(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングに吸入室、吐出室及び圧縮室が形成されているとともに駆動軸が回転可能に軸支され、該ハウジング内には、該駆動軸の回転により、該圧縮室が該吸入室から低圧の冷媒ガスを吸入する吸入行程と、該圧縮室内で該冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、該圧縮室内の高圧の該冷媒ガスを該吐出室に吐出する吐出行程とを行う複数の圧縮機構がタンデム結合され、
各前記圧縮機構は、前記ハウジングに形成された第1シリンダ室と、該第1シリンダ室内に前記駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第1ベーン溝が放射方向に形成された第1ロータと、各該第1ベーン溝に出没可能に設けられ、該第1シリンダ室の内面及び該第1ロータの外面とともに前方に位置する前記圧縮室である第1圧縮室を形成する第1ベーンとを有する第1圧縮機構と、
該ハウジングに形成された第2シリンダ室と、該第2シリンダ室内に該駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第2ベーン溝が放射方向に形成された第2ロータと、各該第2ベーン溝に出没可能に設けられ、該第2シリンダ室の内面及び該第2ロータの外面とともに後方に位置する該圧縮室である第2圧縮室を形成する第2ベーンとを有する第2圧縮機構とを備えたタンデム式ベーン型圧縮機において、
各前記第1ベーンの底面と各前記第1ベーン溝との間は第1背圧室とされ、
各前記第2ベーンの底面と各前記第2ベーン溝との間は第2背圧室とされ、
前記ハウジングは、外郭を形成し、外部に繋がる吸入口及び吐出口が形成されたシェルと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吸入口と連通する前記吸入室を形成する第1サイドプレートと、該シェル内に収納され、前記第1圧縮機構と前記第2圧縮機構とを区画する第2サイドプレートと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吐出口と連通する前記吐出室を形成する第3サイドプレートと、該第1サイドプレートと該第2サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第1シリンダ室を形成する第1シリンダブロックと、該第2サイドプレートと該第3サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第2シリンダ室を形成する第2シリンダブロックとを有し、
前記吐出室には、前記吸入口から前記吸入室に吸入して前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構で圧縮した後で前記吐出室に吐出される前記冷媒ガスから潤滑油を分離し、前記吐出室に前記潤滑油を貯留するとともに、前記潤滑油が分離された前記冷媒ガスを前記吐出口から吐出するセパレータが設けられ、
前記第1サイドプレート、前記第1シリンダブロック、前記第2サイドプレート、前記第2シリンダブロック及び前記第3サイドプレートからなるインナハウジングには、前後に延びて前記吐出室と連通する共通流路と、該共通流路と各前記第1背圧室とを連通する第1供給流路と、該共通流路と各前記第2背圧室とを連通する第2供給流路とが形成され、
前記シェル内に前記インナハウジングが収容された状態で固定され、
前記第1サイドプレート、前記第2サイドプレート及び前記第3サイドプレートにはそれぞれ前記駆動軸を回転自在に保持する軸孔が貫設され、
前記第1供給流路は、前記第2サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有し、
前記第2供給流路は、前記第3サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有することを特徴とするタンデム式ベーン型圧縮機。
前記シェルは、前記吸入口が形成され、前記第1サイドプレートとともに前記吸入室を形成するフロントハウジングと、前記吐出口が形成され、前記第3サイドプレートとともに前記吐出室を形成するリヤハウジングとからなり、
前記第1シリンダブロックと前記第2シリンダブロックとは共通し、
前記第1ロータと前記第2ロータとは共通し、
前記第1ベーンと前記第2ベーンとは共通している請求項1乃至4のいずれか1項記載のタンデム式ベーン型圧縮機。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜5に従来のタンデム式ベーン型圧縮機が開示されている。これらのタンデム式ベーン型圧縮機は、ハウジングに吸入室、吐出室及び圧縮室が形成されているとともに駆動軸が回転可能に軸支されている。また、ハウジング内には、駆動軸の回転により、圧縮室が吸入室から低圧の冷媒ガスを吸入する吸入行程と、圧縮室内で冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、圧縮室内の高圧の冷媒ガスを吐出室に吐出する吐出行程とを行う複数の圧縮機構がタンデム結合されている。
【0003】
各圧縮機構は第1圧縮機構と第2圧縮機構とを備えている。第1圧縮機構は、ハウジングに形成された第1シリンダ室と、第1シリンダ室内に駆動軸によって回転可能に設けられた第1ロータとを有している。第1ロータには、複数個の第1ベーン溝が放射方向に形成されている。また、第1圧縮機構は、各第1ベーン溝に出没可能に設けられ、第1シリンダ室の内面及び第1ロータの外面とともに前方に位置する圧縮室である第1圧縮室を形成する第1ベーンを有している。
【0004】
第2圧縮機構も、第1圧縮機構と同様、ハウジングに形成された第2シリンダ室と、第2シリンダ室内に駆動軸によって回転可能に設けられた第2ロータとを有している。第2ロータにも、複数個の第2ベーン溝が放射方向に形成されている。また、第2圧縮機構も、各第2ベーン溝に出没可能に設けられ、第2シリンダ室の内面及び第2ロータの外面とともに後方に位置する圧縮室である第2圧縮室を形成する第2ベーンを有している。
【0005】
