材であり、チャンバ11内部を上部と下部に仕切る仕切り板として機能する。排気プレート14によって仕切られたチャンバ11内部の上部(以下、「処理室」という。)15の内部空間(処理空間)には後述するようにプラズマが発生する。また、チャンバ11内部の下部(以下、「排気室(マニホールド)」という。)16にはチャンバ11内のガスを排出する排気管17が接続される。排気プレート14は処理室15に発生するプラズマを捕捉又は反射してマニホールド16への漏洩を防止する。
【0030】
排気管17にはTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示しない)が接続され、これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DPはチャンバ11内を大気圧から中真空状態(例えば、1.3×10Pa(0.1Torr)以下)まで減圧し、TMPはDPと協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態(例えば、1.3×10−3Pa(1.0×10−5Torr)以下)まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。
【0031】
チャンバ11内のサセプタ12には第1の高周波電源18が第1の整合器19を介して接続され、且つ第2の高周波電源20が第2の整合器21を介して接続されており、第1の高周波電源18は比較的低い周波数、例えば、2MHzのイオン引き込み用の高周波電力をサセプタ12に印加し、第2の高周波電源20は比較的高い周波数、例えば、60MHzのプラズマ生成用の高周波電力をサセプタ12に印加する。これにより、サセプタ12は電極として機能する。また、第1の整合器19及び第2の整合器21は、サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への印加効率を最大にする。
【0032】
サセプタ12の上部周縁部には、該サセプタ12の中央部分が図中上方へ向けて突出するように、段差が形成される。該サセプタ12の中央部分の先端には静電電極板22を内部に有するセラミックスからなる静電チャック23が配置されている。静電電極板22には直流電源24が接続されており、静電電極板22に正の直流電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック23側の面(以下、「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板22及びウエハWの裏面の間に電位差が生じ、該電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック23に吸着保持される。
【0033】
また、サセプタ12は内部に冷媒流路からなる冷却機構(図示しない)を有し、該冷却機構はプラズマと接触して温度が上昇するウエハWの熱をサセプタ12を介して吸収することによってウエハWの温度が所望の温度以上になるのを防止する。
【0034】
サセプタ12は伝熱効率や電極機能を考慮して導電体、例えば、アルミニウムから構成されるが、導電体をプラズマが発生する処理室15へ晒すのを防止するために、該サセプタ12は側面を誘電体、例えば、石英(SiO)からなる側面保護部材26によって覆われる。
【0035】
さらに、サセプタ12の上部には、静電チャック23に吸着保持されたウエハWを囲うように、フォーカスリング25がサセプタ12の段差(載置面)や側面保護部材26へ載置される。フォーカスリング25は、ウエハWを囲む内側フォーカスリング25aと、該内側フォーカスリング25aを囲む外側フォーカスリング25bとからなる2分割フォーカスリングであり、内側フォーカスリング25a及び外側フォーカスリング25bは珪素(Si)又は炭化珪素(SiC)からなる。すなわち、フォーカスリング25は半導電体からなるので、プラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング25上まで拡大してウエハWの周縁部上におけるプラズマの密度を該ウエハWの中央部上におけるプラズマの密度と同程度に維持する。これにより、ウエハWの全面に施されるプラズマエッチング処理の均一性を確保する。
【0036】
