特許第5769476号(P5769476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769476
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   H05B6/12 317
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-88219(P2011-88219)
(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公開番号】特開2012-221830(P2012-221830A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2013年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100166350
【弁理士】
【氏名又は名称】小銭 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】私市 広康
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 治夫
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−259486(JP,A)
【文献】 特開2011−034712(JP,A)
【文献】 特開2008−153244(JP,A)
【文献】 特開2009−152100(JP,A)
【文献】 特開2008−021476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が載置されるトッププレートと、
前記被加熱物を加熱するための誘導磁界を発生させる加熱コイルと、
ワイドバンドギャップ半導体を含み、前記加熱コイルに高周波電流を供給する加熱コイル駆動回路と、
冷却風を送風する送風手段と、
前記加熱コイル駆動回路が実装された回路基板に前記冷却風を導く基板冷却風路とを備え、
前記基板冷却風路は、
前記回路基板の前記ワイドバンドギャップ半導体を含む領域に冷却風を導く第一風路と、
前記回路基板の前記ワイドバンドギャップ半導体を含まない領域に冷却風を導く第二風路とを有し、
前記第一風路から流出した冷却風と前記第二風路から流出した冷却風とが混合された冷却風で前記加熱コイルを冷却するようにした
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
被加熱物が載置されるトッププレートと、
前記被加熱物を加熱するための誘導磁界を発生させる加熱コイルと、
ワイドバンドギャップ半導体を含み、前記加熱コイルに高周波電流を供給する加熱コイル駆動回路と、
冷却風を送風する送風手段と、
前記加熱コイル駆動回路が実装された回路基板に前記冷却風を導く基板冷却風路とを備え、
前記基板冷却風路は、
前記回路基板の前記ワイドバンドギャップ半導体を含む領域に冷却風を導く第一風路と、
前記回路基板の前記ワイドバンドギャップ半導体を含まない領域に冷却風を導く第二風路とを有し、
前記第一風路から流出した冷却風を誘導加熱調理器本体の外部へ導く排気風路を備え、
前記第二風路から流出した冷却風で前記加熱コイルを冷却するようにし
前記第一風路に送風供給される冷却風量に対し第二風路に送風する冷却風量が多くなるよう構成された
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱コイル駆動回路に供給する交流電力を整流するダイオードブリッジは、シリコン半導体である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記第一風路に送風供給される冷却風量に対し第二風路に送風する冷却風量が多くなるよう構成された
ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱コイル駆動回路に設けられたスイッチング素子とダイオードのいずれか又は双方は、ワイドバンドギャップ半導体で構成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化ケイ素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドである
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「内部に前記出力制御基板と前記冷却ファンとを収納し側面及び上部が塞がれた樹脂製の基板ケースが設置され、該基板ケースは、前記吸気口と対応した前記上部位置に設けられたケース吸気口と、前記基板ケースの前記上部位置に設けられた複数の冷却口を有し、前記基板ケース内に前記ケース吸気口から前記複数の冷却口に至る風路を形成し、該風路の上流に前記冷却ファンを、下流に前記出力制御基板を配置して前記ケース吸気口から吸い込まれた風が前記出力制御基板を冷却した後前記複数の冷却口から排出されるようにし、該複数の冷却口から排出された風で前記複数の加熱コイルを冷却するようにした」という技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−149704号公報(第2〜第5頁、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の誘導加熱調理器においては、基板ケース内に取り込んだ冷却風で基板ケース内の制御基板を冷却し、制御基板を冷却した後の冷却風を基板ケースに設けた冷却口から排出して複数の加熱コイルを冷却している。
