特許第5730774号(P5730774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730774複雑に造形された複合材料部品を製造する為の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730774
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】複雑に造形された複合材料部品を製造する為の方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20150521BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C04B35/80 K
   C04B35/80 L
   F01D5/28
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-538036(P2011-538036)
(86)(22)【出願日】2009年11月26日
(65)【公表番号】特表2012-510418(P2012-510418A)
(43)【公表日】2012年5月10日
(86)【国際出願番号】FR2009052308
(87)【国際公開番号】WO2010061139
(87)【国際公開日】20100603
【審査請求日】2012年9月27日
(31)【優先権主張番号】0858098
(32)【優先日】2008年11月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512162432
【氏名又は名称】エラクレス
【氏名又は名称原語表記】HERAKLES
(73)【特許権者】
【識別番号】511130852
【氏名又は名称】スネクマ
【氏名又は名称原語表記】SNECMA
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】エベルリン−フォー、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ブイヨン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ルシイユ、クレマン
(72)【発明者】
【氏名】オタン、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】クープ、ドミニク
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1997/033829(WO,A1)
【文献】 特表2012−510586(JP,A)
【文献】 特表平10−501756(JP,A)
【文献】 特開平03−285877(JP,A)
【文献】 特表2008−531448(JP,A)
【文献】 特開2005−240797(JP,A)
【文献】 特開2003−020287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/80
F01D 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材により高密度化された3次元織り繊維強化材を備えている複合材料で複雑部品を製造する方法であって:
製造される部品の複数の予備成形物の為の連続した複数の繊維素材を備えている連続した繊維ストリップを3次元織りする工程と;
ストリップから一体素材である個々の繊維素材を連続して切り離す工程と;
切り離された素材を造形し製造される部品の形状に近い形状を有している一体繊維予備成形物を得る工程と;
予備成形物を所望の形状に団結させる工程と;そして、
薬品蒸気浸透により母材を形成することにより、団結されている予備成形物を高密度化する工程と、
を備えている方法。
【請求項2】
織られている繊維ストリップの繊維上に表面処理が行われ、この処理は繊維からのサイジング剤の除去及び繊維の酸処理の少なくとも1つを備えている、ことを特徴とする請求項1に従っている方法。
【請求項3】
個々の繊維素材を切り離す以前に、織られている繊維ストリップが樹脂を備えている団結液体組成物により含浸され、そして団結が樹脂を硬化させそして熱分解させることにより行われている、ことを特徴とする請求項1又は2に従っている方法。
【請求項4】
団結液体組成物で含浸する以前に、織られている繊維ストリップの繊維上に繊維−母材中間相層が形成され、中間相層が熱分解カーボン(PyC),窒化硼素(BN),又は硼素添加炭素(BC)から選択された材料で形成されている、ことを特徴とする請求項3に従っている方法。
【請求項5】
中間相層が100nmを越えない厚さを有している、ことを特徴とする請求項4に従っている方法。
【請求項6】
団結された予備成形物を得た後であってそれが母材により高密度化される以前に、さらなる繊維−母材中間相層が形成される、ことを特徴とする請求項4又は請求項5に従っている方法。
【請求項7】
さらなる中間相層が薬品蒸気浸透により作成されており、そして、さらなる中間相層の形成及び高密度化が1つの炉中で順次行われる、ことを特徴とする請求項6に従っている方法。
【請求項8】
団結液体組成物の浸透後であって素材が切り離される以前に、団結樹脂が予備硬化される、ことを特徴とする請求項乃至7のいずれか1項に従っている方法。
【請求項9】
繊維素材が成形型中で造形され、成形型中では団結樹脂の硬化及び熱分解が順次行なわれる、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に従っている方法。
【請求項10】
薬品蒸気浸透の実行の準備中に行われる温度上昇の間に樹脂が熱分解される、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に従っている方法。
【請求項11】
予備成形物が所望の形状に保たれている間の薬品蒸気浸透による予備成形物の部分的な高密度化により、団結が行われる、ことを特徴とする請求項1に従っている方法。
【請求項12】
造形の後であって硬化の以前に、繊維−母材中間相被覆が予備成形物の繊維上に形成され、中間相被覆が炭化珪素(PyC),窒化硼素(BN),又は硼素添加炭素(BC)から選択された材料で形成されている、ことを特徴とする請求項11に従っている方法。
【請求項13】
高密度化が部分的に高密度化されている予備成形物を機械加工する動作によって分離されている2つの工程を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に従っている方法。
【請求項14】
織られているストリップが、ストリップの長手方向に延出した繊維素材の複数の列を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に従っている方法。
【請求項15】
複数の繊維素材を備えている連続している繊維ストリップにおいては、個々の繊維素材が縦糸方向の両端の夫々の外側に縦糸のみが設けられている特別な長さの変遷区域が提供されていて、そしてさらに、個々の繊維素材が横糸方向の両端の夫々の外側に横糸のみが設けられている特別な長さの変遷区域が提供されている、ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に従っている方法。
【請求項16】
