特許第5821638号(P5821638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5821638樹脂組成物を用いた複合硬化物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821638
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】樹脂組成物を用いた複合硬化物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20151104BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20151104BHJP
   C08L 81/04 20060101ALI20151104BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20151104BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20151104BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20151104BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20151104BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20151104BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K7/06
   C08L81/04
   C08L71/10
   C08L63/00 A
   C08L79/08 Z
   C08K5/56
   C08K7/02
   C08J5/04CEZ
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2011-552274(P2011-552274)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2011078247
(87)【国際公開番号】WO2012081455
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2010-276775(P2010-276775)
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三辻 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅登
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−231237(JP,A)
【文献】 特開2008−222889(JP,A)
【文献】 特開平05−163349(JP,A)
【文献】 特開平03−088828(JP,A)
【文献】 特開2008−163223(JP,A)
【文献】 特開平05−301962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/14
C08K 3/00 − 13/08
B29BK 11/16
B29BK 15/08 − 15/14
C08J 5/04 − 5/10
C08J 5/24
C08G 79/00 − 79/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)の化合物を含む被重合成分(A)10〜90質量%、および熱硬化性樹脂(B)90〜10質量%からなり(ただし、(A)と(B)の合計を100質量%とする)、構造式(1)の化合物が、主要構成単位として下記構造式(11)のp-フェニレンスルフィド単位を80mol%以上含有する環式化合物であって、さらに0価遷移金属化合物を成分(A)中のXに対して0.001〜20mol%含むとともに、(A)、(B)はそれぞれ単独で、加熱により反応し高分子量化する樹脂組成物を、加熱し反応して複合硬化物を得る複合硬化物の製造方法。
【化1】
(ここで、Arは下記式(2)であり、Xはスルフィドであり、繰り返し数mは2〜50である)
【化2】
(R1、R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。)
【化3】
【請求項2】
前記(B)が、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂から選択されるいずれか1種である請求項1に記載の複合硬化物の製造方法。
【請求項3】
前記0価遷移金属化合物が、周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む化合物である請求項1または2に記載の複合硬化物の製造方法。
【請求項4】
さらに強化繊維(C)を含む請求項1〜3いずれかに記載の複合硬化物の製造方法。
【請求項5】
前記強化繊維(C)が炭素繊維である請求項4に記載の複合硬化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3いずれかに記載の複合硬化物の製造方法であって、樹脂組成物を強化繊維に含浸させた後、前記樹脂組成物を加熱し反応して複合硬化物を得る複合硬化物の製造方法。
【請求項7】
下記構造式(1)の化合物を含む被重合成分(A)および/または当該被重合成分(A)を単独で重合してなる重合体(A’)10〜90質量%、および熱硬化性樹脂(B)を反応させた硬化物(B’)90〜10質量%からなり(ただし、(A)および/または(A’)と、(B’)の合計を100質量%とする)、構造式(1)の化合物が、主要構成単位として下記構造式(11)のp-フェニレンスルフィド単位を80mol%以上含有する環式化合物であって、さらに0価遷移金属化合物を成分(A)中のXに対して0.001〜20mol%含む複合硬化物。
【化4】
(ここで、Arは下記式(2)であり、Xはスルフィドであり、繰り返し数mは2〜50である)
【化5】
(R1、R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。)
【化6】
【請求項8】
さらに強化繊維(C)を含む請求項7に記載の複合硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物を用いた複合硬化物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、成形性、含浸性に優れ、得られる複合硬化物が硬化温度にて脱型可能な樹脂組成物を用いた複合硬化物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途に広く用いられている。これらの繊維強化複合材料に使用される強化繊維は、その使用用途によって様々な形態で成形品を強化している。これらの強化繊維には、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やPBO繊維などの有機繊維、およびシリコンカーバイド繊維などの無機繊維や炭素繊維などが使用されているが、比強度、比剛性および軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好適であり、その中でもポリアクリロニトリル系炭素繊維が好適に用いられる。
【0003】
また、これらの繊維強化複合材料に使用されるマトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが使用されており、それぞれ異なる製造方法が用いられる。
【0004】
マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を用いた繊維強化複合材料の製造方法には、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを複数枚積層した後、加熱硬化させる方法や、モールド中に配置した強化繊維に液状の熱硬化性樹脂を流し込み加熱硬化させるレジン・トランスファー・モールディング法や、強化繊維を液状の熱硬化性樹脂に浸し、含浸させた強化繊維をマンドレル等に巻き付け加熱硬化させるフィラメント・ワインディング法や、強化繊維を液状の熱硬化性樹脂に浸し、含浸させた強化繊維を加熱された金型内を通すことで、加熱硬化させるプルトルージョン法などが用いられている。
【0005】
