特許第5782033号(P5782033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5782033半導体素子用エピタキシャル基板、半導体素子、PN接合ダイオード素子、および半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782033
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】半導体素子用エピタキシャル基板、半導体素子、PN接合ダイオード素子、および半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20150907BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L21/205
   H01L29/91 F
   H01L29/91 C
   H01L29/91 H
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-526510(P2012-526510)
(86)(22)【出願日】2011年7月26日
(86)【国際出願番号】JP2011066948
(87)【国際公開番号】WO2012014883
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-170320(P2010-170320)
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】三好 実人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】市村 幹也
(72)【発明者】
【氏名】田中 光浩
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−140813(JP,A)
【文献】 特開2005−268493(JP,A)
【文献】 特開平06−283825(JP,A)
【文献】 特開2008−235613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/205
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板の上にIII族窒化物層群を(0001)結晶面が基板面に対し略平行となるよう積層形成した半導体素子用のエピタキシャル基板であって、
前記下地基板の上に形成されてなる、Inx1Aly1Gaz1N(x1+y1+z1=1、z1>0)なる組成の第1のIII族窒化物からなるチャネル層と、
前記チャネル層の上に形成されてなる、Inx2Aly2N(x2+y2=1、0.14≦x2≦0.24)なる組成の第2のIII族窒化物からなる障壁層と、
前記障壁層の上に形成されてなる、AlNからなり、3nm以上の厚みを有する拡散防止層と、
前記拡散防止層の上に形成されてなる、Aly3Gaz3N(y3+z3=1、0≦y3≦0.2)なる組成の第3のIII族窒化物からなるキャップ層と、
を備えることを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項2】
下地基板の上にIII族窒化物層群を(0001)結晶面が基板面に対し略平行となるよう積層形成した半導体素子用のエピタキシャル基板であって、
前記下地基板の上に形成されてなる、Inx1Aly1Gaz1N(x1+y1+z1=1、z1>0)なる組成の第1のIII族窒化物からなるチャネル層と、
前記チャネル層の上に形成されてなる、Inx2Aly2N(x2+y2=1、x2>0、y2>0)なる組成の第2のIII族窒化物からなる障壁層と、
前記障壁層の上に形成されてなる、AlNからなり、3nm以上の厚みを有する拡散防止層と、
前記拡散防止層の上に形成されてなる、Aly3Gaz3N(y3+z3=1、z3>0)なる組成の第3のIII族窒化物にアクセプタ元素をドープしたものであるキャップ層と、
を備えることを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項3】
請求項2に記載のエピタキシャル基板であって、
前記アクセプタ元素がMgである、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエピタキシャル基板であって、
前記第2のIII族窒化物のバンドギャップが前記第1のIII族窒化物のバンドギャップよりも大きい、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のエピタキシャル基板であって、
前記第1のIII族窒化物がAly1Gaz1N(y1+z1=1、z1>0)である、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項6】
請求項5に記載のエピタキシャル基板であって、
前記第1のIII族窒化物がGaNである、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のエピタキシャル基板であって、
前記チャネル層と前記障壁層との間に、Inx4Aly4Gaz4N(x4+y4+z4=1、y4>0)なる組成を有し、前記第2のIII族窒化物よりもバンドギャップが大きい第4のIII族窒化物からなるスペーサ層をさらに備える、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項8】
請求項7に記載のエピタキシャル基板であって、
前記第4のIII族窒化物がAlNである、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の半導体素子用エピタキシャル基板を用いて作製した、半導体素子。
【請求項10】
請求項2または請求項3に記載の半導体素子用エピタキシャル基板を用いて作製した、PN接合ダイオード素子。
