特許第5821540号(P5821540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821540
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】尿素SCR触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/88 20060101AFI20151104BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20151104BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20151104BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20151104BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20151104BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20151104BHJP
   C01B 39/02 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   B01J29/88 A
   F01N3/08 BZAB
   F01N3/10 A
   B01D53/86 222
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   C01B39/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-243348(P2011-243348)
(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公開番号】特開2013-94770(P2013-94770A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】前川 弘吉
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−166031(JP,A)
【文献】 特表2010−536692(JP,A)
【文献】 特開2011−152496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86、53/94
C01B 33/20−39/54
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中のNOxをアンモニアで還元するための尿素SCR触媒の製造方法において、鉄シリケートベータゼオライトと硝酸アルミニウムと蒸留水を混ぜ、これを還流して鉄シリケート骨格内からFeを一部離脱させると共にFeの離脱によって生じた空孔にAlイオンを導入してAl同型置換鉄シリケートとし、Al同型置換鉄シリケートを焼成することを特徴とする尿素SCR触媒の製造方法。
【請求項2】
鉄シリケートのSiO2/Fe23のモル比が15〜25であり、Alイオンを導入してSiO2/Al23のモル比を200以下とした請求項1記載の尿素SCR触媒の製造方法。
【請求項3】
鉄シリケートベータゼオライトと硝酸アルミニウムと蒸留水を混ぜて80℃で還流し、還流後に冷却、ろ過して得られた褐色粉末を500℃以上で焼成してAl同型置換鉄シリケートとした請求項1記載の尿素SCR触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル排ガスに含まれるNOxを無害化するための尿素SCR触媒の製造方法に係り、特に、高活性で水熱耐久性がありしかも低温でのNOx吸着特性に優れた尿素SCR触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル排ガスに含まれるNOxを無害化する装置の1つとして、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction;以下SCRと略記)が実用化されている。
【0003】
図6は、特許文献1に示されたディーゼル排ガスの後処理システムを示し、ディーゼルエンジンの排ガス管10に酸化触媒(DOC)反応器11、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)12、SCR反応器13が順に接続されてディーゼル排ガスの後処理システムが構成される。
【0004】
ディーゼルエンジンからの排ガスは、酸化触媒反応器11内で、排ガス中の未燃焼燃料(HC)や、一酸化炭素(CO)等が酸化された後、排ガス中のPM(パティキュレートマター)がディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)12で捕集される。次に、排ガス中の窒素酸化物(NOx)は、SCR反応器13の入口側で噴射された尿素水14の加水分解で生じたアンモニアとSCR反応器13内のSCR触媒で反応して窒素と水とに還元されて無害化される。
【0005】
SCR反応器13に用いられるSCR触媒としては、一般にゼオライト触媒が用いられており(特許文献2)、このゼオライト触媒を含むスラリーをセラミックハニカムなどの担体に塗布したもの或いはその成型体がSCRコンバータとして用いられる。
【0006】
