特許第5805509号(P5805509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805509
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】ヒータ制御装置及び車両用シートヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
   H05B3/00 310D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-262858(P2011-262858)
(22)【出願日】2011年11月30日
(65)【公開番号】特開2013-115011(P2013-115011A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2014年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】水野 健一
(72)【発明者】
【氏名】早川 智子
(72)【発明者】
【氏名】尾沼 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 規子
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−508809(JP,A)
【文献】 実開昭55−159414(JP,U)
【文献】 実開平03−116590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに設けられたヒータに供給する電力を制御するヒータ制御装置であって、
外気温を計測するための外気温計測手段と、
前記シートの表面温度を計測するためのシート表面温度計測手段と、
前記ヒータが起動された直後の初期状態において、前記外気温計測手段により外気温を計測すると共に前記シート表面温度計測手段によりシート表面温度を計測し、該外気温と該シート表面温度とに応じて、該初期状態後の定常状態における電力よりも大きい初期電力を前記ヒータへ出力する時間を制御する制御手段と、
を備え
第1外気温度とそれよりも高い第2外気温度とが設定されており、
第1シート表面温度とそれよりも高い第2シート表面温度とが設定されており、
前記制御手段は、前記初期状態において、
前記外気温が前記第1外気温度以下かつ前記シート表面温度が前記第1シート表面温度以下である低温度範囲では、前記初期電力を所定時間出力し、
前記外気温が前記第2外気温度を超え又は前記シート表面温度が前記第2シート表面温度を超える高温度範囲では、前記初期電力を出力する時間を0とし、
前記外気温及び前記シート表面温度が前記低温度範囲と前記高温度範囲との間であるときは、前記初期電力を出力する時間を、前記外気温及び前記シート表面温度の一方又は両方が高いほど前記所定時間より短い時間とすることを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記初期電力を出力する時間内に、前記シート表面温度が所定温度に達したときには、該初期電力の出力を中止する請求項1記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記初期電力には電力の大きさが異なる2以上の段階が設定されており、
前記制御手段は、電力の大きい順にそれぞれ所定時間、各前記段階の電力を出力する請求項1又は2に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のヒータ制御装置を備えることを特徴とする車両用シートヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒータ制御装置及び車両用シートヒータに関し、詳しくは、シートに設けられるヒータの立ち上がり時に環境温度に応じた速熱性を与えるヒータ制御装置、及びそれを備える車両用シートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等のシートの座面部や背もたれ部に発熱体を備え、着座者を暖めるシートヒータが用いられている。このようなシートヒータの多くは、発熱体への通電量を変化させたり、発熱体への通電をオン、オフしたりすることによって温度の調整を行っている。