繊維素材を造形して得られた一体繊維予備成形物は、ターボ機械羽根の少なくとも板翼及び羽根元の為の一体予備成形物である、請求項1乃至15のいずれか1項に従っている方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複合材料から複雑な形状の部品を製造することに関係している。
【0002】
この発明の適応の一例は、航空及び宇宙の分野における使用の為の熱構造(thermostructural)複合材料から部品を製造することである。
【背景技術】
【0003】
良く知られている方法においては、熱構造(thermostructural)複合材料から部品を製造することは、耐熱性繊維(炭素繊維又はセラミック繊維)から、製造される部品の形状に近い形状を有している繊維予備成形物を作成すること、そして次に、(炭素又はセラミックの)耐熱性母材で繊維予備成形物を高密度化すること、を備えている。
【0004】
繊維予備成形物を作成する為に、種々の織物技術が使用されることが出来る。一つの知られている技術は、3次元織り(three-dimensional weaving)、即ち複数層織り(multilayer weaving)、により予備成形物を作成することから成る。このような織りの方法は、糸の複数の層間に交錯(interlacing)が設定されることを可能にし、高い等級の機械的な性質を有している複合材料部品を得るのに必要な強度を予備成形物に与える。
【0005】
形状において複雑である部品では、3次元(3D)織りにより繊維予備成形物を直接作成することが困難であるか、又は不可能でさえある。
【0006】
従って、予備成形物を高密度化するのに先立って、例えば糸を縫い合わせる(stitching)ことにより又は糸を植え込む(implanting)ことにより、互いに組み合わされた複数の別の部品として繊維予備成形物を作成することが可能である。しかしながら、予備成形物の種々の部分間の連結は、弱点を構成するかもしれない。
【0007】
また、素材を造形することにより素材から得られた繊維予備成形物を伴った3D織りにより繊維素材を作成することも知られている。素材の造形は、織りの間に形成された非−接合区域(de-bonding zone)の近傍又は素材中で行われた切断(cut)又は切り込み(incision)の近傍の、素材の1つまたそれ以上の部分上での折り畳み又は展開を備えて良い。
【0008】
繊維予備成形物は、液体技術又は気体の技術を使用した団結により所望の形状に保持される。液体団結は、樹脂を含んでいる団結組成物を予備成形物に含浸させること、そして、樹脂を硬化及び熱分解させるよう熱処理を適用すること、を備えている。樹脂の量は、支持工具の手助け無しでその形状を予備成形物が維持ことが出来るような十分な高密度を熱分解残留物が達成するよう選択されている。気体団結は、薬品蒸気浸透(CVI:chemical vapor infiltration)により繊維上に物質を付着させることにより予備成形物を部分的に高密度化することを備えていて、付着される材料の量は、支持工具の手助け無しでその形状をそれが維持するよう、予備成形物の繊維を互いに連結させるのに十分なように選択されている。団結された予備成形物は次に耐熱性母材で高密度化されている。
【0009】
文書US5350545は、織られている(woven)か又は編組されている(braided)材料で作成された繊維予備成形物を団結させる為にセラミック−先駆物質樹脂を使用し、続いて薬品蒸気浸透により団結されている予備成形物を高密度化することにより、複雑な形状のセラミック母材複合(CMC:ceramic matrix composite)部品を作成する方法を記載している。
【0010】
さらに、CMC材料の為に特定の、しかし排他的ではない、繊維上の中間相の形成は、液体団結を使用した時、繊維上に過剰に強く付着している樹脂を熱分解することによる残留物を避けるよう働くとともに、気体団結を使用した時、割れに対する感度を大きく減少させるとともに衝撃に耐える能力を向上させるよう働く。
【0011】
更には、特に使用された繊維が商業的に入手可能なセラミック繊維である時、繊維の表面上に存在しているサイジング剤(sizing)又は酸化物フィルムを取り除く目的の為に、中間相の形成及び団結に先立って繊維上で処理を行うことが望ましい。
【0012】
これら種々の操作は多大な手間を要求し、従って部品製造の複雑化及び経費を増大させる。
【0013】
文書WO97/33829は炭素/炭素複合材料から弁を製造する方法を記載していて、この方法は編組されている(braided)予備成形物を作成することを含んでいる。連続的な編組(braid)は、編組の内側の規則正しい間隔の位置に炭素挿入物を載置することにより作成されて良く、編組から挿入物を含んでいる部分(segment)を切り離すことにより弁予備成形物を得る。
【発明の概要】
【0014】
この発明は、繊維補強材が3Dで織られている補強材であり、母材により高密度されている繊維強化材を備えている複合材料からの複雑な形状の部品の製造を合理化するのに適している方法を提案することを目指している。
【0015】
この発明に従えば、この目的は、
製造される部品の複数の予備成形物の為の連続した複数の繊維素材を備えている連続した繊維ストリップを3次元織りする工程と;
ストリップから一体素材である個々の繊維素材を連続して切り離す工程と;
切り離された素材を造形し製造される部品の形状に近い形状を有している一体繊維予備成形物を得る工程と;
予備成形物を所望の形状に団結させる工程と;そして、
薬品蒸気浸透により母材を形成することにより、団結されている予備成形物を高密度化する工程と、
を備えている方法により達成される。
【0016】
好ましくは、織られている繊維ストリップの繊維上に表面処理が行われ、この表面処理が、以下の動作の少なくとも1つ:繊維からのサイズ剤(サイジング剤)(sizing)の除去及び繊維の酸処理(acid treatment)、を備えている。
【0017】
第1の実行においては、個々の繊維素材を切り離す以前に、織られている繊維ストリップが樹脂を備えている団結液体組成物により含浸されていて、そして、団結が樹脂を硬化させるとともに熱分解させることにより行われる。
【0018】
好ましくは、団結組成物で含浸する以前に、織られている繊維ストリップの繊維上に繊維−母材中間相層が形成され、中間相層が熱分解カーボン(PyC:pyrolytic carbon),窒化硼素(BN:boron nitride),又は硼素添加炭素(BC:boron-doped carbon)から選択された材料で形成されている。繊維素材の変形能力を確保する為に、中間相層が100ナノメーター(nm)を越えない厚さを好ましくは提供する。
【0019】
団結組成物の浸透後であって素材が切り離される以前に、団結樹脂の予備硬化を行うことが可能である。このような予備硬化又は部分的な硬化は、繊維素材の剛性(stiffness)、そして従って更なる強度、を提供する。
【0020】
薄い繊維−母材中間相層がストリップの含浸に先立って形成されている時、団結された予備成形物が得られた後であってそれが母材により高密度化される以前に、さらなる中間相層が形成されて良い。
【0021】
このような状況下では、そして好ましくは、さらなる中間相層(interphase layer)が薬品蒸気浸透(chemical vapor infiltration)により作成され、そして、さらなる中間相層の形成及び高密度化(densification)が1つの炉(oven)中で順次行われる。
【0022】
