特許第5796509号(P5796509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796509
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】フローサイトメータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   G01N15/14 D
   G01N15/14 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-32012(P2012-32012)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-167582(P2013-167582A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰志
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−186280(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/031303(WO,A1)
【文献】 特表2002−535614(JP,A)
【文献】 特開2001−285685(JP,A)
【文献】 特開平10−164473(JP,A)
【文献】 特開平07−134093(JP,A)
【文献】 特表2009−522586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)被検粒子を流す流路と、
b)複数の画素を有する固体撮像素子を備え、前記流路中の撮影対象領域を連続的に撮影する撮影手段と、
c)前記流路を流れる前記被検粒子の流速を調整する流速調整手段と、
d)前記撮影手段によって撮影された画像に基づき、前記撮影対象領域に目的粒子に類似した被検粒子が進入したか否かを判定する判定手段と
を有し、
前記撮影手段が、複数フレーム分の画像を連続撮影しつつ前記の各画素で得られた信号電荷を前記固体撮像素子上に設けられた記憶部に保持させる第1撮影モードと、前記第1撮影モードにて前記記憶部に保持された信号電荷を前記固体撮像素子の外部に出力しつつ前記第1撮影モードよりも低速で連続撮影を行い、該連続撮影により各画素で得られる信号電荷を1フレーム分ずつ前記固体撮像素子の外部に出力する撮影モードであって、1フレームあたりの画素数を前記第1撮影モードにおける1フレームあたりの画素数よりも少なくした第2撮影モードとを交互に実行するものであり、
前記流速調整手段が、前記第1撮影モードの実行時には前記流速が相対的に大きくなり、前記第2撮影モードの実行時には前記流速が相対的に小さくなるように調整を行い、
前記第2撮影モードの実行中に、前記判定手段により前記撮影対象領域に目的粒子に類似した被検粒子が進入したと判定された場合に、前記撮影手段がその後一定時間に亘って1フレームあたりの画素数を増大させること
を特徴とするフローサイトメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメータに関する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメータとは、層流が形成される流路に粒子を流し、個々の粒子を順番に分析する装置のことである。主に細胞の分析のために、分子生物学や医療の分野で多く使用される。また、分析した粒子の中から目的の粒子を分取することにも用いられる。
【0003】
非特許文献1には、個々の粒子にレーザ光を照射し、それによって発生する散乱光や蛍光等の複数種類の光を検出し、これらの光検出データを統計的に解析することにより、粒子を分類する装置が示されている。また、非特許文献2には、個々の粒子を撮影し、その撮影画像から解析される各粒子の形態の違いによって粒子を分類する装置が示されている。
【0004】
例えば医療の分野では、癌の早期発見のため、採取した血液中に癌の幹細胞が含まれているか否かを検出したいという要求がある。しかしながら、癌幹細胞は、血液中に含まれていたとしても非常に微量であり、10億個中に数個程度の割合でしか検出されない。
【0005】