例えば、ヒータの温度を検出し、その検出温度と予め定められた目標温度とを比較してヒータへの通電の入/切動作を制御することで、加熱する対象物を目標温度に保つようにするヒータ制御装置が知られている(特許文献1を参照)。
また、着座者を速やかに暖めるため、ヒータの立ち上がり時に昇温を促進する手段が備えられる場合もある。例えば、2つのヒータと、温度により通電のオン・オフ制御を制御する温度制御装置とを備えることにより、立ち上がり時の速暖性に優れるヒータユニット等が開示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−283333号公報
【特許文献2】WO2007/097445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載されたヒータ制御装置は、ヒータと温度計測手段と温度制御手段と動作開始用の動作スイッチとを備え、動作スイッチを入れることで温度制御手段が動作を開始し、温度計測手段から得られる検出温度と予め定められた目標温度とを比較してヒータへの通電の入/切動作を制御することで、加熱する対象物を目標温度に保つようにされている。発明の課題は異なるが、従来のヒータ制御の例として、特許文献1に記載されたヒータ制御装置を参照することができる。この従来例においては、動作スイッチを入れると、ヒータの通電とタイマ計時を開始すると共にヒータの温度を検出し、検出温度と目標温度とを比較してタイマ時限を計算し、そのタイマ時限が到来したときにヒータ電源を切るように制御されている。ここで、前記タイマ時限(通電時間)は、図9に示すように、検出温度と目標温度との差によって求められる(特許文献1の図6を参照)。このような制御方法を適用すれば、起動後のヒータへの通電時間は、検出温度と目標温度との温度差に応じて自動調整することが可能となる。
しかし、検出温度と目標温度との差に応じてヒータの立ち上がり時の通電時間を制御する方法では、外気の温度によって、シートの着座者に与える温熱の過不足を生じてしまうという問題があった。例えば、シート温度と目標温度から一律に立ち上がり時の通電量や通電時間を制御したのでは、外気温もシート温度も低いときには着座者を充分に暖められない場合が生じる。また、シート温度は低いが外気温が高いときには、着座者を過度に暖めてしまう場合が生じる。特に、車両用シートにおいては、車外環境の温度と車室内のシート温度との差が大きくなる場合が多く、それまで車外にいた着座者に対して、ヒータの立ち上がり時に適切な温熱を与えることが求められる。
また、前記特許文献2に記載されているヒータユニットでは、ヒータの立ち上がり時において一定温度に達する(サーモスタットが作動する)まで1つのヒータに通電することにより、電力量を大きくして速暖性を高めている。しかし、2つのヒータを併設しなければならないので構造が複雑となるばかりでなく、シートに備えられるサーモスタットによりヒータの接続状態が変更されるため、外気温との関係で立ち上がり時の温熱に過不足を生じてしまうという前記同様の問題がある。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、シートに設けられるヒータの立ち上がり時に、環境温度に応じた温熱を着座者に与えるヒータ制御装置、及びそれを備える車両用シートヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本第1発明のヒータ制御装置は、シートに設けられたヒータに供給する電力を制御するヒータ制御装置であって、外気温を計測するための外気温計測手段と、前記シートの表面温度を計測するためのシート表面温度計測手段と、前記ヒータが起動された直後の初期状態において、前記外気温計測手段により外気温を計測すると共に前記シート表面温度計測手段によりシート表面温度を計測し、該外気温と該シート表面温度とに応じて、該初期状態後の定常状態における電力よりも大きい初期電力を前記ヒータへ出力する時間を制御する制御手段と、を備え、第1外気温度とそれよりも高い第2外気温度とが設定されており、第1シート表面温度とそれよりも高い第2シート表面温度とが設定されており、前記制御手段は、前記初期状態において、前記外気温が前記第1外気温度以下かつ前記シート表面温度が前記第1シート表面温度以下である低温度範囲では、前記初期電力を所定時間出力し、前記外気温が前記第2外気温度を超え又は前記シート表面温度が前記第2シート表面温度を超える高温度範囲では、前記初期電力を出力する時間を0とし、前記外気温及び前記シート表面温度が前記低温度範囲と前記高温度範囲との間であるときは、前記初期電力を出力する時間を、前記外気温及び前記シート表面温度の一方又は両方が高いほど前記所定時間より短い時間とすることを要旨とする。
