特許第5776523号(P5776523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5776523アミノ酸含有化合物を含有する水溶液、並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776523
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】アミノ酸含有化合物を含有する水溶液、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20150820BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20150820BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C07F7/18 MCSP
   C07F7/10 X
   C09K3/00 R
   C07F7/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-265411(P2011-265411)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-116872(P2013-116872A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2013年12月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 透
(72)【発明者】
【氏名】本間 孝之
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−059424(JP,A)
【文献】 特開平06−207019(JP,A)
【文献】 特開昭57−175723(JP,A)
【文献】 特開昭52−003023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
1SiR2n(OH)3-n (1)
(式中、R1は下記一般式(
【化1】
式中、R6、R7及びR8は水素原子又は炭素数1〜20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、aは1〜10の整数である。)
で示されるβ−アミノ酸含有基であり、R2は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示される化合物と、下記一般式(2)
1SiR2n(OH)m(3-m-n)/2 (2)
(式中、R1及びR2は前記の通りであり、mは0≦m<3の範囲の値、nは0〜2の整数であり、m+n<3である。)
で示される化合物を含有し、アルコールの含有量が10質量%未満である水溶液。
【請求項2】
下記一般式(3)
1SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1前記の通りであり、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示されるアルコキシシラン化合物を水と混合して加水分解した後、生成するアルコールを除去することにより得られる請求項1記載の水溶液。
【請求項3】
下記一般式(3)
1SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1は下記一般式(
【化2】
式中、R6、R7及びR8は水素原子又は炭素数1〜20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、aは1〜10の整数である。)
で示されるβ−アミノ酸含有基であり、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示されるアルコキシシラン化合物を水と混合して加水分解した後、生成するアルコールを除去することを特徴とする下記一般式(1)
1SiR2n(OH)3-n (1)
(式中、R1及びR2は前記の通りであり、nは0〜2の整数である。)
で示される化合物と、下記一般式(2)
1SiR2n(OH)m(3-m-n)/2 (2)
(式中、R1及びR2は前記の通りであり、mは0≦m<3の範囲の値、nは0〜2の整数であり、m+n<3である。)
で示される化合物を含有し、アルコールの含有量が10質量%未満である水溶液の製造方法。
【請求項4】
ケイ素1モルに対して、水1.5〜50倍モルである請求項3記載の水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミノ酸含有化合物含有する水溶液、並びにその製造方法に関する。この水溶液は、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤等として有用である。
【背景技術】
【0002】
基板などの表面を親水化することができる表面処理剤、繊維などに親水性を付与する繊維処理剤などとしてはアミノ基を有するシラン化合物が知られており、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0003】
更に、上記アミノ基を有するシラン化合物に関しては、使用者の安全、環境保全の観点から、使用時にメタノールやエタノール等の揮発性のアルコールが発生しないシラン化合物が提案されており、例えば、特開平4−342746号公報(特許文献1)記載の1級アミノ基含有シラノール水溶液、特開2008−111023号公報(特許文献2)記載の3級アミノ基含有シラノール化合物及びシラノール縮合体を含む水溶液が挙げられる。これらの水溶液は使用時に使用者の安全、環境保全の点で問題となる揮発性のアルコールが発生しないだけでなく、保存安定性が良好で、通常のアルコキシシラン化合物の水溶液でみられる、経時でのゲル化が進行しないとの記載がある。
【0004】
また、表面を親水化でき且つ防汚性、抗菌性を付与できる化合物としては、例えば、特表昭63−500991号公報(特許文献3)記載の3−(トリメトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド等のテトラアルキルアンモニウム基を有するシラン化合物、特開平5−222064号公報(特許文献4)、国際公開第1995/10523号パンフレット(特許文献5)記載のスルホベタイン基含有シラン化合物や4級アンモニウム基とカルボキシル基含有シラン化合物が挙げられる。