【請求項11】
下地基板の上にIII族窒化物層群を(0001)結晶面が基板面に対し略平行となるよう積層形成した半導体素子用のエピタキシャル基板の製造方法であって、
下地基板の上に、Inx1Aly1Gaz1N(x1+y1+z1=1、z1>0)なる組成の第1のIII族窒化物にてチャネル層を形成するチャネル層形成工程と、
前記チャネル層の上に、Inx2Aly2N(x2+y2=1、0.14≦x2≦0.24)なる組成の第2のIII族窒化物にて障壁層を形成する障壁層形成工程と、
前記障壁層の上にAlNからなる拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程と、
前記拡散防止層の上にAly3Gaz3N(y3+z3=1、z3>0)なる組成の第3のIII族窒化物にアクセプタ元素をドープすることによってキャップ層を形成するキャップ層形成工程と、
を備えることを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のエピタキシャル基板の製造方法であって、
前記アクセプタ元素がMgである、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のエピタキシャル基板の製造方法であって、
前記第2のIII族窒化物のバンドギャップが前記第1のIII族窒化物のバンドギャップよりも大きい、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13のいずれかに記載のエピタキシャル基板の製造方法であって、
前記第1のIII族窒化物がAly1Gaz1N(y1+z1=1、z1>0)である、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のエピタキシャル基板の製造方法であって、
前記第1のIII族窒化物がGaNである、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項16】
請求項11ないし請求項15のいずれかに記載のエピタキシャル基板の製造方法であって、
前記チャネル層の上に、Inx4Aly4Gaz4N(x4+y4+z4=1、y4>0)なる組成を有し、前記第2のIII族窒化物よりもバンドギャップが大きい第4のIII族窒化物からなるスペーサ層を形成するスペーサ層形成工程、
をさらに備え、
前記障壁層形成工程においては、前記スペーサ層の上に前記障壁層を形成する、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載のエピタキシャル基板の製造方法であって、
前記第4のIII族窒化物がAlNである、
ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体素子用のエピタキシャル基板に関し、特に、III族窒化物半導体により構成される多層構造エピタキシャル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、高い絶縁破壊電界、高い飽和電子速度を有することから次世代の高周波/ハイパワーデバイス用半導体材料として注目されている。例えば、AlGaNからなる障壁層とGaNからなるチャネル層とを積層してなるHEMT(高電子移動度トランジスタ)素子は、窒化物材料特有の大きな分極効果(自発分極効果とピエゾ分極効果)により積層界面(ヘテロ界面)に高濃度の二次元電子ガス(2DEG)が生成するという特徴を活かしたものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
HEMT素子用基板の下地基板として、例えばシリコンやSiCのような、III族窒化物とは異なる組成の単結晶(異種単結晶)を用いることがある。この場合、歪み超格子層や低温成長緩衝層などの緩衝層が、初期成長層として下地基板の上に形成されるのが一般的である。よって、下地基板の上に障壁層、チャネル層、および緩衝層をエピタキシャル形成してなるのが、異種単結晶からなる下地基板を用いたHEMT素子用基板の最も基本的な構成態様となる。これに加えて、障壁層とチャネル層の間に、2次元電子ガスの空間的な閉じ込めを促進する目的として、厚さ1nm前後のスペーサ層が設けられることもある。スペーサ層は、例えばAlNなどで構成される。さらには、HEMT素子用基板の最表面におけるエネルギー準位の制御や、電極とのコンタクト特性の改善を目的として、例えばn型GaN層や超格子層からなるキャップ層が、障壁層の上に形成される場合もある。
【0004】
チャネル層をGaNにて形成し、障壁層をAlGaNにて形成するという、最も一般的な構成の窒化物HEMT素子の場合、HEMT素子用基板に内在する二次元電子ガスの濃度は、障壁層を形成するAlGaNのAlNモル分率の増加に伴い増加することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。二次元電子ガス濃度を大幅に増やすことができれば、HEMT素子の可制御電流密度、すなわち取り扱える電力密度を大幅に向上させることが可能と考えられる。
【0005】
また、チャネル層をGaNにて形成し、障壁層をInAlNにて形成したHEMT素子のように、ピエゾ分極効果への依存が小さくほぼ自発分極のみにより高い濃度で二次元電子ガスを生成できる歪の少ない構造を有するHEMT素子も注目されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0006】
チャネル層をGaNにて形成し、障壁層をInAlNにて形成するInAlN/GaN構造のHEMT素子を形成するにあたり、電流コラプス抑制などを目的として、GaN、AlGaNなど、少なくともGaを含むInAlGaNからなるキャップ層を、障壁層の上に形成することがある。この場合、キャップ層の形成条件によっては、Ga元素が障壁層であるInAlN層中に拡散し、その結果としてエピタキシャル膜の電子状態が変動して、デバイス特性が劣化する。
