(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
―第1の実施の形態―
以下、本発明によるホイールローダの一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るホイールローダ100の側面図である。ホイールローダ100は、アーム111、バケット112、タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121、エンジン室122、タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。
【0011】
リフトアーム(以下、単にアームと呼ぶ)111は前部車体110に対して上下方向に回動可能に取り付けられ、アームシリンダ114の駆動により回動駆動される。バケット112はアーム111の先端において、アーム111に対して前後傾方向(上下方向)に回動可能に取り付けられ、バケットシリンダ115の駆動により回動駆動される。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ(不図示)の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0012】
アーム111の回動部には、アーム111の前部車体110に対する回動角度を検出するアーム角度センサ56が設けられ、バケットシリンダ115には、バケット112のアーム111に対する回動角度を表すバケットシリンダ115のストローク量を検出するストローク量検出装置58が設けられている。
【0013】
図2はホイールローダ100の運転室190内に配置される操作部材を示す模式図である。運転室190には、運転者がホイールローダ100を操舵するためのステアリングホイール191と、アクセルペダル192と、左右で連動する一対のブレーキペダル193と、アーム111を上方向あるいは下方向に回動させるためのアーム操作レバー141と、バケット112を後傾方向(上方向)あるいは前傾方向(下方向)に回動させるためのバケット操作レバー142とが配設されている。バケット112が後傾方向に回動されることをバケット112がチルトされる、とも言う。バケット112が前傾方向に回動されることをバケット112がダンプされる、とも言う。
【0014】
ステアリングホイール191の下方には、ステアリングコラムの側部から突出するように前後進切換レバー195が配設されている。前後進切換レバー195は、操作に応じて前進を指示する前進信号、後進を指示する後進信号、および、中立を指示する中立指示信号を出力する。
【0015】
運転室内には、後述する自動後進モードを実行するか否かを選択する自動後進モード選択スイッチ196、および、後述するアーム自動停止モードを実行するか否かを選択するアーム自動停止モード選択スイッチ197が配設されている。
【0016】
図3は走行制御装置の概略構成を示す図である。走行用油圧回路HC1は、エンジン1によって駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプ2と、走行用油圧ポンプ2からの圧油により駆動される可変容量型の走行用油圧モータ3とを有し、走行用油圧ポンプ2と走行用油圧モータ3を一対の主管路LA,LBによって閉回路接続したHST回路により構成されている。
【0017】
エンジン1により駆動されるチャージポンプ5から吐出された圧油は、前後進切換弁17を介して傾転シリンダ8に導かれる。前後進切換弁17はコントローラ10からの信号により操作され、図示のように前後進切換弁17が中立位置のときは、チャージポンプ5からの圧油は絞り4および前後進切換弁17を介し、傾転シリンダ8の油室8a,8bにそれぞれ作用する。この状態では油室8a,8bに作用する圧力は互いに等しく、ピストン8cは中立位置にある。このため、走行用油圧ポンプ2の押しのけ容積は0となり、ポンプ吐出量は0である。
【0018】
前後進切換弁17がA側に切り換えられると、油室8a,8bにはそれぞれ絞り4の上流側圧力と下流側圧力が作用するため、傾転シリンダ8の油室8a,8bに圧力差が生じ、ピストン8cが図示右方向に変位する。これにより走行用油圧ポンプ2のポンプ傾転量が増加し、走行用油圧ポンプ2からの圧油は主管路LAを介して走行用油圧モータ3に導かれ、走行用油圧モータ3が正転し、車両が前進する。前後進切換弁17がB側に切り換えられると、傾転シリンダ8のピストン8cが図示左方向に変位し、走行用油圧ポンプ2からの圧油は主管路LBを介して走行用油圧モータ3に導かれ、走行用油圧モータ3が逆転し、車両が後進する。
【0019】
コントローラ10は、ホイールローダ100の各部の制御を行う制御装置であり、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ10には、高圧選択弁16で選択された主管路LA,LBの圧力(走行負荷圧)を検出する圧力検出器21からの信号が入力される。コントローラ10には、自動後進モード選択スイッチ196および前後進切換レバー195、ストローク量検出装置58からの信号がそれぞれ入力される。
【0020】
コントローラ10は、前後進切換レバー195からの前進、後進または中立の指示信号に基づき前後進切換弁17を制御する。コントローラ10は、前後進切換レバー195から前進指示信号が入力されたときには、前進モードに設定し、前後進切換弁17をA側に切り換えるように制御する。コントローラ10は、前後進切換レバー195から後進指示信号が入力されたときには、後進モードに設定し、前後進切換弁17をB側に切り換えるように制御する。コントローラ10は、前後進切換レバー195から中立信号が入力されたときには、中立モードに設定し、前後進切換弁17を中立位置に切り換えるように制御する。
【0021】
コントローラ10は、自動後進モード選択スイッチ196がオンされて、自動後進モードが有効になっている状態では、後述する所定の条件が満たされたとき、前後進切換レバー195からの指示信号に拘わらず、後進モードに設定し、前後進切換弁17をB側に切り換えるように制御する。
【0022】
走行用油圧モータ3の回転はトランスミッション130によって変速され、変速後の回転はプロペラシャフト、アクスルを介してタイヤ113,123に伝達され、車両が走行する。トランスミッション130は、不図示のハイ/ロー選択スイッチの操作によりローとハイの2速のいずれかの速度段に切換可能である。
【0023】
アクセルペダル192には、アクセルペダル192の操作量を検出する操作量検出器192aが設けられ、操作量検出器192aからの信号はコントローラ10に入力される。コントローラ10はエンジン制御部1aに回転速度制御信号を出力し、エンジン回転速度は操作量検出器192aからの信号に応じて制御される。チャージポンプ5からの圧油は絞り4およびオーバーロードリリーフ弁13内のチェック弁を通過して主管路LA,LBに導かれ、HST回路に補充される。絞り4の下流側圧力はチャージリリーフ弁12により制限され、主管路LA,LBの最高圧力はオーバーロードリリーフ弁13により制限される。