一般に、熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて弾性率が高いが、靭性や耐久性に劣っていた。熱硬化性樹脂の中でも、強化繊維との接着性などの観点からエポキシ樹脂が好適に用いられてきたが、エポキシ樹脂の靭性や耐久性の向上させる方法として、熱可塑性樹脂を配合する方法が試されてきた。しかし、これらの方法では、大幅に増粘するためプロセス性が悪化し、ボイド発生等の品位低下といった問題があった。
【0006】
例えば、熱可塑性樹脂として、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体や、ブタジエン−メタクリル酸メチルからなるブロック共重合体などのブロック共重合体を添加することにより、エポキシ樹脂の硬化過程で微細な相分離構造を安定して形成し、エポキシ樹脂の靭性を大きく向上させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
例えば、ポリアリーレンスルフィド類を分散媒中でスラリー状にしてガラス繊維マットに含浸させやすくしてプリプレグを製造する方法(特許文献2)や、比較的低分子量のポリアリーレンスルフィドをシート状にして繊維基材と共に積層し、プリプレグを介さずに積層体を製造する方法(特許文献3)が知られている。
【0008】
一方、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いた繊維強化複合材料の製造方法には、強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグ、ヤーン、ガラスマット(GMT)や、コンパウンドペレット、長繊維ペレットなどの成形材料を用いて、任意の成形品を製造する方法が公知である(例えば、特許文献4〜6)。このような成形材料は、熱可塑性樹脂の特性をいかして成形が容易であったり、熱硬化性樹脂のように貯蔵時に硬化が進むことがないので貯蔵の負荷を必要とせず、また得られる成形品の靭性が高く、リサイクル性に優れるといった特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開2006/077153号
【特許文献2】特開平5−39371号公報
【特許文献3】特開平9−25346号公報
【特許文献4】特開2000−355629号公報
【特許文献5】特開2003−80519号公報
【特許文献6】特開2010−121108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示の方法では、熱可塑性樹脂の配合は増粘効果が大きいために、プロセス性を著しく悪くする傾向にある。したがって、プロセス性への影響を小さくするため熱可塑性樹脂の配合量を少なくせざるを得ず、エポキシ樹脂に十分な靭性を付与できない傾向があった。
【0011】
特許文献2に開示の方法では、分散媒の乾燥に設備と時間を要するだけでなく、分散媒を完全に除去することが困難であり、積層成形時に分散媒の揮発による発生するボイドで機械特性が十分に得られない問題がある。また、特許文献3に開示の方法では、高温・高圧の成形条件が必要であり、未含浸などの不良により、やはり機械特性が不十分になってしまう問題があった。
【0012】
さらに、特許文献4〜6に開示されるように熱可塑性樹脂を用いた場合、溶融温度では形状を保てないため、金型で冷却する必要があり、サイクル性が低下する問題があった。また、溶融させた樹脂をプレスにて冷却と同時に成形する方法もあるが、溶融加熱する装置を導入する必要があるため、設備投資費が高くなる問題があった。
【0013】
本発明は、従来技術が有する上記した問題点に鑑み、成形性、含浸性が良好である樹脂組成物を用いた、ボイドが少なく、硬化温度でも脱型可能な複合硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明の複合硬化物の製造方法は、次の構成を有する。すなわち、下記構造式(1)の化合物を含む被重合成分(A)10〜90質量%、および熱硬化性樹脂(B)90〜10質量%からなり(ただし、(A)と(B)の合計を100質量%とする)構造式(1)の化合物が、主要構成単位として下記構造式(11)のp-フェニレンスルフィド単位を80mol%以上含有する環式化合物であって、さらに0価遷移金属化合物を成分(A)中のXに対して0.001〜20mol%含むとともに、(A)、(B)はそれぞれ単独で、加熱により反応し高分子量化する樹脂組成物を、加熱し反応して複合硬化物を得る複合硬化物の製造方法である。
【0015】
【化1】
【0016】
(ここで、Arは下記式(2)であり、Xはスルフィドであり、繰り返し数mは2〜50である)
【0017】
【化2】
【0018】
(R1、R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
【化3】
【0020】
らに、前記課題を解決するため、本発明の複合硬化物は、次の構成を有する。すなわち、下記構造式(1)の化合物を含む被重合成分(A)および/または当該被重合成分(A)を単独で重合してなる重合体(A’)10〜90質量%、および熱硬化性樹脂(B)を反応させた硬化物(B’)90〜10質量%からなり(ただし、(A)および/または(A’)と、(B’)の合計を100質量%とする)構造式(1)の化合物が、主要構成単位として下記構造式(11)のp-フェニレンスルフィド単位を80mol%以上含有する環式化合物であって、さらに0価遷移金属化合物を成分(A)中のXに対して0.001〜20mol%含む複合硬化物である。
【0021】
【化4】
【0022】
(ここで、Arは下記式(2)であり、Xはスルフィドであり、繰り返し数mは、2〜50である)
【0023】
【化5】
【0024】
(R1、R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。)
【0025】
【化6】
【発明の効果】
【0026】
本発明で用いる樹脂組成物は、成形性、含浸性が良好であり、また、本発明によれば、ボイドが少なく、硬化温度で脱型可能な複合硬化物とすることができる。かかる樹脂組成物を用いて得られる本発明の複合硬化物は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、または自動車、航空機の部品、内部部材および筐体などの各種部品・部材に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明で用いる樹脂組成物は、下記構造式(1)の化合物を含む被重合成分(A)(以下、被重合成分(A)を成分(A)ということがある)と熱硬化性樹脂(B)(以下、熱硬化性樹脂(B)を成分(B)ということがある)からなり、成分(A)と成分(B)の合計を100質量%としたときに、成分(A)が10〜90質量%、成分(B)が90〜10質量%の組成を有する。そして、成分(A)、(B)はそれぞれ単独で、加熱により、反応し、高分子量化する特徴を有する。なお、被重合成分とは、重合により重合体の骨格を構成する成分を言う。本発明における樹脂組成物を加熱し反応させると、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂硬化物が複合した複合硬化物が得られる。
【0028】
【化7】
【0029】
(ここで、Arは後述する式(2)であり、Xはスルフィドであり、繰り返し数mは2〜50である)
まず、これらの構成要素について説明する。
【0030】
本発明で用いられる前記構造式(1)の化合物は、−(Ar−X)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、当該繰り返し単位を80mol%以上含有する必要がある。被重合成分(A)は、かかる化合物を、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものが好ましい。Arとしては下記構造式(2)〜(10)などで表される単位などが想定されるが、本発明では下記式(2)であることが必要である。また、Xとしては、エステル、カーボネート、アミド、エーテル、ケトン、スルフィド、スルフォンが想定され、得られる複合硬化物の特性に合わせて選択すれば、例えば、エステル、カーボネート、アミドは耐衝撃性に優れ、エーテル、ケトンは耐久性、耐水性に優れ、スルフィド、スルフォンは機械特性、難燃性に優れる傾向にあるが、本発明ではスルフィドとすることが必要である
【0031】
【化8】
【0032】
(R1、R2、R3、R4は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1、R2、R3、R4は同一でも異なっていてもよい。R5は、炭素原子数1〜12のアルキル鎖である。)