【0007】
また、同じくInAlN/GaN構造のHEMT素子を形成するにあたり、ゲート電極構造をショットキー接合に代えてInAlN層との間でPN接合とする目的で、Mgを含む窒化物キャップ層を障壁層の上に形成することがある。この場合、キャップ層の形成条件によっては、アクセプタとしてドープしたMg元素が障壁層であるInAlN層中に拡散し、良好なPN接合が得られない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Highly Reliable 250W High Electron Mobility Transistor Power Amplifier", TOSHIHIDE KIKKAWA, Jpn. J. Appl. Phys. 44,(2005),4896
【非特許文献2】"Gallium Nitride Based High Power Heterojuncion Field Effect Transistors: process Development and Present Status at USCB", Stacia Keller, Yi-Feng Wu, Giacinta Parish, Naiqian Ziang, Jane J. Xu, Bernd P. Keller, Steven P. DenBaars, and Umesh K. Mishra, IEEE Trans. Electron Devices 48, (2001), 552
【非特許文献3】"Can InAlN/GaN be an alternative to high power/high temperature AlGaN/GaN devices?", F. Medjdoub, J.-F. Carlin, M. Gonschorek, E. Feltin, M.A. Py, D. Ducatteau, C. Gaquiere, N. Grandjean, and E. Kohn, IEEE IEDM Tech. Digest in IEEE IEDM 2006, 673
【発明の概要】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、キャップ層からの元素の拡散が好適に抑制され、かつ特性の優れた、半導体素子用のエピタキシャル基板を提供することを目的とする。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様では、下地基板の上にIII族窒化物層群を(0001)結晶面が基板面に対し略平行となるよう積層形成した半導体素子用のエピタキシャル基板が、前記下地基板の上に形成されてなる、Inx1Aly1Gaz1N(x1+y1+z1=1、z1>0)なる組成の第1のIII族窒化物からなるチャネル層と、前記チャネル層の上に形成されてなる、Inx2Aly2N(x2+y2=1、0.14≦x2≦0.24)なる組成の第2のIII族窒化物からなる障壁層と、前記チャネル層の上に形成されてなる、AlNからなり、3nm以上の厚みを有する拡散防止層と、前記拡散防止層の上に形成されてなる、Aly3Gaz3N(y3+z3=1、0≦y3≦0.2)なる組成の第3のIII族窒化物からなるキャップ層と、を備えるようにした。
【0011】
本発明の第2の態様では、下地基板の上にIII族窒化物層群を(0001)結晶面が基板面に対し略平行となるよう積層形成した半導体素子用のエピタキシャル基板が、前記下地基板の上に形成されてなる、Inx1Aly1Gaz1N(x1+y1+z1=1、z1>0)なる組成の第1のIII族窒化物からなるチャネル層と、前記チャネル層の上に形成されてなる、Inx2Aly2N(x2+y2=1、x2>0、y2>0)なる組成の第2のIII族窒化物からなる障壁層と、前記障壁層の上に形成されてなる、AlNからなり、3nm以上の厚みを有する拡散防止層と、前記拡散防止層の上に形成されてなる、Aly3Gaz3N(y3+z3=1、z3>0)なる組成の第3のIII族窒化物にアクセプタ元素をドープしたものであるキャップ層と、を備えるようにした。
本発明の第3の態様では、第2の態様に係るエピタキシャル基板において、前記アクセプタ元素がMgであるようにした。
本発明の第の態様では、第1ないし第3のいずれかの態様に係るエピタキシャル基板において、前記第2のIII族窒化物のバンドギャップが前記第1のIII族窒化物のバンドギャップよりも大きいようにした。
【0015】
本発明の第の態様では、第1ないし第のいずれかの態様に係るエピタキシャル基板において、前記第1のIII族窒化物がAly1Gaz1N(y1+z1=1、z1>0)であるようにした。
【0016】
本発明の第の態様では、第の態様に係るエピタキシャル基板において、前記第1のIII族窒化物がGaNであるようにした。
【0017】
本発明の第の態様では、第1ないし第のいずれかの態様に係るエピタキシャル基板において、前記チャネル層と前記障壁層との間に、Inx4Aly4Gaz4N(x4+y4+z4=1、y4>0)なる組成を有し、前記第2のIII族窒化物よりもバンドギャップが大きい第4のIII族窒化物からなるスペーサ層をさらに備えるようにした。
【0018】
本発明の第の態様では、第の態様に係るエピタキシャル基板において、前記第4のIII族窒化物がAlNであるようにした。
【0019】
本発明の第の態様では、半導体素子を、第1ないし第のいずれかの態様に係る半導体素子用エピタキシャル基板を用いて作製した。
【0020】
本発明の第10の態様では、PN接合ダイオード素子を、第または第の態様に係る半導体素子用エピタキシャル基板を用いて作製した。
【0022】