これらのタンデム式ベーン型圧縮機が車両等の空調装置に用いられる場合、例えば電磁クラッチを介し、駆動軸が回転駆動される。これにより、第1、2圧縮機構が作動する。すなわち、第1、2ロータが回転して第1、2圧縮室が吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を行う。このため、冷媒ガスが吸入室から第1、2圧縮室内に吸入され、第1、2圧縮室内で圧縮されて吐出室内に吐出される。吐出室に吐出された高圧の冷媒ガスが空調装置の冷凍回路に供給される。
【0006】
こうして、これらのタンデム式ベーン型圧縮機では、第1、2圧縮機構がそれぞれ吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を行うことから、駆動軸の1回転当たりの吐出容量を増加することができる。
【0007】
また、その吐出容量を増加するため、単一のシリンダ室とロータとを有する単シリンダ式ベーン型圧縮機の軸長を単に長くしただけでは、各ベーンが前後で傾斜し易く、圧縮室からの冷媒ガスの漏れが生じ易いとともに、各ベーンの摺動性が悪化すると思われる。この点、これらのタンデム式ベーン型圧縮機では、各第1、2ベーンが前後で傾斜し難く、第1、2圧縮室からの冷媒ガスの漏れが少ないとともに、各第1、2ベーンの摺動性が優れると思われる。このため、これらのタンデム式ベーン型圧縮機では、優れた機械効率を発揮できると思われる。
【0008】
さらに、これらのタンデム式ベーン型圧縮機は、胴径が単シリンダ式ベーン型圧縮機と同様であり得るため、優れた搭載性も発揮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来のタンデム式ベーン型圧縮機は、各第1ベーンの底面と各第1ベーン溝との間に形成される第1背圧室と、各第2ベーンの底面と各第2ベーン溝との間に形成される第2背圧室とに対し、高圧の潤滑油をともに供給できる構造になっていない。このため、これらのタンデム式ベーン型圧縮機では、第1、2圧縮機構がそれぞれ圧縮行程及び吐出行程を行う間、各第1、2ベーンが第1、2シリンダ室の内面に押し付けられず、第1、2圧縮室からの冷媒ガスの漏れが懸念される。このため、これらのタンデム式ベーン型圧縮機では、高い機械効率を確実には発揮することが困難である。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、駆動軸の1回転当たりの吐出容量を増加可能であるとともに、優れた機械効率と搭載性とをより確実に発揮可能なタンデム式ベーン型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のタンデム式ベーン型圧縮機は、ハウジングに吸入室、吐出室及び圧縮室が形成されているとともに駆動軸が回転可能に軸支され、該ハウジング内には、該駆動軸の回転により、該圧縮室が該吸入室から低圧の冷媒ガスを吸入する吸入行程と、該圧縮室内で該冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、該圧縮室内の高圧の該冷媒ガスを該吐出室に吐出する吐出行程とを行う複数の圧縮機構がタンデム結合され、
各前記圧縮機構は、前記ハウジングに形成された第1シリンダ室と、該第1シリンダ室内に前記駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第1ベーン溝が放射方向に形成された第1ロータと、各該第1ベーン溝に出没可能に設けられ、該第1シリンダ室の内面及び該第1ロータの外面とともに前方に位置する前記圧縮室である第1圧縮室を形成する第1ベーンとを有する第1圧縮機構と、
該ハウジングに形成された第2シリンダ室と、該第2シリンダ室内に該駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第2ベーン溝が放射方向に形成された第2ロータと、各該第2ベーン溝に出没可能に設けられ、該第2シリンダ室の内面及び該第2ロータの外面とともに後方に位置する該圧縮室である第2圧縮室を形成する第2ベーンとを有する第2圧縮機構とを備えたタンデム式ベーン型圧縮機において、
各前記第1ベーンの底面と各前記第1ベーン溝との間は第1背圧室とされ、
各前記第2ベーンの底面と各前記第2ベーン溝との間は第2背圧室とされ、
前記ハウジングは、外郭を形成し、外部に繋がる吸入口及び吐出口が形成されたシェルと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吸入口と連通する前記吸入室を形成する第1サイドプレートと、該シェル内に収納され、前記第1圧縮機構と前記第2圧縮機構とを区画する第2サイドプレートと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吐出口と連通する前記吐出室を形成する第3サイドプレートと、該第1サイドプレートと該第2サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第1シリンダ室を形成する第1シリンダブロックと、該第2サイドプレートと該第3サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第2シリンダ室を形成する第2シリンダブロックとを有し、
前記吐出室には、前記吸入口から前記吸入室に吸入して前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構で圧縮した後で前記吐出室に吐出される前記冷媒ガスから潤滑油を分離し、前記吐出室に前記潤滑油を貯留するとともに、前記潤滑油が分離された前記冷媒ガスを前記吐出口から吐出するセパレータが設けられ、
前記第1サイドプレート、前記第1シリンダブロック、前記第2サイドプレート、前記第2シリンダブロック及び前記第3サイドプレートからなるインナハウジングには、前後に延びて前記吐出室と連通する共通流路と、該共通流路と各前記第1背圧室とを連通する第1供給流路と、該共通流路と各前記第2背圧室とを連通する第2供給流路とが形成され
、
前記シェル内に前記インナハウジングが収容された状態で固定され、
前記第1サイドプレート、前記第2サイドプレート及び前記第3サイドプレートにはそれぞれ前記駆動軸を回転自在に保持する軸孔が貫設され、
前記第1供給流路は、前記第2サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有し、
