特許第5811383号(P5811383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5811383非水系電解質二次電池用正極活物質と該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811383
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】非水系電解質二次電池用正極活物質と該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20151022BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20151022BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
【請求項の数】8
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-217841(P2014-217841)
(22)【出願日】2014年10月24日
(62)【分割の表示】特願2011-123854(P2011-123854)の分割
【原出願日】2011年6月1日
(65)【公開番号】特開2015-43335(P2015-43335A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】戸屋 広将
(72)【発明者】
【氏名】福井 篤
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−252844(JP,A)
【文献】 特開2008−270161(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/011748(WO,A1)
【文献】 特開2004−193115(JP,A)
【文献】 特開2003−308880(JP,A)
【文献】 特開2008−243448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(2):Li1+u(−0.05≦u≦0.50、x+s+t=1、0<s≦0.05、0<s+t≦0.15、MはNi、Co、Mnから選択される1種以上を含む遷移金属、AはMおよびW以外の遷移金属元素、2族元素、又は13族元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素)で表され、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質であって、
平均粒径が3〜6μm、粒度分布の広がりを示す指標の〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項2】
比表面積が、0.5〜2.0m/gであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記添加元素が、B、Al、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Moから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記添加元素が、少なくともアルミニウムであることを特徴とする請求項3に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記一般式(2)におけるMは、少なくともNiおよびCoを含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記一般式(2)におけるMが、少なくともNiおよびMnを含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記一般式(2)におけるs+tが、0.02<s+t≦0.15であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
【請求項8】
正極が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質によって形成されていることを特徴とする非水系電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物とその製造方法、その非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、モーター駆動用電源、特に輸送機器用電源の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
【0003】
このような二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。
リチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することの可能な材料が用いられている。
このようなリチウムイオン二次電池については、現在研究、開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
【0004】
これまで主に提案されている材料としては、合成が比較的容易なリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウム・ニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウム・マンガン複合酸化物(LiMn)などを挙げることができる。
このうちリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物は、サイクル特性が良く、低抵抗で高出力が取り出せる材料として注目されている。
【0005】
その良好な性能を得るためには、均一な粒径を有するリチウム複合酸化物を正極活物質として用いることが要求される。
これは、粒度分布が広い複合酸化物を使用すると、電極内で粒子に掛かる電圧が不均一となることで、充放電を繰り返すと微粒子が選択的に劣化し、サイクル劣化が生じやすくなるなどの不具合が生じるためである。したがって、正極材料の性能を向上させるためには、正極活物質であるリチウム複合酸化物について、小粒径で粒径が均一な粒子となるように製造することが重要となる。
すなわち、リチウム複合酸化物は、通常、複合水酸化物から製造されるので、正極材料の性能を向上させて、最終製品である高性能のリチウムイオン二次電池を製造する上では、正極材料を形成するリチウム複合酸化物の原料となる複合水酸化物として、小粒径で狭い粒度分布を有する粒子からなる複合水酸化物を使用することが必要となる。
【0006】
また、リチウム複合酸化物の粒度分布に関して、例えば、特許文献1には、粒度分布曲線において、その累積頻度が50%の粒径を意味する平均粒径D50が3〜15μm、最小粒径が0.5μm以上、最大粒径が50μm以下の粒度分布を有する粒子であり、かつ、その累積頻度が10%のD10と90%のD90との関係において、D10/D50が0.60〜0.90、D10/D90が0.30〜0.70であるリチウム複合酸化物が開示されている。そして、このリチウム複合酸化物は、高い充填性を有し、充放電容量特性および高出力特性に優れ、充放電負荷の大きい条件下であっても劣化しにくいので、このリチウム複合酸化物を用いれば、優れた出力特性を持ち、かつ、サイクル特性の劣化の少ないリチウムイオン非水電解液二次電池を得ることができるとの記載もある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているリチウム複合酸化物は、平均粒径3〜15μmに対して、最小粒径が0.5μm以上、最大粒径が50μm以下となっていることから微細粒子および粗大粒子が含まれている。
そして、上記D10/D50およびD10/D90で規定される粒度分布では、粒径分布の範囲が狭いとはいえない。
つまり、特許文献1のリチウム複合酸化物は、粒径均一性が十分に高い粒子であるとはいえず、かかるリチウム複合酸化物を採用しても、正極材料の性能向上は望めず、十分な性能を有するリチウムイオン非水電解液二次電池を得ることは難しい。
【0008】
また、粒度分布を改善することを目的とした、複合酸化物の原料となる複合水酸化物の製造方法についても、提案がなされている。
特許文献2では、非水電解質電池用正極活物質の製造方法において、2種以上の遷移金属塩を含む水溶液を、または異なる遷移金属塩の2種以上の水溶液とアルカリ溶液とを同時に反応槽に投入し、還元剤を共存させながら、または不活性ガスを通気しながら共沈させることにより、前駆体である水酸化物または酸化物を得る方法が提案されている。
【0009】
しかし、特許文献2の技術は、生成した結晶を分級しながら回収するものであるため、均一な粒径の生成物を得るためには、製造条件を厳密に管理する必要があると考えられ、工業的規模の生産は難しい。しかも、大きな粒径の結晶粒子は得ることができても、小径の粒子を得ることは難しい。
【0010】
さらに、最近では様々な元素を添加し、さらなる性能向上への取り組みがされており、タングステンについては反応抵抗を低下させる作用があり、高出力化への効果が期待できる。
例えば、特許文献3では、正極活物質の周りにTi、Al、Sn、Bi、Cu、Si、Ga、W、Zr、B、Moから選ばれた少なくとも一種を含む金属及びまたはこれら複数個の組み合わせにより得られる金属間化合物、及びまたは酸化物を被覆した正極活物質が提案されている。このような被覆により、酸素ガスを吸収させ安全性を確保できるとしているが、出力特性に関しては全く開示されていない。また、開示されている製造方法は、遊星ボールミルを用いて被覆するものであり、このような被覆方法では、正極活物質に物理的なダメージを与えてしまい、電池特性が低下してしまう。
【0011】
また、特許文献4では、少なくとも層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用正極活物質であって、そのリチウム遷移金属複合酸化物は、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在し、その粒子の少なくとも表面に、モリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種を備える化合物を有する非水電解質二次電池用正極活物質が提案されている。
【0012】
これにより、より一層厳しい使用環境下においても優れた電池特性を有する非水電解質二次電池用正極活物質が得られるとされ、特に、粒子の表面にモリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を有することにより、熱安定性、負荷特性および出力特性の向上を損なうことなく、初期特性が向上するとしている。
【0013】
しかしながら、モリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素による効果は、初期特性、すなわち初期放電容量および初期効率の向上にあるとされ、出力特性に言及したものではない。また、開示されている製造方法によれば、添加元素をリチウム化合物と同時に熱処理した水酸化物と混合して焼成するため、添加元素の一部が層状に配置されているニッケルと置換してしまい電池特性の低下を招く問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−147068号公報
【特許文献2】特開2003−86182号公報
【特許文献3】特開平11−16566号公報
【特許文献4】特開2005−251716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は係る問題点に鑑み、前駆体として用いると、小粒径で粒径均一性が高く、リチウム遷移金属複合酸化物が得られる遷移金属複合水酸化物を提供することを目的とする。
また、電池に用いた場合に測定される正極抵抗の値を低減することができる非水系二次電池用正極活物質とともに、その正極活物質を用いた高容量で熱的安全性が高く、高出力が得られる非水系電解質二次電池を提供することを目的とする。
さらに、本発明に係る遷移金属複合水酸化物および正極活物質の工業的な製造方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、リチウムイオン二次電池の正極材料として用いた場合に、優れた電池特性を発揮できるリチウム遷移金属複合酸化物について鋭意検討した結果、晶析時のpH制御により核生成段階と粒子成長段階に分離することにより、遷移金属複合水酸化物の粒度分布の制御が可能であるとの知見を得た。また、晶析物を少なくともタングステン化合物が溶解されたスラリー中に保持してpH制御することで、粒子表面にタングステン被覆物が形成された複合水酸化物が得られ、その複合水酸化物を前駆体として用いることで、電池の高容量と高出力を実現できる正極活物質が得られるとの知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0017】
本発明の第1の発明は、一般式(2):Li1+u(−0.05≦u≦0.50、x+s+t=1、0<s≦0.05、0<s+t≦0.15、MはNi、Co、Mnから選択される1種以上を含む遷移金属、AはMおよびW以外の遷移金属元素、2族元素、又は13族元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素)で表され、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質であって、平均粒径が3〜6μm、粒度分布の広がりを示す指標の〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質である。
