(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動ローラーの下方であって、前記転写ニップ部よりも前記中間転写ベルトの回転方向上流側で前記中間転写ベルトを張架するバックアップローラーを更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の転写装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動ローラーのコストダウン設計を行う場合、その外周に施されるウレタンコートやゴム層などの弾性層が設けられていない駆動ローラーが用いられることがある。この場合、駆動ローラーは、弾性層を有さず、金属材料などから構成されるため、半径方向の変形が少ない。したがって、駆動ローラーの表面と中間転写ベルトの裏側との間に異物が介在した場合は、中間転写ベルトが変形せざるを得ず、さまざまな欠陥を生じることがある。
【0006】
特に、この駆動ローラーを二次転写ローラーの対向ローラーとして採用する場合には、上記の中間転写ベルトの変形によって、転写ニップ部で部分的な空隙が生じる。この空隙は、転写ニップ部内の転写電界に影響し、白抜けなどの画質欠陥が生じてしまう。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、中間転写ベルトと、中間転写ベルトの転写ニップ部を形成する駆動ローラーとを備える転写装置において、該駆動ローラーの表面に異物が付着することで生じる白抜けなどの画質欠陥を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る転写装置は、弾性層を備え、複数の張架ローラーに張架され、周面に現像剤像を担持する無端状の中間転写ベルトと、金属材料からなる導電層と、該導電層上に積層される絶縁層とを有し、該絶縁層が前記中間転写ベルトの内周面と接触する状態で前記中間転写ベルトを内方から支持し、前記中間転写ベルトを回転駆動させる駆動ローラーと、前記中間転写ベルトを介して、前記駆動ローラーに対向配置され、前記駆動ローラーとの間で転写ニップ部を形成する転写ローラーと、前記駆動ローラーと前記転写ローラーとの間に、前記現像剤像をシートに転写させる転写電圧を印加するバイアス印加手段と、前記駆動ローラー表面に当接し、前記駆動ローラー表面を清掃する板状の清掃部材と、前記駆動ローラーを回転駆動させる駆動手段と、前記バイアス印加手段と前記駆動手段とを制御する制御部と、を有し、前記制御部は、
前記転写電圧が印加されない状態であって、前記駆動ローラーと前記中間転写ベルトとの間の電位差に応じて発生する、前記絶縁層の前記中間転写ベルトに対する静電吸着力が働いていない状態で、前記駆動ローラーを回転させ、前記清掃部材によって、前記駆動ローラー表面を清掃させるクリーニングモードを実行することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、シートに現像剤像が転写される転写ニップ部において、中間転写ベルトと、駆動ローラーの導電層との間に、駆動ローラーの絶縁層が介在する。このため、転写電圧が印加された時に、該絶縁層の厚さ方向に電位差が生じ、絶縁層の表面と中間転写ベルトの裏面との間に静電吸着力が発生する。この結果、駆動ローラーの中間転写ベルトに対するグリップ力が増し、中間転写ベルトが安定して回転駆動される。ここで、金属材料からなる導電層と、該導電層上に積層される絶縁層とを有する駆動ローラーは、弾性変形しにくいため、絶縁層表面に異物が付着した場合、転写ニップ部で中間転写ベルトが変形され、空隙が生じやすい。この空隙に対応する部分では、部分的に転写電界が妨げられるため、白抜けなどの画質欠陥が生じる。上記の構成によれば、駆動ローラーの絶縁層表面に付着した異物は、該絶縁層表面に当接する清掃部材によって掻き取られるため、転写ニップ部における中間転写ベルト裏面と駆動ローラー表面との間に、異物が介入することが抑制される。また、この構成によれば、駆動ローラーの表面を清掃するクリーニングモード時には、絶縁層によってもたらされる静電吸着力が発生しない。このため、絶縁層表面に付着した異物が剥がれやすく、清掃部材によって除去されやすくなる。
【0010】
