特許第5785870号(P5785870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785870
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/022 20060101AFI20150910BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20150910BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20150910BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20150910BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20150910BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20150910BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20150910BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20150910BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20150910BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20150910BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   F01N3/02 301C
   F01N3/02 321A
   B01D39/20 DZAB
   B01D46/00 302
   B01D53/86
   B01D53/86 100
   B01D53/86 241
   B01D53/86 245
   B01D53/86 280
   B01J23/656 A
   B01J32/00
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301J
   C04B37/00 Z
   C04B41/85 C
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-285991(P2011-285991)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133788(P2013-133788A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 貴志
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真吾
(72)【発明者】
【氏名】児玉 優
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/125769(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/126330(WO,A1)
【文献】 特開2007−144365(JP,A)
【文献】 特開2011−098866(JP,A)
【文献】 特開2010−281306(JP,A)
【文献】 特開2004−283669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/01−3/035
F01N 3/28
B01D 39/20
B01D 46/00
B01D 53/86−53/94
B01J 23/656
B01J 32/00
B01J 35/04
C04B 37/00
C04B 41/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に含まれる固体成分を捕集するハニカムフィルタであって、
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層とを有する2以上のハニカムセグメントと、
前記2以上のハニカムセグメントを接合する接合層と、を備え、
前記ハニカムセグメントは、前記捕集層が形成されている入口側セルと前記捕集層が形成されていない出口側セルとを形成する隔壁部を有し、
前記接合層は、前記入口側セルが開口している端面側であるハニカムフィルタの上流領域がハニカムフィルタの中流領域及び下流領域に比して低い密度で形成されている、
ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記ハニカムセグメントは、流体の出口側のセルである小セルと前記小セルよりも開口面積の大きい入口側のセルである大セルとを形成する隔壁部を有し、
前記接合層は、前記入口側セルが開口している端面側であるハニカムフィルタの上流領域がハニカムフィルタの中流領域及び下流領域に比して低い密度で形成されている、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
流体に含まれる固体成分を捕集するハニカムフィルタであって、
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層とを有する2以上のハニカムセグメントと、
前記2以上のハニカムセグメントを接合する接合層と、を備え、
前記ハニカムセグメントは、流体の出口側のセルである小セルと前記小セルよりも開口面積の大きい入口側のセルである大セルとを形成する隔壁部を有し、
前記接合層は、前記入口側セルが開口している端面側であるハニカムフィルタの上流領域がハニカムフィルタの中流領域及び下流領域に比して低い密度で形成されている、
ハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記接合層は、前記ハニカムセグメントの距離調整を行うスペーサを含み、
前記スペーサは、ハニカムフィルタの上流領域に配置されるスペーサの気孔率がハニカムフィルタの下流領域に配置されるスペーサの気孔率に比して高い、請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
流体に含まれる固体成分を捕集するハニカムフィルタであって、
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層とを有する2以上のハニカムセグメントと、
前記2以上のハニカムセグメントを接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、ハニカムフィルタの端面側の領域が前記ハニカムフィルタの中央側の領域に比して低い密度で形成されており、