内側フォーカスリング25aは主としてサセプタ12の段差に載置され、外側フォーカスリング25bは主として側面保護部材26に載置されるが、内側フォーカスリング25a及びサセプタ12の間には、後述の図2(A)に示すように、伝熱特性を有する伝熱性シリコンゴム等からなる伝熱シート34が介在する。伝熱シート34はプラズマに接触して温度が上昇する内側フォーカスリング25aの熱をサセプタ12へ伝熱し、該サセプタ12の冷却機構に吸収させる。一方、外側フォーカスリング25b及び側面保護部材26の間には何も介在しないため、処理室15の内部空間が減圧されると外側フォーカスリング25b及び側面保護部材26の間には真空断熱層が発生し、プラズマに接触して温度が上昇する外側フォーカスリング25bの熱は側面保護部材26へ伝熱されず、その結果、外側フォーカスリング25bは冷却されないため、外側フォーカスリング25bの温度は高いまま維持される。これにより、内側フォーカスリング25aの温度を所望の低温に維持することができるとともに、外側フォーカスリング25bの温度を高温に維持することができる。
【0037】
チャンバ11の天井部には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド27が配置される。シャワーヘッド27は、上部電極板28と、該上部電極板28を着脱可能に釣支するクーリングプレート29と、該クーリングプレート29を覆う蓋体30とを有する。上部電極板28は厚み方向に貫通する多数のガス孔31を有する円板状部材からなる。クーリングプレート29の内部にはバッファ室32が設けられ、このバッファ室32には処理ガス導入管33が接続されている。
【0038】
基板処理装置10では、処理ガス導入管33からバッファ室32へ供給された処理ガスがガス孔31を介して処理室15の内部空間へ導入され、該導入された処理ガスは、第2の高周波電源20からサセプタ12を介して処理室15の内部空間へ印加されたプラズマ生成用の高周波電力によって励起されてプラズマとなる。該プラズマ中のイオンは、第1の高周波電源18がサセプタ12に印加するイオン引き込み用の高周波電力によってウエハWに向けて引きこまれ、該ウエハWにプラズマエッチング処理を施す。
【0039】
ウエハWにプラズマエッチング処理が施される間、ウエハWの被エッチング層とプラズマとが反応して生成された反応生成物が処理室15の内部空間を漂い、処理室15の各部位へ堆積物として付着する。特に、堆積物は温度差の大きい2つの部品の隙間において低温の部品に付着する傾向があるため、内側フォーカスリング25a及び外側フォーカスリング25bの隙間において内側フォーカスリング25aに付着する。内側フォーカスリング25a及び外側フォーカスリング25bの隙間は狭く、また、ラビリンス構造を呈するため、内側フォーカスリング25aに付着した堆積物を、該内側フォーカスリング25aをチャンバ11から取り出すことなく、そのまま除去するのは困難である。本実施の形態では、これに対応して、以下に説明する構成を備える。
【0040】
図2は、本実施の形態に係る基板処理装置が有するフォーカスリング近傍の構成を概略的に示す拡大断面図であり、図2(A)は本実施の形態に係る基板処理装置を示し、図2(B)は本実施の形態に係る基板処理装置の変形例を示す。
【0041】
図2(A)において、側面保護部材26(レーザ光透過部材)はレーザ光を透過する材料、例えば、石英からなり、内側フォーカスリング25a及び外側フォーカスリング25bの隙間(以下、「第1の隙間」という。)に向けて上方へ突出する突出部26aを有し、該突出部26aには、第1の隙間における内側フォーカスリング25aに対向する対向面26bが設けられている。また、側面保護部材26よりも図中下方にはレーザ光照射装置(図示しない)が配されて該レーザ光照射装置は側面保護部材26に向けて、例えば、波長が1100nm以下のフォーカスリング加熱用のレーザ光36を照射する。
【0042】
側面保護部材26に入射されたレーザ光36は、側面保護部材26の各内表面において反射を繰り返しながら、側面保護部材26の上部から外側フォーカスリング25bへ照射される。外側フォーカスリング25bは珪素又は炭化珪素からなるため、波長が1100nm以下のレーザ光36を吸収し、該吸収したレーザ光36のエネルギーによって外側フォーカスリング25bは加熱される。このとき、突出部26aの対向面26bは第1の隙間における内側フォーカスリング25aに対向するので、レーザ光36の一部は対向面26bから内側フォーカスリング25aへ向けて照射される。該レーザ光36の一部は内側フォーカスリング25aに付着した堆積物に吸収されて該堆積物の温度を上昇させ、堆積物の分解除去を促進することができる。これにより、内側フォーカスリング25aに付着した堆積物を拭き取る必要がないので、温度差の大きい第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物を、基板処理装置10の稼働率を低下させることなく除去することができる。
【0043】
なお、内側フォーカスリング25aに照射されるフォーカスリング加熱用のレーザ光36の一部の光量が少なくて堆積物の温度が充分に上昇しないときは、フォーカスリング加熱用のレーザ光36とは他のレーザ光、例えば、堆積物に効率的に吸収されるレーザ光を側面保護部材26に照射して該他のレーザ光の一部を対向面26bから内側フォーカスリング25aへ向けて照射してもよい。これにより、堆積物の温度を充分且つ効率的に上昇させることができる。