【0005】
ところで、窒化ガリウムやSiC(炭化ケイ素)等のワイドバンドギャップ半導体の耐熱温度は、250〜300度であることが知られている。加熱コイルを駆動させるインバータのスイッチング素子としてワイドバンドギャップ半導体を使用する場合、耐熱性が高いため、例えばSi(ケイ素)等の半導体を用いたスイッチング素子と比較して、ワイドバンドギャップ半導体自体は少ない風量で冷却できる。
【0006】
しかし、ワイドバンドギャップ半導体を冷却した後の冷却風は、一般的な加熱コイルの耐熱温度である180度以上となり、加熱コイルを適切に冷却することができない。このため、ワイドバンドギャップ半導体を冷却した後の冷却風を加熱コイルの冷却に利用しようとすると、ワイドバンドギャップ半導体を加熱コイルの耐熱温度(例えば180度)以下となるように冷却しなければならない。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体は耐熱性が高く少ない冷却風で冷却可能であるにもかかわらず、冷却風の風量を減らすことができない。
【0007】
また、スイッチング素子が実装された回路基板内の多くの部品の耐熱温度は約150度以下であり、ワイドバンドギャップ半導体を冷却した後の高温の冷却風が耐熱温度の低い部品に接すると、その部品の故障を招く可能性があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、加熱コイルを駆動する駆動回路にワイドバンドギャップ半導体を備えた誘導加熱調理器において、回路基板や加熱コイルを効率的に冷却することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る誘導加熱調理器は、被加熱物が載置されるトッププレートと、前記被加熱物を加熱するための誘導磁界を発生させる加熱コイルと、ワイドバンドギャップ半導体を含み、前記加熱コイルに高周波電流を供給する加熱コイル駆動回路と、冷却風を送風する送風手段と、前記加熱コイル駆動回路が実装された回路基板に前記冷却風を導く基板冷却風路とを備え、前記基板冷却風路は、前記回路基板の前記ワイドバンドギャップ半導体を含む領域に冷却風を導く第一風路と、前記回路基板の前記ワイドバンドギャップ半導体を含まない領域に冷却風を導く第二風路とを有し、前記第一風路から流出した冷却風と前記第二風路から流出した冷却風とが混合された冷却風で前記加熱コイルを冷却するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路基板のワイドバンドギャップ半導体を含む領域に冷却風を導く第一風路と、回路基板のワイドバンドギャップ半導体を含まない領域に冷却風を導く第二風路とを設けたので、ワイドバンドギャップ半導体を冷却した後の高温の冷却風が耐熱温度の低い他の回路部品に接触するのを抑制できる。このため、ワイドバンドギャップ半導体の高耐熱性を活かし、ワイドバンドギャップ半導体に供給する冷却風量を低減して効率的に冷却できる。このため、送風手段を低騒音化でき、また、送風手段の小型化が可能となり製造コストを低減できる。また、ワイドバンドギャップ半導体を冷却した後の高温の冷却風は、ワイドバンドギャップ半導体を含まない領域を冷却した後の冷却風と混合して加熱コイルの冷却に用いるようにしたので、回路基板を冷却した後の冷却風で加熱コイルの冷却も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の主要部を分解して示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の上面模式図である。
図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の冷却風吹出口42、43近傍の断面模式図である。
図4】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル駆動回路の一例である。
図5】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の主要部を分解して示す斜視図である。また、図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の上面模式図である。なお、図示の関係上、図1では筐体1の形状を二点鎖線で記載しており、また、図2では筐体1の内部を透視するように図示している。
【0013】