前記接合層は、前記ハニカムセグメントの距離調整を行うスペーサを含み、
前記スペーサは、ハニカムフィルタの上流領域に配置されるスペーサの気孔率がハニカムフィルタの下流領域に配置されるスペーサの気孔率に比して高い、
ハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記接合層は、ハニカムフィルタの上流領域のX線密度をX線密度Aとし、ハニカムフィルタの中流領域及び下流領域の平均のX線密度をX線密度Bとしたとき、(B−A)/B×100により算出されるX線密度比が20%以上60%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記接合層は、ハニカムフィルタの上流領域の気孔率Cとハニカムフィルタの中流領域及び下流領域の平均の気孔率Dとの比C/Dが1.05以上1.30以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
触媒が担持されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、ハニカムセグメントを接合一体化して成形し集合体とし、集合体の外周を研削して外周加工体を形成し、外周加工体の隔壁上に固体成分(PM)を捕集する捕集層を形成し、捕集層を乾燥させて乾燥体を得たのち、得られた乾燥体の外周に外周コートを塗布し、さらに外周コートの熱処理と同時に隔壁に捕集層を結合させる処理工程により作製されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハニカムフィルタでは、外周コートの熱処理とPM捕集層の熱処理とを同時に行え、製造コストを低減可能、且つ、PM捕集層の強度を十分に備え、PMの初期捕集効率が高く、初期圧力損失増加率が低く、PM堆積時の圧力損失が小さく、ヒステリシス特性が小さく、再生特性を十分備え、さらに、性能、製造コスト、耐久性を兼ね備えるハニカムフィルタを提供することができる。
【0003】
また、ハニカムフィルタとしては、ハニカムフィルタの上流側の接合層の密度を高くし、ハニカムセグメントの接合強度をより好適化したものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214335号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】SAE2003−01−0376
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ハニカムフィルタでは、触媒を担持し、例えば排ガスに含まれる未燃焼成分(炭化水素(HC)やCO)、NOxなどを分解することがある。特許文献1に記載のハニカムフィルタでは、このような浄化性能についての検討はまだ十分でなく、有害成分の浄化性能をより高めることが望まれていた。また、非特許文献1に記載のハニカムフィルタでは、接合層に工夫を施し、ハニカムセグメントの接合強度をより向上しているが、浄化性能をより高めることが望まれていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、流体の浄化性能をより高めることができるハニカムフィルタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、
流体に含まれる固体成分を捕集するハニカムフィルタであって、
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層とを有する2以上のハニカムセグメントと、
前記2以上のハニカムセグメントを接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、ハニカムフィルタの端面側の領域が前記ハニカムフィルタの中央側の領域に比して低い密度で形成されているものである。
【0009】
このハニカムフィルタでは、2以上のハニカムセグメントを接合する接合層において、ハニカムフィルタの端面側の領域がハニカムフィルタの中央側の領域に比して低い密度で形成されている。このように、端面側の接合層の密度が低いと、入口ガスの昇温スピードへの追従性がよくなることから、例えば、流体に含まれる有害成分(ハイドロカーボン(HC)やCO、NOxなど)の分解や捕集した固体成分の燃焼除去を触媒を担持させて行うことなど、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。ここで、「接合層の密度」とは、例えばX線CT測定により得られたX線密度をいうものとしてもよい。
【0010】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記ハニカムセグメントは、前記捕集層が形成されている入口側セルと前記捕集層が形成されていない出口側セルとを形成する隔壁部を有し、前記接合層は、前記入口側セルが開口している端面側であるハニカムフィルタの上流領域がハニカムフィルタの中流領域及び下流領域に比して低い密度で形成されているものとしてもよい。こうすれば、入口側セルの上流領域(端面側)の接合層の密度がより低く、昇温スピードへの追従性がよくなり、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。このとき、前記接合層は、ハニカムフィルタの中流領域、ハニカムフィルタの下流領域及びハニカムフィルタの上流領域の順により低い密度で形成されているものとしてもよい。こうすれば、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上しやすい。
【0011】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記ハニカムセグメントは、流体の出口側のセルである小セルと前記小セルよりも開口面積の大きい入口側のセルである大セルとを形成する隔壁部を有し、前記接合層は、前記入口側セルが開口している端面側であるハニカムフィルタの上流領域がハニカムフィルタの中流領域及び下流領域に比して低い密度で形成されているものとしてもよい。こうすれば、入口側セルの上流領域(端面側)の接合層の密度がより低く、昇温スピードへの追従性がよくなり、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。このとき、前記接合層は、ハニカムフィルタの中流領域、ハニカムフィルタの下流領域及びハニカムフィルタの上流領域の順により低い密度で形成されているものとしてもよい。こうすれば、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上しやすい。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記接合層は、ハニカムフィルタの上流領域のX線密度をX線密度Aとし、ハニカムフィルタの中流領域及び下流領域の平均のX線密度をX線密度Bとしたとき、(B−A)/B×100により算出されるX線密度比が20%以上60%以下であるものとしてもよい。このX線密度比が20%以上では、端面側の接合層の密度がより低く、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。また、X線密度比が60%以下では、セグメント同士を結合する強度の低下をより抑制することができる。