繊維素材は成形型(mold)中で造形されて良く、成形型中では団結樹脂(consolidation resin)の硬化(curing)及び熱分解(pyrolysis)が順次行なわれる。
【0023】
代わりに、薬品蒸気浸透の実行の準備中に行われる温度上昇の間に樹脂が熱分解される。
【0024】
この方法のもう1つの実行においては、予備成形物が所望の形状に保たれている間の薬品蒸気浸透による予備成形物の部分的な高密度化により団結が行われる。
【0025】
好ましくは、この他の実行においては、団結の前であって造形の後に、繊維−母材中間相被覆が予備成形物の繊維上に形成され、中間相被覆が熱分解カーボン(PyC:pyrolytic carbon),窒化硼素(BN:boron nitride),そして硼素添加炭素(BC:boron-doped carbon)から選択された材料で形成されている。中間相被覆は、略一百乃至数百ナノメータ―の範囲中に横たわっている厚さを提供する。
【0026】
この方法の1つの特徴に従うと、高密度化が部分的に高密度化されている予備成形物を機械加工する動作によって分離されている2つの工程を備えている。
【0027】
この方法のもう1つの特徴に従うと、薬品蒸気含浸による高密度化に先立って、団結されている予備成形物上で予備機械加工が行われる。
【0028】
織られているストリップが、ストリップの長手方向に延出した繊維素材の複数の列を備えていて良い。
【0029】
好ましくは、ストリップが、繊維素材の全ての回りにおける織物の縦及び横方向の特別な長さの区域で織られている。
【0030】
従って、この発明の方法は、取り扱いが容易である連続している3Dで織られているストリップ上で繊維素材を先行して造形する動作が行われること、そして複数の素材を同時に処理することを可能にしていることに注目される。このことは、非常に多数の同じ部品を製造する間に重要な利点を提供する。
【0031】
この発明の方法は特に、排他的にではなく、セラミック母材複合材料から複雑な形状の部品を作成する為に適している。
【0032】
特定の適用は、ターボ機械羽根を製造することである。ストリップは従って、羽根の少なくとも板翼及び羽根元の為の一体予備成形物を夫々が構成している複数の繊維予備成形物を、造形後に、構成するのに適している複数の繊維素材の連続として好ましくは織られていて、複数の繊維素材は、織物の横方向又は縦方向に延出し、製造される羽根の長手方向に対応している、それらの長手方向で織られている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
この発明は、添付の図面を参照した、非限定指摘として作成された以下の記載を読むことにより、より良く理解されることが出来、ここで:
図1図1は、この発明の方法の第1の実行の連続した工程を示しており;
図2図2は、この発明の方法の第2の実行の連続した工程を示しており;
図3図3は、そこに組み込まれた内方及び外方プラットフォームを有しているターボ機械羽根の斜視図であり;
図4図4は、図3中に示されている種類の羽根の為の繊維予備成形物を形成する為の、3次元に織られている繊維素材中の糸の複数層の2セットの配置の高度に概略化された図示であり;
図5図5は、図4の繊維素材から始まる、図1中に示されている如き羽根の為の繊維予備成形物を作成する一連の工程の図4の次の工程を示しており;
図6図6は、図4の繊維素材から始まる、図1中に示されている如き羽根の為の繊維予備成形物を作成する一連の工程の図5の次の工程を示しており;
図7図7は、図4の繊維素材から始まる、図1中に示されている如き羽根の為の繊維予備成形物を作成する一連の工程の図6の次の工程を示しており;
図8図8は、図中に示されているものの如き羽根の平坦に作成された輪郭を示している断面図であり;
図9図9は、図8中に示されているものの如き輪郭を得ることを可能にする織物の複数の縦糸層の1つのセットの断面図であり;
図10A図10Aは、図4の繊維素材を織る1つの方法を示している織物の縦断面図であり;
図10B図10Bは、図4の繊維素材を織る1つの方法を示している織物の縦断面図であり;
図11図11は、羽根の板翼と内方プラットフォームとの間の交差の位置に対応している図4の繊維素材の一部分における織物の縦及び横方向に対し平行な平面上の部分断面図であり;
図12図12は、羽根の板翼と外方プラットフォームとの間の交差の位置に対応している図4の繊維素材の一部分を通過する織物の横断面における部分的な図であり;
図13図13Aは、羽根元の一部分に対応している繊維素材の一部分中の織物の横糸の配列の一例を示している織物の横方向断面図であり; 図13Bは、繊維素材の図10A部分中の(複層)3次元織りの一例の為の織物の縦平面を示している織物の横方向の断面図であり; 図13Cは、繊維素材の図10A部分中の(複層)3次元織りの一例の為の織物の縦平面を示している織物の横方向の断面図であり; 図13Dは、繊維素材の図10A部分中の(複層)3次元織りの一例の為の織物の縦平面を示している織物の横方向の断面図であり;
図14図14は、羽根元に対応している部分を作成するもう1つの方法を示している、断面における部分的な概略図であり;
図15図15は、図4中に示されているものの如き、3次元織りにより得られ複数の繊維素材を含んでいる織られた繊維ストリップを形成する2つの方法の一方を示している高度に概略化された図であり;
図16図15は、図4中に示されているものの如き、3次元織りにより得られ複数の繊維素材を含んでいる織られた繊維ストリップを形成する2つの方法の他方を示している高度に概略化された図であり;
図17図17は、後燃焼(post-combustion)を伴っているガスタービン航空機機関のノズルの熱操舵可能フラップ(hot steerable flap)の斜視図であり;
図18図18は、図17中に示されている種類のフラップ本体の為の繊維予備成形物を作成する為の3Dで織られた繊維素材中の糸の複数の層の配置の高度に概略化された図であり;
図19図19は、図18の繊維素材から、図17中に示されている種類のフラップ本体の為の繊維予備成形物を作成する連続工程を示しており;
図20図20は、図18の繊維素材から、図17中に示されている種類のフラップ本体の為の繊維予備成形物を作成する連続工程を示しており;
図21A図21Aは、図18の素材を形成している糸の複数の層の1つのセットの拡大された尺度の部分断面図であり;
図21B図21Bは、図18の素材を形成している糸の複数の層の1つのセットの拡大された尺度の部分断面図であり;
図22図22は、図18中に示されているものの如き、複数の繊維素材を備えている3Dで織られた繊維ストリップを作成する2つの方法の一方を示している高度に概略化された図であり;そして、
図23図23は、図18中に示されているものの如き、複数の繊維素材を備えている3Dで織られた繊維ストリップを作成する2つの方法の他方を示している高度に概略化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の方法の第1の実行において複合材料部品を製造する方法の連続した工程が図1中に与えられている。
【0035】
この例においては、セラミック母材により高密度化されたセラミック繊維の繊維強化材を備えているセラミック母材複合(CMC:ceramic matrix composite)材料部品を作成することに考慮が与えられている。
【0036】