図1に示すように、誘導加熱調理器100は、上面以外の外郭を構成する筐体1と、誘導加熱調理器100の上面を構成し鍋などの被加熱物が載置されるトッププレート11とを備える。トッププレート11は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の材料で構成されており、筐体1の上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。筐体1の内部には、トッププレート11上に載置された被加熱物を誘導加熱する加熱コイル2a、2b、2cと、グリル加熱室3と、基板ケース4と、冷却風を発生させる冷却ファン8とを備える。
【0014】
筐体1は、誘導加熱調理器100のうち上面以外を構成する外郭である。図1では、上面が開放された略箱形状の筐体1を例示しているが、特にこの形状に限定されるものではない。図1に図示されるように、筐体1の正面から見て左側にグリル加熱室3が設置され、正面から見て右側に基板ケース4が設置されている。なお、グリル加熱室3と基板ケース4の左右の配置は逆でもよい。グリル加熱室3と基板ケース4の上方には、加熱コイル2a、2b、2cが配置される。
【0015】
グリル加熱室3は、ほぼ直方体の外郭を有し、引出し可能な前扉を備える。グリル加熱室3の内部には、例えばシーズヒーターなどの加熱手段が設けられており、この加熱手段によりグリル加熱室3内に収容された食材を加熱する。
【0016】
加熱コイル2a、2b、2c(以下、加熱コイル2と総称する場合がある)は、トッププレート11上に載置される鍋などの被加熱物を誘導加熱する加熱手段である。本実施の形態1では、3つの加熱口のそれぞれに加熱コイル2a、2b、2cを設けた例を示すが、加熱口及び加熱コイルの数はこれに限定するものではない。また、いずれかの加熱口の加熱手段として、例えばラジエントヒーターなどの電気ヒーターを設けることもできる。加熱コイル2a、2b、2cは、基板ケース4内に収容された加熱コイル駆動回路基板18に電気的に接続されており、加熱コイル駆動回路基板18に実装された加熱コイル駆動回路からそれぞれ高周波電流が供給される。
【0017】
トッププレート11の後方(奥側)には、吸気口9と排気口10とが開口している。筐体1内部の吸気口9の下方には、ファンケース81内に収容された冷却ファン8が設けられている。ファンケース81は、吸気口9の下方に設けられたファンケース吸込口82と、基板ケース4と対面する側に設けられたファンケース吹出口83とを有している。
【0018】
基板ケース4は、加熱コイル駆動回路基板18を収容するためのケースである。この加熱コイル駆動回路基板18には、加熱コイル2a、2b、2cに高周波電流を供給するための加熱コイル駆動回路が実装されている。また、加熱コイル駆動回路基板18には、冷却ファン8駆動用の電源回路や、誘導加熱調理器100における加熱制御を行う制御手段としてのマイクロコンピュータを含む回路等が実装されている。なお、これらの回路は、一枚の加熱コイル駆動回路基板18に実装されていてもよいし、複数の基板に分けて実装されていてもよい。
加熱コイル駆動回路基板18に実装された加熱コイル駆動回路は、炭化ケイ素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体5と、シリコン半導体6とを含んでいる。図1に示すように、本実施の形態において、ワイドバンドギャップ半導体5とシリコン半導体6とは、左右方向に異なる位置に実装されている。
【0019】
基板ケース4は、加熱コイル駆動回路基板18を収容するためのケースであると同時に、冷却ファン8により供給される冷却風の風路(基板冷却風路)を兼ねている。基板ケース4は、ファンケース81からの冷却風を基板ケース4の内部に流入させるための冷却風流入口41を有している。冷却風流入口41は、ファンケース吹出口83に接続されており、ファンケース吹出口83から吹き出される冷却風が冷却風流入口41に導入されるようになっている。
【0020】
基板ケース4の内部には、ワイドバンドギャップ半導体5を含む領域に冷却風を導くための風路として、ダクト71(第一風路)が設けられている。基板ケース4内に形成される基板冷却風路のうち、ダクト71を除く部分をダクト72(第二風路)と称する。ダクト71がワイドバンドギャップ半導体5を含む領域に冷却風を導くための風路であるのに対し、ダクト72は、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域に冷却風を導くための風路である。ダクト71とダクト72は、冷却風流入口41に接続されており、冷却風流入口のうちダクト71と接続された部分を冷却風流入口41a、ダクト72と接続された部分を冷却風流入口41bと称する。
【0021】
基板ケース4の上面には、ダクト71の出口である冷却風吹出口42と、ダクト72の出口である冷却風吹出口43が設けられている。本実施の形態では、長方形に開口した冷却風吹出口42の外周三辺を囲むようにして、冷却風吹出口43が配置されている。冷却風吹出口42と冷却風吹出口43の形状及び配置は、図1図2に示すものに限定されないが、冷却風吹出口42から流出した冷却風と冷却風吹出口43から流出した冷却風とが、流出した後にその上部空間において混合されるよう、両者が近接した形状及び配置とする。