非特許文献1の装置を用いた場合、毎秒数万〜数十万個もの細胞が測定され、各々の光学的特性によって分類される。しかしながら、癌幹細胞のみを特定することは難しく、分類した細胞の中には、癌幹細胞以外の、同じような光学的特性を有する多数の細胞が含まれる。この中から癌幹細胞を分離するために、例えば癌幹細胞に結合しやすい蛋白質に磁性体材料を付着させて分取した細胞群と混合し、該蛋白質に結合した癌幹細胞を磁石で集める、といった方法が用いられるが、コストが高く、余計な手間と時間を要する。
【0006】
一方、非特許文献2の装置では、撮影画像を解析することにより得られる形態から癌幹細胞のみを特定することができるが、撮影速度の制約から高速での測定が困難であるという問題がある。例えば、非特許文献2には、CCDカメラにより毎秒1000個の速度で細胞の撮影を行うことできると記載されているが、この速度では10億個の細胞を検査するために約12日もの時間が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2009/031301号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"FCMの原理入門 IV. フローサイトメトリーの原理"、[online]、ベックマンコールター(Beckman Coulter)、[平成23年12月9日検索]、インターネット<URL:http://www.bc-cytometry.com/FCM/fcmprinciple_4.html>
【非特許文献2】"ビーエム機器株式会社 フローサイトメトリー ImageStream -イメージストリーム-"、[online]、ビーエム機器株式会社、[平成23年12月9日検索]、インターネット<URL:http://www.bmbio.com/product_catalog/imagestream.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした問題に対し、本件出願人は特願2011-147108(以下、「先行特許出願」と呼ぶ)において新規なフローサイトメータを提案している。このフローサイトメータでは、被検粒子を流す流路(フローセル)の上流側にレーザ光源と光検出器とを備えた光学検出系が設けられ、下流側に高速度カメラを備えた撮像系が設けられている。光学検出系では、流路内を流れる被検粒子にレーザ光が照射されることによって生じる透過光、反射光、散乱光、又は蛍光が測定され、その結果から測定対象の被検粒子の光学的特性が目的粒子の光学的特性と類似しているか否かが判断される。そして、該被検粒子の光学的特性が目的粒子と類似していた場合は、その被検粒子を候補粒子と判断して該候補粒子の撮影を撮像系に指示する。撮影の指示を受けた撮像系は、その後一定時間に亘って複数枚の画像を連続して撮影する。そして、撮影された画像に基づいて前記候補粒子が目的粒子であるか否かが判定される。一方、被検粒子の光学的特性が目的粒子と類似しなかった場合は、その被検粒子は候補粒子ではないと判断され、撮像系で撮影されることなく通過する。
【0010】
なお、例えば10億個の被検粒子の中から数分以内に目的粒子を検出しようとする場合、毎秒数百万個の速度で測定を行う必要がある。そのため、被検粒子を撮影するための高速度カメラにも毎秒数百万フレームといった非常に高速な撮影速度が必要となる。しかし、従来の一般的なイメージセンサ(固体撮像素子)を用いた高速度カメラでは、画像を1枚撮影する度に各画素で生じた信号電荷を撮像素子外に読み出す必要があり、その際、読み出し回路の速度によって撮影速度が制約を受ける。そのため、従来の高速度カメラでは上記のような超高速での撮影を行うのは困難であった。
【0011】
そこで、前記の先行特許出願では、被検粒子を撮影するための高速度カメラとして、特許文献1に記載されているような、バースト型のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを備えたものを用いることが提案されている。
【0012】
バースト型のイメージセンサ(固体撮像素子)は、撮像素子の内部に画像記録用のメモリ(記憶部)を備えており、各画素で得られた信号は画素領域の周辺に配置された前記メモリに順次記憶される。そのため、撮影速度が読み出し回路の速度による制約を受けることがなく、上述のような超高速での撮影が実現可能となる。