【0044】
また、第1の隙間へ向けてレーザ光を直接的に照射できない場合、例えば、第1の隙間がラビリンス構造を呈する場合、図2(B)に示すように、側面保護部材26とは別に第1の隙間に対向するように、サセプタ12及び側面保護部材26の間に、例えば、石英からなるレーザ光ガイド部材37(レーザ光透過部材)が配され、レーザ光ガイド部材37よりも図中下方には他のレーザ光照射装置(図示しない)が配されて該他のレーザ光照射装置はレーザ光ガイド部材37に向けて、例えば、波長が1100nmより大きいレーザ光38が照射される。
【0045】
レーザ光ガイド部材37に入射されたレーザ光38は、レーザ光ガイド部材37を透過する間、該レーザ光ガイド部材37の各内表面において反射を繰り返しながら、レーザ光ガイド部材37の上部から第1の隙間へ照射される。ここで、第1の隙間はラビリンス構造を呈するため、例えば、内側フォーカスリング25aの一部や外側フォーカスリング25bの一部がレーザ光38の光路上に存在するが、珪素や炭化珪素は波長が1100nmよりも大きいレーザ光を透過させるので、レーザ光38は内側フォーカスリング25aの一部や外側フォーカスリング25bを透過して第1の隙間に到達し、第1の隙間における堆積物に吸収されて該堆積物の温度を上昇させる。これにより、第1の隙間における堆積物の分解除去を促進することができる。
【0046】
また、第1の隙間及び他のレーザ光照射装置の間に、レーザ光を吸収する部品や部材が配されていない場合、他のレーザ光照射装置はレーザ光ガイド部材37の下方だけでなく、チャンバ11の側壁近傍やチャンバ11の上方の蓋の近傍に配されてもよい。この場合、他のレーザ光照射装置は第1の隙間を指向するのが好ましい。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0048】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0049】
図3は、本実施の形態に係る基板処理装置が有するフォーカスリング近傍の構成を概略的に示す拡大断面図であり、図3(A)は本実施の形態に係る基板処理装置を示し、図3(B)は本実施の形態に係る基板処理装置の変形例を示す。
【0050】
図3(A)において、基板処理装置10はサセプタ12の段差から突出自在なプッシャーピン39(フォーカスリング移動装置)をさらに備える。プッシャーピン39は上方に向けて突出する際、内側フォーカスリング25aを持ち上げて外側フォーカスリング25bから離間させる。通常、堆積物はプラズマと接触すると、特にラジカルと化学反応して分解されて除去される。ここで、プッシャーピン39によって持ち上げられた内側フォーカスリング25aは処理室15の内部空間におけるプラズマに晒されるので、内側フォーカスリング25aに付着した堆積物のプラズマによる分解除去を促進することができる。これにより、内側フォーカスリング25aに付着した堆積物を拭き取る必要がないので、温度差の大きい第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物を、基板処理装置10の稼働率を低下させることなく除去することができる。
【0051】
また、図3(B)において、基板処理装置10は側面保護部材26の上面から突出自在なプッシャーピン40(フォーカスリング移動装置)をさらに備える。プッシャーピン40は上方に向けて突出する際、外側フォーカスリング25bを持ち上げて内側フォーカスリング25aから離間させる。本変形例では、外側フォーカスリング25bが内側フォーカスリング25aから離間されるので、内側フォーカスリング25aに付着した堆積物は処理室15の内部空間におけるプラズマに晒される。これにより、内側フォーカスリング25aに付着した堆積物のプラズマによる分解除去が促進されて、第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物を拭き取ることなく、当該堆積物を除去することができる。
【0052】
上述した本実施の形態における堆積物除去は、基板処理装置10においてWLDC(Wafer Less Dry Cleaning)処理が実行される際に実行される。また、本実施の形態では、内側フォーカスリング25aや外側フォーカスリング25bを移動させる装置としてプッシャーピンを用いるので、基板処理装置10の構成が複雑になるのを防止することができる。
【0053】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0054】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0055】