【0022】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の冷却風吹出口42、43近傍の断面模式図である。なお、図3では、冷却風吹出口42、43と加熱コイル2cとの配置関係を説明することを主な目的としており、各構成部材の形状や大きさは実際のものとは異なる。図3に示すように、冷却風吹出口42と冷却風吹出口43の上方には、所定の上部空間をおいて、加熱コイル2cが配置されている。この上部空間は、冷却風吹出口42から流出した冷却風と冷却風吹出口43から流出した冷却風とを混合する空間として機能するものであり、混合部30と称する。また、図2に示すように、冷却風吹出口42と冷却風吹出口43は、上面から見たときに加熱コイル2cの少なくとも一部と重複する位置に設けられている。
【0023】
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル駆動回路の一例である。図4において、12は交流電源、6aはダイオードブリッジ、13はリアクトル、14は平滑コンデンサ、2は加熱コイル、15は共振コンデンサ、5a、5bはワイドバンドギャップ半導体で構成されたスイッチング素子、16はスイッチング素子を制御する制御回路である。また、図4では、トッププレート11とその上に載置される被加熱物としての鍋17を図示している。
【0024】
交流電源12から供給される電力は、ダイオードブリッジ6a、リアクトル13、及び平滑コンデンサ14により直流電力に変換される。制御回路16は、2つのスイッチング素子5a、5bを交互にオンオフ制御する。図4における紙面上側のスイッチング素子5aがオンの場合は、平滑コンデンサ14から加熱コイル2へ電流が流れるとともに共振コンデンサ15を充電する。図4における紙面下側のスイッチング素子5bがオンのときは、共振コンデンサ15から加熱コイル2に電流が流れる。このようにスイッチング素子5a、5bを交互にオンオフすることで、加熱コイル2に高周波の電流が流れ、加熱コイル2から高周波磁束が発生し、この磁束が鍋17に渦電流を発生させて鍋17を加熱する。基板ケース4には、図4に示す加熱コイル駆動回路が、加熱コイル2の数(本実施の形態では、加熱コイル2a、2b、2cの3つ)だけ設けられている。
【0025】
ここで、スイッチング素子5a、5bは、ワイドバンドギャップ半導体で構成されており、図1図2におけるワイドバンドギャップ半導体5に相当する。また、ダイオードブリッジ6aはシリコン半導体で構成されており、図1図2におけるシリコン半導体6に相当する。
【0026】
上記のような構成において、加熱コイル2による加熱が開始されると、これと同時に、図示しない制御手段により冷却ファン8に対して制御信号が出力されて冷却ファン8が駆動され、冷却風による冷却が開始される。
【0027】
ここで、図2図3を参照して冷却風の流れについて説明する。
冷却ファン8が動作すると、ファンケース吸込口82に吸引力が発生し、吸気口9とファンケース吸込口82を介してファンケース81内に空気が吸引される(図2の矢印X1)。ファンケース81内に吸引された空気は、冷却ファン8により送られてファンケース吹出口83から吹き出され、ファンケース吹出口83に接続された冷却風流入口41a、41bから基板ケース4内へと冷却風として流入する(図2の矢印X2、X3)。
【0028】
冷却風流入口41aから流入した冷却風(図2の矢印X2)は、ダクト71内を進み、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却し、ダクト71の上面に設けられた冷却風吹出口42から排気される(図2図3の矢印X4)。
一方、冷却風流入口41bから流入した冷却風(図2の矢印X3)は、ダクト72内を進み、シリコン半導体6を冷却し、基板ケース4の上面に設けられた冷却風吹出口43から排気される(図2図3の矢印X5)。
【0029】
ここで、ワイドバンドギャップ半導体5の耐熱温度が約300度であるのに対し、シリコン半導体6の耐熱温度は約150度である。したがって、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するための冷却風量は、シリコン半導体6よりも相対的に少なくてよい。このため、冷却風流入口41aの開口面積及びダクト71の断面積は、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するのに必要な最小限の冷却風を通過させることができるように調整されている。
【0030】
