特許第5733679号(P5733679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733679
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20150521BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20150521BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150521BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C08L63/00 Z
   C09J163/00
   C09J7/02 Z
   H05K1/03 610L
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2010-540540(P2010-540540)
(86)(22)【出願日】2009年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2009070375
(87)【国際公開番号】WO2010061980
(87)【国際公開日】20100603
【審査請求日】2012年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2008-305106(P2008-305106)
(32)【優先日】2008年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秀衡 裕子
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂雄
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−298815(JP,A)
【文献】 特開2008−274210(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/097209(WO,A1)
【文献】 特開2005−330401(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/105480(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/105481(WO,A1)
【文献】 特開2008−302677(JP,A)
【文献】 特開2009−001757(JP,A)
【文献】 特開2005−105159(JP,A)
【文献】 特開2007−238769(JP,A)
【文献】 特開2005−051131(JP,A)
【文献】 特開2008−138121(JP,A)
【文献】 特開2005−206831(JP,A)
【文献】 特開2009−001783(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/063894(WO,A1)
【文献】 特開2007−254710(JP,A)
【文献】 特開2002−252470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
B29B 11/16
B29B 15/08− 15/14
B29D 9/00
B32B 1/00− 35/00
C08G 59/00− 59/72
C08J 5/04− 5/10
C08J 5/24
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1)
【化1】

で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(B)式(2)

(式中nは2〜10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(C)液状多官能エポキシ樹脂、(D)エポキシ硬化剤、(E)熱可塑性樹脂、(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3〜15質量%、成分(B)の含有量が1〜15質量%、成分(C)の含有量が1〜20質量%であり、
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対し、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下であり、
成分(D)が、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤およびシアネート樹脂から選択される1種以上であり、
樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、成分(F)の含有量が10〜70質量%である樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)及び(B)を含む固形状多官能エポキシ樹脂の総含有量が5〜30質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
液状多官能エポキシ樹脂と固体状多官能エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)を100質量%(不揮発分)とした場合に、液状多官能エポキシ樹脂の含有量が5〜60質量%である、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、樹脂組成物中に含有される成分(A)、(B)及び(C)を含むエポキシ樹脂の総含有量が10〜50質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物中に存在するエポキシ基と成分(D)のエポキシ硬化剤の反応基の比率が1:0.4〜1:2となる範囲で成分(D)のエポキシ硬化剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、成分(E)の含有量が1〜20質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物の硬化物を形成し、該硬化物を膨潤液に60℃5分間浸漬し、粗化液に80℃20分間浸漬し、中和液に40℃5分間浸漬する粗化処理後の表面粗さが50nm〜450nmおよび粗化処理後の該硬化物表面とメッキ銅とのピール強度が0.40kgf/cm〜1.0kgf/cmであり、並びに190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物の硬化物を形成し、該硬化物のガラス転移温度が150℃〜170℃および該硬化物の線熱膨張率が15ppm〜48ppmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物が支持体上に層形成されている接着フィルム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物がシート状繊維基材中に含浸されているプリプレグ。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されている回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板等の回路基板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物、及び該樹脂組成物より得られる接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、並びに該樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成された回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板の絶縁層を形成するための材料としては、樹脂組成物ワニスを支持体上に塗布・乾燥させて層形成した接着フィルムや、該組成物ワニスを繊維基材に含浸させて乾燥させたプリプレグなどのシート状絶縁材が一般に用いられている。このようなシート状絶縁材は、シート状絶縁材として取り扱うため、可とう性及びラミネートするための適度な溶融性が要求される。従って、シート状絶縁材を構成する樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては固体状のエポキシ樹脂に加え、液状のエポキシ樹脂を配合する必要があった。しかしながら、液状エポキシ樹脂は一般に、ガラス転移温度が低い傾向にあり、また硬化物の線熱膨張率も増大する傾向にあるため、大量に配合すると絶縁層の物性低下を招くという問題がある。
【0003】
また近年の電子機器の小型化、高性能化により、回路基板においても微細配線化や熱膨張率の更なる低下などが求められている。絶縁層表面を粗化した後、めっきにより導体層を形成する場合、粗度を大きくすればピール強度は増大するが、微細配線化に不利となる。従って、できるだけ低粗度で導体層のピール強度を高くすることが望まれるが、液状エポキシ樹脂は導体層のピール強度を低下させる方向に働き、ピール強度を高く維持するには、粗度が大きくならざるを得ないという問題もあった。