なお、前記構造式(1)においては、異なる−(Ar−X)−の繰り返し単位をランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらが混合していてもよい。また、前記構造式(2)〜(10)などの繰り返し単位もランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらが混合していてもよい。
【0033】
記構造式(1)の化合物としては、主要構成単位として下記構造式(11)のp-フェニレンスルフィド単位を80mol%以上、好ましくは90mol%以上含有する環式化合物であることが重要である
【0034】
【化9】
【0035】
前記構造式(1)中の繰り返し数m、2〜50であることが必要であり、2〜25が好ましく、2〜15がより好ましい。後述するように化合物(A)の加熱による重合体(A’)への転化は化合物(A)が溶融解する温度以上で行うことが好ましいが、mが大きくなると化合物(A)の溶融解温度が高くなる傾向にあるため、化合物(A)の重合体(A’)への転化をより低い温度で行うことができるようになるのでmを前記範囲にすることは有利となる。
【0036】
また、成分(A)は、前記構造式(1)の化合物として、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物のいずれを含んでもよいが、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の使用は重合体(A’)への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
【0037】
成分(A)には、前記構造式(1)の化合物以外に、−(Ar−X)−の繰り返し単位を主要構成単位とするオリゴマーを含んでいてもよい。好ましくは当該繰り返し単位を80mol%以上含有する線状のホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記した構造式(2)〜(10)などで表される単位などがある。−(Ar−X)−の繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記構造式(12)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。
【0038】
【化10】
【0039】
これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−X)−の単位1molに対して0〜1mol%の範囲であることが好ましい。また、前記オリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
【0040】
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、ポリフェニレンエーテルケトンオリゴマー、ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマー、ポリフェニレンエーテルスルフォンオリゴマー、芳香族ポリカーボネートオリゴマー、ポリエチレンテレフタレートオリゴマー、ポリブチレンテレフタレートオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp-フェニレンスルフィド単位を80mol%以上、特に90mol%以上含有するポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
【0041】
前記オリゴマーの分子量としては、重量平均分子量で10,000未満であることが好ましい。より好ましくは、前記オリゴマーの重量平均分子量が8,000未満であり、5,000未満がさらに好ましい。一方、前記オリゴマーの重量平均分子量の下限値は300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上がさらに好ましい。
【0042】
成分(A)が前記オリゴマーを含有する場合、そのオリゴマー量は、前記構造式(1)の化合物よりも少ないことが特に好ましい。即ち成分(A)中の前記構造式(1)の化合物と前記オリゴマーの重量比(前記構造式(1)/前記オリゴマー)は1を超えることが好ましく、2.3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、9以上がよりいっそう好ましい。このような成分(A)を用いることで重量平均分子量が10,000以上の重合体(A’)を容易に得ることが可能である。
【0043】
成分(A)を用いることで得られる重合体(A’)とは、−(Ar−X)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80mol%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては前記の構造式(2)〜(10)などで表される単位などが想定されるが、本発明では構造式(2) であることが必要である。また、Xとしては、エステル、カーボネート、アミド、エーテル、ケトン、スルフィド、スルフォンが想定され、得られる複合硬化物の特性に合わせて選択すれば、例えば、エステル、カーボネート、アミドは耐衝撃性に優れ、エーテル、ケトンは耐久性、耐水性に優れ、スルフィド、スルフォンは機械特性、難燃性に優れる傾向にあるが、本発明ではスルフィドとすることが必要である
【0044】
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、上記構造式(12)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−X)−の単位1molに対して0〜1mol%の範囲であることが好ましい。
【0045】
また、本発明における重合体(A’)は上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
【0046】
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンエーテルケトン、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテルスルフォン、芳香族ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートこれらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましくは、ポリマーの主要構成単位として、上記構造式(11)のp-フェニレンスルフィド単位を80mol%以上、特に90mol%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
【0047】
重合体(A’)の好ましい分子量は、重量平均分子量で10,000以上、より好ましくは15,000以上、さらに好ましくは17,000以上である。重量平均分子量が10,000以上であると、複合硬化物の靭性や難燃性などの特性に優れる。
【0048】
また、成分(A)を重合体(A’)へ転化させる場合の転化率は70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。転化率が70%以上であると前述した特性を有する重合体(A’)を得ることができる。
【0049】
また、成分(A)は、加熱により高分子量化し、重合体(A’)が得られるが、ラジカル発生能を有する化合物などを重合触媒として用いて反応を促進させるのがよい。かかる重合触媒としては、0価遷移金属化合物が用いられ、成分(A)を0価遷移金属化合物存在下に加熱することによって重合体(A’)を容易に得ることができるため、好ましい。
【0050】