【0007】
本第発明は、前記第1発明において、前記制御手段は、前記初期電力を出力する時間内に、前記シート表面温度が設定された目標温度に達したときには、該初期電力の出力を中止することを要旨とする。
本第発明は、前記第1又は発明において、前記初期電力には電力の大きさが異なる2以上の段階が設定されており、前記制御手段は、電力の大きい順にそれぞれ所定時間、各前記段階の電力を出力することを要旨とする。
本第発明の車両用シートヒータは、前記第1乃至第発明のいずれかのヒータ制御装置を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒータ制御装置によれば、外気温計測手段と、シート表面温度計測手段と、ヒータが起動された直後の初期状態において、前記外気温計測手段により外気温を計測すると共に前記シート表面温度計測手段によりシート表面温度を計測し、計測された外気温とシート表面温度とに応じて、定常状態における電力よりも大きい初期電力をヒータへ出力する時間を制御する制御手段と、を備えるため、外気温度とシート表面温度との関係に基づいて最適な速熱性をシートヒータに与えることができる。例えば、外気温もシート表面温度も低い場合には、ヒータに初期電力を供給する時間を長くすることにより、外気中で身体が冷えた着座者に対して充分な温熱を与えることができる。また、シート表面温度は低いが外気温が高いような場合には、初期電力の供給時間を相対的に短くすることにより、外気中で暖まった着座者に対して暖めすぎないようにすることができる。このように、外気温及びシート表面温度と両者の差とによってヒータの立ち上がり時の電力を制御することにより、着座者に対して速やかに温熱を与え、しかも暖め不足や暖めすぎを生じず、環境条件に適したヒータの温度制御を行うことができる。
【0009】
また、第1外気温度とそれよりも高い第2外気温度と、第1シート表面温度とそれよりも高い第2シート表面温度とが設定されており、前記制御手段は、外気温が第1外気温度以下かつシート表面温度が第1シート表面温度以下である低温度範囲では初期電力を所定時間出力し、外気温が第2外気温度を超え又はシート表面温度が第2シート表面温度を超える高温度範囲では初期電力を出力する時間を0とし、前記低温度範囲と前記高温度範囲との間の範囲では、初期電力を出力する時間を、外気温及びシート表面温度の一方又は両方が高いほど所定時間より短い時間とするため、着座者に対して、低温度範囲においては充分な温熱を与えることにより暖め不足をなくし、高温度範囲においては過剰な温熱を与えないようにすることができる。また、その中間の温度範囲においては、シート表面温度が同じでも外気温が高いほど、外気温が同じでもシート表面温度が高いほど、シート表面温度と外気温が高くなるほど、初期状態における速熱を抑制することができ、環境条件に好適な温度制御を容易に行うことが可能になる。
前記制御手段は、前記初期電力を出力する時間内に、前記シート表面温度が所定温度に達したときには、該初期電力の出力を中止する場合には、スイッチ等により設定された目標温度に達すると判断されたときに初期状態の制御を終了し、所望の目標温度に基づく平衡制御(定常状態)に移行することができる。
前記初期電力には電力の大きさが異なる2以上の段階が設定されており、前記制御手段は、電力の大きい順にそれぞれ所定時間、各前記段階の電力を出力する場合には、初期状態の期間において、外気温度及びシート表面温度に合わせてヒータへの供給電力及びその供給時間を配分することができる。これにより、急激な温熱の変化による着座者の違和感を減らし、目標温度に滑らかに到達させることができる。
【0010】