【0004】
一方、液状エポキシ樹脂の代わりに、低分子の固体状エポキシ樹脂をフェノキシ樹脂等の高分子樹脂と併用することにより、樹脂組成物ワニスから絶縁樹脂シートを調製後、低分子の固体状エポキシ樹脂の結晶化が高分子樹脂により抑制され、液状エポキシ樹脂を使用せずに絶縁樹脂シートの可とう性や溶融性を維持した方法(特許文献1)が開示されている。しかしながら、比較的結晶化傾向の低いエポキシ樹脂の場合には有効であるが、結晶化傾向の強いエポキシ樹脂の場合は、抑制効果が著しく低下し、高い含量で配合するとワニスの貯蔵中又はワニスを乾燥させて絶縁樹脂シートを調製する際に再結晶化し、絶縁樹脂シートの可とう性が低下し、脆くなるという問題が生じる。また液状エポキシ樹脂よりは導体層のピール強度も上昇するものの、その程度は不充分であり、ピール強度を高くするにはやはり粗度が大きくならざるを得ないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−303011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、回路基板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物において、絶縁樹脂シートの形態で使用する場合の可とう性に優れ、該樹脂組成物を硬化して得られる絶縁層表面の粗度が低くても、高いピール強度を有する導体層が形成可能である樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、特定のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、液状多官能エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、熱可塑性樹脂、無機充填材を含有する樹脂組成物を使用することにより本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
[1] (A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(B)式(2)
(式中nは2〜10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(C)液状多官能エポキシ樹脂、(D)エポキシ硬化剤、(E)熱可塑性樹脂、(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3〜15質量%、成分(B)の含有量が1〜15質量%、成分(C)の含有量が1〜20質量%である樹脂組成物。
[2] 式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対する、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[3] 樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)及び(B)を含む固形状多官能エポキシ樹脂の総含有量が5〜30質量%である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 液状多官能エポキシ樹脂と固体状多官能エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)を100質量%(不揮発分)に対する、液状多官能エポキシ樹脂の含有割合が、5〜60質量%である、上記[3]記載の樹脂組成物。
[5] 樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、樹脂組成物中に含有される成分(A)、(B)及び(C)を含むエポキシ樹脂の総含有量が10〜50質量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 樹脂組成物中に存在するエポキシ基と成分(D)のエポキシ硬化剤の反応基の比率が1:0.4〜1:2となる範囲で成分(D)のエポキシ硬化剤を含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、成分(E)の含有量が1〜20質量%である、上記[1]〜[6]記載のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、成分(F)の含有量が10〜70質量%である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物が支持体上に層形成されている接着フィルム。
[10] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物がシート状繊維基材中に含浸されているプリプレグ。
[11] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されている回路基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、液状多官能エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、熱可塑性樹脂、無機充填材を含有する樹脂組成物を使用することにより、回路基板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物において、絶縁樹脂シートの形態で使用する場合の可とう性に優れ、該樹脂組成物を硬化して得られる絶縁層表面の粗度が低くても、高いピール強度を有する導体層が形成可能である樹脂組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[(A)式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物は、以下の式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含有する。
【化1】
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂は、例えば、国際公開2006/098329号パンフレットに記載されている公知化合物であり、結晶性が高いことが知られている(国際出願2006/090662号パンフレット)。常温(例えば20℃)においては固形状で、エポキシ基を2個有する多官能エポキシ樹脂である。市販品としては、下記式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂との混合物が市販されている。
(式中nは2〜10の整数を示す。)
具体的には、日本化薬(株)製の「NC3000−FH」、「NC3000−H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」が挙げられる。式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量に対する式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合は、「NC3000−FH」が約15〜20質量%、「NC3000−H」が約20〜25質量%、「NC3000」が約30〜40質量%、「NC3000L」が約40〜50質量%、「NC3100」が約55〜65質量%となる。これらのうち、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を、本発明の樹脂組成物中で適切な配合比とするには、その含有割合が多いものを用いないと困難であるため「NC3000L」、「NC3100」を使用するのが好ましい。例えば、含有割合の多い「NC3100」、「NC3000L」と他の含有割合の低いものとを混合して、適切な配合比に調整してもよい。式(1)で表されるエポキシ樹脂は高い結晶性を有するものの、特定の配合比においては結晶化が抑制され、可とう性に優れた絶縁樹脂シートが調製可能となり、さらに、該樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した場合に、絶縁層表面が比較的低粗度であっても、高いピール強度を有する導体層が形成可能となることを見出した。
【0011】
本発明の樹脂組成物において、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有量の上限値は、ワニス中から再結晶化するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対して、15質量%が好ましく、13質量%がより好ましく、12質量%が更に好ましく、11質量%が更に一層好ましい。一方、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有量の下限値は、導体層の高いピール強度を低粗度で達成することが困難となるのを防止するという観点から、3質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、7質量%が更に好ましく、9質量%が更に一層好ましい。式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂は、再結晶化しない状態で使用すれば、固体状の樹脂であるにもかかわらず、接着フィルムやプリプレグといった絶縁樹脂シートの可とう性を向上させ、粘度も低いため、絶縁樹脂シートに適度な溶融性を付与する働きも有する。また液状のエポキシ樹脂と比較し、低粗度における導体層の高ピール強度化、高ガラス転移温度化、低熱膨張率化においても優れたものとなる。