図1の基板処理装置10では、サセプタ12へのフォーカスリング25の脱着を容易にするために、サセプタ12の側面及び内側フォーカスリング25aの内側面の間には所定の幅の隙間が設けられるが、サセプタ12は内蔵する冷却機構によって直接的に冷却されるため、内側フォーカスリング25aの温度は内側フォーカスリング25aの温度よりもかなり低くなる。すなわち、サセプタ12の側面及び内側フォーカスリング25aの内側面の隙間(以下、「第2の隙間」という。)では温度差が大きくなる。したがって、第2の隙間においてサセプタ12に堆積物が付着する。
【0056】
本実施の形態では、これに対応して、第1の隙間だけでなく第2の隙間に対向するようにプラズマを片寄せる。
【0057】
図4は、本実施の形態に係る基板処理装置が有するフォーカスリング近傍の構成を概略的に示す拡大断面図であり、図4(A)は本実施の形態に係る基板処理装置を示し、図4(B)は本実施の形態に係る基板処理装置の第1の変形例を示し、図4(C)は本実施の形態に係る基板処理装置の第2の変形例を示し、図4(D)は本実施の形態に係る基板処理装置の第3の変形例を示す。
【0058】
図4(A)において、基板処理装置10は、側面保護部材26の外側であって外側フォーカスリング25bの下方に配置された、半導体又は導電体、例えば、珪素からなる接地部材41(プラズマ偏在装置)をさらに備える。接地部材41の電位は接地に維持される。
【0059】
本実施の形態では、外側フォーカスリング25bの近傍に接地部材41が配置されるため、外側フォーカスリング25bの電位も接地電位に近くなる。一方、サセプタ12や内側フォーカスリング25aには負のバイアス電位が生じるため、外側フォーカスリング25bの電位が相対的に高くなり、電子を引き込みやすい。その結果、外側フォーカスリング25bに対向するシースの厚さを大きくすることができ、処理室15の内部空間におけるプラズマを外側フォーカスリング25bに対向する位置から内側フォーカスリング25aに対向する位置へ片寄せることができる。これにより、第1の隙間や第2の隙間に対向するプラズマの密度を上昇させることができ、第1の隙間や第2の隙間へ進入するプラズマを増加させることができる。その結果、第1の隙間や第2の隙間における堆積物のプラズマによる分解除去を促進することができ、内側フォーカスリング25aやサセプタ12に付着した堆積物を拭き取る必要を無くすことができる。これにより、第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物、並びに第2の隙間においてより低温のサセプタ12に付着した堆積物を、基板処理装置10の稼働率を低下させることなく除去することができる。
【0060】
図4(B)において、基板処理装置10は、側面保護部材26内において外側フォーカスリング25bの近傍に配置された接地電位の接地電極42(プラズマ偏在装置)をさらに備える。
【0061】
本実施の形態では、外側フォーカスリング25bの近傍に接地電極42が配置されるため、外側フォーカスリング25bの電位も接地電位に近くなる。その結果、処理室15の内部空間におけるプラズマを外側フォーカスリング25bに対向する位置から内側フォーカスリング25aに対向する位置へ片寄せることができる。これにより、第1の隙間や第2の隙間に対向するプラズマの密度を上昇させることができ、第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物、並びに第2の隙間においてより低温のサセプタ12に付着した堆積物を、基板処理装置10の稼働率を低下させることなく除去することができる。
【0062】
図4(C)において、基板処理装置10は、側面保護部材26内において外側フォーカスリング25bの近傍に配置された、正の直流電圧が印加される正電位電極43(プラズマ偏在装置)をさらに備える。
【0063】
本実施の形態では、外側フォーカスリング25bの近傍に正電位電極43が配置されるため、外側フォーカスリング25bの電位も正電位となる。その結果、処理室15の内部空間におけるプラズマを外側フォーカスリング25bに対向する位置から内側フォーカスリング25aに対向する位置へより片寄せることができる。これにより、第1の隙間や第2の隙間に対向するプラズマの密度を上昇させることができ、第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物、並びに第2の隙間においてより低温のサセプタ12に付着した堆積物を、基板処理装置10の稼働率を低下させることなく除去することができる。
【0064】
図4(D)において、基板処理装置10は、フォーカスリング25の下方において第1の隙間の近傍に配置された電磁石44(プラズマ偏在装置)をさらに備える。