【0013】
なお、前記メモリに記憶された信号は、所定枚数分の画像を撮影した後に、まとめて撮像素子の外部に読み出す必要がある。このため、上記のようなバースト型のイメージセンサは、長時間の連続撮影には適していないが、前記の先行特許出願に記載のフローサイトメータのように断続的に撮影する用途には、その高速の撮影速度もあって非常に好適に用いることができる。
【0014】
このように、前記の先行特許出願に記載のフローサイトメータでは、まず光学検出系によって被検粒子の中から候補粒子を絞り込み、その後、該候補粒子を撮像系で撮影するという二段階の構成を有し、更に候補粒子の撮影にバースト型のイメージセンサを備えた高速度カメラを用いる構成としたことにより、上述の癌幹細胞のような微量な粒子の測定を従来よりも短時間で行うことができる。
【0015】
しかし、前記の先行特許出願に記載のフローサイトメータでは、光学検出系において候補粒子を正確に検出できない場合があり、その結果、流路中を目的粒子が通過したにも拘わらず、撮像系での撮影を行うことなく見逃してしまう可能性があった。
【0016】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、短時間での測定が可能であり、且つ目的粒子が癌幹細胞のような微量な粒子であっても確実に検出することのできるフローサイトメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るフローサイトメータは、
a)被検粒子を流す流路と、
b)複数の画素を有する固体撮像素子を備え、前記流路中の撮影対象領域を連続的に撮影する撮影手段と、
c)前記流路を流れる前記被検粒子の流速を調整する流速調整手段と、
d)前記撮影手段によって撮影された画像に基づき、前記撮影対象領域に目的粒子に類似した被検粒子が進入したか否かを判定する判定手段と
を有し、
前記撮影手段が、複数フレーム分の画像を連続撮影しつつ前記の各画素で得られた信号電荷を前記固体撮像素子上に設けられた記憶部に保持させる第1撮影モードと、前記第1撮影モードにて前記記憶部に保持された信号電荷を前記固体撮像素子の外部に出力しつつ前記第1撮影モードよりも低速で連続撮影を行い、該連続撮影により各画素で得られる信号電荷を1フレーム分ずつ前記固体撮像素子の外部に出力する撮影モードであって、1フレームあたりの画素数を前記第1撮影モードにおける1フレームあたりの画素数よりも少なくした第2撮影モードとを交互に実行するものであり、
前記流速調整手段が、前記第1撮影モードの実行時には前記流速が相対的に大きくなり、前記第2撮影モードの実行時には前記流速が相対的に小さくなるように調整を行い、
前記第2撮影モードの実行中に、前記判定手段により前記撮影対象領域に目的粒子に類似した被検粒子が進入したと判定された場合に、前記撮影手段がその後一定時間に亘って1フレームあたりの画素数を増大させること
を特徴としている。
【0018】
上記のような固体撮像素子としては、例えば特許文献1に記載のようなバースト型のCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサを好適に用いることができる。こうしたバースト型のイメージセンサは、光電変換素子をそれぞれ含んだ複数の画素と、前記各画素に対応した複数の記憶部とを含んでおり、前記記憶部に各画素から出力された信号を所定のフレーム数分だけ記憶させ、まとめて読み出すことにより撮影速度を高速化することができる。また、上述の先行特許出願に記載の装置では、被検粒子の撮影が断続的に行われていたのに対し、本発明に係るフローサイトメータでは、信号の出力方式が異なる2種類の撮影モード(即ち、第1撮影モードと第2撮影モード)を交互に繰り返しながら被検粒子を連続的に撮影するものとなっている。ここで、第1撮影モードは、固体撮像素子の各画素で得られた信号電荷を撮像素子上に設けられた記憶部に記録しつつ連続撮影を行うモードであり、第2撮影モードは、信号電荷を前記記憶部には記憶させずに、固体撮像素子の外部に逐次出力しながら連続撮影を行うモードである。
【0019】