【0012】
[(B)式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物は、上記式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含有する。該エポキシ樹脂は低粗度における導体層の高ピール強度化、高ガラス転移温度化、低熱膨張率化に寄与する。式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有量の上限値は、絶縁樹脂シートの可とう性が低下し脆くなるのを防止し、さらに低粗度で導体層の高ピール強度を得るという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、15質量%が好ましく、14質量%がより好ましく、13質量%が更に好ましく、12質量%が更に一層好ましい。一方、式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有量の下限値は、式(2)のエポキシ樹脂の特性を発揮させるという観点から、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、7質量%が更に好ましく、9質量%が更に一層好ましい。式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含有させる場合は、性能のバランスを図るため、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量に対し、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の割合を40質量%〜75質量%とするのが好ましく、40質量%〜60質量%とするのがより好ましく、45質量%〜50質量%とするのが更に好ましい。市販品としては、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合の多い日本化薬(株)製「NC3000L」、「NC3100」を使用することができる。また「NC3100」、「NC3000L」を、含有割合の低い「NC3000−FH」、「NC3000−H」、「NC3000」と混合して、任意の好ましい配合比に調整して用いてもよい。
【0013】
本発明の樹脂組成物においては、式(1)又は式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂以外の固形状多官能エポキシ樹脂を含有してもよい。固形状多官能エポキシ樹脂は常温(例えば20℃)において固形状で、エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂である。式(1)又は式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂以外の固形状多官能エポキシ樹脂としては、ガラス転移温度の高さ、熱膨張率の低さといった観点から、芳香族系多官能エポキシ樹脂が好ましい。好ましい例としては、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、式(1)又は式(2)以外のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの固形状多官能エポキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明の樹脂組成物において、式(1)又は式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含む固形状多官能エポキシ樹脂の総含有量の上限値は、絶縁樹脂シートの可とう性を低下させるのを防止するという観点から、は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましく、23質量%が更に好ましい。一方、式(1)又は式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含む固形状多官能エポキシ樹脂の総含有量の下限値は、相対的に液状の樹脂成分の割合が多くなり、絶縁樹脂シートの形態とするのが困難となるのを防止し、ガラス転移温度の低下や熱膨張率の上昇を防止するという観点から、5質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、10質量%が更に好ましく、15質量%が更に一層好ましい。また含有量がこの範囲外だと導体層の高ピール強度化も低粗度では達成が困難となる傾向にある。
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂以外にも、一部の固形状多官能エポキシ樹脂は可とう性を付与する成分として機能する。例えば特許文献1には可とう性の効果を与えるエポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂のひとつであるYX−4000Hを使用した組成物が開示されているが、低粗度における導体層の高ピール強度化の達成は困難である。
【0015】
[(C)液状多官能エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物は、液状多官能エポキシ樹脂を含有する。液状多官能エポキシ樹脂は、常温(例えば20℃)おいては液状で、エポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂であり、例えば、液状の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。市販されているものとしては、ジャパンエポキシレジン(株)製の、jER828EL、jER807、jER152、jER630、DIC(株)製のHP4032、HP4032D、東都化成(株)製のZX1658等が挙げられる。液状多官能エポキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明の樹脂組成物において、液状多官能エポキシ樹脂の含有量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜20質量%が好ましく、5〜16質量%がより好ましく、9〜12質量%が更に好ましい。含有量が少なすぎると、絶縁樹脂シートの可とう性や溶融性が低下する傾向にあり、含有量が多すぎると、ガラス転移温度が低下する、熱膨張率が上昇するといった傾向にあり、また低粗度における導体層の高ピール強度化も困難になる傾向にある。また液状多官能エポキシ樹脂と固体状多官能エポキシ樹脂の合計量を100質量%(不揮発分)に対し、液状多官能エポキシ樹脂の含有量を5〜60質量%の範囲とするのが好ましく、10〜50質量%の範囲とするのがより好ましく、20〜40質量%の範囲とするのが更に好ましい。含有量が少なすぎると、絶縁樹脂シートの可とう性や溶融性が低下する傾向にあり、含有量が多すぎると、ガラス転移温度が低下する、熱膨張率が上昇するといった傾向にあり、また低粗度における導体層の高ピール強度化も困難になる傾向にある。
【0017】
なお本発明の樹脂組成物において、(A)式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(B)式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(C)液状多官能エポキシ樹脂、及びその他の任意のエポキシ樹脂を含む全てのエポキシ樹脂の総含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、10〜50質量%であるのが好ましく、20〜40質量%であるのがより好ましく、20〜35質量%の範囲であるのが更に好ましく、25〜31質量%の範囲であるのが更に一層好ましい。エポキシ樹脂の含有量がこの範囲から外れると、一般に樹脂組成物の硬化性が低下するなどの傾向にある。
【0018】
[(D)エポキシ硬化剤]