【0018】
本発明の第2の発明は、第1の発明における非水系電解質二次電池用正極活物質の比表面積が、0.5〜2.0m/gであることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質である。
【0019】
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における添加元素が、B、Al、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Moから選択される1種以上であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質で、さらに第4の発明は、第3の発明における添加元素が少なくともAlを含むことがより好ましい。
【0020】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における一般式(2)のMが、少なくともNiおよびCoを含むものであることを特徴とし、第6の発明は、第1から第4の発明における一般式(2)のMが、少なくともNiおよびMnを含むものであることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質である。
【0021】
本発明の第7の発明は、第1から第6の発明における一般式(2)のs+tが、0.02<s+t≦0.15であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質である。
【0022】
本発明の第8の発明は、第1から第7の発明における非水系電解質二次電池用正極活物質によって正極が、形成されていることを特徴とする非水系電解質二次電池である。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、小粒径で粒度分布が狭く単分散性の遷移金属複合水酸化物が得られ、得られた遷移金属複合水酸化物を前駆体として用いた場合に得られるリチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質は、非水系二次電池の高容量化、高熱安定化、ならびに高出力化を可能とするものであり、この正極活物質を含む正極で構成された非水系二次電池は、優れた電池特性を備えたものとなる。
【0024】
本発明に係る遷移金属複合水酸化物および正極活物質の製造方法は、いずれも容易で大規模生産に適したものであり、その工業的価値はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の遷移金属複合水酸化物を製造する工程の概略フローチャートである。
図2】本発明の遷移金属複合水酸化物を製造する他の工程の概略フローチャートである。
図3】本発明の遷移金属複合水酸化物からリチウム遷移金属複合酸化物を製造する工程の概略フローチャートである。
図4】本発明の遷移金属複合水酸化物を製造してから、非水系電解質二次電池を製造するまでの概略フローチャートである。
図5】電池評価に使用したコイン型電池Bの概略断面図である。
図6】交流インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路である。
図7】本発明のリチウム遷移金属複合水酸化物(正極活物質)のFE−SEM写真(観察倍率1000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、以下の発明に関するものである。
1.非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物とその製造方法。
2.上記1記載の遷移金属複合水酸化物を用いた非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法。
3.上記2記載の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池。
【0027】
以下、上記1から3の発明を詳細するが、(1)遷移金属複合水酸化物とその製造方法、について説明した後、(2)その遷移金属複合水酸化物を前駆体として用いた非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、(3)最終製品である非水系電解質二次電池について説明する。
【0028】
1−1.遷移金属複合水酸化物
本発明の遷移金属複合水酸化物(以下、単に本発明の複合水酸化物という)は、一般式(1):M(OH)2+α(x+s+t=1、0<s≦0.05、0<s+t≦0.15、0≦α≦0.5、MはNi、Co、Mnから選択される1種以上を含む遷移金属、AはMおよびW以外の遷移金属元素、2族元素、又は13族元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素)で表され、複数の一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子であり、その二次粒子は、平均粒径が3〜7μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下で、タングステンおよび添加元素の金属酸化物もしくは金属水酸化物を含む被覆物が表面に形成されている。
そして、本発明の複合水酸化物は、本発明の正極活物質の前駆体として特に適したものである。
以下に、本発明の正極活物質の前駆体に使用することを前提として説明する。
【0029】
[粒子構造]
本発明の複合水酸化物は、略球状の粒子、具体的には、複数の一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなるように調整されている。このような構造とすることにより、本発明の正極活物質を形成する焼結工程において、粒子内へのリチウムの拡散が十分に行われ、リチウムの分布が均一で良好な正極活物質が形成される。
【0030】
さらに、上記一次粒子がランダムな方向に凝集して二次粒子を形成したものであれば、より好ましい。
一次粒子がランダムな方向に凝集することで、一次粒子間にほぼ均一に空隙が生じるため、二次粒子をリチウム化合物と混合して焼成する場合、溶融したリチウム化合物が二次粒子内へ行き渡り、リチウムの拡散が十分に行われる。
【0031】
[粒度分布]
本発明の複合水酸化物は、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.55以下となるように調整されている。
正極活物質の粒度分布は、原料である複合水酸化物の影響を強く受けるため、複合水酸化物に微粒子あるいは粗大粒子が混入していると、正極活物質にも同様の粒子が存在するようになる。
すなわち、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55を超え、粒度分布が広い状態であると、正極活物質にも微粒子あるいは粗大粒子が存在するようになる。
【0032】
また、微粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、微粒子の局所的な反応に起因して発熱する可能性があり、安全性が低下するとともに微粒子が選択的に劣化するのでサイクル特性が悪化してしまう。
一方、大径粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、電解液と正極活物質との反応面積が十分に取れず反応抵抗の増加により電池出力が低下する。
本発明の複合水酸化物において、指標〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.55以下となるように調整しておけば、本発明の複合水酸化物を原料として得られる正極活物質も粒度分布の範囲が狭くなり、粒子径を均一化することができる。
すなわち、得られる正極活物質の粒度分布を、指標〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下とすることができる。これにより、本発明の複合水酸化物を原料として得られた正極活物質によって形成された電極を有する電池を、良好なサイクル特性および出力を有するものとする。
【0033】
ここで、幅広い正規分布を有する複合水酸化物粒子を、分級して粒度分布の狭い複合水酸化物を得ることも考えられるが、本発明の複合水酸化物粒子のような平均粒径では、使用可能な目開きの篩自体がなく、篩いによる分級は困難である。また、湿式サイクロンのような装置を用いても十分に狭い粒度分布に分級することはできず、工業的な分級方法では、粒径が均一で粒度分布が狭い複合水酸化物を得ることは困難である。
一例として攪拌機とオーバーフローパイプを備えた円筒形反応槽を用いて、硫酸ニッケルと硫酸コバルトの混合水溶液とアンモニア水を反応槽に添加しながらpHを11.5〜12.0に制御し、反応槽内が定常状態になった後、オーバーフローパイプより組成がNi0.85Co0.15(OH)である複合水酸化物粒子を連続的に採取した。その得られた複合水酸化物粒子を湿式サイクロン(ハイドロサイクロン、日本化学機械製造株式会社製、NHC−1)を用い、供給圧力を上げて粗粉を除去した後、再度、供給圧力を下げて微粒を除去したが、平均粒径6.5、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.65の複合水酸化物粒子しか得られなかった。
【0034】
なお、粒度分布の広がりを示す指標〔(d90−d10)/平均粒径〕において、d10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を意味している。また、d90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味している。
平均粒径(d50)や、d90、d10を求める方法は特に限定されないが、例えば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
【0035】
[平均粒径]
本発明の複合水酸化物は、その平均粒径が、3〜7μmに調整されている。
平均粒径を3〜7μmに制御することで、本発明の複合水酸化物を前駆体として形成される正極活物質も、所定の平均粒径(3〜8μm)に調整することが可能となり、望みの正極活物質を形成することができる。
【0036】
ここで、複合水酸化物の平均粒径が3μm未満であると、形成される正極活物質の平均粒径も小さくなり、正極の充填密度が低下して、容積あたりの電池容量が低下する。また、比表面積が大きくなり過ぎることがある。逆に、複合水酸化物の平均粒径が7μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下して電解液との界面が減少することにより、正極の抵抗が上昇して電池の出力特性の低下を誘引する。
したがって、本発明の複合水酸化物は、その平均粒径が3〜7μmに調整され、その調整された複合水酸化物を原料として本発明の正極活物質を形成することができ、この正極活物質を用いた正極を電池に使用したときに、優れた電池特性を得ることができるものである。
【0037】
[比表面積]
本発明の複合水酸化物は、その比表面積が、5〜30m/gに調整されている。
比表面積を5〜30m/gに制御することで、本発明の複合水酸化物を前駆体として形成される正極活物質の比表面積を所定の範囲(0.5〜2.0m/g)に調整することができる。
【0038】
ここで、複合水酸化物の比表面積が5m/g未満であると、形成される正極活物質の比表面積も小さくなり、電池の出力特性が低下することがあるばかりか、リチウム化合物との混合後の焼成において、十分に反応が進まないことがある。
一方、複合水酸化物の比表面積が30m/gを超えると、正極活物質の比表面積が大きくなり過ぎ、正極活物質の熱安定が低下することがあるばかりか、上記焼成時に粒子同士の焼結が進み、粗大粒子が形成されることがある。
【0039】
[複合水酸化物の組成]
本発明の複合水酸化物は、その組成が、下記一般式(1)で表されるように調整される。
係る組成とすることで、この複合水酸化物を前駆体として、リチウム遷移金属複合酸化物を製造すれば、このリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする電極を電池に用いた場合、測定される正極抵抗の値を低くでき、電池の出力特性を良好なものとすることができる。
【0040】
【化1】
【0041】
本発明の複合水酸化物は、リチウム遷移金属複合酸化物の前駆体となり得る組成とすることができるが、具体的には下記一般式(1−1)、(1−2)で表される複合水酸化物とすることが好ましい。
【0042】
【化2】
【0043】
【化3】
【0044】
また、この複合水酸化物を前駆体として正極活物質を得た場合、複合水酸化物の組成比は、正極活物質においても維持される。したがって、本発明の複合水酸化物の組成比は、得ようとする正極活物質と同様となるように調整しておく。
【0045】
[粒子構造]
本発明の複合水酸化物は、タングステンおよび添加元素の金属酸化物もしくは金属水酸化物を含む被覆物がその粒子の表面に形成されている。
これにより、タングステンおよび添加元素を正極活物質に均一に含有させることができる。正極活物質にタングステンおよび添加元素を含有させる目的であれば、複合水酸化物粒子の表面に被覆物を部分的に形成させるのみでもよいが、正極活物質の個々の粒子間でタングステンおよび添加元素の含有量の変動を抑制させるためには、複合水酸化物粒子の表面に均一に被覆物を付着させ、薄い被覆層を形成することが好ましい。
【0046】
