(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5766910
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】シリル化プルランの製造方法および乾燥方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20150730BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20150730BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
C08B37/00
A61K8/60
A61Q1/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-508801(P2009-508801)
(86)(22)【出願日】2007年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2007057093
(87)【国際公開番号】WO2008126251
(87)【国際公開日】20081023
【審査請求日】2009年7月27日
【審判番号】不服2013-10951(P2013-10951/J1)
【審判請求日】2013年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240950
【氏名又は名称】片倉チッカリン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】井爪 正人
(72)【発明者】
【氏名】福原 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 誠
(72)【発明者】
【氏名】山南 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】土田 真也
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠幸
【合議体】
【審判長】
井上 雅博
【審判官】
佐藤 健史
【審判官】
瀬良 聡機
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−244333(JP,A)
【文献】
特開昭62−240335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/00
A61K 8/60
A61Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、または両者の混合溶媒にプルランを溶解させて調製した溶液に、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミドを滴下して、前記プルランと前記N,O−ビストリメチルシリルアセトアミドを反応させてシリル化プルランを含有する反応混合物を得る工程と、
得られた反応混合物をメタノールに注入してシリル化プルランを析出させる工程と、
得られたシリル化プルランをイソプロピルアルコールに溶解させて調製した溶液をメタノールに注入してシリル化プルランを析出させ、脱溶剤する工程と、を有することを特徴とするシリル化プルランの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法で得られたシリル化プルランを、乾燥、粉砕、および再乾燥する操作を一回以上繰り返すことを特徴とするシリル化プルランの乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化プルランの製造方法に関し、さらに詳しくは従来よりも簡便かつ効率的な高純度シリル化プルランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリル化プルランの出発原料であるプルランは、マルトトリオースが規則正しくα−1,6結合にて連結している水溶性の天然多糖類である。このシリル化プルランは保湿性、接着性、安全性に優れ、ノニオン性ポリマーとして様々な添加物として利用されている。
【0003】
例えば、ノニオン性ポリマーの側鎖にシリル基を導入した誘導体は、シリコンオイル可溶となり、その溶液は生体刺激性が小さいことから、化粧品、食品、医療用などの用途に期待され、ファンデーション、ネイル用のメークアップ化粧料の材料に利用されていることが特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1には、シリル化プルランもノニオン性ポリマーの側鎖にシリル基を導入した誘導体の一つとして例示され、具体的には、プルランをピリジンとトルエンの混合溶媒に分散し、トリエチルブロムシランと反応させる方法も開示されている。また、特許文献2には、シリル化プルランを配合した日焼け止め化粧料が、特許文献3にはシリル化プルランを配合した油性ファンデーションが記載されている。
【特許文献1】特開昭62−240335号公報
【特許文献2】特許第3491933号公報
【特許文献3】特開平09−188604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に特許文献1では、ピリジンやトルエンを使用した2成分系によるプルランのシリル化反応が例示されているが、使用した溶剤の除去方法や乾燥工程における詳細な説明の開示はなされていない。すなわち、反応系、精製、乾燥など各工程において、特にピリジン使用による臭気汚染の問題や、溶剤除去工程に掛かるランニングコストや効率性に課題がある。