工程1においては、繊維ストリップが3D織りにより織られていて、そして繊維素材200の少なくとも一列を備えている。複数の繊維素材は示されている如く織物の縦方向、即ちストリップの長手方向、に向けられている長手方向を有して良く、或いはそれらは織物の横方向に向けられていて良い。種々の部品を製造する為の繊維素材を作成する為の技術は以下に詳細に記載される。例によれば、セラミック繊維はSiC繊維であり、従って織りは、例えば日本国の供給者日本カーボン(Nippon Carbon)により「ニカロン(Nicalon)」の名前の下で販売されているものの如き、SiC繊維糸を使用して行われている。
【0037】
工程2においては、繊維ストリップは繊維上に存在しているサイジング剤(sizing)及び繊維の表面上の酸化物の存在を除去する為に処理される。酸化物除去は、酸処理(acid treatment)により、特に弗化水素酸(hydrofluoric acid)の浴槽中での浸漬(immersion)により、得られた。サイジング剤除去の為の前処理が、例えば短かい加熱処理による油剤(lubricant)の分解(decomposing)により、行われる。
【0038】
工程3においては、中間相被覆(interphase coating)の薄い層が、薬品蒸気浸透(CVI:chemical vapor infiltration)により繊維ストリップの繊維上に形成される。中間相被覆(interphase coating)材料は、例えば熱分解カーボン(PyC:pyrolytic carbon)により,窒化硼素(BN:boron nitride)により,又は硼素添加炭素(BC:boron-doped carbon、例えば5原子パーセント(at.%:atom percent)乃至20at.%のB,残余(balance)がCである)により、構成されている。中間相被覆(interphase coating)の薄い層は、繊維素材中に変形の為の良好な能力を確保にする為に、好ましくは小さい厚さ、例えば100ナノメーター(nm)を越えない、又は実際に50nmを越えない、である。この厚さは好ましくは10nm以上である。
【0039】
工程4においては、中間相被覆(interphase coating)の薄い層により被覆されている繊維を伴っている繊維ストリップが、溶剤中に希釈可能である団結組成物(consolidation composition),一般的には樹脂、により含浸される。炭素先駆物質樹脂(carbon precursor resin)、例えばフェノール樹脂(phenolic resin)又はフラン樹脂(furanic resin)、が使用出来、又は、セラミック先駆物質樹脂、例えばSiCN,SiCO,そしてSiCの先駆物質としてのポリシラゼン樹脂(polysilazane resin),ポリシロキサン樹脂(polysiloxane resin),又はポリカーボシレン樹脂(polycarbosilane resin)、が使用出来る。
【0040】
樹脂の如何なる溶剤の除去による乾燥後(工程5)、樹脂の予備硬化を行うことが可能である(工程6)。予備硬化又は不完全な硬化は、剛性(stiffness)そして従って強度(strength)を増加させるよう働き、その間に、素材の造形により予備成形物を作成するのに必要な変形の為の能力を残しておく。
【0041】
工程7においては、個々の繊維素材200が切り離される。
【0042】
工程8においては、このようにして切り離された繊維素材が造形され、そして、製造される複合材料部品の形状に近い複雑な形状を伴った予備成形物を得る為の造形の為の例えば黒鉛で作成された成形型(mold)又は造形器(shaper)中に置かれる。
【0043】
その後、樹脂の硬化が行われ(工程9)、そして硬化された樹脂が熱分解される(pyrolyzed)(工程10)。硬化及び熱分解は、成形型中の温度の漸進的な上昇により互いに続いて良い。
【0044】
熱分解の後に、熱分解の残留物により団結されている(consolidated)繊維予備成形物が得られる。団結樹脂の量は、熱分解樹脂が予備成形物の繊維を互いに十分に結合して、工具からの手助け無しでその形状を維持している間にその取り扱いを可能にするよう選択されていて、団結樹脂(consolidation resin)の量は好ましくは出来る限り小さくなるよう選択されることに注意が払われている。
【0045】
サイズ剤(サイジング剤)の除去,酸処理の実行,そしてSiC繊維の支持体(substrate)上の中間相被覆の形成の工程は知られている。参照は、文書US5071679に対し行われて良い。
複合材料を脆化(brittle)無しにする機能を果たすのに十分な厚さの繊維―母材中間相を全体に得る為に必要であれば、第2中間相層(second interphase layer)がCVIにより形成されて良い(工程11)。第2中間相層はPyC,BN,そしてBCから選択された材料であって良く、そして第1中間相層を構成している材料と必ず同じ材料である必要はない。知られている如く、このような中間相材料は、複合材料の母材を通って中間相に到達する割れの底の応力を解放することが出来、そして従って繊維の裂けを導く繊維を通る割れの進行を避けるか又は減速させる。第2中間相層の厚さは好ましくは100nm以上である。
【0046】
上述した如く、2つの層として中間相を作成することは好ましい。このことは、本出願人の一人により番号08/54937の下で提出されたフランス特許出願中に記載されている。第1の中間相層は、繊維上に過剰に付着している団結樹脂の熱分解の残留物を避けることに貢献する。
【0047】
団結された予備成形物は次にセラミック母材により高密度化される(densified)。この高密度化はCVIにより行われて良く、そしてこのような状況の下では、第2中間相層及びセラミック母材による高密度化は順次同じ炉(oven)中で続けられて良い。
【0048】
セラミック母材、特にSiC母材、による予備成形物のCVI高密度化は良く知られている。メチルトリクロロシラン(MTS:methyltrichlorosilane)及びガス状水素(H)を含んでいる反応ガスを、使用して良い。団結された予備成形物は、その形状を維持する為の工具を使用することなく、閉鎖容器中に置かれ、そしてガスがその閉鎖容器中に導入される。特に温度及び圧力が制御された状況下で、ガスは予備成形物の多孔(pores)中に拡散してその成分(constituent)間の反応によりSiC母材の付着を形成する。
【0049】
当然、所望の複合材料の性質に従い、この方法は、セラミック以外の繊維、例えば炭素繊維、の繊維ストリップを使用して実行されて良い。酸化物層除去の為の工程の酸処理は従って削除される。
【0050】
同様に、団結された予備成形物のCVI高密度化は、SiC以外の母材、特に炭素母材又は自己−回復(self-healing)母材、を使用して行って良く、自己−回復(self-healing)母材相の例は3元Si−B−C系(ternary Si-B-C system)又は硼素炭化物(boron carbide)BCである。文書US5246736及びUS5965266に対し参照を行って良い。これらの文書はこのような自己−回復(self-healing)母材を得る為にCVIを使用することを記載している。
【0051】
高密度化(densification)は、製造される部材を所望の寸法に機械加工する工程13により分離されている2つの連続した工程(工程12及び14)中で行なわれて良い。第2の高密度化工程は、複合材料を核(core)へと高密度化することを終わりにするばかりでなく、機械加工中に裸にされる如何なる繊維上に表面被覆を形成することにも役立つ。