前記第2供給流路は、前記第3サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のタンデム式ベーン型圧縮機では、各第1ベーンの底面と各第1ベーン溝との間に形成される第1背圧室と、各第2ベーンの底面と各第2ベーン溝との間に形成される第2背圧室とに対し、高圧の潤滑油をともに供給できる構造になっている。すなわち、各第1背圧室には、インナハウジングに形成された共通流路及び第1供給流路を経て、吐出室内の高圧の潤滑油が供給される。また、各第2背圧室には、インナハウジングに形成された共通流路及び第2供給流路を経て、吐出室内の高圧の潤滑油が供給される。
【0014】
このため、このタンデム式ベーン型圧縮機では、第1、2圧縮機構がそれぞれ圧縮行程及び吐出行程を行う間、各第1、2ベーンが第1、2シリンダ室の内面に好適に押し付けられ、第1、2圧縮室からの冷媒ガスの漏れが少ない。このため、これらのタンデム式ベーン型圧縮機では、高い機械効率を確実に発揮可能である。また、このタンデム式ベーン型圧縮機では、各第1背圧室及び各第2背圧室を別個に吐出室と連通する必要がなく、製造コストの低廉化を実現できる。
【0015】
したがって、このタンデム式ベーン型圧縮機では、駆動軸の1回転当たりの吐出容量を増加可能であるとともに、優れた機械効率と搭載性とをより確実に発揮可能である。
【0016】
また、本発明のタンデム式ベーン型圧縮機は、共通流路を形成することにより、背圧を供給するための通路の配置が簡素化され、製造コストの低廉化を実現できる。
【0017】
本発明のタンデム式ベーン型圧縮機において、圧縮機構は、第1圧縮機構と第2圧縮機構の他に他の圧縮機構を備えていてもよい。また、シェルは、フロントハウジングとリヤハウジングとからなり得る。フロントハウジングとリヤハウジングとの間に筒状のセンターハウジングを有することもできる。
【0018】
本発明のタンデム式ベーン型圧縮機
は、ハウジングに吸入室、吐出室及び圧縮室が形成されているとともに駆動軸が回転可能に軸支され、該ハウジング内には、該駆動軸の回転により、該圧縮室が該吸入室から低圧の冷媒ガスを吸入する吸入行程と、該圧縮室内で該冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、該圧縮室内の高圧の該冷媒ガスを該吐出室に吐出する吐出行程とを行う複数の圧縮機構がタンデム結合され、
各前記圧縮機構は、前記ハウジングに形成された第1シリンダ室と、該第1シリンダ室内に前記駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第1ベーン溝が放射方向に形成された第1ロータと、各該第1ベーン溝に出没可能に設けられ、該第1シリンダ室の内面及び該第1ロータの外面とともに前方に位置する前記圧縮室である第1圧縮室を形成する第1ベーンとを有する第1圧縮機構と、
該ハウジングに形成された第2シリンダ室と、該第2シリンダ室内に該駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第2ベーン溝が放射方向に形成された第2ロータと、各該第2ベーン溝に出没可能に設けられ、該第2シリンダ室の内面及び該第2ロータの外面とともに後方に位置する該圧縮室である第2圧縮室を形成する第2ベーンとを有する第2圧縮機構とを備えたタンデム式ベーン型圧縮機において、
各前記第1ベーンの底面と各前記第1ベーン溝との間は第1背圧室とされ、
各前記第2ベーンの底面と各前記第2ベーン溝との間は第2背圧室とされ、
前記ハウジングは、外郭を形成し、外部に繋がる吸入口及び吐出口が形成されたシェルと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吸入口と連通する前記吸入室を形成する第1サイドプレートと、該シェル内に収納され、前記第1圧縮機構と前記第2圧縮機構とを区画する第2サイドプレートと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吐出口と連通する前記吐出室を形成する第3サイドプレートと、該第1サイドプレートと該第2サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第1シリンダ室を形成する第1シリンダブロックと、該第2サイドプレートと該第3サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第2シリンダ室を形成する第2シリンダブロックとを有し、
前記吐出室には、前記吸入口から前記吸入室に吸入して前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構で圧縮した後で前記吐出室に吐出される前記冷媒ガスから潤滑油を分離し、前記吐出室に前記潤滑油を貯留するとともに、前記潤滑油が分離された前記冷媒ガスを前記吐出口から吐出するセパレータが設けられ、
前記第1サイドプレート、前記第1シリンダブロック、前記第2サイドプレート、前記第2シリンダブロック及び前記第3サイドプレートからなるインナハウジングには、前後に延びて前記吐出室と連通する共通流路と、該共通流路と各前記第1背圧室とを連通する第1供給流路と、該共通流路と各前記第2背圧室とを連通する第2供給流路とが形成され、
前記シェル内に前記インナハウジングが収容された状態で固定され、
前記第1サイドプレート、前記第2サイドプレート及び前記第3サイドプレートにはそれぞれ前記駆動軸を回転自在に保持する軸孔が貫設され、
前記第1供給流路は、前記第1サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有し、
前記第2供給流路は、前記第3サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有することを特徴とする。
また、本発明のタンデム式ベーン型圧縮機は、ハウジングに吸入室、吐出室及び圧縮室が形成されているとともに駆動軸が回転可能に軸支され、該ハウジング内には、該駆動軸の回転により、該圧縮室が該吸入室から低圧の冷媒ガスを吸入する吸入行程と、該圧縮室内で該冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、該圧縮室内の高圧の該冷媒ガスを該吐出室に吐出する吐出行程とを行う複数の圧縮機構がタンデム結合され、
