(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態による洗濯機を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に共通する構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態による洗濯機を
図1および
図2に示す。洗濯機10は、外箱11、回転槽12、水槽13、駆動部14および支持構造部15を備えている。本実施形態による洗濯機10は、回転槽12の回転中心軸16が重力方向と平行な縦軸型の洗濯機であり、回転槽12に収容された洗濯物の洗濯および脱水を行う。また、洗濯機10は、乾燥機能を追加してもよい。外箱11は、直方体状であり、洗濯機10の外殻を形成している。
【0010】
回転槽12は、底部21、胴部22および回転バランサ23を有している。底部21は、例えば樹脂などにより椀状に形成されている。胴部22は、例えばステンレス鋼板などにより円筒状に形成され、底部21と一体に接続している。胴部22は、板厚方向に貫く複数の孔24を有している。なお、図面では、複数の孔24のうち一部のみを図示している。洗濯物を脱水するとき、洗濯物から分離された水はこの孔24を経由して回転槽12の外部へ排出される。また、洗濯物を乾燥するとき、回転槽12の供給された温風はこの孔24を経由して回転槽12の外部へ排出される。回転バランサ23は、胴部22の上端側すなわち胴部22の底部21と反対の端部側に設けられている。回転バランサ23は、例えば液体が封入されており、回転中心軸16を中心に回転する回転槽12の安定を図っている。
【0011】
水槽13は、底部25を有する筒状に形成されている。水槽13の底部25と反対側には、水槽カバー26が設けられている。水槽カバー26は、内蓋27、給水口28および送風口29を形成している。内蓋27は、回転槽12の上端側すなわち駆動部14と反対側の端部を開閉する。給水口28は、図示しない給水部から回転槽12へ供給される水が流れる。送風口29は、図示しない送風部から回転槽12へ供給される温風が流れる。水槽カバー26は、フィルタ31を有している。フィルタ31は、水槽13から排出される温風に含まれる糸くずなどの異物を捕集する。水槽13は、底部25に排水部32を有している。水槽13の水は、排水部32を経由して洗濯機10の外部に排出される。
【0012】
駆動部14は、水槽13の下方すなわち水槽カバー26と反対側に設けられている。駆動部14は、主にモータ33を有している。洗濯機10が脱水運転をするとき、駆動部14は回転槽12を一方向へ回転駆動する。また、駆動部14は、回転槽12の底部21側に設けられている撹拌部材34に接続している。洗濯機10が洗濯運転またはすすぎ運転をするとき、駆動部14は撹拌部材34を回転駆動する。このとき、駆動部14は、回転槽12の回転を停止しつつ、撹拌部材34を正方向および逆方向へ交互に回転駆動する。洗濯機10が脱水運転するとき、駆動部14は回転槽12だけでなく撹拌部材34も一方向へ回転駆動する。駆動部14を構成するモータ33は、いわゆるアウターロータ形であり、回転槽12および撹拌部材34を直接回転駆動する。
【0013】
支持構造部15は、蓋側支持部41、吊り棒42、底側支持部43および弾性部材44を有している。蓋側支持部41は、直方体状の外箱11の各角において上端すなわち水槽カバー26側の端部に設けられている。蓋側支持部41は、受け部411および移動部材412を有している。移動部材412は、下側すなわち駆動部14側に球面状の端面を有している。受け部411は、移動部材412に対応する凹状の球面に形成されており、移動部材412と滑らかに移動可能に接している。吊り棒42は、蓋側支持部41の移動部材412から下方すなわち駆動部14側へ延びている。
【0014】
底側支持部43は、受け部431および移動部材432を有している。受け部431は、水槽13の底部25側において外箱11の各角に対応して四方へ突出している。移動部材432は、吊り棒42の下方すなわち駆動部14側の端部付近に設けられており、蓋側支持部41側に球面状の端面を有している。受け部431は、下面が移動部材432に対応する凹状の球面に形成されており、移動部材432と滑らかに移動可能に接している。弾性部材44は、例えばコイルスプリングなどにより形成され、一方の端部が吊り棒42の下端に接し、他方の端部が底側支持部43の移動部材432に接している。弾性部材44は、伸張方向の力を有している。これにより、水槽13は、支持構造部15によって外箱11に吊り下げられた状態で支持されている。なお、支持構造部15により水槽13を吊り下げた状態で支持する構造は一例であり、水槽13は例えば下方からの支持構造部15により支持する構造であってもよい。
【0015】
洗濯機10は、上記に加え振動検出手段としての加速度センサ46を備えている。加速度センサ46は、水槽13の上端すなわち水槽カバー26側の端部の近傍に設けられている。加速度センサ46は、水槽13の外壁に設けられている。加速度センサ46は、水槽13に加わる加速度に基づいて水槽13に加わる振動を検出する。具体的には、加速度センサ46は、洗濯機10が設置されている家屋の床などの接地面47に対し、重力方向および水平方向の加速度を検出する。ここで、加速度センサ46が検出する加速度の水平方向とは、
図1の紙面において左右方向および前後方向の双方またはいずれか一方である。また、加速度センサ46は、
図1において上下方向の加速度を検出する構成としてもよい。
【0016】
洗濯機10は、さらに制御装置50を備えている。制御装置50は、外箱11と水槽13との間に形成される空間の底側に収容されている。制御装置50は、例えばリード線51などにより加速度センサ46と電気的に接続している。また、制御装置50は、図示しない操作パネルなどにも接続している。制御装置50は、
図3に示すように処理部52、回転数取得部53、振動取得部54、回転数制御部55、重量取得部56、重量別設定部57および記憶部58を有している。処理部52は、例えばCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されている。処理部52は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、洗濯機10の運転を制御する。
【0017】
制御装置50は、コンピュータプログラムを実行することにより、回転数取得部53、振動取得部54、回転数制御部55、重量取得部56および重量別設定部57をソフトウェア的に実現している。また、処理部52は、記憶部58に接続している。記憶部58は、例えば不揮発性のメモリなどで構成され、予め設定されている上限加速度、検出回数および下限回転数を記憶している。記憶部58は、処理部52のROMやRAMと共用してもよい。
【0018】