【0024】
走行用油圧モータ3のモータ傾転角はレギュレータ14により制御される。レギュレータ14は電磁切換弁や電磁比例弁等を含む電気油圧式レギュレータであり、信号ライン14a,14bを介して出力されるコントローラ10からの制御電流によりレギュレータ14を駆動することで、傾転制御レバー140を駆動し、モータ傾転角を変更する。モータ傾転制御部にはストッパ15が設けられ、傾転制御レバー140がストッパ15に当接し、モータ傾転角の最小値がメカ的に制限される。なお、レギュレータ14の非通電時には、ストッパ15に傾転制御レバー140が当接してモータ傾転角は最小値に保持され、レギュレータ14に出力する制御電流が増加すると、モータ傾転角も増加する。
【0025】
図4は、ホイールローダ100の作業用油圧回路HC2を示す図である。この油圧回路HC2は、圧油を吐出するメインポンプ6と、メインポンプ6から供給される圧油によってアーム111を回転駆動するアームシリンダ114と、メインポンプ6から供給される圧油によってバケット112を回転駆動するバケットシリンダ115とを有している。
【0026】
油圧回路HC2は、メインポンプ6からアームシリンダ114に供給される圧油の方向と流量を制御してアームシリンダ114の駆動を制御するアーム用コントロールバルブ41と、メインポンプ6からバケットシリンダ115に供給される圧油の方向と流量を制御してバケットシリンダ115の駆動を制御するバケット用コントロールバルブ42と、メインポンプ6から吐出される圧油の最大圧を規定するメインリリーフ弁45と、パイロットポンプ46とを有している。メインポンプ6およびパイロットポンプ46は、不図示のエンジンにより駆動される。
【0027】
アーム用コントロールバルブ41およびバケット用コントロールバルブ42は、それぞれメインポンプ6からの圧油の流れに対して並列に配列されている。つまり、本実施の形態の油圧回路は、アーム用コントロールバルブ41およびバケット用コントロールバルブ42のそれぞれがメインポンプ6に対してパラレルに接続された、いわゆるパラレル油圧回路である。したがって、アームシリンダ114とバケットシリンダ115に同時に圧油を供給でき、アーム111とバケット112を同時に回動駆動できる。
【0028】
アーム用コントロールバルブ41およびバケット用コントロールバルブ42は、それぞれアーム操作レバー141およびバケット操作レバー142によって操作される。アーム操作レバー141およびバケット操作レバー142は、それぞれ油圧パイロット式の操作レバーであって、パイロットポンプ46から吐出される圧油を操作レバーの操作量に応じてパイロット圧を制御するパイロット弁を備えている。アーム用コントロールバルブ41およびバケット用コントロールバルブ42は、アーム操作レバー141およびバケット操作レバー142の操作量に応じてパイロット弁により生成されるパイロット圧が作用して、変移量が制御される。
【0029】
図4および
図5を参照してアーム用コントロールバルブ41およびバケット用コントロールバルブ42について説明する。
図5は、アーム用コントロールバルブ41とバケット用コントロールバルブ42を示す図である。
図4に示すように、アーム用コントロールバルブ41は、パイロット圧(アーム上げパイロット圧力およびアーム下げパイロット圧力)に応じてスプールのストローク量を変更して、アームシリンダ114に供給される圧油の方向および流量を変更するバルブである。
図5に示すように、アーム用コントロールバルブ41は、P0ポートと、P1ポートと、P2ポートと、T0ポートと、Tポートと、Aポートと、Bポートとを有している。
【0030】
図4に示すように、バケット用コントロールバルブ42は、パイロット圧(バケットチルトパイロット圧力およびバケットダンプパイロット圧力)に応じてスプールのストローク量を変更して、バケットシリンダ115に供給される圧油の方向および流量を変更するバルブである。
図5に示すように、バケット用コントロールバルブ42は、P0ポートと、P1ポートと、P2ポートと、T0ポートと、Tポートと、Aポートと、Bポートとを有している。
【0031】
図4および
図5に示すように、アーム用コントロールバルブ41のP1ポートおよびP2ポートは、逆止弁31を介してメインポンプ6に接続されている。アーム用コントロールバルブ41のP0ポートはメインポンプ6に、T0ポートはバケット用コントロールバルブ42のP0ポートに、Tポートは作動油タンク7にそれぞれ接続されている。アーム用コントロールバルブ41のAポートはアームシリンダ114のボトム側油室114bに、Bポートはアームシリンダ114のロッド側油室114rにそれぞれ接続されている。
【0032】
図4および
図5に示すように、バケット用コントロールバルブ42のP1ポートおよびP2ポートは、逆止弁32を介してアーム用コントロールバルブ41のT0ポートに接続され、さらにパラレル油路上にある絞り34および逆止弁33を介してメインポンプ6に接続されている。バケット用コントロールバルブ42のP0ポートはアーム用コントロールバルブ41のT0ポートに、TポートおよびT0ポートは作動油タンク7にそれぞれ接続されている。バケット用コントロールバルブ42のAポートはバケットシリンダ115のボトム側油室115bに、Bポートはバケットシリンダ115のロッド側油室115rにそれぞれ接続されている。
【0033】
アーム上げパイロット圧力およびアーム下げパイロット圧力のいずれもがアーム用コントロールバルブ41に作用しないとき、アーム用コントロールバルブ41のスプールは中立位置(Nv)となり、P0ポートとT0ポートとが接続され、P1ポート、P2ポートおよびTポートがAポートおよびBポートと遮断される。
【0034】
バケット上げパイロット圧力およびバケット下げパイロット圧力のいずれもがバケット用コントロールバルブ42に作用しないとき、バケット用コントロールバルブ42のスプールは中立位置(Nv)となり、P0ポートとT0ポートとが接続され、P1ポート、P2ポートおよびTポートがAポートおよびBポートと遮断される。
【0035】
図4〜
図7を参照してアーム操作レバー141およびバケット操作レバー142に基づく動作について説明する。
図6はアーム操作レバー141とバケット操作レバー142の操作位置(A)〜(G)を示す図であり、
図7は
図6の操作位置(A)〜(G)に対応するアーム111およびバケット112の回動方向を示す模式図である。
【0036】
図6に示すように、運転者がアーム操作レバー141を(N)からアーム上げ操作側の(A)位置に配置させるように操作すると、
図4および