上記の構成において、前記導電層はアルミニウム材料からなり、前記絶縁層は、アルマイト皮膜であることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、導電層であるアルミニウム材料の表面を処理することによって、表面に絶縁層であるアルマイト層を形成することが可能となる。このため、表面コーティングなどに比べて、剥がれにくく安定的に絶縁層が形成される。
【0012】
上記の構成において、前記駆動ローラーの下方であって、前記転写ニップ部よりも前記中間転写ベルトの回転方向上流側で前記中間転写ベルトを張架するバックアップローラーを更に有することが望ましい。
【0013】
上記の構成において、前記駆動ローラーおよび前記清掃部材は、前記バックアップローラーの上方を覆うように配設されていることが望ましい。
【0014】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、表面に現像剤像を担持し、前記中間転写ベルトに該現像剤像が転写される像担持体と、上記の何れかに記載の転写装置と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、転写電圧が印加された際に、絶縁層によってもたらされる静電吸着力によって、駆動ローラーの中間転写ベルトに対するグリップ力が増し、中間転写ベルトが安定して回転駆動される。また、駆動ローラーの絶縁層表面に付着した異物は清掃部材によって掻き取られるため、転写位置で発生する白抜けなどの転写不良が生じにくい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中間転写ベルトと、中間転写ベルトの転写ニップ部を形成する駆動ローラーとを備える転写装置において、該駆動ローラーの表面に異物が付着することによって生じる白抜けなどの画質欠陥を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について、図面に基づき詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンタを例示する。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ装置、及びこれらの複合機等であってもよい。
【0019】
図1は、画像形成装置10の内部構造を示す断面図である。この画像形成装置10は、箱形の筐体構造を備える装置本体11を備える。この装置本体11内には、シートPを給紙する給紙部12、給紙部12から給紙されたシートPに転写するトナー像を形成する画像形成部13、前記トナー像が一次転写される中間転写ユニット14、画像形成部13にトナーを補給するトナー補給部15、及び、シートP上に形成された未定着トナー像をシートPに定着する処理を施す定着部16が内装されている。さらに、装置本体11の上部には、定着部16で定着処理の施されたシートPが排紙される排紙部17が備えられている。
【0020】
装置本体11の上面の適所には、シートPに対する出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、電源キーや出力条件を入力するためのタッチパネルや各種の操作キーが設けられている。
【0021】
装置本体11内には、さらに、画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びるシート搬送路111が形成されている。シート搬送路111には、適所にシートを搬送する搬送ローラー対112が設けられている。また、シートのスキュー矯正を行うと共に、後述する二次転写のニップ部に所定のタイミングでシートを送り込むレジストローラー対113が、シート搬送路111における前記ニップ部の上流側に設けられている。シート搬送路111は、シートPを給紙部12から排紙部17まで、画像形成部13及び定着部16を経由して搬送させる搬送路である。
【0022】
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122、及び給紙ローラー対123を備える。給紙トレイ121は、装置本体11の下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚のシートPが積層されたシート束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121に貯留されたシート束P1の最上面のシートPを1枚ずつ繰り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
【0023】
給紙部12は、装置本体11の、