各前記圧縮機構は、前記ハウジングに形成された第1シリンダ室と、該第1シリンダ室内に前記駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第1ベーン溝が放射方向に形成された第1ロータと、各該第1ベーン溝に出没可能に設けられ、該第1シリンダ室の内面及び該第1ロータの外面とともに前方に位置する前記圧縮室である第1圧縮室を形成する第1ベーンとを有する第1圧縮機構と、
該ハウジングに形成された第2シリンダ室と、該第2シリンダ室内に該駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第2ベーン溝が放射方向に形成された第2ロータと、各該第2ベーン溝に出没可能に設けられ、該第2シリンダ室の内面及び該第2ロータの外面とともに後方に位置する該圧縮室である第2圧縮室を形成する第2ベーンとを有する第2圧縮機構とを備えたタンデム式ベーン型圧縮機において、
各前記第1ベーンの底面と各前記第1ベーン溝との間は第1背圧室とされ、
各前記第2ベーンの底面と各前記第2ベーン溝との間は第2背圧室とされ、
前記ハウジングは、外郭を形成し、外部に繋がる吸入口及び吐出口が形成されたシェルと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吸入口と連通する前記吸入室を形成する第1サイドプレートと、該シェル内に収納され、前記第1圧縮機構と前記第2圧縮機構とを区画する第2サイドプレートと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吐出口と連通する前記吐出室を形成する第3サイドプレートと、該第1サイドプレートと該第2サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第1シリンダ室を形成する第1シリンダブロックと、該第2サイドプレートと該第3サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第2シリンダ室を形成する第2シリンダブロックとを有し、
前記吐出室には、前記吸入口から前記吸入室に吸入して前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構で圧縮した後で前記吐出室に吐出される前記冷媒ガスから潤滑油を分離し、前記吐出室に前記潤滑油を貯留するとともに、前記潤滑油が分離された前記冷媒ガスを前記吐出口から吐出するセパレータが設けられ、
前記第1サイドプレート、前記第1シリンダブロック、前記第2サイドプレート、前記第2シリンダブロック及び前記第3サイドプレートからなるインナハウジングには、前後に延びて前記吐出室と連通する共通流路と、該共通流路と各前記第1背圧室とを連通する第1供給流路と、該共通流路と各前記第2背圧室とを連通する第2供給流路とが形成され、
前記シェル内に前記インナハウジングが収容された状態で固定され、
前記第1サイドプレート、前記第2サイドプレート及び前記第3サイドプレートにはそれぞれ前記駆動軸を回転自在に保持する軸孔が貫設され、
前記第1供給流路は、前記第1サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有し、
前記第2供給流路は、前記第2サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有することを特徴とする。
さらに、本発明のタンデム式ベーン型圧縮機は、ハウジングに吸入室、吐出室及び圧縮室が形成されているとともに駆動軸が回転可能に軸支され、該ハウジング内には、該駆動軸の回転により、該圧縮室が該吸入室から低圧の冷媒ガスを吸入する吸入行程と、該圧縮室内で該冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、該圧縮室内の高圧の該冷媒ガスを該吐出室に吐出する吐出行程とを行う複数の圧縮機構がタンデム結合され、
各前記圧縮機構は、前記ハウジングに形成された第1シリンダ室と、該第1シリンダ室内に前記駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第1ベーン溝が放射方向に形成された第1ロータと、各該第1ベーン溝に出没可能に設けられ、該第1シリンダ室の内面及び該第1ロータの外面とともに前方に位置する前記圧縮室である第1圧縮室を形成する第1ベーンとを有する第1圧縮機構と、
該ハウジングに形成された第2シリンダ室と、該第2シリンダ室内に該駆動軸によって回転可能に設けられ、複数個の第2ベーン溝が放射方向に形成された第2ロータと、各該第2ベーン溝に出没可能に設けられ、該第2シリンダ室の内面及び該第2ロータの外面とともに後方に位置する該圧縮室である第2圧縮室を形成する第2ベーンとを有する第2圧縮機構とを備えたタンデム式ベーン型圧縮機において、
各前記第1ベーンの底面と各前記第1ベーン溝との間は第1背圧室とされ、
各前記第2ベーンの底面と各前記第2ベーン溝との間は第2背圧室とされ、
前記ハウジングは、外郭を形成し、外部に繋がる吸入口及び吐出口が形成されたシェルと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吸入口と連通する前記吸入室を形成する第1サイドプレートと、該シェル内に収納され、前記第1圧縮機構と前記第2圧縮機構とを区画する第2サイドプレートと、該シェル内に収納され、該シェルとともに該吐出口と連通する前記吐出室を形成する第3サイドプレートと、該第1サイドプレートと該第2サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第1シリンダ室を形成する第1シリンダブロックと、該第2サイドプレートと該第3サイドプレートとに挟持されて該シェル内に収納され、前記第2シリンダ室を形成する第2シリンダブロックとを有し、
前記吐出室には、前記吸入口から前記吸入室に吸入して前記第1圧縮機構及び前記第2圧縮機構で圧縮した後で前記吐出室に吐出される前記冷媒ガスから潤滑油を分離し、前記吐出室に前記潤滑油を貯留するとともに、前記潤滑油が分離された前記冷媒ガスを前記吐出口から吐出するセパレータが設けられ、
前記第1サイドプレート、前記第1シリンダブロック、前記第2サイドプレート、前記第2シリンダブロック及び前記第3サイドプレートからなるインナハウジングには、前後に延びて前記吐出室と連通する共通流路と、該共通流路と各前記第1背圧室とを連通する第1供給流路と、該共通流路と各前記第2背圧室とを連通する第2供給流路とが形成され、
前記シェル内に前記インナハウジングが収容された状態で固定され、