図5に示すアーム用コントロールバルブ41にアーム上げパイロット圧力が作用するため、アーム用コントロールバルブ41は中立位置(Nv)からアーム上昇位置(Uv)に向かって切り換わる。アーム上げパイロット圧力の大きさに応じてP0ポートとT0ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、P1ポートとAポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとBポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。すなわち、アーム上げパイロット圧力がアーム用コントロールバルブ41に作用すると、メインポンプ6からの圧油がアームシリンダ114のボトム側油室114bに供給されるように、かつ、アームシリンダ114のロッド側油室114rが作動油タンク7と接続されるようにスプールが移動する。その結果、アームシリンダ114のシリンダロッドが伸長されて、
図7に示すように、アーム111が上方向に回動駆動される。
【0037】
図6に示すように、運転者がアーム操作レバー141を(N)からアーム下げ操作側の(B)位置に配置させるように操作すると、
図4および
図5に示すアーム用コントロールバルブ41にアーム下げパイロット圧力が作用するため、アーム用コントロールバルブ41は中立位置(Nv)からアーム下降位置(Dv)に向かって切り換わる。アーム下げパイロット圧力の大きさに応じてP0ポートとT0ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、P2ポートとBポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとAポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。すなわち、アーム下げパイロット圧力がアーム用コントロールバルブ41に作用すると、メインポンプ6からの圧油がアームシリンダ114のロッド側油室114rに供給されるように、かつ、アームシリンダ114のボトム側油室114bが作動油タンク7と接続されるようにスプールが移動する。その結果、アームシリンダ114のシリンダロッドが縮退されて、
図7に示すように、アーム111が下方向に回動駆動される。
【0038】
図5に示すように、アーム用コントロールバルブ41は、P1,P2ポートを遮断し、P0ポートとT0ポートとを連通し、AポートとBポートとを連通して共にTポートに接続するフロート位置(Fv)を備えている。
【0039】
図4に示すように、アーム操作レバー141は、アーム操作レバー141を所定の操作位置で保持するための周知のデテントソレノイド141a,141bを備えている。
図6に示すように、運転者がアーム操作レバー141を(N)からアーム上げ操作側の「上げ保持位置」である(F)位置に配置させるように操作すると、励磁された
図4に示すデテントソレノイド141aにより、アーム操作レバー141が(F)位置で電磁保持される。これにより、アーム用コントロールバルブ41はアーム上昇位置(Uv)に切り換えられ、その状態で保持される。その結果、
図7に示すように、アーム111が上方向に回動駆動される。
【0040】
図6に示すように、運転者がアーム操作レバー141をアーム下げ操作側の「フロート保持位置」である(C)位置に配置させるように操作すると、励磁された
図4に示すデテントソレノイド141bにより、アーム操作レバー141が(C)位置で電磁保持される。これにより、アーム用コントロールバルブ41はフロート位置(Fv)に切り換えられ、その状態で保持される。その結果、
図7に示すように、アーム111は自由落下して、バケット112が地上に接すると外力のまま自由に上下動するようになる。
【0041】
アーム操作レバー141が電磁保持されている状態でデテントソレノイド141aまたはデテントソレノイド141bへの通電が断たれると、デテントソレノイド141aまたはデテントソレノイド141bによる電磁保持が解除されてアーム操作レバー141は中立位置である(N)位置に戻る。よって、アーム用コントロールバルブ41は中立位置(Nv)に切り換えられる。デテントソレノイド141aによる電磁保持は、後述するようにアーム111が掘削終了高さ(運搬高さ)まで上昇したときや放土高さまで上昇したときに解除される。デテントソレノイド141bによる電磁保持は、アーム111が運搬高さまで下降したときに解除される。
【0042】
図6に示すように、運転者がバケット操作レバー142を(N)からチルト操作側の(D)位置に配置させるように操作すると、
図4および
図5に示すバケット用コントロールバルブ42にバケット上げパイロット圧力が作用するため、バケット用コントロールバルブ42は中立位置(Nv)からバケットチルト位置(Uv)に向かって切り換わる。バケットチルトパイロット圧力の大きさに応じて、P0ポートとT0ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、P1ポートとAポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとBポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。すなわち、バケットチルトパイロット圧力がバケット用コントロールバルブ42に作用すると、メインポンプ6からの圧油がバケットシリンダ115のボトム側油室115bに供給されるように、かつ、バケットシリンダ115のロッド側油室115rが作動油タンク7と接続されるようにスプールが移動する。その結果、バケットシリンダ115のシリンダロッドが伸長されて、
図7に示すように、バケット112が後傾方向(上方向)に回動駆動される。
【0043】
図6に示すように、運転者がバケット操作レバー142を(N)からダンプ操作側の(E)位置に配置させるように操作すると、
図4および
図5に示すバケット用コントロールバルブ42にバケットダンプパイロット圧力が作用するため、バケット用コントロールバルブ42は中立位置(Nv)からバケットダンプ位置(Dv)に向かって切り換わる。バケットダンプパイロット圧力の大きさに応じて、P0ポートとT0ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、P2ポートとBポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとAポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。すなわち、バケットダンプパイロット圧力がバケット用コントロールバルブ42に作用すると、メインポンプ6からの圧油がバケットシリンダ115のロッド側油室115rに供給されるように、かつ、バケットシリンダ115のボトム側油室115bが作動油タンク7と接続されるようにスプールが移動する。その結果、バケットシリンダ115のシリンダロッドが縮退されて、