従来、SCR触媒用ゼオライトとして鉄イオン交換アルミノシリケート(以下従来触媒と表記する)が広く用いられており、この触媒を用いて、尿素水が加水分解して生じるアンモニアを還元剤として作用させることで、ディーゼル排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−152496号公報
【特許文献2】特開2007−296521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来触媒は、低温(〜160℃程度)においては、NOx浄化能力が十分ではないため、エンジン始動直後、即ち低温時においては、エンジンから排出されたNOxの大部分が浄化されずに大気中に放出される問題がある。従って、低温時のNOx排出を抑制するためには、低温時のNOx浄化能力を高めるか、或いはNOx吸着剤を用いてNOxを保持するなどの方策が必要となる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、低温時にエンジンから排出されるNOxを浄化できる尿素SCR触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、排ガス中のNOxをアンモニアで還元するための尿素SCR触媒の製造方法において、鉄シリケートベータゼオライトと硝酸アルミニウムと蒸留水を混ぜ、これを還流して鉄シリケート骨格内からFeを一部離脱させると共にFeの離脱によって生じた空孔にAlイオンを導入してAl同型置換鉄シリケートとし、Al同型置換鉄シリケートを焼成することを特徴とする尿素SCR触媒の製造方法である。
【0011】
請求項2の発明は、鉄シリケートのSiO2/Fe23のモル比が15〜25であり、Alイオンを導入してSiO2/Al23のモル比を200以下とした請求項1記載の尿素SCR触媒の製造方法である。
【0012】
請求項3の発明は、鉄シリケートベータゼオライトと硝酸アルミニウムと蒸留水を混ぜて80℃で還流し、還流後に冷却、ろ過して得られた褐色粉末を500℃以上で焼成してAl同型置換鉄シリケートとした請求項1記載の尿素SCR触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、鉄シリケート骨格内にAlを導入することによって、高いNOx浄化活性ならびに水熱耐久性を有し、しかも従来の触媒と同等のNOx吸着特性を有するSCR用の触媒とすることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の尿素SCR触媒の骨格構造を説明する図である。
図2】本発明の尿素SCR触媒と従来の鉄ゼオライトSCR触媒のNOx浄化率とNOx吸着率を示す図である。
図3】従来のゼオライト(アルミノシリケート)から鉄ゼオライトSCR触媒を製造する際の骨格構造を説明する図である。
図4】従来の鉄シリケートSCR触媒の骨格構造と劣化後の骨格構造を説明する図である。
図5】従来の鉄ゼオライトSCR触媒と従来の鉄シリケートSCR触媒のNOx浄化率とNOx吸着率を示す図である。
図6】ディーゼルエンジンの排ガスの後処理システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1は、本発明の尿素SCR触媒の骨格構造を示したもので、出発原料として鉄シリケートベータゼオライトを用い、その骨格構造内からのFeの脱離によって生じた空孔(シラノールネスト)にAlを導入してAl同型置換鉄シリケートとするものである。
【0018】
このAl同型置換鉄シリケートとすることで、Feが抜けた空孔にAlによる活性点の補填が行えると共に水熱耐久性の強化が行え、かつ従来の鉄シリケート触媒と同等のNOx吸着特性を維持できるものである。
【0019】
ゼオライトは、シリカ(SiO2)を基本とする網目状の骨格構造から成る。この骨格内に、Al,B等の3価の陽イオンが置換されることによって負電荷が生じるが、その対イオンがプロトン(H+)の場合、このサイトが酸点として機能する。この酸点はSCR反応に必要なアンモニアを吸着保持するために不可欠である。
【0020】
従来触媒は、図3(a)に示した骨格の一部がAlによって置換されたアルミノシリケートを基本に、対イオンがFeイオンに交換された構造になっている(図3(b))。
【0021】
これに対して本発明の尿素SCR触媒であるAl同型置換鉄シリケートは、図1で説明したように、骨格の一部がFeで置換された鉄シリケートの骨格内Feの一部をAl同型置換した構造である。
【0022】
本発明の基礎となる鉄シリケートは、従来触媒よりも高いNOx浄化性能ならびにNOx吸着特性を有するが、鉄シリケートの骨格内Feの骨格外への脱離が従来触媒のアルミノシリケートのAlよりも起こり易く、水熱耐久性が乏しいという問題があった。
【0023】
図4(a)は、鉄シリケートの骨格構造を示したものであるが、処理・使用による劣化で、図4(b)に示すように骨格内のFeの離脱が発生しやすく、触媒劣化が生じる。
【0024】
そこで本発明では、Al同型置換の手法によって鉄シリケート骨格内にAlを導入して酸点を増補することによって、鉄シリケートの欠点を補い、従来触媒並みのNOx吸着能力を保持しつつ、従来触媒よりも高いNOx浄化性能ならびに水熱耐久性を与えた触媒である。
【0025】
以下に尿素SCR触媒について詳しく説明する。
【0026】
鉄シリケートの合成;