【0013】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記接合層は、ハニカムフィルタの上流領域の気孔率Cとハニカムフィルタの中流領域及び下流領域の平均の気孔率Dとの比C/Dが1.05以上1.30以下であるものとしてもよい。この比C/Dが1.05以上では、端面側の接合層の密度がより低く、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。また、比C/Dが1.30以下では、セグメント同士を結合する強度の低下をより抑制することができる。
【0014】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記接合層は、前記ハニカムセグメントの距離調整を行うスペーサを含み、前記スペーサは、ハニカムフィルタの上流領域に配置されるスペーサの気孔率がハニカムフィルタの下流領域に配置されるスペーサの気孔率に比して高いものとしてもよい。こうすれば、スペーサを用いて比較的容易に、ハニカムフィルタの一方の端面側の領域(例えば上流領域)を他方の端面側の領域(例えば下流領域)に比して低い密度で形成することができる。
【0015】
本発明のハニカムフィルタは、触媒が担持されているものとしてもよい。こうすれば、捕集した固体成分の燃焼除去などをより効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図。
図2】大セル23,小セル25、隔壁部22及び捕集層24の説明図。
図3】ハニカムフィルタ20の作製工程の説明図。
図4】ハニカムセグメント21の温度分布の説明図。
図5】ハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図。
図6】実験例3のX線CTスキャン測定による接合層、ハニカムセグメント及びハニカムフィルタ全体でのX線密度の測定結果。
図7】上流領域の接合層の気孔率Cと中流及び下流領域の接合層の平均気孔率Dとの比C/Dに対するHC浄化効率(%)の測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。また、図2は、大セル23,小セル25,隔壁部22及び捕集層24の説明図である。本実施形態のハニカムフィルタ20は、図1に示すように、流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部22と隔壁部22上に形成され流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層24とセルの端部を目封止する目封止部26とを有するハニカムセグメント21と、2以上のハニカムセグメント21を接合する接合層27と、ハニカムフィルタ20の外周を保護する外周保護部28と、を備えている。なお、図1には、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、大セル23が八角形、小セル25が矩形状に形成されているものを一例として示す(図2参照)。
【0018】
このハニカムセグメント21は、排ガス(流体)の出口側のセルである小セル25と、小セル25よりも開口面積の大きい入口側のセルである大セル23とが隔壁部22により形成されている。また、ハニカムセグメント21は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された小セル25と、一方の端部が目封じされ且つ他方の端部が開口している大セル23とが交互に配置するよう隔壁部22により形成されている。また、ハニカムセグメント21は、捕集層24が形成されている入口側セルとしての大セル23と捕集層が形成されていない出口側セルとしての小セル25とが隔壁部22により形成されている。このハニカムフィルタ20では、大セル23が流体としての排ガスの入口側のセルであり、小セル25が排ガスの出口側のセルであり、大セル23の内壁に捕集層24が形成されている。ハニカムフィルタ20では、入口側から大セル23へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側の小セル25を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24に捕集される。しかも、入口側を開口面積の大きい大セル23とし、出口側を開口面積の小さい小セル25とすることで、流入口と流出口との流速の差をより少なくでき、捕集層24でPMを捕集する効果が高まる。
【0019】
隔壁部22は、その厚さである隔壁厚さが0.15mm以上0.46mm以下で形成されていることが好ましく、0.20mm以上0.40mm以下であることがより好ましく、0.28mm以上0.35mm以下であることが更に好ましい。この隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどが好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この隔壁部22の気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいうものとする。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集・除去しやすい。
【0020】
