特許第5821273号(P5821273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821273
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】歯車装置とそれを搭載した車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20151104BHJP
【FI】
   F16H57/04 P
   F16H57/04 E
   F16H57/04 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-112003(P2011-112003)
(22)【出願日】2011年5月19日
(65)【公開番号】特開2012-241788(P2012-241788A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 武
(72)【発明者】
【氏名】石川 直也
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−033853(JP,A)
【文献】 特開2007−321927(JP,A)
【文献】 特開平05−272621(JP,A)
【文献】 米国特許第05568842(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車装置の筐体の下部から潤滑油を循環ポンプによって熱交換器に供給し、前記熱交換器で内燃機関の冷却水と潤滑油とを熱交換させた後に前記筐体の下部に溜め、前記筐体の内部に備えた歯車が前記筐体の下部に溜まった潤滑油を撹拌する構成にした歯車装置において、
前記循環ポンプが停止したときの前記下部に溜まった潤滑油の油面を最高油面とし、前記循環ポンプが汲み上げる潤滑油の油量が最大のときの前記下部に溜まった潤滑油の油面を最低油面として、
前記熱交換器を前記筐体の外部で前記最高油面よりも高い位置に配置すると共に、
サーモスタットにより冷却水がラジエータを経由する場合には、前記循環ポンプの回転数を下げて前記下部に溜まった潤滑油の油面を前記最高油面に近づけ、該サーモスタットにより冷却水が該ラジエータを経由しない場合には、前記循環ポンプの回転数を上げて前記下部に溜まった潤滑油の油面を前記最低油面に近づける制御を行う制御装置を備えたことを特徴とする歯車装置。
【請求項2】
前記筐体から前記熱交換器への潤滑油の出口を前記筐体の内壁の前記最低油面よりも低い位置に配置すると共に、前記熱交換器から前記筐体への潤滑油の入口を前記筐体の内壁の前記最高油面よりも高い位置に配置し、前記出口から前記循環ポンプにより汲み上げられた潤滑油が前記入口から前記筐体の内壁を伝わって前記下部に溜まる構成にしたことを特徴とする請求項1に記載の歯車装置。
【請求項3】
歯車装置を備えた車両の車速を検出する車速センサと、潤滑油の油温を検出する油温センサと、前記油面の高さを検出する油量レベルセンサとを備え、
前記制御装置が、前記車速に応じた最適油温及び最適油面高さを算出し、該最適油温及び該最適油面高さと、検出された前記油温及び前記油面の高さとを比較して、前記循環ポンプの汲み上げ油量を調節する手段を有したことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯車装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯車装置を搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品点数の少ない構成で、潤滑油の油温と油量を制御する歯車装置とそれを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にトランスミッション(変速装置)やデファレンシャルギア(差動装置)などの歯車装置は各機構へギアオイル(潤滑油)を供給して、各機構を潤滑すると共に、各機構を冷却している。このギアオイルによる潤滑は各機構にギアオイルが油膜を作ることで金属同士の摩擦を減らして滑りをよくさせる作用であり、冷却は摩擦などによって発生する熱を吸収し、外部にその熱を伝達する作用である。
【0003】
しかしこのギアオイルは油膜保持のために粘度が高い。この粘度は温度が高い程低くなるという特性を持っている。よって、低温時のギアオイルは粘度が高いため、車両においてはフリクション(摩擦抵抗)の増加による駆動損失を起こして、燃費を悪化させる原因の一つとなっている。