回転数取得部53は、モータ33とともに特許請求の範囲の回転数検出手段を構成している。具体的には、モータ33は、自己の回転数に基づく電気信号、つまり供給された電流値または印加された電圧値などを出力する。回転数取得部53は、このモータ33から出力された電気信号に基づいてモータ33の回転数を取得する。なお、回転数取得部53は、例えばロータリエンコーダなどの回転数センサにより、回転槽12またはモータ33の回転数を直接取得する構成としてもよい。振動取得部54は、加速度センサ46とともに振動検出手段を構成している。具体的には、加速度センサ46は、検出した加速度に基づく電気信号を出力する。振動取得部54は、加速度センサ46から出力された電気信号に基づいて加速度センサ46が検出した水槽13に加わる加速度つまり振動を取得する。
【0019】
重量取得部56は、モータ33とともに特許請求の範囲の重量検出手段を構成している。具体的には、撹拌部材34を駆動するモータ33は、回転槽12に収容された洗濯物の重量によって負荷が変化する。すなわち、回転槽12に収容された洗濯物の重量が大きくなるほど、撹拌部材34を駆動するモータ33の負荷は増大する。これにより、回転槽12に収容された洗濯物の重量は、撹拌部材34を駆動するモータ33の負荷に相関する。そこで、重量取得部56は、洗濯運転で注水を開始する前に、洗濯物を回転槽12に収容した状態で撹拌部材34を正方向および逆方向へ回転駆動する。そして、重量取得部56は、この駆動時におけるモータ33の負荷つまりモータ33へ供給する電流値またはモータ33へ印加する電圧値を取得することにより、回転槽12に収容された洗濯物の乾燥時における重量を取得する。
【0020】
回転数制御部55は、回転数取得部53がモータ33から取得した回転槽12の回転数、および振動取得部54が加速度センサ46から取得した水槽13の振動に基づいて、回転槽12の回転数すなわちモータ33に出力する電流値または電圧値を制御する。具体的には、回転数制御部55は、振動取得部54が加速度センサ46から取得した水槽13の振動つまり水槽13に加わる加速度と、記憶部58に記憶されている上限加速度とを比較する。そして、回転数制御部55は、取得した水槽13に加わる加速度が上限加速度よりも大きいと判断した回数を超過回数として数える。さらに、回転数制御部55は、数えた超過回数に応じて回転槽12の回転数、すなわちモータ33に出力する電流値または電圧値を制御する。
【0021】
本実施形態の場合、記憶部58は、上限加速度を二段階に設定して記憶している。具体的には、記憶部58は、
図4に示すように第一上限加速度a1、第二上限加速度a2および検出回数Dをテーブルとして記憶している。第二上限加速度a2は、第一上限加速度a1よりも大きな値、つまりa2>a1に設定されている。回転数制御部55は、加速度センサ46で取得した水槽13に加わる加速度aと第一上限加速度a1および第二上限加速度a2とを比較し、加速度aが第一上限加速度a1よりも大きい、つまりa>a1となる第一超過回数L1、および加速度aが第二上限加速度a2よりも大きい、つまりa>a2となる第二超過回数L2を数える。この場合、上述の通りa2>a1であるので、回転数制御部で数えた第二超過回数L2は、第一超過回数L1以下つまりL1≧L2となる。記憶部58は、回転数制御部55で数えられた第一超過回数L1および第二超過回数L2を記憶する。
【0022】
そして、回転数制御部55は、水槽13に加わる加速度aが第二上限加速度a2よりも大きいとき、つまりa>a2のとき、第二超過回数L2が1回つまりL2=1となると、回転槽12の回転数を制御する。また、回転数制御部55は、水槽13に加わる加速度aが第一上限加速度a1より大きく第二上限加速度a2以下のとき、つまりa2>a>a1のとき、第一超過回数L1が予め設定し記憶部58に記憶している検出回数Dに到達、つまりL1=Dとなると、回転槽12の回転数を制御する。本実施形態の場合、回転数制御部55は、第二超過回数L2が1回に到達つまりL2=1、または第一超過回数L1が検出回数Dに到達つまりL1=Dとなると、回転槽12の回転数を低下、または回転槽12を停止させる。これにより、回転数制御部55は、回転槽12の回転数を低下または回転槽12を停止させることにより、脱水運転を中断し、回転槽12に収容されている洗濯物をほぐす「ほぐし運転」に制御する。
【0023】
重量別設定部57は、重量取得部56で取得した洗濯物の重量に応じて、上限加速度および超過回数を設定する。本実施形態の場合、重量別設定部57は、
図4に示すように第一上限加速度a1、第二上限加速度a2および第一超過回数L1として許容される回数に相当する検出回数Dを、洗濯物の重量に応じて設定する。重量別設定部57は、重量取得部56で検出した洗濯物の重量が小さくなるほど、検出回数Dを大きく設定している。
【0024】
以下、第1実施形態による洗濯機10の作動の流れを
図5に基づいて説明する。
制御装置50は、予め設定された作動プログラムにしたがって洗濯運転、すすぎ運転および脱水運転を実行する。制御装置50は、洗濯運転の開始に先立って回転槽12に収容された洗濯物の重量を取得する(S101)。具体的には、重量取得部56は、回転槽12が静止した状態で撹拌部材34を回転駆動し、この駆動時のモータ33の負荷から収容された洗濯物の洗濯前の重量を取得する。制御装置50は、S101において洗濯物の重量を取得すると、洗濯運転およびすすぎ運転を実行する(S102)。制御装置50は、洗濯運転およびすすぎ運転が終了すると、脱水運転を開始する(S103)。そして、洗濯機10が脱水運転を開始すると、回転数取得部53は脱水運転における回転槽12の回転数Rを取得する(S104)。このとき、回転数取得部53は、モータ33に供給される電流値またはモータ33に印加される電圧値のいずれか一方または両方に基づいてモータ33の回転数を取得する。
【0025】
回転数取得部53は、S104において回転槽12の回転数Rを取得すると、取得した回転数Rが下限回転数Ri以上であるか否かを判断する(S105)。下限回転数Riは、脱水運転によって回転槽12が回転を開始したか否かを判断するために取得する。例えば回転槽12に収容された洗濯物に重量的な偏りがあるとき、この偏りによって回転槽12は回転が正常に立ち上がらない場合がある。そこで、回転数取得部53は、脱水運転を開始した後、その回転数Rと下限回転数Riとを比較して、回転槽12の回転が正常に立ち上がったか否かを判断する。この場合、下限回転数Riは、例えば20rpmなどのように洗濯機10の性能にあわせて予め設定されている。
【0026】
