【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、トルエンならびに硬化物の評価は、以下の方法で実施した。
1.トルエン中の高沸点不純物
ガスクロマトグラフを用いて、トルエン中の高沸点不純物について分析した。その結果、炭素数9以上の有機不純物濃度はいずれも定量下限(0.01重量%)未満であった。また、ベンゼン濃度も、いずれも定量下限未満であった。そのため、C8芳香族の定量結果以外の記載は省略した。
2.硬化物の白濁
暗室内で硬化物に蛍光灯を照射し、硬化物の濁りの有無を目視で観察した。硬化物の形状は、直径が76mmであり、中心厚が8mm、10mmならびに12mmである3種類のプラス度数レンズとした。なお、市販されているプラス度数レンズの最高度数は概ね+6.00〜+8.00Dであり、レンズの中心厚は概ね6〜8mmとなる。
【0021】
評価の格付けについては、全ての中心厚において白濁が全くみられない場合を「極めて良好」、中心厚12mmに限り極めてわずかな白濁がみられる場合を「非常に良好」、中心厚10mmと12mmに限り極めてわずかな白濁がみられる場合を「良好」、全ての中心厚において白濁がみられる場合を「不良」、と定義した。
【0022】
実施例1
撹拌機、温度計、窒素導入管を装着したフラスコに、ビス(β−エポキシプロピル)スルフィド365.0g(2.5mol)、チオ尿素761.2g(10.0mol)、および無水酢酸43.8g(0.43mol)、さらに溶媒としてメタノール3.4リットル、分解ガソリンを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.01質量%であるトルエン1.7リットルを順次投入し、これらを撹拌しながら窒素雰囲気下20℃で10時間反応させた。反応後、C8芳香族の含有量が0.01質量%であるトルエン4.3リットルで反応物を抽出し、10wt%硫酸520mリットルで洗浄、水520mリットルで4回洗浄を行った。得られた有機層を40℃、1kPaの減圧下で過剰の溶媒を留去し、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド338.8g(収率76%)を得た。得られたビス(β−エピチオプロピル)スルフィドに残留するトルエンをガスクロマトグラフにより分析し、残留するトルエン濃度が0.2%未満であることを確認した。
【0023】
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド90重量部、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド5重量部、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート5重量部、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド0.05重量部からなる重合組成物を混合、室温で撹拌し均一液とした。次いでこれを脱気し、孔径0.5μmのPTFE製メンブランフィルターでろ過し、プラスレンズ用モールドに注入した。オーブン中で、20℃から90℃まで20時間かけて昇温して重合硬化させ、硬化物を製造した。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は極めて良好であった。結果を表1に示した。
【0024】
実施例2
実施例1で得られたビス(β−エピチオプロピル)スルフィド88重量部、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン4重量部、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド8重量部、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド0.1重量部、抗酸化剤として2,6−ジ−tert.−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.1重量部からなる重合組成物を混合、室温で撹拌し均一液とした。次いでこれを脱気し、孔径0.5μmのPTFE製メンブランフィルターでろ過し、プラスレンズ用モールドに注入した。オーブン中で、10℃から120℃まで22時間かけて昇温して重合硬化させ、硬化物を製造した。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は極めて良好であった。結果を表1に示した。
【0025】
実施例3
分解ガソリンを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.05質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は非常に良好であった。結果を表1に示した。
【0026】
実施例4
分解ガソリンを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.05質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は非常に良好であった。結果を表1に示した。
【0027】
実施例5
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.10質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は良好であった。結果を表1に示した。
【0028】
実施例6
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.10%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の白濁状態を評価したところ、硬化物の白濁評価結果は良好であった。結果を表1に示した。
【0029】
比較例1
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.15質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物には白濁が認められた。結果を表1に示した。
【0030】
比較例2
ナフサを原料として製造されC8芳香族の含有量が0.15質量%であるトルエンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物には白濁が認められた。結果を表1に示した。
【表1】
化合物略号
BES:ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド
BMES:ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド
PHPA:3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート
BIC:1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン
TBPB:テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド
【0031】
表1に示す結果より、エポキシ化合物を、トルエンを含む反応溶媒の存在下にチオエポキシ化してエピスルフィド化合物を得るに際し、トルエンとして、高沸点不純物の含有量が0.10質量%以下のトルエンを用いることで、エピスルフィド化合物を重合硬化させて得られる硬化物の白濁の発生を十分に抑制できることが確認された。