図7に示すように、バケット112が前傾方向(下方向)に回動駆動される。
【0044】
図4に示すように、バケット操作レバー142は、バケット操作レバー142を所定の操作位置で保持するための周知のデテントソレノイド142aを備えている。
図6に示すように、運転者がバケット操作レバー142をチルト操作側の「戻し保持位置」である(G)位置に配置させるように操作すると、励磁されたデテントソレノイド142aにより、バケット操作レバー142が(G)位置で電磁保持される。これにより、バケット用コントロールバルブ42はバケットチルト位置(Uv)に切り換えられ、その状態で保持される。その結果、
図7に示すように、バケット112が後傾方向(上方向)に回動駆動される。
【0045】
バケット操作レバー142が電磁保持されている状態でデテントソレノイド142aへの通電が断たれると、デテントソレノイド142aによる電磁保持が解除されてバケット操作レバー142は中立位置である(N)位置に戻る。よって、バケット用コントロールバルブ42は中立位置(Nv)に切り換えられる。デテントソレノイド142aによる電磁保持は、バケット112が水平状態、すなわち路面と平行になったときに解除される。
【0046】
図4に示すように、コントローラ10には、アーム角度センサ56と、アーム自動停止モード選択スイッチ197と、後述するアーム111の設定角度を任意に指定するためのアーム角度調整スイッチ57とが接続されている。コントローラ10は、アーム自動停止モード選択スイッチ197がオンされて、アーム自動停止モードが有効になっている状態では、後述する所定の条件が満たされたとき、アーム用コントロールバルブ41を制御してアーム111を停止させる。
【0047】
アーム角度センサ56は、たとえばロータリーポテンショメータであり、電圧を測定することで回動角度が検出できる。
図8を参照して、アーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」で電磁保持させてアーム111を上昇させたときに、アーム111を自動停止させるための設定角度について説明する。
図8は、アーム111の回動範囲とアーム自動停止用設定角度を示す模式図である。
【0048】
図8に示すように、アーム111は下限高さから上限高さまでが回動範囲とされ、第1の設定角度θ1および第2の設定角度θ2が下限高さからの回動角度として設定されている。第1の設定角度θ1は、掘削終了高さ(運搬高さ)に相当する回動角度として、アーム111の水平高さより下の高さに相当する回動範囲において運転者がアーム角度調整スイッチ57によって任意に設定することができる。第2の設定角度θ2は、放土高さに相当する回動角度として、アーム111の水平高さより上の高さに相当する回動範囲において運転者がアーム角度調整スイッチ57によって任意に設定することができる。
【0049】
図8に示す第1の設定角度θ1は、アーム111の掘削終了高さを表す回動角度としてコントローラ10に設定されるものであって、アーム111が掘削終了高さまで上昇したときに、コントローラ10がデテントソレノイド141aへの通電を断って、デテントロックの解除をするための設定角度である。
【0050】
アーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で電磁保持されている場合に、アーム角度センサ56により検出された回動角度が第1の設定角度θ1になったとコントローラ10で判定されると、コントローラ10によりデテントソレノイド141aへの通電が遮断されて、デテントソレノイド141aによるアーム操作レバー141の電磁保持が解除される。
【0051】
したがって、アーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で電磁保持されているときには、メインポンプ6から吐出される圧油はアーム用コントロールバルブ41を介してアームシリンダ114のボトム側油室114bに供給されるが、コントローラ10によりアーム操作レバー141の電磁保持が解除されると、メインポンプ6からアームシリンダ114に供給される圧油がアーム用コントロールバルブ41により遮断され、アーム111が掘削終了高さで停止する。
【0052】
第1の設定角度θ1から所定の回動角度φ1の範囲は、デテントソレノイド141aを励磁しない下側デテント不可範囲として設定されている。したがって、この下側デテント不可範囲では、
図6に示した「上げ保持位置(F)」に配置するように運転者がアーム操作レバー141を操作しても、アーム操作レバー141は電磁保持されない。
【0053】
コントローラ10は、下側デテント不可範囲にあるアーム111が上昇して、アーム角度センサ56からの回動角度に基づき、アーム111の回動角度が下側デテント不可範囲を超えたと判定すると、再びデテントソレノイド141aを励磁する。デテントソレノイド141aが励磁された状態では、アーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」まで操作されると、アーム操作レバー141はデテントされる。このように、コントローラ10は、下側デテント不可範囲内ではアーム操作レバー141の電磁保持を禁止し、下側デテント不可範囲を超えると再びアーム操作レバー141の電磁保持を許可する。
【0054】
図8に示す第2の設定角度θ2は、アーム111の放土高さを表す回動角度としてコントローラ10に設定されるものであって、アーム111が放土高さまで上昇したときに、コントローラ10がデテントソレノイド141aへの通電を断って、デテントロックの解除をするための設定角度である。
【0055】
アーム111が下側デテント不可範囲を超えているときにアーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」まで操作すると、アーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で電磁保持される。アーム角度センサ56により検出された回動角度が第2の設定角度θ2になったとコントローラ10で判定されると、コントローラ10によりデテントソレノイド141aへの通電が遮断されて、デテントソレノイド141aによるアーム操作レバー141の電磁保持が解除される。
【0056】
アーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で電磁保持されているときには、メインポンプ6から吐出される圧油はアーム用コントロールバルブ41を介してアームシリンダ114のボトム側油室114bに供給されるが、コントローラ10によりアーム操作レバー141の電磁保持が解除されると、メインポンプ6からアームシリンダ114に供給される圧油がアーム用コントロールバルブ41により遮断され、アーム111が放土高さで停止する。
【0057】