S105において回転数Rが下限回転数Ri以上であると判断されると(S105:Yes)、振動取得部54は加速度センサ46から水槽13に加わる加速度aを取得する(S106)。S104において取得した回転数Rが下限回転数Ri以上であるとき、S103で回転を開始した回転槽12はその回転が正常に立ち上がっていると判断される。そのため、回転槽12の回転は、初期の立ち上がり行程を経て、安定的な回転数上昇行程へ移行していることになる。そこで、振動取得部54は、回転槽12の回転が正常に立ち上がっていると判断されると、水槽13に加わる加速度aの取得を開始する。一方、振動取得部54は、S105において取得した回転数Rが下限回転数Riより小さいと判断されると(S105:No)、S104へ移行し、S104以降の処理を繰り返す。
【0027】
S106において水槽13に加わる加速度aが取得されると、回転数制御部55は取得した加速度aが第二上限加速度a2よりも大きいか否かを判断する(S107)。すなわち、回転数制御部55は、取得した加速度aと記憶部58に記憶されている第二上限加速度a2とを比較して、取得した加速度aが第二上限加速度a2よりも大きいか、a>a2であるかを判断する。
【0028】
回転数制御部55は、S107において加速度aが第二上限加速度a2よりも大きい、a>a2と判断すると(S107:Yes)、回転槽12の回転を停止し、ほぐし運転へ移行する(S108)。すなわち、回転数制御部55は、水槽13に加わる加速度aが第二上限加速度a2よりも大きいとき、第二超過回数L2が1回に達した、すなわちL2=1であると判断する。そして、回転数制御部55は、回転槽12が回転を停止するように制御する。さらに、回転数制御部55は、回転槽12へ注水および回転槽12を停止させつつ撹拌部材34を回転駆動することにより、回転槽12に収容された洗濯物をほぐすための、ほぐし運転を実行する。制御装置50は、S108においてほぐし運転が完了すると、再び脱水運転へ復帰し、S103以降の処理を繰り返す。なお、回転数制御部55は、回転槽12の回転を停止するのに代えて、回転槽12の回転数を低下させてもよい。
【0029】
ここで、第二上限加速度a2は、回転槽12を収容する水槽13に許容される振動の最大値に相当する。そのため、回転槽12を収容する水槽13に第二上限加速度a2を超える振動すなわち加速度が加わるとき、回転槽12の回転駆動の継続は好ましくない。そこで、回転数制御部55は、第二超過回数L2が1回に達すると、回転槽12の回転駆動を停止し、ほぐし運転へ移行する。
【0030】
一方、回転数制御部55は、S107において加速度aが第二上限加速度a2よりも大きくない、つまりa2≧aと判断すると(S107:No)、水槽13に加わる加速度aが第一上限加速度a1よりも大きいか否かを判断する(S109)。すなわち、回転数制御部55は、S106で取得した加速度aと記憶部58に記憶されている第一上限加速度a1とを比較して、S106で取得した加速度aが第一上限加速度a1よりも大きいか、a>a1であるかを判断する。
【0031】
回転数制御部55は、S109において加速度aが第一上限加速度a1よりも大きい、a>a1と判断すると(S109:Yes)、このa>a1と判断した回数を第一超過回数L1として数える(S110)。回転数制御部55は、a>a1として判断した回数を第一超過回数L1として記憶部58に記憶する。そして、回転数制御部55は、S110で数えた第一超過回数L1が予め設定した検出回数Dに到達したか否かを判断する(S111)。すなわち、回転数制御部55は、L1≧Dとなったか否かを判断する。第一上限加速度a1は、第二上限加速度a2よりも小さな値に設定されている。そのため、水槽13の振動つまり水槽13に加わる加速度aが第一上限加速度a1より大きくなっても、回転槽12の運転はすぐに停止する必要はない。つまり、水槽13に加わる加速度aがa1<a≦a2の振動であれば、回転槽12の回転の継続は許容される。しかし、このa1<a≦a2の加速度の振動であっても、この振動が繰り返し複数回生じると、回転槽12に収容されている洗濯物には許容範囲を超える偏りが生じていると考えられる。そこで、回転数制御部55は、S106で取得した加速度aがa1<a≦a2となる第一超過回数L1が検出回数Dに達すると、S108へ移行し、回転槽12の回転を停止してほぐし運転を実行する(S108)。S108における処理は、上述の通りである。
【0032】
ここで、第一上限加速度a1、第二上限加速度a2、および第一超過回数L1の回数に相当する検出回数Dは、重量別設定部57によって
図4に示すように回転槽12に収容されている洗濯物の重量に応じて異なる値として設定されている。回転槽12に収容されている洗濯物の重量が小さいとき、水槽13に加わる振動つまり加速度がa1<a≦a2の範囲にあっても、回転槽12の回転駆動を継続することにより、回転槽12は安定した回転に移行しやすい。これに対し、回転槽12に収容されている洗濯物の重量が大きいとき、回転槽12の回転駆動を継続しても、回転槽12は安定した回転に移行しにくく、振動が繰り返し生じたり、振動が大きくなりやすい。そこで、重量別設定部57は、S101で取得した洗濯物の重量に基づいて、許容される第一超過回数L1すなわち検出回数Dを設定している。つまり、重量別設定部57は、回転槽12に収容された洗濯物の重量が小さくなるほど第一超過回数L1に相当する検出回数Dを大きく設定している。
【0033】
S109において水槽13に加わる加速度aが第一上限加速度a1以下、すなわちa1≧aであると判断されると(S109:No)、回転数制御部55は回転槽12の回転を継続する(S112)。これにより、回転槽12の回転数は上昇し、回転槽12は予め設定された定常回転数で回転駆動される。制御装置50は、S112において回転槽12が定常回転数に達すると、予め設定された脱水時間が経過したか否かを判断する(S113)。制御装置50は、脱水時間が経過したと判断すると(S113:Yes)、脱水運転を終了し(S114)、洗濯機10の運転を終了する。一方、制御装置50は、S113において脱水時間が経過していないと判断すると(S113:No)、脱水時間が経過するまで脱水運転を継続する。
【0034】
以上の処理により、洗濯機10の回転槽12は、水槽13に加わる加速度aに基づいてその回転が制御される。