さらに、タングステンおよび添加元素の合計量が少ない場合、上記一般式(1)におけるMとして含まれる遷移金属とタングステンおよび添加元素が混合された金属酸化物もしくは金属水酸化物として被覆層を形成させてもよい。
これにより、少ない量のタングステンおよび添加元素であっても個々の粒子間で均一に含有量を制御することができる。
【0047】
また、添加元素として熱的安定性を高めるためにアルミニウムを選択した場合には、前記被覆物が酸化タングステン水和物と水酸化アルミニウムを含む混合物であることが好ましい。これにより、タングステンとアルミニウムの相乗効果により、電池の出力特性と熱的安定を十分に改善することができる。
【0048】
1−2.遷移金属複合水酸化物の製造方法
上記特性を有する本発明の複合水酸化物は、以下の方法により製造されるものである。
本発明の複合水酸化物の製造方法は、晶析反応によって得た遷移金属複合水酸化物粒子の表面にタングステンおよび添加元素を含む被覆物を形成して製造する方法であって、
(A−1)核生成を行う核生成段階と、
(A−2)核生成段階において生成された核を成長させる粒子成長段階を含む(A)複合水酸化物粒子製造工程と、
(B)タングステンおよび添加元素の金属酸化物もしくは金属水酸化物を含む被覆物を該複合水酸化物粒子の表面に形成する被覆工程を備えている。
【0049】
すなわち、従来の連続晶析法は、核生成反応と粒子成長反応とが同じ槽内において同じ時期に進行するため、粒度分布が広範囲となる。一方、本発明の複合水酸化物の製造方法は、主として核生成反応が生じる時間(核生成工程)と、主として粒子成長反応が生じる時間(粒子成長工程)とを明確に分離して狭い粒度分布を得るものである。
さらに、上記粒子製造工程で得られた複合水酸化物粒子の表面に均一にタングステンおよび添加元素の金属酸化物もしくは金属水酸化物を含む被覆物を形成することに特徴を有している。
【0050】
最初に、本発明の複合水酸化物の製造方法について概略を、図1に基づいて説明する。なお、図1および図2では、(A−1)の核生成段階、(A−2)の粒子成長段階を合わせて(A)複合水酸化物粒子製造工程に相当する。
【0051】
(A)複合水酸化物粒子製造工程
(A−1)核生成段階
図1に示すように、まず、Ni、Co、Mnから選択される1種以上を含む遷移金属を含有する複数の金属化合物を所定の割合で水に溶解させ、混合水溶液を作製するが、本発明の複合水酸化物の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子における各金属の組成比は、混合水溶液における各金属の組成比と同様となる。よって、混合水溶液中における各金属の組成比が、本発明の複合水酸化物中における各金属の組成比と同じ組成比となるように、水に溶解させる金属化合物の割合を調節して、この混合水溶液を作製する。
【0052】
一方、反応槽には、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液、および水を供給して混合して水溶液を形成する。
この水溶液(以下、反応前水溶液という)は、アルカリ水溶液の供給量を調整して、そのpH値が、液温25℃基準で、12.0〜14.0の範囲になるように調節する。合わせて、反応前水溶液中のアンモニウムイオンの濃度が3〜25g/Lとなるように調節する。さらに、反応前水溶液の温度が、20〜60℃となるように調節する。なお、反応槽内の水溶液のpH値、アンモニウムイオンの濃度は、それぞれ一般的なpH計、イオンメーターによって測定する。
【0053】
そして、反応前水溶液の温度およびpH値が調整されると、反応前水溶液を攪拌しながら混合水溶液を反応槽内に供給する。これにより、反応槽内には、反応前水溶液と混合水溶液とが混合した水溶液(以下、反応水溶液という)が形成され、その反応水溶液中に本発明の複合水酸化物粒子の微細な核を生成させることができる。このとき、反応水溶液のpH値は上記範囲にあるので、生成した核はほとんど成長せず、核の生成が優先的に起こる。
なお、混合水溶液の供給による核生成に伴って、反応水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度が変化するので、反応水溶液には、混合水溶液とともに、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液を供給して、反応水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度が所定の値を維持するように制御する。
【0054】
このように反応水溶液に対する混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液の供給により、反応水溶液中には、連続して新しい核の生成が継続される。そして、反応水溶液中に、所定量の核が生成されると、核生成段階を終了する。所定量の核が生成したか否かは、反応水溶液に添加した金属塩の量によって判断する。
この反応水溶液、すなわち、混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液の混合された水溶液であって、pH12.0〜14.0の範囲になるように調節された反応水溶液が、特許請求の範囲における核生成用水溶液である。
【0055】
(A−2)粒子成長段階
核生成段階終了後、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準でpH10.5〜12.0の範囲で核生成段階のpH値より低い値に調整する。具体的には、アルカリ水溶液の供給量を調整して、反応水溶液のpH値を制御する。
反応水溶液のpH値を上記範囲とすることにより、核の生成反応よりも核の成長反応の方が優先して生じるから、反応水溶液中には新たな核はほとんど生成さず、核が成長して所定の粒子径を有する本発明の複合水酸化物粒子が形成される。
【0056】
その後、その複合水酸化物粒子が所定の粒径まで成長した時点で粒子成長段階を終了する。複合水酸化物粒子の粒径は、予備試験結果で核生成段階と粒子成長段階における反応水溶液への金属塩の添加量と得られる粒子の関係を求めておけば、各段階での金属塩の添加量から容易に判断できる。
上記反応水溶液、すなわち、混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液の混合された水溶液であって、pH10.5〜12.0の範囲になるように調節された反応水溶液が、特許請求の範囲における粒子成長用水溶液である。
【0057】
以上のように、複合水酸化物粒子製造工程においては、核生成段階では核生成が優先して起こり核の成長はほとんど生じず、逆に、粒子成長段階では核成長のみが生じほとんど新しい核は生成されない。
このため、核生成段階では、粒度分布の範囲が狭く均質な核を形成させることができ、また、粒子成長段階では、均質に核を成長させることができる。したがって、複合水酸化物粒子製造工程では、粒度分布の範囲が狭く均質な複合水酸化物粒子を得ることができる。
【0058】
なお、上記製造工程の場合、両段階において、金属イオンは核または複合水酸化物粒子となって晶出するので、反応水溶液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。この液体成分が増加すると、見かけ上、供給する混合水溶液の濃度が低下したようになり、粒子成長段階において、複合水酸化物粒子が十分に成長しない可能性がある。
【0059】
したがって、上記液体成分の増加を抑制するため、核生成段階終了後あるいは粒子成長段階の途中で、反応水溶液中の液体成分の一部を反応槽外に排出する必要がある。
具体的には、反応水溶液に対する混合水溶液等の供給および攪拌を停止して、核や複合水酸化物粒子を沈降させて、反応水溶液の上澄み液を排出する。
これにより、反応水溶液における混合水溶液の相対的な濃度を高めることができ、混合水溶液の相対的な濃度が高い状態で複合水酸化物粒子を成長させることができるので、複合水酸化物粒子の粒度分布をより狭めることができ、複合水酸化物粒子の二次粒子内密度も高めることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、核生成段階が終了した核生成用水溶液のpH値を調整して粒子成長用水溶液を形成して、核生成段階から引き続いて粒子成長段階を行っているので、粒子成長段階への移行を迅速に行うことができるという利点がある。
さらに、核生成段階から粒子成長段階への移行は、反応水溶液のpH値を調整するだけで移行でき、pH値の調整も一時的にアルカリ水溶液の供給を停止することで容易に行うことができるという利点がある。なお、反応水溶液のpH値は、金属化合物を構成する酸と同種の無機酸、例えば、硫酸塩の場合は硫酸を反応水溶液に添加することでも調整することができる。
【0061】
しかし、別実施形態として、図2に示すように、核生成用水溶液とは別に、核生成段階に適したpH値、アンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を形成しておき、この成分調整水溶液に、別の反応槽で核生成工程を行って生成した核を含有する水溶液を添加して反応水溶液とし、この反応水溶液(つまり、粒子成長用水溶液)において粒子成長段階を行ってもよい。
この場合、核生成段階と粒子成長段階の分離をより確実に行うことができるので、各工程における反応水溶液の状態を、各工程に最適な条件とすることができる。とくに、粒子成長段階を開始する初期から、反応水溶液のpH値を最適な条件とすることができる。したがって、粒子成長段階で形成される複合水酸化物粒子を、より粒度分布の範囲が狭くかつ均質なものとすることができる。
【0062】
次に、各段階において使用する物質や溶液、反応条件について、詳細に説明する。
[pH値]
(核生成段階)
核生成段階においては、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.0〜14.0、好ましくは12.5〜13.0となるように制御されている。
pH値が14.0を超える場合、生成する核が微細になり過ぎ、反応水溶液がゲル化する問題がある。また、pH値が12.0未満では、核形成とともに核の成長反応が生じるので、形成される核の粒度分布の範囲が広くなり不均質なものとなってしまう。
したがって、核生成工程の反応水溶液のpH値は12.0〜14.0とすることが必要で、かかる範囲であれば、核生成工程では核の成長を抑制して、ほぼ核生成のみを起こすことができ、形成される核も均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとすることができる。
【0063】
(粒子成長段階)
粒子成長段階においては、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0となるように制御されている。
pH値が12.0を超える場合、新たに生成される核が多く粒径分布が良好な水酸化物粒子が得られない。また、pH値が10.5未満では、アンモニアイオンによる溶解度が高く析出せずに液中に残る金属イオンが増えるため生産効率が悪化する。また、金属硫酸塩を原料として使用した場合に粒子中に残るS(硫黄)分が多くなる。
したがって、粒子成長工程の反応水溶液のpH値は10.5〜12.0とすることが必要であり、かかる範囲であれば、核生成段階で生成した核の成長のみを優先的に起こさせ、新たな核形成を抑制することができ、得られる複合水酸化物粒子を均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとすることができる。
【0064】
核生成段階および粒子成長段階のいずれにおいても、pH値の変動幅は、設定値の上下0.2以内とすることが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合、核生成と粒子成長が一定とならず、粒度分布の範囲の狭い均一な複合水酸化物粒子が得られない場合がある。
なお、pH値が12の場合は、核生成と核成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程もしくは粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。
【0065】
すなわち、核生成段階のpH値を12より高くして多量に核生成させた後、粒子成長段階でpH値を12とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、核の成長が優先して起こり、粒径分布が狭く比較的大きな粒径の前記水酸化物粒子が得られる。
一方、反応水溶液中に核が存在しない状態、すなわち、核生成段階においてpH値を12とした場合、成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長段階のpH値を12より小さくすることで、生成した核が成長して良好な前記水酸化物粒子が得られる。
いずれの場合においても、粒子成長段階のpH値を核生成段階のpH値より低い値で制御すればよい。
【0066】
[核生成量]
核生成段階において生成する核の量は、特に限定されるものではないが、粒度分布の良好な複合水酸化物粒子を得るためには、全体量、つまり、複合水酸化物粒子を得るために供給する全金属塩の0.1%から2%とすることが好ましく、1.5%以下とすることがより好ましい。
【0067】
[複合水酸化物粒子の粒径制御]
本発明の複合水酸化物は、被覆工程によって粒径はほとんど変化することがないため、複合水酸化物粒子製造工程において粒子の粒径制御を行うことで所望の粒径が得られる。上記複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長段階の時間により制御できるので、所望の粒径に成長するまで粒子成長段階を継続すれば、所望の粒径を有する複合水酸化物粒子を得ることができる。
