(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の主要部を分解して示す斜視図である。また、
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の上面模式図である。なお、図示の関係上、
図1では筐体1の形状を二点鎖線で記載しており、また、
図2では筐体1の内部を透視するように図示している。
【0013】
図1に示すように、誘導加熱調理器100は、上面以外の外郭を構成する筐体1と、誘導加熱調理器100の上面を構成し鍋などの被加熱物が載置されるトッププレート11とを備える。トッププレート11は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の材料で構成されており、筐体1の上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。筐体1の内部には、トッププレート11上に載置された被加熱物を誘導加熱する加熱コイル2a、2b、2cと、グリル加熱室3と、基板ケース4と、冷却風を発生させる冷却ファン8とを備える。
【0014】
筐体1は、誘導加熱調理器100のうち上面以外を構成する外郭である。
図1では、上面が開放された略箱形状の筐体1を例示しているが、特にこの形状に限定されるものではない。
図1に図示されるように、筐体1の正面から見て左側にグリル加熱室3が設置され、正面から見て右側に基板ケース4が設置されている。なお、グリル加熱室3と基板ケース4の左右の配置は逆でもよい。グリル加熱室3と基板ケース4の上方には、加熱コイル2a、2b、2cが配置される。
【0015】
グリル加熱室3は、ほぼ直方体の外郭を有し、引出し可能な前扉を備える。グリル加熱室3の内部には、例えばシーズヒーターなどの加熱手段が設けられており、この加熱手段によりグリル加熱室3内に収容された食材を加熱する。
【0016】
加熱コイル2a、2b、2c(以下、加熱コイル2と総称する場合がある)は、トッププレート11上に載置される鍋などの被加熱物を誘導加熱する加熱手段である。本実施の形態1では、3つの加熱口のそれぞれに加熱コイル2a、2b、2cを設けた例を示すが、加熱口及び加熱コイルの数はこれに限定するものではない。また、いずれかの加熱口の加熱手段として、例えばラジエントヒーターなどの電気ヒーターを設けることもできる。加熱コイル2a、2b、2cは、基板ケース4内に収容された加熱コイル駆動回路基板18に電気的に接続されており、加熱コイル駆動回路基板18に実装された加熱コイル駆動回路からそれぞれ高周波電流が供給される。
【0017】
トッププレート11の後方(奥側)には、吸気口9と排気口10とが開口している。筐体1内部の吸気口9の下方には、ファンケース81内に収容された冷却ファン8が設けられている。ファンケース81は、吸気口9の下方に設けられたファンケース吸込口82と、基板ケース4と対面する側に設けられたファンケース吹出口83とを有している。
【0018】
基板ケース4は、加熱コイル駆動回路基板18を収容するためのケースである。この加熱コイル駆動回路基板18には、加熱コイル2a、2b、2cに高周波電流を供給するための加熱コイル駆動回路が実装されている。また、加熱コイル駆動回路基板18には、冷却ファン8駆動用の電源回路や、誘導加熱調理器100における加熱制御を行う制御手段としてのマイクロコンピュータを含む回路等が実装されている。なお、これらの回路は、一枚の加熱コイル駆動回路基板18に実装されていてもよいし、複数の基板に分けて実装されていてもよい。
加熱コイル駆動回路基板18に実装された加熱コイル駆動回路は、炭化ケイ素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体5と、シリコン半導体6とを含んでいる。
図1に示すように、本実施の形態において、ワイドバンドギャップ半導体5とシリコン半導体6とは、左右方向に異なる位置に実装されている。
【0019】
基板ケース4は、加熱コイル駆動回路基板18を収容するためのケースであると同時に、冷却ファン8により供給される冷却風の風路(基板冷却風路)を兼ねている。基板ケース4は、ファンケース81からの冷却風を基板ケース4の内部に流入させるための冷却風流入口41を有している。冷却風流入口41は、ファンケース吹出口83に接続されており、ファンケース吹出口83から吹き出される冷却風が冷却風流入口41に導入されるようになっている。
【0020】
基板ケース4の内部には、ワイドバンドギャップ半導体5を含む領域に冷却風を導くための風路として、ダクト71(第一風路)が設けられている。基板ケース4内に形成される基板冷却風路のうち、ダクト71を除く部分をダクト72(第二風路)と称する。ダクト71がワイドバンドギャップ半導体5を含む領域に冷却風を導くための風路であるのに対し、ダクト72は、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域に冷却風を導くための風路である。ダクト71とダクト72は、冷却風流入口41に接続されており、冷却風流入口のうちダクト71と接続された部分を冷却風流入口41a、ダクト72と接続された部分を冷却風流入口41bと称する。
