特許第5824790号(P5824790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許5824790-スチールワイヤ巻取用の樹脂リール 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5824790
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】スチールワイヤ巻取用の樹脂リール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/14 20060101AFI20151112BHJP
【FI】
   B65H75/14
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-173647(P2010-173647)
(22)【出願日】2010年8月2日
(65)【公開番号】特開2012-30958(P2012-30958A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】末藤 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】加山 和義
(72)【発明者】
【氏名】梁取 和人
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−001950(JP,A)
【文献】 特開2002−187988(JP,A)
【文献】 特開平09−070835(JP,A)
【文献】 特開2006−083878(JP,A)
【文献】 特開2007−211111(JP,A)
【文献】 特開平08−041285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00−75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻胴の両端にフランジを有するように一体成形された樹脂材料からなり、該樹脂材料に使用される樹脂がABS樹脂のみである樹脂リールであって、前記ABS樹脂中のブタジエンの組成割合が5〜8重量%であることを特徴とするスチールワイヤ巻取用の樹脂リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールワイヤ巻取用の樹脂リールに関し、更に詳しくは、巻き不良を防止するとともに、リール耐久性、耐衝撃性が向上するようにしたスチールワイヤ巻取用樹脂リールに関する。
【背景技術】
【0002】
スチールワイヤはコンベヤベルト、ホースなどのゴム製品用の補強材として多く使用されている。このスチールワイヤは、スチールワイヤメーカーからゴム製品メーカーに対して、リール上に層状に巻き取った状態にして供給される。一般に、スチールワイヤ巻取用のリールは、巻胴の両端にフランジを取り付けた構造のものが使用されており、近年では軽量で搬送に有利な樹脂製のもので、かつ、特許文献1に開示されるように巻胴とフランジとが一体成形されたものが使用されるようになっている。
【0003】
一方、材料の調達先の国際化により、スチールワイヤも海外メーカーから調達することが多くなっている。このように海外から材料を調達する場合、海外メーカーでリールに巻き取られたスチールワイヤは船で高温の船倉に留置された状態で輸送される。また、国内に搬送された後もゴム製品メーカーの倉庫で一定期間保管される。しかる後にピックアップされて、スチールワイヤがリールから巻き返される。空になったリールは再び海外のスチールワイヤメーカーに戻され、上記のスチールワイヤの巻き取り、搬送、巻き返しが幾度となく繰り返される。
【0004】
上記のように、樹脂リールは、スチールワイヤの巻き取りから巻き返しまでの1サイクルの間に、大きな温度変化履歴を受けるため、このような過酷な温度条件下では、樹脂リール自体が変形や劣化によって破損する現象が起きる。特に、巻胴の両端にフランジを一体成形した構成の樹脂リールでは、巻胴に対するフランジの付け根にクラックが生じてリールが破損するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−504791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述する問題点を解決するもので、スチールワイヤ巻取用の樹脂リールにおいて、巻き不良を防止するとともに、リール耐久性、耐衝撃性を向上するようにしたスチールワイヤ巻取用の樹脂リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のスチールワイヤ巻取用の樹脂リールは、巻胴の両端にフランジを有するように一体成形された樹脂材料からなり、該樹脂材料に使用される樹脂がABS樹脂のみである樹脂リールであって、前記ABS樹脂中のブタジエンの組成割合が5〜8重量%であるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻胴の両端にフランジを有するように一体成形された樹脂材料からなり、該樹脂材料に使用される樹脂がABS樹脂のみである樹脂リールであって、このABS樹脂中のブタジエンの組成割合が5〜8重量%であるようにしたので、破壊強度及び破壊エネルギーを向上することができ、過酷な温度条件下であっても、リール耐久性、耐衝撃性を向上することが出来る。
【0009】
本発明においては、20℃における破壊強度が18000N以上、かつ破壊エネルギーが350J以上であるようにすることが好ましい。これにより、リールの変形を抑えてワイヤ巻き不良の発生を抑制すると共に、リール耐久性を向上することが出来る。
【0010】