本発明の第11の態様では、下地基板の上にIII族窒化物層群を(0001)結晶面が基板面に対し略平行となるよう積層形成した半導体素子用のエピタキシャル基板の製造方法が、下地基板の上に、Inx1Aly1Gaz1N(x1+y1+z1=1、z1>0)なる組成の第1のIII族窒化物にてチャネル層を形成するチャネル層形成工程と、前記チャネル層の上に、Inx2Aly2N(x2+y2=1、x2>0、y2>0)なる組成の第2のIII族窒化物にて障壁層を形成する障壁層形成工程と、前記障壁層の上にAlNからなる拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程と、前記拡散防止層の上に、Aly3Gaz3N(y3+z3=1、z3>0)なる組成の第3のIII族窒化物にアクセプタ元素をドープすることによってキャップ層を形成するキャップ層形成工程と、を備えるようにした。
本発明の第12の態様では、第11の態様に係るエピタキシャル基板の製造方法において、前記アクセプタ元素がMgであるようにした。
本発明の第13の態様では、第11または12の態様に係るエピタキシャル基板の製造方法において、前記第2のIII族窒化物のバンドギャップが前記第1のIII族窒化物のバンドギャップよりも大きいようにした。
【0026】
本発明の第14の態様では、第11ないし第13のいずれかの態様に係るエピタキシャル基板の製造方法において、前記第1のIII族窒化物がAly1Gaz1N(y1+z1=1、z1>0)であるようにした。
【0027】
本発明の第15の態様では、第14の態様に係るエピタキシャル基板の製造方法において、前記第1のIII族窒化物がGaNであるようにした。
【0028】
本発明の第16の態様では、第11ないし第15のいずれかの態様に係るエピタキシャル基板の製造方法において、前記チャネル層の上に、Inx4Aly4Gaz4N(x4+y4+z4=1、y4>0)なる組成を有し、前記第2のIII族窒化物よりもバンドギャップが大きい第4のIII族窒化物からなるスペーサ層を形成するスペーサ層形成工程、をさらに備え、前記障壁層形成工程においては、前記スペーサ層の上に前記障壁層を形成するようにした。
【0029】
本発明の第17の態様では、第16の態様に係るエピタキシャル基板の製造方法において、前記第4のIII族窒化物がAlNであるようにした。
【0030】
本発明の第1ないし第17の態様によれば、障壁層の上にキャップ層を設けるのみならず、両層の間に拡散防止層としてのAlN層を設けることで、エピタキシャル基板においては、キャップ層から障壁層への元素の拡散が防止される。これにより、キャップ層を有しかつ特性の優れたエピタキシャル基板、さらには該エピタキシャル基板を用いた半導体素子やPN接合ダイオード素子が、実現される。
【0031】
特に、本発明の第1の態様によれば、キャップ層を備えているにもかかわらず、これを備えないエピタキシャル基板と同程度のシート抵抗、二次元電子ガス濃度および二次元電子ガス移動度が実現される。
【0032】
特に、本発明の第2、第3、第10、第11、および第12の態様によれば、PN接合部分における逆方向漏れ電流が好適に低減されたエピタキシャル基板、さらには該エピタキシャル基板を用いた半導体素子やPN接合ダイオード素子が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係るエピタキシャル基板10の構成を概略的に示す断面模式図である。
図2】拡散防止層6を備えるエピタキシャル基板10についての、主要元素のデプスプロファイルである。
図3】拡散防止層6を備えないエピタキシャル基板10についての、主要元素のデプスプロファイルである。
図4】拡散防止層6を備えるエピタキシャル基板10についての、主要元素の濃度プロファイルである。
図5】拡散防止層6を備えないエピタキシャル基板10についての、主要元素の濃度プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<エピタキシャル基板の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るエピタキシャル基板10の構成を概略的に示す断面模式図である。エピタキシャル基板10は、下地基板1と、バッファ層2と、チャネル層3と、スペーサ層4と、障壁層5と、拡散防止層6と、キャップ層7とが積層形成された構成を有する。なお、図1における各層の厚みの比率は、実際のものを反映したものではない。バッファ層2と、チャネル層3と、スペーサ層4と、障壁層5と、拡散防止層6と、キャップ層7とはいずれも、MOCVD法(有機金属化学的気相成長法)を用いてエピタキシャル形成される(詳細は後述)のが好適な一例である。
【0035】
以降においては、各層の形成にMOCVD法を用いる場合を対象に説明を行うが、良好な結晶性を有するように各層を形成できる手法であれば、他のエピタキシャル成長手法、例えば、MBE、HVPE、LPEなど、種々の気相成長法や液相成長法の中から適宜選択した手法を用いてもよいし、異なる成長法を組み合わせて用いる態様であってもよい。
【0036】
下地基板1は、その上に結晶性の良好な窒化物半導体層を形成できるものであれば、特段の制限なく用いることができる。単結晶6H−SiC基板を用いるのが好適な一例であるが、サファイア、Si、GaAs、スピネル、MgO、ZnO、フェライトなどからなる基板を用いる態様であってもよい。
【0037】
また、バッファ層2は、その上に形成されるチャネル層3、スペーサ層4、障壁層5、拡散防止層6、およびキャップ層7の結晶品質を良好なものとするべく、AlNにて数百nm程度の厚みに形成される層である。例えば、200nmの厚みに形成するのが好適な一例である。
【0038】
チャネル層3は、Inx1Aly1Gaz1N(x1+y1+z1=1)なる組成のIII族窒化物(第1のIII族窒化物)にて、数μm程度の厚みに形成される層である。好ましくは、チャネル層3はAly1Gaz1N(y1+z1=1、z1>0)組成のIII族窒化物にて形成され、より好ましくは、GaNにて形成される。
【0039】