0価遷移金属としては、好ましくは、周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属が好ましく用いられる。例えば金属種として、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、ルテニウム、ロジウム、銅、銀、金が例示できる。0価遷移金属化合物としては、各種錯体が適しているが、例えば配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ジベンジリデンアセトン、ジメトキシジベンジリデンアセトン、シクロオクタジエン、カルボニルの錯体が挙げられる。具体的にはビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、[P,P’−1,3−ビス(ジ-i-プロピルホスフィノ)プロパン][P−1,3−ビス(ジ-i-プロピルホスフィノ)プロパン]パラジウム、1,3−ビス(2,6−ジ-i-プロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム二量体、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム二量体、ビス(3,5,3’,5’−ジメトキシジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、テトラキス(トリフルオロホスフィン)白金、エチレンビス(トリフェニルホスフィン)白金、白金−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ドデカカルボニル三鉄、ペンタカルボニル鉄、ドデカカルボニル四ロジウム、ヘキサデカカルボニル六ロジウム、ドデカカルボニル三ルテニウムなどが例示できる。これらの重合触媒は、1種単独で用いてもよいし2種以上混合あるいは組み合わせて用いてもよい。
【0051】
これらの重合触媒は、上記のような0価遷移金属化合物を添加してもよいし、系内で0価遷移金属化合物を形成させてもよい。ここで後者のように系内で0価遷移金属化合物を形成させるには、遷移金属の塩などの遷移金属化合物と配位子となる化合物を添加することで、系内で遷移金属の錯体を形成させる方法、あるいは、遷移金属の塩などの遷移金属化合物と配位子となる化合物で形成された錯体を添加する方法などが挙げられる。0価以外の遷移金属塩は成分(A)の転化を促進しないため、配位子となる化合物の添加が必要である。以下に本発明で使用される遷移金属化合物と配位子、及び、遷移金属化合物と配位子で形成された錯体の例を挙げる。系内で0価遷移金属化合物を形成させるための遷移金属化合物としては、例えば、種々の遷移金属の酢酸塩、ハロゲン化物などが例示できる。ここで遷移金属種としては例えば、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、ルテニウム、ロジウム、銅、銀、金の酢酸塩、ハロゲン化物などが例示でき、具体的には酢酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、硫化ニッケル、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硫化パラジウム、塩化白金、臭化白金、酢酸鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、酢酸ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、酢酸ロジウム、塩化ロジウム、臭化ロジウム、酢酸銅、塩化銅、臭化銅、酢酸銀、塩化銀、臭化銀、酢酸金、塩化金、臭化金などが挙げられる。また、系内で0価遷移金属化合物を形成させるために同時に添加する配位子としては、成分(A)と遷移金属化合物とを加熱した際に0価の遷移金属を生成するものであれば特に限定はされないが、塩基性化合物が好ましく、例えばトリフェニルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ジベンジリデンアセトン、炭酸ナトリウム、エチレンジアミンなどが挙げられる。また、遷移金属化合物と配位子となる化合物で形成された錯体としては、上記のような種々の遷移金属塩と配位子からなる錯体が挙げられる。具体的にはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジアセタート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウムジクロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド、ジクロロ(1,5’−シクロオクタジエン)パラジウム、ビス(エチレンジアミン)パラジウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケルジクロリド、ジクロロ(1,5’−シクロオクタジエン)白金などが例示できる。これらの重合触媒及び配位子は、1種単独で用いてもよいし2種以上混合あるいは組み合わせて用いてもよい。
【0052】
遷移金属化合物の価数状態は、X線吸収微細構造(XAFS)解析により把握が可能である。本発明において触媒として用いられる遷移金属化合物または遷移金属化合物と成分(A)の混合物または遷移金属化合物と重合体(A’)の混合物にX線を照射し、その吸収スペクトルを規格化した際の吸収係数のピーク極大値を比較することで把握できる。
【0053】
例えばパラジウム化合物の価数を評価する場合、L3端のX線吸収端近傍構造(XANES)に関する吸収スペクトル(Pd−L端XANES)を比較することが有効であり、X線のエネルギーが3,173eVの点を基準とし、3,163〜3,168eVの範囲内の平均吸収係数を0と規格化し、3,191〜3,200eVの範囲内の平均吸収係数を1と規格化した際の吸収係数のピーク極大値を比較することで判断が可能である。パラジウムの例においては、2価のパラジウム化合物に対して、0価のパラジウム化合物では規格化した際の吸収係数のピーク極大値が小さい傾向があり、さらに、環式ポリアリーレンスルフィドの転化を促進する効果が大きい遷移金属化合物ほどピーク極大値が小さい傾向がある。この理由は、XANESに関する吸収スペクトルは内殻電子の空軌道への遷移に対応しており、吸収ピーク強度はd軌道の電子密度に影響されるためと推測している。
【0054】
パラジウム化合物が成分(A)の重合体(A’)への転化を促進するためには、規格化した際の吸収係数のピーク極大値が6以下であることが好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下であり、この範囲内とすると、成分(A)の転化を促進することができる。
【0055】
具体的には、ピーク極大値は、成分(A)の転化を促進しない2価の塩化パラジウムでは6.32、成分(A)の転化を促進する0価のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウムではそれぞれ3.43及び2.99及び2.07である。
【0056】
また、(A)の重合触媒として、アニオン重合開始剤も一般には考えられる。アニオン重合開始剤としては、無機アルカリ金属塩または有機アルカリ金属塩などのアルカリ金属塩を例示することができ、無機アルカリ金属塩としてはフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化リチウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物を例示でき、また有機アルカリ金属塩としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドまたは、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、ナトリウム−4−フェノキシフェノキシド、カリウム−4−フェノキシフェノキシドなどのアルカリ金属フェノキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩を例示することができる。
【0057】
使用する0価遷移金属化合物の濃度は、目的とする重合体(A’)の分子量ならびに重合触媒の種類により異なるが、成分(A)中のXに対して0.001〜20mol%、好ましくは0.005〜15mol%、さらに好ましくは0.01〜10mol%である。0.001mol%以上とすると、成分(A)は重合体(A’)へ十分に転化し、20mol%以下では前述した特性を有する重合体(A’)を得ることができる。
【0058】
前記重合触媒の添加に際しては、そのまま添加すればよいが、成分(A)に重合触媒を添加した後、均一に分散させることが好ましい。均一に分散させる方法として、例えば機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法などが挙げられる。機械的に分散させる方法として、具体的には粉砕機、撹拌機、混合機、振とう機、乳鉢を用いる方法などが例示できる。溶媒を用いて分散させる方法として、具体的には成分(A)を適宜な溶媒に溶解または分散し、これに重合触媒を所定量加えた後、溶媒を除去する方法などが例示できる。また、重合触媒の分散に際して、重合触媒が固体である場合、より均一な分散が可能となるため重合触媒の平均粒径は1mm以下であることが好ましい。
【0059】