成分(D)のエポキシ硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されず、好ましいものとしては、例えばフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル樹脂等のエポキシ硬化剤が挙げられる。エポキシ硬化剤は2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤としては、耐熱性、耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤やノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。市販品としては、例えば、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成社製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、LA7052、LA7054(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。活性エステル系硬化剤としては、EXB−9460(大日本インキ化学工業(株)製)、DC808、YLH1030(ジャパンエポキシレジン(株)製)が挙げられる。ベンゾオキサジン系硬化剤としては、HFB2006M(昭和高分子(株))、P−d、F−a(四国化成工業(株)製)などが挙げられる。シアネートエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。市販されているシアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)やビスフェノールAジシアネートの一部または全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230」、シアネート当量232)等が挙げられる。
【0020】
本発明において、樹脂組成物中のエポキシ硬化剤の含有量は、通常、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とエポキシ硬化剤の反応基の合計数の比率が1:0.4〜1:2.0となる量にするのが好ましく、さらには1:0.5〜1:1.5となる量にするのがより好ましい。なお樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、エポキシ硬化剤の反応基(活性水酸基、活性エステル基等)の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤に
ついて合計した値である。硬化剤の含有量がかかる好ましい範囲を外れると、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性が不十分となるなどの傾向がある。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、硬化剤に加え、硬化促進剤をさらに配合することができる。硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物、イミダゾール化合物、アミンアダクト化合物、3級アミン化合物などが挙げられる。有機ホスフィン化合物及び有機ホスホニウム塩化合物の具体例としては、TPP、TPP−K、TPP−S、TPTP−S、TBP−DA、TPP−SCN、TPTP−SCN(北興化学工業(株)商品名)などが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z−CN、C11Z−CNS、C11Z−A、2MZ−OK、2MA−OK、2PHZ(四国化成工業(株)商品名)などが挙げられる。アミンアダクト化合物の具体例としては、ノバキュア(旭化成工業(株)商品名)、フジキュア(富士化成工業(株)商品名)などが挙げられる。3級アミン化合物の具体例としては、DBU(1,8−diazabicyelo[5,4,0]undec−7−ene)などが挙げられる。本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂とエポキシ硬化剤の総量を100質量%(不揮発分)とした場合、通常0.1〜5質量%の範囲で使用される。硬化促進剤は2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
なお、エポキシ硬化剤としてシアネートエステル樹脂を使用する場合は、硬化時間を短縮する目的で、従来からエポキシ樹脂とシアネート化合物とを併用した系で硬化触媒として用いられている有機金属化合物を添加してもよい。有機金属化合物としては、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅化合物、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛化合物、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト化合物などが挙げられる。有機金属化合物の添加量は、シアネートエステル樹脂に対し、金属換算で通常10〜500ppm、好ましくは25〜200ppmの範囲である。有機金属触媒は2種以上を混合して用いてもよい。また本系では有機金属化合物と上記任意の硬化促進剤1種以上と併用してもよい。
【0023】
[(E)熱可塑性樹脂]
本発明において、熱可塑性樹脂は、絶縁樹脂シートや絶縁層の可とう性を付与する他、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の再結晶化の抑制にも寄与する。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、特にフェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜20質量%の範囲であるのが好ましく、2〜15質量%の範囲であるのがより好ましく、3〜10質量%の範囲であるのが更に好ましい。含有量が少なすぎると、可とう性や結晶析出の抑制効果が得られない傾向にあり、含有量が多すぎると、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、ラミネート性が低下し、回路上の配線パターンへの埋め込みなどが困難になる傾向にある。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は8000〜70000の範囲であるのが好ましく、さらに好ましくは10000〜60000、さらに好ましくは20000〜60000である。分子量が小さすぎると十分な導体層のピール強度が得られない傾向にあり、分子量が大きすぎると、粗度が大きくなりやすい、熱膨張率が大きくなりやすいなどの傾向にある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0024】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製1256、4250(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)や、その他東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YL7553、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482等が挙げられる。
【0025】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)社製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。これら各種熱可塑性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
[(F)無機充填材]
本発明において、無機充填剤は熱膨張率を低下等に寄与する。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが特に好適である。シリカとしては球状のものが好ましい。無機充填材は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
無機充填材の平均粒径は1μm以下であるのが好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.7μm以下がとりわけ好ましい。平均粒径が1μmを超える場合、メッキにより形成される導体層のピール強度が低下する傾向にある。なお、無機充填材の平均粒径が小さくなりすぎると、樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下する傾向にあるため、平均粒径は0.05μm以上であるのが好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0028】
無機充填材は、耐湿性、分散性等の向上のため、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートのチタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0029】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、株式会社堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0030】
無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対して、10〜70質量%の範囲であるのが好ましく、10〜60質量%の範囲であるのがより好ましく、15〜55質量%の範囲であるが更に好ましく、20〜50質量%であるのが更に一層好ましい。無機充填剤の含有量が少なすぎると、熱膨張率が上昇する傾向にあり、含有量が多すぎると、絶縁樹脂シートの可とう性が低下する傾向にある。