【0004】
一方、省エネルギーの観点から、車両の燃料消費を低減させることが急速に進んでいる。そこで低温時のギアオイルによるフリクションを低減することで、車両の燃費を向上させることは省エネルギー化を目指す上で重要な課題となっている。
【0005】
従来、トランスミッション(変速装置)やデファレンシャルギア(差動装置)などの歯車装置の暖機は成り行きで、ギア歯面の摩擦と、潤滑油と潤滑油の攪拌エネルギー、又はエンジン(内燃機関)からの伝熱により昇温している。よって特別に歯車装置に暖機を促進する装置を備えることはない。また、歯車装置は規定の油量をハウジング(筐体)内に満たし、ドブ漬け状態で潤滑及び冷却を行っているために、攪拌抵抗による駆動損失の増加により燃費が悪化する。
【0006】
特に、冷却水の水温及び潤滑油の油温が低い状況からのエンジンのコールドスタート(低温発進)は潤滑油の粘性抵抗が無視できない状況であり、アイドリング時の噴射量を例にとってもアイドリング回転数として設定した値で安定させるためには、ホットスタートに対してより多くの燃料が必要となる。トランスミッションやデファレンシャルギアは熱の発生源であるエンジンから離れているために、油温が上昇するまでには時間がかかり走行抵抗が下がり難いために燃費が悪化する。この影響は外気温の低いときにより顕著に出る。よって、トランスミッションの潤滑油の油温を早期に上昇させることが必要となる。
【0007】
そこで、オイルを熱交換器へ導き、トランスミッションのオイル温度が低いときには、エンジン出口直後の冷却水で加熱させ、また、オイル温度が高いときには、エンジンで加熱されるまえの冷却水で冷却させる装置がある(例えば特許文献1参照)。しかし、特にコールドスタート時における早期に油温を上昇させるには、熱交換器による加熱だけでは解決することができない。
【0008】
一方、潤滑油の熱交換を行う熱交換器を備え、トランスミッションの油温を計測する油温センサと潤滑油の流量を制御する油用制御弁とを備え、熱交換器への油量を油用制御弁で制御して、油温を制御する油温制御装置もある(例えば特許文献2参照)。しかし、この装置は油温が高温になった際の制御装置であって、積極的に油温を上昇させる制御装置ではないため、低温の潤滑油によるフリクションを低減することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−264318号公報
【特許文献2】特開2010−196852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも部品点数の少ない構成で潤滑油の油温と油量を制御して、油温が低い場合に油温の上昇が早く粘性抵抗を低くすることと、油量が減ることの相乗効果によって、駆動損失を低下させて、低燃費を実現することができる歯車装置と、それを搭載した車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための歯車装置は、歯車装置の筐体の下部から潤滑油を循環ポンプによって熱交換器に供給し、前記熱交換器で内燃機関の冷却水と潤滑油とを熱交換させた後に前記筐体の下部に溜め、前記筐体の内部に備えた歯車が前記筐体の下部に溜まった潤滑油を撹拌する構成にした歯車装置において、前記循環ポンプが停止したときの前記下部に溜まった潤滑油の油面を最高油面とし、前記循環ポンプが汲み上げる潤滑油の油量が最大のときの前記下部に溜まった潤滑油の油面を最低油面として、前記熱交換器を前記筐体の外部で前記最高油面よりも高い位置に配置すると共に、サーモスタットにより冷却水がラジエータを経由する場合には、前記循環ポンプの回転数を下げて前記下部に溜まった潤滑油の油面を前記最高油面に近づけ、該サーモスタットにより冷却水が該ラジエータを経由しない場合には、前記循環ポンプの回転数を上げて前記下部に溜まった潤滑油の油面を前記最低油面に近づける制御を行う制御装置を備えて構成される。
【0012】
この構成によれば、潤滑油の油温によって、ハウジング(筐体)内の潤滑油の油面の高さが最適になるように循環ポンプの汲み上げ量を制御し、油面より高い位置にある熱交換器へ汲み上げる。そうすることでトランスミッションハウジングから分離された潤滑油はエンジン(内燃機関)の冷却水と熱交換することができる。そのため、エンジンの冷却水の温度に合わせて、潤滑油の温度が低温のときは温度を上昇させるように働き、潤滑油の温度が高温のときは温度を低下させるように働く。特に潤滑油が低温の際には、エンジンによって過熱された冷却水と熱交換させると、油温の上昇が早く粘性抵抗が低くなると共に、潤滑油の油量が減ることの相乗効果によって駆動損失が低下して、低燃費を実現できる。