以上説明した第1実施形態による洗濯機10は、加速度センサ46を備えている。加速度センサ46は、水槽13に設けられている。この加速度センサ46は、回転槽12に振動が生じたとき、回転槽12を収容する水槽13に生じる加速度を検出する。このとき、加速度センサ46は、水槽13に発生した回転中心軸16方向および回転槽12の径方向の揺れを直接検出する。これにより、回転槽12の振動は、回転槽12に収容された洗濯物の偏りも含めて検出される。また、加速度センサ46を用いることにより、例えば安全レバーのように回転槽12を収容する水槽13と接する部材を必要としない。そのため、回転槽12を収容する水槽13と外箱11との間に確保すべき空間は低減されるとともに、個体差が生じにくい。そして、第1実施形態の場合、制御装置50は、この加速度センサ46で検出された水槽13の振動、すなわち水槽13に加わる加速度を予め設定した上限加速度と比較している。この制御装置50は、水槽13に加わる加速度が上限加速度よりも大きくなった超過回数を数え、計測した超過回数に基づいて回転槽12の回転数を制御している。したがって、小型化を図りつつ検出精度の個体差が低減され、洗濯物の偏りも考慮して回転槽12の回転を制御することができる。また、第1実施形態では、水槽13に加わる加速度aと上限加速度とを比較して、加速度aが第一上限加速度a1または第二上限加速度a2を超えた超過回数に基づいて回転槽12の回転数を制御している。そのため、加速度の小さな微少な水槽13の振動は許容しつつ、加速度の大きな水槽13の振動が生じると洗濯機10は脱水運転を停止する。これにより、水槽13の振動の大きさに応じた回転槽12の回転数の制御が行われる。したがって、無用な脱水運転の停止が減少し、総合的な運転時間の短縮を図ることができる。
【0035】
また、第1実施形態では、重量取得部56により回転槽12に収容された洗濯物の重量を検出している。そして、重量別設定部57は、検出した洗濯物の重量に応じて上限加速度を設定している。回転槽12に収容された洗濯物の重量が小さいとき、回転槽12を収容する水槽13に上限加速度を超える振動が生じても、そのまま回転駆動を継続することにより、回転槽12の回転は安定しやすい。この場合、回転槽12を収容する水槽13に上限加速度を超える振動が生じたとき、回転槽12の運転を停止するよりも、運転を継続した方が脱水工程を含む洗濯機10の全体的な運転時間が短縮される。一方、回転槽12に収容された洗濯物の重量が大きいとき、回転槽12を収容する水槽13に上限加速度を超える振動が生じると、回転槽12の回転は容易に安定しない。この場合、回転槽12の運転を一旦停止して、再度注水やすすぎを行って洗濯物の偏りを緩和した方が全体的な運転時間の短縮につながる。そこで、検出した洗濯物の重量に応じて上限加速度および超過回数を設定することにより、回転槽12を収容する水槽13の過大な振動を抑えつつ、洗濯機10の運転時間の短縮を図ることができる。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態による洗濯機の電気的な構成を
図6に示す。
第2実施形態では、洗濯機10の制御装置50は、
図6に示すように第1実施形態の構成に加えて温度取得部61および温度別設定部62を有している。制御装置50は、コンピュータプログラムを実行することにより、温度取得部61および温度別設定部62をソフトウェア的に実現している。温度取得部61は、温度センサ63とともに特許請求の範囲の温度検出手段を構成している。具体的には、温度センサ63は、水槽13の周囲の気温を検出する。温度センサ63は、例えば外箱11や送風口29の近傍などに設けられている。温度センサ63は、検出した気温に基づく電気信号を出力する。温度取得部61は、温度センサ63から出力された電気信号に基づいて温度センサ63が検出した水槽13の近傍の気温を取得する。
【0037】
温度別設定部62は、温度センサ63で検出した水槽13の近傍に気温に応じて、上限加速度および超過回数として許容される検出回数Dを設定する。第2実施形態の場合、温度別設定部62は、
図7に示すように第一上限加速度a1、第二上限加速度a2および検出回数Dを、温度センサ63で検出した気温に応じて設定する。温度別設定部62は、例えば温度センサ63で検出した水槽13の近傍の温度が室温に近い10℃から30℃の範囲にあるとき、その温度が10℃以下または30℃以上に比較して検出回数Dを大きく設定している。
【0038】
水槽13を支持する支持構造部15は、例えばゴムやスプリングなどの弾性部材を有している。これら弾性部材、特にゴムなどは、気温によって弾性係数が変化する。弾性部材は、一般に気温が低くなるほど硬くなり、気温が高くなるほど柔らかくなる。また、支持構造部15やモータ33などの駆動部分は、摩擦を軽減するためにグリスなどの油脂が塗布されている。これらの油脂も、気温が低くなるほど硬くなり、気温が高くなるほど柔らかくなる。さらに、支持構造部15などを構成する部材は、気温によって寸法が微少に変化する。そのため、気温が低いとき、水槽13を支持する支持構造部15は硬くなり、回転槽12を収容する水槽13の振動は比較的小さくなる。一方、気温が高くなるにつれて回転槽12を支持する支持構造部15は柔らかくなり、回転槽12を収容する水槽13の振動は比較的大きくなる。さらに気温が高くなると回転槽12を支持する支持構造部15は寸法の変化によって各部材間が密に接しやすくなり、回転槽12を収容する水槽13の振動はかえって小さくなる。そこで、温度別設定部62は、温度センサ63で検出した温度に応じて第一上限加速度a1、第二上限加速度a2および検出回数Dをそれぞれ設定する。これにより、回転数制御部55は、
図5に示すS111において第一超過回数L1と検出回数Dとを比較するとき、
図7に示す気温に応じて設定された検出回数Dを用いる。
【0039】
第2実施形態では、温度取得部61および温度センサ63により水槽13の周囲の温度を検出している。そして、温度別設定部62は、検出した水槽13の周囲の温度に応じて上限加速度および検出回数を設定している。この支持構造部15の特性は、温度によって変化する。この支持構造部15の特性の変化は、例えば弾性部材のばね定数や、各部材に塗布された潤滑油などの特性が温度によって変化するために生じる。そこで、検出した水槽13の周囲の温度に応じて上限加速度および検出回数を設定している。これにより、回転槽12を収容した水槽13の過大な振動を抑えることができる。
【0040】
(第3実施形態)
第3実施形態による洗濯機10について説明する。
第3実施形態は、構成が第1実施形態と共通するものの、制御装置50による制御が第1実施形態と相違する。第3実施形態の場合、制御装置50の回転数制御部55は、回転槽12の回転領域を低速回転領域と中高速回転領域とに区分している。具体的には、回転数取得部53で取得される回転槽12の回転数Rは、
図8に示すようにモータ33への通電の開始から時間の経過とともに変化する。本実施形態の場合、回転槽12の回転数Rは、T=Tc1まで時間の経過とともに増加して第一期安定回転数Rc1に到達する。そして、回転槽12の回転数Rは、T=Tc1からT=Tc2までの期間、第一期安定回転数Rc1を維持した後、再びT=Ttまで時間の経過とともに増加して第二期安定回転数Rc2に到達する。回転槽12は、この第二期安定回転数Rc2を維持したまま予め設定された脱水時間が経過するまで回転を継続する。
図8に示す本実施形態の場合、回転槽12の回転数Rの変化率つまり回転の加速度は、T=Tc2からT=Ttまでの間に少なくとも一回変化する。本実施形態の場合、第一期安定回転数Rc1は、Rc1=100〜150rpmに設定されている。また、第二期安定回転数Rc2は、Rc2=800〜1000rpmに設定されている。
