(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、3相交流モータを構成するステータ10を示す構成図である。ハウジング1に保持された円環状のステータコア7には、図示しないティースが内周側に突出するように多数形成されている。各ティースには、銅線が巻装されてコイル11〜14、21〜24、31〜34が形成されている。
【0012】
本実施形態では、全部で12個のコイル11〜14、21〜24、31〜34が、同一の相が対向配置されるように配設される。各コイルは、U相、V相、W相のうちのいずれかに該当する。
【0013】
すなわち、
図1において、第1U相コイル11及びこれに隣接する第2U相コイル12が、第3U相コイル13及びこれに隣接する第4U相コイル14と対向配置される。さらに、第1V相コイル21及びこれに隣接する第2V相コイル22が、第3V相コイル23及びこれに隣接する第4V相コイル24と対向配置される。さらに、第1W相コイル31及びこれに隣接する第2W相コイル32が、第3W相コイル33及びこれに隣接する第4W相コイル34と対向配置される。
【0014】
後述するバスバーユニット40は、図示しない電源から供給される電流を、外部端子としての、U相端子16、V相端子26、W相端子36をそれぞれ介して、U相コイル11〜14、V相コイル21〜24、W相コイル31〜34に配分する。各相コイル11〜14、21〜24、31〜34は、各相コイル11〜14、21〜24、31〜34の巻線端末5を介してバスバーユニット40と接続されている。巻線端末5とバスバーユニット40との接続について、詳細は後述する。さらに、各相の隣接するコイル同士はその巻線端末6が結線されている。
【0015】
図2は、ステータ10の等価電気回路を示す図である。
【0016】
第1U相コイル11及び第4U相コイル14の一端は第1バスバーとしてのU相バスバー15を介してU相端子16に接続され、他端は第2U相コイル12及び第3U相コイル13の一端に接続される。第2U相コイル12及び第3U相コイル13の他端は、中性点用バスバー45を介して中性点46に接続される。
【0017】
つまり、第1U相コイル11と第2U相コイル12、及び第4U相コイル14と第3U相コイル13は、それぞれ直列に接続され、両者はU相端子16と中性点46との間で並列に接続されている。
【0018】
同様に、第1V相コイル21及び第4V相コイル24の一端は第3バスバーとしてのV相バスバー25を介してV相端子26に接続され、他端は第2V相コイル22及び第3V相コイル23の一端に接続される。第2V相コイル22及び第3V相コイル23の他端は、中性点用バスバー45を介して中性点46に接続される。
【0019】
同様に、第1W相コイル31及び第4W相コイル34の一端は第2バスバーとしてのW相バスバー35を介してW相端子36に接続され、他端は第2W相コイル32及び第3W相コイル33の一端に接続される。第2W相コイル32及び第3W相コイル33の他端は、中性点用バスバー45を介して中性点46に接続される。
【0020】
各相端子16、26、36は、図示しない電源に接続される外部配線に接続されており、この外部配線から電力が供給される。一方、中性点46に接続される各コイル12、13、22、23、32、33は、中性点用バスバー45を介して同一電位に集結している。
【0021】
図3は、バスバーユニット40を示す全体図である。
図4は、
図3のA−A断面を示す断面図である。
【0022】
バスバーユニット40は、ステータ10と同心状にステータ10の軸方向端部に設けられる。バスバーユニット40は、各相に対応する、U相バスバー15、V相バスバー25、W相バスバー35と、中性点46を電気的に接続する中性点用バスバー45と、これらすべてのバスバー15、25、35、45を収装するバスバーベース47と、を備える。
【0023】
各相に対応するバスバー15、25、35はすべて半円弧状の導電体であり、中性点用バスバー45はほぼ円弧状の導電体である。バスバーベース47は、すべてのバスバー15、25、35、45を収装する3重の環状溝47a、47b、47cを有する円環状の絶縁体である。
【0024】
各相に対応するバスバー15、25、35は、
図3及び
図4に示すように、環状溝47a、47b、47cの底部に配置されるバスバー本体部15a、25a、35aと、環状溝47a、47b、47cの底部より浅い位置に配置され各相コイル11〜14、21〜24、31〜34の巻線端末5に接続されるコイル接続部15b、25b、35bと、環状溝47a、47b、47cから溝の外部へと突設され外部配線に接続される各相端子16、26、36と、から構成される。
【0025】
中性点用バスバー45は、
図3及び
図4に示すように、環状溝47cの底部に配置されるバスバー本体部45aと、環状溝47cの底部より浅い位置に配置され各相コイル11〜14、21〜24、31〜34の巻線端末5に接続されるコイル接続部45bと、から構成される。
【0026】
各バスバー15、25、35、45について
図5〜
図8を参照して説明する。
図5〜
図8は、各バスバー15、25、35、45を示す図であり、左側の図は