前記第1サイドプレート、前記第2サイドプレート及び前記第3サイドプレートにはそれぞれ前記駆動軸を回転自在に保持する軸孔が貫設され、
前記共通流路は、前記第2サイドプレートにおいて前記軸孔に向かって径方向に延びる孔を有することを特徴とする。
【0019】
本発明のタンデム式ベーン型圧縮機では、シェルは、吸入口が形成され、第1サイドプレートとともに吸入室を形成するフロントハウジングと、吐出口が形成され、第3サイドプレートとともに吐出室を形成するリヤハウジングとからなり得る。そして、第1シリンダブロックと第2シリンダブロックとは共通し、第1ロータと第2ロータとは共通し、第1ベーンと第2ベーンとは共通していることが好まし
い。この場合、部品の共通化により製造コストの低廉化を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタンデム式ベーン型圧縮機は、駆動軸の1回転当たりの吐出容量を増加可能であるとともに、優れた機械効率と搭載性とをより確実に発揮可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(実施例1)
実施例1のタンデム式ベーン型圧縮機は、
図1に示すように、互いに結合されたフロントハウジング1及びリヤハウジング3内に第1サイドプレート11、第1シリンダブロック5、第2サイドプレート13、第2シリンダブロック7及び第3サイドプレート15が収容された状態で固定されている。フロントハウジング1及びリヤハウジング3がシェル9である。シェル9の胴径は単シリンダ式ベーン型圧縮機と同一である。また、第1、2シリンダブロック5、7は同一の外形である。
【0024】
図2にも示すように、第1シリンダブロック5には軸直角方向で楕円状の第1シリンダ室5aが形成され、
図3にも示すように、第2シリンダブロック7には第1シリンダ室5aと同形の第2シリンダ室7aが形成されている。第1、2シリンダブロック5、7は第1、2シリンダ室5a、7aが同じ位相になるように固定されている。
【0025】
図1に示すように、第1シリンダブロック5は第1サイドプレート11と第2サイドプレート13とに挟持されてシェル9内に収納されている。第2サイドプレート13は、前方に位置する第2サイドプレート本体13bと、この第2サイドプレート本体13bの後方に位置する第2サイドプレートカバー13cとからなる。第1シリンダ室5aの前後は第1サイドプレート11及び第2サイドプレート本体13bによりそれぞれ閉鎖されている。
【0026】
また、第2シリンダブロック7は第2サイドプレートカバー13cと第3サイドプレート15とに挟持されてシェル9内に収納されている。第2シリンダ室7aの前後は第2サイドプレートカバー13c及び第3サイドプレート15によりそれぞれ閉鎖されている。シェル9、第1、2シリンダブロック5、7及び第1〜3サイドプレート11、13、15がハウジングに相当する。
【0027】
第1〜3サイドプレート11、13、15にはそれぞれ軸孔11a、13a、15aが貫設されており、各軸孔11a、13a、15a内には滑り軸受17、19、21が圧入されている。フロントハウジング1にも軸孔1aが貫設されており、軸孔1aには軸封装置23が圧入されている。軸封装置23及び滑り軸受17、19、21によって駆動軸25が回転自在に保持されている。フロントハウジング1から露出する駆動軸25の先端には図示しない電磁クラッチ又はプーリが固定される。電磁クラッチ又はプーリには車両のエンジン又はモータにより駆動力が伝達されるようになっている。
【0028】
また、駆動軸25には円形断面の第1、2ロータ27、29が圧入されている。第1ロータ27は第1シリンダ室5a内に配設され、第2ロータ29は第2シリンダ室7a内に配設されている。
【0029】
第1ロータ27の外周面には、
図2に示すように、放射方向に5個の第1ベーン溝27aが凹設されており、各第1ベーン溝27aにはそれぞれ第1ベーン31が出没可能に収納されている。各第1ベーン31の底面と各第1ベーン溝27aとの間は第1背圧室33とされている。隣合う2枚の第1ベーン31、31、第1ロータ27の外周面、第1シリンダブロック5の内周面、第1サイドプレート11の後面及び第2サイドプレート本体13bの前面によって5個の第1圧縮室35が形成されている。
【0030】
また、
図3に示すように、第2ロータ29の外周面にも、放射方向に5個の第2ベーン溝29aが凹設されており、各第2ベーン溝29aにもそれぞれ第2ベーン37が出没可能に収納されている。各第2ベーン37の底面と各第2ベーン溝29aとの間は第2背圧室39とされている。隣合う2枚の第2ベーン37、37、第2ロータ29の外周面、第2シリンダブロック7の内周面、第2サイドプレートカバー13cの後面及び第3サイドプレート
15の前面によって5個の第2圧縮室41が形成されている。
【0031】
第1ロータ27と第2ロータ29とは同一部品である。また、第1ベーン31と第2ベーン37とも同一部品である。これらは単シリンダ式ベーン型圧縮機で採用されているものである。
【0032】
図1に示すように、フロントハウジング1と第1サイドプレート11との間には吸入室43が形成されている。フロントハウジング1には、吸入室43を外部に接続するための吸入口1bが上方に開口されている。第1サイドプレート11には吸入室43と連通する2個の吸入孔11bが貫設されており、各吸入孔11bは第1シリンダブロック5の各吸入空間5bに連通している。各吸入空間5bは、
図2に示すように、吸入ポート5cによって吸入行程にある第1圧縮室35と連通するようになっている。
【0033】
また、第1シリンダブロック5とリヤハウジング3との間には、2個の吐出空間5dが形成されている。吐出行程にある圧縮室35と各吐出空間5dとは吐出ポート5eによって連通している。各吐出空間5d内には、吐出ポート5eを閉鎖する吐出弁45と、吐出弁45のリフト量を規制するリテーナ47とが設けられている。これら駆動軸25、第1シリンダブロック5、第1ロータ27、各第1ベーン31、吐出弁45、リテーナ47等によって第1圧縮機構1Cが構成されている。
【0034】
図1に示すように、第2サイドプレート13には、第1シリンダブロック5の各吸入空間5bと連通する2個の吸入孔13dが貫設されており、各吸入孔13dは第2シリンダブロック7の各吸入空間7bに連通している。各吸入空間7bは、
図3に示すように、吸入ポート7cによって吸入行程にある第2圧縮室41と連通するようになっている。