【0041】
ここで、回転槽12に収容されている洗濯物は、既に洗濯運転およびすすぎ運転が終了している。これにより、回転槽12に収容されている洗濯物は、多くの水を含んでいる。そのため、濡れた洗濯物を収容している回転槽12の回転を急激かつ持続的に増加させると、洗濯物が急速に脱水され、回転槽12から水槽13へ大量の水が排出される。その結果、排水部32を経由した水の排出が不十分となり、脱水運転が妨げられるおそれがある。そこで、回転数制御部55は、回転槽12が回転を開始して、その回転数Rが第一期安定回転数Rc1に達すると、回転槽12の回転数Rの増加を抑え、洗濯物から排出される水の量を制限している。その結果、脱水運転によって洗濯物から除去される水は、一部が第一期安定回転数Rc1に到達するまでの脱水運転によって除去され、残りが後続するT=Tc2以降の脱水運転で除去される。これにより、洗濯物から除去された水が一時期に集中して排出されることが低減される。
【0042】
図8に示すように、回転槽12の回転数Rは、時間の経過とともに変化する。第3実施形態の場合、回転数制御部55は、この回転槽12の回転数Rがモータ33への通電の開始つまりT=T0から第一期安定回転数Rc1に到達するT=Tc1までの期間を低速回転領域と設定している。すなわち、回転数制御部55は、下限回転数として第一期安定回転数Rc1を設定し、回転槽12の回転数Rがこの第一期安定回転数Rc1より低い、つまりR<Rc1の領域を低速回転領域に設定している。一方、回転数制御部55は、回転槽12の回転数Rが第一期安定回転数Rc1以上、つまりR≧Rc1の領域を中高速回転領域に設定している。
【0043】
第3実施形態の場合、上限加速度および検出回数は、
図9に示すようにこれら低速回転領域および中高速回転領域の各領域ごとに、洗濯物の容量に応じてそれぞれ設定されている。すなわち、記憶部58は、上限加速度として、低速回転領域について低速回転上限加速度ALを記憶し、中高速回転領域について中高速回転上限加速度AHを記憶している。この場合、中高速回転上限加速度AHは、低速回転上限加速度ALよりも大きい、つまりAL<AHに設定されている。また、記憶部58は、低速回転領域について低速回転上限回数ELを記憶し、中高速回転領域について中高速回転上限回数EHを記憶している。この場合、中高速回転上限回数EHは、低速回転上限回数ELよりも小さい、つまりEL>EHに設定されている。
【0044】
回転数制御部55は、回転槽12の回転数Rが低速回転領域にあるとき、加速度センサ46を通して振動取得部54から取得した振動、つまり水槽13に加わる加速度aが低速回転上限加速度ALよりも大きくなる低速回転超過回数NLを数える。そして、回転数制御部55は、この低速回転超過回数NLが予め設定した低速回転上限回数ELに達すると、回転槽12の回転駆動を停止して、ほぐし運転へ移行する。
【0045】
一方、回転数制御部55は、回転槽12の回転数Rが中高速回転領域にあるとき、加速度センサ46を通して振動取得部54から取得した振動、つまり水槽13に加わる加速度aが中高速回転上限加速度AHよりも大きくなる中高速回転超過回数NHを数える。そして、回転数制御部55は、この中高速回転超過回数NHが予め設定した中高速回転上限回数EHに達すると、回転槽12の回転駆動を停止して、ほぐし運転へ移行する。
これら、低速回転領域における低速回転上限加速度ALおよび低速回転上限回数EL、並びに中高速回転領域における中高速回転上限加速度AHおよび中高速回転上限回数EHは、次のような理由により大小関係が定義されている。
【0046】
回転槽12の回転数Rが低速回転領域にあるとき、回転の開始からの経過時間が短く、回転槽12の回転数Rも小さい。そのため、回転槽12に収容されている洗濯物は、水分を多く含むとともに、回転槽12の中に不規則に分布している。その結果、低速回転領域にあるとき、回転槽12の回転は、中高速回転領域にあるときと比較して不安定になりやすい。一方、回転槽12の回転数Rが中高速回転領域にあるとき、回転槽12に収容されている洗濯物は、含有する水分が減少し、回転槽12の中に比較的均一に分布している。そのため、中高速回転領域にあるとき、回転槽12の回転は安定化するものの、回転数が増すために水槽13と接触した際の衝撃は大きくなりやすい。以上のことから、回転槽12の回転が低速回転領域にあるとき、回転槽12と水槽13とが接触する衝撃は小さいものの、回転槽12と水槽13とが接触する頻度は高くなりやすい。一方、回転槽12の回転が中高速回転領域にあるとき、低速回転領域に比較して、回転槽12と水槽13とが接触する頻度は低下するものの、回転槽12と水槽13とが接触する衝撃は大きくなりやすい。ところで、加速度センサ46で検出する加速度、つまり回転槽12と水槽13とが接触する衝撃が上限加速度を超えるとすぐに回転槽12の回転を停止してほぐし運転へ移行すると、脱水運転が完了するまでの所要時間の延長を招く。
【0047】
そこで、第3実施形態の場合、可能な限り脱水運転を継続するという観点から、低速回転上限加速度ALと中高速回転上限加速度AHとの関係をAL<AHとし、低速回転上限回数ELと中高速回転上限回数EHとの関係をEL>EHとしている。これにより、低速回転領域では、比較的小さな振動が多くの頻度で生じると、回転槽12は回転数が制御される。一方、中高速回転領域では、低速回転領域に比較して大きな振動が生じると、回転槽12は回転数が制御される。言い換えると、回転数制御部55は、低速回転領域では比較的小さな振動が多くの頻度で生じるまで脱水運転を継続するとともに、中高速回転領域では比較的大きな振動が生じるまで脱水運転を継続する。
【0048】
次に、第3実施形態による洗濯機10の作動の流れを
図10に基づいて説明する。なお、第1実施形態と共通する処理については詳細な説明を省略する。
制御装置50は、予め設定された作動プログラムにしたがって洗濯運転、すすぎ運転および脱水運転を実行する。制御装置50は、洗濯運転の開始に先立って回転槽12に収容された洗濯物の重量を取得する(S201)。制御装置50は、S201において洗濯物の重量を取得すると、洗濯運転およびすすぎ運転を実行する(S202)。制御装置50は、洗濯運転およびすすぎ運転が終了すると、脱水運転を開始する(S203)。そして、洗濯機10が脱水運転を開始すると、回転数取得部53は脱水運転における回転槽12の回転数Rを取得する(S204)。
【0049】
回転数制御部55は、S204において回転槽12の回転数Rを取得すると、取得した回転数Rが第一期安定回転数Rc1以上であるか否かを判断する(S205)。S205において回転数Rが第一期安定回転数Rc1未満である、つまりR<Rc1であると判断されると(S205:No)、振動取得部54は加速度センサ46から水槽13に加わる加速度aを取得する(S206)。回転数Rが第一期安定回転数Rc1未満であるとき、S203で回転を開始した回転槽12は低速回転領域にあると判断される。一方、S205において回転数Rが第一期安定回転数Rc1以上である、つまりR≧Rc1であると判断されると(S205:Yes)、振動取得部54は加速度センサ46から水槽13に加わる加速度aを取得する(S207)。回転数Rが第一期安定回転数Rc1以上であるとき、S203で回転を開始した回転槽12は、低速回転領域を経て、中高速回転領域に到達したと判断される。