【0031】
本発明の樹脂組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を含み、該樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着性を示し、さらに絶縁層のガラス転移温度が高く、線熱膨張率を低くする事ができる。
【0032】
本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を含有する樹脂組成物のピール強度は、後述する<メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物のピール強度の上限値は、0.64kgf/cmが好ましく、0.67kgf/cmがより好ましく、0.70kgf/cmが更に好ましく、0.75kgf/cmが更に一層好ましく、1.0kgf/cmが殊更好ましい。本発明の樹脂組成物のピール強度の下限値は、0.40kgf/cmが好ましく、0.50kgf/cmがより好ましく、0.60kgf/cmが更に好ましい。
【0034】
本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を含有する樹脂組成物の粗度は、後述する<粗化後の表面粗さ(Ra値)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物の表面粗さの上限値は、450nmが好ましく、390nmがより好ましく、350nmが更に好ましく、300nmが更に一層好ましく、270nmが殊更好ましい。本発明の樹脂組成物の表面粗さの下限値は、100nmが好ましく、70nmがより好ましく、50nmが更に好ましい。
【0036】
本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を含有する樹脂組成物のガラス転移温度は、後述する<ガラス転移温度(Tg)及び線熱膨張率の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度の上限値は、154℃が好ましく、157℃がより好ましく、160℃が更に好ましく、170℃が更に一層好ましい。本発明の樹脂組成物のガラス転移温度の下限値は、150℃が好ましく、152℃がより好ましい。
【0038】
本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を含有する樹脂組成物の線熱膨張率は、後述する<ガラス転移温度(Tg)及び線熱膨張率の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物の線熱膨張率の上限値は、48ppmが好ましく、46ppmがより好ましく、44ppmが更に好ましく、41ppmが更に一層好ましく、38ppmが殊更好ましく、35ppmが特に好ましい。本発明の樹脂組成物の線熱膨張率の下限値は、33ppmが好ましく、30ppmがより好ましく20ppmが更に好ましく、15ppmが更に一層好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、硬化物の機械強度を高める、応力緩和効果等の目的で固体状のゴム粒子を含有してもよい。ゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス層は例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンKW−4426(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
【0041】
配合するゴム粒子の平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。本発明におけるゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、FPRA−1000(大塚電子(株)社製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0042】
ゴム粒子を配合する場合の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、2〜5質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて本発明の効果が発揮される範囲でマレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂などのエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を配合することもできる。このような熱硬化性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。マレイミド樹脂としてはBMI1000、BMI2000、BMI3000、BMI4000、BMI5100(大和化成工業(株)製)、BMI、BMI−70、BMI−80(ケイ・アイ化成(株)製)、ANILIX−MI(三井化学ファイン(株)製)、ビスアリルナジイミド化合物としてはBANI−M、BANI−X(丸善石油化学工業(株)製)ビニルベンジル樹脂としてはV5000(昭和高分子(株)製)、ビニルベンジルエーテル樹脂としてはV1000X、V1100X(昭和高分子(株)製)が挙げられる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で難燃剤を含有しても良い。難燃剤は2種以上を混合して用いてもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)社製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で、上述した以外の他の各種樹脂添加剤を任意で含有しても良い。樹脂添加剤としては、例えばシリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、シランカップリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤、アルキレンオキシド、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリメタクリル酸メチル等から成るブロック共重合体等の靭性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、支持体上に塗布し樹脂組成物層を形成させて接着フィルムとするか、または繊維からなるシート状繊維基材中に該樹脂組成物を含浸させてプリプレグとすることができる。本発明の樹脂組成物は回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には、一般に、接着フィルムまたはプリプレグの形態として絶縁層形成に用いられる。本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体上に、この樹脂ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0047】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種を使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有割合が10質量%以下となるのが好ましく、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。乾燥条件は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることができる。
【0049】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、導体層の厚さ以上とするのが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。樹脂組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0050】
本発明における支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、とくにPETが好ましい。支持体として銅箔、アルミニウム箔等の金属箔を使用し、金属箔付接着フィルムとすることもできる。保護フィルムは、同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また支持体及び保護フィルムはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。
【0051】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmの範囲がより好ましい。また保護フィルムの厚さも特に制限されないが、1〜40μmが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲で用いられる。
