特許第5779168号(P5779168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5779168周縁部塗布装置、周縁部塗布方法及び周縁部塗布用記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779168
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】周縁部塗布装置、周縁部塗布方法及び周縁部塗布用記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150827BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20150827BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   H01L21/30 564C
   H01L21/30 564D
   B05C11/08
   B05D1/40 A
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-265395(P2012-265395)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-110386(P2014-110386A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好友
(72)【発明者】
【氏名】田代 和之
(72)【発明者】
【氏名】木下 尚文
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−059823(JP,A)
【文献】 特開2006−159011(JP,A)
【文献】 特開平09−260277(JP,A)
【文献】 特開平10−256128(JP,A)
【文献】 特開平11−186138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/16
B05C 11/08
B05D 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部に塗布液を塗布する周縁部塗布装置であって、
前記基板を水平に保持して回転させる回転保持部と、
前記基板の上方に位置して下方に前記塗布液を吐出する塗布液ノズルを有し、前記基板の表面に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記塗布液ノズルを水平方向に移動させる水平移送部と、
前記回転保持部、前記塗布液供給部及び前記水平移送部を制御する塗布制御部と、を備え、
前記塗布制御部は、
前記回転保持部を制御して前記基板を回転させると共に、前記塗布液供給部を制御して前記塗布液ノズルから前記塗布液を吐出させながら、前記水平移送部を制御して前記塗布液ノズルを前記基板の周縁の外側から前記基板の周縁部上に移動させるスキャンイン制御と、
前記回転保持部を制御して前記基板を回転させると共に、前記塗布液供給部を制御して前記塗布液ノズルから前記塗布液を吐出させながら、前記水平移送部を制御して前記塗布液ノズルを前記基板の周縁部上から前記基板の周縁の外側に移動させるスキャンアウト制御とを行い、
前記スキャンアウト制御を行うときに、前記塗布液が前記基板の周縁側に移動する速度に比べ低い速度で前記塗布液ノズルを移動させる、周縁部塗布装置。
【請求項2】
前記塗布制御部は、前記スキャンアウト制御を行うときに、前記スキャンイン制御を行うときに比べ低い速度で前記塗布液ノズルを移動させる、請求項1記載の周縁部塗布装置。
【請求項3】
前記塗布制御部は、前記スキャンアウト制御を行うときに、前記基板の周縁の半径と、1秒当たりの前記基板の回転数の2乗との積に対して、0.004%以下の秒速で前記塗布液ノズルを移動させる、請求項1又は2記載の周縁部塗布装置。
【請求項4】
前記塗布制御部は、前記スキャンアウト制御を行うときに、4mm/s以下の速度で前記塗布液ノズルを移動させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項5】
前記塗布制御部は、前記スキャンアウト制御を行うときに、前記スキャンイン制御を行うときに比べ高い回転数で前記基板を回転させる、請求項1〜4のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項6】
前記塗布液の粘度が3〜100cPである、請求項1〜5のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項7】
前記塗布液ノズルの内径が0.4〜0.8mmである、請求項1〜6のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項8】
前記基板の周縁部上で前記塗布液ノズルが前記塗布液を吐出する方向は、前記基板の回転中心の逆側に向かうように傾斜している、請求項1〜7のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項9】
前記基板の周縁部上で前記塗布液ノズルが前記塗布液を吐出する方向は、水平面に対し15〜90°の傾斜角で傾斜している、請求項8記載の周縁部塗布装置。
【請求項10】
前記塗布液ノズルに対し前記基板の回転中心側に隣接して下方にガスを吐出するガスノズルを有し、前記基板の表面にガスを吹き付けるガス吹付部を更に備え、
前記水平移送部は、前記塗布液ノズルと共に前記ガスノズルを水平方向に移動させ、
前記塗布制御部は、前記スキャンアウト制御を行うときに前記ガス吹付部を制御し、前記ガスノズルからガスを吐出させる、請求項1〜9のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項11】