本発明に係るフローサイトメータでは、この2つの撮影モードが交互に実行されるため、第1撮影モードで得られた信号電荷を記憶部から読み出している間も第2撮影モードによって撮影が続行されることとなる。そのため、流路を流れる被検粒子を途切れることなく撮影することが可能となる。なお、第2撮影モードでは信号電荷の逐次読み出しを行うために第1撮影モードの実行時よりも撮影速度(単位時間あたりの撮影枚数)が低下するが、本発明に係るフローサイトメータでは、撮影モードの切り替えによる撮影速度の変化に応じて被検粒子の流速が調整されるため、各被検粒子についてほぼ一定の枚数の画像を得ることができる。
【0021】
また、第2撮影モードにおいて信号電荷の逐次読み出しに要する時間を短縮できるため、第2撮影モードにおける撮影速度を高速化し、サンプル測定に要する時間を更に短縮することができる。
【0023】
さらに、撮影対象領域を通過する被検粒子のうち、目的粒子に類似するものについては情報量の多い画像を得ることができるため、より正確な解析が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上の通り、本発明に係るフローサイトメータによれば、短時間で多数の被検粒子を撮影することができると共に、目的粒子を見逃すことなく確実に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例によるフローサイトメータの概略構成図。
図2】上記フローサイトメータにおける高速度カメラの撮影速度と被検粒子の流速の時間変化を示す波形図。
図3】前記時間変化の別の例を示す波形図。
図4】上記フローサイトメータにおける高速度カメラの撮影速度、被検粒子の流速、及び1フレームあたりの画素数の時間変化を示す波形図。
図5】高速度カメラにおける画素パターンを模式的に示した図であり、(a)は全画素を使用する場合を、(b)は中央付近の列のみを使用する場合を示す。
図6】高速度カメラにおける画素パターンの別の例を示した図であり、(a)は下流側で撮影範囲を広くする場合を、(b)は上流側で撮影範囲を広くする場合を、(c)は中央部で撮影範囲を広くする場合を、(d)は上流側と下流側で撮影範囲を広くする場合を示す。
図7】前記時間変化の別の例を示す波形図。
図8】前記時間変化の更に別の例を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るフローサイトメータの一実施例を添付図面を参照して説明する。図1は本実施例によるフローサイトメータの概略構成図である。
【0027】
このフローサイトメータでは、導入系20に設けられたシース液導入部21からシース液が導入され、フローセル10内に所定の流速に保たれた層流が形成されるように、シース液の流れが制御されている。更に同じく導入系20に設けられたサンプル導入部22からはサンプル液がフローセル10に導入され、該サンプル液中の各被検粒子は、層流が形成されたフローセル10の中を順番に流れていく。
【0028】
フローセル10の中途にはストロボランプ31と高速度カメラ33を含んだ撮像系30が配置されており、各被検粒子はフローセル10中の撮影領域32を通過する際にストロボランプ31によって照明され、高速度カメラ33によって撮影される。
【0029】
本実施例のフローサイトメータでは、高速度カメラ33として特許文献1に記載のバースト型のCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ(以下、「バースト型イメージセンサ」と呼ぶ)を備えたものを使用する。
【0030】
高速度カメラ33が撮影した画像のデータは、データ処理部50の画像解析部53へと送出される。画像解析部53では、各画像データに対して二値化等の画像処理を施した後、予め撮影された目的粒子の画像データとの類似度を算出する。この類似度が所定の閾値以上となる画像データが含まれていれば、撮影した被検粒子が目的粒子であると判定する。
【0031】
なお、データ処理部50は、例えば、所定のデータ処理プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータによって構成されており、上記の画像解析部53の他に、導入系20の動作を制御する流速制御部52(本発明における流速調整手段に相当)と、撮像系30の動作を制御する撮影制御部51と、後述するセルソータ40の動作を制御する分取制御部54とを機能ブロックとして含んでいる。
【0032】