図1に示す左側側面に取り付けられる手差し給紙部を備える。手差し給紙部は、手差しトレイ124、ピックアップローラー125、及び給紙ローラー対126を備える。手差しトレイ124は、手差しされるシートPが載置されるトレイであり、手差しでシートPを給紙する際、
図1に示すように、装置本体11の側面から開放される。ピックアップローラー125は、手差しトレイ124に載置されたシートPを繰り出す。給紙ローラー対126は、ピックアップローラー125によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
【0024】
画像形成部13は、シートPに転写するトナー像を形成するものであって、異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニットを備える。この画像形成ユニットとして、本実施形態では、後述する中間転写ベルト141の回転方向上流側から下流側に向けて(
図1に示す左側から右側へ)順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット13M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット13C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット13Y、及びブラック(Bk)色の現像剤を用いるブラック用ユニット13Bkが備えられている。各ユニット13M、13C、13Y、13Bkは、それぞれ感光体ドラム20(像担持体)と、感光体ドラム20の周囲に配置された帯電装置21、現像装置23、一次転写ローラー24及びクリーニング装置25とを備える。また、各ユニット13M、13C、13Y、13Bk共通の露光装置22が、画像形成ユニットの下方に配置されている。
【0025】
感光体ドラム20は、その軸回りに回転駆動され、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。この感光体ドラム20としては、一例として、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムが用いられる。帯電装置21は、感光体ドラム20の表面を均一に帯電する。帯電装置21は、帯電ローラーと、前記帯電ローラーに付着したトナーを除去するための帯電クリーニングブラシとを備える。露光装置22は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、均一に帯電された感光体ドラム20の周面に、画像データに基づき変調された光を照射して、静電潜像を形成する。
【0026】
現像装置23は、感光体ドラム20上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム20の周面にトナーを供給する。現像装置23は、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤用のものであり、二本の攪拌ローラー23A、磁気ローラー23B、及び現像ローラー23Cを含む。攪拌ローラー23Aは、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。磁気ローラー23Bの周面には2成分現像剤層が担持される。また、現像ローラー23Cの周面には、磁気ローラー23Bと現像ローラー23Cとの間の電位差によってトナーが受け渡されることにより形成されたトナー層が担持される。現像ローラー23C上のトナーは、感光体ドラム20の周面に供給され、前記静電潜像が現像される。
【0027】
一次転写ローラー24は、中間転写ユニット14に備えられている中間転写ベルト141を挟んで感光体ドラム20とニップ部を形成する。更に、一次転写ローラー24は、感光体ドラム20上のトナー像を中間転写ベルト141上に一次転写する。クリーニング装置25は、トナー像転写後の感光体ドラム20の周面を清掃する。
【0028】
中間転写ユニット14は、画像形成部13とトナー補給部15との間に設けられた空間に配置され、中間転写ベルト141と、図略のユニットフレームにて回転可能に支持された駆動ローラー142と、従動ローラー143と、バックアップローラー146とを備える。中間転写ベルト141は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム20の周面にそれぞれ当接するように、駆動ローラー142及び従動ローラー143、146に架け渡されている。駆動ローラー142には