一方、障壁層5は、Inx2Aly2N(x2+y2=1、x2>、y2>0)なる組成を有するIII族窒化物(第2のIII族窒化物)にて、数nm〜数十nm程度の厚みに形成される層である。好ましくは0.14≦x2≦0.24である。x2の値がこの範囲の外にある場合は、障壁層5に作用する歪みが±0.5%を超えることとなり、エピタキシャル基板10の上にショットキー接合を形成する場合に、当該ショットキー接合の信頼性に及ぼす結晶歪みの影響が大きくなり始めるため好ましくない。
【0040】
なお、チャネル層3と障壁層5とは、前者を構成する第1のIII族窒化物のバンドギャップよりも後者を構成する第2のIII族窒化物のバンドギャップの方が大きいという組成範囲をみたして形成される。
【0041】
拡散防止層6は、AlNにて1nm〜十数nm程度の厚みに形成される。好ましくは、3nm〜10nm程度の厚みに形成される層である。拡散防止層6は、キャップ層7に存在するGaやMgなどの元素が、障壁層5へと拡散することを防止する目的で設けられてなる。拡散防止層6の作用効果の詳細については後述する。
【0042】
キャップ層7は、Inx3Aly3Gaz3N(x3+y3+z3=1、z3>0)組成のIII族窒化物にて、数nm〜数十nm程度の厚みに形成される。好ましくは、10nm〜50nm程度の厚みに形成される。
【0043】
キャップ層7の具体的な組成は、エピタキシャル基板10の形成目的に応じて適宜に定められる。例えば、エピタキシャル基板10を用いてHEMT素子を構成するにあたって、電流コラプス抑制という効果を得ようとする場合であれば、キャップ層7は、GaN(x3=y3=0)やAly3Gaz3N(x3=0)にて形成されるのが好適である。より具体的には、0≦y3≦0.2をみたすように設けられるのが好適である。
【0044】
あるいは、エピタキシャル基板10を用いて半導体素子を構成するにあたって、ゲート電極を設けてショットキー接合を形成するのではなく、PN接合を形成しようとする場合であれば、GaNにアクセプタ元素としてMgをドープすることによってキャップ層7を形成するのが好適である。
【0045】
さらに、チャネル層3と障壁層5の間にはスペーサ層4が設けられる。スペーサ層4は、Inx4Aly4Gaz4N(x4+y4+z4=1)なる組成を有し、少なくともAlを含む(y4>0をみたす)III族窒化物(第4のIII族窒化物)にて、0.5nm〜1.5nmの範囲の厚みで形成される層である。
【0046】
このような層構成を有するエピタキシャル基板10においては、チャネル層3とスペーサ層4の界面に(より詳細には、チャネル層3の当該界面近傍に)二次元電子ガスが高濃度に存在する二次元電子ガス領域3eが形成される。
【0047】
好ましくは、スペーサ層4と障壁層5とはそれぞれ、前者を構成する第4のIII族窒化物のバンドギャップが、後者を構成する第2のIII族窒化物のバンドギャップ以上という組成範囲をみたして形成される。係る場合、合金散乱効果が抑制され、二次元電子ガスの濃度および移動度が向上する。より好ましくは、スペーサ層4はAlN(x4=0、y4=1、z4=0)にて形成される。係る場合、スペーサ層4がAlとNの二元系化合物となるので、Gaを含む3元系化合物の場合よりもさらに合金散乱効果が抑制され、二次元電子ガスの濃度および移動度が向上することとなる。なお、係る組成範囲についての議論は、スペーサ層4が不純物を含有することを除外するものではない。
【0048】
なお、エピタキシャル基板10においてスペーサ層4を備えるのは必須の態様ではなく、チャネル層3の上に直接に障壁層5を形成する態様であってもよい。係る場合、チャネル層3と障壁層5の界面に二次元電子ガス領域3eが形成される。
【0049】
以上のような構成を有するエピタキシャル基板10に対し、電極パターンその他の構成要素を適宜に設けることによって、HEMT素子やダイオード素子などの種々の半導体素子を得ることができる。
【0050】
<HEMT素子の作製方法>
次に、上述のような構成を有するエピタキシャル基板10を作製する方法を説明する。
【0051】
エピタキシャル基板10の作製は、公知のMOCVD炉を用いて行うことができる。具体的には、In、Al、Gaについての有機金属(MO)原料ガス(TMI、TMA、TMG)と、Mgなどのドーパント元素の原料ガス(Cp2Mgなど)と、アンモニアガスと、水素ガスと、窒素ガスとを、リアクタ内に供給可能に構成されてなるMOCVD炉を用いる。
【0052】
まず、例えば(0001)面方位の2インチ径の6H−SiC基板などを下地基板1として用意し、該下地基板1を、MOCVD炉のリアクタ内に設けられたサセプタの上に設置する。リアクタ内を真空ガス置換した後、リアクタ内圧力を5kPa〜50kPaの間の所定の値に保ちつつ、水素/窒素混合フロー状態の雰囲気を形成した上で、サセプタ加熱によって基板を昇温する。
【0053】
サセプタ温度がバッファ層形成温度である950℃〜1250℃の間の所定温度(例えば1050℃)に達すると、Al原料ガスとNH3ガスをリアクタ内に導入し、バッファ層2としてのAlN層を形成する。
【0054】
AlN層が形成されると、サセプタ温度を所定のチャネル層形成温度に保ち、チャネル層3の組成に応じた有機金属原料ガスとアンモニアガスをリアクタ内に導入し、チャネル層3としてのInx1Aly1Gaz1N層(ただし、x1=0、0≦y1≦0.3)を形成する。ここで、チャネル層形成温度T1は、950℃以上1250℃以下の温度範囲から、チャネル層3のAlNモル分率y1の値に応じて定められる値である。なお、チャネル層3形成時のリアクタ圧力には特に限定はなく、10kPaから大気圧(100kPa)の範囲から適宜選ぶことができる。
【0055】
Inx1Aly1Gaz1N層が形成されると、次いで、サセプタ温度を保ったまま、リアクタ内を窒素ガス雰囲気に保ち、リアクタ圧力を10kPaとした後、有機金属原料ガスとアンモニアガスとをリアクタ内に導入して、スペーサ層4としてのInx4Aly4Gaz4N層を所定の厚みに形成する。
【0056】