第2の設定角度θ2から所定の回動角度φ2の範囲(放土高さから上限高さまでの範囲)は、アーム操作レバー141の電磁保持を禁止する範囲、すなわちデテントソレノイド141aを励磁しない上側デテント不可範囲として設定されている。したがって、この上側デテント不可範囲では、
図6に示した「上げ保持位置(F)」に配置するように運転者がアーム操作レバー141を操作しても、アーム操作レバー141は電磁保持されない。
【0058】
図9および
図10を参照して、バケット112のアーム111に対する回動角度を表すバケットシリンダ115のストローク量を検出するストローク量検出装置58について説明する。
図9はバケット112の最後傾状態を示す説明図である。
図10はバケットシリンダ115の伸縮状態を示す説明図である。
【0059】
図9に示すように、ストローク量検出装置58は、バケットシリンダ115に沿って設けられた被検知バー81と、被検知バー81に対向するようにバケットシリンダ115のシリンダ本体の外周面に配設された近接スイッチ82および近接スイッチ92とを有している。
【0060】
図10(a)に示すように、被検知バー81は、バケットシリンダ115のロッドの伸縮に伴って移動するように、基端がロッドの先端部に取り付けられている。被検知バー81には、所定位置において、所定長さ寸法の切欠き凹部81aおよび切欠き凹部81bが形成されている。切欠き凹部81aは、バケットシリンダ115のロッドがストロークエンドに達したときに、近接スイッチ82に近接して対向する位置に形成されている。切欠き凹部81bは、バケットシリンダ115が水平状態になったときに、近接スイッチ92に近接して対向する位置に形成されている。
【0061】
近接スイッチ82は、バケット112が最後傾状態になったこと、すなわちバケットシリンダ115のロッドがストロークエンドに達したことを検出するスイッチである。近接スイッチ82は、切欠き凹部81aが近接しているときにはオフ信号をコントローラ10に送信し、切欠き凹部81aが離間しているときにはオン信号をコントローラ10に送信する。
【0062】
近接スイッチ92は、バケット112が水平状態になったことを検出するスイッチである。近接スイッチ92は、切欠き凹部81bが近接スイッチ82に近接して対向する位置に配置されたときにはオフ信号をコントローラ10に送信し、切欠き凹部81bが離間しているときにはオン信号をコントローラ10に送信する。
【0063】
図10(a)に示すように、被検知バー81の切欠き凹部81bが近接スイッチ92から十分離間した状態では、近接スイッチ92からコントローラ10にオン信号が送信される。この状態からバケットシリンダ115のロッドが伸張されてバケット112が後傾方向(上方向)に回動され、
図10(b)に示すように、バケット112が水平状態になるようにバケットシリンダ115のロッドが伸張されると、近接スイッチ92に切欠き凹部81bが近接するため、近接スイッチ92からコントローラ10にオフ信号が送信される。
【0064】
図10(a)および
図10(b)に示すように、被検知バー81の切欠き凹部81aが近接スイッチ82から十分離間した状態では、近接スイッチ82からコントローラ10にオン信号が送信されている。この状態からバケットシリンダ115のロッドが伸張されてバケット112が後傾方向(上方向)に回動され、
図10(c)に示すように、バケット112が最後傾状態になるようにバケットシリンダ115のロッドが伸張されると、近接スイッチ82に切欠き凹部81aが近接するため、近接スイッチ82からコントローラ10にオフ信号が送信される。
【0065】
このように、ストローク量検出装置58は、バケットの最後傾状態を検出するバケット最後傾検出手段、および、バケットの水平状態を検出するバケット水平状態検出手段として機能する。
【0066】
図11および
図12は、コントローラ10によるアーム上げ操作時のアーム自動停止制御ならびに後進自動切換制御の動作処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、不図示のイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、コントローラ10で繰り返し実行される。
【0067】
ステップS100において、アーム角度センサ56とストローク量検出装置58の検出値の読み込みを開始してステップS103へ進み、デテントソレノイド141aへ通電する。次ステップS105では、ステップS100において読込んだアーム角度θがアーム111の掘削終了高さを表す第1設定角度θ1未満であるか否かを判定する。
【0068】
ステップS105において、アーム角度θが第1設定角度θ1未満である(θ<θ1)と判定されると、ステップS110へ進み、アーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で電磁保持されたか否かを判定する。
【0069】
アーム角度θが第1設定角度θ1未満ではデテントソレノイド141aによるアーム操作レバー141の電磁保持が可能である(
図8参照)ので、運転者はアーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」(
図6参照)で電磁保持させることができる。
【0070】
ステップS110において肯定判定されると、ステップS120へ進み、アーム角度θがアーム111の掘削終了高さを表す第1設定角度θ1以上になったか否かを判定する。ステップS120において、アーム角度θが第1設定角度以上である(θ≧θ1)と判定されると、ステップS122へ進み、アーム自動停止モードが設定されているか否かを判定する。アーム自動停止モード選択スイッチ197がオンされていれば、ステップS122において肯定判定されてステップS125へ進み、ステップS122において否定判定されるとリターンする。
【0071】
ステップS125では、デテントソレノイド141aの通電を遮断してアーム操作レバー141の電磁保持を解除して、ステップS130へ進む。電磁保持が解除されると、アーム操作レバー141は、不図示のばねの力により中立位置(N)に戻るため(
図6参照)、アーム用コントロールバルブ41は位置(Nv)に切り換わる(
図4および
図5参照)。
【0072】
ステップS130では、バケット112が最後傾状態になったか否かが判定される。近接スイッチ82からコントローラ10にオフ信号が送信されると、ステップS130において肯定判定されて、ステップS132へ進み、自動後進モードが設定されているか否かを判定する。自動後進モード選択スイッチ196がオンされていれば、ステップS132において肯定判定されてステップS135へ進み、ステップS132において否定判定されるとリターンする。
【0073】