【0065】
本実施の形態では、電磁石44が第1の隙間を中心に磁界を発生させて処理室15の内部空間におけるプラズマを外側フォーカスリング25bに対向する位置から内側フォーカスリング25aに対向する位置へ片寄せる。これにより、第1の隙間や第2の隙間に対向するプラズマの密度を上昇させることができ、第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物、並びに第2の隙間においてより低温のサセプタ12に付着した堆積物を、基板処理装置10の稼働率を低下させることなく除去することができる。
【0066】
以上、本発明について、上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0067】
なお、上述した各実施の形態は、半導体デバイス用のウエハWをプラズマエッチング処理する基板処理装置10だけでなく、LCD(Liquid Crystal Display)を含むFPD(Flat Panel Display)等に用いる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等をプラズマを用いて処理する基板処理装置にも適用することができる。
【0068】
以上、第1の隙間において低温の内側フォーカスリング25aに付着した堆積物、並びに第2の隙間においてより低温のサセプタ12に付着した堆積物を、基板処理装置10の稼働率を低下させることなく除去することができる本発明の実施の形態について説明したが、プラズマエッチング処理において第1の隙間や第2の隙間において堆積物の付着を抑制できれば、上述した各実施の形態においてより確実に堆積物を除去することができる。
【0069】
以下、堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置の例について説明する。以下に説明する各例は上述した本発明の各実施の形態と併せて用いることができる。
【0070】
図5は、堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図であり、図5(A)は第1例を示し、図5(B)は第2例を示し、図5(C)は第3例を示し、図5(D)は第4例を示し、図5(E)は第5例を示し、図5(F)は第6例を示す。
【0071】
図5(A)において、フォーカスリング25は、第1の隙間に配された石英からなるブロック部材25cを有する。
【0072】
基板処理装置10においてウエハWにプラズマエッチング処理を施す際、プラズマ、特にラジカルが第1の隙間に進入してブロック部材25cと接触すると、石英と化学反応を起こして酸素ラジカルがブロック部材25cから生じる。該酸素ラジカルは、第1の隙間において反応生成物が堆積物として内側フォーカスリング25aに付着すると、直ちに付着した堆積物と化学反応し、該堆積物を分解して除去する。その結果、温度差の大きい第1の隙間において堆積物が内側フォーカスリング25aに付着するのを抑制することができる。
【0073】
酸素ラジカルが第1の隙間において生じさえすれば、内側フォーカスリング25aへの堆積物の付着を抑制することができるので、ブロック部材25cは第1の隙間に存在しさえすればよく、ブロック部材25cの形状や大きさに制約はない。したがって、ブロック部材25cの断面形状も、下に凸の断面形状(図5(B))、上に凸の断面形状(図5(C))又は矩形の断面形状(図5(D)であってもよいが、ブロック部材25cの一部が処理室15の内部空間に晒されるのが好ましい。これにより、プラズマのブロック部材25cへの接触を促進することができ、もって、ブロック部材25cから確実に酸素ラジカルを生じさせることができる。また、第1の隙間に進入したプラズマと接触するのであれば、ブロック部材25cは処理室15の内部空間に直接晒されなくてもよい(図5(E))。
【0074】
さらに、ブロック部材25cは内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間にも介在してもよい(図5(F))。これにより、堆積物の元となる反応生成物が内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間に進入するのを防止することができるとともに、ブロック部材25cが内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間にも酸素ラジカルを生じさせるので、内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間において酸素ラジカルによる堆積物の分解除去を促進することができる。なお、この場合、サセプタ12の段差及びブロック部材25cの間、並びにブロック部材25c及び内側フォーカスリング25aの間にそれぞれ伝熱シート34a,34bが配される。