捕集層24は、排ガスに含まれるPMを捕集・除去する層であり、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成されているものとしてもよい。この捕集層24を構成する原料粒子の平均粒径は、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。平均粒径が0.5μm以上では、捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができる。平均粒径が15μm以下では、粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。この捕集層24は、排ガスの入口側セルである大セル23及び出口側セルである小セル25の隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、図1に示すように、大セル23の隔壁部22上に形成されており、小セル25には形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。この捕集層24は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、捕集層24は、隔壁部22と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。また、この捕集層24は、セラミック又は金属の無機繊維を70重量%以上含有しているものとしてもよい。こうすれば、繊維質によりPMを捕集しやすい。また、捕集層24は、無機繊維がアルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。なお、原料粒子における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。また、捕集層24は、無機材料の粒子群から形成されており、隔壁部22の表面に均一な層として形成されていてもよいし、隔壁部22の表面に部分的な層として形成されていてもよい。
【0021】
捕集層24の形成方法は、流体を捕集層の原料の搬送媒体とし、捕集層の原料を含む流体をセルへ供給するものとしてもよい。こうすれば、捕集層を構成する粒子群がより粗に形成されるため、高い気孔率の捕集層を作製することができ、好ましい。搬送媒体としての流体は、例えば、空気や、窒素ガスなどの気体であることが好ましい。捕集層の原料は、例えば、無機繊維や無機粒子を用いてもよい。あるいは、無機繊維は、上述した無機繊維や、上述した無機材料を繊維状にしたものとしてもよく、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であるものが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のSiC粒子やコージェライト粒子を用いることができる。この捕集層の原料は、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。このとき、隔壁部22と捕集層24との無機材料を同じ材質とすることが好ましい。また、無機粒子を含む気体を流入させる際に、気体の出口側を吸引することが好ましい。また、捕集層24の形成において、無機繊維や無機粒子と共に結合材も供給してもよい。結合材としてはゾル材料、コロイド材料から選択でき特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。無機粒子はシリカにより被覆されており且つ無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とがシリカにより結合されていることが好ましい。例えば、コージェライトやチタン酸アルミニウムなどの酸化物材料の場合には、無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とが焼結により結合されているのが好ましい。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと、熱処理を行い結合することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば650℃以上1350℃以下の温度とするのが好ましい。熱処理温度が650℃以上では十分な結合力を確保することができ、1350℃以下であると過度な粒子の酸化による細孔の閉塞を抑制することができる。なお、捕集層24の形成方法は、例えば、捕集層24の原料になる無機粒子を含むスラリーを用いてセルの表面に形成するものとしてもよい。
【0022】
目封止部26は、セルを流通する排ガスが透過しない、又は、透過しにくい部材で形成されており、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0023】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、例えば、アルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。この無機繊維は、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27の厚さは、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。
【0024】
この接合層27は、ハニカムフィルタ20の端面側の領域がハニカムフィルタ20の中央側の領域に比して低い密度で形成されている。このように、端面側の接合層27の密度が低いと、入口ガスの昇温スピードへの追従性がよくなることから、例えば、高温の排ガスが流入した際にハニカムセグメント21の温度が上昇しやすく、排ガスに含まれる有害成分(HC,CO,NOxなど)の分解や、捕集した固体成分の燃焼除去を触媒を担持させて行うことなど、ハニカムフィルタ20の浄化性能をより向上することができる。また、大セル23の開口端面側をハニカムフィルタ20の上流領域、ハニカムフィルタ20の中央部分を中流領域、小セル25の開口端面側をハニカムフィルタ20の下流領域としたとき、接合層27は、ハニカムフィルタの上流領域がハニカムフィルタの中流領域及び下流領域に比して低い密度で形成されているものとしてもよい。また、接合層27は、ハニカムフィルタ20の上流領域がハニカムフィルタ20の中流領域及び下流領域の平均値に比して低い密度で形成されているものとしてもよい。更に、接合層27は、ハニカムフィルタ20の中流領域、ハニカムフィルタ20の下流領域及びハニカムフィルタの上流領域の順により低い密度で形成されているものとしてもよい。こうすれば、ハニカムフィルタ20の浄化性能をより向上しやすい。ここで、「接合層の密度」とは、例えばX線CT測定により得られたX線密度をいうものとしてもよい。
【0025】
接合層27は、ハニカムフィルタ20の上流領域のX線密度をX線密度Aとし、ハニカムフィルタ20の中流領域及び下流領域の平均のX線密度をX線密度Bとしたとき、(B−A)/B×100により算出されるX線密度比が20%以上60%以下であることが好ましい。このX線密度比が20%以上では、端面側の密度がより低く、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。また、X線密度比が60%以下では、ハニカムセグメント21同士を結合する強度の低下をより抑制することができる。このX線密度比は、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましい。また、X線密度比は、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。