また、複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長段階のみならず、核生成段階のpH値と核生成のために投入した原料量でも制御することができる。
すなわち、核生成時のpH値を高pH値側とすることにより、あるいは核生成時間を長くすることにより投入する原料量を増やし、生成する核の数を多くする。これにより、粒子成長工程を同条件とした場合でも複合水酸化物粒子の粒径を小さくできる。
【0068】
一方、核生成数が少なくするように制御すれば、得られる前記複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
以下、金属化合物、反応水溶液中アンモニア濃度、反応温度、雰囲気などの条件を説明するが、核生成段階と粒子成長段階との相違点は、反応水溶液のpH値を制御する範囲のみであり、金属化合物、反応液中アンモニア濃度、反応温度、雰囲気などの条件は、両段階において実質的に同様である。
【0069】
[金属化合物]
金属化合物としては、目的とする金属を含有する化合物を用いる。
用いる化合物は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。例えば、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンが好ましく用いられる。
【0070】
[添加元素]
添加元素(MおよびW以外の遷移金属元素、2族元素、又は13族元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素)は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム等を用いることができる。
【0071】
係る添加元素を複合水酸化物粒子の内部に均一に分散させる場合には、混合水溶液に、添加元素を含有する添加物を添加すればよく、複合水酸化物粒子の内部に添加元素を均一に分散させた状態で共沈させることできる。
【0072】
[混合水溶液の濃度]
混合水溶液の濃度は、金属化合物の合計で1〜2.6mol/Lとすることが好ましい。混合水溶液の濃度が1mol/L未満では、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるために生産性が低下して好ましくない。
【0073】
一方、混合水溶液の塩濃度が、2.6mol/Lを超えると、液温が下がったときに飽和濃度を超え、結晶が再析出して設備の配管を詰まらせるなどの危険がある。
また、金属化合物は、必ずしも混合水溶液として反応槽に供給しなくてもよく、例えば、混合すると反応して化合物が生成される金属化合物を用いる場合、全金属化合物水溶液の合計の濃度が上記範囲となるように、個別に金属化合物水溶液を調製して、個々の金属化合物の水溶液として所定の割合で同時に反応槽内に供給してもよい。
【0074】
さらに、混合水溶液等や個々の金属化合物の水溶液を反応槽に供給する量は、晶析反応を終えた時点での晶析物濃度が概ね30〜200g/Lとなるようにすることが望ましい。なぜなら、晶析物濃度が30g/L未満の場合は、一次粒子の凝集が不十分になることがあり、200g/Lを越える場合は、添加する混合水溶液の反応槽内での拡散が十分でなく粒子成長に偏りが生じることがあるからである。
【0075】
[アンモニア濃度]
反応水溶液中のアンモニア濃度は、好ましくは3〜25g/Lの範囲内で一定値に保持する。
アンモニアは錯化剤として作用するため、アンモニア濃度が3g/L未満であると、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、形状及び粒径が整った板状の水酸化物一次粒子が形成されず、ゲル状の核が生成しやすいため粒度分布も広がりやすい。
【0076】
一方、このアンモニア濃度が25g/Lを越える濃度では、金属イオンの溶解度が大きくなり過ぎ、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増えて、組成のずれなどが起きる。また、粒子の結晶性が高くなり、比表面積が低くなり過ぎることがある。
さらに、アンモニア濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な水酸化物粒子が形成されないため、一定値に保持することが好ましい。例えば、アンモニア濃度は、上限と下限の幅を5g/L程度として所望の濃度に保持することが好ましい。
なお、アンモニウムイオン供給体はとくに限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを使用することができる。
【0077】
[反応雰囲気]
核生成段階においては、遷移金属、特にコバルト及びマンガンの酸化を抑制して粒子を安定して生成させる観点から、反応槽内空間の酸素濃度を好ましくは10容量%以下、より好ましくは5容量%以下に制御するとともに、反応槽内溶液中の溶存酸素濃度を2mg/L以下に制御しながら晶析反応を行うことが好ましい。このように行うことで、粒子の不要な酸化を抑制し、密度が高く比表面積が制御され、粒度の揃った粒子を得ることができる。
一方、粒子成長段階でも酸化制御が重要であり、反応槽内空間の酸素濃度を同様に制御することが好ましい。
【0078】
雰囲気中の酸素濃度は、例えば、窒素などの不活性ガスを用いて調整することができる。雰囲気中の酸素濃度が所定の濃度となるように調節するための手段としては、例えば、反応槽空間部に常に窒素などの不活性ガスを雰囲気中に流通させることが挙げられる。
【0079】
[反応液温度]
反応槽内において、反応液の温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは20〜60℃、特に好ましくは35〜60℃に設定する。
反応液の温度が20℃未満の場合、溶解度が低いため核発生が起こりやすく制御が難しくなる。また、複合水酸化物粒子を構成する一次粒子が微細になり、比表面積が大きくなりすぎることがある。一方、60℃を越えると、アンモニアの揮発により錯形成するためのアンモニアが不足し、温度が20℃未満の場合と同じように金属イオンの溶解度が減少しやすくなる。
【0080】
[アルカリ水溶液]
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。かかるアルカリ金属水酸化物の場合、直接、反応水溶液中に供給してもよいが、反応槽内における反応水溶液のpH値制御の容易さから、水溶液として反応槽内の反応水溶液に添加することが好ましい。
また、アルカリ水溶液を反応槽に添加する方法も特に限定されるものではなく、混合水溶液を十分に攪拌しながら、定量ポンプなど、流量制御が可能なポンプで、反応水溶液のpH値が所定の範囲に保持されるように添加すればよい。
【0081】
[製造設備]
上記複合水酸化物製造工程では、反応が完了するまで生成物を回収しない方式の装置を用いる。例えば、撹拌機が設置された通常に用いられるバッチ反応槽などである。
係る装置を採用すると、一般的なオーバーフローによって生成物を回収する連続晶析装置のように成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されるという問題が生じないため、粒度分布が狭く粒径の揃った粒子を得ることができる。
【0082】
また、反応雰囲気を制御するため、密閉式の装置などの雰囲気制御可能な装置を用いることが好ましい。このような装置を用いることで、核生成反応や粒子成長反応をほぼ均一に進めることができ、粒径分布の優れた粒子(つまり、粒度分布の範囲の狭い粒子)を得ることができる。
粒子成長段階終了後、水洗して粒子に付着したNa塩を除去することで複合水酸化物粒子が得られる。
【0083】
(B)被覆工程
被覆工程では、上記粒子製造工程で得られた複合水酸化物粒子を、少なくともタングステン化合物を含む水溶液と混合してスラリー化し、スラリーのpHを液温25℃基準で7〜9に制御することにより、タングステンおよび添加元素の金属酸化物もしくは金属水酸化物を含む被覆物を該複合水酸化物粒子の表面に形成する。
【0084】
上記複合水酸化物粒子をまずスラリー化する。スラリー化は、予め調製した被覆する元素を含む水溶液と複合水酸化物粒子を混合してもよく、水と複合水酸化物粒子を混合した後、被覆する元素を含む化合物を添加してもよい。
上記スラリーにおける複合水酸化物粒子の濃度は、100〜300g/Lとすることが好ましい。スラリー濃度が100g/L未満では、処理する液量が多過ぎて生産性が低下するため好ましくない。一方、スラリー濃度が300g/Lを超えると、複合水酸化物粒子に均一に被覆物を形成できないことがある。スラリー中に溶解しているタングステンイオンおよび添加元素イオンは、ほぼ全量が複合水酸化物粒子表面に酸化物もしくは水酸化物として晶析する。
【0085】
したがって、スラリーに添加するタングステン化合物および添加元素を含有する化合物は、上記一般式(1)に示された原子数比とすればよい。なお、添加元素を上記混合水溶液に添加した場合は、混合水溶液に添加した量だけスラリーに添加する添加元素を少なくしておくことで、得られる複合水酸化物の金属イオンの原子数比を一般式(1)に示された原子数比と一致させることができる。
【0086】
スラリーの調製後、複合水酸化物粒子と溶解しているタングステンイオンおよび添加元素イオンが均一に混合されるように撹拌し、硫酸などの酸を添加してpH値を液温25℃基準で7〜9、好ましくは8〜9に調整する。pH値の範囲は7以下でもタングステンの析出が生じるが、pH値を下げすぎると水酸化物が溶解する問題が生じる。また、硫酸使用量が増加するためコスト高となる。一方、pH値が9を越えると、複合水酸化物粒子表面への酸化タングステン水和物の析出が十分に行われない。
【0087】
用いる添加元素として、正極活物質の熱的安定性をさらに高めるため、アルミニウムを添加することが好ましい。スラリー中にアルミニウム化合物を添加して、タングステンとアルミニウムを同時に晶析させることで、前記被覆物を酸化タングステン水和物と水酸化アルミニウムを含む混合物とすることができる。
使用するタングステン化合物としては、水溶液として安定であれば特に限定はされないが、工業的に取り扱いが容易であるタングステン酸アンモニウム及び/又はタングステン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
タングステン酸アンモニウムは、水への溶解度は30g/L程度と低いものの、一旦溶解するとpHを1程度まで下げても析出しない。また、溶解度を下げるためにアンモニアを添加してもアルカリ領域では困難である。しかし、アンモニアの存在下で硫酸を添加するとpH値を7〜9に調整することで析出し、さらに核となる複合水酸化物粒子の共存下でその表面に析出し、被覆物を均一に晶析させ、被覆層を形成させることができる。
【0088】
タングステン酸アンモニウムを用いる場合、スラリー中に、25%アンモニア水溶液でタングステン酸アンモニウム飽和水溶液に対して0.5〜25容量%相当のアンモニアを添加することが好ましい。アンモニア添加量が少ないと酸化タングステン水和物が硫酸で分解され、析出しなくなる。また、多過ぎてもpH値調整のために硫酸を浪費するだけで不経済である。好ましくはタングステン酸アンモニウム飽和水溶液に対して1〜10容量%の25%アンモニア水溶液相当のアンモニアを添加した上でpH値を7〜9に調整することで、効率的に複合水酸化物粒子表面に酸化タングステン水和物で被覆された複合水酸化物が得られる。
【0089】
一方、タングステン酸ナトリウムは、水への溶解度は100g/L以上と高く、単純なpH調整では析出しないが、アンモニアの添加無しでも核となる複合水酸化物粒子の存在でその表面に析出させることができ、アルミニウムの共存下でより均一に被覆させることができる。
【0090】
用いるアルミニウム化合物は、特に限定されるものではないが、硫酸添加によりpH値を調整してアルミニウム水酸化物を析出させることが可能なアルミン酸ナトリウムを用いることが好ましい。これにより、スラリー中に硫酸を添加することでpHを制御して、タングステンおよびアルミニウムを化合物として同時に析出させ、複合水酸化物粒子の表面を酸化タングステン水和物と水酸化アルミニウムを含む混合物で均一に被覆することができる。
【0091】
この被覆工程では、複合水酸化物粒子の表面に微細で均一な被覆物を形成できるので、複合水酸化物の比表面積の増加を抑制することができる。また、スラリー中のタングステンを複合水酸化物粒子の表面にほぼ全量を析出させるために、複合水酸化物に含有されるタングステン量を安定させ、粒子間のタングステン量の変動も抑制することができる。
【0092】
2−1.非水系電解質二次電池用正極活物質
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、本発明の正極活物質という)は、非水系電解質二次電池の正極の材料として適したものである。
本発明の正極活物質は、下記一般式(2)で表される層状構造を有する結晶構造が六方晶系であるリチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質であって、平均粒径が3〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であることを特徴とするものである。
【0093】
【化4】
【0094】
[粒度分布]
本発明の正極活物質は、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.6以下である。
粒度分布が広範囲になっている場合、正極活物質に、平均粒径に対して粒径が非常に小さい微粒子や、平均粒径に対して非常に粒径の大きい粒子(粗大粒子)が多く存在することになる。