図3に対応する方向から各バスバー15、25、35、45を見た図であり、右側の図は各バスバー15、25、35、45の側面図である。
【0027】
なお、以下の説明では、
図3に示すように、端子16、26、36が設けられる位置を下方とした場合を基準として、上下左右方向を示す。
【0028】
図5に示すように、U相バスバー15は左上(第1U相コイル11の位置)から反時計まわりに下方(第4U相コイル14の位置)までにわたって延在する半円弧状に形成され、バスバー本体部15aと、2つのコイル接続部15bと、U相端子16とを有する。
【0029】
2つのコイル接続部15bは、バスバー本体部15aの両端に配置され、
図5の右側に示すように、バスバー本体部15aからバスバーユニット40の軸方向に延びるとともに径方向に突設される。U相端子16は、バスバー本体部15aの下方からバスバーユニット40の軸方向に突設される。
【0030】
図6に示すように、V相バスバー25は右上(第1V相コイル21の位置)から時計回りに左下(第4V相コイル24の位置)までにわたって延在する半円弧状に形成され、バスバー本体部25aと、2つのコイル接続部25bと、V相端子26とを有する。
【0031】
バスバー本体部25aは、途中でバスバーユニット40の径方向に屈曲した屈曲部25cを有し、屈曲部25cより下方が上方より径方向外側に延在するように屈曲している。2つのコイル接続部25bは、バスバー本体部25aの両端に配置され、
図6の右側に示すように、バスバー本体部25aからバスバーユニット40の軸方向に延びるとともに径方向に突設される。V相端子26は、バスバー本体部25aの下方からバスバーユニット40の軸方向に突設される。
【0032】
図7に示すように、W相バスバー35は左上(第4W相コイル34の位置)から時計回りに、第1W相コイル31を経由して、下方のU相端子16及びV相端子26の近傍までにわたって延在する半円弧状に形成され、バスバー本体部35aと、2つのコイル接続部35bと、W相端子36とを有する。
【0033】
バスバー本体部35aは、途中でバスバーユニット40の径方向に屈曲した屈曲部35cを有し、屈曲部35cより下方が上方より径方向外側に延在するように屈曲している。2つのコイル接続部35bは、バスバー本体部35aの左上側端部と屈曲部35cより上方であって屈曲部35cの近傍とに配置され、
図7の右側に示すように、バスバー本体部35aからバスバーユニット40の軸方向に延びるとともに径方向に突設される。W相端子36は、バスバー本体部35aの端部からバスバーユニット40の軸方向に突設される。
【0034】
図8に示すように、中性点用バスバー45は上方(第2V相コイル22の位置)から反時計まわりに右下(第2W相コイル32)までにわたって円弧状に形成され、バスバー本体部45aと、6つのコイル接続部45bとを有する。
【0035】
バスバー本体部45aは、一部が欠けた円弧状であり、完全な円環形状ではない。6つのコイル接続部45bは、バスバー本体部45aの両端と中央とに、それぞれ2つずつ配置され、
図8の右側に示すように、バスバー本体部45aからバスバーユニット40の軸方向に延びるとともに径方向に突設される。
【0036】
図9は、バスバーベース47を示す図である。バスバーベース47は外周から順に第1環状溝としての外溝47a、第2環状溝としての中溝47b、第3環状溝としての内溝47cの3重の環状溝を有する。
【0037】
さらに、バスバーベース47は、範囲B及び範囲Cの拡大図に示すように、各環状溝間を径方向に連通するスリット48、49を有する。スリット48、49は、範囲Bの拡大図のD−D断面図に示すように深さの浅い
浅スリットとしてのスリット48と、範囲Cの拡大図のE−E断面図に示すように深さの深い
深スリットとしてのスリット49と、を有する。
【0038】
このバスバーベース47に、各バスバー15、25、35、45を順に嵌め込んで
図3に示すバスバーユニット40を形成する手順について説明する。
【0039】
なお、以下の説明において、各相のバスバー15、25、35が「オーバーラップする」とは、バスバー15、25、35同士が周方向に重なり合うことを示しているのであって、バスバー15、25、35同士が電気的に接続されることを意味するものではない。
【0040】
初めに、バスバーベース47の外溝47aにU相バスバー15が嵌め込まれる。これにより、U相バスバー15は、バスバーベース47の外溝47aの左上から時計回りに下方までにわたって延在する。2つのコイル接続部15bは、浅いスリット48を介して外溝47aからバスバーベース47の外周へと延在する。
【0041】
次に、バスバーベース47の中溝47b及び外溝47cにW相バスバー35が嵌め込まれる。W相バスバー35は、屈曲部35cより上方側が中溝47bに嵌め込まれ、屈曲部35cより下方側が外溝47aに嵌め込まれる。
【0042】
これにより、屈曲部35cは、深いスリット49を介してバスバー本体部35aを中溝47bと外溝47aとの間で接続し、W相バスバー35は、左上の端部をU相バスバー15とオーバーラップさせて左上から時計回りに下方までにわたって延在する。2つのコイル接続部35bは、浅いスリット48を介して中溝47bからバスバーベース47の外周へと延在する。