【0075】
ブロック部材25cは石英からなるので、プラズマと化学反応した際、酸素ラジカルだけでなく、珪素ラジカルも発生する。珪素ラジカルは珪素単体、又は酸素ガスと結びついて酸化珪素として処理室15の内部空間に配置された他の構成部品に付着する虞があるので、フッ化炭素(CF)系の処理ガスを処理室15の内部空間へ導入するのが好ましい。フッ化炭素系の処理ガスから生じるプラズマは珪素や炭化珪素を分解するので、珪素や炭化珪素が他の構成部品に付着するのを抑制することができる。
【0076】
以上、第1の隙間において堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置について説明したが、上述したように、第2の隙間においても堆積物は付着する可能性がある。以下、第2の隙間において堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置について説明する。
【0077】
図6は、堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図であり、図6(A)は第7例を示し、図6(B)は第8例を示し、図6(C)は第9例を示し、図6(D)は第10例を示す。
【0078】
図6(A)において、フォーカスリング25は、第2の隙間に配された石英からなるブロック部材25dを有する。
【0079】
基板処理装置10においてウエハWにプラズマエッチング処理を施す際、プラズマ、特にラジカルが第2の隙間に進入してブロック部材25dと接触すると、酸素ラジカルがブロック部材25dから生じる。該酸素ラジカルは、第2の隙間において堆積物と化学反応し、該堆積物を分解して除去する。その結果、温度差の大きい第2の隙間において堆積物がより低温のサセプタ12に付着するのを抑制することができる。
【0080】
酸素ラジカルが第2の隙間において生じさえすれば、サセプタ12への堆積物の付着を抑制することができるので、ブロック部材25dは第2の隙間に存在しさえすればよく、ブロック部材25dの形状や大きさに制約はない。また、ブロック部材25dは内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間にも介在してもよい(図6(B))。これにより、堆積物の元となる反応生成物が内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間に進入するのを防止することができるとともに、ブロック部材25dが内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間にも酸素ラジカルを生じさせるので、内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間において酸素ラジカルによる堆積物の分解除去を促進することができる。なお、この場合、サセプタ12の段差及びブロック部材25dの下面の間、並びにブロック部材25dの上面及び内側フォーカスリング25aの間にそれぞれ伝熱シート34a,34bが配される。
【0081】
さらに、ブロック部材25dは延伸されて該延伸された部分が第1の隙間に配されてもよい(図6(B))。これにより、第1の隙間及び第2の隙間において堆積物が各部品に付着するのを同時に防止することができる。
【0082】
また、フォーカスリング25はブロック部材25dだけでなく、上述した第1例乃至第5例におけるブロック部材25cも有していてもよく(図6(C))、さらに、ブロック部材25dは内側フォーカスリング25aの下面及びサセプタ12の段差の間だけでなく、外側フォーカスリング25bの下面及び側面保護部材26の間にも介在してもよい(図6(D))。
【0083】
以下、第1の隙間だけでなく第2の隙間において堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置について説明する。
【0084】
図7は、堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図であり、図7(A)は第11例を示し、図7(B)は第12例を示す。
【0085】
図7(A)において、基板処理装置10はサセプタ12の段差において開口し、且つ内側フォーカスリング25aの下面に対向するガス供給口35を有する。ガス供給口35は、基板処理装置10においてプラズマエッチング処理やプラズマを利用したクリーニング処理、例えば、WLDC処理が実行される際、内側フォーカスリング25aの下面に向けて所定のガス、例えば、酸素ガスを供給する。供給された酸素ガス(図中において矢印で示す。)は、サセプタ12の段差及び内側フォーカスリング25aの下面の間を流れて第1の隙間及び第2の隙間に供給される。
【0086】