この微粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、微粒子の局所的な反応に起因して発熱する可能性があり安全性が低下するとともに、微粒子が選択的に劣化するのでサイクル特性が悪化してしまう。一方、粗大粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、電解液と正極活物質との反応面積が十分に取れず反応抵抗の増加による電池出力が低下する。
【0095】
したがって、正極活物質の粒度分布を指標〔(d90−d10)/平均粒径〕において0.6以下とすることで、微粒子や粗大粒子の割合が少ないため、この正極活物質を正極に用いた電池は、安全性に優れ、良好なサイクル特性および電池出力を有するものとなる。
なお、平均粒径(d50)およびd10、d90は、上記遷移金属複合水酸化物と意味するところは同様のものであり、同様の方法で求めることができる。
【0096】
[平均粒径]
本発明の正極活物質は、その平均粒径が3〜8μmである。平均粒径が3μm未満の場合には、正極を形成したときに粒子の充填密度が低下して正極の容積あたりの電池容量が低下する。一方、平均粒径が8μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下して電池の電解液との界面が減少することにより、正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下する。
【0097】
したがって、本発明の正極活物質を、その平均粒径が3〜8μm、好ましくは3〜6μmとなるように調整すれば、この正極活物質を正極に用いた電池では、容積あたりの電池容量を大きくすることができるとともに、高安全性、高出力等の優れた電池特性が得られる。
【0098】
[比表面積]
本発明の正極活物質は、その比表面積が0.5〜2.0m/gであることが好ましい。比表面積が0.5m/g未満になると、正極活物質の電解液との接触面積が少なくなるため、反応表面積が小さくなって正極抵抗が上がり、電池の出力特性が低下することがある。一方、比表面積が2.0m/gを超えると、過度に電解液と接触するため、熱的安定性が低下することがある。本発明においては、上記比表面積が制御された複合水酸化物を前駆体として用いるため、正極活物質の比表面積も上記範囲に安定して制御される。
【0099】
[粒子の組成]
本発明の正極活物質は、上記一般式(2)で表される組成を有するもので、リチウムの過剰量を示すuの範囲が−0.05≦u≦0.50である。このリチウムの過剰量uが−0.05未満の場合、得られた正極活物質を用いた非水系電解質二次電池における正極の反応抵抗が大きくなるため、電池の出力が低くなってしまう。一方、リチウムの過剰量uが0.50を超える場合、この正極活物質を電池の正極に用いた場合の初期放電容量が低下するとともに、正極の反応抵抗も増加してしまう。
【0100】
また、一般式(2)で表されるように、本発明の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物にタングステンが含有されている。
タングステンを含有させることで、正極抵抗を低減することができ、正極活物質として用いられた電池の出力特性を向上させることができる。タングステンの添加量が、リチウム以外の全金属元素に対する比で0.05を超えると、電池容量が低下する。
【0101】
正極活物質として用いられた電池の耐久特性や出力特性を向上させるために用いられる添加元素は、B、Al、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Moから選択される1種以上であることが好ましいが、少なくともAlであることが好ましい。Alを添加することで、正極活物質の熱安定性を向上させることができる。
【0102】
タングステンと添加元素Aのリチウム以外の全金属元素に対する原子比s+tが0.15を超えると、Redox反応に貢献する金属元素が減少するため、電池容量が低下する。一方、s+tが0.02以下であると、電池の出力特性および熱的安定性に対する改善効果が十分でないことがある。したがって、上記原子比は、0.02<s+t≦0.15とすることが好ましい。
特に、タングステンおよび添加元素が粒子の表面または内部に均一に分布することで、粒子全体で上記効果を得ることができ、少量の添加で該効果が得られるとともに電池容量の低下を抑制できる。
【0103】
本発明の正極活物質は、上記一般式(2)においてMが少なくともNiおよびCoを含むものであることが好ましく、具体的には下記一般式(2−1)で表される複合酸化物とすることが好ましい。
【0104】
【化5】
【0105】
上記一般式(2−1)の組成は、電池の高容量化を目的としたものであり、リチウムの過剰量uは、電池の容量と出力を両立させるため、−0.05≦u≦0.15とすることが好ましい。また、Coの上記原子比を示すxの範囲は、電池容量と熱的安定性の観点から、0≦x≦0.2とすることが好ましい。
【0106】
また、別の態様としてMが少なくともNiおよびMnを含むものであることが好ましく、具体的には下記一般式(2−2)で表される複合酸化物とすることが好ましい。
【0107】
【化6】
【0108】
この一般式(2−2)の組成の場合、リチウムの過剰量uは、反応抵抗をより低減させるためには、−0.05≦u≦0.15とすることが好ましい。
Niの原子比を示すxの範囲は、十分な容量を得るため0.3≦x≦0.7とすることが好ましい。
また、Mnの原子比を示すyの範囲は、電池の容量と熱的安定性を両立させるため0.1≦y≦0.55とすることが好ましい。
Coの原子比を示すzの範囲は、電池容量と熱的安定性の観点から、0≦z≦0.4とすることが好ましい。
【0109】
2−2.非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の正極活物質の製造方法は、上記平均粒径、粒度分布、比表面積、および組成となるように正極活物質を製造できるのであれば、特に限定されないが、以下の方法を採用すれば、前記正極活物質をより確実に製造できるので、好ましい。
【0110】
本発明の正極活物質の製造方法は、図3に示すように、以下の3工程を含むものである。
(a)本発明の正極活物質の原料となる遷移金属複合水酸化物の熱処理工程。
(b)熱処理後の複合水酸化物に対してリチウム化合物を混合してリチウム混合物を形成する混合工程。
(c)混合工程で形成されたリチウム混合物を焼成する焼成工程。
【0111】
以下、各工程を説明する。
(a)熱処理工程
熱処理工程は、遷移金属複合水酸化物(以下、単に複合水酸化物という)を加熱して熱処理することにより複合水酸化物に含まれる水分を除去する工程であり、熱処理の温度は500℃〜750℃とすることが好ましい。
【0112】
特に、上記温度に加熱して熱処理することにより、水分除去とともに複合水酸化物を遷移金属複合酸化物(以下、単に複合酸化物という)に転換することができるので、得られる正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合がばらつくことを防ぐことができる。ただし、焼成工程前に厳密に分析を実施する、混合後に分析を実施し補正する等の処置をすることで、熱処理工程を省略するか、含有水分の除去を主な目的として105℃以上、500℃未満の温度で熱処理することもできる。
【0113】
熱処理工程において、加熱する温度が500℃未満の場合、複合水酸化物が複合酸化物に十分に転換されないことがあり、また、750℃を超えると粒子が焼結して均一な粒径の複合酸化物が得られないことがある。
【0114】
熱処理を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に行える空気気流中において行うことが好ましい。
また、熱処理時間は特に制限されないが、1時間未満では複合水酸化物の複合酸化物粒子への転換が十分に行われない場合があるので、少なくとも1時間以上が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
そして、熱処理に用いられる設備は、特に限定されるものではなく、複合水酸化物を非還元性雰囲気中、好ましくは空気気流中で加熱できるものであれば良く、ガス発生がない電気炉等が好適に用いられる。
【0115】
(b)混合工程
混合工程は、上記熱処理後の複合水酸化物と、リチウムを含有する物質、例えば、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を得る工程である。混合工程における熱処理後の複合水酸化物には、熱処理工程を省略した複合水酸化物、熱処理工程において残留水分を除去された複合水酸化物、熱処理工程において転換された複合酸化物が含まれる。
【0116】
熱処理後の複合水酸化物とリチウムを含有する物質とは、リチウム混合物中のリチウム以外の全ての金属の原子数(すなわち、M、Wおよび添加元素の原子数の和(Me))と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、1:0.95〜1.50となるように混合される。
すなわち、焼成工程前後でLi/Meはほぼ変化せず、この混合工程で混合するLi/Meが正極活物質におけるLi/Meとなるため、リチウム混合物におけるLi/Meが、得ようとする正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合される。
【0117】
リチウム混合物を形成するために使用されるリチウムを含有する物質は、特に限定されるものではないが、リチウム化合物であればよい。例えば、水酸化リチウム、硝酸リチウムまたは炭酸リチウム、もしくはその混合物は、入手が容易であるという点で好ましい。
なお、リチウム混合物は、焼成前に十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合には、個々の粒子間でLi/Meがばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じる可能性がある。
【0118】
また、混合には、一般的な混合機を使用することができ、例えば、シェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いることができ、複合酸化物粒子等の形骸が破壊されない程度で、複合酸化物粒子とリチウムを含有する物質とが十分に混合されればよい。
【0119】
(c)焼成工程
焼成工程は、上記混合工程で得られたリチウム混合物を焼成して、リチウム遷移金属複合酸化物を形成する工程である。焼成工程においてリチウム混合物を焼成すると、複合酸化物粒子にリチウムを含有する物質中のリチウムが拡散するので、リチウム遷移金属複合酸化物が形成される。
【0120】
[焼成温度]
リチウム混合物の焼成は、700℃〜1000℃の温度で行う。
焼成温度が700℃未満であると、複合酸化物粒子中へのリチウムの拡散が十分に行われず、余剰のリチウムや未反応の粒子が残ったり、結晶構造が十分整わなくなり、十分な電池特性が得られないという問題が生じる。
また、焼成温度が1000℃を超えると、複合酸化物粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じる可能性があり、これにより、焼成後の粒子が粗大となって粒子形態([0092]〜[0097]で述べた球状二次粒子の形態)を保持できなくなる可能性がある。
このような正極活物質は、比表面積が低下するため、電池に用いた場合、正極の抵抗が上昇して電池容量が低下するという問題が生じる。
【0121】
したがって、リチウム混合物の焼成は、Niの上記原子比が0.7以上の場合、700〜800℃で行うことが好ましい。また、Mnの上記原子比が0.3以上の場合、800〜1000℃で行うことが好ましい。
【0122】
[焼成時間]
焼成時間は、少なくとも3時間以上とすることが好ましく、より好ましくは、6〜24時間である。3時間未満では、リチウム遷移金属複合酸化物の生成が十分に行われないことがある。
【0123】
[仮焼]
特に、リチウムを含有する物質として、水酸化リチウムや炭酸リチウム等を使用した場合には、焼成する前に、焼成温度より低く、かつ350〜800℃の温度で1〜10時間程度保持して仮焼することが好ましい。
すなわち、水酸化リチウムや炭酸リチウムと熱処理後の複合水酸化物の反応温度において仮焼することが好ましい。水酸化リチウムや炭酸リチウムの上記反応温度付近で保持すれば、熱処理後の複合水酸化物へのリチウムの拡散が十分に行われ、均一なリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
【0124】
[焼成雰囲気]
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。
すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。酸素濃度が18容量%未満であると、リチウム遷移金属複合水酸化物の結晶性が十分でない状態になる可能性がある。特に電池特性を考慮すると、酸素気流中で行うことが好ましい。
なお、焼成に用いられる炉は、特に限定されるものではなく、大気ないしは酸素気流中でリチウム混合物を加熱できるものであればよいが、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の炉をいずれも用いることができる。
【0125】
[解砕]
焼成によって得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、凝集もしくは軽度の焼結が生じている場合がある。この場合には、解砕してもよく、これにより、本発明の正極活物質を得ることができる。
なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキング等により生じた複数の二次粒子からなる凝集体に機械的エネルギーを投入して、二次粒子をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて凝集体をほぐす操作のことである。
【0126】
3.非水系電解質二次電池
本発明の非水系電解質二次電池は、図4に示す製造フローチャートに沿って、本発明に係る遷移金属複合水酸化物、その複合水酸化物を前駆体として用いたリチウム遷移金属複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質を用いた正極を採用したものである。
【0127】
まず、本発明の非水系電解質二次電池の構造を説明する。
本発明の非水系電解質二次電池(以下、単に本発明の二次電池と称する場合もある。)は、正極の材料に本発明の正極活物質を用いた以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質同等の構造を有している。
具体的には、本発明の二次電池は、ケースと、このケース内に収容された正極、負極、非水系電解液およびセパレータを備えた構造を有している。より具体的にいえば、セパレータを介して正極と負極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させ、正極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間および、負極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間をそれぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースに密閉することによって、本発明の二次電池は形成され、形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
なお、本発明の二次電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
【0128】
以下に、本発明の二次電池を構成する各部を説明する。
(1)正極
まず、本発明の二次電池の特徴である正極について説明する。
正極は、シート状の部材であり、本発明の正極活物質を含有する正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布乾燥して形成されている。
なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。例えば、目的とする電池に応じて適当な大きさに形成する裁断処理や、電極密度を高めるためにロールプレスなどによる加圧圧縮処理等が行われる。
【0129】
[正極合材ペースト]
使用する正極合材ペーストは、正極合材に、溶剤を添加して混練して形成されたものである。
正極合材は、粉末状になっている本発明の正極活物質と、導電材および結着剤とを混合して形成されたものである。
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。この導電材は、特に限定されないが、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
【0130】
結着剤は、正極活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすものである。
この正極合材に使用される結着剤は、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸を用いることができる。
なお、正極合材には、活性炭等を添加してもよく、活性炭等を添加することによって正極の電気二重層容量を増加させることができる。
【0131】
溶剤は、結着剤を溶解して、正極活物質、導電材および活性炭等を結着剤中に分散させるものである。この溶剤はとくに限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
【0132】
また、正極合材ペースト中における各物質の混合比は、とくに限定されない。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部、導電材の含有量を1〜20質量部、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることができる。
【0133】
(2)負極
負極は、銅などの金属箔集電体の表面に負極合材ペーストを塗布し、乾燥して形成されたシート状の部材である。この負極は、負極合材ペーストを構成する成分やその配合、集電体の素材などは異なるものの、実質的に前記正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に、必要に応じて各種処理が行われる。
【0134】
負極合材ペーストは、負極活物質と結着剤とを混合した負極合材に、適当な溶剤を加えてペースト状にしたものである。
負極活物質は、例えば、金属リチウムやリチウム合金等のリチウムを含有する物質や、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
吸蔵物質はとくに限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。
係る吸蔵物質を負極活物質に採用した場合には、正極同様に結着剤として、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、負極活物質を結着剤中に分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
【0135】
(3)セパレータ
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解質を保持する機能を有している。かかるセパレータは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されない。
【0136】
(4)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩のリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
なお、非水系電解液は、電池特性改善のため、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
【0137】
(5)非水系電解質二次電池の特性
本発明の非水系電解質二次電池は、上記構成であり、本発明の正極活物質を用いているので、例えば2032型コインの場合、150mAh/g以上の高い初期放電容量、5Ω以下の低い正極抵抗が得られ、高容量で高出力である。また、従来のリチウム・コバルト系酸化物あるいはリチウム・ニッケル系酸化物の正極活物質を用いた電池との比較においても熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
【0138】
(6)非水系電解質二次電池の用途
本発明の非水系電解質二次電池は、上記の性質を有するので、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。
また、本発明の非水系電解質二次電池は、高出力が要求されるモーター駆動用電源にも好適である。電池は、大型化すると安全性の確保が困難になり高価な保護回路が必要不可欠であるが、優れた安全性を有しているため、安全性の確保が容易になるばかりでなく、高価な保護回路を簡略化し、より低コストにできる。そして、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける輸送機器用の電源として好適である。
【実施例】
【0139】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
実施例では、本発明の方法によって製造した複合水酸化物、この複合水酸化物を前駆体として本発明の方法によって製造した正極活物質について、その平均粒径および粒度分布を確認した。
また、本発明の方法によって製造した正極活物質を用いて製造した正極を有する二次電池について、その性能(初期放電容量、正極抵抗、熱安定性)を確認した。
本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0140】
実施例における「平均粒径の測定」、「粒度分布の測定」、「結晶構造の同定、確認」、「組成分析」および「二次電池の製造(評価を含む)」は、以下のとおり行った。
【0141】
[平均粒径および粒度分布の測定]
平均粒径および粒度分布(〔(d90−d10)/平均粒径〕値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した体積積算値から算出した。
【0142】
[結晶構造の同定、確認]
結晶構造は、X線回折測定(パナリティカル社製「X‘Pert PRO」)により同定、確認した。
【0143】
[組成分析]
組成は、試料を溶解した後、ICP発光分光法により分析した。
【0144】
[二次電池の製造]
評価には、図5に示す2032型コイン電池(以下、コイン型電池Bという)を作製して用いた。
図5に示すように、コイン型電池Bは、ケース(正極缶5、負極缶6)と、このケース内に収容された電極(正極1、負極2)とから構成されている。
ケースは、中空かつ一端が開口された正極缶5と、この正極缶5の開口部に配置される負極缶6とからなり、負極缶6を正極缶5の開口部に配置すると、負極缶6と正極缶5との間に電極を収容する空間が形成されるように構成されている。
電極は、正極1および負極2とからなり、正極1と負極2の間にはセパレータ3が挿入されて積層されており、正極1が正極缶5の内面に接触し、負極2が負極缶6の内面に接触するようにケースに収容されている。
【0145】
なお、ケースはガスケット4を備えており、このガスケット4によって、正極缶5と負極缶6との間が電気的に絶縁状態を維持するように固定されている。また、ガスケット4は、正極缶5と負極缶6との隙間を密封してケース内と外部との間を気密および液密に遮断する機能も有している。
【0146】
このようなコイン型電池Bを、以下に示すようにして製作した。
まず、非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極1を作製した。次に作製した正極1を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
【0147】
この正極1と、負極2、セパレータ3および電解液とを用いて、コイン型電池Bを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
なお、負極2には、直径17mm厚さ1mmのLi金属を用いた。また、セパレータ3には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。
【0148】
電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
【0149】
作製したコイン型電池Bの性能評価を、初期放電容量、正極抵抗、熱的安定性について、以下のように定義した。
・初期放電容量は、コイン型電池Bを作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.5Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
【0150】
・正極抵抗は、コイン型電池Bを充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定して、図6に示すナイキストプロットを作成する。
このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算して、正極抵抗の値を算出した。
【0151】
・熱安定性は、充電電位4.575Vまで充電した後、コインセルを解体して正極を取り出し、示差走査熱量計(DSC3100SA、MACサイエンス社製)にて80〜400℃の熱量変化を測定し、発熱開始温度として評価した。
【実施例1】
【0152】
[複合水酸化物粒子製造工程]
まず、反応槽(34L)内に水を反応槽の半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、反応槽に窒素ガスを流通させて窒素ガス雰囲気とした。このときの反応槽内空間の酸素濃度は2.0容量%であり、反応槽内溶液中の溶存酸素濃度は2mg/L以下であった。
前記反応槽内の水に25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えることにより、液温25℃基準のpH値として12.6となるように調整した。また、反応液中のアンモニウムイオン濃度を15g/Lに調節した。
【0153】
〈核生成段階〉
次に、硫酸ニッケルと硫酸コバルトを水に溶かして1.8mol/Lの混合水溶液を得た。この混合水溶液では、各金属の元素モル比が、Ni:Co=0.82:0.15となるように調整した。
上記混合水溶液を、反応槽内の反応液に88ml/分で加えた。同時に、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も反応槽内の反応液に一定速度で加えていき、得られた核生成用水溶液中のアンモニウムイオン濃度を上記値となるように保持した状態で、pH値を液温25℃基準で12.6(核生成pH)に制御しながら2分30秒間晶析を行って、核生成を行った。