【0013】
また、潤滑油が移送される熱交換器を歯車装置の油面の高さよりも高い位置に配置するので、循環ポンプが停止中は通常の油面位置に保て、稼働中は潤滑油を吸い上げて熱交換器内の容積分、又は循環ポンプの揚程能力に対応した容積が油面よりも上に持ち上げられることになるため、歯車装置内の油面を下げることができる。油量を調整する弁などの複雑な機構を備える必要がなく、循環ポンプの汲み上げ量、つまり循環ポンプの回転数を変化させるだけで油面の高さを調整することができる。
【0014】
また、上記の歯車装置は、歯車装置を備えた車両の車速を検出する車速センサと、潤滑油の油温を検出する油温センサと、前記油面の高さを検出する油量レベルセンサとを備え、前記制御装置が、前記車速に応じた最適油温と最適油面高さとを算出し、該最適油温及び該最適油面高さと、検出された前記油温及び前記油面の高さとを比較して、前記循環ポンプの汲み上げ油量を調節する手段を有して構成される。
【0015】
この構成によれば、車速(トップギアシャフトの回転数)に応じた最適の油量になるように循環ポンプの汲み上げ量を制御することができる。また、循環ポンプの汲み上げ量を制御して、油面の高さを最低油面よりも常に高く保って、エアの吸い込みによる油膜切れを引き起こさないようにすることができる。
【0016】
加えて、上記の歯車装置は、前記冷却水を内燃機関で加熱された冷却水で構成し、前記
内燃機関が低温発進する際に、前記制御装置が、前記油温を上昇させると共に前記油面を前記最低油面の近傍まで下げるように前記汲み上げ油量を制御する手段を有して構成される。
【0017】
車両を水温、及び油温が低い状況からのコールドスタートさせるときに、トランスミッション並びにデファレンスギアについては熱の発生源から離れているために、油温が上昇するまでには時間が掛かる。上記の構成によれば油温を計測して循環ポンプの汲み上げ量を制御するため、必要のない冷却を抑えるために油面を最適に保ち、すなわち油面の高さを最低油面の近傍まで下げ、さらに、油温を早期に上昇させて、オイルの粘性抵抗を下げることで燃費を向上させることができる。
【0018】
さらに、上記の目的を達成するための車両は、上記の歯車装置を搭載して構成される。この構成によれば、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来よりも部品点数の少ない構成で潤滑油の油温と油量を制御して、油温が低い場合に油温の上昇が早く粘性抵抗を低くすることと、油量が減ることの相乗効果によって、駆動損失を低下させて、低燃費を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る実施の形態の歯車装置を示した平面図ある。
図2図1のII−IIを示した側面図である。
図3】本発明に係る実施の形態の歯車装置へ移送される内燃機関の冷却水を示した側面図である。
図4】本発明に係る実施の形態の歯車装置へ移送されるラジエータを通過した冷却水を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態の歯車装置及び車両について、図面を参照しながら説明する。本発明に係る実施の形態の歯車装置に関しては、車両に搭載されている一般的なトランスミッションであるため、トランスミッションの構成に関しての図の記載と説明を省略する。また、本発明に係る実施の形態の歯車装置は、マニュアルトランスミッション、オートマチックトランスミッション及びセミオートマチックトランスミッションに限らず、デファレンシャルギアなどギアと潤滑油が共存する装置に適応することができる。
【0022】
図1に示すように、歯車装置1はトランスミッションであり、クラッチ2を介して、エンジン(内燃機関)3の動力をシャフト4から、内部に備えたギアGで変速させてプロペラシャフト5に伝えている。トランスミッション(歯車装置)1は、複数のギアGを内部に備えたハウジング(筐体)11の外部に、熱交換器12、循環ポンプ13、潤滑油配管14a、15a、16及びエンジン冷却水配管17、18を備える。また、制御装置20、車速センサ21、油温センサ22及び油量レベルセンサ23を備える。ここで、白抜きの矢印は潤滑油OLの流れを示し、矢印はエンジン冷却水Wの流れを示している。