本発明で用いられる成分(B)としては、特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0060】
ここで、熱硬化性樹脂としては、熱を加えることで、3次元の架橋反応を行いながら高分子量化し、再度加熱しても溶融しないものを示す。例えば、エポキシ樹脂において、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの化合物、いわゆる主剤単独では、通常の加熱では高分子量化できないため、熱硬化性樹脂とはいえず、硬化剤や触媒と混合することで熱硬化性樹脂となる。中でも耐熱性の観点から、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。
【0061】
また、成分(B)には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の充填材や添加剤を添加しても良い。これらの例としては、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤が挙げられる。
【0062】
本発明で用いる樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)の合計を100質量%としたときに、成分(A)10〜90質量%、成分(B)90〜10質量%からなる。好ましくは成分(A)15〜85質量%、成分(B)85〜15質量%であり、さらに好ましくは成分(A)25〜75質量%、成分(B)75〜25質量%である。成分(A)を10〜90質量%有することで、靭性や難燃性等の熱可塑性樹脂としての特性が向上でき、成分(B)を90〜10質量%有することで、硬化温度でも脱型可能である。
【0063】
また、本発明で用いる樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、強化繊維(C)(以下、強化繊維(C)を成分(C)ということがある)を含んでいても良い。
【0064】
本発明に用いられる成分(C)としては、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維などの高強度、高弾性率繊維が使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、成形品の軽量化効果の観点から好ましく、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。
【0065】
(C)の形態や配列は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に引き揃えられた連続繊維、単一のトウ、織物、ニット、不織布、マットおよび組紐などの繊維構造物が用いられる。また、特に、比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、連続繊維の形態であることが好ましい。この場合、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
【0066】
本発明では、かかる樹脂組成物を加熱し反応させて複合硬化物を製造する。
【0067】
まず、工程(I)として、上記した成分(A)と成分(B)を混合して樹脂組成物を得る。ここで、工程(I)としては、特に限定されないが、上記成分(A)、(B)が均一に分散していれば良い。均一に分散させる方法として、例えば、成分(A)、(B)を加熱溶融させて、分散させる方法、機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法などが挙げられる。好ましくは、成分(A)、(B)を加熱溶融させて、分散させる方法である。具体的には、押出機、ニーダー等が挙げられる。また、この際の加熱温度は、成分(A)、(B)の反応温度以下であることが好ましい。また、反応温度が成分(A)、(B)いずれかの成分の融点よりも低い場合には、硬化剤や触媒は、冷却後に添加し混合することが好ましい。
【0068】
次いで、工程(II)として、得られた樹脂組成物を加熱し反応させて複合硬化物を得る。工程(II)での条件は、前述する複合硬化物中の重合体(A’)への転化率に影響する。成分(A)の反応が進行する前に成分(B)が反応、硬化する場合、複合硬化物中に成分(A)のまま残存するし、一方、成分(A)の反応が進行すると共に、もしくは、反応完了後に成分(B)が反応、硬化する場合、複合硬化物中に成分(A)は、重合体(A’)に転化した状態で残存する。
【0069】
また、本発明において複合硬化物を製造する際の具体的な加熱温度は、樹脂組成物の組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、100℃以上が例示でき、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。この下限温度範囲とすると、短時間で複合硬化物を得ることができ、一方、分解反応等の副反応が生じにくく、得られる複合硬化物の特性が低下することを防げる。加熱温度の上限としては、450℃以下が例示でき、好ましくは400℃以下、より好ましくは380℃以下、さらに好ましくは360℃以下、特に好ましくは300℃以下である。この上限温度範囲とすると、分解反応等の悪影響を抑制できる傾向にある。
【0070】
反応時間は、使用する成分(A)、(B)の各種特性、また、加熱の温度などの条件によって異なるため一様には規定できないが、分解反応などがなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては0.01〜100時間が例示でき、0.05〜20時間が好ましく、0.05〜10時間がより好ましい。本発明の好ましい樹脂組成物によれば、2時間以下で行うことも可能である。加熱時間としては2時間以下、さらには1時間以下、0.5時間以下、0.3時間以下、0.2時間以下が例示できる。
【0071】
また、樹脂組成物を複合硬化物へ転換するに際し、実質的に溶媒を含まない条件下で行うことが可能である。このような条件下で行う場合、短時間での昇温が可能であり、反応速度が高く、短時間で複合硬化物を得やすくなる傾向がある。ここで実質的に溶媒を含まない条件とは、樹脂組成物中の溶媒が10重量%以下であることを指し、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。
【0072】
加熱の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、非酸化性雰囲気下で行うことで、架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは、酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、加熱は、加圧条件下で行うことも可能である。加圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから加圧条件にすることが好ましい。なお、加圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも高いことを指し、上限としては特に制限はないが、反応装置の取り扱いの容易さの面からは0.2MPa以下が好ましい。このような条件下で行う場合、加熱時に重合触媒が揮散しにくい傾向にあり、短時間で複合硬化物を得ることができる。
【0073】
さらに上記成分(A)、(B)に加えて成分(C)を含む場合、工程(I)で得られた混合物を成分(C)に含浸させる工程(I’)を経て、工程(II)を行い、樹脂組成物を得ることが好ましい。そして、かかる樹脂組成物を加熱し反応して複合硬化物を得るのである。
【0074】
工程(I)で得られた混合物を含浸させる工程としては、特に限定されないが、溶融した成分(A)、(B)に成分(C)を浸し含浸させる方法や、溶媒に溶解させた成分(A)、(B)に成分(C)を浸し、溶媒を揮発させることで含浸させる方法が用いることができる。
【0075】
また、成分(C)が一方向に引き揃えられた連続繊維である場合、前記工程(I’)の前段階で、成分(C)を予め開繊してもよい。開繊とは収束された成分(C)を分繊させる操作であり、樹脂組成物の含浸性をさらに高める効果が期待できる。成分(C)の開繊方法としては、特に制限はなく、例えば凹凸ロールを交互に通過させる方法、太鼓型ロールを使用する方法、軸方向振動に張力変動を加える方法、垂直に往復運動する2個の摩擦体による成分(C)の張力を変動させる方法、成分(C)にエアを吹き付ける方法を利用できる。
【0076】