ステップS135では、前後進切換レバー195の操作に拘わらずに後進モードに設定する、すなわちコントローラ10は後進走行信号を前後進切換弁17に送信してステップS140へ進む。ステップS135では、自動で後進モードに設定されていることを示す後進切換フラグをオン状態にする。ここで、後進モードに設定されていることを示す報知ランプ(不図示)を点灯させてもよい。
【0074】
ステップS140では、後進切換フラグがオン状態のときに、アーム角度θが設定角度θd(=θ1+φ1)以上であるか否かを判定する。ステップS140において、アーム角度θが設定角度θd以上である(θ≧θd)と判定されると、ステップS145へ進み、前後進切換レバー195からの指示信号に基づく走行モードに設定してリターンする。掘削作業時は、前後進切換レバー195は、通常、前進側で保持されている。この場合、コントローラ10は後進走行信号に代えて前進走行信号を前後進切換弁17に出力してリターンする。このとき、後進切換フラグはリセットされる。
【0075】
ステップS105において、アーム角度θが第1設定角度θ1以上である(θ≧θ1)と判定されると、
図12に示すステップS150へ進み、アーム角度θが設定角度θd(=θ1+φ1)未満であるか否かを判定する。ステップS150において、アーム角度θがθd未満である(θ<θd=θ1+φ1)と判定されると、ステップS155へ進み、デテントソレノイド141aへの通電を遮断する信号をコントローラ10に送信してリターンする、すなわち、θ≧θ1,θ<θdの範囲ではデテントの作動が禁止される(
図8参照)。
【0076】
ステップS150において、アーム角度θが設定角度θd以上である(θ≧θd)と判定されると、ステップS160へ進み、アーム角度θが第2設定角度θ2未満であるか否かを判定する。ステップS160において、アーム角度θがθ2未満である(θ<θ2)と判定されると、ステップS163へ進み、デテントソレノイド141aへの通電を再開する。次ステップS165では、アーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で電磁保持されたか否かを判定する。
【0077】
アーム角度θが設定角度θd(=θ1+φ1)以上であり、かつ第2設定角度θ2未満ではデテントソレノイド141aによるアーム操作レバー141の電磁保持が可能である(
図8参照)ので、運転者はアーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」(
図6参照)で電磁保持させることができる。
【0078】
ステップS165において肯定判定されると、ステップS170へ進み、アーム角度θがアーム111の放土高さを表す第2設定角度θ2以上になったか否かを判定する。ステップS170において、アーム角度θが第2設定角度θ2以上である(θ≧θ2)と判定されると、ステップS175へ進む。
【0079】
ステップS175では、デテントソレノイド141aの通電を遮断してアーム操作レバー141の電磁保持を解除し、リターンする。電磁保持が解除されると、アーム操作レバー141は、不図示のばねの力により中立位置(N)に戻るため(
図6参照)、アーム用コントロールバルブ41は位置(Nv)に切り換わる(
図4および
図5参照)。
【0080】
ステップS160において、アーム角度θが第2設定角度θ2以上である(θ≧θ2)と判定されると、ステップS155へ進み、上記したようにデテントソレノイド141aへの通電を遮断する信号をコントローラ10に送信してリターンする、すなわち、θ≧θ2の範囲ではデテントの作動が禁止される(
図8参照)。
【0081】
本実施の形態の特徴的な動作を掘削作業から積込みトラックへの放土作業までの一連の作業手順に沿って説明する。
(1)運転者は、自動後進モード選択スイッチ196およびアーム自動停止モード選択スイッチ197をオンにして、自動後進モードおよびアーム自動停止モードを有効にしておく。
【0082】
(2)運転者はバケット操作レバー142とアーム操作レバー141とを操作して、バケット112が地面から僅かな高さを隔てて地面と平行になるようにしておく。運転者はバケット操作レバー142を(E)位置(
図6参照)に配置させるように操作してバケット112を前傾(ダンプ)させた後、バケット操作レバー142を「戻し保持位置(G)」(
図6参照)に配置させるように操作してバケット操作レバー142を電磁保持させれば、バケット112が後傾方向に回動して、バケット112が水平状態になったときに電磁保持が解除される。
【0083】
(3)運転者は前後進切換レバー195を前進側へ切り換え、アクセルペダル192を踏み込み操作して、ホイールローダ100を土砂などの対象物に向けて前進走行させ、バケット112を対象物に突っ込む。運転者はアーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」(
図6参照)に配置させるように操作してアーム操作レバー141を電磁保持させ、バケット操作レバー142を操作して、バケット112を徐々に後傾方向(上方向)に回動させることで対象物をバケット112内に積み込んでいく。本実施の形態ではパラレル油圧回路を採用しているため、
図13に示すように、メインポンプ6から吐出された圧油は、アーム用コントロールバルブ41を介してアームシリンダ114のボトム側油室114bに導かれるとともに、バケット用コントロールバルブ42を介してバケットシリンダ115のボトム側油室115bに導かれる。
【0084】
(4)アームシリンダ114のロッドが伸張して、掘削終了高さまでアーム111が上昇すると自動でアーム操作レバー141の電磁保持が解除される(ステップS120,125参照)。これにより、
図14に示すように、アーム用コントロールバルブ41が位置(Nv)に切り換わり、メインポンプ6からアームシリンダ114に供給される圧油がアーム用コントロールバルブ41により遮断される。アーム用コントロールバルブ41が位置(Nv)に切り換わると、メインポンプ6から吐出された油の全流量がバケット用コントロールバルブ42に導入される。
図14に示すように、運転者がバケット操作レバー142を上げ方向に操作していれば、バケット用コントロールバルブ42に導入された油はバケットシリンダ115のボトム側油室115bへ導かれるため、シリンダロッドの伸長速度が上昇する。その結果、バケット112が素早く後傾方向(上方向)に回動して対象物がバケット112内の後側に引き込まれる。これにより、バケット112が最後傾状態となると、安定した荷姿(運搬姿勢)が形成される。
【0085】
(5)バケット112が最後傾状態となるまでバケット112を回動すると、前後進切換弁17が自動で後進側に切り換わる(ステップS130,S135参照)。このとき、前後進切換レバー195は前進側に操作されているが、前後進切換レバー195の操作位置とは無関係に前後進切換弁17が後進側に切り換えられる。したがって、アクセルペダル192の踏み込み量に応じて、ホイールローダ100が後進走行する。運転者はアクセルペダル192とステアリングホイール191を操作して、ホイールローダ100を後進走行させ、対象物から離れる。