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載のアミノ基を有するシラン化合物やシラノール水溶液は、親水性を付与することはできるものの、表面の防汚性、抗菌性の付与に関しては効果が少ない。また、特許文献3に記載の3−(トリメトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド等のテトラアルキルアンモニウム基を有するシラン化合物では、抗菌性は付与できるものの、基板や繊維の処理後の表面がテトラアルキルアンモニウム基により正電荷を帯びるため、帯電による表面への吸着作用により埃等の汚れが吸着し、十分な防汚性は得られない。また、特許文献4及び5記載のスルホベタイン基含有シラン化合物、特許文献5記載のテトラアルキルアンモニウム基とカルボキシル基含有シラン化合物では、分子内で双性イオンを形成しており、基板や繊維の処理後の表面の帯電はテトラアルキルアンモニウム基を有するシラン化合物を用いた場合と比較して少なくなっている。しかしながら、スルホベタイン基含有シラン化合物は、強酸性であるスルホン酸基による負電荷側への偏り、テトラアルキルアンモニウム基とカルボキシル基含有シラン化合物では、テトラアルキルアンモニウム基による正電荷側への偏りがみられる。そのため電気的に中性とはならず、十分な防汚性が得られなかった。更に、特許文献3記載の3−(トリメトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド等のテトラアルキルアンモニウム基を有するシラン化合物、特許文献4及び特許文献5記載のスルホベタイン基含有シラン化合物や4級アンモニウム基とカルボキシル基含有シラン化合物を使用する際には、通常水に溶解して使用するが、その際アルコキシシリル基の加水分解縮合反応によりメタノールやエタノール等の揮発性アルコールが生成し、使用者の安全、環境保全の点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−342746号公報
【特許文献2】特開2008−111023号公報
【特許文献3】特表昭63−500991号公報
【特許文献4】特開平5−222064号公報
【特許文献5】国際公開第1995/10523号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、充分な防汚性、親水性を付与することができ、且つ使用時に使用者の安全、環境保全の点で問題となるアルコールが発生しない化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記の特定のアミノ酸含有化合物含有する水溶液が、使用時に使用者の安全、環境保全の点で問題となるアルコールが発生せず、更に保存安定性が良好であり、且つ使用した時に表面が弱酸性のアミノ基と弱塩基性のカルボキシル基により電荷が相殺され電気的に中性となるため、帯電による表面への吸着作用が著しく減少し、親水性、防汚性に優れることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記に示すアミノ酸含有化合物を含有する水溶液、並びにその製造方法を提供する。
[1] 下記一般式(1)
1SiR2n(OH)3-n (1)
(式中、R1は下記一般式(
【化1】
式中、R6、R7及びR8は水素原子又は炭素数1〜20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、aは1〜10の整数である。)
で示されるβ−アミノ酸含有基であり、R2は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示される化合物と、下記一般式(2)
1SiR2n(OH)m(3-m-n)/2 (2)
(式中、R1及びR2は前記の通りであり、mは0≦m<3の範囲の値、nは0〜2の整数であり、m+n<3である。)
で示される化合物を含有し、アルコールの含有量が10質量%未満である水溶液。
[2] 下記一般式(3)
1SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1前記の通りであり、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示されるアルコキシシラン化合物を水と混合して加水分解した後、生成するアルコールを除去することにより得られる[1]記載の水溶液。
[3] 下記一般式(3)
1SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1は下記一般式(
【化2】
式中、R6、R7及びR8は水素原子又は炭素数1〜20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、aは1〜10の整数である。)
で示されるβ−アミノ酸含有基であり、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示されるアルコキシシラン化合物を水と混合して加水分解した後、生成するアルコールを除去することを特徴とする下記一般式(1)
1SiR2n(OH)3-n (1)
(式中、R1及びR2は前記の通りであり、nは0〜2の整数である。)
で示される化合物と、下記一般式(2)
1SiR2n(OH)m(3-m-n)/2 (2)
(式中、R1及びR2は前記の通りであり、mは0≦m<3の範囲の値、nは0〜2の整数であり、m+n<3である。)
で示される化合物を含有し、アルコールの含有量が10質量%未満である水溶液の製造方法。
[4] ケイ素1モルに対して、水1.5〜50倍モルである[3]記載の水溶液の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により提供される上記アミノ酸含有化合物含有する水溶液は、使用時に使用者の安全、環境保全の点で問題となるアルコールが発生せず、更に保存安定性が良好であり、且つ表面処理剤や繊維処理剤として使用した時に、表面が弱酸性のアミノ基と弱塩基性のカルボキシル基により電荷が相殺され電気的に中性となるため、帯電による表面への吸着作用が著しく減少し、親水性、防汚性に優れるため、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の水溶液を重水溶液にて測定した1H−NMRスペクトルである。
図2】実施例1の水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルである。
図3】実施例1の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルである。