【0035】
また、
図1に示すように、第2サイドプレート13には、各吐出空間5dと連通する2個の吐出孔13eが貫設されている。また、第2シリンダブロック7とリヤハウジング3との間には、2個の吐出空間7dが形成されている。各吐出孔13eは各吐出空間7dに連通している。
図3に示すように、吐出行程にある
第2圧縮室41と各吐出空間7dとは吐出ポート7eによって連通している。各吐出空間7d内には、吐出ポート7eを閉鎖する吐出弁49と、吐出弁45のリフト量を規制するリテーナ51とが設けられている。これら駆動軸25、第2シリンダブロック7、第2ロータ29、各第2ベーン37、吐出弁49、リテーナ51等によって第2圧縮機構2Cが構成されている。
【0036】
図1に示すように、第3サイドプレート15には各吐出空間7dと連通する2個の吐出孔15bが貫設されている。また、第3サイドプレート15とリヤハウジング3との間には吐出室53が形成されている。吐出室53内では、第3サイドプレート15とリヤハウジング3とに挟持されることによって遠心分離式のセパレータ55が固定されている。セパレータ55は、エンドフレーム57と、エンドフレーム57内に固定された上下に延びる円筒状の円筒部材59とからなる。
【0037】
エンドフレーム57には上下に円柱状に延びる油分離室57aが形成されている。油分離室57aの上端に円筒部材59が圧入されている。このため、油分離室57aの一部は、円筒部材59の外周面周りに冷媒ガスを周回させる案内面57bとなっている。両吐出孔15bは円筒部材59と案内面57bとの間に連通している。また、エンドフレーム57の下端には油分離室57aの底面を吐出室53に連通させる連通口57cが形成されている。また、リヤハウジング3には吐出室53の上端を外部に接続するための吐出口3aが形成されている。吐出口3aは円筒部材59の上方に位置している。
【0038】
図1及び
図2に示すように、第2サイドプレート本体13bの前面には、扇形状をなす一対の排油溝13fが凹設されている。各排油溝13fは、第1ロータ27の回転により、吸入行程等にある第1背圧室33と連通するようになっている。また、
図1に示すように、第2サイドプレート本体13bには、吐出孔13eと各排油溝13fとを連通する弁室13gが貫設されており、弁室13g内にはボール状の弁体61が収納されている。弁体61は、弁室13g内に収納されたばね63によって弁室13gを開放する方向に付勢されている。弁体61は第2サイドプレートカバー13cによって外れないようになっている。排油溝13f、弁室13g、弁体61及びばね63は第1圧縮機構1Cのチャタリングを防止する第1チャタリング防止弁73を構成している。
【0039】
また、
図1及び
図3に示すように、第3サイドプレート15の前面にも、扇形状をなす一対の排油溝15fが凹設されている。各排油溝15fは、第2ロータ29の回転により、吸入行程等にある第2背圧室39と連通するようになっている。また、
図1に示すように、第3サイドプレート15には、吐出室53と各排油溝15fとを連通する弁室15gが貫設されており、弁室15g内にもボール状の弁体65が収納されている。弁体65は、弁室15g内に収納されたばね67によって弁室15gを開放する方向に付勢されている。弁体65はセパレータ55のエンドフレーム57によって外れないようになっている。排油溝15f、弁室15g、弁体65及びばね67は第2圧縮機構2Cのチャタリングを防止する第2チャタリング防止弁75を構成している。
【0040】
第1ロータ27及び第2ロータ29は、駆動軸25に対し、第1、2ベーン溝27a、29a、排油溝13f、15f、第1、2チャタリング防止弁73、75が同じ位相になるように固定されている。
【0041】
第2サイドプレート本体13bには、下端から上方に延びる1本の第1上流路13hが貫設されている。また、第2サイドプレート本体13bには、
図2にも示すように、軸孔13aを周回する環状の第1中流路13iが凹設されている。第1上流路13hの上端は第1中流路13iと連通している。さらに、第2サイドプレート本体13bには、第1中流路13iと連通する2本の第1下流路13jが軸方向の前方に向かって延びている。各第1下流路13jは、第1ロータ27の回転により、圧縮行程及び吐出行程にある第1背圧室33と連通するようになっている。第1上流路13h、第1中流路13i及び第1下流路13jが第1供給流路である。
【0042】
また、
図1に示すように、第3サイドプレート15にも、下端から上方に延びる1本の第2上流路15hが貫設されている。また、
図3にも示すように、第3サイドプレート15には、軸孔15aを周回する環状の第2中流路15iが凹設されている。第2上流路15hの上端は第2中流路15iと連通している。さらに、第3サイドプレート15には、第2中流路15iと連通する2本の第2下流路15jが軸方向の前方に向かって延びている。各第2下流路15jは、第2ロータ29の回転により、圧縮行程及び吐出行程にある第2背圧室39と連通するようになっている。第2上流路15h、第2中流路15i及び第2下流路15jが第2供給流路である。
【0043】
図1に示すように、駆動軸25、滑り軸受
17、19、21、第1サイドプレート11、第1シリンダブロック5、各第1ベーン31、吐出弁45、リテーナ47、第2サイドプレート13、第1チャタリング防止弁73、第2シリンダブロック7、各第2ベーン37、吐出弁49、リテーナ51、第3サイドプレート15、第2チャタリング防止弁75及びセパレータ55はサブアッシーSAとして組付けられている。このサブアッシーSAにおいて、第3サイドプレート15、第2シリンダブロック7及び第2サイドプレート13には、前後に延びて吐出室53と連通する主流路69が形成されている。第1上流路13h及び第2上流路15hはこの主流路69と連通している。主流路69のうち、第2上流路15hへの分岐位置までが共通流路69aであり、残部が第1上流路13hに連通するための単流路69bである。
【0044】
サブアッシーSAにOリングを装着し、これをリヤハウジング3に挿入する。次いで、リヤハウジング3にOリングを装着し、これにフロントハウジング1を被せる。そして、
図2及び
図3に示す複数本のボルト71を締結する。こうして、実施例1のタンデム式ベーン型圧縮機が組付けられる。
【0045】
