特許第5807360号(P5807360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5807360
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】ボールねじ用シール
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20151021BHJP
   F16J 15/32 20060101ALI20151021BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   F16H25/22 A
   F16J15/32 311Z
   F16H25/24 N
   F16H25/24 M
   F16H25/22 F
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-83066(P2011-83066)
(22)【出願日】2011年4月4日
(65)【公開番号】特開2012-219834(P2012-219834A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀徳
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−133944(JP,A)
【文献】 実開昭54−168458(JP,U)
【文献】 特開2007−309438(JP,A)
【文献】 特開2010−185516(JP,A)
【文献】 特開2005−273680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
F16J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじのナットの軸方向端部に取り付けて使用され、ボールねじのねじ軸の螺旋溝および外周面に接触させるリップ部と、リップ部の外周側に連続する基部と、を有するリング状のシールであって、
前記リップ部は、前記ねじ軸の螺旋溝に接触させる溝接触部分と、前記ねじ軸の外周面に接触させる外周接触部分と、両部分を連結する連結部とからなり、
前記溝接触部分の先端は軸方向でナットの外側に向き、前記外周接触部分の先端は軸方向でナットの内側に向き、前記連結部は、前記基部の板面に対して垂直な面で両部分の境界を連結していることを特徴とするボールねじ用シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじのナットの軸方向端部に取り付けて使用されるシールに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動する装置である。
このようなボールねじは、ナットの内部に潤滑剤を供給して使用される。また、ねじ軸に付着した塵埃や摩耗粉などの異物がナット内に入り込むと、ボールや螺旋溝に焼付きなどの損傷が生じる原因となるため、ナット内部への異物の侵入を防ぐ必要がある。そこで、ナット内部に供給された潤滑剤の外部への排出防止とナット内部への異物の侵入防止を目的として、ナットの軸方向端部にリング状のシールが取り付けられている。
【0003】
特許文献1には、ナット内部の潤滑剤を保持できるとともに、ナット内部への異物の侵入を防止できるシールとして、軸方向内側の端面に潤滑剤保持用のスリットを有し、軸方向外側の端面に異物除去用のスリットを有するものが記載されている。
特許文献2には、ナット内部の潤滑剤を保持できるとともに、ナット内部への異物の侵入を防止できるシールとして、潤滑剤保持用のリング状部材と異物除去用のリング状部材からなり、両部材の内周部がねじ軸の螺旋溝と外周面に接触し、異物除去用のリング状部材を軸方向外側に配置するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−130544号公報
【特許文献2】特開2002−364726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載されたボールねじ用シールは、複雑な構造であるか複数の部材を組み合わせたものであるため、コストの面で改善の余地がある。
この発明の課題は、ナット内部の潤滑剤を保持できるとともに、ナット内部への異物の侵入を防止できるボールねじ用シールであって、簡単な構造でコストが低いものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明のボールねじ用シールは、ボールねじのナットの軸方向端部に取り付けて使用され、ボールねじのねじ軸の螺旋溝および外周面に接触させるリップ部と、リップ部の外周側に連続する基部と、を有するリング状のシールであって、前記リップ部の先端が、ねじ軸の螺旋溝に接触させる部分では軸方向でナットの外側に向き、ねじ軸の外周面に接触させる部分では軸方向でナットの内側に向き、両部分の境界が連結されていることを特徴とする。