【0006】
特許文献2、3では、シリル化プルランを原料とするある特定の限定された用途展開の開示である。いずれも、シリル化プルランに関する詳細な使用例、もしくは製造方法についての開示はなされていない。
すなわち、耐水性、皮膜形成性に優れるシリル化プルランは、化粧品添加物として有効に利用され、同時に、安全な添加物としての役割を有しているが、従来の製造方法では、例えば、ピリジンなどの溶剤残存をいかに防ぐかといった精製法、製造方法の緻密な工夫構築が必要であり、重要な課題となる。
【0007】
従って、本発明の目的は、従来方法よりも簡便かつ効率的な高純度シリル化プルランの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、または両者の混合溶媒にプルランを溶解させて調製した溶液に、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミドを滴下して、前記プルランと前記N,O−ビストリメチルシリルアセトアミドを反応させてシリル化プルラン
を含有する反応混合物を得る工程と、
得られた反応混合物をメタノールに注入してシリル化プルランを析出させる工程と、得られたシリル化プルランをイソプロピルアルコールに溶解させて調製した溶液をメタノールに注入してシリル化プルランを析出させ、脱溶剤する工程と、を有することを特徴とす
るシリル化プルランの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の方法で得られた
高純度シリル化プルランを、乾燥、粉砕、および再乾燥する操作を一回以上繰り返すことを特徴とする
高純度シリル化プルランの乾燥方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来方法よりも簡便かつ効率的な高純度シリル化プルランの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明で原料として使用するプルランは、市場から入手可能であり、何れも使用できる。1例として、林原商事(株)製の商品名「PI−10」、「PI−20」などが挙げられる。また、本発明で使用するシリル化剤としてのN,O−ビストリメチルシリルアセトアミドも市場から入手可能であり、何れも使用できる。1例として、Degussa製の商品名「DYNASYLAN BSA」が挙げられる。また、反応溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN−エチル−2−ピロリドン(NEP)は、よく知られた工業製品であり、何れも市場から入手可能であり、何れも使用できる。
【0014】
本発明の方法は、上記N−メチル−2−ピロリドンおよびN−エチル−2−ピロリドンの何れか一方または両方の混合物中で、プルランとシリル化剤とを反応させる。溶剤中へのプルランとシリル化剤との添加順序は特に限定されないが、好ましくはプルランを上記溶剤に溶解させた後、該溶液にシリル化剤を滴下させて反応を行う。
【0015】
シリル化剤の使用量は、プルラン1モルあたり、2〜4倍モルであることが好ましい。シリル化剤の使用量が、プルランの2倍モル未満では、得られるシリル化プルランは、耐水性が不十分となり、一方、シリル化剤の使用量がプルラン1モルあたり、4倍モルより過剰であると、不経済である。反応条件は50〜140℃で、1〜15時間であることが好ましい。
【0016】
上記反応では、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンおよびN−エチル−2−ピロリドンの何れか一方または両方を使用する。反応溶剤の使用量は、原料プルランの3〜20質量倍、特に4〜15質量倍が好ましい。反応溶剤の使用量が3質量倍未満では、反応混合物の粘度が高過ぎ、反応混合物の十分な攪拌ができず、一方、反応溶剤の使用量が20質量倍を超えると反応性が低下して非効率である。
【0017】
さらに上記溶剤量が少ない場合には、反応系の低粘度化(反応の促進や反応液の輸送性改良)を目的として、反応前後或は反応途中にベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコールなどのシリル化プルランの良溶剤、特に好ましくはトルエンを添加することができる。トルエンなどの使用は必須ではないが、使用する場合には、反応溶剤100質量部あたり約5〜100質量部を使用することが好ましい。トルエンなどの使用量が多過ぎると、反応終了後に使用するメタノールなどの析出溶媒量が増えて不経済となり好ましくない。
【0018】
上記反応が終了後、得られた反応液から、反応溶剤を除去することでシリル化プルランが得られる。しかし、高純度のシリル化プルランを得る場合には、上記反応混合物を冷却後、反応混合物をシリル化プルランの貧溶媒、例えば、反応溶液の約1〜20容量倍のメタノールに注入し、シリル化プルランを析出させ、析出シリル化プルランをろ過し、ろ過ケーキをメタノールに浸漬し、ろ過、メタノール洗浄を行って反応溶剤を十分に洗浄除去することで純度の高いシリル化プルランが得られる。
【0019】