このタンデム式ベーン型圧縮機では、図示はしないが、吐出口3aが配管によって凝縮器に接続され、凝縮器が配管によって膨張弁に接続され、膨張弁が配管によって蒸発器に接続され、蒸発器が配管によって吸入口1bに接続される。タンデム式ベーン型圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器及び配管が冷凍回路を構成する。この冷凍回路は車両用空調装置を構成する。
【0046】
このタンデム式ベーン型圧縮機では、エンジン等によって駆動軸25が駆動されると、第1、2圧縮機構1C、2Cがそれぞれ吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を繰り返す。
【0047】
すなわち、第1、2ロータ27、29が駆動軸25と同期回転し、第1、2圧縮室35、41が容積変化を生じる。このため、蒸発器を経た冷媒ガスが吸入口1bから吸入室43に吸入される。吸入室43内の冷媒ガスは吸入孔11b、吸入空間5b及び吸入ポート5cを経て第1圧縮室35に吸入される。また、吸入空間5b内の冷媒ガスは吸入孔13d、吸入空間7b及び吸入ポート7cを経て第2圧縮室41に吸入される。
【0048】
そして、第1圧縮室35で圧縮された冷媒ガスは吐出ポート5eを経て吐出空間5dに吐出される。吐出空間5d内の高圧の冷媒ガスは、吐出孔13eを経て吐出空間7dに至る。また、第2圧縮室41で圧縮された冷媒ガスは吐出ポート7eを経
て吐出空間7dに吐出される。吐出空間7d内の高圧の冷媒ガスは吐出孔15bを経てセパレータ
55の案内面57bに向けて吐出される。このため、冷媒ガスは、案内面57bを周回し、潤滑油が遠心分離される。そして、潤滑油が分離された冷媒ガスは吐出口3aから凝縮器に向かって吐出される。こうして、このタンデム式ベーン型圧縮機では、駆動軸25の1回転当たりの吐出容量が単シリンダ式ベーン型圧縮機と比べて2倍になっている。
【0049】
また、このタンデム式ベーン型圧縮機では、各第1、2ベーン31、37が単シリンダ式ベーン型圧縮機で採用される軸長の短いものであるため、前後で傾斜し難い。このため、第1、2圧縮室35、41からの冷媒ガスの漏れが少ないとともに、各第1、2ベーン31、37の摺動性が優れる。
【0050】
分離された潤滑油は油分離室57a内から連通口57cを経て吐出室53内に貯留される。吐出室53内の潤滑油は、吐出室53が高圧であることから、主流路69に供給される。主流路69の単流路69b内の潤滑油は、第1圧縮機構1Cにおいて、第1上流路13h及び第1中流路13iを経て第1下流路13jに供給される。このため、圧縮行程及び吐出行程にある各第1背圧室33に高圧の潤滑油が供給される。
【0051】
また、主流路69内の潤滑油は、共通流路69aから単流路69b及び第2上流路15hに分岐する。そして、第2上流路15h内の潤滑油は、第2圧縮機構2Cにおいて、第2中流路15iを経て第2下流路15jに供給される。このため、圧縮行程及び吐出行程にある各第2背圧室39に高圧の潤滑油が供給される。
【0052】
このため、このタンデム式ベーン型圧縮機では、第1、2圧縮機構1C、2Cがそれぞれ圧縮行程を行う間、各第1、2ベーン31、37が第1、2シリンダ室5a、7aの内面に好適に押し付けられ、第1、2圧縮室35、41からの冷媒ガスの漏れが少ない。このため、これらのタンデム式ベーン型圧縮機では、高い機械効率を確実に発揮可能である。また、このタンデム式ベーン型圧縮機では、各第1背圧室33及び各第2背圧室39を別個に吐出室53と連通する必要がなく、製造コストの低廉化を実現できる。
【0053】
さらに、このタンデム式ベーン型圧縮機は、胴径が単シリンダ式ベーン型圧縮機と同一であるため、優れた搭載性も発揮することができる。
【0054】
なお、各第1背圧室33に供給された潤滑油は、第1ベーン31と第1ベーン溝27aとの摺動、第1ロータ27と第1サイドプレート11及び第2サイドプレート本体13bとの摺動、滑り軸受17、19と駆動軸25との摺動等の潤滑に寄与する。また、各第2背圧室39に供給された潤滑油は、第2ベーン37と第2ベーン溝29aとの摺動、第2ロータ29と第2サイドプレートカバー13c及び第3サイドプレート15との摺動、滑り軸受19、21と駆動軸25との摺動等の潤滑に寄与する。
【0055】
したがって、このタンデム式ベーン型圧縮機では、駆動軸25の1回転当たりの吐出容量を増加可能であるとともに、優れた機械効率と搭載性とをより確実に発揮可能である。
【0056】
また、このタンデム式ベーン型圧縮機では、両圧縮機構1C、2Cとも、背圧を吐出室53に近い位置で付与している。このため、吐出室53から背圧室33、39までの距離が短く、圧力損失を小さくできる。また、主流路69が短いことから、加工工数も低減できる。
【0057】
さらに、このタンデム式ベーン型圧縮機では、吸入室43に背圧が漏れにくく、動力損失を小さくすることもできる。
【0058】
また、このタンデム式ベーン型圧縮機では、第1シリンダブロック5と第2シリンダブロック7とが共通し、第1ロータ27と第2ロータ29とは共通し、第1ベーン31と第2ベーン37とが共通しているため、部品の共通化により製造コストの低廉化を実現することができる。
【0059】
(実施例2)
実施例2のタンデム式ベーン型圧縮機では、
図4に示すように、第1サイドプレート11に下端から上方に延びる1本の第1上流路11hが貫設されている。また、第1サイドプレート11には、軸孔11aを周回する環状の第1中流路11iが凹設されている。第1上流路11hの上端は第1中流路11iと連通している。さらに、第1サイドプレート11には、第1中流路11iと連通する2本の第1下流路11jが軸方向の後方に向かって延びている。各第1下流路11jは、第1ロータ27の回転により、圧縮行程及び吐出行程にある第1背圧室33と連通するようになっている。第1上流路11h、第1中流路11i及び第1下流路11jが第1供給流路である。
【0060】
また、第3サイドプレート15には、実施例1と同様、第2上流路15h、第2中流路15i及び第2下流路15jからなる第2供給流路が形成されている。
【0061】
さらに、サブアッシーSAにおいて、第3サイドプレート15、第2シリンダブロック7、第2サイドプレート13、第1シリンダブロック5及び第1サイドプレート11には、前後に延びて吐出室53と連通する主流路77が形成されている。第1上流路11h及び第2上流路15hはこの主流路77と連通している。主流路77のうち、第2上流路15hへの分岐位置までが共通流路77aであり、残部が第1上流路11hに連通するための単流路77bである。