本発明で得られる樹脂組成物の成形方法としては、特に限定しないが、射出成形、オートクレーブ成形、プレス成形、フィラメントワインディング成形、スタンピング成形、レジントランスファーモールディング成形(RTM成形)などの生産性に優れた成形方法に適用でき、これらを組み合わせて用いることができる。
【0077】
本発明において、樹脂組成物を硬化して得られる複合硬化物は、前記成分(A)および/または当該成分(A)を単独で重合してなる重合体(A’)と、前記成分(B)を反応させた硬化物(B’)の合計を100質量%としたときに、前記成分(A)および/または当該成分(A)を単独で重合してなる重合体(A’)10〜90質量%、前記成分(B)を反応させた硬化物(B’)90〜10質量%からなる。好ましくは成分(A)および/または重合体(A’)15〜85質量%、硬化物(B’)85〜15質量%であり、さらに好ましくは成分(A)および/または重合体(A’)25〜75質量%、硬化物(B’)75〜25質量%である。成分(A)および/または重合体(A’)を10〜90質量%有することで、靭性や難燃性等の熱可塑性樹脂としての特性向上ができ、硬化物(B’)を90〜10質量%有することで、硬化温度でも脱型可能である。成分(B’)において、成分(A)は重合体(A’)へ転化していることが好ましいが、成分(A)のまま複合硬化物中に存在していても、ある程度の各種特性の向上効果がある。
【0078】
上記成形方法により得られる成形品としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナ、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品、部材および外板、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、モンキー、レンチ等の工具類、さらに電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、光ディスク、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品も挙げられる。またパーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材も挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。なお、実施例1〜15のうち、(A)-2を用いる例が本発明の実施例となる。
(1)複合硬化物の脱型可能性の判定
得られた複合硬化物を再度硬化温度に加熱した際に、溶融し形状を保持できないものを脱型不可能とした。
(2)複合硬化物の空隙率測定
(1)で脱型可能であると判定した水準について、ASTM D2734 (1997)試験法に準拠して、複合硬化物の空隙率(%)を算出した
【0080】
複合硬化物の空隙率の判定は以下の基準でおこない、A〜Cを合格とした。
A:0〜10%未満
B:10%以上20%未満
C:20%以上40%未満
D:40%以上
【0081】
参考例1(環状ポリフェニレンスルフィド(A)-1および(A)-2の調製)
(A)-1の調整
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を14.03g(0.120mol)、96%水酸化ナトリウムを用いて調製した48重量%水溶液12.50g(0.144mol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)615.0g(6.20mol)、及びp-ジクロロベンゼン(p-DCB)18.08g(0.123mol)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。
【0082】
400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて昇温した。この段階で、反応容器内の圧力はゲージ圧で0.35MPaであった。次いで200℃から270℃まで約30分かけて昇温した。この段階の反応容器内の圧力はゲージ圧で1.05MPaであった。270℃で1時間保持した後、室温近傍まで急冷してから内容物を回収した。
【0083】
得られた内容物をガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、モノマーのp-DCBの消費率は93%、反応混合物中のイオウ成分がすべて環式PPSに転化すると仮定した場合の環式PPS生成率は18.5%であることがわかった。
【0084】
得られた内容物500gを約1,500gのイオン交換水で希釈したのちに平均目開き10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。フィルターオン成分を約300gのイオン交換水に分散させ、70℃で30分攪拌し、再度前記同様の濾過を行う操作を計3回行い、白色固体を得た。これを80℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体を得た。
【0085】
得られた固形物を円筒濾紙に仕込み、溶剤としてクロロホルムを用いて約5時間ソックスレー抽出を行うことで固形分に含まれる低分子量成分を分離した。
【0086】
抽出操作後に円筒濾紙内に残留した固形成分を70℃で一晩減圧乾燥しオフホワイト色の固体を約6.98g得た。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルよりこれはフェニレンスルフィド構造からなる化合物であり、また、重量平均分子量は6,300であった。
【0087】
クロロホルム抽出操作にて得られた抽出液から溶媒を除去した後、約5gのクロロホルムを加えてスラリーを調製し、これを約300gのメタノールに攪拌しながら滴下した。これにより得られた沈殿物を濾過回収し、70℃で5時間真空乾燥を行い、1.19gの白色粉末を得た。この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M-1200H)、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末はp-フェニレンスルフィド単位を主要構成単位とし繰り返し単位数4〜13の環式化合物を約99重量%含み、本発明に好適に用いられる化合物(A)-1であることが判明した。なお、GPC測定を行った結果、(A)-1は室温で1−クロロナフタレンに全溶であり、重量平均分子量は900であった。
【0088】
(A)-2の調整
上記方法で得られた(A)-1に、(A)-1中の硫黄原子に対してテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを1mol%混合し、(A)-2を調整した。
【0089】
参考例2(環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン(A)-3の調製)
ここでは、特表2007−506833号公報の実施例に記載の一般的な方法によるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの製造方法に準じた合成について記す。
【0090】
攪拌機、窒素吹き込み管、ディーン・スターク装置、冷却管、温度計を具備した4つ口フラスコに4、4’−ジフルオロベンゾフェノン22.5g(103mmol)、ヒドロキノン11.0g(100mmol)、およびジフェニルスルホン49gを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0molに対するジフェニルスルホンの量は約0.16リットルである。窒素を通じながら140℃にまで昇温したところ、ほぼ無色の溶液を形成した。この温度で無水炭酸ナトリウム10.6g(100mmol)及び無水炭酸カリウム0.28g(2mmol)を加えた。温度を200℃に上げて1時間保持し、250℃に上げて1時間保持、次いで315℃に上げて3時間保持した。
【0091】
得られた反応混合物を高速液体クロマトグラフィーにて分析した結果、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は1%未満と痕跡量であった。
【0092】
反応混合物を放冷して粉砕し、水およびアセトンで洗浄することにより、副生塩及びジフェニルスルホンを洗浄除去した。得られたポリマーを熱風乾燥機中、120℃で乾燥させて粉末を得た。
【0093】