前記塗布制御部は、前記スキャンアウト制御を行うときに、前記塗布液ノズルが基板の周縁側に移動するのに応じて前記塗布液の吐出圧力を高くするように、前記塗布液供給部を制御する、請求項1〜10のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項12】
前記塗布制御部は、前記スキャンアウト制御を行うときに、前記塗布液ノズルが基板の周縁側に移動するのに応じて前記塗布液ノズルの移動速度を低くするように前記水平移送部を制御する、請求項1〜11のいずれか一項記載の周縁部塗布装置。
【請求項13】
基板の周縁部に塗布液を塗布する周縁部塗布方法であって、
前記基板を水平に保持して回転させると共に、下方に開口する塗布液ノズルから前記塗布液を吐出させながら、前記基板の周縁の外側から前記基板の周縁部上に前記塗布液ノズルを移動させるスキャンイン工程と、
前記基板を水平に保持して回転させると共に、前記塗布液ノズルから前記塗布液を吐出させながら、前記基板の周縁部上から前記基板の周縁の外側に前記塗布液ノズルを移動させるスキャンアウト工程と、を備え、
前記スキャンアウト工程では、前記塗布液が前記基板の周縁側に移動する速度に比べ低い速度で前記塗布液ノズルを移動させる、周縁部塗布方法。
【請求項14】
前記スキャンアウト工程では、前記スキャンイン工程に比べ低い速度で前記塗布液ノズルを移動させる、請求項13記載の周縁部塗布方法。
【請求項15】
基板の周縁部に塗布液を塗布する周縁部塗布装置に、請求項13又は14記載の周縁部塗布方法を実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な周縁部塗布用記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の周縁部に塗布液を塗布するための装置、方法及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、半導体ウェハ(以下、ウェハという)の周縁部のみにレジスト膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ウェハの中央部にシリサイド層を形成する処理方法が記載されている。この処理を行う際に、ウェハの周縁部にシリサイド層が形成されることを防ぐために、周縁部をレジスト膜で被覆する方法が記載されている。特許文献1に記載された方法では、まずネガ型のレジスト液をウェハの表面全体に塗布してレジスト膜を形成し、乾燥させる。次に、ウェハの周縁部のレジスト膜を露光し、現像処理を行う。現像処理により、ウェハの中央部のレジスト膜が溶解し、ウェハに環状のレジスト膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−295637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したレジスト膜の形成方法は、レジスト液の塗布、乾燥、露光、現像等の多くの工程を経るので、半導体製造工程のスループットを低下させる一要因となる。この問題を解決するために、例えば、ウェハを回転させながらポジ型のレジスト液をウェハの周縁部のみに塗布することが考えられる。このような方法を採用すれば、レジスト液の塗布、乾燥を行うのみで環状のレジスト膜を形成することができる。しかしながら、ウェハの回転の遠心力等の影響により、レジスト膜の膜厚が不均一になる場合がある。レジスト膜には、保護機能の高さと使用後の剥離し易さが求められる。このような相反する要求を満たすために、レジスト膜の膜厚の許容範囲は狭い。レジスト膜の膜厚が不均一であると、レジスト膜の膜厚が許容範囲内に収まらないおそれがある。
【0005】
本発明は、基板の周縁部のみに膜厚が十分に均一な塗布膜を効率よく形成できる装置、方法及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る周縁部塗布装置は、基板の周縁部に塗布液を塗布する周縁部塗布装置であって、基板を水平に保持して回転させる回転保持部と、基板の上方に位置して下方に塗布液を吐出する塗布液ノズルを有し、基板の表面に塗布液を供給する塗布液供給部と、塗布液ノズルを水平方向に移動させる水平移送部と、回転保持部、塗布液供給部及び水平移送部を制御する塗布制御部と、を備え、塗布制御部は、回転保持部を制御して基板を回転させると共に、塗布液供給部を制御して塗布液ノズルから塗布液を吐出させながら、水平移送部を制御して塗布液ノズルを基板の周縁の外側から基板の周縁部上に移動させるスキャンイン制御と、回転保持部を制御して基板を回転させると共に、塗布液供給部を制御して塗布液ノズルから塗布液を吐出させながら、水平移送部を制御して塗布液ノズルを基板の周縁部上から基板の周縁の外側に移動させるスキャンアウト制御とを行い、スキャンアウト制御を行うときに、塗布液が基板の周縁側に移動する速度に比べ低い速度で塗布液ノズルを移動させる。
【0007】
このような周縁部塗布装置では、塗布制御部がスキャンイン制御を行うと、基板が回転した状態で塗布液ノズルが塗布液を吐出し、基板の周縁の外側から基板の周縁部上に移動する。基板の回転により、基板の周縁部全体が塗布液ノズルの下を通過するので、基板の周縁部全体に塗布液が塗布され、環状の塗布膜が形成される。塗布制御部がスキャンアウト制御を行うと、塗布液ノズルが基板の周縁部上から基板の周縁の外側に移動し、塗布液の塗布が完了する。従って、基板の周縁部のみに効率よく塗布膜を形成できる。ここで、基板の周縁部に塗布された塗布液の余剰分は、基板の回転の遠心力により基板の周縁側に移動する。スキャンアウト制御では、塗布液が基板の周縁側に移動する速度に比べ低い速度で塗布液ノズルが移動する。このため、塗布液の余剰分は、塗布液ノズルから吐出された塗布液により、基板の周縁の外側に押し流される。また、塗布液ノズルが低い速度で移動し、基板の周縁部上に長く滞在する。このため、塗布液の余剰分が基板の周縁部上で硬化し始めているときにも、硬化し始めた余剰分が塗布液ノズルから吐出された塗布液によって溶解され、基板の周縁の外側に押し流される。これらのことから、塗布液の余剰分が基板の周縁側に偏在することが防止される。従って、膜厚が十分に均一な塗布膜を形成できる。