【0062】
他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同様の構成については実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0063】
このタンデム式ベーン型圧縮機では、前方に位置する第1背圧室33には前方から背圧を付与し、後方に位置する第2背圧室39には後方から背圧を付与することができるため、第1、2ベーン31、37にバランスよく背圧を作用させやすい。このため、第1、2ベーン31、37が起動時に第1、2ベーン溝27a、29a内で傾斜し難く、なめらかな立ち上がりを期待できる。
【0064】
また、このタンデム式ベーン型圧縮機では、駆動軸25を大きなスパンの前後で背圧の反作用によって支持できることから、長い駆動軸25を低い振動の下で回転させることも期待できる。また、このタンデム式ベーン型圧縮機では、前方の滑り軸受17に潤滑油を供給し易く、駆動軸25の回転がなめらかになり易い。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0065】
(実施例3)
実施例3のタンデム式ベーン型圧縮機では、
図5に示すように、第2サイドプレート13に下端から上方に延びる1本の第2上流路13pが貫設されている。また、第2サイドプレート13には、軸孔13aを周回する環状の第2中流路13qが凹設されている。第2上流路13pの上端は第2中流路13qと連通している。さらに、第2サイドプレート13には、第2中流路13qと連通する2本の第2下流路13rが軸方向の後方に向かって延びている。各第2下流路13rは、第2ロータ29の回転により、圧縮行程及び吐出行程にある第2背圧室39と連通するようになっている。第2上流路13p、第2中流路13q及び第2下流路13rが第2供給流路である。
【0066】
また、第1サイドプレート11には、実施例2と同様、第1上流路11h、第
1中流路11i及び第
1下流路11jからなる第1供給流路が形成されている。
【0067】
さらに、サブアッシーSAにおいて、第3サイドプレート15、第2シリンダブロック7、第2サイドプレート13、第1シリンダブロック5及び第1サイドプレート11には、前後に延びて吐出室53と連通する主流路77が形成されている。第1上流路11h及び第2上流路13pはこの主流路77と連通している。
【0068】
他の構成は実施例1、2と同様である。このため、実施例1、2と同様の構成については実施例1、2と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0069】
このタンデム式ベーン型圧縮機では、前方の滑り軸受17に潤滑油を供給し易く、駆動軸25の回転がなめらかになり易い。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0070】
(実施例4)
実施例4のタンデム式ベーン型圧縮機では、
図6に示すように、第2サイドプレート13には、下端から上方に延びる1本の上流路13kが貫設されている。また、第2サイドプレート13には、軸孔13aを周回する環状の中流路13lが凹設されている。上流路13kの上端は中流路13lと連通している。さらに、第2サイドプレート13には、中流路13lと連通する2本の第1下流路13mが軸方向の前方に向かって延びているとともに、中流路13lと連通する2本の第2下流路13nが軸方向の後方に向かって延びている。各第1下流路13mは、第1ロータ27の回転により、圧縮行程及び吐出行程にある第1背圧室33と連通するようになっている。また、各第2下流路13nは、第2ロータ29の回転により、圧縮行程及び吐出行程にある第2背圧室39と連通するようになっている。上流路13k、中流路13l及び第1下流路13mが第1供給流路である。また、上流路13k、中流路13l及び第2下流路13nが第2供給流路である。
【0071】
また、サブアッシーSAにおいて、第3サイドプレート15、第2シリンダブロック7及び第2サイドプレート13には、実施例1と同様、前後に延びて吐出室53と連通する主流路78が形成されている。上流路13kはこの主流路78と連通している。主流路78が共通流路である。
【0072】
他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同様の構成については実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0073】
このタンデム式ベーン型圧縮機では、第2サイドプレート13のみに上流路13k等を形成すれば足りるため、加工工数を低減できる。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0074】
なお、このタンデム式ベーン型圧縮機においては、上流路13及び中流路13lも共通流路と捉えることができる。
【0075】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0076】
例えば、ハウジングの形状は実施例1〜4のように限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、第1シリンダブロック5と第1、2サイドプレート11、13の一方とが一体であり、第2シリンダブロック7と第2、3サイドプレート13、15の一方とが一体であってもよい。なお、共通流路、第1供給流路及び第2供給流路は
図4〜6と同様であってもよい。
【0077】
また、第1圧縮機構1C及び第2圧縮機構2Cの他に第3圧縮機構等を設けてもよい。
【0078】
また、実施例1〜4では第1圧縮機構1Cと第2圧縮機構2Cとを同一位相で作動させているが、吐出脈動低減等の目的により、第1圧縮機構1Cと第2圧縮機構2Cとを異なる位相で作動させることもできる。
【0079】
さらに、第1圧縮機構1Cで圧縮した冷媒ガスを第2圧縮機構2Cに吸入させ、第2圧縮機構2Cでより圧縮することにより、多段に圧縮することも可能である。
【0080】
また、第2サイドプレート13に第2サイドプレートカバー13cを設けず、チャタリング防止弁73の弁体61を第2ロータ29で押さえてもよい。
【0081】
共通流路の位置によってその通路径を変えれば、第1、2背圧室等に最適に潤滑油を供給することが可能である。