図4】実施例2の水溶液を重水溶液にて測定した1H−NMRスペクトルである。
図5】実施例2の水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルである。
図6】実施例2の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルである。
図7】実施例3の水溶液を重水溶液にて測定した1H−NMRスペクトルである。
図8】実施例3の水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルである。
図9】実施例3の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアミノ酸含有化合物を含む水溶液は、水溶液中に下記一般式(1)
1SiR2n(OH)3-n (1)
(式中、R1はカルボキシル基を有すると共にアミノ基が介在する炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基、R2は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示される化合物(以下、シラノール化合物又はアミノ酸変性シラノール化合物という場合がある。)と、下記一般式(2)
1SiR2n(OH)m(3-m-n)/2 (2)
(式中、R1はカルボキシル基を有すると共にアミノ基が介在する炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基、R2は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、mは0≦m<3の範囲の値、nは0〜2の整数であり、m+n<3である。)
で示される化合物(以下、シラノール縮合体という場合がある。)を含有するものである。
【0013】
シラノール化合物のケイ素の割合は、シラノール化合物とシラノール縮合体の合計のケイ素に対し0.1〜99.5モル%、特に0.5〜95モル%が好ましい。
【0014】
上記アミノ酸変性シラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液は、下記一般式(3)
1SiR2n(OR33-n (3)
(式中、R1はカルボキシル基を有すると共にアミノ基が介在する炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基、R2及びR3は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。)
で示されるアルコキシシラン化合物を水と混合し加水分解を行うことにより得ることができる。必要に応じて常圧又は減圧下にて生成するアルコールを除去、濃縮、水で希釈してもよい。
【0015】
上記一般式(3)中、R1のカルボキシル基を有すると共にアミノ基が介在する炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基としては、好ましくは下記一般式(4)
【化5】
(式中、R4は水素原子又は炭素数1〜20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基、R5は水素原子又は炭素数1〜20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、aは1〜10の整数である。)
で示されるα−アミノ酸含有基、下記一般式(5)
【化6】
(式中、R6、R7及びR8は水素原子又は炭素数1〜20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、aは1〜10の整数である。)
で示されるβ−アミノ酸含有基である。
【0016】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、テキシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示され、特にメチル基、エチル基が好ましい。また、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基、エステル基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0017】
上記一般式(4)で示されるα−アミノ酸含有基としては、具体的には、N−(ヒドロキシカルボニル)メチルアミノメチル基、N−(ヒドロキシカルボニル)メチル−3−アミノプロピル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチルアミノメチル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチル−3−アミノプロピル基、N−(ヒドロキシカルボニル)メチル−N−メチルアミノメチル基、N−(ヒドロキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノプロピル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチル−N−メチルアミノメチル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチル−N−メチル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−メチルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−メチル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチル−N−メチルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチル−N−メチル−3−アミノプロピル基、N−(ヒドロキシカルボニル)メチル−N−エチルアミノメチル基、N−(ヒドロキシカルボニル)メチル−N−エチル−3−アミノプロピル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチル−N−エチルアミノメチル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチル−N−エチル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−エチルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−エチル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチル−N−エチルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチル−N−エチル−3−アミノプロピル基、N−(ヒドロキシカルボニル)メチル−N−フェニルアミノメチル基、N−(ヒドロキシカルボニル)メチル−N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチル−N−フェニルアミノメチル基、N−(1,2−ビスヒドロキシカルボニル)エチル−N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−フェニルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチル−N−フェニルアミノメチル基、N−(1−ヒドロキシカルボニル−1−フェニル)メチル−N−フェニル−3−アミノプロピル基等が例示される。