上記ヒータ制御装置を備える車両用シートヒータによれば、シートヒータの立上がり時に、着座者に対して、外気温とシート表面温度に応じた最適な温熱を速やかに与えることができる。また、シートヒータの立上がり時の速熱のために特別なヒータの構成とする必要がないため、シートヒータの部品数や組立工数を増やすことなく、シートの軽量化、低コスト化、高信頼化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】本ヒータ制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】外気温とシート表面温度とに応じた本ヒータ制御装置の制御方法を説明するための図である。
図3】初期電力とその出力時間の例を示すグラフである。
図4】前図に示す出力時間を、外気温とシート表面温度とに応じて設定する具体例を示す表である。
図5】ヒータ制御装置の制御処理の例を表わすフローチャートである。
図6】ヒータが起動された後の、シート表面温度(a)及び初期電力(b)の変化を表わしたグラフである(起動時に外気温が低く、シート表面温度も低かった場合)。
図7】ヒータが起動された後の、シート表面温度(a)及び初期電力(b)の変化を表わしたグラフである(起動時に外気温が高く、シート表面温度が低かった場合)。
図8】ヒータが起動された後の、シート表面温度(a)及び初期電力(b)の変化を表わしたグラフである(起動時に外気温が低く、シート表面温度が高かった場合)。
図9】従来のヒータ制御の例を表わすグラフである。
図10】従来の制御方法の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.ヒータ制御装置及び車両用シートヒータの構成
以下、図1〜10を参照しながら本発明のヒータ制御装置及び車両用シートヒータを詳しく説明する。
本ヒータ制御装置は、シートに設けられたヒータに供給する電力を制御することによりその温度を制御するヒータ制御装置である。本ヒータ制御装置が設けられるシートは特に限定されず、例えば、車両用途、室内用途の様々なシートに適用することができる。本ヒータ制御装置は、好適には、車両用シートに備えられるヒータ(車両用シートヒータ)の制御装置として、又はその制御装置の一部として用いることができる。
【0013】
図1は、模式的に表わした車室内のシートと、そのシートに備えられた本ヒータ制御装置1の構成を表わしている。車両9の車室内に備えられている車両用シート8は、座面部81と背もたれ部82からなっている。そして、シート8には、着座者の身体を温めるためのヒータ(発熱体)5が組み込まれている。本例のシート8では、着座者と接する座面部81の表層部にヒータ51が設けられ、背もたれ部82の表層部にヒータ52が設けられている。
ヒータ制御装置1は、外気温Tを計測するための外気温計測手段2と、シート8の表面温度Tを計測するためのシート表面温度計測手段3と、ヒータ5(51、52等)に供給する電力を制御する制御手段4と、を備えている。ヒータ5は、制御手段4により通電量が制御され、その通電量によって発熱量が変化する。
【0014】
一般に、シートヒータには、シートヒータをオン・オフしたり温度を調整したりするための動作スイッチ6等が設けられている。ヒータ制御装置1は、動作スイッチ6等によって起動されるようにすることができる。また、動作スイッチ6によって設定される目標温度に従って制御を行うようにすることができる。
ヒータ制御装置1は、シートヒータが起動された直後の立ち上がり期間(「初期状態」という。)に、速やかに且つ過不足なく温熱を着座者に与えることを目的としている。初期状態の後、シートヒータは目標温度に対して平衡するように温度制御される(「定常状態」という。)。定常状態における温度制御の方法は問わない。
ヒータ制御装置1は、初期状態において、定常状態よりも大きな電力(「初期電力」という。)をヒータ5に与えることにより、急速にシートの温度を上昇させるように構成することができる。このため、制御手段4は、初期状態において初期電力をヒータ5に出力する時間を制御するように構成される。
【0015】
前記ヒータ5は、初期状態と定常状態とで共通に用いられるヒータであってもよいし、初期状態での速熱用のヒータであってもよい。1つのシート上に設けられるヒータの数や、配置、形状、大きさ等は、シートに接する着座者の身体部位に温熱を与えることができる限り特に問わない。例えば、1つのシートに1つのヒータが設けられていてもよいし、着座者の身体部位(背、腰、尻、腿等)に対応してそれぞれヒータが設けられていてもよい。ヒータが複数に分けて備えられている場合には、制御手段4によりヒータ毎に独立して通電量を制御し、各部位の発熱及び放熱特性や、身体の部位により異なる温熱感に合わせるようにすることもできる。