【0052】
予備機械加工又はトリミング(trimming)が、工程9と10との間で、即ち樹脂の硬化後であり熱分解前に、行なわれて良い。
【0053】
この発明の方法の第2の実行において複合材料部品を製造する方法の連続した工程が、図2を参照して記載される。
【0054】
複数の繊維素材200で作成されている繊維ストリップを3次元的に織る工程21、そして、サイジング剤及び酸化物を除去する為の処理を適用する工程22は、図1の実行の工程1及び2と同じである。
【0055】
工程23においては、個々の繊維素材が繊維ストリップから切り離され、そして次に個々の繊維素材が成形型(mold)又は造形器(shaper)中で造形されて(工程24)所望の複雑な形状を有している繊維予備成形物を得る。
【0056】
工程25においては、脆化(embrittlement)を無くす為の中間相被覆(interphase coating)が、繊維ストリップの繊維上にCVIにより形成される。例として、中間相被覆材料は、上述した如く、PyC,BN,又はBCである。中間相被覆の厚さは略一百乃至数百ナノメーターの範囲である。
【0057】
予備成形物が造形器(shaper)中で形状が保持されていることにより、予備成形物が部分的な高密度化により団結され(工程26)、団結はCVIにより繊維上にセラミック付着層(deposit)を形成することにより行われている。
【0058】
CVIによる中間相被覆の形成及びCVIによるセラミック付着による団結は、同じCVI炉(oven)中で順次続けられて良い。
【0059】
造形器(shaper)は好ましくは黒鉛(graphite)で形成され、そしてCVIによる中間相の付着及びセラミックの付着を向上させる反応ガスの通過を容易にする為の多数の孔を提供する。
【0060】
支持工具からの手助けなしでその形状を確保している間に予備成形物を取り扱うことを可能にするのに団結が十分であると、団結されている予備成形物は造形器(shaper)から排出され、そしてCVIによるセラミック母材での高密度化が行われる。高密度化は、製造の為に部品を所望の寸法に機械加工する工程28により分離された2つの連続した工程(工程27及び29)中で行なわれて良い。
【0061】
上では、中間相被覆は、素材200を切り離す以前に、工程23の間に繊維ストリップの繊維上に形成される。代わりに、中間相被覆は、予備成形物が造形された後(工程25)であって、それが団結される(工程26)以前に、形成されて良い。CVIによる中間相被覆の形成及びCVIによるセラミック付着による団結は、同じCVI炉(oven)中で順次引き続かれて良い。このように進めることにより、予備成形物を形成する為の変形の為の幾分かの能力を残すよう限定されない厚さの中間相被覆を形成することが可能である。
【0062】
例1:CMC材料からその中に内方及び外方プラットフォームが組み込まれているターボ機械羽根を製造する。
【0063】
この発明の方法は、種々の型のターボ機械羽根、例えば低圧タービンの回転円板(rotary disk)の羽根、を製造する為に使用されて良く、この羽根は、図3中に示されている羽根110のように、その中に組み込まれている内方及び外方プラットフォームを有している。
【0064】
の羽根(blade)110は、良く知られているように、板翼(airfoil)120,より大きな厚さの部分により形成されている、例えば舌(tang)132により延出された電球の形状(the form of a bulb)の横断面を提供している、羽根元(root)130,羽根元(root)130と板翼120との間に位置されている内方プラットフォーム140,そして、板翼の自由端の近傍にある外方プラットフォーム150を備えている。
【0065】
板翼120は、内方プラットフォーム140と外方プラットフォーム150との間で長手方向に延出し、そして、その前縁120aとその後縁120bとの間で変化する厚さの湾曲された輪郭の形状の断面を提供している。
【0066】
羽根110は、羽根元130をタービンロータ(図示されていない)の周面中に配置されている補完形状のハウジング中に係合させることによりタービンロータ上に設置されている。羽根元130は、内方プラットフォーム140の内方(又は底)表面と連結するよう舌132により延出されている。
【0067】
その半径方向内端で板翼120は、内方プラットフォーム140に、内方プラットフォームの外方(又は上)表面142を介し連結されていて、この表面はタービンを通過するガス流れの為の流路の内側を規定している。その上流及び下流端部(ガス流れの流れ方向fに比べた)において、下方プラットフォームは縁金(rim)144及び146により終了されている。示されている例においては、内方プラットフォームの表面142は傾斜されていて、羽根の長手方向に対する直角に対し略ゼロでない(non-zero)角度αを全体に形成している。ガス流れの流路の内側表面の為に望まれている輪郭に従って、角度αはゼロであって良く、或いは表面142は略直線でない、例えば湾曲された、輪郭を有して良い。
【0068】
その半径方向外端で板翼は、外方プラットフォームの内方(底)表面152を介し外方プラットフォーム150に連結されていて、内方(底)表面はガス流れ流路の外側を規定する。その(上)外方側上で外方プラットフォームは凹み又は浴槽(bathtub)154を規定している。浴槽154の上流及び下流縁に沿い外方プラットフォームは、歯形状輪郭のワイパー(wiper)156を支持しており、そして、ワイパーの端は羽根の端とタービンリング(示されていない)との間の隙間を減少させるようタービンリングの摩耗可能材料の層中に貫入できる。示されている例においては、外方プラットフォームの表面152は羽根の長手方向に対し実質的に直角に延出している。代わりに、ガス流れ流路の外方表面の為に望まれている輪郭に従い、表面152は、羽根の長手方向に対する直角に対しゼロでない角度を略形成するよう傾斜していることが出来、或いは表面152は、略直線ではない、例えば湾曲されている、輪郭を有することが出来る。
【0069】
図4は繊維素材200の高度な概略図であり、そこからは羽根繊維予備成形物が形成されることが出来、そして、母材による高密度化の後に、そして可能な機械加工後に、図3中に示されている如く、複合材料で形成されていてその中に内方及び外方プラットフォームが組み込まれていう羽根が得られる。単一の素材200が図4中に示されていて、このような素材の連続は、前述した如く、そして以下により詳細に記載される如く、繊維ストリップに連続して織られることが観察される。
【0070】
素材200は、3次元織り又は複層(multilayer)織りにより得られた2つの部分202及び204を備えていて、これら2つの部分の包絡線(envelope)のみが図4中に示されている。造形後、部分202は、板翼及び羽根元の為の予備成形物に対応している羽根繊維予備成形物の部分を構成する。造形後、部分204は、羽根の内方及び外方プラットフォームの予備成形物に対応した羽根繊維予備成形物の部分を構成する。
【0071】
2つの部分202及び204は、作成される羽根の長手方向Xに対応している方向に略延出しているストリップ(strip)の形状である。板翼予備成形物を形成するその部分において繊維ストリップ202は、作成される羽根の板翼の輪郭の厚さに関連して決定された変化している厚さを提供する。羽根元予備成形物を形成するその部分において繊維ストリップ202は、作成される羽根の羽根元の輪郭の厚さに関連して決定された特別な厚さ203を提供する。