【0008】
塗布制御部は、スキャンアウト制御を行うときに、スキャンイン制御を行うときに比べ低い速度で塗布液ノズルを移動させてもよい。塗布制御部は、スキャンアウト制御を行うときに、基板の周縁の半径と、1秒当たりの基板の回転数の2乗との積に対して、0.004%以下の秒速で塗布液ノズルを移動させてもよい。塗布制御部は、スキャンアウト制御を行うときに、4mm/s以下の速度で塗布液ノズルを移動させてもよい。これらの場合、塗布液の余剰分を更に確実に基板の周縁の外側に押し流すことができる。
【0009】
塗布制御部は、スキャンアウト制御を行うときに、スキャンイン制御を行うときに比べ高い回転数で基板を回転させてもよい。この場合、スキャンアウト制御において、塗布液の余剰分が基板の周縁側に移動する速度が高くなる。このため、塗布液が基板の周縁側に移動する速度に対し、塗布液ノズルが移動する速度を相対的に低くし、塗布液の余剰分を更に確実に基板の周縁の外側に押し流すことができる。
【0010】
塗布液の粘度が3〜100cPであってもよい。塗布液ノズルの内径が0.4〜0.8mmであってもよい。これらの場合、塗布液の余剰分を更に確実に基板の周縁の外側に押し流すことができる。
【0011】
基板の周縁部上で塗布液ノズルが塗布液を吐出する方向は、基板の回転中心の逆側に向かうように傾斜していてもよい。更に、基板の周縁部上で塗布液ノズルが塗布液を吐出する方向は、水平面に対し15〜90°の傾斜角で傾斜していてもよい。これらの場合、塗布液の余剰分を更に確実に基板の周縁の外側に押し流すことができる。
【0012】
塗布液ノズルに対し基板の回転中心側に隣接して下方にガスを吐出するガスノズルを有し、基板の表面にガスを吹き付けるガス吹付部を更に備え、水平移送部は、塗布液ノズルと共にガスノズルを水平方向に移動させ、塗布制御部は、スキャンアウト制御を行うときにガス吹付部を制御し、ガスノズルからガスを吐出させてもよい。この場合、塗布液ノズルからの塗布液が到達する部分に対し基板の回転中心側に隣接する部分にガスが吹付けられる。このため、塗布液ノズルの通過に伴い塗布液の余剰分を除去された部分の硬化が促進される。従って、塗布液ノズルの作用により得られた膜厚の均一性を、更に確実に維持することができる。
【0013】
塗布制御部は、スキャンアウト制御を行うときに、塗布液ノズルが基板の周縁側に移動するのに応じて塗布液の吐出圧力を高くするように、塗布液供給部を制御してもよい。基板の回転の遠心力により、塗布液の余剰分は、基板の周縁側に偏在する傾向がある。このため、塗布液ノズルが周縁側に移動するのに応じて塗布液の吐出圧力を高くすることにより、塗布液の余剰分を更に確実に基板の周縁の外側に押し流すことができる。
【0014】
塗布制御部は、スキャンアウト制御を行うときに、塗布液ノズルが基板の周縁側に移動するのに応じて塗布液ノズルの移動速度を低くするように水平移送部を制御してもよい。この場合、塗布液ノズルが周縁側に移動するのに応じて塗布液ノズルの移動速度を低くし、塗布液ノズルの滞在時間を長くすることで、塗布液の余剰分を更に確実に基板の周縁の外側に押し流すことができる。
【0015】
本発明に係る周縁部塗布方法は、基板の周縁部に塗布液を塗布する周縁部塗布方法であって、基板を水平に保持して回転させると共に、下方に開口する塗布液ノズルから塗布液を吐出させながら、基板の周縁の外側から基板の周縁部上に塗布液ノズルを移動させるスキャンイン工程と、基板を水平に保持して回転させると共に、塗布液ノズルから塗布液を吐出させながら、基板の周縁部上から基板の周縁の外側に塗布液ノズルを移動させるスキャンアウト工程と、を備え、スキャンアウト工程では、塗布液が基板の周縁側に移動する速度に比べ低い速度で塗布液ノズルを移動させる。
【0016】
このような周縁部塗布方法では、スキャンイン工程を行うと、基板が回転した状態で塗布液ノズルが塗布液を吐出し、基板の周縁の外側から基板の周縁部上に移動する。基板の回転により、基板の周縁部全体が塗布液ノズルの下を通過するので、基板の周縁部全体に塗布液が塗布され、環状の塗布膜が形成される。スキャンアウト工程を行うと、塗布液ノズルが基板の周縁部上から基板の周縁の外側に移動し、塗布液の塗布が完了する。従って、基板の周縁部のみに効率よく塗布膜を形成できる。ここで、基板の周縁部に塗布された塗布液の余剰分は、基板の回転の遠心力により基板の周縁側に移動する。スキャンアウト工程では、塗布液が基板の周縁側に移動する速度に比べ低い速度で塗布液ノズルが移動する。このため、塗布液の余剰分は、塗布液ノズルから吐出された塗布液により、基板の周縁の外側に押し流される。また、塗布液ノズルが低い速度で移動し、基板の周縁部上に長く滞在する。このため、塗布液の余剰分が基板の周縁部上で硬化し始めているときにも、硬化し始めた余剰分が塗布液ノズルから吐出された塗布液によって溶解され、基板の周縁の外側に押し流される。これらのことから、塗布液の余剰分が基板の周縁側に偏在することが防止される。従って、膜厚が十分に均一な塗布膜を形成できる。
【0017】
スキャンアウト工程では、スキャンイン工程に比べ低い速度でノズルを移動させてもよい。この場合、塗布液の余剰分を更に確実に基板の周縁の外側に押し流すことができる。