ヒータ5の材料や構造は特に限定されず、例えば、抵抗発熱線や面状発熱体等を使用することができる。各発熱体は、好ましくは着座者と接するシートの表層部に設けられる。この表層部には、シートと一体になってシートの外面を覆うように設けられるシートカバーを含むことができる。例えば、前記ヒータ51及び52を、座面部81及び背もたれ部82の内部に設けられているクッション材とシートカバーとの間に設けることができる。
【0016】
前記外気温計測手段2は、室外の温度(外気温T)を計測するために備えられ、その具体的な構成や設置場所等は問わない。例えば、外気温計測手段2として温度センサを備えて外気温を直接計測可能としてもよいし、ヒータ制御装置1とは別のシステムによって計測された外気温の情報を外気温計測手段2により取得するようにしてもよい。
【0017】
前記シート表面温度計測手段3は、シート8の表面温度Tを計測するために備えられており、ヒータ5への通電による温度変化を計測可能な部位に設けられる。例えば、着座者の背部又は尻部に対応して設けられたヒータ周辺に温度センサを設けることにより、着座者の身長等体格が異なっていても、また着座姿勢が変化しても、身体と該当位置のシート表面とが接触していることが多いため、安定してシート表面温度Tの計測が可能である。
外気温計測手段2及びシート表面温度計測手段3に用いる温度センサの数や種類等は、特に問わない。例えば、サーミスタや熱電対等、よく知られた温度計測素子を用いることができる。
【0018】
前記制御手段4は、動作スイッチ6等により起動され、外気温計測手段2により外気温Tを計測すると共にシート表面温度計測手段3によりシート表面温度Tを計測し、外気温Tとシート表面温度Tとに応じて、前記初期電力をヒータ5へ出力する時間を制御するように構成される。
制御手段4は、ハードウェアのみで構成されてもよいし、マイクロプロセッサ等を使用してハードウェアとソフトウェアとによって構成されてもよい。ヒータ5に対して供給する電力(通電量)の制御方法は任意に選択することができる。例えば、マイクロプロセッサにより、パルス幅変調(PWM)、電圧制御、電流制御等により通電量を制御することができる。
ヒータ制御装置1及びヒータ5の電源は、例えば車両のバッテリから給電を受けるように構成することができる。
【0019】
2.ヒータ制御装置の制御方法及び動作
図2は、外気温とシート表面温度とに応じたヒータ制御装置1の制御方法を説明するための図である。図の横軸は外気温T、縦軸はシート表面温度Tを表わしている。制御手段4は、ヒータが起動された直後の初期状態において、前記外気温計測手段2により外気温Tを計測すると共に前記シート表面温度計測手段3によりシート表面温度Tを計測し、計測した外気温Tとシート表面温度Tに応じて、前記初期電力を前記ヒータへ出力する時間を制御する。
【0020】
ここで、外気温Tが低く且つシート表面温度Tも低いとき(「低温度範囲」という。)には、室外にいて身体が冷えており、室内に入って冷たいシートに座った着座者を速やかに暖める必要がある。このため、大きな初期電力を所定時間出力することによってシートヒータの温度を急速且つ充分に上昇させる。一方、外気温Tが高く且つシート表面温度Tも高いとき(「高温度範囲」という。)には、暖かい室外から室内に入って暖かいシートに座った着座者に対して、シートヒータにより過度に暖めないことが必要となる。このため、大きな初期電力を供給する時間を0として、即ち初期状態の制御を省略して、シートヒータの温度を上昇させないようにする。
また、外気温T及びシート表面温度Tが前記低温度範囲と前記高温度範囲の間(「中間温度範囲」という。)であるときには、前記初期電力を出力する時間を、前記所定時間に対して、外気温T及びシート表面温度Tの一方又は両方が高いほど短い時間とすることによって、シートヒータの初期状態における温度上昇を適度にすることができる。
【0021】
例えば、外気温Tの高低の基準として、第1外気温度TA1とそれより高い第2外気温度TA2を予め設定しておく。人が通常、室外において、第1外気温度TA1以下では寒く感じ、第2外気温度TA2を超えると暖かく感じるような温度とする。また、シート表面温度Tの高低の基準として、第1シート表面温度TS1とそれより高い第2シート表面温度TS2を予め設定しておく。人がシートに触れたとき、通常、第1シート表面温度TS1以下では冷たく感じ、第2シート表面温度TS2を超えると暖かく感じるような温度とする。