【0052】
本発明における支持体は、内層回路基板等にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持体を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができ、また硬化後の絶縁層の表面平滑性を向上させることができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持体には予め離型処理が施される。なお、支持体上に形成される樹脂組成物層は、層の面積が支持体の面積より小さくなるように形成するのが好ましい。また接着フィルムは、ロール状に巻き取って、保存、貯蔵することができる。
【0053】
次に、本発明の接着フィルムを用いて本発明の多層プリント配線板等の回路基板を製造する方法について説明する。樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂組成物層を内層回路基板に直接接するように、内層回路基板の片面又は両面にラミネートする。本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により減圧下で内層回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び内層回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0054】
本発明における内層回路基板とは、主として、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物も本発明における内層回路基板に含まれる。内層回路基板において、導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の内層回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0055】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。
【0056】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0057】
このように接着フィルムを内層回路基板にラミネートした後、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより内層回路基板に絶縁層を形成することができる。加熱硬化の条件は150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分である。
【0058】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次に内層回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行いビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけがもっとも一般的な方法である。
【0059】
次いで、絶縁層表面に粗化処理を行う。本発明における粗化処理は通常、酸化剤を使用した湿式粗化方法で行うのが好ましい。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルトアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いて粗化を行うのが好ましい。
【0060】
絶縁層表面を粗化処理した粗化面の粗さは、微細配線を形成する上で、Ra値で0.05〜0.5μmであるのが好ましく、0.05〜0.45μmであるのがより好ましい。なお、Ra値とは、表面粗さを表す数値の一種であり、算術平均粗さとも呼ばれるものであって、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。例えば、ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めることができる。
【0061】
次に、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された樹脂組成物層表面に、無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。なお導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。導体層のピール強度は、0.4kgf/cm以上であるのが好ましく、0.5kgf/cm以上であるのがより好ましく、0.6kgf/cm以上であるのが更に好ましい。
【0062】
また、導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0063】
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状繊維基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状繊維基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。
【0064】
繊維からなるシート状繊維基材としては、例えばガラスクロスやアラミド繊維等、プリプレグ用繊維として常用されているものを用いることができる。
【0065】
ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、樹脂を樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスにシート状繊維基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0066】
次に本発明のプリプレグを用いて本発明の多層プリント配線板等の回路基板を製造する方法について説明する。内層回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層する。圧力は好ましくは5〜40kgf/cm(49×10〜392×10N/m)、温度は好ましくは120〜200℃で20〜100分の範囲で成型するのが好ましい。また接着フィルムと同様に真空ラミネート法により内層回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。その後、前述の方法と同様、酸化剤により硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をメッキにより形成することで、多層プリント配線板等の回路基板を製造することができる。
【0067】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0068】
(実施例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)25部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)20部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)15部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)とシクロヘキサノンの1:1溶液)30部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)40部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを5℃で1週間保管後、ポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下「PET」と略称する。)上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(残留溶媒量約2質量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリット(slit)し、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0069】
(実施例2)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)15部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)35部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)10部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)40部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0070】