Inx4Aly4Gaz4N層が形成されると、障壁層5となるInx2Aly2Nを形成するために、サセプタ温度を650℃以上800℃以下の所定の障壁層形成温度に保ち、リアクタ内圧力が1kPa〜30kPaの間の所定の値に保たれるようにする。そして、アンモニアガスと、障壁層5の組成に応じた流量比の有機金属原料ガスとを、いわゆるV/III比が3000以上20000以下の間の所定の値となるようにリアクタ内に導入する。
【0057】
Inx2Aly2層が形成されると、引き続いて、サセプタ温度を所定の拡散防止層形成温度としたうえで、有機金属原料ガスの流量比を調整して、拡散防止層6となるAlN層を所定の厚みに形成する。
【0058】
AlN層の形成後、続いて、サセプタ温度を所定のキャップ層形成温度としたうえで、有機金属原料ガスの流量比をキャップ層7の組成に応じて調整し、キャップ層7となるInx3Aly3Gaz3層を所定の厚みに形成する。Mgなどのアクセプタ元素をドープする場合は、当該元素の原料ガスについても、適宜の流量比にて供給される。キャップ層7が形成されれば、エピタキシャル基板10が作製されたことになる。
【0059】
<拡散防止層の作用効果>
次に、エピタキシャル基板10に拡散防止層6を設けることの作用効果について説明する。
【0060】
上述したように、拡散防止層6は、キャップ層7に存在するGaやMgなどの元素が、障壁層5へと拡散することを防止する目的で設けられてなる。なお、これらの元素の拡散は、キャップ層7の形成のためにエピタキシャル基板10が加熱されている間に進行する。図2ないし図5は、拡散防止層6の有無と元素分布との関係を示す図である。
【0061】
まず、図2および図3は、拡散防止層6の有無が異なる他は同一の条件にて作製した2種類のエピタキシャル基板10について、オージェ電子分光法により測定した、Ga元素、Al元素、およびIn元素のデプスプロファイルである。図2が拡散防止層6を備えるエピタキシャル基板10についてデプスプロファイルであり、図3が拡散防止層6を備えないエピタキシャル基板10についてのデプスプロファイルである。なお、いずれのエピタキシャル基板10も、障壁層5はIn0.18Al0.82Nにて形成されてなり、キャップ層7はGaNにて形成されてなる。また、図2図3のいずれにおいても、Sputter timeが0min.の位置がエピタキシャル基板10の表面(キャップ層7の表面)に相当し、Sputter timeの値が大きくなるほど表面から離れた位置を指し示す。
【0062】
図2においては、Sputter timeが5min.のところでGa濃度が急峻に減少して0に至る一方で、Al濃度が急峻に上昇し、ピークが形成されている。当該ピークは、拡散防止層6であるAlN層に相当すると解される。また、さらにSputter timeが6min.より大きい範囲では、Al濃度とIn濃度とがそれぞれ略一定となっている。しかも、拡散防止層6を設けたGaとInとが共存する領域は存在していない。
【0063】
これに対して、図3においては、Sputter timeが3min.を越えた辺りからGa濃度がなだらかに減少し、15min.あたりでようやく0となっている。一方で、5min.のあたりでAl濃度およびIn濃度が立ち上がっている。また、Al濃度のプロファイルにピークはみられない。
【0064】
これらの結果は、拡散防止層6を設けない場合(図3)にはGa元素がキャップ層7から障壁層5へと拡散するのに対して、かつ、拡散防止層6を設けた場合(図2)には、キャップ層7から障壁層5へのGa元素の拡散が、拡散防止層6によって好適に防止されていることを示している。
【0065】
一方、図4および図5は、拡散防止層6の有無が異なる他は同一の条件にて作製した2種類のエピタキシャル基板10について、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定した、Mg元素およびAl元素の濃度プロファイルである。図4が拡散防止層6を備えるエピタキシャル基板10について濃度プロファイルであり、図5が拡散防止層6を備えないエピタキシャル基板10についての濃度プロファイルである。なお、いずれのエピタキシャル基板10も、障壁層5はIn0.18Al0.82Nにて形成されてなり、キャップ層7はMgがドープされたGaNにて形成されてなる。
【0066】
図4においては、表面深さが15nm〜20nm辺りのところでMg濃度が急峻に減少している一方で、表面深さが20nm〜25nm辺りのところでAl濃度が急峻に上昇し、表面深さが24nmの辺りにピークが形成されている。当該ピークは、拡散防止層6であるAlN層に相当すると解される。また、表面深さが28nmより大きい範囲では、Al濃度がそれぞれ略一定となっている。
【0067】
これに対して、図5においては、表面深さが2nmのあたりから25nmあたりまでMg濃度がなだらかに減少している。一方で、20nm〜30nmのあたりでAl濃度が立ち上がっている。また、Al濃度のプロファイルにピークはみられない。
【0068】
これらの結果は、拡散防止層6を設けない場合(図5)にはMg元素がキャップ層7から障壁層5へと拡散するのに対して、拡散防止層6を設けた場合(図4)には、キャップ層7から障壁層5へのMg元素の拡散が、拡散防止層6によって好適に防止されていることを示している。
【0069】
すなわち、図2ないし図5に示す結果は、拡散防止層6としてAlN層を形成することが、キャップ層7からの元素の拡散を抑制するうえで有効であることを明確に示している。
【0070】
そして、本実施の形態のように、キャップ層7および拡散防止層6を備えたエピタキシャル基板10においては、単にキャップ層7のみを備え、拡散防止層6を備えないエピタキシャル基板に比して、優れた特性が実現される。
【0071】
例えば、キャップ層7を備えているにもかかわらず、これを備えないエピタキシャル基板と同程度のシート抵抗、二次元電子ガス濃度および二次元電子ガス移動度が実現される。
【0072】