【0043】
なお、左上に配置されるコイル接続部35bは、外溝47aに嵌め込まれたU相バスバー15と交差するが、
図4に示すように、コイル接続部35bとバスバー本体部35aとは環状溝47a、47b、47cの深さ方向に離間しているので、両者は絶縁状態に保持される。
【0044】
次に、バスバーベース47の中溝47b及び内溝47cにV相バスバー25が嵌め込まれる。V相バスバー25は、屈曲部25cより上方側が内溝47cに嵌め込まれ、屈曲部25cより下方側が中溝47bに嵌め込まれる。この屈曲部25cは、W相バスバー35の屈曲部35cと周方向に下方側にずれて配置される。
【0045】
これにより、屈曲部35cは、深いスリット49を介してバスバー本体部25aを内溝47cと中溝47bとの間で接続し、V相バスバー25は、左下の端部をU相バスバー15とオーバーラップさせ、その他の部分をW相バスバー35とオーバーラップさせて、左下から反時計まわりに右上までにわたって延在する。上方のコイル接続部25bは内溝47cからバスバーベース47の外周へと延在し、下方のコイル接続部25bは中溝47bからバスバーベース47の外周へと延在する。
【0046】
なお、両コイル接続部25bは、それぞれU相バスバー15又はW相バスバー35と交差するが、前述のように、コイル接続部25bとバスバー本体部25aとは環状溝47a、47b、47cの深さ方向に離間しているので、両者は絶縁状態に保持される。
【0047】
次に、バスバーベース47の内溝47cに中性点用バスバー45が嵌め込まれる。中性点用バスバー45は、上方から反時計回りに右下までにわたって延在する。6つのコイル接続部45bは、浅いスリット48を介して内溝47cからバスバーベース47の外周へと延在する。
【0048】
なお、6つのコイル接続部45bは、それぞれU相バスバー15、V相バスバー25、又はW相バスバー35と交差するが、前述のように、コイル接続部45bとバスバー本体部45aとは環状溝47a、47b、47cの深さ方向に離間しているので、両者は絶縁状態に保持される。
【0049】
以上のようにして、バスバーユニット40が構成され、バスバーユニット40の外周には、周方向に均等に12個のコイル接続部15b、25b、35b、45bが配置される。このバスバーユニット40がステータ10の端部に装着され、各相コイル11〜14、21〜24、31〜34と結線されることで、外部配線から各相コイル11〜14、21〜24、31〜34へと電流が配分される。
【0050】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0051】
U相バスバー15、V相バスバー25、W相バスバー35、中性点用バスバー45の4つのバスバー15、25、35、45を、3重の環状溝47a、47b、47cを有するバスバーベース47に収装してバスバーユニット40を構成するので、バスバー15、25、35、45を4重の環状溝に収装する場合と比べて、径方向に膨らむことを防止でき、バスバーユニット40の径方向寸法を小型化することができる。
【0052】
さらに、各相に対応するバスバー15、25、35はそれぞれ、コイル11、14、21、24、31、34に結線される対向配置された2つのコイル接続部15b、25b、35bと、外部配線に接続される外部端子16、26、36とを有し、各相に対応する対向配置されたコイル同士を、各相端子16、26、36と中性点46との間で並列に接続するので、各相が対向配置されるタイプのモータに適用することができる。
【0053】
さらに、コイル11〜14、21〜24、31〜34は隣接する2個のコイル同士が対向配置するように構成され、この2個のコイルを外部端子16、26、36と中性点46との間で直列に接続するので、2個のコイル同士が対向配置されるモータに適用することができる。
【0054】
さらに、バスバーベース47は、各環状溝間を径方向に連通するスリット48と、スリット48より深さの深いスリット49と、を有し、コイル接続部15b、25b、35b、45bがスリット48を介してバスバーベース47の外周へと延在し、V相バスバー25がスリット49を介して屈曲するように収装されるので、各バスバー15、25、35とコイル11〜14、21〜24、31〜34とを接続する新たな部材を設けることなく、各バスバー15、25、35を効率良くバスバーベース47に収装することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0056】
例えば、本実施形態では、各相に対応する2つのコイル同士を対向配置させ、各相のコイル11〜14、21〜24、31〜34を2直列2並列に接続しているが、3つ以上のコイル同士を対向配置させてもよい。すなわち、3つのコイル同士を対向配置させると3直列2並列となり、4つのコイル同士を対向配置させると4直列2並列となる。
【0057】
さらに、本実施形態では、中性点用バスバー45をバスバーユニット40の内溝47cに収装し、各相に対応するバスバー15、25、35を外溝47a、中溝47b、内溝47cに収装しているが、中性点用バスバー45を中溝47b又は外溝47aに収装し、その他の部分に各相に対応するバスバー15、25、35を収装してもよい。