フローセル10の出口端には、目的粒子を分取するためのセルソータ40が配設されており、セルソータ40の分取領域41に到達した被検粒子はその種類(目的粒子かそれ以外か)に応じて容器42又は容器43に振り分けられる。
【0033】
前記の画像解析部53において、撮影した被検粒子が目的粒子であると判定された場合、分取制御部54は、撮像系30が撮影を行った時点から所定の遅延時間が経過した時点でセルソータ40に分取トリガ信号を出力し、セルソータ40の分取領域41に来た被検粒子(目的粒子)を容器42へと分取させる。この遅延時間はフローセル10の撮影領域32と分取領域41の間の流路長さと、流速制御部52が設定した流速によって決まる。
【0034】
セルソータ40は、例えば非特許文献1に記載されているように、フローセル10の出口端から滴下される目的粒子を含む液滴を帯電させ、この液滴が落下する間に特定の電場を液滴に印加することにより、落下方向を容器42へと制御する方法を用いることができる。
【0035】
画像解析部53において、撮影した被検粒子が目的粒子でないと判定された場合は、該被検粒子を含む液滴は、セルソータ40において電場を印加されることなく、そのまま容器43に落下する。
【0036】
以下、本実施例に係るフローサイトメータの特徴である撮像系30及び導入系20の動作制御について説明する。本実施例に係るフローサイトメータでは、バースト型イメージセンサ(本発明における固体撮像素子に相当)を備えた高速度カメラ33(本発明における撮影手段に相当)によって、フローセル10を流れる被検粒子を全て撮影する。バースト型イメージセンサは、センサチップ34の中に記憶部36を設け、画素領域35の各画素で得られた複数フレーム分の信号電荷を該記憶部36に一旦保持させることによって撮影の高速化を図ったものであり、最高で1000万フレーム/秒もの超高速撮影が可能である。
【0037】
こうしたバースト型イメージセンサでは、所定フレーム数分(例えば128フレーム分)の画像を撮影した後は、センサチップ34内の記憶部36に蓄積した信号電荷を一括して外部に読み出す必要があり、上記のような超高速撮影を長時間に亘って連続的に実行することはできない。但し、センサチップ34上の記憶部36から信号の一括読み出しを行っている間も、記憶部36への新たな信号記録は行わずに、画素領域35で得られた画像信号を逐次センサチップ34外に読み出しながら撮影を行うことは可能である。
【0038】
そこで、本実施例のフローサイトメータでは、センサチップ34上の記憶部36への信号記録を伴う撮影モード(「第1撮影モード」と呼ぶ)と、該記憶部36への信号記録を伴わない撮影モード(「第2撮影モード」と呼ぶ)とを交互に実行するように高速度カメラ33が制御される。高速度カメラ33は、まず第1撮影モードにおいて、フローセル10の撮影領域32を連続的に撮影しつつ得られた画像信号(信号電荷)をセンサチップ34上の記憶部36に記憶していく。そして、所定枚数の画像を撮影した後は第2撮影モードに移行し、通常の(バースト型でない)イメージセンサを用いた場合と同様に、画素領域35の各画素からの出力信号を1フレーム分ずつセンサチップ34外に読み出しながら連続撮影を続行する。このとき、該連続撮影と並行して、記憶部36に保持されている信号電荷(直前の第1撮影モードで取得されたもの)がセンサチップ34の外部へと読み出される。なお、第2撮影モードでは信号電荷の逐次読み出しを行うため、第1撮影モードに比べて撮影速度が低速となる。そのため、高速度カメラ33による撮影速度は、時間経過に伴って図2の上段のグラフに示すように交互に変化することとなる。そこで、このときストロボランプ31の点滅速度もこれに応じて変化するように制御される。
【0039】
更に、本実施例のフローサイトメータでは、上記のような撮影速度の変化(図2の上段)に同期してフローセル10内を流れる被検粒子の流速が変化するように導入系20の動作が制御される(同図の下段)。具体的には、流速制御部52が、例えばシース液導入部21に設けられたポンプ(図示略)の動作を制御してシース液の圧力を調整することにより、フローセル10内を流れるサンプル液(及び該サンプル液中の被検粒子)の流速を変化させる。なお、サンプル導入部22に設けられたポンプ(図示略)の動作を制御することによって被検粒子の流速を調整することも可能である。