【0026】
接合層27は、ハニカムフィルタ20の上流領域の気孔率Cとハニカムフィルタの中流領域及び下流領域の平均の気孔率Dとの比C/Dが1.05以上1.30以下であることが好ましい。この比C/Dが1.05以上では、端面側の密度がより低く、ハニカムフィルタ20の浄化性能をより向上することができる。また、比C/Dが1.30以下では、ハニカムセグメント21同士を結合する強度の低下をより抑制することができる。この比C/Dは、1.10以上であることがより好ましく、1.15以上であることが更に好ましい。また、比C/Dは、1.25以下であることがより好ましく、1.20以下であることが更に好ましい。
【0027】
接合層27は、ハニカムセグメント21の距離調整を行うスペーサを含み、このスペーサは、ハニカムフィルタ20の上流領域に配置されるスペーサの気孔率が、ハニカムフィルタの下流領域に配置されるスペーサの気孔率に比して高いものとしてもよい。こうすれば、スペーサを用いて比較的容易に、ハニカムフィルタ20の一方の端面側の領域(例えば上流領域)を他方の端面側の領域(例えば下流領域)に比して低い密度で形成することができる。
【0028】
ここで、ハニカムフィルタ20の上流領域、中流領域および下流領域とは、図1に示すように、ハニカムフィルタ20の流路方向に対して上流側、中央側及び下流側に3等分に分割した領域をいうものとする。ハニカムフィルタ20の上流領域の接合層27のX線密度Aは、ハニカムフィルタ20の入口端面からハニカムフィルタの全長の1/3の長さ下流のハニカムフィルタ20の断面までをX線CTスキャン測定して得られた平均値とする。このとき、半径方向の断面内における測定位置は、セグメント部、外周コート部を除く全ての接合層とする。ハニカムフィルタ20の中流及び下流領域の接合層27の平均値であるX線密度Bは、ハニカムフィルタ20の出口端面からハニカムフィルタの全長の2/3の長さ上流のハニカムフィルタ20の断面までをX線CTスキャン測定して得られた平均値とする。また、ハニカムフィルタ20の上流領域の接合層27の気孔率Cは、アルキメデス法により算出した値をいうものとする。また、ハニカムフィルタ20の中流及び下流領域の接合層27の平均気孔率Dは、アルキメデス法により算出した値をいうものとする。なお、接合増27の気孔率は、SEM観察に用いるサンプルにおいて、樹脂埋めして研磨した断面を撮影して画像データとし、この画像データを画像解析し、所定の閾値で2値化し、2値化した物質領域と気孔領域との面積を用いて算出するものとしてもよい。
【0029】
ハニカムフィルタ20において、40℃〜800℃におけるセル23の通過孔方向の熱膨張係数は、6.0×10-6/℃以下であることが好ましく、1.0×10-6/℃以下であることがより好ましく、0.8×10-6/℃以下であることが更に好ましい。この熱膨張係数が6.0×10-6/℃以下であると、高温の排気に晒された際に発生する熱応力を許容範囲内に抑えることができる。
【0030】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。大セル23は、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、大セル23は、排ガスの流通方向に垂直な断面が8角形に形成され、小セル25は、排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。
【0031】
ハニカムフィルタ20において、セルピッチは、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。PM堆積時の圧力損失は、濾過面積が大きいほど小さい値を示す。一方、初期の圧力損失は、セル直径が小さいほど大きい値を示す。したがって、初期圧力損失、PM堆積時の圧力損失、PMの捕集効率のトレードオフを考慮して、セルピッチ、セル密度や隔壁部22の厚さを設定するものとすればよい。
【0032】
ハニカムフィルタ20は、触媒が担持されているものとしてもよい。この触媒は、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒及びNOxを吸蔵/吸着/分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、PMを効率よく除去することや未燃焼ガスを効率よく酸化することやNOxを効率よく分解することなどができる。この触媒としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、ハニカムフィルタ20では、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNOx吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。また、貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。PMの燃焼を促進する触媒を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOxを分解する触媒を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。
【0033】
次に、ハニカムフィルタ20の製造方法について説明する。図3は、ハニカムフィルタ20の作製工程の説明図である。この製造方法は、例えば、ハニカムセグメント21を作製する作製工程と、ハニカムセグメント21の表面に接合材を形成し接合する接合工程と、接合した接合体を乾燥する乾燥工程と、接合体の外形を加工する外形加工工程と、外周保護部28を形成する外周保護部形成工程とを含むものとしてもよい。作製工程では、ハニカムセグメント21の原料粉体を混合し、ハニカムセグメント21の形状に成形し、目封止部26や捕集層24を形成したのち、焼成する処理を行うものとしてもよい。ハニカムセグメント21や捕集層24、目封止部26の原料は、上述した無機材料を用いるものとしてもよい。
【0034】