【0086】
(6)運転者は、後進走行により所定位置まで後退したとき、前進走行するためにアーム操作レバー141を上げ方向に動作させる。これにより、前後進切換弁17が自動で前進側に切り換わる(ステップS140,145参照)。運転者は、アクセルペダル192とステアリングホイール191を操作して、ホイールローダ100を前進走行させ、対象物を運搬するトラックに近づく。
【0087】
(7)運転者は、アーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」に配置させるように操作してアーム操作レバー141を電磁保持させる。アーム111が放土高さまで上昇すると、自動でアーム操作レバー141の電磁保持が解除される(ステップS170,S175参照)。運転者は、バケット操作レバー142を操作して、バケット112をダンプさせることで対象物を積込みトラックへ放土する。
【0088】
(8)運転者は、バケット操作レバー142を「戻し保持位置(G)」に配置させるように操作してバケット操作レバー142を電磁保持させる。バケット112が水平状態まで回動すると、自動でバケット操作レバー142の電磁保持が解除される。運転者は、アーム操作レバー141を下げ方向に操作して、アーム111を下降させる。なお、アーム111の下降動作は、アーム操作レバー141を「フロート保持位置(C)」に配置させるように操作してアーム操作レバー141を電磁保持させる。コントローラ10はアーム111が運搬高さ相当になったときに、自動でアーム操作レバー141の電磁保持を解除する。
なお、「フロート保持位置(C)」で作業する場合は、アーム操作レバー141を「アーム下げ位置(B)」でバケット112を地面に接地させてから、「フロート保持位置(C)」までアーム操作レバー141を倒す。「フロート保持位置(C)」でアーム操作レバー141を電磁保持させておくことで、バケット112は外力のまま自由に上下動する。
【0089】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)アーム用コントロールバルブ41およびバケット用コントロールバルブ42のそれぞれをメインポンプ6に対してパラレルに接続し、デテントソレノイド141aによりアーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で保持されている場合に、アーム角度センサ56により検出された回動角度が、アーム111の掘削終了高さを表す第1の設定角度θ1になったとき、アーム用コントロールバルブ41を制御してメインポンプ6からアームシリンダ114に供給される圧油を遮断させるようにした。
【0090】
これにより、アーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」で保持させてアーム111を上昇させているときに、運転者はバケット操作レバー142を操作してバケット112を後傾方向へ回動駆動させれば、アーム111が掘削終了高さまで上昇したときに、自動でアーム111が停止し、かつ、バケット112が素早く回動して土砂が効率よくバケット112の後方に引き込まれ、バケット112が最後傾状態となると、安定した荷姿(運搬姿勢)が形成される。すなわち、経験の浅い運転者でも容易に掘削作業終了後に運搬姿勢に移行できる操作性に優れたホイールローダ100を提供することができる。
【0091】
(2)掘削終了高さでアーム111が自動で停止するため、誤ってアーム111を掘削終了高さ以上の高さまで上昇させてしまうことがなく、アーム高さが高すぎることにより重心が高くなり、後進走行中にバランスが崩れてしまうといったことが防止される。すなわち、経験の浅い運転者でも安全に掘削作業終了後に運搬姿勢に移行できる操作性に優れたホイールローダ100を提供することができる。
【0092】
(3)掘削終了高さで自動でアーム111を停止させる制御を実行させるか否かを選択するアーム自動停止モード選択スイッチ197を設けたので、状況に応じてアーム自動停止モードを使い分けることができる。
【0093】
(4)掘削作業終了後に運搬姿勢へと移行すると、自動で前後進切換弁17が後進側へ切り換わる。そのため、運転者が前後進切換レバー195を後進側へ切り換える必要がなく、スムーズに後進走行に移行できる。その結果、経験の浅い運転者でも容易に操作することができ、作業効率の向上を図ることのできる操作性に優れたホイールローダ100を提供することができる。
【0094】
(5)(4)により前後進切換弁17が後進側へ切り換わった後、アーム操作レバー141を上げ方向に操作するだけで、前後進切換レバー195による信号に基づき前後進切換弁17が切り換わり、前後進切換レバー195が前進側の操作位置に配置されていれば、前後進切換弁17は前進側へ切り換わる。そのため、運転者が前後進切換レバー195を前進側へ切り換える必要がなく、スムーズに前進走行に移行できる。その結果、経験の浅い運転者でも容易に操作することができ、作業効率の向上を図ることのできる操作性に優れたホイールローダ100を提供することができる。
【0095】
(6)デテントソレノイド141aによりアーム操作レバー141が「上げ保持位置(F)」で保持されている場合に、アーム角度センサ56により検出された回動角度が、アーム111の放土高さを表す第2の設定角度θ2になったとき、アーム用コントロールバルブ41を制御してメインポンプ6からアームシリンダ114に供給される圧油を遮断させるようにした。
【0096】
これにより、アーム操作レバー141を「上げ保持位置(F)」で保持させておけば、アーム111が放土高さまで上昇したときに、自動でアーム111が停止する。経験の浅い運転者でも、放土高さを超えてさらにアーム111を上昇させてしまうことがなく、容易に適正な放土高さまでアーム111を上昇させ、積込みトラックに対象物を放土することができる。
【0097】
(7)バケット112が最後傾状態になったときに、自動で後進モードに設定する制御を実行させるか否かを選択する自動後進モード選択スイッチ196を設けたので、状況に応じて自動後進モードを使い分けることができる。
【0098】
―第2の実施の形態―
図15および
図16を参照して、第2の実施の形態に係るホイールローダ100を説明する。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。以下、第1の実施の形態との相違点について詳しく説明する。第1の実施の形態では、掘削終了後のバケットチルト操作により、バケット112が最後傾姿勢になると、コントローラ10が自動で後進モードに切り換えるようにしたが、第2の実施の形態では、運転者の後進指示により後進モードに切り換えるようにした。
【0099】
図15は本発明の第2の実施の形態に係るホイールローダ100のバケット操作レバー242を示す図である。第2の実施の形態では、