【0018】
本発明に係る周縁部塗布用記録媒体は、基板の周縁部に塗布液を塗布する周縁部塗布装置に、上記周縁部塗布方法を実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る周縁部塗布装置、周縁部塗布方法及び周縁部塗布用記録媒体によれば、基板の周縁部のみに膜厚が十分に均一な塗布膜を効率よく形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る周縁部塗布装置が適用される塗布・現像装置の斜視図である。
図2図1中のII−II線に沿う断面図である。
図3図2中のIII−III線に沿う断面図である。
図4】周縁部塗布ユニットの概略構成を示す断面図である。
図5】周縁部塗布ユニットの概略構成を示す平面図である。
図6図4中のウェハの周縁部及び塗布液ノズルの拡大図である。
図7】スキャンイン工程の直前の状態を示す模式図である。
図8】スキャンイン工程の途中の状態を示す模式図である。
図9】スキャンイン工程の直後の状態を示す模式図である。
図10】スキャンアウト工程の途中の状態を示す模式図である。
図11】スキャンアウト工程の直後の状態を示す模式図である。
図12】レジスト液の移動速度に比べ塗布液ノズルの移動速度が高い場合のレジスト膜の状態を示す模式図である。
図13】レジスト液の移動速度に比べ塗布液ノズルの移動速度が低い場合のレジスト膜の状態を示す模式図である。
図14】周縁部塗布ユニットの変形例を示す平面図である。
図15】周縁部塗布ユニットの他の変形例を示す断面図である。
図16】膜厚の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る周縁部塗布装置の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
本実施形態の周縁部塗布装置は、半導体ウェハ(以下、ウェハという。)の塗布・現像装置において、ウェハの周縁部にレジスト液を塗布する装置である。まず、この周縁部塗布装置が適用される塗布・現像装置の一例について説明する。図1図3に示されるように、塗布・現像装置1は、キャリアブロックS1と、キャリアブロックS1に隣接する処理ブロックS2と、処理ブロックS2に隣接するインターフェースブロックS3とを備えている。以下の説明における「前後左右」は、インターフェースブロックS3側を前側、キャリアブロックS1側を後側とした方向を意味するものとする。
【0023】
キャリアブロックS1は、複数のキャリア2を設置するためのキャリアステーション3と、キャリアステーション3と処理ブロックS2との間に介在する搬入・搬出部4とを有している。キャリア2は、複数枚のウェハ(基板)Wを密封状態で収容し、キャリアステーション3上に着脱自在に設置される。キャリア2の一側面2a側には、ウェハWを出し入れするための開閉扉(不図示)が設けられている。搬入・搬出部4には、キャリアステーション3に設置された複数のキャリア2にそれぞれ対応する開閉扉4aが設けられている。搬入・搬出部4内には、キャリアステーション3に設置されたキャリア2からウェハWを取り出して処理ブロックS2に渡し、処理ブロックS2からウェハWを受け取ってキャリア2内に戻す受け渡しアームA1が収容されている。
【0024】
処理ブロックS2は、ウェハWの表面上に下層の反射防止膜を形成する下層反射防止膜形成(BCT)ブロック5と、下層の反射防止膜の上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成(COT)ブロック6と、レジスト膜の上に上層の反射防止膜を形成する上層反射防止膜形成(TCT)ブロック7と、現像処理を行う現像処理(DEV)ブロック8とを有している。これらのブロックは、床面側からDEVブロック8、BCTブロック5、COTブロック6、TCTブロック7の順に積層されている。
【0025】
BCTブロック5には、反射防止膜形成用の薬液を塗布する塗布ユニット(不図示)と、加熱・冷却ユニット(不図示)と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA2とが収容されている。TCTブロック7にも同様に、塗布ユニットと、加熱・冷却ユニットと、搬送アームA4とが収容されている。COTブロック6には、レジスト膜形成用の薬液を塗布する塗布ユニット(不図示)と、加熱・冷却ユニット(不図示)と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA3とが収容されている。
【0026】
図2及び図3に示されるように、DEVブロック8には、複数の現像処理ユニットU1と、複数の周縁部塗布ユニット(周縁部塗布装置)U5と、複数の加熱・冷却ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA5と、これらのユニットを経ずに処理ブロックS2の前後間でウェハWを搬送する直接搬送アームA6とが収容されている。周縁部塗布ユニットU5は、現像処理ユニットU1により現像処理されたウェハWの周縁部にレジスト液を塗布する。複数の現像処理ユニットU1及び複数の周縁部塗布ユニットU5は、DEVブロック8の右側で、前後方向に並べられると共に、上下2段に積層されている。複数の加熱・冷却ユニットU2は、DEVブロック8の左側で、前後方向に並べられている。搬送アームA5は、現像処理ユニットU1と加熱・冷却ユニットU2との間に設けられ、前後方向及び上下方向に移動可能とされている。直接搬送アームA6は、DEVブロック8の上部に設けられ、前後方向に移動可能とされている。
【0027】