図3のモーター51から回転駆動力が与えられる。中間転写ベルト141は駆動ローラー142の回転により周回駆動される。従動ローラー143の近傍には、中間転写ベルト141の周面上に残存したトナーを除去するベルトクリーニング装置144が配置されている。
【0029】
駆動ローラー142に対向して、中間転写ベルト141の外側には、二次転写ローラー145(転写ローラー)が配置されている。二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141の周面に圧接されて、駆動ローラー142との間で転写ニップ部を形成している。中間転写ベルト141上に一次転写されたトナー像は、給紙部12から供給されるシートPに、転写ニップ部において二次転写される。また、駆動ローラー142には、その周面を清掃するためのロールクリーナー200が配置されている。なお、この中間転写ユニット14の駆動ローラー142および二次転写ローラー145については、後記で詳述する。
【0030】
トナー補給部15は、画像形成に用いられるトナーを貯留するものであり、本実施形態ではマゼンタ用トナーコンテナ15M、シアン用トナーコンテナ15C、イエロー用トナーコンテナ15Y及びブラック用トナーコンテナ15Bkを備える。これらトナーコンテナ15M、15C、15Y、15Bkは、それぞれM/C/Y/Bk各色の補給用トナーを貯留するものである。コンテナ底面に形成されたトナー排出口15Hから、M/C/Y/Bk各色に対応する画像形成ユニット13M、13C、13Y、13Bkの現像装置23にトナー搬送部30を通して各色のトナーが補給される。
【0031】
定着部16は、内部に加熱源を備えた加熱ローラー161と、加熱ローラー161に対向配置された定着ローラー162と、定着ローラー162と加熱ローラー161とに張架された定着ベルト163と、定着ベルト163を介して定着ローラー162と対向配置され定着ニップ部を形成する加圧ローラー164とを備えている。定着部16へ供給されたシートPは、前記定着ニップ部を通過することで、加熱加圧される。これにより、前記転写ニップ部でシートPに転写されたトナー像は、シートPに定着される。
【0032】
排紙部17は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹部の底部に排紙されたシートPを受ける排紙トレイ171が形成されている。定着処理が施されたシートPは、定着部16の上部から延設されたシート搬送路111を経由して、排紙トレイ151へ向けて排紙される。
【0033】
<駆動ローラー周辺の構成について>
次に、本実施形態に係る中間転写ユニット14(転写装置)のうち、駆動ローラー142および二次転写ローラー145(転写ローラー)の周辺の構成について、
図2および
図3を用いて、詳細に説明する。
図2は、中間転写ユニット14における、駆動ローラー142周辺の断面図である。
図3は、二次転写位置での作用を説明する図である。
【0034】
駆動ローラー142は、中間転写ベルト141を張架し、モーター51(駆動手段)によって矢印方向に回転駆動される。この際、駆動ローラー142の表面と、中間転写ベルト141の内面との間の摩擦力などによって、駆動ローラー142から中間転写ベルト141に回転力が伝達され、中間転写ベルト141が矢印方向に回転される(
図2)。なお、駆動ローラー142の下方であって、前記二次転写位置よりも中間転写ベルト141の回転方向上流側には、中間転写ベルト141を張架するバックアップローラー146が配設されている。バックアップローラー146は、転写ニップ部への中間転写ベルト141の進入角度を設定している。
【0035】
中間転写ベルト141は、無端状であって、基層、弾性層、及びコート層から成る積層構造を有する導電性の軟質ベルトである。基層は中間転写ベルト141の最下層(最内層)を構成するものである。基層には、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミド樹脂等が好適に用いられる。弾性層は、中間転写ベルト141に適度な弾性を付与する。弾性層の材質としては、例えばヒドリンゴムやクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム等が用いられる。また、コート層は、中間転写ベルト141の最上層(最外層)を構成し、感光体ドラム20(