【0018】
上記一般式(5)で示されるβ−アミノ酸含有基としては、具体的には、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチル−3−アミノプロピル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−メチルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−メチル−3−アミノプロピル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−メチルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−メチル−3−アミノプロピル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−エチルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−エチル−3−アミノプロピル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−エチルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−エチル−3−アミノプロピル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−フェニルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−フェニルアミノメチル基、N−(2−ヒドロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−フェニル−3−アミノプロピル基等が例示される。
【0019】
上記アミノ基とカルボキシル基を有するシラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液の製造方法は、具体的には上記一般式(3)で示されるアルコキシシラン化合物を水と混合し、必要に応じて常圧又は減圧下にて生成するアルコールを除去、濃縮、水で希釈するものである。
【0020】
水との混合方法は、例えば上記一般式(3)で示されるアルコキシシラン化合物を水に添加する方法又は上記一般式(3)で示される化合物に水を添加する方法等が例示される。
【0021】
上記混合の際に用いる水は、上記一般式(3)で示されるアルコキシシラン1モルに対し1.5〜10,000モル、好ましくは1.5〜50モルである。
【0022】
上記混合時の温度、圧力は特に限定されないが、常圧で0〜120℃、特に10〜60℃が好ましく、反応時間も特に限定されないが、1〜40時間、特に1〜20時間が好ましい。
【0023】
また、触媒は特に必要としないが、塩酸、硫酸、酢酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基を加えてもよい。
【0024】
混合時、必要に応じて水以外の溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
生成したアルコールの除去は、圧力、温度を問わないが、常圧若しくは減圧下で除去するとよい。アルコールの残量は少ないほどよいが、水1.5〜50倍モル用いた場合、少なくとも10質量%未満、特に5質量%未満が好ましい。
【0026】
なお、このようにして得られた水溶液は、必要により濃縮又は希釈して用いることができる。濃縮することにより、水が減り、水を増やす方向に平衡がずれるため、シラノール縮合体濃度がより高くなり、希釈することにより、水が増え、水を減らす方向に平衡がずれるため、シラノール濃度がより高くなることから、用途に応じて濃度を調整することができる。本水溶液中のシラノール化合物及びそのシラノール縮合体濃度は0.1〜99.9質量%、特に0.5〜99.9質量%とすることが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、合成例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0028】
[合成例1]N−(3−トリメトキシシリルプロピル)β−アラニンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン122.3g(0.3モル)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、メタノール10.6g(0.33モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で6時間撹拌した。生成した固体を濾取、その後ヘキサン200mLで洗浄し、真空下乾燥を行い、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)β−アラニンを白色固体として50.4g得た。
【0029】
[実施例1]N−(3−トリメトキシシリルプロピル)β−アラニンからのシラノール及びシラノール縮合体水溶液の調製
撹拌機、還流器、ディーンスターク及び温度計を備えたフラスコに、合成例1で得られたN−(3−トリメトキシシリルプロピル)β−アラニン10g、水40gを仕込み、60℃で2時間撹拌した後、60℃、10kPaの圧力で生成したメタノールをゆっくりと留去した。得られた水溶液に不揮発分が33%となるように水を加え濃度を調製することで、透明な水溶液を22.0g得た。得られた水溶液の1H−NMRスペクトルを図1に、29Si−NMRスペクトルを図2にチャートで示す。