あるいはまた、アクセプタ元素としてMgをドープしたGaNにてキャップ層7を形成し、PN接合を形成する場合であれば、当該PN接合における逆方向漏れ電流が1nA以下にまで低減される。
【0073】
なお、上述のように、拡散防止層6の厚みは3nm以上であるのが好適である。3nmを下回る場合でも、ある程度の拡散防止効果は得られるが、良好な電気特性を確実に確保するという観点からは、拡散防止層6は、3nm以上の厚みに形成するのが好ましい。
【0074】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、障壁層の上にキャップ層を設けるのみならず、両層の間に拡散防止層としてのAlN層を設けることで、エピタキシャル基板においては、キャップ層から障壁層への元素の拡散が防止される。これにより、キャップ層を有し、かつ、特性の優れたエピタキシャル基板、さらには該エピタキシャル基板を用いた半導体素子やPN接合ダイオード素子が、実現される。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
本実施例では、障壁層5、拡散防止層6、およびキャップ層7の形成条件の組合せが異なる計54種のエピタキシャル基板10を作製した。具体的には、障壁層5については組成を3水準に違えた。拡散防止層6については、これを形成しない場合(膜厚0nm)を含め、膜厚を5水準に違えた。キャップ層7については、これを形成しない場合を含め、組成を4水準に、膜厚を2水準に違えた。得られたそれぞれのエピタキシャル基板10について、ホール効果法を用いて電気特性を評価した。
【0076】
スペーサ層4の形成までは、全てのエピタキシャル基板10について同じ手順で形成した。
【0077】
具体的には、まず、下地基板1として(0001)面方位の2インチ径の6H−SiC基板を複数枚用意した。厚みは300μmであった。それぞれの基板について、MOCVD炉リアクタ内に設置し、真空ガス置換した後、リアクタ内圧力を30kPaとし、水素/窒素混合フロー状態の雰囲気を形成した。次いで、サセプタ加熱によって下地基板1を昇温した。
【0078】
サセプタ温度が1050℃に達すると、TMAバブリングガスとアンモニアガスをリアクタ内に導入し、バッファ層として厚さ200nmのAlN層を形成した。
【0079】
続いて、サセプタ温度を所定の温度とし、有機金属原料ガスとしてのTMGバブリングガスとアンモニアガスとを所定の流量比でリアクタ内に導入し、チャネル層3としてのGaN層を2μmの厚みに形成した。
【0080】
チャネル層3が得られると、リアクタ圧力を10kPaとし、次いでTMAバブリングガスとアンモニアガスをリアクタ内に導入し、スペーサ層4として厚さ1nmのAlN層を形成した。
【0081】
スペーサ層4を形成した後、続いて、障壁層5を形成した。障壁層5の組成は、In0.14Al0.86N、In0.18Al0.82N、In0.22Al0.78Nの3水準に違えた。なお、サセプタ温度は各々の試料において、770℃、745℃、720℃とした。また、障壁層5の厚みは、いずれも20nmとした。
【0082】
拡散防止層6の形成対象である試料については、障壁層5の形成後、拡散防止層6としてのAlN層を1.5nm、3nm、6nm、または10nmの厚みに形成した。なお、サセプタ温度は800℃とした。

【0083】
キャップ層7の形成対象である試料については、障壁層5もしくは拡散防止層6の形成後、キャップ層7を10nmまたは50nmの厚みに形成した。キャップ層7の組成は、GaN、Al0.15Ga0.85N、Al0.20Ga0.80Nの3水準に違えた。なお、サセプタ温度は800℃とした。
【0084】
それぞれの試料について、所定の層が形成された後、サセプタ温度を室温付近まで降温し、リアクタ内を大気圧に復帰させた後、作製されたエピタキシャル基板10を取り出した。以上の手順により、それぞれのエピタキシャル基板10が得られた。
【0085】
ホール効果法にて電気特性を評価するため、それぞれのエピタキシャル基板10の表面(キャップ層7の表面)に対し、Ti/Al/Ni/Au(それぞれの膜厚は25/75/15/100nm)からなる多層金属膜を蒸着し、オーミック性の電極を形成した。続いて、係る電極のコンタクト特性を良好なものにするために、800℃の窒素ガス雰囲気中にて30秒間の熱処理を施した。
【0086】
係る態様にて電極形成を行ったエピタキシャル基板10について、ホール効果法により、2次元電子ガス濃度(2DEG濃度)、2次元電子化ガス移動度(2DEG移動度)、およびシート抵抗を測定した。表1ないし表3に、それぞれのエピタキシャル基板10に固有の作製条件と、電気特性についての評価結果とを一覧にして示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
表1ないし表3からは、障壁層5の組成によらず、3nm以上の厚みの拡散防止層6を形成したうえで、キャップ層7を形成してなるエピタキシャル基板10(サンプル番号1−4〜6、10〜12、16〜18、22〜24、28〜30、34〜36、40〜42、46〜48、52〜54)においては、拡散防止層6およびキャップ層7を備えないエピタキシャル基板10(サンプル番号1−2、8、14、20、26、32、38、44、50)と同等の電気特性が得られていることがわかる。
【0091】
係る結果は、拡散防止層6を3nm以上の厚みに形成することで、キャップ層を備えつつもキャップ層を備えていない場合と同等の電気特性を具備したエピタキシャル基板10が得られることを指し示している。
【0092】