得られた粉末約1.0gを、クロロホルム100gを用いて浴温80℃で5時間ソックスレー抽出を行った。得られた抽出液からエバポレーターを用いてクロロホルムを除去して少量のクロロホルム可溶成分を得た。この回収したクロロホルム可溶成分の、反応に用いたヒドロキノンに対する収率は1.2%であった。高速液体クロマトグラフィーにより、回収したクロロホルム可溶成分の分析を行った結果、このクロロホルム可溶成分中には環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンおよび線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーが含まれていることが分かった。この線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーは溶剤溶解性などの特性が環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと類似しており、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからの分離が困難な化合物である。上記の回収したクロロホルム可溶成分中に含まれる環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物は、繰り返し数m=4およびm=5からなり、さらに繰り返し数m=4の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が80%以上を占めるものであり、本発明に好適に用いられる化合物(A)-3であることが判明した。また、(A)-3の融点は約320℃であった。
【0094】
参考例3(環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン(A)-4および(A)-5の調製)
(A)-4の調整
攪拌機、窒素吹き込み管、ディーン・スターク装置、冷却管、温度計を具備した4つ口フラスコに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン2.40g(11mmol)、ヒドロキノン1.10g(10mmol)、無水炭酸カリウム1.52g(11mmol)、ジメチルスルホキシド100mL、トルエン10mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0molに対するジメチルスルホキシドの量は3.13リットルである。窒素を通じながら140℃まで昇温し、140℃で1時間保持、その後160℃にまで昇温し160℃で4時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
【0095】
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約4.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対するポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーの収率は15.3%であった。
【0096】
このようにして得られた反応混合物50gを分取し、1重量%酢酸水溶液150gを加えた。撹拌してスラリー状にした後、70℃に加熱して30分間撹拌を継続した。スラリーをガラスフィルター(平均孔径10〜16μm)で濾過して固形分を得た。得られた固形分を脱イオン水50gに分散させ70℃で30分間保持して濾過して固形分を得る操作を3回繰り返した。得られた固形分を70℃で一晩真空乾燥に処し、乾燥固体約1.24gを得た。
【0097】
さらに、上記で得られた乾燥固体1.0gをクロロホルム100gを用いて、浴温80℃で5時間ソックスレー抽出を行った。得られた抽出液からエバポレーターを用いてクロロホルムを除去して固形分を得た。この固形分にクロロホルム2gを加えた後、超音波洗浄器を用いて分散液として、メタノール30gに滴下した。これにより生じた析出成分を平均ポアサイズ1μmの濾紙を用いて濾別後、70℃で3時間真空乾燥に処し、白色固体を得た。得られた白色固体は0.14g、反応に用いたヒドロキノンに対する収率は14.0%であった。
【0098】
この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンエーテルケトン単位からなる化合物であることを確認、また高速液体クロマトグラフィーにより成分分割したマススペクトル分析(装置;日立製M-1200H)、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報により、この白色粉末は繰り返し数mが2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物を主要成分とするポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマー(A)-4であることが分かった。また、(A)-4中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は81%であった。なお、(A)-4中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。(A)-4の融点を測定した結果、163℃の融点を有することが分かった。また、還元粘度を測定した結果、(A)-4は0.02dL/g未満の還元粘度を有していることが分かった。
【0099】
また、上記したソックスレー抽出によるポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマー(A)-4の回収における、クロロホルム不溶の固形成分を70℃で一晩真空乾燥に処しオフホワイト色の固形分約0.85gを得た。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンであることを確認した。また、還元粘度の測定を行った結果、この線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは0.45dL/gの還元粘度を有していることが分かった。
【0100】
(A)-5の調整
上記方法で調製した(A)-4に、重合触媒としてフッ化セシウムをポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーの主要構成単位である式−(O−Ph−O−Ph−CO−Ph)−の繰り返し単位に対して5mol%となるよう添加し、230℃の溶融バス中で溶融・混合し、(A)-5を調整した。
【0101】
(実施例1)
ニーダー中にて、成分(A)として、参考例1に従い得られる(A)-1を15質量%用い、成分(B)として熱硬化ポリイミド樹脂(B)-1(宇部興産(株)製PETI-330)を85質量%用いて、混練しつつ、250℃まで昇温し、30分混練することで、均一な熱硬化性樹脂組成物を得た。次いで、真空中で脱泡した後、厚み1mmになるように設定した100mm×100mmの金型に流し込み、360℃にて、1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表1に示した。
【0102】
(実施例2)
(A)-1を50質量%、(B)-1を50質量%に配合量を変更して用いた以外は、実施例1と同様にして、複合硬化物を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0103】
(実施例3)
(A)-1を85質量%、(B)-1を15質量%に配合量を変更して用いた以外は、実施例1と同様にして、複合硬化物を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
【0104】
(実施例4)
(A)-1の代わりに、参考例1に従い調整した(A)-2を用いた以外は、実施例2と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表1に示した。
【0105】
(実施例5)
ニーダー中にて、成分(A)として、参考例1に従い得られる(A)-1を50質量%用い、成分(B)としてエポキシ樹脂組成物(B)-2(三菱化学(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER(登録商標)828を100質量部と、三菱化学(株)製ジシアンジアミド、DICY7Tを15質量部と、保土ヶ谷化学社製3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、DCMU99を2質量部との混合物)を50質量%用いて、混練しつつ、100℃まで昇温し、30分混練することで、均一な熱硬化性樹脂組成物を得た。次いで、真空中で脱泡した後、厚み1mmになるように設定した100mm×100mmの金型に流し込み、130℃にて、1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表1に示した。