【0072】
繊維ストリップ202は作成される羽根の板翼及び羽根元の輪郭の展開された長さ(即ち、平坦にされた時の輪郭の長さ)に関連して選択された幅lを有していて、これに対し繊維ストリップ204は、幅lよりも大きく、そして作成される羽根の内方及び外方プラットフォームの展開された長さに関連して選択されている、幅Lを有している。
【0073】
繊維ストリップ204は、実質的に一定であるとともに、作成される羽根の内方及び外方プラットフォームの厚さに関連して決定されている、厚さである。ストリップ204は、ストリップ202の第1表面202aの近傍でそれに沿い延出している第1部分204a,ストリップ202の第2表面202bの近傍でそれに沿い延出している第2部分204b,そして、ストリップ202の第1表面202aの近傍でそれに沿い延出している第3部分205aを有している。
【0074】
部分204a及び204bは、作成される羽根の内方プラットフォームの位置に対応している位置でストリップ202に対し横断するよう延出している連結部分240cにより互いに連結されている。連結部分240cはストリップ202を通って通過していて、繊維素材の長手方向に対する直角に対し角度αを形成している。部分204b及び205aは、作成される羽根の外方プラットフォームの位置に対応している位置でストリップ202に対し横断するよう延出している連結部分250cにより互いに連結されている。示されている例では、連結部分250cは、繊維素材の長手方向に対し実質的に直角にストリップ202を通って通過している。羽根の外方プラットフォームで望まれている形状に従い、連結部分250cは、内方プラットフォームに関する限りでは、羽根の長手方向に対する直角に対しゼロでない角度でストリップ202を通って通過して良い。さらに、連結部分240cの輪郭及び/又は連結部分250cの輪郭は、示されている例中の如く直線である代わりに曲線であって良い。
【0075】
以下により詳細に記載されている如く、ストリップ202及び204は、ストリップ202とストリップ204の部分204a,204b,そして205aとの間の接合によらず、複数の連続している素材200を方向X中で連続して織ることにより、3次元織りにより同時に織られている。
【0076】
図5乃至7は、製造される羽根の形状に近い形状の繊維予備成形物がどのようにして繊維素材200から出発して得られることが出来たのかを示している高度に概略的な図である。
【0077】
繊維ストリップ202は、特別な厚さ203中で一端が切られ、そして連結部分250cをわずかに超えたもう一端が切られて、作成される羽根の羽根元の位置に対応した位置に配置されている特別な厚さ203により形成された膨れた(swollen)部分230を伴った、作成される羽根の長手寸法に対応している長さのストリップ220を有する。
【0078】
さらに、ストリップ204の部分204a,205aの端において、そしてその部分2
04b中において、切断が行われて、図5中に示されている如く、連結部分240cのいずれの側にも区分240a及び240bが残され、そして連結部分250cのいずれの側にも区分250a及び250bが残される。区分240a,240b及び250a,250bの長さは、作成される羽根の内方及び外方プラットフォームの長さに関連して決定されている。
【0079】
一方での繊維素材のストリップ202と他方での部分204a,204b,そして205aとの間の接合の不在により、区分240a,240b,250a,そして250bは糸(yarn)の切断を伴うことなくストリップ202に対し直角に折り曲げられることが出来、図6中に示されている如く、板240,250を形成する。
【0080】
製造される羽根の為の繊維予備成形物300は、図7中に示されている如く、ストリップ202が羽根の板翼の湾曲された輪郭を創出するよう変形されるとともに、板240,250が羽根の内方及び外方プラットフォームの形状と同様な形状を創出するよう変形されて、型成形(molding)により連続して得られた。予備成形物は従って、板翼予備成形物を構成している部分320,羽根元予備成形物(舌予備成形物を含んでいる)を構成している部分330,そして内方及び外方プラットフォームの予備成形物を構成している部分340及び350を有して得られる。
【0081】
以下に記載されている如く、繊維素材200を3次元織りする方法のより詳細な記載が以下にある。
【0082】
織り(weaving)は素材の長手方向Xに延出している織物の縦糸(warp yarn)を使用して行われると想定されているが、この方向に延出している織物の横糸(weft yarn)を使用した織りも可能であることが観察されている。
【0083】
その幅に沿ったストリップ202の厚さにおける変化は、重さを変化させている織物の縦糸を使用することにより得られた。代わりに、又は更に、織物の縦糸の打込数(織物の横糸方向の単位長さ当たりの糸の数)を変化させることも可能であり、より小さな打込数は型成形(molding)により予備成形物を造形する間により大きな薄さを可能にする。
【0084】
従って、図8中に平坦に突出して示されている如き羽根の為の板翼輪郭を得る為に、図9中に示されている如く、重量及び打込数を変化させている織物の縦糸の3つの層を使用することが可能である。
【0085】
一つの実施形態においては、使用された糸(yarn)は、0.5K(即ち、500フィラメント)の重量(フィラメントの数)を有していて日本国の供給者日本カーボン(Nippon Carbon)により「ニカロン(Nicalon)」の名前で販売された炭化珪素(SiC:silicon carbide)であって良い。縦糸(warp)は0.5KのSiC糸及び0.5K糸の対を合体させることにより得られた1KのSiC糸を使用して形成されており、2つの糸は覆われることにより合体されている。覆い(covering)は好ましくは、織りの後で除去されるのに適切な犠牲的な(sacrificial)性質の糸、例えば、水中で溶解されることにより除去されることが出来るポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)の糸、を使用して、得られた。
【0086】
以下の表1は、縦糸(warp yarn)の個々の柱(column)の為に、打込数(count)(輪郭の長さにおけるセンチメートル当たりの糸の数),0.5K糸の数,1K糸の数,そして、ミリメートル(mm)での輪郭の厚さを与えており、この厚さは略1mm乃至2.5mmの範囲に渡り変化している。
【表1】
【0087】
当然、入手可能な糸重量に従い、糸(yarn)の層(layer)の数と打込数及び重量における変化との異なった組み合わせが、所望の輪郭を得る為に採用されることが出来る。
【0088】
図10A及び10Bは、その特別な厚さ203の外側で繊維素材200を織る為に使用されるのに適した織物組織(weave)の2つの連続した平面における縦糸(warp)断面を示している。
【0089】
繊維素材200のストリップ202は、縦糸層(warp yarn layer)の1セットを備えていて、そこでのこの例における層の数は3に等しい(層C11,C12,C13)。縦糸(warp yarn)は、3次元織りにより横糸(weft yarn)tによりともに結合されている。
【0090】