そこで、外気温T及びシート表面温度Tによって、外気温が第1外気温度TA1以下かつシート表面温度が第1シート表面温度TS1以下である低温度範囲と、外気温が第2外気温度TA2を超え又はシート表面温度が第2シート表面温度TS2を超える高温度範囲と、低温度範囲と高温度範囲との間の中間温度範囲と、の3つの範囲に区分する。そして、高温度範囲では初期電力を所定時間出力し、低温度範囲では初期電力を出力する時間を0とし、中間温度範囲では、初期電力を出力する時間を、外気温T及びシート表面温度Tの一方又は両方が高いほど前記所定時間より短い時間とする、ように制御することができる。
【0022】
具体的には、前記中間温度範囲を更に2つに分け、初期電力の供給を図2に示すような4つの範囲に分けて制御することができる。図の横軸の外気温TA3、TA4及びTA2と、縦軸のシート表面温度TS3、TS4及びTS2と、をそれぞれ結ぶ境界線をL、L、Lとする。各境界線の形状(設定方法)は任意に定めることができる。そして、外気温T及びシート表面温度Tが境界線L以下の範囲Rにあるときには、初期電力を所定時間供給する。この範囲には、前記低温度範囲Rが含まれている。また、外気温T及びシート表面温度Tが境界線Lを超え且つ境界線L以下の範囲Rにあるときには、初期電力の供給時間を前記所定時間よりも短い時間とすることにより、温度上昇を抑制する。また、境界線Lを超え且つ境界線L以下の範囲Rにあるときには、初期電力の供給時間をより短い時間とする。更に、外気温T及びシート表面温度Tが境界線Lを超える範囲Rにあるときには、初期電力の供給時間を0とすることにより、速熱をしないようにする。この範囲には、前記高温度範囲Rが含まれている。
【0023】
前記のように制御すると、外気温Tもシート表面温度Tも低い場合(図2に示す範囲R内のA点)には、着座直後に、着座者に充分な温熱を与えることができる。しかしシート表面温度Tは低いが外気温Tが高い場合(範囲R内のB点)には、初期電力の供給時間が短くされるため、着座者に過度な温熱を与えないようにすることができる。また、シート表面温度Tは高いが外気温Tが低い場合(範囲R内のC点)も、初期電力の供給時間が短くされるため、着座者に過度な温熱を与えないようにすることができる。すなわち、外気温Tとシート表面温度Tとに対応して、適度な温熱を着座者に与えることが可能になる。
【0024】
ヒータ制御装置1による前記制御に対して、外気温の高低を考慮しない従来の制御は、図10のように表わすことができる。例えば、目標温度との関係により、シート表面温度TS10、S30及びTS20の3つの境界を設定する。そして、シート表面温度がTS10以下であるときには、初期電力を一定時間供給することにより、シートヒータの温度を急速に上昇させる。一方、シート表面温度がTS20よりも高いときには、初期電力を供給する時間を0として、シートヒータの温度を上昇させないようにする。また、シート表面温度がTS10とTS20の間にあるときは、初期電力を出力する時間を前記一定時間より短い時間とすることによって、シートヒータの温度上昇を適度にすることができる。なお、図10上のA、B及びC点は、図2上のA、B及びC点と対応している。
【0025】
しかし、シート表面温度Tが同程度に低くても、外気温Tが低い場合(図10に示すA点)と外気温Tが高い場合(B点)とで同程度の初期電力を供給することとなるため、A点における温熱不足又はB点における温熱過剰のいずれかの問題を生じてしまうこととなる。すなわち、シート表面温度が低く且つ外気温が低い場合に充分に温熱を与えるようにすれば、外気温が高い場合には暖めすぎとなり、逆に外気温が高い場合に適度な温熱を与えるようにすれば、外気温が低い場合には暖め不足になる。また、シート表面温度Tが高い場合には初期電力の供給時間が短くされるため、外気温が低い場合(C点)には、着座者を充分に暖められないこととなる。
【0026】
更に、本ヒータ制御装置1は、前記初期電力として電力の大きさが異なる2以上の段階を設定し、制御手段4は、電力の大きい順にそれぞれ所定時間、各前記段階の電力を出力するようにすることができる。