処理ブロックS2の後側には、床面からTCTブロック7に亘るように棚ユニットU3が設けられている。棚ユニットU3は、上下方向に並ぶ複数のセルC30〜C38に区画されている。棚ユニットU3の近傍には、セルC30〜C38間でウェハWを搬送する昇降自在な昇降アームA7が設けられている。処理ブロックS2の前側には、床面からDEVブロック8の上部に亘るように棚ユニットU4が設けられている。棚ユニットU4は、上下方向に並ぶ複数のセルC40〜C42に区画されている。
【0028】
インターフェースブロックS3は、露光装置E1に接続される。インターフェースブロックS3には、処理ブロックS2の棚ユニットU4から露光装置E1にウェハWを渡し、露光装置E1からウェハWを受け取り棚ユニットU4に戻す受け渡しアームA8が収容されている。
【0029】
このような塗布・現像装置1では、まず、複数のウェハWを収容したキャリア2がキャリアステーション3に設置される。このとき、キャリア2の一側面2aは搬入・搬出部4の開閉扉4aに向けられる。次に、キャリア2の開閉扉と搬入・搬出部4の開閉扉4aとが共に開放され、受け渡しアームA1により、キャリア2内のウェハWが取り出され、処理ブロックS2の棚ユニットU3のいずれかのセルに順次搬送される。
【0030】
受け渡しアームA1により棚ユニットU3のいずれかのセルに搬送されたウェハWは、昇降アームA7により、BCTブロック5に対応するセルC33に順次搬送される。セルC33に搬送されたウェハWは、搬送アームA2によってBCTブロック5内の各ユニットに搬送され、このウェハWの表面上に下層反射防止膜が形成される。
【0031】
下層反射防止膜が形成されたウェハWは、搬送アームA2によってセルC33の上のセルC34に搬送される。セルC34に搬送されたウェハWは、昇降アームA7によって、COTブロック6に対応するセルC35に搬送される。セルC35に搬送されたウェハWは、搬送アームA3によりCOTブロック6内の各ユニットに搬送され、このウェハWの下層反射防止膜の上にレジスト膜が形成される。
【0032】
レジスト膜が形成されたウェハWは、搬送アームA3によってセルC35の上のセルC36に搬送される。セルC36に搬送されたウェハWは、昇降アームA7によって、TCTブロック7に対応するセルC37に搬送される。セルC37に搬送されたウェハWは、搬送アームA4によってTCTブロック7内の各ユニットに搬送され、このウェハWのレジスト膜の上に上層反射防止膜が形成される。
【0033】
上層反射防止膜が形成されたウェハWは、搬送アームA4によってセルC37の上のセルC38に搬送される。セルC38に搬送されたウェハWは、昇降アームA7によって直接搬送アームA6に対応するセルC32に搬送され、直接搬送アームA6によって棚ユニットU4のセルC42に搬送される。セルC42に搬送されたウェハWは、インターフェースブロックS3の受け渡しアームA8により露光装置E1に渡され、レジスト膜の露光処理が行われる。露光処理後のウェハWは、受け渡しアームA8によりセルC42の下のセルC40,C41に搬送される。
【0034】
セルC40,C41に搬送されたウェハWは、搬送アームA5により、DEVブロック8内の各ユニットに搬送され、現像処理が行われ、ウェハWの表面上にレジストパターンが形成される。レジストパターンが形成されたウェハWは、搬送アームA5によって周縁部塗布ユニットU5に搬送され、ウェハWの表面の周縁部にレジスト液が塗布される。周縁部塗布ユニットU5によって周縁部にレジスト液を塗布されたウェハWは、搬送アームA5によって加熱・冷却ユニットU2に搬送され、加熱・冷却される。これにより、ウェハWの周縁部にレジスト膜が形成される(以下、このレジスト膜を周縁レジスト膜という。)。周縁レジスト膜が形成されたウェハWは、搬送アームA5により、棚ユニットU3のうちDEVブロック8に対応したセルC30,C31に搬送される。セルC30,C31に搬送されたウェハWは、受け渡しアームA1がアクセス可能なセルに昇降アームA7によって搬送され、受け渡しアームA1によってキャリア2内に戻される。
【0035】
なお、塗布・現像装置1の構成は一例に過ぎない。塗布・現像装置は、塗布ユニット、現像処理ユニット、周縁部塗布ユニット等の液処理ユニットと、加熱・冷却ユニット等の前処理・後処理ユニットとを備えるものであればよく、これら各ユニットの個数や種類、レイアウト等は適宜変更可能である。
【0036】
続いて、周縁部塗布ユニット(周縁部塗布装置)U5について、更に詳細に説明する。図4及び図5に示されるように、周縁部塗布ユニットU5は、ウェハWを水平に保持して回転させる回転保持部11と、ウェハWを昇降させる昇降部12と、レジスト液ノズル(塗布液ノズル)27からレジスト液を供給するレジスト液供給部(塗布液供給部)13と、レジスト液ノズル27を水平方向に移動させる水平移送部14と、制御部35とを備えている。
【0037】
回転保持部11は、回転部15とチャック16とを有する。回転部15は、上方に突出する回転軸15aを含み、電動モータ等の動力源(不図示)により回転軸15aを回転させる。チャック16は、表面Waが上方に面するように水平に配置されたウェハWの中心部を支持し、吸引吸着等により保持する。
【0038】
昇降部12は、回転軸15aを囲むように水平に配置された円環状の昇降ディスク17と、昇降ディスク17の周縁部から上方に突出した複数の昇降ピン17aと、昇降ディスク17を昇降させる昇降シリンダ18とを有している。複数の昇降ピン17aは、回転軸15aを囲むように配置されている。昇降部12は、昇降ピン17aを上昇させ、搬送アームA5から昇降ピン17aの先端部上にウェハWを受け取り、昇降ピン17aを下降させてチャック16上にウェハWを設置する。また、昇降部12は、昇降ピン17aを上昇させ、昇降ピン17aの先端部でチャック16上のウェハWを押し上げ、ウェハWを上昇させて搬送アームA5に渡す。
【0039】