さらに高純度のシリル化プルランが要求される場合には、上記で得られたシリル化プルランをシリル化プルランの良溶剤、例えば、トルエンやイソプロピルアルコールに再溶解し、上記と同様にメタノールによる洗浄を行って精製シリル化プルラン中の反応溶剤を十分に除去する。上記で得られたシリル化プルランを、通常使用される送風乾燥機や、真空乾燥機、好ましくは真空乾燥機で乾燥することで本発明の乾燥シリル化プルランが得られる。さらに反応溶剤を十分に除去する必要がある場合には、乾燥させたシリル化プルランを一旦細かに粉砕し、前記と同様にメタノールで洗浄し、上記と同様に乾燥することで、シリル化プルラン中に残存している反応溶剤を十分に除去することができる。このようにして最終的に得られる乾燥シリル化プルラン中の反応溶剤の含有量を、検出限界である10ppm以下とすることができる。得られた精製シリル化プルランの粉砕は、通常使用されるハンマーミル、ジェットミル、ボールミル、振動ミルなどで行うことができる。
【0020】
以上の如くして得られる精製シリル化プルラン中のトリメチルシリル基の含有量は、当該精製シリル化プルランの用途(すなわち、水性化粧料用途と、油性化粧料用途)によって調整する。油性用途の場合には、シリル化プルラン中のトリメチルシリル基の含有量が30質量%以上、さらには50〜58質量%であることが好ましい。シリル化プルランの用途が水性化粧料である場合には、シリル化プルラン中のトリメチルシリル基の含有量は30質量%未満でもよい。
【0021】
以上本発明の製造方法により、反応溶剤の残留量が低く、高純度のシリル化プルランが得られる。このシリル化プルランは、化粧品原料として有用である。中でも油性化粧料は、一般に優れた耐水性、付着性を有し、広範に利用されている。本発明のシリル化プルランを上記油性化粧料に添加することにより、さらに優れた耐水性、付着性を有する化粧料が得られる。
【0022】
本発明のシリル化プルランが添加される化粧料には特に限定はなく、一般に半固形油および/または液状油および/または固形油からなる油性基剤、さらに油性ゲル化剤を添加してなる油性基剤が使用できる。又、これに通常利用される化粧料用添加剤を混合分散して調製することもできる。
【0023】
また、油性化粧料中に添加される本発明のシリル化プルランは、上記配合される各油性基剤添加量や必要な粘度などの性質に応じて調整し、さらに必要に応じて原料プルランの分子量により、シリル化プルラン分子量を調整し、好ましくは油性化粧料中に0.005質量%〜30質量%の配合量にて添加される。
【0024】
本発明のシリル化プルランを添加する油性の化粧料の液状油、半固形油成分としては、一般化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、融点が25℃以下程度のものがよく、例えば、動植物油、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、エステル油、高級アルコール、シリコーン類などである。
【0025】
さらに具体的には、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、サフラワー油、タートル油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油などの動植物油;水添ポリイソブテン、ポリブテンなどの流動パラフィンや揮発性イソパラフィン、スクワランなどの脂肪族炭化水素;オレイン酸、イソステアリン酸などの高級脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸イソステアリル、クエン酸トリメチル、セチルイソオクタネート、オクチルドデシルミリステート、イソセチルステアレートなどのエステル油が挙げられる。
【0026】
さらにグリセリルトリオクタネート、グリセリルトリイソステアレートなどのグリセライド;オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン類;ラノリン、ワセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸トリグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステル、ジカプリン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられ、これらの少なくとも1種が使用できる。
【0027】
固形油としては、一般化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、融点が40℃以上程度のものがよく、例えば、エチレン・プロピレンコポリマーなどのワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、シリコンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、モクロウ、硬化ヒマシ油、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、ステアリルアルコール、ラウリルアルコールなどが使用され、これらの少なくとも1種が使用できる。
【0028】
油性ゲル化剤は、上記油性基剤をゲル化し、その用途に応じて調整を行い、一般化粧料へ通常使用されるものであれば特に限定はない。例えば、水酸基を有する12−ヒドロキシステアリン酸、有機変性モンモリロナイトクレーなどの粘土鉱物、デキストリン脂肪酸エステル類のパルミチン酸デキストリン、親油性ショ糖脂肪酸エステル類、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、無水ケイ酸、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムなどの金属石ケン類などが使用され、これらの少なくとも1種が使用できる。