また、拡散防止層6を備えているエピタキシャル基板10(サンプル番号1−23)と、これを備えていないエピタキシャル基板10(サンプル番号1−20)とについて、オージェ電子分光法によりGa元素、Al元素、およびIn元素のデプスプロファイルを得た。前者についての結果が図2であり、後者についての結果が図3である。上述したように、図3からは、Ga元素がキャップ層7から障壁層5へと拡散していることが確認されるのに対して、図2からは、キャップ層7から障壁層5へのGa元素の拡散が、拡散防止層6によって好適に防止されていることが確認される。これらの結果は、拡散防止層6としてAlN層を形成することが、キャップ層7からのGa元素の拡散を抑制するうえで有効であることを明確に示している。
【0093】
なお、拡散防止層6を1.5nmの厚みに形成したうえで、キャップ層7を形成してなるエピタキシャル基板10(サンプル番号1−3、9、15、21、27、33、39、45、51)においても、拡散防止層6を備えないエピタキシャル基板10に比べると、電気特性は改善されている。すなわち、限定的ではあるが、拡散防止層6による拡散防止効果は得られているものといえる。
【0094】
(実施例2)
本実施例では、障壁層5、拡散防止層6、およびキャップ層7の形成条件の組合せが異なる計45種のエピタキシャル基板10を作製した。具体的には、障壁層5については組成を3水準に違えた。拡散防止層6については、これを形成しない場合(膜厚0nm)を含め、膜厚を5水準に違えた。キャップ層7については、アクセプタ元素としてドープするMg元素の目標濃度を3水準に違えた。そして、それぞれのエピタキシャル基板10を用いて、同心円型PNダイオード素子を作製し、逆方向バイアス時の漏れ電流(逆方向漏れ電流)を測定した。
【0095】
拡散防止層6の形成までは、実施例1と同じとした。
【0096】
キャップ層7は、障壁層5もしくは拡散防止層6の形成後、GaN層にアクセプタ元素としてMgをドープすることにより形成した。Mg元素の目標濃度を、1.0×1018/cm3、1.0×1019/cm3、5.0×1019/cm3の3水準に違えた。厚みは全て50nmとした。なお、サセプタ温度は950℃とした。
【0097】
それぞれの試料について、キャップ層7が形成された後、サセプタ温度を室温付近まで降温し、リアクタ内を大気圧に復帰させた後、作製されたエピタキシャル基板10を取り出した。その後、キャップ層7を設けた試料については、Mgアクセプタの活性化処理として、窒素ガス雰囲気中で600℃、30分の熱処理を行った。以上の手順により、それぞれのエピタキシャル基板10が得られた。
【0098】
続いて、得られたエピタキシャル基板10を用いて、中央円形電極をP型電極として有し、外側ドーナツ型電極をn型電極として有する同心円型PNダイオード素子を作製した。
【0099】
具体的には、まず、公知のRIE(反応性イオンエッチング)処理により、エピタキシャル基板10の表面の外周部分においてキャップ層7および拡散防止層6を同心円状に除去するリセスエッチングを施し、障壁層5を露出させた。
【0100】
次いで、露出した障壁層5の表面に、Ti/Al/Ni/Au(それぞれの膜厚は25/75/15/100nm)からなる多層金属電極を蒸着し、オーミック性のn型電極を形成した。さらに、係るn型電極におけるコンタクト特性を良好なものにするために、窒素ガス雰囲気中にて800℃、30秒間の熱処理を施した。
【0101】
次に、RIE処理にて除去されずに残ったエピタキシャル基板10の表面部分(同心円の中央部分)に、Ni/Au(それぞれの膜厚は20/200nm)からなる多層金属電極を蒸着し、オーミック性のp型電極を形成した。なお、p型電極は、直径1mmの平面視円形形状に形成した。さらに、係るp型電極におけるコンタクト特性を良好なものにするために、窒素ガス雰囲気中にて500℃、30秒間の熱処理を施した。これにより、同心円型PNダイオード素子が得られた。
【0102】
係る態様にて得られたダイオード素子について、逆方向バイアス電圧を印加し、漏れ電流を測定した。表4ないし表6に、それぞれのダイオード素子に使用したエピタキシャル基板10に固有の作製条件と、漏れ電流の測定結果とを一覧にして示す。
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
表4ないし表6からは、拡散防止層6を形成せず、キャップ層7を形成したエピタキシャル基板10(サンプル番号2−1、6、11、16、21、26、31、36、41)、および、1.5nmの厚みの拡散防止層6を形成したうえで、キャップ層7を形成してなるエピタキシャル基板10(サンプル番号2−2、7、12、17、22、27、32、37、42)においては、μAオーダーの逆方向漏れ電流が生じたのに対して、3nm以上の厚みの拡散防止層6を形成したうえで、キャップ層7を形成してなるエピタキシャル基板10(サンプル番号2−3〜5、8〜10、13〜15、18〜20、23〜25、28〜30、33〜35、38〜40、42〜45)においては、逆方向漏れ電流が1nA以下にまで低減されていることがわかる。
【0107】
係る結果は、拡散防止層6を3nm以上の厚みに形成することで、逆方向漏れ電流が好適に抑制されたエピタキシャル基板10が得られることを指し示している。
【0108】
また、拡散防止層6を備えているエピタキシャル基板10(サンプル番号2−19)と、これを備えていないエピタキシャル基板10(サンプル番号2−16)とについて、SIMS分析によりMg元素およびAl元素の濃度プロファイルを得た。前者についての結果が図4であり、後者についての結果が図5である。上述したように、図5からは、Mg元素がキャップ層7から障壁層5へと拡散していることが確認されるのに対して、図4からは、キャップ層7から障壁層5へのMg元素の拡散が、拡散防止層6によって好適に防止されていることが確認される。これらの結果は、拡散防止層6としてAlN層を形成することが、キャップ層7からのMg元素の拡散を抑制するうえで有効であることを明確に示している。
【符号の説明】
【0109】
1 下地基板
2 バッファ層
3 チャネル層
3e 二次元電子ガス領域
4 スペーサ層
5 障壁層
6 拡散防止層
7 キャップ層
10 エピタキシャル基板
図1
図2
図3
図4
図5