【0154】
〈粒子成長段階〉
その後、核生成用水溶液pH値が11.6(粒子成長pH)になるまで、25%水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを一時停止して、粒子成長用水溶液を得た。
得られた粒子成長用水溶液のpH値が液温25℃基準で11.6に到達した後、再度、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開し、pH値を11.6に制御した状態で、2時間粒子の成長を行った。
反応槽内が満液になったところで水酸化ナトリウム溶液の供給を停止するとともに撹拌を止めて静置することにより、生成物の沈殿を促した。その後、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、水酸化ナトリウム溶液の供給を再開し、2時間晶析を行った後(計4時間)、粒子の成長を終了させた。そして、得られた生成物を水洗、濾過、乾燥させることにより、粒子を回収した。
【0155】
[被覆工程]
得られた粒子をタングステンとアルミニウムで被覆してモル比でNi:Co:Al:W=82:15:3:0.5とするべく、500mLビーカーに水酸化物粒子100g、水、アルミン酸ナトリウム、濃度30g/Lタングステン酸アンモニウム水溶液37mlをコート終了時のスラリー濃度が200g/Lになるように混合した。25質量%アンモニア水をタングステン酸アンモニウム水溶液の10容量%として3.7ml添加した後、常温(25〜30℃)において最終pHが8.5になるよう8質量%硫酸を添加して被覆を行った。
その後、容器内の水酸化物スラリーを全量濾過して回収し、かけ水で水洗後、120℃で12hr以上乾燥させ、Ni0.82Co0.15Al0.030.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物を得た。
BET法測定による比表面積は、複合水酸化物は8.6m/gであった。
【0156】
[正極活物質製造工程]
〈熱処理工程〉
前記複合水酸化物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中にて温度700℃で6時間の熱処理を行い、複合酸化物を得た。
【0157】
〈混合工程〉
Li/Me=1.02(原子比)となるように水酸化リチウムを秤量し、この水酸化リチウムと前記で得られた複合酸化物粒子と混合することにより、リチウム混合物を得た。混合は、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて行った。
【0158】
〈焼成工程〉
得られたこの混合物を酸素気流中(酸素濃度:100容量%)にて500℃で4時間仮焼した後、730℃で24時間焼成し、冷却した後に解砕して正極活物質を得た。正極活物質の組成は、Li1.02Ni0.816Co0.149Al0.0300.005であった。BET法測定による正極活物質の比表面積は、0.67m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表1に示す。
【実施例2】
【0159】
複合水酸化物粒子製造工程において金属元素がモル比でNi:Co:Ti=82:15:1となるように混合水溶液を調製して晶析したこと、モル比でNi:Co:Ti:Al:W=82:15:1:2:0.5となるように被覆を行ったこと以外は、実施例1と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0160】
正極活物質の組成は、Li1.02Ni0.816Co0.149Ti0.010Al0.0200.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が8.9m/gであり、正極活物質0.72m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表1に示す。
【実施例3】
【0161】
複合水酸化物製造工程において金属元素がモル比でNi:Co:Zr=82:15:0.5となるように混合水溶液を調製して晶析したこと、Ni:Co:Zr:Al:W=82:15:0.5:2:0.5となるように被覆を行ったこと以外は、実施例1と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0162】
正極活物質の組成は、Li1.02Ni0.82Co0.15Al0.02Zr0.0050.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が9.0m/gであり、正極活物質0.77m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表1に示す。
【実施例4】
【0163】
複合水酸化物製造工程において金属元素がモル比でNi:Co:Mn=8:1:1となるように混合水溶液を調製して晶析したこと、被覆工程においてモル比でNi:Co:Mn:W=80:10:10:0.5になるように被覆を行ったこと、正極活物質製造工程において、熱処理温度を550℃とし、Li/Me=1.10となるように混合し、焼成温度を800℃としたこと以外は、実施例1と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0164】
正極活物質の組成は、Li1.10Ni0.796Co0.100Mn0.1000.005であった
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が12.1m/gであり、正極活物質1.05m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表1に示す。
【実施例5】
【0165】
[複合水酸化物粒子製造工程]
小型反応槽(5L)内に、反応槽の半分の量まで水を入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この反応槽内に25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量で加えることにより、反応液を液温25℃基準のpH値で12.6に、反応液中のアンモニウムイオン濃度を10g/Lに調節した。
【0166】
〈核生成段階〉
次に、前記反応液に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、(金属元素モル比でNi:Co=82:15)を水に溶かして得た1.8mol/Lの混合水溶液と、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液を一定速度で加え、得られた核生成用水溶液中のアンモニウムイオン濃度を上記値となるように保持した状態で、pH値を液温25℃基準で12.6(核生成pH)に制御しながら2分30秒間水酸化ナトリウム水溶液を加えることにより種晶を得た。
【0167】
〈粒子成長段階〉
別の反応槽(34L)に反応槽の半分の量まで水を入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、窒素ガスを流通させて窒素雰囲気とした。このときの反応槽内空間の酸素濃度は2.0容量%であった。
【0168】
この反応槽内の水に25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、反応槽内の反応液のpH値を液温25℃基準で11.6となるように調整した。また、反応液中のアンモニウムイオン濃度を10g/Lに調節した。前記小型反応槽で得られた種晶を含む反応液を、反応槽に投入した後に、粒子成長用水溶液中のアンモニウムイオン濃度を上記値に保持した状態で、pH値を11.6に制御したまま前記混合水溶液、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液を2時間継続して加えて粒子成長を行った。
【0169】
反応槽内が満液になったところで、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液の供給を停止するとともに撹拌を止めて静置することで、生成物の沈殿を促した。生成物が沈殿した後、上澄み液を反応槽から半量抜き出した後、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開した。さらに2時間(計4時間)、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液を供給したのち、これらの供給を終了させ、得られた粒子を水洗、濾過、乾燥して回収した。
【0170】
[被覆工程]
得られた粒子を被覆してモル比がNi:Co:Al:W=82:15:3:1になるようにした以外は、実施例1と同様にして被覆して複合水酸化物を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
正極活物質の組成は、Li1.02Ni0.812Co0.149Al0.0300.010であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が9.0m/gであり、正極活物質0.82m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表1に示す。
【0171】
(比較例1)
被覆工程において、アンモニア水溶液を添加せず、Ni:Co:Al=82:15:3となるように被覆を行ったこと以外は実施例1と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
正極活物質の組成は、Li1.02Ni0.82Co0.15Al0.03であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が8.6m/gであり、正極活物質0.70m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表1に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
(評価)
本発明の平均粒径、粒度分布を有し、タングステンを添加した実施例1〜5は、高容量で正極抵抗が低くなっており、非水系電解質二次電池用正極活物質として好適であることがわかる。一方、タングステンを添加していない比較例1は、高容量であるものの正極抵抗が高く、出力特性が十分でないことがわかる。
【実施例6】
【0174】
[水酸化物粒子製造工程]
まず反応槽内に水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、反応槽に窒素ガスを流通させて窒素ガス雰囲気とした。このときの反応槽内空間の酸素濃度は3.0容量%であり、反応槽内溶液中の溶存酸素濃度は2mg/L以下であった。そこへ25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、液のpH値を液温25℃基準で12.6に、液中アンモニア濃度を10g/Lに調節した。ここに、硫酸ニッケル、硫酸マンガン(金属元素モル比でNi:Mn=50:50)を水に溶かして得た2.0mol/Lの水溶液と、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液を一定速度で加えていき、pH値を12.6(核生成pH)に制御しながら2分30秒間晶析を行った。
【0175】
その後、pH値が液温25℃基準で11.6(核成長pH)になるまで、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを一時停止し、液温25℃基準でpH値が11.6に到達した後、再度25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開した。pH値を11.6、変動幅を設定値の上下0.2の範囲内に制御したまま、2時間晶析を継続し、反応層内が満水になったところで晶析を停止し撹拌を止めて静置することで、生成物の沈殿を促した。上澄み液を半量抜き出したのちに、晶析を再開した。
さらに2時間晶析を行った後(計4時間)、晶析を終了させて、生成物を水洗、濾過、乾燥させた。以上に述べた方法により、Ni0.50Mn0.50(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物粒子を得た。
【0176】
[被覆工程]
得られた粒子をタングステンで被覆してモル比でNi:Mn:W=49.75:49.75:0.5とするべく、コート終了時のスラリー濃度が200g/Lになるように、500mLビーカーに水酸化物粒子100g、水、濃度30g/Lタングステン酸アンモニウム水溶液37mlを混合した。25質量%アンモニア水をタングステン酸アンモニウム水溶液の10容量%として3.7ml添加した後、常温、最終pH値が8.5になるよう8質量%硫酸を添加して被覆を行った。
その後、容器内の水酸化物スラリーを全量濾過して回収し、かけ水で水洗後、120℃で12hr以上乾燥させ、Ni0.498Mn0.4980.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物を得た。BET法測定による比表面積は、20.2m/gであった。
【0177】
[正極活物質製造工程]
〈熱処理工程〉
前記複合水酸化物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中にて温度700℃で6時間の熱処理を行い、複合酸化物を得た。
【0178】
〈混合工程〉
得られた複合酸化物をLi/Me=1.35となるように炭酸リチウムを秤量し、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合し、リチウム混合物を得た。