【0029】
上記油性ゲル化剤に関し、無水ケイ酸とは、一般化粧品原料として使用される無水ケイ酸であり、無孔、多孔質、球状、煙霧状などでもよく、例えば、疎水化煙霧状無水ケイ酸を使用するのも好ましい。また、上記金属石鹸に関し、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムなどが使用でき、さらに有機変性粘土鉱物に関し、水膨潤性粘土鉱物を四級アンモニウム塩処理をした物などを添加することも好ましい形態である。
【0030】
また、前記固形油および/または油性ゲル化剤からそれぞれ単独または少なくとも1種が使用でき、さらに好ましくは前記半固形油および/または液状油からなる油性基剤と固形油および/または油性ゲル化剤からなる油性基剤を混合することにより調製する。固形油および/または油性ゲル化剤の混合量は、特に制限はなく、油性基剤に対し、0.1〜30質量%の添加が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%添加である。
【0031】
さらに、本発明のシリル化プルランを配合した油性化粧料は、前記各油性成分以外のその他の成分も、必要に応じて添加される。例えば、顔料、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、皮膜形成剤、保湿剤、防腐剤、防藻剤、ラメ剤、香料、美容成分、色素などを添加することも好ましい形態である。
【0032】
本発明のシリル化プルランを配合した油性化粧料は、目的に応じ、様々な製品形態へと調製することができる。例えば、固形状、ペースト状、液状などの形態に調製され、具体的には口紅、リップクリーム、リップグロス、ファンデーション、頬紅、アイカラー、アイライナー、マスカラ、オイルクレンジング、ネイルトリートメント、整髪料などの頭髪化粧料、日焼け止めローションなどに使用される。なお、以上の油性化粧料は、一般の化粧料製造方法にて製造がなされ、特に制限はない。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
プルラン〔林原商事(株)製:商品名「PI−10」〕12gをNMP〔三菱化学(株)製〕100gに分散した後、100℃で1時間以上加熱撹拌することでプルランを溶解させた。プルランを溶解後、100〜110℃に温度を保ちながら、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(Degussa製:DYNASYLAN BSA)45gを約1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに4時間、100〜110℃の温度で撹拌を継続しシリル化反応を行った。反応中にゲル状の析出物が見られたが、撹拌に支障はなかった。
【0034】
反応終了後、室温まで冷却した反応液を、200gのメタノールに注ぎ込みシリル化プルランを完全に析出させた。析出シリル化プルランをろ別回収し、メタノールで浸漬洗浄処理を行い、再びシリル化プルランをろ別回収した。次いで、シリル化プルランをイソプロピルアルコール60gに再溶解し、メタノールに注ぎ込み再析出させ、ろ別回収、メタノール浸漬洗浄処理、ろ別回収する操作を2度繰り返した後、真空乾燥機にて80℃で10時間乾燥することにより、トリメチルシリルプルラン27.1gを得た。硫酸分解での強熱灰化処理によるケイ素(Si)含量は22.1質量%(シリル化プルラン中のトリメチルシリル基として58質量%)であった。
【0035】
実施例2
プルラン〔林原商事(株)製:商品名「PI−10」〕12gをNEP(BASF製)100gに分散した後、100℃で1時間以上加熱撹拌することでプルランを溶解させた。プルランを溶解後、100〜110℃に温度を保ちながら、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(Degussa製:DYNASYLAN BSA)45gを約1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに4時間、100〜110℃の温度で撹拌を継続しシリル化反応を行った。反応中にゲル状の析出物が見られたが、撹拌に支障はなかった。
【0036】
反応終了後、室温まで冷却した反応液を、200gのメタノールに注ぎ込みシリル化プルランを完全に析出させ、析出シリル化プルランをろ別回収し、メタノールで浸漬洗浄処理を行い、再びシリル化プルランをろ別回収した。次いで、シリル化プルランをイソプロピルアルコール60gに再溶解し、メタノールに注ぎ込み再析出させ、ろ別回収、メタノール浸漬洗浄処理、ろ別回収する操作を2度繰り返した後、真空乾燥機にて80℃で10時間乾燥することにより、トリメチルシリルプルラン23.2gを得た。硫酸分解での強熱灰化処理によるケイ素(Si)含量は21.1質量%(シリル化プルラン中のトリメチルシリル基として55質量%)であった。
【0037】
参考例3
プルラン〔林原商事(株)製:商品名「PI−20」〕12gをNMP50gとNEP50gの混合溶媒に分散した後、100℃で1時間以上加熱撹拌することでプルランを溶解させた。プルランを溶解後、100〜110℃に温度を保ちながら、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(Degussa製:DYNASYLAN BSA)45gを約1時間かけて滴下し、続けてトルエン50gを約1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに3時間、100〜110℃の温度で撹拌を継続しシリル化反応を行った。反応中にゲル状の析出物は見られなかった。