図1)に接触する。コート層は弾性層を保護するものであり、材質としてはアクリル、シリコン、PTFEなどのフッ素樹脂等が用いられる。
【0036】
ここで、中間転写ベルト141に上記の弾性層を設けることで、転写ニップ部における中間転写ベルト141のシートPへの追従性が向上する。従って、シートPへのトナー画像の転写性が高くなり、シートPに二次転写されたトナー画像の画質が向上する。
【0037】
駆動ローラー142は、その断面方向に2層構造を有する(
図3)。駆動ローラー142の内層は、アルミニウム層142a(導電層)からなる。また、アルミニウム層142aの上層には、駆動ローラー142の表面層を構成するアルマイト層142b(絶縁層)が備えられている。本実施形態では、アルマイト層142bとして、アルミニウム層142aを陽極酸化したアルマイト皮膜が用いられている。該アルマイト層142bが、中間転写ベルト141の内周面と接触する状態で、中間転写ベルト141を内方から支持することで、駆動ローラー142から、中間転写ベルト141に回転駆動力が伝達される。
【0038】
アルマイト層142bを構成するアルマイト皮膜の形成方法としては、公知の皮膜形成方法を採用することができる。本実施形態では、アルミニウム管からなる素管が使用され、希硫酸を電解液にした陽極酸化法によってアルマイト皮膜が素管の表面に形成される。皮膜形成後、アルマイト皮膜の表面には、バリヤー層と無数の微細孔からなる多孔質皮膜が形成されている。この微細孔が開いたままでは、異物や腐食物質も吸収してしまうため、好ましくは、後処理として、封孔処理が施される。これにより、皮膜表面の微細孔が塞がれ、耐食性、耐候性、耐汚染性が向上する。本実施形態では、駆動ローラー142の直径が30mmに対し、厚さ7ミクロンのアルマイト層142bが形成されている。
【0039】
二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141を介して、駆動ローラー142に対向配置され、転写ニップ部を形成する。二次転写ローラー145は、たとえばエピクロルヒドリンなどの弾性材料からなり、不図示の軸部を介して、転写バイアス電源50(バイアス印加手段)(
図3)から、転写バイアスが印加される。この際、駆動ローラー142のアルミニウム層142aは接地されている。従って、二次転写ローラー145に印加された転写バイアスによって、二次転写ローラー145、シートP、中間転写ベルト141、駆動ローラー142の順に電流が流れ、転写電界が形成される。この転写電界によって、感光体ドラム20から中間転写ベルト141上に転写された現像剤像が、転写ニップ部に搬送されるシートPに二次転写される。
【0040】
<異物付着による転写不良について>
次に、
図3を用いて、転写ニップ部で生じる白抜け現象について説明する。本実施形態では、前述のとおり、駆動ローラー142の表面層に、ゴム材などの弾性材料が採用されていない。すなわち、駆動ローラー142の内層はアルミニウム層142a(導電層)から構成され、該アルミニウム層142aの上層には、アルマイト層142b(絶縁層)が備えられている。このため、転写ニップ部において、駆動ローラー142のアルマイト層142bの表面と、中間転写ベルト141の裏面との間に、異物Fが混入した場合、
図3に示すように、弾性層を有する中間転写ベルト141のほうが変形しやすい。
【0041】
この場合、異物Fと、その周辺で変形した中間転写ベルト141との間には、空隙Sが生じる。空隙Sは、駆動ローラー142がモーター51によって回転され、中間転写ベルト141の回転に伴って、転写ニップ部まで移動される。空隙Sは、転写ニップ部において、中間転写ベルト141からシートPにトナー画像が二次転写される際に、印加される転写電流の流れを部分的に阻害する。この結果、空隙S(異物F)の位置に対応して、トナー画像の転写が妨げられてしまい、シート上のトナー画像には、トナーが欠落し、白く抜けて見える白抜けWSが発生する。(なお、二次転写ローラー145の中間層にゴム材料などの弾性材料が用いられた場合であっても、その表層に該ゴム材料よりも硬い材料で絶縁層を構成した結果、中間転写ベルト141の方が変形しやすければ、同じ現象が起こりうる。)。
【0042】
<アルマイト層142bによる静電吸着効果について>
更に、本実施形態では、駆動ローラー142の表面に形成されたアルマイト層142bによって、転写ニップ部に、静電吸着力がもたらされる。