(実施例3)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)10部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)40部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量258、日本化薬(株)製「NC3100」)6部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)10部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)40部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0071】
(実施例4)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)10部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)25部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量258、日本化薬(株)製「NC3100」)6部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)6部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)15部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)30部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)75部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0072】
(実施例5)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)15部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)35部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)10部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)20部、活性エステル系硬化剤(大日本インキ化学工業(株)製「EXB9451」、活性基当量223、固形分が65質量%のトルエン溶液)30部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0073】
(実施例6)
実施例2のフェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7553」、重量平均分子量35000〜40000、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部に変更する以外は、全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0074】
(実施例7)
実施例4のフェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)15部を、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7482」、重量平均分子量35000〜40000、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)15部に変更する以外は、全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0075】
(実施例8)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)15部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)35部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)10部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量50000、ジャパンエポキシレジン(株)製「E1256」不揮発分40質量%のシクロヘキサノン溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)20部、ナフトール系硬化剤(東都化成(株)製「SN−485」、フェノール性水酸基当量215)の固形分60%のMEK溶液30部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0076】
(実施例9)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)15部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)15部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量258、日本化薬(株)製「NC3100」)20部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)10部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)40部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0077】
(実施例10)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)25部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)20部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)15部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)40部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0078】
(実施例11)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)15部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)35部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)10部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7553」、重量平均分子量35000〜40000、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)20部、ナフトールノボラック系硬化剤(東都化成(株)製「SN485」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量215)30部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「HS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0079】
(実施例12)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)10部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)15部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量258、日本化薬(株)製「NC3100」)6部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)3部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部とをMEK25部、シクロヘキサノン25部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)20部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)110部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0080】
(実施例13)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)10部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)15部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量258、日本化薬(株)製「NC3100」)6部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)3部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部とをMEK25部、シクロヘキサノン25部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)15部、ナフトールノボラック系硬化剤(東都化成(株)製「SN485」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量215)10部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)110部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0081】