第1の隙間や第2の隙間に供給された酸素ガスは、第1の隙間や第2の隙間に進入したプラズマと接触し、酸素ラジカルを生成する。該酸素ラジカルは、第1の隙間や第2の隙間において堆積物と化学反応し、該堆積物を分解して除去する。その結果、温度差の大きい第1の隙間や第2の隙間において堆積物がサセプタ12や内側フォーカスリング25aに付着するのを抑制することができる。また、第1の隙間や第2の隙間に流れた酸素ガスは、第1の隙間や第2の隙間に進入した堆積物の元となる反応生成物を処理室15の内部空間へ押し出すので、第1の隙間や第2の隙間における堆積物の付着をより確実に防止することができる。
【0087】
上述した第11例では、ガス供給口35をサセプタ12の段差に設けたが、ガス供給口35は供給するガスが第1の隙間や第2の隙間へ供給されれば、配置場所はサセプタ12の段差に限られない。例えば、ガス供給口35はサセプタ12及び側面保護部材26の間に設けられもよく(図7(B))、側面保護部材26に設けられてもよい(図示しない)。
【0088】
また、ガス供給口35から供給されるガスは酸素ガスに限られず、不活性ガス、例えば、希ガスや窒素ガス、又は処理ガスを供給してもよい。不活性ガスは第1の隙間や第2の隙間に進入した反応生成物を押し出すが、第1の隙間や第2の隙間に進入したプラズマと反応を起こして新たな反応生成物を生成することがないので、第1の隙間や第2の隙間における堆積物の付着をより確実に防止することができる。また、処理ガスも第1の隙間や第2の隙間に進入した反応生成物を押し出すが、該処理ガスが処理室15の内部空間へ漏れたとしても、プラズマの成分に影響を与えることがないので、所望のプラズマエッチング処理と異なるプラズマエッチング処理がウエハWへ施されるのを防止することができる。
【0089】
なお、ガス供給口35が酸素ガスや処理ガス等を供給する場合、これらのガスが処理室15の内部空間へ漏れると該内部空間におけるプラズマの密度や分布に影響を与えることがある。基板処理装置10では、これに対応して、シャワーヘッド27において第1の隙間や第2の隙間に対向する部分から供給される酸素ガスや処理ガスの供給量を減少させるのが好ましい。
【0090】
図8は、堆積物の付着を抑制することができる基板処理装置の第13例が有するフォーカスリングの構成を概略的に示す拡大断面図である。
【0091】
図8において、内側フォーカスリング25aは、処理室15の内部空間側において該内部空間に晒され、且つ外側フォーカスリング25bを覆うように突出する薄板状のフランジ部25eを有する。該フランジ部25eは外側フォーカスリング25bにおける対向面とともに第1の隙間を構成する。このフランジ部25eの厚さは1.7mm以上且つ2.0mm以下に設定される。
【0092】
基板処理装置10においてプラズマエッチング処理やWLDC処理が実行される際、フランジ部25eは厚さが薄いので熱容量が小さく、プラズマからの輻射熱を受けて温度が内側フォーカスリング25aにおける他の部位に比べて上昇する。その結果、第1の隙間において内側フォーカスリング25a及び外側フォーカスリング25bの温度差を小さくすることができ、もって、第1の隙間において内側フォーカスリング25aに堆積物が付着するのを抑制することができる。また、例え、第1の隙間において堆積物が付着したとしても、高温のフランジ部25eや外側フォーカスリング25bからの輻射熱によって付着した堆積物を分解して除去することができる。
【0093】
第13例では、フランジ部25eは外側フォーカスリング25bを覆うので、第1の隙間はラビリンス構造を呈する。その結果、第1の隙間のサセプタ12側には堆積物の元となる反応生成物が進入し難く、これにより、第1の隙間において堆積物が付着するのを確実に防止することができる。
【0094】
また、フランジ部25eの厚さの最小値は1.7mmであるため、該フランジ部25eの剛性が極端に低下するのを防止し、内側フォーカスリング25aの交換作業においてフランジ部25eが折損するのを防止することができる。また、フランジ部25eの厚さの上限は2.0mmであるため、フランジ部25eの熱容量が大きくなり、プラズマの輻射熱を受けても温度が上昇しなくなるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0095】
W ウエハ
10 基板処理装置
12 サセプタ
25 フォーカスリング
25a 内側フォーカスリング
25b 外側フォーカスリング
25c,25d ブロック部材
25e フランジ部
26 側面保護部材
35 ガス供給口
36,38 レーザ光
37 レーザ光ガイド部材
39,40 プッシャーピン
41 接地部材
42 接地電極
43 正電位電極
44 電磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8