【0023】
図2に示すように、潤滑油OLのハウジング11からの出口14bと、ハウジング11への入口15bを備える。ハウジング11の下部に潤滑油OLが溜まるオイルパン11aを設ける。また、循環ポンプ13が停止した状態のとき、つまりオイルパン11aに溜まる潤滑油OLの油量が最大になったときの油面LOの高さを最高油面L1とし、循環ポンプ13が汲み上げる潤滑油OLの量が最大になったとき、つまりオイルパン11aに溜まる潤滑油OLの油量が最小になったときの油面LOの高さを最低油面L2とする。
【0024】
熱交換器12を、潤滑油OLがエンジン冷却水Wによって加熱又は冷却されるように、第1冷却水配管17及び第2冷却水配管18と接続する。第1冷却水配管17はエンジン3からエンジン冷却水Wが流入する配管であり、第2冷却水配管18は熱交換器12から熱交換されたエンジン冷却水Wが流出する配管である。また、熱交換器12をハウジング11の外部で、高さHに配置する。この高さHは潤滑油OLの油面LOよりも高くなればよいので、最高油面L1よりも高くする。熱交換器12は、例えば二重管式熱交換器、スパイラル式熱交換器、プレート式熱交換器及びタンクジャケット式熱交換器などを用いることができ、潤滑油OLとエンジンの冷却水とで熱交換できる構成であればよい。
【0025】
循環ポンプ13をギア式、又はスクリュー式のロータの回転で油量を調整することができる回転ポンプで形成し、オイルパン11aに溜まる潤滑油OLを熱交換器12へと汲み上げるように構成する。この循環ポンプ13はケーシング内のロータの回転によって連続的に液を送るポンプであり、複雑な機構の弁などがないため非常に簡単で高速に回転する事によって高圧の発生を得る事ができる。また、そのロータの回転を制御することによって潤滑油OLの流量を調整することができる。循環ポンプ13は上記の構成によらず、往復動ポンプなども用いることができる。
【0026】
潤滑油OLの出口14bを最低油面L2よりも低い位置に配置する。最低油面L2よりも低い位置に配置することで、出口14bにエアの流入を防ぎ、循環ポンプ13の誤動作などを防ぐことができる。また、潤滑油OLの入口15bを最高油面L1よりも高い位置に配置する。ハウジング11へ潤滑油OLを戻す際には、ハウジング11の内壁を伝うように、オイルパン11aへ戻るように構成すると好ましい。その構成により、潤滑油OL内のキャビテーションを防ぐことができる。
【0027】
制御装置20はパーソナルコンピュータのように通信手段や記憶手段などを備えており、車速センサ21、油温センサ22及び油量レベルセンサ23と接続され、各センサが検出したデータを受け取り、そのデータを元に循環ポンプ13を制御するように構成する。制御装置20は上記の構成であれば、車両内のどこに設けてもよい。昨今の車両には様々な電子制御が行われており、その電子制御の一つとして制御装置20を組み込んでもよい。
【0028】
車速センサ21を、ワイヤー式センサや、電磁式センサで形成する。このセンサはトップギアシャフト(図示せず)の回転数を検出し、ギア比から車速を算出するセンサである。また、エンジン3に設けたクランク角センサからエンジン3の回転数を検出し、車速を算出する方法や、プロペラシャフト5や駆動輪(図示せず)の付け根などに設けた車速センサで車速を算出する方法などを用いることができる。
【0029】
油温センサ22を潤滑油OLの出口14bの近傍に設け、メーター内に直接オイルを引き込んで油温を表示する機械式油温計や、センサの抵抗値の上下動によって、電気式メーターに潤滑油OLの温度を表示する電磁式油温計で形成する。油温センサ22はオイルパン11a内で常に潤滑油OLに浸る箇所に設けることが好ましい。
【0030】
油量レベルセンサ23を、ハウジング11の内部に設ける。この油量レベルセンサ23はフロート式レベルセンサ、電磁式レベルセンサ、気泡式レベルセンサ、光学式界面レベルセンサ、超音波式レベルセンサ及び音叉式レベルセンサなどを用いることができる。この油量レベルセンサ23が油面LOを検出する。
【0031】
車速センサ21、油温センサ22及び油量レベルセンサ23は、通常、車両に搭載されており、その元々搭載されているセンサを用いると、わざわざ別途に設ける必要はない。
【0032】