【0106】
(実施例6)
ニーダー中にて、(A)-1を25質量%、(B)-1を25質量%用いて、混練しつつ250℃まで昇温し、30分混練することで樹脂組成物を得た。(C)-1(東レ(株)製炭素繊維:T700S-24K)を50質量%用い、金型内に(C)-1を一方向に設置した後、樹脂組成物を流し込み、真空脱泡することで、繊維内へ含浸させた後、360℃にて1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表1に示した。
【0107】
(実施例7)
(C)-1の代わりに、(C)-2(日東紡績(株)製ガラス繊維:RS460A-782)を用いた以外は、実施例6と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表1に示した。
【0108】
(実施例8)
ニーダー中にて、成分(A)として、参考例2に従い得られる(A)-3を50質量%用い、成分(B)として熱硬化ポリイミド樹脂(B)-1(宇部興産(株)製PETI-330)を50質量%用いて、混練しつつ、250℃まで昇温し、30分混練することで、均一な熱硬化性樹脂組成物を得た。次いで、真空中で脱泡した後、厚み1mmになるように設定した100mm×100mmの金型に流し込み、360℃にて、1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0109】
(実施例9)
(A)-3の代わりに、参考例3に従い調整した(A)-4を用いた以外は、実施例8と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0110】
(実施例10)
(A)-3の代わりに、参考例3に従い調整した(A)-5を用いた以外は、実施例8と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0111】
(実施例11)
(B)−2の代わりに、(B)-3(住友化学(株)製テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ELM434を100質量部と、和歌山精化工業(株)製4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、“セイカキュア(登録商標)”−Sを31質量部との混合物)を用い、硬化温度を220℃にて硬化させた以外は、実施例5と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0112】
(実施例12)
ニーダー中にて、成分(A)として、参考例1に従い得られる(A)-1を50質量%用い、成分(B)としてビスマレイミド樹脂(B)-4(大和化成工業(株)製ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、BMI-4000)を50質量%用いて、混練しつつ、170℃まで昇温し、15分混練することで、均一な熱硬化性樹脂組成物を得た。次いで、真空中で脱泡した後、厚み1mmになるように設定した100mm×100mmの金型に流し込み、220℃にて、1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0113】
(実施例13)
ニーダー中にて、(A)-1を25質量%、(B)-1を25質量%用いて、混練しつつ250℃まで昇温し、30分混練することで樹脂組成物を得た。(C)-3(東レ(株)製炭素繊維織物:CO6343(平織、目付198g/m))を50質量%用い、金型内に(C)-3を設置した後、樹脂組成物を流し込み、真空脱泡することで、繊維内へ含浸させた後、360℃にて1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0114】
(実施例14)
ニーダー中にて、(A)-1を25質量%、(B)-3を25質量%用いて、混練しつつ100℃まで昇温し、30分混練することで樹脂組成物を得た。(C)-1を50質量%用い、金型内に(C)-1を一方向に設置した後、樹脂組成物を流し込み、真空脱泡することで、繊維内へ含浸させた後、220℃にて1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0115】
(実施例15)
ニーダー中にて、(A)-3を25質量%、(B)-1を25質量%用いて、混練しつつ250℃まで昇温し、30分混練することで樹脂組成物を得た。(C)-1を50質量%用い、金型内に(C)-1を一方向に設置した後、樹脂組成物を流し込み、真空脱泡することで、繊維内へ含浸させた後、360℃にて1時間加熱し、複合硬化物を得た。評価結果を、まとめて表2に示した。
【0116】
(比較例1)
(A)-1を100質量%用い、(B)-1を用いなかったこと以外は実施例1と同様に実験したが、360℃において、脱型できず、良好な成形品を得ることができなかった。評価結果を、まとめて表3に示した。
【0117】
(比較例2)
(A)-1の代わりに、PPS−1(東レ(株)製ポリフェニレンスルフィド樹脂:“トレリナ”(登録商標))を50質量%用いたこと以外は、実施例5と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果は、まとめて表3に示した。
【0118】
(比較例3)
(A)-1の代わりに、PPS−1(東レ(株)製ポリフェニレンスルフィド樹脂: “トレリナ”(登録商標))を100質量%用い、(B)-1を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に実験したが、360℃において、脱型できず、良好な成形品を得ることができなかった。評価結果を、まとめて表3に示した。
【0119】
(比較例4)
(A)-1を50質量%、(C)-1を50質量%用い、(B)-1を用いなかったこと以外は実施例6と同様に実験したが、360℃において、脱型できず、良好な成形品を得ることができなかった。評価結果を、まとめて表3に示した。
【0120】
(比較例5)
(A)-1の代わりに、PPS−1(東レ(株)製ポリフェニレンスルフィド樹脂: “トレリナ”(登録商標))を25質量%用いたこと以外は実施例6と同様に実験した。評価結果を、まとめて表3に示した。
【0121】
(比較例6)
(A)-1の代わりに、PEEK−1(“VICTREX”(登録商標)PEEKTM151G(ビクトレックス・エムシー(株)製ポリエーテルエーテルケトン樹脂、融点343℃))を100質量%用い、(B)-1を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に実験したが、360℃において、脱型できず、良好な成形品を得ることができなかった。評価結果を、まとめて表3に示した。
【0122】
(比較例7)
(A)-3の代わりに、PEEK−1(“VICTREX”(登録商標)PEEKTM151G(ビクトレックス・エムシー(株)製ポリエーテルエーテルケトン樹脂、融点343℃))を50質量%用いたこと以外は、実施例8と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果は、まとめて表3に示した。
【0123】
(比較例8)
(A)-3の代わりに、PEEK−1(“VICTREX”(登録商標)PEEKTM151G(ビクトレックス・エムシー(株)製ポリエーテルエーテルケトン樹脂、融点343℃))を25質量%用いたこと以外は、実施例15と同様にして、複合硬化物を得た。評価結果は、まとめて表3に示した。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
以上のように、実施例1〜15においては、本発明における樹脂組成物により、成形性が良く、ボイドの少ない複合硬化物が得られた。
【0128】
一方比較例1〜8においては、硬化温度にて脱型が困難な樹脂組成物、または脱型できる熱硬化性樹脂であってもボイドが多く、良好な成形材料は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明で用いる樹脂組成物は、環状化合物を含有することで、成形性、含浸性に優れる樹脂組成物であり、得られる複合硬化物は、ボイドが少なく、靭性や難燃性等に優れる複合硬化物を得ることが可能であり、種々の用途に展開できる。特に自動車用途、航空機用途、電気・電子部品、家庭・事務電気製品部品に好適である。