【0021】
基板ケース4の上面には、ダクト71の出口である冷却風吹出口42と、ダクト72の出口である冷却風吹出口43が設けられている。本実施の形態では、長方形に開口した冷却風吹出口42の外周三辺を囲むようにして、冷却風吹出口43が配置されている。冷却風吹出口42と冷却風吹出口43の形状及び配置は、
図1、
図2に示すものに限定されないが、冷却風吹出口42から流出した冷却風と冷却風吹出口43から流出した冷却風とが、流出した後にその上部空間において混合されるよう、両者が近接した形状及び配置とする。
【0022】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の冷却風吹出口42、43近傍の断面模式図である。なお、
図3では、冷却風吹出口42、43と加熱コイル2cとの配置関係を説明することを主な目的としており、各構成部材の形状や大きさは実際のものとは異なる。
図3に示すように、冷却風吹出口42と冷却風吹出口43の上方には、所定の上部空間をおいて、加熱コイル2cが配置されている。この上部空間は、冷却風吹出口42から流出した冷却風と冷却風吹出口43から流出した冷却風とを混合する空間として機能するものであり、混合部30と称する。また、
図2に示すように、冷却風吹出口42と冷却風吹出口43は、上面から見たときに加熱コイル2cの少なくとも一部と重複する位置に設けられている。
【0023】
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル駆動回路の一例である。
図4において、12は交流電源、6aはダイオードブリッジ、13はリアクトル、14は平滑コンデンサ、2は加熱コイル、15は共振コンデンサ、5a、5bはワイドバンドギャップ半導体で構成されたスイッチング素子、16はスイッチング素子を制御する制御回路である。また、
図4では、トッププレート11とその上に載置される被加熱物としての鍋17を図示している。
【0024】
交流電源12から供給される電力は、ダイオードブリッジ6a、リアクトル13、及び平滑コンデンサ14により直流電力に変換される。制御回路16は、2つのスイッチング素子5a、5bを交互にオンオフ制御する。
図4における紙面上側のスイッチング素子5aがオンの場合は、平滑コンデンサ14から加熱コイル2へ電流が流れるとともに共振コンデンサ15を充電する。
図4における紙面下側のスイッチング素子5bがオンのときは、共振コンデンサ15から加熱コイル2に電流が流れる。このようにスイッチング素子5a、5bを交互にオンオフすることで、加熱コイル2に高周波の電流が流れ、加熱コイル2から高周波磁束が発生し、この磁束が鍋17に渦電流を発生させて鍋17を加熱する。基板ケース4には、
図4に示す加熱コイル駆動回路が、加熱コイル2の数(本実施の形態では、加熱コイル2a、2b、2cの3つ)だけ設けられている。
【0025】
ここで、スイッチング素子5a、5bは、ワイドバンドギャップ半導体で構成されており、
図1、
図2におけるワイドバンドギャップ半導体5に相当する。また、ダイオードブリッジ6aはシリコン半導体で構成されており、
図1、
図2におけるシリコン半導体6に相当する。
【0026】
上記のような構成において、加熱コイル2による加熱が開始されると、これと同時に、図示しない制御手段により冷却ファン8に対して制御信号が出力されて冷却ファン8が駆動され、冷却風による冷却が開始される。
【0027】
ここで、
図2、
図3を参照して冷却風の流れについて説明する。
冷却ファン8が動作すると、ファンケース吸込口82に吸引力が発生し、吸気口9とファンケース吸込口82を介してファンケース81内に空気が吸引される(
図2の矢印X1)。ファンケース81内に吸引された空気は、冷却ファン8により送られてファンケース吹出口83から吹き出され、ファンケース吹出口83に接続された冷却風流入口41a、41bから基板ケース4内へと冷却風として流入する(
図2の矢印X2、X3)。
【0028】
冷却風流入口41aから流入した冷却風(
図2の矢印X2)は、ダクト71内を進み、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却し、ダクト71の上面に設けられた冷却風吹出口42から排気される(
図2、
図3の矢印X4)。
一方、冷却風流入口41bから流入した冷却風(
図2の矢印X3)は、ダクト72内を進み、シリコン半導体6を冷却し、基板ケース4の上面に設けられた冷却風吹出口43から排気される(
図2、
図3の矢印X5)。
【0029】
ここで、ワイドバンドギャップ半導体5の耐熱温度が約300度であるのに対し、シリコン半導体6の耐熱温度は約150度である。したがって、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するための冷却風量は、シリコン半導体6よりも相対的に少なくてよい。このため、冷却風流入口41aの開口面積及びダクト71の断面積は、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するのに必要な最小限の冷却風を通過させることができるように調整されている。