上記のトランスミッション1の動作を説明する。車速センサ21が検出した車速、又はトップギアシャフトの回転数に応じた最適油温と最適油量(ハウジング11内の油面LOの高さで最適な高さ)を制御装置20が算出する。その最適油温と最適油量とを、油温センサ22が検出する油温と油量レベルセンサ23が検出する油量とを制御装置20が比較して、回転式ポンプである循環ポンプ13のロータの回転数を決定する。循環ポンプ13は制御装置20が決定した回転数でロータを回転させ、潤滑油OLを汲み上げる。汲み上げられた潤滑油OLは熱交換器12でエンジン冷却水Wと熱交換して、ハウジング11内のオイルパン11aへと戻される。
【0033】
制御装置20は、潤滑油OLの汲み上げ量を制御することによって、オイルパン11aの油面LOの高さを、車速と油温によって、最高油面L1と最低油面L2との間で調整する。例えば、潤滑油OLの油温が低く粘性抵抗が高い場合は、油温を上昇させるために熱交換器12へ潤滑油OLを汲み上げ、また、多く汲み上げることによって、ハウジング11内の粘性抵抗が高い潤滑油OLの油量を減らしてギアGの攪拌抵抗を下げる。また、潤滑油OLの油温が高い場合は、油温を低下させるために熱交換器12へ潤滑油OLを汲み上げ、また、汲み上げ量を少なくすることによって、ハウジング11内の潤滑油OLの油量を多くして、潤滑性を保つ。
【0034】
上記の動作により、車速又はトップギアシャフトの回転数に応じた最適な油温と最適な油面LOの高さになるように、循環ポンプ13の回転数を制御して、最高油面L1よりも高い位置に配置された熱交換器12へと潤滑油OLを汲み上げる。そのため、ハウジング11から分離された潤滑油OLはエンジン冷却水Wと熱交換することができるため、冷却水Wの温度に応じて、潤滑油OLの温度を調整することができる。
【0035】
一般的に冷却水Wの温度は約60℃〜90℃で制御されており、特にエンジンの暖機に作用している。よって、潤滑油OLの温度が低く粘性抵抗が高いときに、油温の上昇を早めて粘性抵抗を低くすると共に、ハウジング11内の油量を低減することの相乗効果によって駆動損失が低下し、低燃費を実現することができる。一方潤滑油OLはエンジン冷却水Wの温度によって、その油温が調整されるため、潤滑油OLが高温になりすぎないようにする効果もある。
【0036】
また、熱交換器12を最高油面L1よりも高い位置に配置し、熱交換器12内の容積分や、循環ポンプ13の揚程能力に対応した容積が油面LOよりも上に持ち上げられることになるため、油量の調整が循環ポンプ13による汲み上げ量の調整だけで制御することができるため、部品点数も少ない。加えて、循環ポンプ13の回転数を、油面LOが最高油面L1と最低油面L2との間にあるように、制御することができ、特に油面LOの最低位置をハウジング11内部の歯車と必ず接触して、エアを吸い込まずに油膜切れを引き起こさない位置になるように制御することができる。
【0037】
次に、エンジン3の冷却システムを説明する。図3に示すように、エンジン3には水冷式の冷却システム30を備える。この冷却システム30は、ラジエータ31とウォータジャケット32とを備える。また、この冷却システム30は、第1プーリ33、ベルト34、第2プーリ35、冷却ファン36、ウォータポンプ37、オイルクーラ38及びサーモスタット39を備える。
【0038】
サーモスタット39はエンジン冷却水Wの水温によって動作し、ラジエータ31への水路を開閉している。通常サーモスタット39はエンジン3の暖機を早めるために設けられており、例えば冷却水Wの温度が60℃前後のときは10%の開度、85℃前後のときは100%の開度に設定され、冷却水Wの温度を下げる必要がある場合のみエンジン冷却水Wがラジエータ31を通過するように稼働している。
【0039】
図3に、エンジン3の暖機を早める場合のサーモスタット39の稼働状況とそのときのエンジン冷却水Wの流路R1を示す。エンジン冷却水Wの温度が低い場合は、エンジン3も冷えていることになり、エンジン3の潤滑油も油温が低い。その場合エンジン3を適温まで温めて燃焼効率を高める必要がある。そこでサーモスタット39の開度を下げ、エンジン冷却水Wがラジエータ31を通過しないように流路を塞ぎ、ウォータジャケット32の内部のみをエンジン冷却水Wが循環するように流路R1を形成する。エンジン冷却水Wはラジエータ31を通過しないので、冷却されずに循環する。
【0040】