【0040】
このとき被検粒子の流速の変化の割合は高速度カメラ33による撮影速度の変化の割合と揃えるようにする。例えば、第1撮影モードにおける撮影速度が100万フレーム/秒であり、第2撮影モードにおける撮影速度が4万フレーム/秒であった場合、第1撮影モードから第2撮影モードへの切り替わりにより撮影速度は25分の1となるので、被検粒子の流速も25分の1となるように制御する。これにより、1つの被検粒子が撮影領域32を通過する間に高速度カメラ33で撮影される画像の枚数を撮影モードの変化に拘わらず常にほぼ一定とすることができる。なお、各撮影モードにおける被検粒子の流速は、被検粒子1つにつき複数枚(例えば10枚)の画像が得られるように設定することが望ましい。これにより、撮影領域32を通過する間に被検粒子が回転していた場合に最適な画像を画像解析部53での解析に使用することができる。
【0041】
なお、サンプル液の乱れや逆流を防止する観点から、撮影モードの切り替え時には、被検粒子の流速を図2の下段に示すように緩やかに変化させることが望ましい。更に、このとき被検粒子1つあたりの撮影枚数を一定とする観点から、第1撮影モードと第2撮影モードとの境界部における撮影速度も、上記のような流速変化に合わせて緩やかに変化させることが望ましい。具体的には、図3に示すように、まず第1撮影モードにおいて撮影速度Iで連続撮影を行った後、第1撮影モード終了前の所定枚数分(例えば14枚分)の撮影を行う間に撮影速度をIからIへと徐々に下降させる。このとき、該撮影速度の変化に応じて、被検粒子の流速もFからFへと徐々に下降させる。その後、第2撮影モードに切り替えて撮影速度Fで所定枚数分(又は所定時間)の撮影を行った後、第1撮影モードに切り替え、所定枚数分(例えば14枚分)の撮影を行う間に撮影速度をIからIへと徐々に上昇させる。このとき、該撮影速度の変化に応じて被検粒子の流速もFからFへと徐々に上昇させる。
【0042】
なお、上記のような被検粒子の流速変化に加え、高速度カメラ33における1フレームあたりの画素数を時間的に変化させるようにしてもよい。この場合の撮影速度、被検粒子の流速、及び画素数の時間変化の一例を図4に示す。このとき、第1撮影モードではセンサチップ34上の画素領域35に設けられた全画素を撮影に使用し、第2撮影モードでは一部の画素のみを使用するといったように、第1撮影モードにおける画素数(P)よりも第2撮影モードにおける画素数(P)の方が少なくなるようにする(図4の下段を参照)。これにより、全ての画素を使用する場合に比べて信号電荷の逐次読み出しに要する時間を短縮できるため、第2撮影モードにおける撮影速度を高速化することができる(図4の上段を参照)。その結果、第2撮影モードにおける被検粒子の流速を高めることができる(図4の中段を参照)ため、サンプル測定に要する時間を更に短縮することが可能となる。
【0043】
センサチップ34上の画素領域35における画素の配列を図5及び図6に示す。これらの図では左右方向が流路(フローセル10)の幅方向に相当し、上下方向が長さ方向に相当する。また、図中の1つのマス目が1つの画素を表しており、網掛けで示した領域は撮影に使用されない(即ち信号電荷の読み出しが行われない)画素を表し、それ以外の領域は撮影に使用される画素を表している。
【0044】
上記のように1フレームあたりの画素数を少なくする場合には、撮影に使用する画素を画素領域35の全体から均一に間引くようにしてもよいが、図5(b)のように画素領域35の左右両側の複数の列を撮影に使用しないようにすることが望ましい。この場合、流路の左右の端が撮影できないことになるが、通常、被検粒子は流路の中心付近を流れるため、該中心付近さえ撮影できれば、ほぼ全ての被検粒子を捉えることが可能である。
【0045】
また、図6(a)〜(d)のように、画素領域35の長さ方向の位置によって撮影に使用する画素の数を変えるようにしてもよい。図6(a)の例では、画素領域35の下端付近の複数の行では幅方向の中央付近の相対的に多数の画素(図中では幅方向の全画素)を撮影に使用し、それ以外の行では幅方向の中央付近の相対的に少数の画素を撮影に使用する。これにより、フローセル10の撮影領域32の下流側の端部では流路の幅方向の広い範囲が撮影され、それ以外の領域では幅方向の狭い範囲が撮影されることとなる。このような構成とすることにより、撮影に用いる画素数を極力抑えつつ、被検粒子の長さと幅を測定可能な画像を得ることができる。なお、図6(b)、(c)のように画素領域35の上端付近や中央付近で撮影に用いる領域の幅を広くしてもよい。また、図6(d)のように画素領域35の上端付近と下端付近の両方で撮影に用いる領域の幅を広くしてもよい。これにより、フローセル10の撮影領域32を通過する間に被検粒子が回転していた場合でも、該被検粒子の長さと幅を正確に捉えることができる。