図3は、大きさの異なる初期電力Pを、順次ヒータに出力する例を表わしている。ここで、電力pは、定常状態において出力される電力を表わし、例えば、動作スイッチ6等により設定された目標温度を維持するための電力とすることができる。定常状態において目標温度と平衡させるための電力の増減やオン・オフは、任意の方法で制御されればよい。本例では、初期電力として、電力pよりも大きな電力pと、更に大きな電力pとの2段階の電力が設定されている。それぞれの電力値は適宜定められればよく、例えば、電力p=60W程度であるとき、電力p=120W、電力p=240W等とすることができる。また、いくつの段階を設定するかは問わず、1段階でもよいし、小刻みに段階を設け、ほぼ連続的に電力値を変化させるようにしてもよい。
【0027】
図3の横軸は、シートヒータ(ヒータ制御装置1)の起動後の時間を表わす。制御手段4により、起動時に最も大きな電力pの供給を開始し、時間tが経過したとき出力を電力pに低下させている。そして、起動後時間tが経過したとき出力を電力pに低下させている。このように、大きな電力から段階的に出力することによって、シートヒータの温度上昇を速くすると共に、急激な発熱の変化によって着座者に違和感を与えることなく、定常状態に移行することができる。それぞれの段階の出力時間は適宜設定することができ、例えば、外気温T及びシート表面温度Tの温度範囲に対応して予め定めた時間としてもよいし、外気温T、シート表面温度T及び目標温度により算出するようにしてもよい。
【0028】
図4は、図3に示した2段階の初期電力とその供給時間とを組み合せて、外気温とシート表面温度とに応じて初期状態の制御を行うための制御表の例を示している。本例では、外気温Tを−15℃、−5℃、5℃及び15℃を境として5つに分け、シート表面温度Tを10℃及び30℃を境として3つに分け、計15の温度範囲毎に前記時間t及びtを設定している。例えば、外気温が−15℃以下と最も低く、シート表面温度が10℃以下と低い場合には、最大の電力pを140秒間(t)出力し、その後電力pを40秒間(t−t)出力するようにする。一方、外気温が15℃を超えている場合には、シート表面温度にかかわらず初期電力p及びpの出力を行わない(t=0、t=0)。また、その他の温度範囲では、外気温とシート表面温度とに応じて初期電力(p、p)の出力時間(t、t−t)を定めている。
【0029】
図5は、図4に示した制御を行う場合の処理の流れを示すフローチャートである。シートヒータが起動されたときに制御を開始し、先ず、初期電力の供給時間を制御するためのタイマをスタートさせる(S10)。また、外気温T及びシート表面温度Tを計測する(S20)。そして、予め記憶されている制御表等に基づいて、測定された外気温T及びシート表面温度Tの場合に初期電力を供給するための時間(t、t)を求める(T30)。
ステップS40において時間tを判断し、時間tが0でない場合には、ヒータへの出力を電力pに設定して出力を開始する(S41)。そして、時間tが経過するまでその出力を継続する(S42)。また、ステップS42においては、シート表面温度Tを計測し、それが所定温度Tに達した場合にはこの初期電力の出力を中止するようにすることができる。所定温度Tは目標温度より低い温度とし、現在の出力によって目標温度を超えてしまわないように設定することができる。
ステップS40において時間t=0であった場合には、ステップS41及びS42をスキップする。
【0030】
次に、ステップS50において時間(t−t)を判断し、時間(t−t)が0でない場合には、ヒータへの出力を電力pに設定して出力を開始し(S51)、時間tが経過するまでその出力を継続する(S52)。また、ステップS52においては、前記ステップS42と同様に、シート表面温度Tを計測し、それが所定温度Tに達した場合にはこの初期電力の出力を中止するようにすることができる。
ステップS50において時間(t−t)=0であった場合には、ステップS51及びS52をスキップする。
以上の処理により、初期電力の出力を終了すなわち初期状態を終了し、定常状態の制御(S60)に移行する。
【0031】