【0030】
また、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5の特性を活かしてワイドバンドギャップ半導体5の冷却風量を相対的に少なくするため、ワイドバンドギャップ半導体5はシリコン半導体6よりも高温である。したがって、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後で冷却風吹出口42から排気される冷却風は、シリコン半導体6を冷却した後で冷却風吹出口43から排気される冷却風よりも高温である。この冷却風吹出口42から排気された高温の冷却風(便宜上、高温風と称する)と、冷却風吹出口43から排気された比較的低温の冷却風(便宜上、低温風と称する)は、基板ケース4から出て混合部30において混ざり合う。この混合部30において高温風と低温風とが混ざり合った冷却風を、便宜上、混合風と称する(
図3の矢印X6参照)。高温風は、低温風と混ざり合うことで温度が下がる。
【0031】
そして、高温風と低温風とが混ざり合った混合風の一部が、基板ケース4の上方に配置された加熱コイル2cの下面に接して加熱コイル2cを冷却する(
図3の矢印X6参照)。また、混合風の一部は、後方に向かって流れつつ加熱コイル2aや加熱コイル2bを冷却する(
図2の矢印X7)。高温風そのものは、加熱コイル2cの耐熱温度よりも高温となりうるが、低温風と混ざり合うことで低温化し、加熱コイル2を冷却することができる。また、加熱コイル2を冷却しつつ後方に向かって流れた冷却風は、排気口10から排気される(
図2の矢印X8参照)。
【0032】
以上のように、本実施の形態1では、加熱コイル駆動回路はワイドバンドギャップ半導体5とシリコン半導体6とを備えており、ワイドバンドギャップ半導体5とシリコン半導体6を風路を分離してそれぞれを個別に冷却し、冷却後の空気を混合させて加熱コイル2の冷却に用いるようにした。
加熱コイル駆動回路が実装された加熱コイル駆動回路基板18のうち、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5の冷却風路をダクト71により分けたので、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温の冷却風が、相対的に耐熱温度の低い部品に接することがない。このため、ワイドバンドギャップ半導体5を、その高耐熱性という特性を活かして高い温度で使用することができる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するための冷却風量を低減でき、効率的な冷却が行える。冷却ファン8がワイドバンドギャップ半導体5に対して供給すべき冷却風量を低減できるので、冷却ファン8の回転数を下げることができ、低騒音の誘導加熱調理器100を得ることができる。また、冷却ファン8を小型化することも可能となり、誘導加熱調理器100の製造コストを低減できる。
【0033】
また、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温風は、混合部30において、シリコン半導体6等を冷却した低温風と混合されて低温化される。このため、加熱コイル駆動回路基板18を冷却した後の冷却風を、ワイドバンドギャップ半導体5よりも耐熱温度の低い加熱コイル2の冷却風として用いることができ、無駄のない冷却を行うことができる。
【0034】
また、本実施の形態1では、交流電力を直流電力に変換するダイオードブリッジをシリコン半導体6で構成し、直流電力を高周波の電力に変換して加熱コイル2に供給するスイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体5で構成した。ダイオードブリッジは、50/60Hzという比較的低周波で動作するため相対的に発熱が少ない。一方、スイッチング素子は、20〜30kHzの高周波で駆動されるため、相対的に発熱が多い。このように発熱の少ないダイオードブリッジをシリコン半導体6で構成することで、高価なワイドバンドギャップ半導体を使わなくてすみ、低コスト化することができる。なお、本実施の形態1では、スイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体5で構成する例を示したが、他の回路部品をワイドバンドギャップ半導体5で構成することも可能である。
【0035】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器100の上面模式図である。なお、