【0046】
また、上記のように第2撮影モードで画素数を下げて撮影している間に該撮影により得られた画像を画像解析部53で解析し、その結果、前記撮影対象領域に目的粒子に類似した被検粒子(候補粒子)が進入したと判定された場合には、直ちに1フレームあたりの画素数を上げるようにしてもよい(この場合、画像解析部53が本発明における判定手段に相当する)。このとき、画素数を上げると同時に第1撮影モードに切り替えるようにしてもよく、第2撮影モードのまま撮影を続行するようにしてもよい。
【0047】
まず、第2撮影モードのまま撮影を続行する場合について説明する。この場合の撮影速度、被検粒子の流速、及び画素数の時間変化の一例を図7に示す。この例では、第1撮影モードでは撮影速度I、流速F、及び画素数Pで撮影を行い、第2撮影モードで候補粒子が検出されていないときは撮影速度I、流速F、及び画素数Pで撮影を行うものとする(但しI>I、F>F、P>P)。そして、第2撮影モードの実行中に候補粒子が検出されたら(図中の時刻t)、撮影モードを第2撮影モードとしたままで画素数をPに上げる。これにより、信号電荷の逐次読み出しに要する時間が長くなるため、高速度カメラ33による撮影速度が低下する(図中のI)。そこで、これに応じて被検粒子の流速を下げる(図中のF)ことにより、被検粒子1つあたりの撮影枚数が一定に維持されるようにする。その後は、所定枚数(例えば10枚)の画像を撮影した時点(図中の時刻t)で再び画素数をPに下げ、これに伴って撮影速度をIに、流速をFに戻して、引き続き第2撮影モードによる撮影を続行する。その他の点は上述の図4で示した例と同様である。
【0048】
次に、候補粒子が検出された時点で撮影モードを切り替える場合について説明する。この場合の撮影速度、被検粒子の流速、及び画素数の時間変化の一例を図8に示す。この例では、第1撮影モードでは撮影速度I、流速F、及び画素数Pで撮影を行い、第2撮影モードでは撮影速度I、流速F、及び画素数Pで撮影を行う(但しI>I、F>F、P>P)。そして、第2撮影モードの実行中に候補粒子が検出されたら(図中の時刻t)、撮影モードを第1撮影モードに切り替え、第1撮影モードで撮影可能な枚数の画像を撮影した時点(図中の時刻t)で再び第2撮影モードへの切り替えを行う。その他の点は上述の図4で示した例と同様である。このように第2撮影モードの実行途中で第1撮影モードへの切り替えを行った場合、センサチップ34上の記憶部36に保持されたデータの読み出しが完了する前に新たなデータが記憶部36に書き込まれることとなるため、直前の第1撮影モードで得られた画像信号の一部は上書きされて失われてしまう。しかし、目的粒子が癌幹細胞のような微量粒子の場合は、直前の第1撮影モードにおいて目的粒子が撮影されている可能性は低いため、この点が問題となるおそれは殆どないといえる。
【0049】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容されるものである。例えば、上記の例ではフローセル10の出口端にセルソータ40を設けたが、該セルソータ40を有しない構成としてもよい。この場合、フローセル10の出口端に到達した被検粒子は、画像解析部53での解析結果に拘わらず全て同一の容器に収容される。
【符号の説明】
【0050】
10…フローセル
20…導入系
21…シース液導入部
22…サンプル導入部
30…撮像系
31…ストロボランプ
32…撮影領域
33…高速度カメラ
34…センサチップ
35…画素領域
36…記憶部
40…セルソータ
41…分取領域
42、43…容器
50…データ処理部
51…撮影制御部
52…流速制御部
53…画像解析部
54…分取制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8