以上の結果より、得られた水溶液はN−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピルトリシラノール及びシラノール縮合体水溶液であることが確認され、29Si−NMRスペクトルより、全ケイ素中のトリシラノールは2.2モル%、シラノール縮合体は97.8モル%であることが明らかとなった。また、ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、残留メタノールは0.2質量%であった。
上記水溶液を水で25倍に希釈した液を調製したが、こちらも透明であった。25倍希釈水溶液の29Si−NMRスペクトルを図3にチャートで示す。29Si−NMRスペクトルより、25倍希釈水溶液の全ケイ素中のトリシラノールは42.1モル%、シラノール縮合体は57.9モル%であることが明らかとなった。また、本水溶液並びに本水溶液を25倍に希釈した水溶液はいずれも室温で1ヶ月放置してもゲル状化合物は発生せず、安定に保存することができた。
【0030】
[合成例2]N−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)β−アラニンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン117.5g(0.3モル)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、メタノール10.6g(0.33モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で6時間撹拌した。生成した固体を濾取、その後ヘキサン200mLで洗浄し、真空下乾燥を行い、N−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)β−アラニンを白色固体として68.8g得た。
【0031】
[実施例2]N−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)β−アラニンからのシラノール及びシラノール縮合体水溶液の調製
撹拌機、還流器、ディーンスターク及び温度計を備えたフラスコに、合成例2で得られたN−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)β−アラニン10g、水40gを仕込み、60℃で2時間撹拌した後、60℃、10kPaの圧力で生成したメタノールをゆっくりと留去した。得られた水溶液に不揮発分が33%となるように水を加え濃度を調製することで、透明な水溶液を24.3g得た。得られた水溶液の1H−NMRスペクトルを図4に、29Si−NMRスペクトルを図5にチャートで示す。
以上の結果より、得られた水溶液はN−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピルメチルジシラノール及びシラノール縮合体水溶液であることが確認され、29Si−NMRスペクトルより、全ケイ素中のジシラノールは12.2モル%、シラノール縮合体は87.8モル%であることが明らかとなった。また、ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、残留メタノールは0.2質量%であった。
上記水溶液を水で25倍に希釈した液を調製したが、こちらも透明であった。25倍希釈水溶液の29Si−NMRスペクトルを図6にチャートで示す。29Si−NMRスペクトルより、25倍希釈水溶液の全ケイ素中のジシラノールは70.5モル%、シラノール縮合体は29.5モル%であることが明らかとなった。また、本水溶液並びに本水溶液を25倍に希釈した水溶液はいずれも室温で1ヶ月放置してもゲル状化合物は発生せず、安定に保存することができた。
【0032】
[合成例3]N−(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)β−アラニンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン75.2g(0.2モル)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、メタノール7.0g(0.22モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で6時間撹拌した。生成した固体を濾取、その後ヘキサン150mLで洗浄し、真空下乾燥を行い、N−(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)β−アラニンを白色固体として37.6g得た。
【0033】
[実施例3]N−(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)β−アラニンからのシラノール及びシラノール縮合体水溶液の調製
撹拌機、還流器、ディーンスターク及び温度計を備えたフラスコに、合成例3で得られたN−(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)β−アラニン10g、水40gを仕込み、60℃で2時間撹拌した後、60℃、10kPaの圧力で生成したメタノールをゆっくりと留去した。得られた水溶液に不揮発分が33%となるように水を加え濃度を調製することで、透明な水溶液を27.1g得た。得られた水溶液の1H−NMRスペクトルを図7に、29Si−NMRスペクトルを図8にチャートで示す。
以上の結果より、得られた水溶液はN−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−3−アミノプロピルジメチルシラノール及びシラノール縮合体水溶液であることが確認され、29Si−NMRスペクトルより、全ケイ素中のシラノールは58.9モル%、シラノール縮合体は41.1モル%であることが明らかとなった。また、ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、残留メタノールは0.3質量%であった。
上記水溶液を水で25倍に希釈した液を調製したが、こちらも透明であった。25倍希釈水溶液の29Si−NMRスペクトルを図9にチャートで示す。29Si−NMRスペクトルより、25倍希釈水溶液の全ケイ素中のシラノールは91.5モル%、シラノール縮合体は8.5モル%であることが明らかとなった。また、本水溶液並びに本水溶液を25倍に希釈した水溶液はいずれも室温で1ヶ月放置してもゲル状化合物は発生せず、安定に保存することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9