図3において、転写バイアス電源50によって、中間転写ベルト141から駆動ローラー142側に転写電流が流入されるにあたり、アルマイト層142bの厚さ方向で電荷が一時的に保持され、電位差が生まれる。このアルマイト層142bを所定の静電容量を有した空隙Tと考えると、アルマイト層142bの表面には下記の静電吸着力がもたらされる。
静電吸着力 fq=Cg×Vg2/(2×Tg)
(Cg:空隙Tの静電容量=アルマイト層142bの静電容量、Tg:空隙Tの間隔=アルマイト層142bの厚さ、Vg:空隙T、すなわちアルマイト層142bの厚さ方向に生じる電位差)。
【0043】
上記のように、静電吸着力は、アルマイト層142bの厚さ方向に生じる電位差の2乗に比例する。この静電付着力は、駆動ローラー142と中間転写ベルト141との密着性を増大させ、両者の間のグリップ力を強化させる。従って、ゴム材料などに比べて、変形しにくい金属材料からなる駆動ローラー142であっても、中間転写ベルト141への駆動伝達力が安定して維持されることが可能となる。
【0044】
一方で、このアルマイト層142bによる静電吸着力を伴った場合、前述のように、異物Fが介在し、空隙がもたらされると、空隙の周辺の駆動ローラー142と中間転写ベルト141との密着性が増す分、転写ニップ部で生じる白抜けが目立ちやすくなってしまう。
【0045】
<駆動ローラー142の支持構成とロールクリーナーについて>
上記の白抜けに関する課題を解決するために、本実施形態では、駆動ローラー142の表面から異物Fを取り除くために、ロールクリーナー200が配設されている。
図4は、駆動ローラー142とロールクリーナー200との位置関係を示しており、
図4(a)は、
図2の右側から見た側面図であり、
図4(b)は、
図2の左側から見た側面図である。また、
図5は、中間転写ユニット14において、駆動ローラー142周辺を下方から見た図である。
【0046】
駆動ローラー142は、その両端が支持プレート30によって回転可能に支持されている。支持プレート30は、駆動ローラー142の両端側に配置される側壁部30a、30bと、駆動ローラー142の回転軸方向に亘って配置され、側壁部30a、30bを互いに連接させるブレードホルダ30c(支持部)とから構成される。側壁部30a、30bは、それぞれU字型の軸受部301a、301bを有する(
図2参照)。駆動ローラー142の軸部142c、142dはそれぞれ軸受部材142e、142fを介して中間転写ユニット14のフレーム14a、14bに保持され、駆動ローラー142が回転可能に支持される。また、軸受部材142e、142fの一端はフレーム14a、14b(
図5)の内側面から突出しており、突出部が軸受部301a、301bに挿通され、支持プレート30が支持される。また、軸受部材142e、142fを駆動ローラー142の軸部142c、142dと当接する軸受部に構成してもよい。
【0047】
側壁部30a、30bを互いに連接させるブレードホルダ30cは、駆動ローラー142の表面を清掃するためのロールクリーナー200の一部を構成する。ブレードホルダ30cは、断面視でL字形状を有する板状部材からなる。ブレードホルダ30cは、駆動ローラー142の表面に接触して付着した異物を掻き取る板状のブレード201(清掃部材)を、駆動ローラー142の回転軸方向に沿って、固定支持している。ブレードホルダ30cが所定の角度をもって、駆動ローラー142に対向配置されることで、ブレード201は弾性変形しながら、その先端が駆動ローラー142の周面に当接する。この際、ブレード201は、駆動ローラー142に対してカウンタ方向で当接している。
【0048】
更に、支持プレート30には、側壁部30a、30bよりも外側に、突出する回り止め部302a、302bが配設されている。回り止め部302a、302bは、中間転写ユニット14を構成するフレーム14a、14b(
図5)の内周面に配設された溝部147に挿通されている。これにより、中間転写ベルト141の周回駆動時に、支持プレート30が共回りせず、姿勢が維持される。
【0049】