【0050】
回転数制御部55は、S206において低速回転領域における加速度aを取得すると、この取得した加速度aが低速回転上限加速度ALよりも大きいか否かを判断する(S208)。すなわち、回転数制御部55は、取得した加速度aと記憶部58に記憶されている低速回転上限加速度ALとを比較して、取得した加速度aが低速回転上限加速度ALよりも大きいか、つまりa>ALであるかを判断する。
【0051】
回転数制御部55は、S208において加速度aが低速回転上限加速度ALよりも大きい、つまりa>ALと判断すると(S208:Yes)、このa>ALと判断した回数を低速回転超過回数NLとして数える(S209)。回転数制御部55は、a>ALとして判断した回数を低速回転超過回数NLとして記憶部58に記憶する。そして、回転数制御部55は、S209で数えた低速回転超過回数NLが予め設定した低速回転上限回数ELに到達したか否かを判断する(S210)。すなわち、回転数制御部55は、NL≧ELとなったか否かを判断する。回転数制御部55は、S206で取得した加速度aがa>ALとなる低速回転超過回数NLが低速回転上限回数ELに達した、つまりNL≧ELであると判断すると(S210:Yes)、回転槽12の回転を停止してほぐし運転を実行する(S211)。制御装置50は、S211においてほぐし運転を実行すると、S203へリターンし、脱水運転を再び開始する。
【0052】
一方、回転数制御部55は、S208において加速度aが低速回転上限加速度AL以下、つまりa≦ALと判断したとき(S208:No)、およびS210において加速度aがa>ALとなる低速回転超過回数NLが低速回転上限回数ELに達していない、つまりNL<ELと判断したとき(S210:No)、S204へリターンし、S204以降の処理を繰り返す。
【0053】
回転数制御部55は、S207において中高速回転領域における加速度aを取得すると、この取得した加速度aが中高速回転上限加速度AHよりも大きいか否かを判断する(S212)。すなわち、回転数制御部55は、取得した加速度aと記憶部58に記憶されている中高速回転上限加速度AHとを比較して、取得した加速度aが中高速回転上限加速度AHよりも大きいか、つまりa>AHであるかを判断する。
【0054】
回転数制御部55は、S212において加速度aが中高速回転上限加速度AHよりも大きい、つまりa>AHと判断すると(S212:Yes)、このa>AHと判断した回数を中高速回転超過回数NHとして数える(S213)。回転数制御部55は、a>AHとして判断した回数を中高速回転超過回数NHとして記憶部58に記憶する。そして、回転数制御部55は、S213で数えた中高速回転超過回数NHが予め設定した中高速回転上限回数EHに到達したか否かを判断する(S214)。すなわち、回転数制御部55は、NH≧EHとなったか否かを判断する。回転数制御部55は、S207で取得した加速度aがa>AHとなる中高速回転超過回数NHが中高速回転上限回数EHに達した、つまりNH≧EHと判断すると(S214:Yes)、S211へ移行し、回転槽12の回転を停止してほぐし運転を実行する(S211)。制御装置50は、S211においてほぐし運転を実行すると、S203へリターンし、脱水運転を再び開始する。
【0055】
一方、回転数制御部55は、S212において加速度aが中高速回転上限加速度AH以下、つまりa≦AHと判断したとき(S212:No)、S207へリターンして中高速回転領域における水槽13に加わる加速度aを取得し、S208移行の処理を繰り返す。また、回転数制御部55は、S214において加速度aがa>AHとなる中高速回転超過回数NHが中高速回転上限回数EHに達していない、つまりNH<EHと判断したとき(S214:No)、予め設定された脱水時間が経過したか否かを判断する(S215)。制御装置50は、脱水時間が経過したと判断すると(S215:Yes)、脱水運転を終了し(S216)、洗濯機10の運転を終了する。一方、回転数制御部55は、S215において脱水時間が経過していないと判断すると(S215:No)、S207へリターンして中高速回転領域における水槽13に加わる加速度aを取得し、S208移行の処理を繰り返す。
【0056】
以上説明したように第3実施形態では、回転槽12の回転数Rに応じて加速度の基準および超過回数の基準を設定している。これにより、回転槽12が低速回転領域にあるとき、回転数制御部55は、後続する中高速回転領域と比較して小さな振動が多数回生じても、これを許容しつつ回転槽12の回転を継続する。そのため、脱水運転の初期において回転槽12の回転が不安定で小さな振動が生じやすい場合でも、回転槽12はこの振動を許容しつつ脱水運転を継続する。その結果、わずかな振動で脱水運転が停止することがなく、ほぐし運転および脱水運転のやり直しが回避される。これに対し、回転槽12が中高速回転領域にあるとき、回転数制御部55は、比較的小さな振動を許容しながら回転槽12の回転を継続しつつ、大きな振動が生じると、少数回であっても回転槽12の回転を停止する。回転槽12の回転数が増加すると、振動も大きくなりやすく、騒音や機器の損傷を招く原因となる。そのため、中高速回転領域において比較的大きな振動が生じたとき、これが少数回であっても、回転数制御部55は回転槽12の回転を停止させる。このように中高速回転領域にあるとき、微小な振動は許容されつつ、大きな振動が生じると回転槽12の回転が制御される。したがって、回転槽12の回転が可能な限り継続され、脱水運転のやり直しにともなう総運転時間の延長を招くことなく、騒音や機器の損傷を低減することができる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態による洗濯機10について説明する。
第4実施形態は、第3実施形態の変形である。上述の第3実施形態の場合、制御装置50の回転数制御部55は、回転槽12の回転領域を低速回転領域と中高速回転領域とに区分している。第4実施形態では、この低速回転領域を、さらに初期回転領域と等加速回転領域とに区分している。具体的には、回転数取得部53で取得される回転槽12の回転数は、