回転部15の周囲には、ウェハW上から外側に振り切られて落下する液体を受け止める収容器であるカップ19が設けられている。カップ19は、回転部15を囲む円環形状の底板20と、底板20の外縁に沿って上方に突出した円筒状の外壁21と、底板20の内縁に沿って上方に突出した円筒状の内壁22とを有している。外壁21の全部分は、チャック16に保持されたウェハWの周縁Wbに対し、平面視で外側に位置する。外壁21の上端部には、上方に向かうに従い内径が小さくなる傾斜壁部21aが形成されている。傾斜壁部21aの上端21bは、チャック16に保持されたウェハWに比べ上方に位置する。内壁22の全部分は、チャック16に保持されたウェハWの周縁Wbに対し、平面視で内側に位置する。内壁22の上端22aは、チャック16に保持されたウェハWより下方に位置する。
【0040】
内壁22に囲まれた空間の上部は、カバー板23により塞がれており、回転軸15a及び昇降ピン17aはカバー板23に挿通されている。カバー板23の周縁部には、内壁22から外壁21側に張り出した傘状部23aが形成されている。傘状部23aの外周には、外壁21と内壁22の間を仕切るように下方に延在する筒状の仕切壁24が設けられている。仕切壁24の下端部と底板20は離間している。底板20には、液体排出用の液体排出孔部20aと、気体排出用の気体排出孔部20bとが形成されている。液体排出孔部20aには、液体排出用の排液管25が接続されている。気体排出孔部20bには、気体排出用の排気管26が挿入されている。排気管26の上端部は、仕切壁24の下端部の近傍に位置している。ウェハW上から外側に振り切られた液体は、外壁21及び傘状部23aにより、外壁21と仕切壁24の間に導かれ、排液管25を通って排出される。仕切壁24と内壁22の間には、液体から発生したガスが進入し、そのガスが排気管26を通って排出される。
【0041】
レジスト液供給部13は、下方にレジスト液を吐出するレジスト液ノズル27と、レジスト液ノズル27にレジスト液を圧送するレジスト液供給源28とを有している。レジスト液ノズル27とレジスト液供給源28との間には、バルブ29が介在している。レジスト液供給部13が供給するレジスト液の粘度は、例えば3〜100cP(mPa・s)である。水平移送部14は、外壁21の外側で水平方向に延在するガイドレール30と、ガイドレール30に沿って移動する移動体31と、移動体31からチャック16側に延在するアーム32とを有している。アーム32は、チャック16に保持されたウェハWの上方にかかるように延在している。レジスト液ノズル27は、アーム32の先端部に固定されており、ガイドレール30に平行でウェハWの中心を通る仮想線L1の上方に位置する。
【0042】
図6に示されるように、レジスト液ノズル27は、下方に開口する吐出孔27aを有しており、吐出孔27aの中心軸線に沿って下方にレジスト液を吐出する。吐出孔27aの内径dは、例えば0.4〜0.8mmである。吐出孔27aの中心軸線は傾斜しており、ウェハWの周縁部Wc上でレジスト液ノズル27がレジスト液を吐出する吐出方向DRは、ウェハWの回転中心CLの逆側に向かうように傾斜している。水平面に対する吐出方向DRの傾斜角θ1は15〜90°であることが好ましく、15〜45°であることがより好ましく、30〜45°であることが特に好ましい。
【0043】
制御部(塗布制御部)35は、制御用のコンピュータであり、レジスト液塗布条件の設定画面を表示する表示部(不図示)と、レジスト液塗布条件を入力する入力部(不図示)と、コンピュータ読み取り可能な記録媒体からプログラムを読み取る読取部(不図示)とを有している。記録媒体には、制御部35に周縁部塗布制御を実行させるプログラムが記録されており、このプログラムが制御部35の読取部によって読み取られる。記録媒体としては、例えば、ハードディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、メモリカード等が挙げられる。制御部35は、入力部に入力されたレジスト液塗布条件と、読取部により読み取られたプログラムとに応じて、回転保持部11、昇降部12、レジスト液供給部13、水平移送部14を制御し、周縁部塗布処理を実行する。以下、制御部35に制御される周縁部塗布ユニットU5の動作手順について説明する。
【0044】
周縁部塗布処理を行うときを除き、制御部35は、水平移送部14を制御して、レジスト液ノズル27をウェハWの周縁Wbの外側に位置させる。周縁部塗布処理を行うときには、制御部35は、まず昇降部12を制御して昇降ピン17aを上昇させる。昇降ピン17aが上昇した状態で、上述した搬送アームA5により、ウェハWが周縁部塗布ユニットU5内に搬入される。ウェハWは、回転保持部11の上方に水平に配置される。現像処理ユニットU1における現像処理により、ウェハWの表面にはレジストパターンが形成されている。搬送アームA5は、ウェハWを下降させて昇降ピン17a上に載置し、周縁部塗布ユニットU5内から退避する。搬送アームA5の退避が完了すると、制御部35は、昇降部12を制御して昇降ピン17aを下降させることでウェハWをチャック16上に設置し、回転保持部11を制御してチャック16にウェハWを保持させる。
【0045】
次に、制御部35は、図7図9に示されるようにスキャンイン制御を行う(スキャンイン工程)。すなわち、回転保持部11を制御してウェハWを回転数ω1で回転させると共に、レジスト液供給部13を制御してレジスト液ノズル27からレジスト液を吐出させる。この状態で、水平移送部14を制御してレジスト液ノズル27をウェハWの周縁Wbの外側からウェハWの周縁部Wc上に速度v1で移動させる。ウェハWの回転により、周縁部Wc全体がレジスト液ノズル27の下を通過するので、周縁部Wc全体にレジスト液が塗布され、環状の塗布膜が形成される。ここで、周縁部Wcは、例えば周縁Wbから15mm以内の範囲であることが好ましく、10mm以内の範囲であることがより好ましく、5mm以内の範囲であることが特に好ましい。