上記のように、駆動ローラー142の軸受部材142e、142fに支持される軸受け部301a、301bと、ブレード201を支持するブレードホルダ30cとが、いずれも支持プレート30に一体的に配設されている。駆動ローラー142の軸部142c、142dに対して、軸受け部301a、301bが位置決めされ、ブレードホルダ30cの位置が決定される。ブレードホルダ30cにはブレード201が固定支持されているため、最終的に、ブレード201と駆動ローラー142との位置関係が、支持プレート30によって決定されることとなる。このため、駆動ローラー142が中間転写ベルト141に回転力を付与するにあたり、その位置が多少変動しても、ブレード201の先端は、駆動ローラー142の周面に追従して移動することができる。従って、ブレード201による駆動ローラー142の表面の清掃が安定的に実現される。
【0050】
また、L字形状を有する板状のブレードホルダ30cは、L字を形成する屈曲部が鉛直下方に向けられ、該屈曲部によって形成される窪み部分30dが鉛直上方に向くように配設されている(
図2)。したがって、ブレード201によって、駆動ローラー142の周面から掻き取られた異物は、ブレード201およびブレードホルダ30cの背面部に沿って下方に移動し、該窪み部分30dに収容される。
【0051】
ここで、駆動ローラー142の周面から回収した異物は、バックアップローラー146の周辺に落下すると、バックアップローラー146の周面と中間転写ベルト141の裏面との間に入り込んでしまう。この場合、バックアップローラー146の周面や中間転写ベルト141の裏面に傷が生じる恐れがある。また、落下した異物が、中間転写ベルト141の回転に伴って、再び駆動ローラー142の周面に付着した場合、白抜けなどの画像欠陥を引き起こす可能性がある。このため、本実施形態では、駆動ローラー142および該駆動ローラー142に当接するロールクリーナー200が、バックアップローラー146の上方を覆うように配設されている。このため、駆動ローラー142から掻き取り、回収した異物が、バックアップローラー146に向かって落下することが防止される。
【0052】
<クリーニングモードについて>
更に、本実施形態では、中間転写ユニット14(転写装置)は、画像形成時とは別に、駆動ローラー142の表面を積極的に清掃するクリーニングモードを有する。中間転写ユニット14には、転写バイアス電源50と、モーター51とを制御する制御部52が備えられている(
図3)。制御部52は、画像形成動作時とは別のタイミングで該クリーニングモードを実行する。制御部52は、クリーニングモードにおいて、転写ニップ部に転写バイアスが印加されないよう転写バイアス電源50を制御した上で、モーター51を制御し、駆動ローラー142を回転駆動させる。この際、転写バイアスが印加されないことで、駆動ローラー142の表面には前述の静電吸着力が働いていない。このため、駆動ローラー142の表面に付着した異物Fは駆動ローラー142の表面から剥がれやすい状態となる。従って、駆動ローラー142の回転に伴って、ロールクリーナー200のブレード201が、駆動ローラー142の表面に付着した異物Fを効果的に清掃することが可能となる。
【0053】
なお、このクリーニングモードが実行される場合、中間転写ベルト141の表面側(トナー画像が形成される側)にトナーが付着していると、転写バイアスが印加されていないため、該トナーが二次転写ローラー145に付着する恐れがある。したがって、本クリーニングモードでは、制御部52によって、駆動ローラー142の清掃工程(転写バイアスオフ)が実行された後、二次転写ローラー145の清掃工程が実行されることが好ましい。この二次転写ローラー145の清掃工程では、制御部52は、不図示の駆動手段によって二次転写ローラー145を周回駆動させ、当接するクリーナー(不図示)で二次転写ローラー145の表面を清掃させる。あるいは、制御部52は、二次転写ローラー145を周回駆動させ、転写バイアス電源50を制御し、二次転写ローラー145に通常の転写バイアスとは逆極性の逆バイアスを印加させて、付着したトナーを中間転写ベルト141側に戻すように制御しても良い。また、制御部52がクリーニングモードを実行するタイミングは、画像形成動作が開始される前や、画像形成動作が終了した後などが好適である。
【0054】
以上のように、本実施形態では、駆動ローラー142の表面にアルマイト層142bが設けられている。このアルマイト層142bは、駆動ローラー142と中間転写ベルト141との間に、転写バイアスが印加された場合、静電付着力を発生させる。この静電付着力は、駆動ローラー142と中間転写ベルト141との密着性を増大させ、この結果、両者の間のグリップ力が増す。従って、ゴム材料などに比べて、変形しにくい金属材料からなる駆動ローラー142であっても、中間転写ベルト141への駆動伝達力が安定して維持される。