図11に示すようにモータ33への通電の開始から時間の経過とともに変化する。詳細には、T=0においてモータへ通電したとき、回転槽12の回転数Rは、R=0から時間に比例して増加するのではなく、一定の期間、不規則に増加する。すなわち、回転槽12はモータ33へ通電した直後に回転を開始するものの、このとき回転槽12の回転数Rは既に数十回転に到達している。また、回転槽12の回転数Rは、回転槽12に収容された洗濯物の影響により、回転の初期において不規則に変化しながら増加する。このように、回転槽12の回転数Rは、モータ33への通電からT=Tc0が経過し、移行回転数Rsに到達するまで不規則に増加する。そして、モータ33の通電からT=Tc0が経過して移行回転数Rsに到達すると、回転槽12の回転が安定する。すなわち、回転槽12の回転数Rは、モータ33への通電からT=Tc0が経過すると、等加速的、つまり時間に比例して回転数Rが増加する。この移行回転数Rsは、回転槽12を駆動するモータ33などの機器の特性、および回転槽12に収容する洗濯物の重量などに応じて変化する。一般的には、移行回転数Rsは、Rs=10〜50rpm程度である。
【0058】
第4実施形態の場合、回転数制御部55は、低速回転領域のうち、モータ33への通電の開始つまりT=0からT=Tc0が経過して移行回転数Rsに到達するまでの回転が不規則な領域を初期回転領域と設定している。すなわち、回転数制御部55は、移行回転数Rsを設定し、回転槽12の回転数Rがこの移行回転数Rsより低い、つまりR<Rsの領域を初期回転領域に設定している。一方、回転数制御部55は、回転槽12の回転数Rが移行回転数Rs以上、つまり回転槽12の回転数Rが規則的な等加速で増加するR≧Rsの領域を等加速回転領域に設定している。
【0059】
第4実施形態では、上限加速度および検出回数は、
図12に示すようにこれら初期回転領域および等加速回転領域の各領域ごとに、洗濯物の容量に応じてそれぞれ設定されている。すなわち、記憶部58は、上限加速度として、初期回転領域について初期回転上限加速度AL1を記憶し、等加速回転領域について等加速回転上限加速度AL2を記憶している。この場合、等加速回転上限加速度AL2は、初期回転上限加速度AL1よりも大きい、つまりAL1<AL2に設定されている。また、記憶部58は、初期回転領域について初期回転上限回数EL1を記憶し、等加速回転領域について等加速回転上限回数EL2を記憶している。この場合、等加速回転上限回数EL2は、初期回転上限回数EL1よりも小さい、つまりEL1>EL2に設定されている。
【0060】
回転数制御部55は、回転槽12の回転数Rが初期回転領域にあるとき、加速度センサ46を通して振動取得部54から取得した振動、つまり水槽13に加わる加速度aが初期回転上限加速度AL1よりも大きくなる初期回転超過回数NL1を数える。そして、回転数制御部55は、この初期回転超過回数NL1が予め設定した初期回転上限回数EL1に達すると、回転槽12の回転駆動を停止して、ほぐし運転へ移行する。
【0061】
一方、回転数制御部55は、回転槽12の回転数Rが等加速回転領域にあるとき、加速度センサ46を通して振動取得部54から取得した振動、つまり水槽13に加わる加速度aが等加速回転上限加速度AL2よりも大きくなる等加速回転超過回数NL2を数える。そして、回転数制御部55は、この等加速回転超過回数NL2が予め設定した等加速回転上限回数EL2に達すると、回転槽12の回転駆動を停止して、ほぐし運転へ移行する。
これら、初期回転領域における初期回転上限加速度AL1および初期回転上限回数EL1、並びに等加速回転領域における等加速回転上限加速度AL2および等加速回転上限回数EL2は、次のような理由により大小関係が定義されている。
【0062】
回転槽12の回転数Rが初期回転領域にあるとき、モータ33への通電の開始からの経過時間が短い。そのため、モータ33の回転数は安定せず、かつモータ33の正確な回転数の検出も難しい。また、モータ33は、電気的な特性から、通電の開始直後には数十回転に到達する。これらの結果、初期回転領域にあるとき、回転槽12の回転数Rは、等加速回転領域と比較して不規則に変化しやすい。一方、回転槽12の回転数Rが等加速回転領域にあるとき、モータ33の回転数が安定して増加するものの、回転槽12の回転数Rの増加にともない水槽13と接触した際の衝撃は大きくなりやすい。以上のことから、回転槽12の回転が初期回転領域にあるとき、回転槽12と水槽13とが接触する衝撃は小さいものの、回転槽12と水槽13とが接触する頻度は高くなりやすい。一方、回転槽12が等加速回転領域にあるとき、初期回転領域と比較して、回転槽12と水槽13とが接触する頻度は低下するものの、回転槽12と水槽13とが接触する衝撃が大きくなりやすい。ところで、第3実施形態でも説明したように、加速度センサ46で検出する加速度、つまり回転槽12と水槽13とが接触する衝撃が上限加速度を超えるとすぐに回転槽12の回転を停止してほぐし運転へ移行すると、脱水運転が完了するまでの所要時間の延長を招く。
【0063】
そこで、第4実施形態の場合、第3実施形態と同様に可能な限り脱水運転を継続するという観点から、初期回転上限加速度AL1と等加速回転上限加速度AL2との関係をAL1<AL2とし、初期回転上限回数EL1と等加速回転上限回数EL2との関係をEL1>EL2としている。これにより、初期回転領域では、比較的小さな振動が多くの頻度で生じると、回転槽12は回転数が制御される。一方、等加速回転領域では、初期回転領域に比較して大きな振動が生じると、回転槽12は回転数が制御される。言い換えると、回転数制御部55は、初期回転領域では比較的小さな振動が多くの頻度で生じるまで脱水運転を継続するとともに、等加速回転領域では比較的大きな振動が生じるまで脱水運転を継続する。なお、等加速回転上限加速度AL2および等加速回転上限回数EL2は、それぞれ第3実施形態における低速回転上限加速度ALおよび低速回転上限回数ELと同一の値またはこれらより小さな値に設定してもよい。
【0064】
次に、第4実施形態による洗濯機の作動の流れを
図13に基づいて説明する。
制御装置50は、予め設定された作動プログラムにしたがって洗濯運転、すすぎ運転および脱水運転を実行する。制御装置50は、洗濯運転の開始に先立って回転槽12に収容された洗濯物の重量を取得する(S301)。制御装置50は、S301において洗濯物の重量を取得すると、洗濯運転およびすすぎ運転を実行する(S302)。制御装置50は、洗濯運転およびすすぎ運転が終了すると、脱水運転を開始する(S303)。そして、洗濯機10が脱水運転を開始すると、回転数取得部53は脱水運転における回転槽12の回転数Rを取得する(S304)。
【0065】
回転数制御部55は、S304において回転槽12の回転数Rを取得すると、取得した回転数Rが移行回転数Rs以上であるか否かを判断する(S305)。S305において回転数Rが移行回転数Rs未満である、つまりR<Rsであると判断されると(S305:No)、振動取得部54は加速度センサ46から水槽13に加わる加速度aを取得する(S306)。回転数Rが移行回転数Rs未満であるとき、S303で回転を開始した回転槽12は初期回転領域にあると判断される。一方、S305において回転数Rが移行回転数Rs以上である、つまりR≧Rsであると判断されると(S305:Yes)、振動取得部54は加速度センサ46から水槽13に加わる加速度aを取得する(S307)。回転数Rが移行回転数Rs以上であるとき、S303で回転を開始した回転槽12は、初期回転領域を経て、等加速回転領域に到達したと判断される。