(比較例1)
実施例1のビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)35部を、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)35部に変更する以外は、全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0082】
(比較例2)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)35部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)10部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)10部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)40部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0083】
(比較例3)
ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)40部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量258、日本化薬(株)製「NC3100」)20部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」の固形分60%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)40部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)を固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0084】
(比較例4)
実施例2のビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)35部を、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量193、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−4000H」)30部に変更する以外は、全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0085】
(比較例5)
実施例12の球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)110部を、150部に変更する以外は、全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0086】
<ワニス貯蔵安定性の評価及びフィルム可とう性の評価>
各実施例及び比較例で調製したワニスを5℃の恒温状態に保持し、1週間後の結晶析出の有無を確認し、結晶が析出していない場合には、ワニス貯蔵安定性を○、結晶が析出した場合を×と評価した。また作製した接着フィルムを、PET面を内側にして180度折り曲げ、樹脂組成物層のクラックの有無を確認し、クラックが生じない場合にはフィルム可とう性を○、クラックが生じた場合を×と評価した。
【0087】
<ピール強度および表面粗さ(Ra値)測定用サンプルの調製>
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES]の両面をメック(株)製CZ8100に浸漬して銅表面の粗化処理をおこなった。
【0088】
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機(株)製商品名)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0089】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化し絶縁層を形成した。
【0090】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した内層回路基板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で5分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。粗化処理後の絶縁層表面の表面粗さ(Ra値)の測定を行った。
【0091】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
絶縁層表面に回路を形成するために、内層回路基板を、PdClを含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30±5μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この回路基板についてメッキ銅のピール強度の測定を行った。
【0092】
<メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価>
回路基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。ピール強度が0.40kgf/cm未満の場合を×とし、0.40kgf/cm以上0.64kgf/cm未満の場合を△とし、0.64kgf/cm以上0.70kgf/cm未満の場合を○とし、0.70kgf/cm以上の場合を◎とした。
【0093】
<粗化後の表面粗さ(Ra値)の測定及び評価>
非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値(nm)を求めた。また10点の平均粗さを求めることにより測定した。Ra値が270nm未満の場合を◎とし、270nm以上350nm未満の場合を○とし、350nm以上460nm未満の場合を△とし、460nm以上の場合を×とした。
【0094】
<ガラス転移温度(Tg)及び線熱膨張率の測定及び評価>
実施例および比較例で得られた接着フィルムを190℃で90分熱硬化させてシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、(株)リガク製熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率(ppm)を算出した。また2回目の測定における寸法変化シグナルの傾きが変化する点からガラス転移温度(℃)を算出した。線熱膨張率が35ppm未満の場合を◎とし、35ppm以上44ppm未満の場合を○とし、44ppm以上49ppm未満の場合を△とし、49ppm以上の場合を×とした。ガラス転移温度が150℃未満の場合を×とし、150℃以上154℃未満の場合を△とし、154℃以上157℃未満の場合を○とし、157℃以上の場合を◎とした。
【0095】
実施例及び比較例で得られたワニスの貯蔵安定性、接着フィルムの取り扱い性、及びこれを使用した評価サンプルのメッキ導体層のピール強度及び粗化後の表面粗さ(Ra値)の結果について下記の表1〜3に記載した。表1〜3から明らかなように、実施例の樹脂組成物においては、ワニスの貯蔵安定性、絶縁樹脂シートの可とう性に優れ、ガラス転移温度も高く耐熱性にも優れ、さらに低熱膨張率性にも優れる。また絶縁層の表面粗度が低いにもかかわらず、高いピール強度を有する導体層が形成されている。比較例1では、式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有量が多いため、可とう性が低下した脆い接着フィルムが得られている。比較例2では、液状多官能エポキシ樹脂の含有量が多いため、ガラス転移温度の低下、熱膨張率の増大が見られ、また導体層の高ピール強度を得るための粗度も増大している。比較例3では、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有量が多いため、ワニス貯蔵中に結晶が析出し、可とう性に劣る脆い接着フィルムとなった。また接着フィルム中に結晶が残留するため絶縁層形成に不適応であり、その後の評価を省略した。表では「−」と示し、評価が行えなかったことを示している。比較例4では、液状多官能エポキシ樹脂の代わりに特許文献1で使用されている可とう性を付与するエポキシ樹脂を使用しているが、導体層の高ピール強度を得るための粗度が増大し、低粗度かつ高ピール強度化の達成が困難となっている。比較例5では、無機充填材の量が多いため、取り扱い性が低下し、ピール強度も低く、表面粗さも大きくなっている。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】