【0055】
更に、アルマイト層142bは、転写バイアスが印加されない場合、駆動ローラー142と中間転写ベルト141との間に静電付着力を発生させない。このため、転写バイアスがオフされた状態で実行されるクリーニングモードは、ロールクリーナー200による駆動ローラー142の表面に付着した異物Fの回収性を向上させることが可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態に係る転写装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0057】
(1)上記の実施形態では、駆動ローラー142の層構造として、導電層にアルミニウム層142a、また絶縁層にアルマイト層142bがそれぞれ採用された場合で説明したが、これに限られるものではない。駆動ローラー142が安定的に回転駆動力を中間転写ベルト141に伝達するために、駆動ローラー142の内層が金属材料などの導電層を有し、その表面に絶縁層が備えられる構成であれば、他の材料であっても採用されることができる。なお、導電層と絶縁層との密着性を良好に保つためには、上記アルマイト皮膜に代表されるように化学反応を伴った皮膜形成が好適である。
【0058】
(2)上記の実施形態では、駆動ローラー142を支持する軸受け部301a、301bと、ブレード201を支持するブレードホルダ30cとが、いずれも支持プレート30に一体的に配設されている構成を用いて説明したが、支持プレート30はこの構成に限られるものではない。たとえば、支持プレート30は、駆動ローラー142の軸受け機能を有さない構成であってもよい。すなわち、支持プレート30の側壁部30a、30bは、それぞれU字型の切り欠き部に配設された軸受部301a、301bを有さず、駆動ローラー142の軸部142c、142dに突き当たり、位置きめ機能のみを有する構成であってもよい。この場合であっても、ブレード201を支持するブレードホルダ30cは、側壁部30a、30bを介して、駆動ローラー142の軸部142c、142dとの間で互いの位置関係が保持される。従って、ブレード201の先端と、駆動ローラー142の周面との位置関係が維持され、安定した清掃機能が実現される。
【実施例】
【0059】
次に、上記の実施形態に係る中間転写ユニット14(転写装置)を備えた画像形成装置において、転写位置で発生する白抜け画像(画質欠陥)が効果的に改善した実施例について説明する。
【0060】
なお、実施例及び比較例においては以下の諸元及び条件で画出しを行った。
<装置条件>
・画像形成装置:京セラミタ製 TASKalfa 255C
・駆動ローラー142:
材質:アルミ管(アルミニウム層142b)に、アルマイト層142aを厚さ7ミクロン備えたもの。アルマイト層の誘電率は8〜10。
外径:30mm。
アルマイト層142bの抵抗値:12.0LogΩ・cm。
・ブレード:シート部材 材料:PET FILM、厚さ:0.1mm
・二次転写ローラー145:
材質:エピクロルヒドリン。
外径:20mm。
抵抗値:1E+7(Ω:1000V印加時)
・中間転写ベルト141:
基層:PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、厚さ150ミクロン
弾性層:CRゴム、厚さ250ミクロン
コート層:PTFE、厚さ5ミクロン
全体の厚み:405ミクロン。
回転周速度:150mm/sec
付与張力:20N
上記の条件で実施した比較例および実施例の結果を以下に示す。
<比較例>ロールクリーナー200を備えない構成。
(結果)30000枚の印刷後、中間転写ベルト141と駆動ローラー142との間に空隙を生じ、白抜け画像が発生。
<実施例1>ロールクリーナー200を備える構成。
(結果)200000枚の印刷後、微かな白抜け画像が発生したが、目視上は問題ないレベル。
<実施例2>ロールクリーナー200を備え、定期的にクリーニングモード(転写バイアスオフ条件での清掃)を実施した場合。
(結果)200000枚の印刷後、全く白抜け画像が発生せず。
【0061】
以上の結果から、実施例1および2では、アルマイト層142bおよびロールクリーナー200を備えることで、転写位置に異物が介在せず、白抜け画像が良好な結果となった。また、転写バイアスを印加しない状態で、駆動ローラー142の清掃を行うクリーニングモードを備えた実施例2では、更に異物の清掃、回収が促進され、白抜け画像が確認されない状態を維持することができた。