【0179】
〈焼成工程〉
得られたリチウム混合物を空気(酸素濃度:21容量%)気流中にて400℃、4時間で仮焼、980℃、10時間で焼成し、さらに解砕して非水系電解質二次電池用正極活物質を得た。
正極活物質の組成は、Li1.35Ni0.498Mn0.4980.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、1.4m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表2に、正極活物質のSEM(日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM−6360LA)観察結果を図7に示す。
【実施例7】
【0180】
被覆工程においてモル比でNi:Mn:W=47.5:47.5:5になるように混合し、25質量%アンモニア水をタングステン酸アンモニウム水溶液370mlの10容量%に相当する37mlを添加した以外は実施例6と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.475Mn0.4750.05(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.35Ni0.475Mn0.4750.05であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が21.9m/gであり、正極活物質1.5m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表2に示す。
【実施例8】
【0181】
被覆工程においてモル比でNi:Mn:Al:W=48.3:48.3:3:0.5となるように混合した以外は実施例6と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.483Mn0.483Al0.030.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.35Ni0.483Mn0.483Al0.030.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が26.3m/gであり、正極活物質1.4m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表2に示す。
【0182】
(比較例2)
被覆工程において最終pH値が11になるように制御以外は実施例6と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
タングステンの析出が生じず、得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.50Mn0.50(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.35Ni0.50Mn0.50であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が21.1m/gであり、正極活物質1.3m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表2に示す。
【0183】
(比較例3)
被覆工程において最終pH値が5になるように制御以外は実施例6と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
被覆工程において水酸化物粒子の一部が溶解したため、以降の工程を中断した。被覆工程後のBET法測定による複合水酸化物の比表面積は、31.5m/gであった。
【0184】
【表2】
【0185】
(評価)
本発明の平均粒径、粒度分布を有し、タングステンを添加した実施例6〜8は、高容量で正極抵抗が低くなっており、非水系電解質二次電池用正極活物質として好適であることがわかる。一方、タングステンを添加していない比較例2は、正極抵抗が大幅に高く、非水系電解質二次電池用正極活物質として問題があることがわかる。
【実施例9】
【0186】
複合水酸化物製造工程において金属元素がモル比でNi:Co:Mn=33:33:33となるように混合水溶液を調製して晶析したこと、被覆工程においてモル比でNi:Co:Mn:W=33.1:33.1:33.1:0.5になるように被覆を行ったこと、正極活物質製造工程において、熱処理工程を行わず、Li/Me=1.15となるように混合し、仮焼温度を760℃、焼成温度を900℃としたこと以外は実施例6同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0187】
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.331Co0.331Mn0.3310.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.15Ni0.331Co0.331Mn0.3310.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が19.1m/gであり、正極活物質1.0m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表3に示す。
【実施例10】
【0188】
被覆工程においてモル比でNi:Co:Mn:W=31.7:31.7:31.7:5になるように混合し、25質量%アンモニア水をタングステン酸アンモニウム水溶液370mlの1容量%に相当する3.7mlを添加した以外は実施例9と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0189】
スラリー中にタングステンが若干量残留したため、得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.321Co0.321Mn0.3210.036(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.15Ni0.321Co0.321Mn0.3210.036であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が19.3m/gであり、正極活物質1.1m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表3に示す。
【実施例11】
【0190】
被覆工程においてモル比でNi:Co:Mn:Al:W=32.2:32.2:32.2:3:0.5となるように混合した以外は実施例9と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.322Co0.322Mn0.322Al0.030.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.15Ni0.322Co0.321Mn0.322Al0.030.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が18.2m/gであり、正極活物質0.97m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表3に示す。
【実施例12】
【0191】
被覆工程においてタングステン酸アンモニウムに替えてタングステン酸ナトリウムを用いてモル比でNi:Co:Mn:Al:W=32.2:32.2:32.2:3:0.5となるように混合し、アンモニアを添加しなかった以外は実施例11と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.322Co0.322Mn0.322Al0.030.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.15Ni0.322Co0.322Mn0.322Al0.030.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が19.5m/gであり、正極活物質1.1m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表3に示す。
【0192】
(比較例4)
攪拌機とオーバーフローパイプを備えた5リットルの円筒形反応槽(ステンレス製円筒容器改造品)にpHが11.3になるように純水と25質量%水酸化ナトリウム水溶液(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)を加え、温度を35℃に保持し一定速度にて攪拌を行った。次に、Ni:Co:Mnの原子比が1:1:1となるように混合し合計の塩濃度で2mol/Lとなる硫酸ニッケル溶液(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)、硫酸コバルト溶液(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)、および硫酸マンガン溶液(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)の混合液を4ml/分の流量にて添加し、同時に錯化剤として25質量%アンモニア水(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)を0.4ml/分の流量にて反応槽に添加した。さらに、反応溶液のpH値が液温25℃基準で11.5〜12.0になるように25質量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に加えて制御し、ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子を形成した。
【0193】
反応槽内が定常状態になった後、オーバーフローパイプよりニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子を連続的に採取し、水洗、濾過した後、120℃にて24時間大気乾燥してニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子を得た。反応後の水溶液のpHを測定した結果、液温25℃基準で11.85であった。
以降の工程は実施例9と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
【0194】
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.332Co0.332Mn0.3320.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.15Ni0.332Co0.332Mn0.3320.005であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が31.8m/gであり、正極活物質2.1m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表3に示す。
【0195】
(比較例5)
被覆工程を行わず複合水酸化物粒子にタングステンの被覆を行わなかった以外は実施例9と同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.333Co0.333Mn0.333(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.15Ni0.333Co0.333Mn0.333であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が19.7m/gであり、正極活物質1.5m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表3に示す。
【0196】
(比較例6)
被覆工程においてモル比でNi:Co:Mn:Al=32.3:32.3:32.3:3となるように混合し、アンモニア水を添加しなかった以外は実施例9同様にして非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
得られた複合水酸化物の組成は、Ni0.323Co0.323Mn0.323Al0.03(OH)2+α(0≦α≦0.5)であり、正極活物質の組成は、Li1.15Ni0.32Co0.32Mn0.32Al0.03であった。
また、BET法測定による比表面積は、複合水酸化物が20.5m/gであり、正極活物質1.6m/gであった。
得られた複合水酸化物および非水系電解質二次電池用正極活物質の平均粒径、および〔(d90−d10)/平均粒径〕値、正極抵抗値、熱安定性を表3に示す。
【0197】
【表3】
【0198】
(評価)
本発明の平均粒径、粒度分布を有し、タングステンを添加した実施例9〜12は、高容量で正極抵抗が低くなっており、非水系電解質二次電池用正極活物質として好適であることがわかる。
一方、平均粒径が大きく粒度分布が広い比較例4は、電池容量は同程度であるものの正極抵抗が高く、出力特性が十分でないことがわかる。また、タングステンを添加していない比較例5、6は、正極抵抗が大幅に高く、非水系電解質二次電池用正極活物質として問題があることがわかる。
【符号の説明】
【0199】
B コイン型電池
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 ガスケット
5 正極缶
6 負極缶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7