このときトランスミッション1において、潤滑油OLの油温は低いため、粘性抵抗が高い状態である。制御装置20は、油温センサ22が検出した潤滑油OLの油温が低いと判断し、循環ポンプ13の回転数を上げて、潤滑油OLの汲み上げ量を増加し、ハウジング11内の潤滑油OLの油面LOの高さを最低油面L2の近傍まで下げる。そして熱交換器12へはエンジン3により加熱されたエンジン冷却水Wが流れ込み、潤滑油OLの温度を上げるように作用する。
【0041】
上記の動作によれば、熱交換器12で潤滑油OLの油温を上げると共に、オイルパン11aに溜まる潤滑油OLの量を少なくすることによって、潤滑油OLが低温で、粘度が高すぎると発生する粘性抵抗によるエネルギーロスを防ぐと共に、油量を減らすことでさらにエネルギーロスを防ぐことができる。その結果、燃費の悪化を防ぐことができる。
【0042】
一方で、図4にエンジン3が高温になりすぎないようにエンジン3を冷却する場合のサーモスタット39の稼働状況とエンジン冷却水Wの流路R2を示す。エンジン冷却水Wの温度が高温のときは、エンジン3も高温になっており、潤滑油も高温になっている。潤滑油が高温になり、粘度が低すぎると金属上での潤滑油の油膜が薄くなり、潤滑性が著しく低下して摩耗や焼き付きが起きる。そこで、高温になりすぎないように、サーモスタット39の開度を上げ、エンジン冷却水Wがラジエータ31を通過するように流路を開き、流路R2を形成する。
【0043】
エンジン冷却水Wの水温が高い場合の冷却システム30の動作を説明する。シャフト4の回転により第1プーリ33が回転し、合わせて第2プーリ35が回転する。第2プーリ35が回転することによって、冷却ファン36とウォータポンプ37が回転する。冷却ファン36がラジエータ31に送風してラジエータ31を通過するエンジン冷却水Wを冷却し、ウォータポンプ37が回転して、エンジン冷却水Wがウォータジャケット32内部を循環する。エンジン冷却水Wがラジエータ31を通過するときに冷却されるので、エンジン3を冷却する。
【0044】
このときトランスミッション1において、潤滑油OLの温度も高温になっており、エンジン3と同様に油温を上昇させないことが必要となる。潤滑油OLが高温の状態では、粘度が低くなり油膜が薄くなり摩耗や焼き付けが起きる。よって、制御装置20は、油膜が薄くならないように、循環ポンプ13の回転数を下げて、潤滑油OLの汲上げ量を抑え、ハウジング11内の潤滑油OLの油面LOの高さを最高油面L1の近傍まで上げる。このとき熱交換器12へは比較的冷却されたエンジン冷却水Wが流れ込み、潤滑油OLの油温を高温になりすぎないように作用する。
【0045】
上記の動作によれば、熱交換器12で潤滑油OLが高温になりすぎないようにすることができ、潤滑油OLの粘度の低下を防ぎ、潤滑性を維持することができる。加えて、油膜が薄くならないようにオイルパン11aに溜まる潤滑油OLの量を多くすることによって、冷却性及び潤滑性を保持することができる。
【0046】
上記の構成に加えて、潤滑油OLの冷却性を高めたい場合に、ラジエータ31で冷却されたエンジン冷却水Wを熱交換器12へ導く配管を設けてもよい。油温によって使用する配管を制御するように弁装置を設け、潤滑油OLの油温が低温の場合は上記の構成の配管でトランスミッション1の暖機を促進し、潤滑油OLの油温が高温の場合はラジエータ31から直接繋がれる配管を利用して油温を下げるように構成する。この構成により、潤滑油OLの温度が高い場合に、より冷却されたエンジン冷却水Wとで熱交換することができ、油温を冷却することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の歯車装置及びそれを搭載した車両は、油温を調整すると共に、歯車装置の内部の油量を調整することができるので、油温と油量の調整による相乗効果によって潤滑油の温度変化による問題、特に油温が低いときの粘性抵抗による駆動損失を低減し、燃費の悪化を防ぐことができる。そのため、トラックなどの車両に用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 歯車装置 20 制御装置
2 クラッチ 21 車速センサ
3 エンジン 22 油温センサ
11 ハウジング(筐体) 23 油量レベルセンサ
12 熱交換器 30 冷却システム
13 循環ポンプ 31 ラジエータ
14a、15a、16 潤滑油配管 32 ウォータジャケット
14b 出口 36 冷却ファン
15b 入口 37 ウォータポンプ
17、18 エンジン冷却水配管 39 サーモスタット
図1
図2
図3
図4