ストリップ204は従って、ストリップ202と同様に、例えば、3次元織りにより、横糸(weft yarn)tにより相互に連結されている3(層C21,C22,C23)に等しい、縦糸層(warp yarn layer)の1セットを有している。
【0091】
横糸(weft yarn)tがストリップ204の縦糸層(warp yarn layer)中に延びておらず、そして、横糸(weft yarn)tがストリップ202の縦糸層(warp yarn layer)中に延びておらず、不接合(de-bonding)を得ている、ことに注目すべきである。
【0092】
示されている例では、織り(weaving)は、サテン(satin)又は複サテン(multi-satin)型の織りを使用した複層織り(multilayer weaving)である。他の型式の3次元織りが使用されることが出来、例えば、複数平面織物組織(multiple plain weave)を伴う複層織り又は「相互固定」型織物組織(“interlock” type weave)を伴う織りである。用語「相互固定」織物(“interlock” weaving)」はここでは、横糸(weft yarn)の個々の層が、縦糸(warp yarn)の複数の層とともに、織物組織(weave)平面中で同じ動き(motion)を有している横糸の所定の柱(column)中の糸(yarn)の全てと織られている織物組織(weave)を意味するよう使用されている。3次元織りの種々の方法は文献WO2006/136755中に特に記載されていて、その記載内容は参照によりここに組み込まれる。
【0093】
図11は織物の縦糸方向及び横糸方向に対し平行な断面図であり、そこではストリップ202がそこを通過しているストリップ204の連結部分240cを有していて、連結部分の縦糸が断面で示されている。この連結部分240cにおいては、縦糸の夫々の層が、ストリップ202の横糸方向に対し角度αを形成している方向に延出している。ストリップ202の一方の側から他方の側へのストリップ204の通路は、織りの間に、ストリップ202の縦糸及び横糸の全てをストリップ204の縦糸の個々と交差させることにより達成される。
【0094】
図12は、ストリップ202がそこを通過しているストリップ204の連結部分250cを有している場所の横糸断面である。示されている例においては、そして上述されている如く、連結部分250cはストリップ202の縦糸方向に対し直角に延出している。にも拘わらず、連結部分240cについては、外方プラットフォームの為に望まれている向き次第で、縦糸方向に対する直角に対しゼロでない角度で延出している連結部分250cを有することが可能である。
【0095】
例えば図13A中に示されている如く、より大きな重さの横糸及び横糸の追加された層を使用することにより、特別な厚さ203を得ても良い。
【0096】
図13A中では、この例においては4ないし7の横糸の数が、羽根の舌に対応しているストリップ202の繊維素材部分202と特別な厚さ203を提供しているストリップ202の繊維素材部分202との間を通っている。
【0097】
さらに、異なった重量の横糸t,t´,そしてt´´が使用されていて、糸tは、例えば、0.5K(500繊維)の重量の「ニカロン(Nicalon)」SiC糸であり、糸t´は2つの0.5K糸を合体させることにより得られていて、そして糸t´´は3つの0.5K糸を使用することにより得られている。
【0098】
素材部分102においては、織りが、部分202中よりもより多くの数の縦糸の層を要求する。これは好ましくは、2つの縦糸平面の縦糸をともに部分202中にもたらすことにより部分202中に個々の縦糸平面を作り上げることにより縦糸平面の数を減少させることで、部分202と部分202との間の変遷(transition)中に達成される。図13B及び13Cは、部分202中で隣接した2つの縦糸平面を示しており、そして図13D図13B及び13Cの縦糸平面を合体させることにより部分202中に得られた縦糸平面を示している。図13B,13C,そして13D中においては、簡素の為に、異なった重量の縦糸又は異なった重量の横糸は(それらが図9及び図13A中に夫々あるように)示されていない。図13B,13Cから図13Dへの通過では、点線が、図13B及び13Cの種々の層の縦糸がどのようにして図13D中に縦糸の層を形成するかを示している。
【0099】
当然ながら、横糸層の数及び横糸層重量の他の組み合わせが、特別な厚さ203を形成する為に、採用されることが出来る。
【0100】
図14中に概略的に示されているもう1つの実施形態においては、特別な厚さ203はストリップ202を織っている間に挿入物(insert)を導入することにより得られて良い。
【0101】
図14中においては、羽根の舌に対応しているストリップ202の部分202中の横糸層のセットTは、挿入物203が2つの副組立体T11,T12の間に導入されることによる2つの副組立体T11,T12の織りの間での不接合(de-bonding)により分割されている。示されている例においては、部分202は、羽根の板翼に対応しているストリップ202の部分202よりも大きな厚さを有している。部分202と部分202との間の変遷(transition)は、図13Aの部分202と部分202との間の変遷(transition)の為の上述したのと同じようにして達成されて良い。図4の連結部分240cの水準でストリップ202を通るストリップ204の通過は、より厚い部分202を通って任意に行われて良い。
【0102】
部分202から離れている挿入物203の端で、横糸の層の副組立体T11,T12は、部分202と同じ厚さを有している部分202´を形成し、そして次に、部分202と同じ厚さを有している部分202´を形成するよう織ることにより、厚さ減少を介して再統合され、部分202´は以下に続く織られている素材の為の羽根板翼に対応している部分を形成している。
【0103】
挿入物203は好ましくは単一のセラミック、好ましくは、製造される羽根の複合材料の母材を形成しているのと同じセラミック材料、で作成されている。従って、挿入物203はSiC粉末を焼結させることにより得られたSiCのブロック(block)であって良い。
【0104】
図15中に非常に概略的に示されている如く、複数の繊維素材200は、その中に1つ又はそれ以上の連続した繊維素材の列が形成されているストリップ400を織ることにより得られている。特別な長さの区域410,420が、織りに関係している縁現象(edge phenomena)を避ける為に縦糸方向(縦糸のみ)及び横糸方向(横糸のみ)に設けられて、予備成形物が造形される間の変形のより大きな自由を残し、そして、素材200の間に変遷(transition)区域を提供している。
【0105】
図16は別の実施形態を示していて、ここにおいては、ストリップ450がストリップの長手方向に対し直角な横方向に織られている素材200の列を伴って形成されている。特別な長さの区域460,470は、縦糸方向及び横糸方向にも設けられている。素材200の複数の列が織られて良く、ストリップ450の幅がこの目的の為に適用されている。
【0106】
繊維表面処理を適用する工程,中間相被覆の第1層を形成する工程,団結組成物を含浸する工程,そして図1の実行の方法において予備硬化する工程は、ストリップ400又は450からの素材の切り離しの以前に行われた。
【0107】
素材が切り離された後には、成形型中で個々の素材を造形する工程,団結樹脂を硬化させる工程,硬化された樹脂を熱分解する(pyrolyzing)工程,中間相被覆の追加層を形成する工程,そして中間機械加工を伴う複数の循環で高密度化させる工程が、図1を参照して記載されている如く行われる。