鉄シリケートは、コロイダルシリカ、シリコンアルキシド、ヒュームドシリカ等のシリカ源と、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液等のベータ構造を与える構造規制有機物質(SDA)水溶液と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属源、硝酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄等の鉄源と、蒸留水とから合成する。
【0027】
具体的には、アルカリ金属源と構造規制有機物質(SDA)水溶液とを混合撹拌した後、シリカ源を加え、ここに、鉄源を蒸留水で溶解した鉄源水溶液を撹拌しながら滴下して出発ゲルとし、このゲルをオートクレーブ内で、水熱合成によってベータ型鉄シリケート([Fe]−Beta)を合成する。
【0028】
この鉄シリケートのSiO2/Fe23のモル比が15〜25となるように調整する。
【0029】
Al導入方法;
鉄シリケートのAl同型置換は、以下のように実施した。
【0030】
ベータ型鉄シリケート、硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO33・9H2O)及び蒸留水を、ベータ型鉄シリケート:Al(NO33:H2O=1:1:50の質量比になるように混ぜ、80℃のウォーターバスを用いて、18時間還流した。
【0031】
還流終了後、室温まで冷却、ろ過した後、蒸留水を用いて洗浄して褐色粉末を得た。この褐色粉末を、500℃以上、好ましくは550℃で5時間焼成し、Al同型置換鉄シリケートとした。
【0032】
この鉄シリケートへのAl導入量は、還流中に離脱するFeの空孔を補填できる量であればよく、SiO2/Al23のモル比で200以下であればよい。
【0033】
次に、この本発明のAl同型置換鉄シリケートと図3(b)に示した従来触媒のNOx浄化性能とNOx吸着性能を試験した結果を図2に示す。
【0034】
図2において、横軸は排ガスの温度、縦軸はNOxの浄化率を示し、また排ガス温度50〜120℃の範囲でのNOx吸着率も同時に示している。
【0035】
さらに図2では、本発明のAl同型置換鉄シリケートと従来触媒の初期活性(Fresh)の他に水熱耐久試験を行った後の劣化後の活性(Aged)も測定した。
【0036】
この水熱耐久試験は、触媒を、O2が20%、水10%、残りが窒素のガス雰囲気条件で、700℃、10時間保持して水熱処理し、その水熱処理後の触媒を用いてNOx浄化率、NOx吸着率を測定した。
【0037】
図2において、黒丸(●)は、本発明のAl同型置換鉄シリケートの初期活性(Fresh)時のNOx浄化率とNOx吸着率を示し、黒三角(▲)は、従来触媒の初期活性(Fresh)時のNOx浄化率とNOx吸着率を示し、白丸(○)は、本発明のAl同型置換鉄シリケートの劣化(Aged)時のNOx浄化率とNOx吸着率を示し、白三角(△)は、従来触媒の劣化(Aged)時のNOx浄化率とNOx吸着率を示している。
【0038】
この図2より、従来の触媒に対して、本発明のAl同型置換鉄シリケートは、NOx吸着率については同等であるが、NOx浄化率については、格段に上昇していることがわかる。特に、従来触媒では250℃以上でなければNOx浄化率が80%以上にならないが、本発明のAl同型置換鉄シリケートは、180℃でもNOx浄化率を80%以上とすることができる。
【0039】
また本発明のAl同型置換鉄シリケートの水熱処理後の活性は、初期活性よりも低下するものの十分に使用に耐えるものであることがわかる。
【0040】
次に、従来の鉄シリケートを図2と同様に行った結果を図5に示した。
【0041】
図5では、図2で説明した従来触媒の結果も併せて示している。
【0042】
図5で黒丸(●)は、鉄シリケートの初期活性(Fresh)時、白丸(○)は、鉄シリケートの劣化(Aged)時のNOx浄化率とNOx吸着率を示している。また従来触媒は、図2と同様に黒三角(▲)と白三角(△)で示した。
【0043】
鉄シリケート触媒は、従来触媒に対して、NOx浄化率は高く、NOx吸着率は高いものの、劣化後は、NOx浄化率が、従来触媒よりも落ち、図2に示した本発明のAl同型置換鉄シリケートよりも格段に落ちることがわかる。また鉄シリケート触媒は、Fresh時よりも、劣化後の鉄シリケート触媒(Aged)の140〜150℃でのNOx吸着量が多いものの、低温(〜160℃程度)でのNOxの浄化率は悪くなる。これは、劣化で鉄シリケートの骨格から脱離したFeが、鉄シリケートの表面に付着した状態でNOxを吸着するためであり、逆に、NOxの浄化では、活性点として寄与する骨格内のFeが減少するため、低温(〜160℃程度)でのNOxの浄化率が悪くなるためと考えられる。
【0044】
これに対して本発明では、脱離するFeにAlを予め置換してAl同型置換鉄シリケートとすることで、Feの脱離が少なく、置換したAlが活性点として働くため、低温(〜160℃程度)でのNOxの浄化率を向上できる。
【0045】
このように、本発明は、鉄シリケート骨格内にAlを導入することによって、高いNOx浄化活性ならびに水熱耐久性を付与した触媒とすることができると共に、従来SCR触媒と同等のNOx吸着特性を有し、かつ鉄シリケートよりもNOx浄化活性と耐久性に優れた触媒とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 排ガス管
13 SCR反応器
14 尿素水
図6
図1
図2
図3
図4
図5