【0038】
反応終了後、室温まで冷却した反応液を、300gのメタノールに注ぎ込みシリル化プルランを析出させ、析出シリル化プルランをろ別回収し、メタノールで浸漬洗浄処理を行い、再びシリル化プルランをろ別回収した。次いで、シリル化プルランをトルエン60gに再溶解し、メタノールに注ぎ込み再析出させ、ろ別回収、メタノール浸漬洗浄処理、ろ別回収する操作を2度繰り返した後、真空乾燥機にて80℃で10時間乾燥することにより、トリメチルシリルプルラン26.6gを得た。硫酸分解での強熱灰化処理によるケイ素(Si)含量は21.8質量%(シリル化プルラン中のトリメチルシリル基として57質量%)であった。
【0039】
参考例4
プルラン〔林原商事(株)製:商品名「PI−20」〕12gをNMP100gに分散した後、100℃で1時間以上加熱撹拌することでプルランを溶解させた。プルランを溶解後、100〜110℃に温度を保ちながら、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(Degussa製:DYNASYLAN BSA)45gを約1時間かけて滴下し、続けてトルエン50gを約1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに3時間、100〜110℃の温度で撹拌を継続しシリル化反応を行った。反応中にゲル状の析出物は見られなかった。
【0040】
反応終了後、室温まで冷却した反応液を、300gのメタノールに注ぎ込みシリル化プルランを析出させ、析出シリル化プルランをろ別回収し、メタノールで浸漬洗浄処理を行い、再びシリル化プルランをろ別回収した。次いで、シリル化プルランをトルエン60gに再溶解し、メタノールに注ぎ込み再析出させ、ろ別回収、メタノール浸漬洗浄処理、ろ別回収する操作を3度繰り返した後、真空乾燥機にて90℃で12時間乾燥することにより、トリメチルシリルプルラン26.7gを得た。硫酸分解での強熱灰化処理によるケイ素(Si)含量は21.8質量%(シリル化プルラン中のトリメチルシリル基として57質量%)であった。
【0041】
[残留溶剤の定量分析]
上記実施例1〜
2、参考例3〜4で得られたシリル化プルランについて、ガスクロマトグラフ/質量分析装置(GC/MS)による残留溶媒の定量分析を行った。
(測定条件)
Colum:DB−1(0.25mmΦ×30m、膜厚0.25μm)
Carrier:He36cm/sec、7.1psi、1ml/min
Oven:40〜200℃(20℃/min)
Injection:Split(5:1)
Detector:MSD
【0042】
※1:BSA:N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド
※2:IPA:イソプロピルアルコール
※3:不検出:10ppm未満、10ppm:GC/MS検出限界
※4:未使用溶媒に対し、「−」を記入
【0043】
応用例1
実施例1〜
2、参考例3〜4で得られたシリル化プルランを以下に示す配合比および製造方法により、マスカラ用サンプルを調製した。
[処方]
a.シリル化プルラン5質量%
b.軽質流動イソパラフィン72質量%
c.パルミチン酸デキストリン2質量%
d.カルナウバワックス3.5質量%
e.12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム4.5質量%
f.無水ケイ酸4質量%
g.パラヒドロキシ安息香酸プロピル0.05質量%
h.黒酸化鉄5.95質量%
i.酸化チタン3質量%
【0044】
[製造方法]
c成分とd成分を加熱溶解し、そこへb成分にa成分を溶解した溶液を添加混合する。さらにそこへe、f、g、h、iの各成分を添加し、均一に攪拌溶解する。その後、容器充填し、目的のマスカラ用サンプルとした。
[評価]
上記より得られたサンプルによる官能試験において、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った結果、いずれも良好であった。
【0045】
応用例2
実施例1〜
2、参考例3〜4で得られたシリル化プルランを以下に示す配合比および製造方法により、アイライナー用サンプルを調製した。
[処方]
a.シリル化プルラン7質量%
b.カルナウバワックス3質量%
c.軽質流動イソパラフィン71.5質量%
d.無水ケイ酸3.5質量%
e.パラヒドロキシ安息香酸プロピル0.05質量%
f.黄酸化鉄4質量%
g.黒酸化鉄6.95質量%
h.酸化チタン4質量%
【0046】
[製造方法]
b成分と一部のc成分を加熱溶解し、そこへ残部のc成分にa成分を溶解した溶液を添加混合する。さらにそこへd、e、f、g、hの各成分を添加し、均一に攪拌溶解する。その後、容器充填し、目的のアイライナー用サンプルとした。
[評価]
上記より得られたサンプルによる官能試験において、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った結果、いずれも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、従来方法よりも簡便かつ効率的な高純度シリル化プルランの製造方法を提供することができる。特に本発明では、従来技術のようにピリジンなどの悪臭性の溶剤を使用することがなく、悪臭成分の懸念がなく、また、悪臭成分除去のための多大な労力およびコストが要求されない。