【0108】
代わりに、図2の実行を使用することが可能である。
【0109】
組み込まれている内方及び/又は外方プラットフォームを伴っているターボ機械羽根を製造する方法の詳細な実行が上で与えられた。この方法は、内方又は外方プラットフォームを含んでおらず、例えば、これらのプラットフォームがそれに後で取り付けられる、羽根を製造する為に使用されて良い。このような状況の下では、予備成形物の作成は、繊維ストリップ202のみを作成することにより簡素にされることが出来る。
【0110】
例2:後燃焼(afterburning)を伴う航空機機関ガスタービンの為の熱ノズルフラップを製造する。
【0111】
図17は、後−燃焼(post-burning)を有しているタービン機関の排気通路中の可変横断面ノズルの為に使用されている種類の舵取り可能フラップ(steerable flap)500を示している。
【0112】
フラップ500は、2つの長手方向縁511,512の間を延出している略円扇の形状のフラップ本体510を備えている。剛性リブ520,530がフラップ500の凹状表面上に形成されている。フラップの1つの長手方向端501では、板540がリブ520及び530の間でフラップの凹状表面に固定されていて、板540はフラップ500の為のヒンジピン(示されていない)を通過させる為の鳩目孔(eyelet)541,542を支持している。もう1つの板550が、フラップの凹状表面及びリブ520,530に固定されている。板550はリブ520,530間で上記長手方向端501から或る距離に配置されていて、フラップの角位置を制御するアクチュエータ(示されていない)に連結する為のヒンジ状の連結部位552を支持している。フラップ本体510は、リブ520及び530とともに、CMC材料の一体物(single-piece)の形状であり、板540,550は、例えば、耐熱性金属材料で作成されている。
【0113】
図18は、そこからフラップの本体の為の繊維予備成形物が造形されることが出来る繊維素材600の高度に概略的な図であり、そして繊維予備成形物が母材により高密度化され機械加工された後に、図17中に示されている本体510と同様な、フラップ本体が得られた。
【0114】
素材600は長手方向Xを有しているストリップの形状であり、ストリップの幅は、製造されるフラップ本体510の展開された幅に関連して選択されていて、即ちその幅はそれが平坦に折り広げられた(folded out)後のものである。素材600は、製造されるフラップ厚さに関連して決定された実質的に一定の厚さである。単一素材600が図18中に示されていて、このような素材の連続が連続した繊維ストリップの形状に織られていると理解されている。素材600は、3D織りにより相互に連結されている、複数の重複している糸の層により作成されている。糸の複数の層間の相互連結(interlinking)は、製造されるフラップ本体510のリブ520,530間の平坦な突起中における距離に関連して選択された距離Dに渡り長手方向に延出している区域602を除き、行われている。不−接合(de-bonding)の区域602は素材600の厚さの実質的に半分に渡り位置されていて、不−接合(de-bonding)区域602のいずれの側の糸層604及び606のセットもこの領域の全長さに渡り離れている。
【0115】
図19及び20は、製造されるフラップ本体510のものに近い形状の繊維予備成形物が繊維素材600からどのようにして得ることが出来るのかを概略的に示している。
【0116】
方向Xにおいて、製造されるフラップ本体510の長さに関連して選択されている寸法が素材600の為に確保されている。
【0117】
繊維素材の面605の1つから始まり、糸の層604のセットの一部分が切り離しにより取り除かれ、この部分は繊維素材の全体の長さに渡り方向Xに対し平行に延出している。取り除かれた部分は、相互連結されていない区域602まで行く厚さを有している。方向Xに対し直交する方向Yにおいて、除去された部分は、製造されるフラップ本体510上のリブ520,530の長さに関連して選択されている長さに亘り方向Yに延出している糸層セット604の断片604a及び604bを残すように、Dよりも少ない寸法dを提供する(図19)。
【0118】
製造されるフラップ本体510の繊維予備成形物700が次に、フラップ本体の湾曲した輪郭を再現するよう、フラップ本体のリブ520,530の為の予備成形物部分を得る為に部分604a及び604bを折り戻す(fold back)よう、変形を伴って型成形により得られる。
【0119】
素材600を3D織りする方法が、図21A及び21B中に概略的に示されている。図21Aは、不−接合(de-bonding)が無いことを示している素材600の一部分中の2つの連続した縦糸横断面の拡大されている部分図であり、他方、図21Bは、不−接合(de-bonding)区域602を含む素材600の部分中の2つの連続した縦糸横断面を示している。
【0120】
この例においては、素材600は方向Xに延出している縦糸の6つの層を有している。図21Aにおいては、縦糸の6つの層が横糸T乃至Tにより相互連結されていて、織物組織(weave)は相互固定型(interlock type)である。図21B中では、糸層セット604を形成している縦糸の3つの層が2つの横糸T,Tにより相互に連結されているとともに、同時に糸層セット605を形成している縦糸の3つの層が2つの横糸T,Tにより相互に連結されている。不−接合(de-bonding)区域602は、縦糸層604及び605の2つのセットを互いに分けている。
【0121】
図22中に非常に概略的に示されている如く、複数の繊維素材600が、その中に形成されている素材の1つ又はそれ以上の連続した列を有しているストリップ700を織ることにより得られている。特別−長さ区域(extra-length zone)710,720が、織りに関連している端現象(edge phenomena)を避けるよう縦糸方向(縦糸のみ)及び横糸方向(横糸のみ)に形成されていて、予備成形物を作成する時の変形の為の大きな自由を残すとともに、素材600間に遷移(transition)区域を提供する。
【0122】
図23は別の実施形態を示していて、ここにおいては、ストリップ750が、ストリップの長手方向に対し直角な横糸方向に織られている素材600の一列を有して作成されている。特別−長さ区域(extra-length zone)760,770が同様に、縦糸方向及び横糸方向に提供されている。素材600の複数の列が織られて良く、ストリップ750の長さが従って適用されている。
【0123】
図1の実行における方法中で、繊維表面処理を適用する工程,中間相被覆の第1の層を形成する工程,団結組成物で含浸する工程,そして予備硬化する工程は、ストリップ700又は750から素材600を切り離す以前に行われる。
【0124】
素材が切り離された後は、個々の素材を成形型中で造形する工程,団結樹脂を硬化させる工程,硬化された樹脂を熱分解する(pyrolyzing)工程,更なる中間相被覆層を形成する工程,そして、中間機械加工を伴う複数の循環で高密度化させる工程が、図1を参照して記載されていた如く行われる。
【0125】
当然ながら、代わりに、図2の実行を使用することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23