【0066】
回転数制御部55は、S306において初期回転領域における加速度aを取得すると、この取得した加速度aが初期回転上限加速度AL1よりも大きいか否かを判断する(S308)。すなわち、回転数制御部55は、取得した加速度aと記憶部58に記憶されている初期回転上限加速度AL1とを比較して、取得した加速度aが初期回転上限加速度AL1よりも大きいか、つまりa>AL1であるかを判断する。
【0067】
回転数制御部55は、S308において加速度aが初期回転上限加速度AL1よりも大きい、つまりa>AL1と判断すると(S308:Yes)、このa>AL1と判断した回数を初期回転超過回数NL1として数える(S309)。回転数制御部55は、a>AL1として判断した回数を初期回転超過回数NL1として記憶部58に記憶する。そして、回転数制御部55は、S309で数えた初期回転超過回数NL1が予め設定した初期回転上限回数EL1に到達したか否かを判断する(S310)。すなわち、回転数制御部55は、NL1≧EL1となったか否かを判断する。回転数制御部55は、S306で取得した加速度aがa>AL1となる初期回転超過回数NL1が初期回転上限回数EL1に達した、つまりNL1≧EL1であると判断すると(S310:Yes)、回転槽12の回転を停止してほぐし運転を実行する(S311)。制御装置50は、S311においてほぐし運転を実行すると、S303へリターンし、脱水運転を再び開始する。
【0068】
一方、回転数制御部55は、S308において加速度aが初期回転上限加速度AL1以下、つまりa≦AL1と判断したとき(S308:Yes)、およびS310において加速度aがa>AL1となる初期回転超過回数NL1が初期回転上限回数EL1に達していない、つまりNL1<EL1と判断したとき(S310:No)、S304へリターンし、S304以降の処理を繰り返す。
【0069】
回転数制御部55は、S307において等加速回転領域における加速度aを取得すると、この取得した加速度aが等加速回転上限加速度AL2よりも大きいか否かを判断する(S312)。すなわち、回転数制御部55は、取得した加速度aと記憶部58に記憶されている等加速回転上限加速度AL2とを比較して、取得した加速度aが等加速回転上限加速度AL2よりも大きいか、つまりa>AL2であるかを判断する。
【0070】
回転数制御部55は、S312において加速度aが等加速回転上限加速度AL2よりも大きい、つまりa>AL2と判断すると(S312:Yes)、このa>AL2と判断した回数を等加速回転上限回数EL2として数える(S313)。回転数制御部55は、a>AL2として判断した回数を等加速回転超過回数NL2として記憶部58に記憶する。そして、回転数制御部55は、S313で数えた等加速回転超過回数NL2が予め設定した等加速回転上限回数EL2に到達したか否かを判断する(S314)。すなわち、回転数制御部55は、NL2≧EL2となったか否かを判断する。回転数制御部55は、S307で取得した加速度aがa>AL2となる等加速回転超過回数NL2が等加速回転上限回数EL2に達した、つまりNL2≧EL2と判断すると(S314:Yes)、S311へ移行し、回転槽12の回転を停止してほぐし運転を実行する(S311)。制御装置50は、S311においてほぐし運転を実行すると、S303へリターンし、脱水運転を再び開始する。
【0071】
一方、回転数制御部55は、S312において加速度aが等加速回転上限加速度AL2以下、つまりa≦AL2と判断したとき(S312:Yes)、S307へリターンして等加速回転領域における水槽13に加わる加速度aを取得し、S308以降の処理を繰り返す。また、回転数制御部55は、S314において加速度aがa>AL2となる等加速回転超過回数NL2等加速回転上限加速度AL2に達していない、つまりNL2<EL2と判断したとき(S314:No)、予め設定された脱水時間が経過したか否かを判断する(S315)。制御装置50は、脱水時間が経過したと判断すると(S315:Yes)、脱水運転を終了し(S315)、洗濯機10の運転を終了する。一方、回転数制御部55は、S315において脱水時間が経過していないと判断すると(S315:No)、S307へリターンして等加速回転領域における水槽13に加わる加速度aを取得し、S308以降の処理を繰り返す。
【0072】
以上説明したように第4実施形態では、低速回転領域をさらに初期回転領域と等加速回転領域とに区分し、それぞれ加速度の基準および超過回数の基準を設定している。これにより、回転槽12が初期回転領域にあるとき、回転数制御部55は、後続する等加速回転領域と比較して小さな振動が多数回生じても、これを許容しつつ回転槽12の回転を継続する。そのため、脱水運転の極めて初期において回転槽12の回転が不規則で小さな振動が生じやすい場合でも、回転槽12はこの振動を許容しつつ脱水運転を継続する。その結果、ごくわずかな振動で脱水運転が停止することがなく、ほぐし運転および脱水運転のやり直しが回避される。これに対し、回転槽12が等加速回転領域にあるとき、回転数制御部55は、比較的小さな振動を許容しながら回転槽12の回転を継続しつつ、大きな振動が生じると、少数回であっても回転槽12の回転を停止する。回転槽12の回転数が増加すると、振動も大きくなりやすく、騒音や機器の損傷を招く原因となる。そのため、等加速回転領域において比較的大きな振動が生じたとき、これが少数回であっても、回転数制御部55は回転槽12の回転を停止させる。このように等加速回転領域にあるとき、微小な振動は許容されつつ、大きな振動が生じると回転槽12の回転が制御される。したがって、回転数の回転が可能な限り継続され、脱水運転のやり直しにともなう総運転時間の延長を招くことなく、騒音や機器の損傷を低減することができる。
【0073】
(その他の実施形態)
上述の複数の実施形態では、水槽13を重力方向の上方から吊り下げ、回転槽12の回転中心軸が重力方向と平行な縦軸型の洗濯機10を例に説明した。しかし、上述の複数の実施形態で説明した制御は、縦軸型の洗濯機10に限らず、回転槽12の回転中心軸が重力方向に対して傾斜したいわゆる斜め軸型の洗濯機に適用してもよい。
また、上述の説明では、各実施形態を個別に洗濯機10に適用した例を説明したが、複数の実施形態を組み合わせて洗濯機10に適用してもよい。例えば、第2実施形態と第3実施形態または第4実施形態を組み合わせて洗濯機10に適用してもよい。
【0074】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。