【0046】
次に、図10及び図11に示されるようにスキャンアウト制御を行う(スキャンアウト工程)。すなわち、回転保持部11を制御してウェハWを回転数ω2で回転させると共に、レジスト液供給部13を制御してレジスト液ノズル27からレジスト液を吐出させる。この状態で、水平移送部14を制御してレジスト液ノズル27をウェハWの周縁部Wc上からウェハWの周縁Wbの外側に速度v2で移動させる。これにより、レジスト液の塗布が完了する。このようにして、周縁部Wcのみに効率よく環状の周縁レジスト膜Rが形成される。
【0047】
次に、レジスト液供給部13を制御してレジスト液の吐出を停止させる。回転保持部11を制御してウェハWを停止させ、チャック16によるウェハWの保持を解除させ、昇降部12を制御して昇降ピン17aを上昇させる。ウェハWが昇降ピン17aと共に上昇すると、ウェハWの下方に搬送アームA5が進入する。搬送アームA5は、上昇して昇降ピン17aからウェハWを受け取り、周縁部塗布ユニットU5内から搬出する。以上で周縁部塗布処理が完了する。
【0048】
ここで、スキャンアウト工程におけるレジスト液ノズル27の移動速度v2について説明する。移動速度v2は、ウェハWの周縁部Wc上のレジスト液がウェハWの周縁側に移動する速度に比べ低い。図12は、ウェハWの周縁部Wc上のレジスト液がウェハWの周縁Wb側に移動する速度に比べレジスト液ノズル27の移動速度が高い場合に生じる現象を示す模式図である。図13は、ウェハWの周縁部Wc上のレジスト液がウェハWの周縁Wb側に移動する速度に比べレジスト液ノズル27の移動速度が低い場合に生じる現象を示す模式図である。図12(a)及び図13(a)は、スキャンアウト工程の開始時におけるウェハWの周縁部Wcを示し、図12(b)及び図13(b)は、スキャンアウト工程の途中におけるウェハWの周縁部Wcを示し、図12(c)及び図13(c)は、スキャンアウト工程の完了時におけるウェハWの周縁部Wcを示す。
【0049】
図12(a)及び図13(a)の時点で塗布されたレジスト液の余剰分は、ウェハWの回転の遠心力によりウェハWの周縁Wb側に速度v3で移動する。仮に、レジスト液の余剰分の移動速度v3に比べレジスト液ノズル27の移動速度v2が高いと、図12(b)及び図12(c)に示されるように、レジスト液ノズル27は、周縁Wb側に移動するレジスト液を追い越して周縁Wbの外側に移動する。レジスト液ノズル27が周縁Wbの外側に移動した後、周縁部Wc上では、レジスト液の余剰分が周縁Wb側に偏在し、周縁レジスト膜Rの厚さが周縁Wb側に向かうに従って厚くなる。
【0050】
これに対し、レジスト液の余剰分の移動速度v3に比べレジスト液ノズル27の移動速度v2が低いと、図13(b)及び図13(c)に示されるように、レジスト液ノズル27は、周縁Wb側に移動するレジスト液を追いかけながら移動する。このため、レジスト液の余剰分は、レジスト液ノズル27から吐出されたレジスト液により、周縁Wbの外側に押し流される。また、レジスト液ノズル27が低い速度で移動し、周縁部Wc上に長く滞在する。このため、レジスト液の余剰分が周縁部Wc上で硬化し始めているときにも、硬化し始めた余剰分がレジスト液ノズル27から吐出されたレジスト液によって溶解され、周縁Wbの外側に押し流される。これらのことから、レジスト液の余剰分が周縁Wb側に偏在することが防止される。従って、膜厚が十分に均一なレジスト膜を形成できる。
【0051】
なお、レジスト液の移動速度v3を実測するのは難しい。移動速度v3の実測に変えて、移動速度v2をどの程度の値にすれば移動速度v3を下回るのかを次の手段により推定できる。複数のウェハWを準備し、各ウェハWに周縁部塗布処理を行う。ウェハWを交換する度に、スキャンアウト工程におけるレジスト液ノズル27の移動速度v2を少しずつ減らす。各ウェハWに形成された周縁レジスト膜Rについて、周縁Wb側の膜厚と中心CL側の膜厚とを測定し、これらの膜厚差を算出する。すると、移動速度v2が所定値以下となるのを境に、膜厚差が急激に低くなることが確認され、この所定値以下であればレジスト液の移動速度v3を下回ることが推定される。例えば、本発明者等は、直径300mmのウェハを1500rpmで回転させ、一般的なレジスト液を塗布する場合に、所定値は4mm/sであることを見出した。
【0052】
この知見に基づき、移動速度v2は、4mm/s以下であってもよい。移動速度v3は、遠心加速度によって変動する可能性がある。そこで、移動速度v2を遠心加速度に対する比率で規定すれば、遠心加速度に応じて適切な移動速度v2を設定可能となる。遠心加速度を、ウェハWの半径と、1秒当たりの回転数の2乗との積で算出する場合、4mm/sという上記所定値は、遠心加速度に対して約0.004%の秒速である。そこで、移動速度v2は、ウェハWの半径と、1秒当たりの回転数の2乗との積に対して0.004%以下の秒速であってもよい。これらの場合、レジスト液の余剰分を更に確実に周縁Wbの外側に押し流すことができる。また、移動速度v2を、スキャンイン工程におけるレジスト液ノズル27の移動速度v1に比べ低く設定することでも、レジスト液の余剰分を更に確実に周縁Wbの外側に押し流すことができる。
【0053】
更に、スキャンアウト工程におけるウェハWの回転数ω2は、スキャンイン工程におけるウェハWの回転数ω1に比べ高くてもよい。この場合、スキャンアウト工程において、レジスト液が周縁Wb側に移動する速度が高くなる。このため、レジスト液が周縁Wb側に移動する速度に対し、レジスト液ノズル27が移動する速度を相対的に低くし、レジスト液の余剰分を更に確実に周縁Wbの外側に押し流すことができる。