図15に示すように、バケット操作レバー242の頂部に後進指示スイッチ242aが設けられている。後進指示スイッチ242aは、モーメンタリ動作型のスイッチであり、押し下げられているときだけホイールローダ100の後進を指示するオン信号をコントローラ10に出力する。
【0100】
コントローラ10は、後進指示スイッチ242aからの指示信号と、前後進切換レバー195からの指示信号とが競合したとき、後進指示スイッチ242aからの指示を優先して後進モードに設定する。通常走行時などでは後進指示スイッチ242aの指示は、コントローラ10により無効化されており、後進指示スイッチ242aが操作されてもコントローラ10は後進モードに切り換えない。コントローラ10は、後述する後進指示有効化条件が成立しているか否かを判定し、後進指示有効化条件が成立している判定された場合には、後進指示スイッチ242aの指示を有効化し、後進指示有効化条件が成立していないと判定された場合には、後進指示スイッチ242aの指示を無効化する。
【0101】
図16は本発明の第2の実施の形態に係るホイールローダ100のコントローラ10によるアーム上げ操作時のアーム自動停止制御ならびに後進切換制御の動作処理の一例を示すフローチャートである。
図16は、
図11のフローチャートのステップS132〜145を削除し、ステップS231〜245を追加したものである。
【0102】
第2の実施の形態では、コントローラ10が自動で後進信号を出力しない。コントローラ10は、ステップS120において、アーム111が上方向に回動駆動されてアーム角度センサ56により第1の設定角度θ1が検出され、かつ、ステップS130において、バケット112が後傾方向に回動駆動されてバケット112の最後傾状態が検出されたときに後進指示有効化条件が成立していると判定してステップS231へ進み、後進指示スイッチ242aからの信号を有効化して、ステップS232へ進む。ここで、後進指示スイッチ242aによる指示が可能になったことを示す報知ランプ(不図示)を点灯させてもよい。
【0103】
ステップS232では、後進指示スイッチ242aが押圧操作されたか否かを判定する。ステップS232において、後進指示スイッチ242aが押圧操作され、オン信号がコントローラ10に送信されると、ステップS235へ進み、前後進切換レバー195の操作に拘わらずに後進モードに設定する、すなわちコントローラ10は後進走行信号を前後進切換弁17に送信してステップS240へ進む。
【0104】
ステップS240では、後進指示スイッチ242aの押圧操作が解除され、不図示のばねの力により後進指示スイッチ242aが復帰すると、後進指示スイッチ242aからのオフ信号がコントローラ10に送信され、後進指示スイッチ242aがオフになったことが判定され、ステップS245へ進む。
【0105】
ステップS245では、前後進切換レバー195からの指示信号に基づく走行モードに設定してリターンする。掘削作業時は、前後進切換レバー195は、通常、前進側で保持されている。この場合、コントローラ10は後進走行信号に代えて前進走行信号を前後進切換弁17に出力してリターンする。
【0106】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した(1)〜(3),(6)と同様の効果を奏する。さらに、第2の実施の形態によれば、アーム111が運搬高さに位置し、かつ、バケット112が最後傾状態となった運搬姿勢になったときに、運転者の意思で後進走行へと移行できる。
【0107】
具体的には、第2の実施の形態によれば、掘削作業終了後にバケット112が最後傾状態になると、バケット操作レバー142に設けられた後進指示スイッチ242aによる指示信号が有効化されるため、運転者はバケット操作レバー142を後傾方向へ回動操作した後、後進指示スイッチ242aを操作することで、スムーズに後進走行に移行できる。したがって、バケット操作レバー142を操作するだけで安定した荷姿を形成でき、さらに後進走行にスムーズに移行できる。すなわち、第2の実施の形態によれば、経験の浅い運転者でも容易に操作することができ、作業効率の向上を図ることのできる操作性に優れたホイールローダ100を提供することができる。
【0108】
第2の実施の形態によれば、後進指示スイッチ242aにモーメンタリ動作型のスイッチを採用しているため、運転者が後進指示スイッチ242aを離せば、後進走行を止めてスムーズに前進走行へと移行できる。すなわち、第2の実施の形態によれば、経験の浅い運転者でも容易に操作することができ、作業効率の向上を図ることのできる操作性に優れたホイールローダ100を提供することができる。
【0109】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
[変形例]
(1)上記した実施の形態では、自動後進モード選択スイッチ196やアーム自動停止モード選択スイッチ197を設けることとしたが、本発明はこれに限定されず、自動後進モード選択スイッチ196やアーム自動停止モード選択スイッチ197を省略してもよい。
【0110】
(2)上記した実施の形態では、アーム111が掘削終了高さまで上昇したときに、アーム操作レバー141の電磁保持を解除して、アーム用コントロールバルブ41を駆動することとしたが、本発明はこれに限定されない。
図17に示すようにパイロットライン上に電磁弁250を設けて、アーム操作レバー141を電磁保持したまま、アーム操作レバー141のパイロット弁からアーム用コントロールバルブ41へのパイロットラインを遮断することで、アーム用コントロールバルブ41を中立位置(Nv)へ切り換えてもよい。
【0111】
(3)上記した実施の形態では、アーム角度センサにロータリーポテンショメータを用いたが、本発明はこれに限定されない。近接スイッチを複数設けてもよいし、ロータリーエンコーダを設けるなど、種々の角度検出手段を用いることができる。
【0112】
(4)上記した実施の形態では、ストローク量検出装置に近接スイッチを用いたが、本発明はこれに限定されない。リミットスイッチなど、種々の検出手段を用いることができる。ロータリーポテンショメータなどの角度検出手段をバケット112の回動部に設けることとしてもよい。
【0113】
(5)上記した実施の形態のステップS140において行われるアーム上げ操作を判定するための処理は、アーム角度センサ56によって検出されたアーム111の回動角度に基づいて実行する場合に限定されることなく、アーム用コントロールバルブ41を上げ側へ操作するパイロット圧を検出するアーム上げパイロット圧力センサによる検出値に基づいて行ってもよい。アーム上げ操作ではなく不図示の復帰スイッチが操作されたことを判定して、ステップS145へ進むこととしてもよい。
【0114】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。