また、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5の特性を活かしてワイドバンドギャップ半導体5の冷却風量を相対的に少なくするため、ワイドバンドギャップ半導体5はシリコン半導体6よりも高温である。したがって、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後で冷却風吹出口42から排気される冷却風は、シリコン半導体6を冷却した後で冷却風吹出口43から排気される冷却風よりも高温である。この冷却風吹出口42から排気された高温の冷却風(便宜上、高温風と称する)と、冷却風吹出口43から排気された比較的低温の冷却風(便宜上、低温風と称する)は、基板ケース4から出て混合部30において混ざり合う。この混合部30において高温風と低温風とが混ざり合った冷却風を、便宜上、混合風と称する(図3の矢印X6参照)。高温風は、低温風と混ざり合うことで温度が下がる。
【0031】
そして、高温風と低温風とが混ざり合った混合風の一部が、基板ケース4の上方に配置された加熱コイル2cの下面に接して加熱コイル2cを冷却する(図3の矢印X6参照)。また、混合風の一部は、後方に向かって流れつつ加熱コイル2aや加熱コイル2bを冷却する(図2の矢印X7)。高温風そのものは、加熱コイル2cの耐熱温度よりも高温となりうるが、低温風と混ざり合うことで低温化し、加熱コイル2を冷却することができる。また、加熱コイル2を冷却しつつ後方に向かって流れた冷却風は、排気口10から排気される(図2の矢印X8参照)。
【0032】
以上のように、本実施の形態1では、加熱コイル駆動回路はワイドバンドギャップ半導体5とシリコン半導体6とを備えており、ワイドバンドギャップ半導体5とシリコン半導体6を風路を分離してそれぞれを個別に冷却し、冷却後の空気を混合させて加熱コイル2の冷却に用いるようにした。
加熱コイル駆動回路が実装された加熱コイル駆動回路基板18のうち、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5の冷却風路をダクト71により分けたので、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温の冷却風が、相対的に耐熱温度の低い部品に接することがない。このため、ワイドバンドギャップ半導体5を、その高耐熱性という特性を活かして高い温度で使用することができる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するための冷却風量を低減でき、効率的な冷却が行える。冷却ファン8がワイドバンドギャップ半導体5に対して供給すべき冷却風量を低減できるので、冷却ファン8の回転数を下げることができ、低騒音の誘導加熱調理器100を得ることができる。また、冷却ファン8を小型化することも可能となり、誘導加熱調理器100の製造コストを低減できる。
【0033】
また、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温風は、混合部30において、シリコン半導体6等を冷却した低温風と混合されて低温化される。このため、加熱コイル駆動回路基板18を冷却した後の冷却風を、ワイドバンドギャップ半導体5よりも耐熱温度の低い加熱コイル2の冷却風として用いることができ、無駄のない冷却を行うことができる。
【0034】
また、本実施の形態1では、交流電力を直流電力に変換するダイオードブリッジをシリコン半導体6で構成し、直流電力を高周波の電力に変換して加熱コイル2に供給するスイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体5で構成した。ダイオードブリッジは、50/60Hzという比較的低周波で動作するため相対的に発熱が少ない。一方、スイッチング素子は、20〜30kHzの高周波で駆動されるため、相対的に発熱が多い。このように発熱の少ないダイオードブリッジをシリコン半導体6で構成することで、高価なワイドバンドギャップ半導体を使わなくてすみ、低コスト化することができる。なお、本実施の形態1では、スイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体5で構成する例を示したが、他の回路部品をワイドバンドギャップ半導体5で構成することも可能である。
【0035】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器100の上面模式図である。なお、図5では説明の関係上、筐体1の内部を透視するように図示している。前述の実施の形態1では、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温風と、シリコン半導体6を冷却した後の低温風とを混合した混合風を、加熱コイル2を冷却する冷却風として用いた。本実施の形態2では、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した高温風を、加熱コイル2の冷却風として使用しない構成例を示す。なお、本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付す。
【0036】
図5に示すように、ダクト71の冷却風の出口である冷却風吹出口42Aは、基板ケース4の側壁に設けられている。そして、冷却風吹出口42Aと排気口10とを接続する排気ダクト20(排気風路)が設けられている。特に限定しないが、本実施の形態2の排気ダクト20は、グリル加熱室3の上側に配置されている。また、冷却風吹出口42Aの配置箇所は、基板ケース4の側壁に限定しないが、ダクト72の出口である冷却風吹出口43とは重複しない位置に設ける。