図5では説明の関係上、筐体1の内部を透視するように図示している。前述の実施の形態1では、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温風と、シリコン半導体6を冷却した後の低温風とを混合した混合風を、加熱コイル2を冷却する冷却風として用いた。本実施の形態2では、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した高温風を、加熱コイル2の冷却風として使用しない構成例を示す。なお、本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付す。
【0036】
図5に示すように、ダクト71の冷却風の出口である冷却風吹出口42Aは、基板ケース4の側壁に設けられている。そして、冷却風吹出口42Aと排気口10とを接続する排気ダクト20(排気風路)が設けられている。特に限定しないが、本実施の形態2の排気ダクト20は、グリル加熱室3の上側に配置されている。また、冷却風吹出口42Aの配置箇所は、基板ケース4の側壁に限定しないが、ダクト72の出口である冷却風吹出口43とは重複しない位置に設ける。
【0037】
このような構成において、冷却ファン8が動作すると、ファンケース吸込口82に吸引力が発生し、吸気口9とファンケース吸込口82を介してファンケース81内に空気が吸引される(
図5の矢印Y1)。ファンケース81内に吸引された空気は、冷却ファン8により送られてファンケース吹出口83から吹き出され、ファンケース吹出口83に接続された冷却風流入口41a、41bから基板ケース4内へと冷却風として流入する(
図5の矢印Y2、Y3)。
【0038】
基板ケース4の冷却風流入口41aから流入した冷却風(
図5の矢印Y2)は、ダクト71内を進み、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却して高温となり、基板ケース4の側壁に設けられた冷却風吹出口42Aから高温風として排気され、排気ダクト20内を進む(
図5の矢印Y4)。そして、排気ダクト20内を進んだ高温風は、排気口10から排気される(
図5の矢印Y5)。
【0039】
一方、基板ケース4の冷却風流入口41bから流入した冷却風(
図5の矢印Y3)は、ダクト72内を進み、シリコン半導体6を冷却し、基板ケース4の上面に設けられた冷却風吹出口43から、相対的に低温の低温風として排気される(
図5の矢印Y6)。そして、低温風の一部が、基板ケース4の上方に配置された加熱コイル2cの下面に接して加熱コイル2cを冷却し(
図5の矢印Y6)、低温風の一部は、後方に向かって流れつつ加熱コイル2aや加熱コイル2bを冷却する(
図5の矢印Y7)。加熱コイル2を冷却しつつ後方に向かって流れた冷却風は、排気口10から排気される(
図5の矢印Y8)。このように、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域を冷却した相対的に低温の低温風のみが、加熱コイル2の下方に吹き出され、加熱コイル2を冷却する。
【0040】
以上のように、本実施の形態2では、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5を含む領域に冷却風を送るための専用のダクト71と、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域に冷却風を送るためのダクト72とを設けた。
加熱コイル駆動回路が実装された加熱コイル駆動回路基板18のうち、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5の冷却風路をダクト71により分けたので、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温の冷却風が、相対的に耐熱温度の低い部品に接することがない。このため、ワイドバンドギャップ半導体5を、その高耐熱性という特性を活かして高い温度で使用することができる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するための冷却風量を低減でき、効率的な冷却が行える。冷却ファン8がワイドバンドギャップ半導体5に対して供給すべき冷却風量を低減できるので、冷却ファン8の回転数を下げることができ、低騒音の誘導加熱調理器100を得ることができる。また、冷却ファン8を小型化することも可能となり、誘導加熱調理器100の製造コストを低減できる。
【0041】
また、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温風は、排気ダクト20を介して排気口10から排出するようにした。このため、高温風が耐熱温度の低い他の部品に接触することによる部品の故障を抑制することができる。
【0042】
また、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域を冷却した後の相対的に低温の冷却風により、加熱コイル2を冷却するので、少ない風量で加熱コイル2を冷却することができる。このように、加熱コイル2の冷却風量を低減できるので、冷却ファン8の騒音や消費電力を低減できる。また、冷却ファン8を小型化することも可能となり、誘導加熱調理器100の製造コストを低減できる。