また、本発明においては、−15℃における破壊エネルギーが200J以上であるようにすることが好ましい。これにより、低温の環境下においてもリール耐久性を向上してリール破損を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のスチールワイヤ巻取用の樹脂リールの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態からなる樹脂リール1である。樹脂リール1は、円筒状の巻胴2の両端に円形のフランジ3,3を有するように樹脂で一体成形されている。巻胴2及びフランジ3の共通の軸心部分には、軸心に沿って直線的に延びるシャフト孔4が設けられている。
【0013】
このような樹脂リールを一体成形する樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)が使用される。かつ、そのABS樹脂としては、樹脂中のブタジエンの組成割合が5〜8重量%であるABS樹脂を使用する。このような組成のABS樹脂を用いることで、20℃における破壊強度が18000N以上、破壊エネルギーが350J以上であるような特性のスチールワイヤ巻取用の樹脂リールを得ることができる。即ち、一般的なABS樹脂の組成は、アクリロニトリルが20〜30重量%、ブタジエンが20〜30重量%、スチレンが40〜60重量%程度であるが、本発明においては、ブタジエンの組成割合を著しく少なくすることで、破壊強度と破壊エネルギーを共に向上することを可能にしたのである。従って、温度変化履歴が著しく大きくなっても、リールの両フランジ間隔が拡がりワイヤが棚落ちすることによるワイヤ巻き不良の発生や、フランジの付け根に破損が発生することなどの問題を生じることなく、長期に亘り繰り返し使用が可能になり、リール耐久性及び耐衝撃性を向上することが出来る。
【0014】
破壊強度及び破壊エネルギーは、ブタジエンの組成が少ないほど向上し、多いほど低下する傾向にあり、また、破壊エネルギーについては、ブタジエンの組成が少なくなり過ぎると低下する傾向に転ずる。ブタジエンの組成が8重量%よりも多いと、破壊強度及び破壊エネルギーが低下する。ブタジエンの組成が5重量%より少ないと、ブタジエンの組成が少な過ぎて破壊エネルギーが低下する。
【0015】
本発明で使用するABS樹脂としては、上述の組成であれば、ポリマーブレンド、ニトリルゴムへのスチレンのグラフト共重合物、アクリロニトリル,ブタジエン,スチレンの3種の単量体の乳化重合によるものなどのいずれであってもよい。
【0016】
本発明の樹脂リールは、20℃における破壊強度が18000N以上、かつ破壊エネルギーが350J以上である。20℃における破壊強度が18000Nより小さいとワイヤ巻取り時にリールが変形し易くなりワイヤ巻き不良が発生し、破壊エネルギーが350Jより小さいと繰り返し使用した場合にリールが破損し易くなり耐久性が低下する。
【0017】
また、好ましくは−15℃における破壊エネルギーが200J以上であるようにするとよい。−15℃における破壊エネルギーが200Jより小さいと、低温の環境下にてリールをトラック等で輸送する最中に受ける繰り返しの振動による衝撃によりリールにクラックが発生し、最悪の場合、リールが破損してしまうという問題がある。
【0018】
ここで、破壊強度及び破壊エネルギーとは、下記の方法により測定した特性値である。
【0019】
リールをIEC60264−4−1「PACKAGING OF WINDING WIRES」の第17頁に記載のFigure 4aの固定方法により固定する。そして、フランジ間距離が一定の割合で増加するように張力を負荷し、リールが破壊するまでのフランジ間距離の変位量と負荷した張力を測定する。このとき、張力が20N(初期張力)になるまではフランジ間距離の変位速度が5mm/minになるように張力を負荷し、張力が20N(初期張力)になってからはフランジ間距離の変位速度が20mm/minになるように張力を負荷する。ここで、リールが破壊したときの張力(最大値)が破壊強度である。また、張力のフランジ間距離に対する積分値が破壊エネルギーである。
【実施例】
【0020】
巻胴とフランジとからなる樹脂リールを一体成形するABS樹脂の組成を表1のように異ならせ、破壊強度及び破壊エネルギーが互いに異なる従来例、実施例1、2、比較例1の4種類の樹脂リールを製作した。
【0021】
従来例は、ブタジエンの配合量が本発明の規定する範囲より少なくなっている例である。実施例1、2は、ブタジエンの配合量が本発明の規定する範囲内に含まれる例である。比較例1は、ブタジエンの配合量を本発明の規定する範囲より多くした例である。これら4種類のABS樹脂を用いて、それぞれフランジ直径Rがφ254mm、フランジ間距離Dが153mmである図1に示す形状の樹脂リールを射出成型法により作製した。
【0022】
作製したこれら4種類の樹脂リールについて、φ0.25mmのスチールワイヤを用いて、適当なテンションを負荷し、両フランジ間を適当なトラバース間隔で毎分600mの巻取り速度の条件で82000m、およそ30kgを巻取った後、以下の試験方法によりワイヤ巻き不良とリール破損の有無を確認した。
【0023】
ワイヤ巻き不良は、上述のリールから巻き返し機を用いてワイヤを巻き出している時に、棚落ち等によるワイヤ同士の絡まりによって円滑にワイヤを引き出すことが出来ない場合を巻き不良有りと判断し、その有無を確認した。巻き不良有りを×、巻き不良無しを○として表1の「ワイヤ巻き不良」の欄に示した。
【0024】
リール破損は、上述のワイヤ巻取り後、更に、巻返し機を用いてリールからワイヤを巻き出している時に、リールに亀裂、破損が発生した場合をリール破損有りと判断し、その有無を確認した。リール破損有りを×、リール破損無しを○として表1の「リール破損」の欄に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
従来例1は、ブタジエンの組成が本発明の規定する範囲より少ないためリール破損が発生した。逆に比較例1は、ブタジエンの組成が本発明の規定する範囲より多いためワイヤ巻き不良が発生した。これに対して実施例1、2は、ブタジエンの組成が適切であるためワイヤ巻き不良とリール破損とを共に抑制した。
【符号の説明】
【0027】
1 樹脂リール
2 巻胴
3 フランジ
4 シャフト孔
図1