【0037】
このような構成において、冷却ファン8が動作すると、ファンケース吸込口82に吸引力が発生し、吸気口9とファンケース吸込口82を介してファンケース81内に空気が吸引される(図5の矢印Y1)。ファンケース81内に吸引された空気は、冷却ファン8により送られてファンケース吹出口83から吹き出され、ファンケース吹出口83に接続された冷却風流入口41a、41bから基板ケース4内へと冷却風として流入する(図5の矢印Y2、Y3)。
【0038】
基板ケース4の冷却風流入口41aから流入した冷却風(図5の矢印Y2)は、ダクト71内を進み、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却して高温となり、基板ケース4の側壁に設けられた冷却風吹出口42Aから高温風として排気され、排気ダクト20内を進む(図5の矢印Y4)。そして、排気ダクト20内を進んだ高温風は、排気口10から排気される(図5の矢印Y5)。
【0039】
一方、基板ケース4の冷却風流入口41bから流入した冷却風(図5の矢印Y3)は、ダクト72内を進み、シリコン半導体6を冷却し、基板ケース4の上面に設けられた冷却風吹出口43から、相対的に低温の低温風として排気される(図5の矢印Y6)。そして、低温風の一部が、基板ケース4の上方に配置された加熱コイル2cの下面に接して加熱コイル2cを冷却し(図5の矢印Y6)、低温風の一部は、後方に向かって流れつつ加熱コイル2aや加熱コイル2bを冷却する(図5の矢印Y7)。加熱コイル2を冷却しつつ後方に向かって流れた冷却風は、排気口10から排気される(図5の矢印Y8)。このように、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域を冷却した相対的に低温の低温風のみが、加熱コイル2の下方に吹き出され、加熱コイル2を冷却する。
【0040】
以上のように、本実施の形態2では、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5を含む領域に冷却風を送るための専用のダクト71と、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域に冷却風を送るためのダクト72とを設けた。
加熱コイル駆動回路が実装された加熱コイル駆動回路基板18のうち、耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体5の冷却風路をダクト71により分けたので、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温の冷却風が、相対的に耐熱温度の低い部品に接することがない。このため、ワイドバンドギャップ半導体5を、その高耐熱性という特性を活かして高い温度で使用することができる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却するための冷却風量を低減でき、効率的な冷却が行える。冷却ファン8がワイドバンドギャップ半導体5に対して供給すべき冷却風量を低減できるので、冷却ファン8の回転数を下げることができ、低騒音の誘導加熱調理器100を得ることができる。また、冷却ファン8を小型化することも可能となり、誘導加熱調理器100の製造コストを低減できる。
【0041】
また、ワイドバンドギャップ半導体5を冷却した後の高温風は、排気ダクト20を介して排気口10から排出するようにした。このため、高温風が耐熱温度の低い他の部品に接触することによる部品の故障を抑制することができる。
【0042】
また、ワイドバンドギャップ半導体5を含まない領域を冷却した後の相対的に低温の冷却風により、加熱コイル2を冷却するので、少ない風量で加熱コイル2を冷却することができる。このように、加熱コイル2の冷却風量を低減できるので、冷却ファン8の騒音や消費電力を低減できる。また、冷却ファン8を小型化することも可能となり、誘導加熱調理器100の製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0043】
1 筐体、2 加熱コイル、2a 加熱コイル、2b 加熱コイル、2c 加熱コイル、3 グリル加熱室、4 基板ケース、5 ワイドバンドギャップ半導体、5a スイッチング素子、5b スイッチング素子、6 シリコン半導体、6a ダイオードブリッジ、8 冷却ファン、9 吸気口、10 排気口、11 トッププレート、12 交流電源、13 リアクトル、14 平滑コンデンサ、15 共振コンデンサ、16 制御回路、17 鍋、18 加熱コイル駆動回路基板、20 排気ダクト、30 混合部、41 冷却風流入口、41a 冷却風流入口、41b 冷却風流入口、42 冷却風吹出口、42A 冷却風吹出口、43 冷却風吹出口、71 ダクト、72 ダクト、81 ファンケース、82 ファンケース吸気口、83 ファンケース吹出口、100 誘導加熱調理器。
図1
図2
図3
図4
図5