次の接合工程では、図3に示すように、ハニカムセグメント21の表面に、例えばペースト状の接合材を形成する。接合材は、例えば、上述した無機材料を用いるものとしてもよい。このとき、ハニカムセグメント21同士の距離を調整するスペーサ29を複数、ハニカムセグメント21の表面に貼り付けるものとしてもよい。このスペーサ29は、例えば、ハニカムセグメント21の上流領域と下流領域とに形成するものとしてもよい。こうすれば、ハニカムセグメント21同士の距離を調整しやすく、接合層27の厚さをより均一にしやすい。このとき、ハニカムフィルタ20の上流領域に配置されるスペーサの気孔率が、ハニカムフィルタの下流領域に配置されるスペーサの気孔率に比して高いものとしてもよい。こうすれば、スペーサを用いて比較的容易に、ハニカムフィルタ20の一方の端面側の領域(例えば上流領域)を他方の端面側の領域(例えば下流領域)に比して低い密度で接合層27を形成することができる。このスペーサ29は、例えば、接合材と同様の材質で形成してもよい。また、接合層27の密度及び気孔率を調整するに際して、ハニカムセグメント21の上流側に塗布する接合材に造孔材を混合するものとしてもよい。こうすれば、のちの熱処理により造孔材を焼失させることによって、ハニカムフィルタ20の端面側の領域(上流領域)の接合層27の密度をより低くすることができる。造孔材の添加量は、ハニカムフィルタ20の上流領域の密度や気孔率に応じて適宜決定すればよく、例えば、接合材を構成する原料に対して3質量%以上30質量%以下の範囲とすることが好ましい。造孔材としては、のちの熱処理により消失するものが好ましく、例えば、カーボンブラック粒子、グラファイト粒子及びコークス粒子などの炭素粒子や、澱粉粒子、セルロース粒子、粉砂糖や、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、アクリル粒子、ナイロン粒子及びフェノール粒子などの樹脂粒子などが挙げられる。これらのうち、より低温で焼失する材料が好ましく、例えば、カーボンブラック粒子や澱粉粒子などが好ましい。造孔材を焼失させる熱処理としては、例えば酸化雰囲気中400℃以上1000℃以下の温度範囲で行ってもよいし、排気管に取り付けられた実使用状態を造孔材を焼失させる熱処理の代わりとしてもよい。このようにして、ハニカムセグメント21を接合層27で接合した接合体31を作製する。
【0035】
次に、接合体31の乾燥工程では、接合体31の開口端面から熱風を大セル23や小セル25に送り込む処理を行うものとしてもよい。こうすれば、接合体31の開口端面(ハニカムフィルタ20の上流領域及び下流領域)から中央領域に向かって水分の移動などが起き、このとき接合体31の端面側の接合層27の密度がより低くなることが考えられる。ハニカムフィルタ20では、開口面積の違いによって、小セル25に比して大セル23側に、より多くの熱風が入りやすいため、大セル23の開口端面側をより低密度にすることができると考えられる。なお、ハニカムフィルタ20の端面側の接合層27をより低密度にしたい場合は、スペーサ29の気孔率を変更すること、端面側の接合に造孔材を混合すること、乾燥工程で端面から熱風を送ること、のいずれか1つを行うものとしてもよいし、いずれか2以上を適宜組み合わせるものとしてもよい。このように、スペーサ29の気孔率を変更すること、端面側の接合に造孔材を混合すること、乾燥工程で端面から熱風を送ること、のいずれかの条件を調整することにより、接合層27の密度や気孔率を所望の値に調整することができる。
【0036】
続いて、接合体31の外形加工工程では、接合体31の外周面の加工を行い、加工体32を形成する。そして、大セル23や小セル25の開口部が形成されていない、加工体32の外周面に外周保護部28を形成し、ハニカムフィルタ20とする。このように、接合層27の密度、気孔率を調整したハニカムフィルタ20を作製することができる。
【0037】
次に、このようなハニカムフィルタ20を使用した場合について説明する。図4は、ハニカムセグメント21の温度分布の説明図である。例えば、排ガスにHCが含まれており、これをハニカムフィルタ20に担持された触媒で燃焼除去する場合について説明する。ハニカムフィルタ20に担持された触媒は、ある温度範囲に加熱されると、HCの燃焼除去機能が発現する。ここで、例えば、コールドスタート時などでは、触媒の温度が低く、HCの燃焼除去を行いにくい場合がある。特に、接合層27の密度が高い場合は、接合層27の温度上昇に排ガスの熱エネルギーが消費され、触媒機能を十分に発揮することができないことがある。このハニカムフィルタ20では、ハニカムフィルタ20の上流領域の接合層27の密度が低く、図4に示すように、ハニカムセグメント21の外周側の温度上昇がしやすく、触媒機能の発現がしやすい。このため、ハニカムフィルタ20の浄化性能をより向上することができるのである。
【0038】
以上説明した実施例のハニカムフィルタ20によれば、接合層27が、ハニカムフィルタ20の端面側の領域がハニカムフィルタ20の中央側の領域に比して低い密度で形成されている。このように、端面側の接合層27の密度が低いと、入口ガス温度の昇温スピードへの追従性がよくなることから、例えば、流体に含まれる炭化水素成分の燃焼除去や捕集した固体成分の燃焼除去を行うことなど、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、大セル23と小セル25とを有し、入口側セルと出口側セルとの開口面積が異なるハニカムフィルタ20としたが、特にこれに限定されず、例えば、図5に示すように、入口側セルと出口側セルとの開口面積が同じセル43が形成されているハニカムフィルタ40としてもよい。ハニカムフィルタ40において、隔壁部42、捕集層44、目封止部46及び接合層47などは、ハニカムフィルタ20の隔壁部22、捕集層24、目封止部26及び接合層27と同様の構成とすることができる。こうしても、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる。
【0041】
上述した実施形態では、ハニカムフィルタ20には触媒が含まれるものとしたが、流通する流体に含まれる除去対象物質を浄化処理可能なものであれば特にこれに限定されない。あるいは、ハニカムフィルタ20は、触媒を含まないものとしてもよい。例えば、その後に触媒が担持されたときに、ハニカムフィルタの浄化性能をより向上することができる効果は得られる。また、排ガスに含まれるPMを捕集するハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集・除去するものであれば特にこれに限定されず、建設機器の動力エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、工場や発電所用のハニカムフィルタとしてもよい。
【実施例】
【0042】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実験例として説明する。ここでは、主として図1,3に示した形状のハニカムフィルタを作製した。
【0043】
[ハニカムセグメント形成工程]
SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得た。所定の金型を用いてこの坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させた後、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。ここでは、ハニカムフィルタは、断面の直径が144mm、長さが152mmの形状とし、セル密度が46.5セル/cm2、隔壁部の厚さが1.41mm、入口側セルの断面形状が八角形、出口側セルの断面形状が四角形、入口セル/出口セルの面積比を1.7倍とした。作製したハニカムセグメントの気孔率は50%であり、平均細孔径は15μmであった。この隔壁部の気孔率及び平均細孔径は水銀ポロシメータ(Micromeritics社製Auto PoreIII型式9405)を用いて測定した。
【0044】
[捕集層形成工程]
作製したハニカムセグメントの排ガス流入側の開口端部より、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径(8μm)を有するSiC粒子を含む空気を流入させ、且つハニカムセグメントの流出側より吸引しながら、排ガス流入側のセルの隔壁部の表層にSiC粒子を堆積させた。次に、大気雰囲気下にて1300℃、2時間の条件の熱処理により、隔壁の表層に堆積させたSiC粒子同士、及び堆積させたSiC粒子と隔壁を構成するSiC及びSi粒子と結合させた。このように、捕集層を隔壁部上に形成することができる。なお、原料粒子(隔壁部、捕集層及び空隙部形成部材など)の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−910)を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)である。
【0045】
[接合工程]
このようにして得られたハニカムセグメントの1つの側面において、上流側の領域に2つ、下流側の領域に2つのスペーサを貼り付けた。上流側の側面に貼り付けたスペーサの気孔率が、65%であり、下流側の側面に貼り付けたスペーサの気孔率が、70%であった。スペーサの気孔率は、樹脂埋め研磨後のSEM画像を用いた画像解析により測定した。次に、スペーサを貼り付けた側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、SiC、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。この接合後の乾燥工程にて、より高流量の高温ガスを上流端面に流す事で上流領域側の接合層の早期乾燥を促した。また、接合用スラリーに造孔材を適宜混合し、ハニカムフィルタの上流領域に塗布することにより、上流領域の密度を適宜調整した。なお、スペーサの気孔率や接合用スラリーに混合する造孔材の量、ハニカムセグメント接合体の乾燥方法などを調整することにより、上流領域での接合層のX線密度Aや、中流及び下流領域の接合層の平均X線密度B、X線密度比、上流領域での接合層の平均気孔率C、中流及び下流領域の接合層の平均気孔率D、比C/Dなどを調整した。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥により硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカムフィルタを得た。
【0046】
[触媒担持工程]
まず、質量比でアルミナ:白金:セリア系材料=7:0.5:2.5とし、セリア系材料を質量比でCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5とした原料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。次に、ハニカムセグメントの出口端面(排ガスが流出する側)を所定の高さまで浸漬させ、入口端面(排ガスが流入する側)より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引し、隔壁に触媒を担持し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。ハニカムフィルタの単位体積当たりの触媒量は、30g/Lとなるようにした。
【0047】
(接合層密度、接合層気孔率の測定)
接合層の密度は、ハニカムフィルタの上流領域、中流領域及び下流領域についてX線CT(東芝製Aquilion)を用いて測定した。接合層の測定では、ハニカムフィルタの軸方向に対しておよそ3mmピッチで各断面をスキャンしていき、ハニカムフィルタの3次元X線画像を取得した。その後、画像解析により各断面におけるセグメント部、外周コート部を除いた全ての接合層の領域の平均X線密度を計測した。中流領域及び下流領域については、平均値を算出した。X線密度は、ハニカムフィルタ20の入口側端面からハニカムフィルタの全長の1/3の長さ下流のハニカムフィルタ20の断面まで測定した平均値を上流領域でのX線密度Aとし、ハニカムフィルタ20の入口側端面からハニカムフィルタの全長の1/3〜2/3の範囲で測定した値を中流領域でのX線密度とし、ハニカムフィルタ20の出口側端面からハニカムフィルタの全長の1/3の長さ上流のハニカムフィルタ20の断面まで測定した値を下流領域でのX線密度とした。接合層の気孔率は、アルキメデス法により求めた。
【0048】
(実験例1)
上流領域の接合層のX線密度Aを153、中流及び下流領域の接合層の平均X線密度Bを180、(B−A)/B×100で算出するX線密度Bに対するX線密度Aの割合であるX線密度比を15%、上流領域の接合層の気孔率Cを41%、中流及び下流領域の接合層の平均気孔率Dを40%、C/Dで求められる比C/Dを1.02として作製したハニカムフィルタを実験例1とした。
【0049】
(実験例2〜5)
この実験例2〜5では、接合層の平均X線密度Bが180、平均気孔率Dが40%であるハニカムフィルタを作製した。上流領域の接合層のX線密度Aを144、X線密度比を20%、上流領域の接合層の気孔率Cを42%、比C/Dを1.05としたハニカムフィルタを実験例2とした。上流領域の接合層のX線密度Aを108、X線密度比を40%、上流領域の接合層の気孔率Cを47%、比C/Dを1.18としたハニカムフィルタを実験例3とした。上流領域の接合層のX線密度Aを72、X線密度比を60%、上流領域の接合層の気孔率Cを52%、比C/Dを1.30としたハニカムフィルタを実験例4とした。上流領域の接合層のX線密度Aを63、X線密度比を65%、上流領域の接合層の気孔率Cを53%、比C/Dを1.33としたハニカムフィルタを実験例5とした。
【0050】
(実験例6〜10)