【0007】
リップ部の先端が軸方向でナットの外側に向いている部分は、ナット内部への異物の侵入を防止する作用を有し、リップ部の先端が軸方向でナットの内側に向いている部分は、ナット内部の潤滑剤を保持する(外部へ排出させない)作用を有する。よって、この発明のボールねじ用シールは、ナット内部への異物の侵入を防止する作用とナット内部の潤滑剤を保持する作用の両方を発揮できる。また、特許文献1のシールよりも構造が簡単であり、金型を変更すれば通常のシールと同じ方法で作製できる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ナット内部の潤滑剤を保持できるとともに、ナット内部への異物の侵入を防止でき、簡単な構造でコストが低いボールねじ用シールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のボールねじ用シールが取り付けられた状態のボールねじを示す部分断面図である。
図2図1のボールねじを示す正面図である。
図3】実施形態のボールねじ用シールを示す正面図である。
図4図3のA−A断面図である。
図5図3のB−B断面図である。
図6図3とはリップ部の連結部の形状が異なるボールねじ用シールを示す正面図である。
図7図6のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1に示すボールねじは、ナット1と、ねじ軸2と、ボール3と、この発明の実施形態に相当するシール4を備えている。ナット1の軸方向両端に、シール4を取り付けるための凹部11が形成されている。
ナット1の内周面に螺旋溝1aが形成され、ねじ軸2の外周面に螺旋溝2aが形成されている。ボール3は、ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aで形成される軌道溝の間に配置されている。
【0011】
図2〜5に示すように、シール4は、ねじ軸2の螺旋溝2aおよび外周面2bに接触させるリップ部41と、リップ部41の外周側に連続する基部42と、を有する。基部42はリング状の芯金43の一方の面に形成されている。リップ部41の内周縁の正面形状は、ねじ軸2の軸直角断面形状と相似である。シール4には、取付用のボルト挿入穴として、基部42および芯金43を貫通する各3個の貫通穴42a,43aが、周方向に等間隔で形成されている。
【0012】
シール4のリップ部41は、ねじ軸2の螺旋溝2aに接触させる溝接触部分41aと、ねじ軸2の外周面2bに接触させる外周接触部分41bと、両部分41a,41bを連結する連結部41cとからなる。溝接触部分41aの先端は軸方向でナット1の外側に向き、外周接触部分41bの先端は軸方向でナット1の内側に向いている。
連結部41cは、基部42の板面(軸方向に垂直な面)に対して傾斜する面で両部分の境界を連結している。この連結部41cにより、溝接触部分41aから外周接触部分41bに向かう間に、リップ部41の先端の軸方向での向きが、ナット1の外側向きから内側向きに徐々に変化している。
【0013】
このシール4は、リップ部41の形状に対応させて金型を変更することで、通常のボールねじ用シール(リップ部の先端が周方向全体で同じ向きになっているシール)と同じ方法で作製することができる。
この実施形態のシール4によれば、先端が軸方向でナット1の外側に向いているリップ部41の溝接触部分41aで、ナット1の内部への異物侵入が防止され、先端が軸方向でナット1の内側に向いているリップ部41の外周接触部分41bで、ナット1の内部の潤滑剤が保持される。すなわち、簡単な構造で、ナット1の内部への異物侵入を防止する作用とナット1の内部の潤滑剤を保持する作用の両方を発揮できる。
【0014】
また、リップ部41の溝接触部分41aの先端が軸方向でナット1の内側に向き、外周接触部分41bの先端が軸方向でナット1の外側に向いているシールよりも、グリースの保持性能の点で優れている。
なお、この実施形態では、リップ部41の先端の向きが異なる両部分41a,41bの境界を、連結部41cにより、基部42の板面(軸方向に垂直な面)に対して傾斜する面で連結しているが、図6および7に示すように、基部42の板面に対して垂直な面(連結部41d)で連結してもよい。
【符号の説明】
【0015】
1 ナット
1a ねじ軸の螺旋溝
11 シール取り付け用の凹部
2 ねじ軸
2a ねじ軸の螺旋溝
3 ボール
4 シール
41 リップ部
41a 溝接触部分(ねじ軸の螺旋溝に接触させる部分)
41b 外周接触部分(ねじ軸の外周面に接触させる部分)
41c 連結部
41d 連結部
42 基部
42a 基部の貫通穴
43 芯金
43a 芯金の貫通穴
5 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7