【0054】
以上に説明したように、周縁部塗布ユニットU5によれば、周縁部Wc上のレジスト液の余剰分を周縁Wbの外側に押し流し、膜厚が十分に均一な周縁レジスト膜を形成できる。更に、上述したように、レジスト液ノズル27によるレジスト液の吐出方向DRは、鉛直方向に直交し且つレジスト液ノズル27の移動方向に直交する方向から見て、ウェハWの回転中心CLの逆側に向いている。これにより、レジスト液の余剰分を更に確実に周縁Wbの外側に押し流すことができる。
【0055】
図14に示されるように、レジスト液ノズル27の吐出方向DRは、周縁部Wcの移動方向を向くように傾斜していてもよい。図14は、ウェハWが図示時計回りに回転している場合を例示しており、周縁部Wcは図示下方に移動している。このため、吐出方向DRは図示下方に向くように傾斜している。この場合、レジスト液の余剰分を更に確実に周縁Wbの外側に押し流すことができる。レジスト液ノズル27の移動方向に対する吐出方向DRの傾斜角θ2は、平面視で0〜90°であることが好ましく、0〜60°であることがより好ましく、5〜45°であることが特に好ましい。
【0056】
制御部35は、スキャンアウト制御を行うときに、レジスト液ノズル27が周縁Wb側に移動するのに応じてレジスト液の吐出圧力を高くするようにレジスト液供給部13を制御してもよい。ウェハWの回転の遠心力により、レジスト液の余剰分は、周縁Wb側に偏在する傾向がある。このため、レジスト液ノズル27が周縁Wb側に移動するのに応じてレジスト液の吐出圧力を高くすることにより、レジスト液の余剰分を更に確実に周縁Wbの外側に押し流すことができる。
【0057】
制御部35は、スキャンアウト制御を行うときに、レジスト液ノズル27が周縁Wb側に移動するのに応じてレジスト液ノズル27の移動速度v2を低くするように水平移送部14を制御してもよい。レジスト液ノズル27が周縁Wb側に移動するのに応じて移動速度v2を低くし、レジスト液ノズル27の滞在時間を長くすることで、レジスト液の余剰分を更に確実に周縁Wbの外側に押し流すことができる。
【0058】
周縁部塗布ユニットU5は、図15に示されるように、ウェハWの表面にガスを吹き付けるガス吹付部36を備えていてもよい。ガス吹付部36は、下方にガスを吐出するガスノズル37と、ガスノズル37にガスを圧送するガス供給源38とを有している。ガスノズル37とガス供給源38との間には、バルブ39が介在している。ガスノズル37は、レジスト液ノズル27に対しウェハWの回転中心CL側に隣接している。水平移送部14は、レジスト液ノズル27と共にガスノズル37を水平方向に移動させる。制御部35は、スキャンアウト制御を行うときにガス吹付部36を制御し、ガスノズル37からガスを吐出させる。この場合、レジスト液ノズル27からのレジスト液が到達する部分に対し回転中心CL側に隣接する部分にガスが吹付けられる。このため、レジスト液ノズル27の通過に伴いレジスト液の余剰分を除去された部分の硬化が促進される。従って、レジスト液ノズル27の作用により得られた膜厚の均一性を、更に確実に維持することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、塗布液はレジスト液に限られず、基板の周縁部にレジスト液以外の塗布液を塗布する装置にも本発明を適用可能である。一例として、基板の周縁部に接着剤を塗布する装置等が挙げられる。
【0060】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明は、ここで示す実施例に限定されるものではない。
【0061】
(1)実施例1
実施例1として、直径300mmのウェハWの周縁Wbから3mmの範囲に周縁部塗布処理を実施した。スキャンイン工程において、ウェハWの回転数ω1を250rpmとし、レジスト液ノズル27の移動速度v1を10mm/sとした。スキャンアウト工程において、ウェハWの回転数ω2を1500rpmとし、レジスト液ノズル27の移動速度v2を1mm/sとした。
【0062】
(2)比較例1
比較例1として、直径300mmのウェハWの周縁Wbから3mmの範囲に周縁部塗布処理を実施した。スキャンイン工程において、ウェハWの回転数ω1を250rpmとし、レジスト液ノズル27の移動速度v1を10mm/sとした。スキャンアウト工程において、ウェハWの回転数ω2を1500rpmとし、レジスト液ノズル27の移動速度v2を10mm/sとした。
【0063】
(3)膜厚の評価
実施例1及び比較例1で周縁部塗布処理が行われたウェハWについて、ウェハWの回転中心CLから146〜149mmの位置における周縁レジスト膜Rの膜厚を測定した。測定結果を図16に示す。図16中の線L2に示されるように、比較例1で周縁部塗布処理が行われたウェハWでは、回転中心CL側から周縁Wb側に向かうに従い膜厚が厚くなっており、周縁Wb側の膜厚と回転中心CL側の膜厚との差は、平均膜厚に対して約36%に達していた。これに対し、図16中の線L3に示されるように、実施例1で周縁部塗布処理が行われたウェハWでは、周縁レジスト膜Rの膜厚はほぼ均一であった。これにより、本発明によれば、膜厚が十分に均一な塗布膜を形成できることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
11…回転保持部、13…レジスト液供給部(塗布液供給部)、14…水平移送部、27…レジスト液ノズル(塗布液ノズル)、35…制御部(塗布制御部)、36…ガス吹付部、37…ガスノズル、CL…回転中心、DR…吐出方向、U5…周縁部塗布ユニット(周縁部塗布装置)、W…ウェハ(基板)、Wb…周縁、Wc…周縁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16