上記の制御については、種々の変形が可能である。例えば、シート表面温度Tを周期的に計測して、その温度上昇によって出力する電力の大きさや出力時間を変更するようにすることができる。また、初期電力の大きさを2段階としているが、1段階であってもよいし、3段階以上に細かく設けておくこともできる。また、制御表によらず、温度計測値から予め定めた演算によって電力の大きさや出力時間を求めるようにすることができる。また、上記では所定温度Tを設定し、動作スイッチ等によって設定される目標温度に近付いた場合には出力を中止しているが、シート表面温度の上昇速度等によって電力の大きさや出力時間を変更するようにしてもよい。
【0032】
以上に説明したヒータ制御装置1は、車両用シートヒータにおける立ち上がり制御用に好適に用いることができる。車両用途においては、使用環境の寒暖差が大きく、外気温と車室内との温度差も大きい場合が多いからである。
【0033】
3.ヒータ制御装置及び車両用シートヒータの効果
図6〜8は、ヒータ制御装置1を備える車両用シートヒータの制御と、それによる効果を示す図である。各図(a)は起動後のシート表面温度Tの変化を表わし、各図(b)は、ヒータに出力される電力Pの変化を(a)と同じ時間軸により表わしている。また、各図において、実線C1は、本ヒータ制御装置1により制御(図2参照)した場合を表わし、破線C2は従来制御を表わしている。ここで、従来制御とは、外気温を考慮しない制御であり、図10に示した制御例において、出力する電力を2段階(p、p)とした場合である。
【0034】
図6は、起動時において外気温Tもシート表面温度Tも低い場合(図2及び図10に示されたA点に相当する。)を示している。従来制御C2の場合には、広い外気温の範囲を一律的に制御するため、このような低温度範囲では、初期電力の供給が不足することとなり、シート表面温度Tの上昇が鈍化する。この結果、シート表面温度Tが好ましい温度(目標温度)まで上昇するのに要する時間が長くなり、寒い環境から車内に入ってきた着座者に対して充分な温熱を速やかに与えることができない。
これに比べて、本ヒータ制御装置による制御C1の場合には、外気温Tの低さに応じて大きな電力pが長い時間出力されるため、シート表面温度Tは速やかに上昇し、着座者に対して充分な温熱を速やかに与えることができる。
【0035】
図7は、起動時において外気温Tは高いが、シート表面温度Tが低い場合(図2及び図10に示されたB点に相当する。)を示している。従来制御C2の場合には、広い外気温の範囲を一律的に制御するため、このように外気温が高くても、大きな初期電力pが相対的に長く出力されることとなり、シート表面温度Tが過度に上昇してしまう。この結果、暖かい環境から車内に入ってきた着座者に対して過剰な温熱を与えることとなる。
これに比べて、本ヒータ制御装置による制御C1の場合には、外気温Tの高さに応じて初期電力p及びpの出力時間が短くされるため、シート表面温度Tの上昇が抑制され、着座者に対して過剰な温熱を与えることはない。
【0036】
図8は、起動時において外気温Tは低いが、シート表面温度Tが高い場合(図2及び図10に示されたC点に相当する。)を示している。従来制御C2の場合には、このように外気温が低くても、シート表面温度Tが中間温度範囲にあれば初期電力を出力しないため、立ち上がり時にシート表面温度Tを特に上昇させる作用を奏さない。この結果、寒い環境から車内に入ってきた着座者に対して速やかに温熱を与えて暖めることができない。
これに比べて、本ヒータ制御装置による制御C1の場合には、シート表面温度Tが中間温度範囲であっても、外気温Tが低ければ、それに応じて初期電力p及びpが短い時間出力されるため、シート表面温度Tは速やかに上昇し、着座者に対して適度な温熱を与えることができる。
【0037】
以上のように、本ヒータ制御装置及びそれを備える車両用シートヒータは、外気温及びシート表面温度を計測し、それぞれの高低に応じて、室外環境にいた後室内のシートに座った着座者に対して、快適な温熱を速やかに与えることが可能になる。
【0038】
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1;ヒータ制御装置、2;外気温計測手段、3;シート表面温度計測手段、4;制御手段、5、51、52;ヒータ(発熱体)、6;動作スイッチ、8;シート、81;座面部、82;背もたれ部、9;車両、T;外気温、T;シート表面温度。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10