この実験例6〜10は、接合層の平均X線密度Bが180、平均気孔率Dが55%であるハニカムフィルタを作製した。上流領域の接合層のX線密度Aを153、X線密度比を15%、上流領域の接合層の気孔率Cを56%、比C/Dを1.02としたハニカムフィルタを実験例6とした。上流領域の接合層のX線密度Aを144、X線密度比を20%、上流領域の接合層の気孔率Cを58%、比C/Dを1.05としたハニカムフィルタを実験例7とした。上流領域の接合層のX線密度Aを108、X線密度比を40%、上流領域の接合層の気孔率Cを65%、比C/Dを1.18としたハニカムフィルタを実験例8とした。上流領域の接合層のX線密度Aを72、X線密度比を60%、上流領域の接合層の気孔率Cを72%、比C/Dを1.30としたハニカムフィルタを実験例9とした。上流領域の接合層のX線密度Aを63、X線密度比を65%、上流領域の接合層の気孔率Cを73%、比C/Dを1.33としたハニカムフィルタを実験例10とした。
【0051】
(実験例11〜15)
この実験例11〜15は、接合層の平均X線密度Bが220、平均気孔率Dが70%であるハニカムフィルタを作製した。上流領域の接合層のX線密度Aを187、X線密度比を15%、上流領域の接合層の気孔率Cを71%、比C/Dを1.02としたハニカムフィルタを実験例11とした。上流領域の接合層のX線密度Aを176、X線密度比を20%、上流領域の接合層の気孔率Cを74%、比C/Dを1.05としたハニカムフィルタを実験例12とした。上流領域の接合層のX線密度Aを132、X線密度比を40%、上流領域の接合層の気孔率Cを82%、比C/Dを1.18としたハニカムフィルタを実験例13とした。上流領域の接合層のX線密度Aを88、X線密度比を60%、上流領域の接合層の気孔率Cを91%、比C/Dを1.30としたハニカムフィルタを実験例14とした。上流領域の接合層のX線密度Aを77、X線密度比を65%、上流領域の接合層の気孔率Cを93%、比C/Dを1.33としたハニカムフィルタを実験例15とした。
【0052】
(実験例16〜18)
この実験例16〜18は、入口セル及び出口セルの断面形状を四角とし、且つ入口セル及び出口セルの開口面積を同じとし、接合層の平均X線密度Bが180、平均気孔率Dが55%であるハニカムフィルタを作製した。このハニカムフィルタのセル密度は46.5セル/cm2であり、隔壁部の厚さが0.305mmである。上流領域の接合層のX線密度Aを144、X線密度比を20%、上流領域の接合層の気孔率Cを58%、比C/Dを1.05としたハニカムフィルタを実験例16とした。上流領域の接合層のX線密度Aを108、X線密度比を40%、上流領域の接合層の気孔率Cを65%、比C/Dを1.18としたハニカムフィルタを実験例17とした。上流領域の接合層のX線密度Aを72、X線密度比を60%、上流領域の接合層の気孔率Cを72%、比C/Dを1.30としたハニカムフィルタを実験例18とした。
【0053】
(1)HC(ハイドロカーボン)浄化効率測定
上記作製したハニカムフィルタを2.2Lディーゼルエンジンに搭載したあと、アイドル状態から10秒以内に2500rpm、70Nmまでエンジン状態を変化させ、ハニカムフィルタの前後のHC濃度を測定器(堀場製MEXA−1300M)により計測し、その変化率よりハニカムフィルタによるHC浄化効率を算出した。測定開始から20秒後のHC浄化効率を評価対象サンプルのHC浄化性能と定義した。この試験方法は欧州でのエミッション計測モードであるNEDCモードでのコールドスタートモードと相関がある事が分かっており、20秒後の値がエミッション値と相関性があると確認されているためである。また、HC浄化効率が75%を下回ると欧州の規制モードに対応することが困難となる。
【0054】
(2)再生限界試験
HC浄化効率と同様に、上記作製したハニカムフィルタを2.2Lディーゼルエンジンに搭載し、2000rpm、45Nmでスートを12g/L堆積させたあと、ポストインジェクションによりハニカムフィルタの入口ガス温度を700℃まで上昇させ、ハニカムフィルタ前後の圧損が低下してきた際にポストインジェクションを終了し、エンジン状態をアイドル状態とした。アイドル状態に切り替えることによりハニカムフィルタに多量の酸素が供給されるため、ハニカムフィルタの内部で残存スートが異常燃焼を起こし、急激な発熱によりクラック等が発生する場合がある。今回は、その再生試験後に接合部へのクラック発生有無を評価した。ここでは、クラックがないものを「○」とし、クラックが一部あるものを「△」として評価した。
【0055】
(実験結果)
実験例1〜18の接合層のX線密度、気孔率、測定結果をまとめて、表1に示す。図6は、実験例3のX線CTスキャン測定による接合層、ハニカムセグメント及びハニカムフィルタ全体でのX線密度の測定結果であり、図7は、上流領域の接合層の気孔率Cと中流及び下流領域の接合層の平均気孔率Dとの比C/Dに対するHC浄化効率(%)の測定結果である。図6に示すように、実験例3では、接合層のX線密度は、ハニカムフィルタの中流領域、ハニカムフィルタの下流領域及びハニカムフィルタの上流領域の順により低い密度で形成されていることがわかった。また、表1に示すように、実験例1〜18では、ハニカムフィルタの中流及び下流領域の接合層の平均X線密度Bに比してハニカムフィルタの上流領域の接合層のX線密度Aが低い密度である傾向を示すことがわかった。
【0056】
また、表1、図7に示すように、ハニカムフィルタの中流及び下流領域の接合層の平均X線密度Bに比してハニカムフィルタの上流領域の接合層のX線密度Aがより低い密度であるものは、HC浄化効率がより高いことがわかった。これは、中流・下流平均に対して上流の接合層の密度が低いと、ハニカムフィルタの入口ガス温度の昇温スピードへの追従性がよくなるため、ハニカムフィルタ上流の接合層近傍の熱容量の大きい部分の昇温性がよくなることから浄化性能が向上したものと推察された。特に、接合層のX線密度Bに対するX線密度Aの割合であるX線密度比が20%以上、及び上流領域の接合層の気孔率Cと中流及び下流領域の接合層の平均気孔率Dとの比C/Dが1.05以上であるときに、HC浄化性能がより高いことがわかった。一方、上流領域の接合層密度が低すぎると、セグメント同士を結合する強度が低くなるため、再生限界試験時に発生する熱応力によりセグメントの膨張により接合材に引張応力が発生し、それにより接合層にクラックが発生した。このため、X線密度比が60%以下、及び比C/Dが1.30以下であることが好ましいことがわかった。
【0057】
【表1】
【符号の説明】
【0058】
20,40 ハニカムフィルタ、21 ハニカムセグメント、22,42 隔壁部、23、24,44 捕集層、25 小セル、26,46 目封止部、27 接合層、28 外周保護部、43 セル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7