特許第5830856号(P5830856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧
<>
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000003
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000004
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000005
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000006
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000007
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000008
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000009
  • 特許5830856-推奨速度提供装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5830856
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】推奨速度提供装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20151119BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20151119BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   G08G1/16 D
   G08G1/09 F
   B60R21/00 628B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-285771(P2010-285771)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2012-133624(P2012-133624A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 悟之
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−031573(JP,A)
【文献】 特開2010−264841(JP,A)
【文献】 特開2009−009288(JP,A)
【文献】 特開2009−042837(JP,A)
【文献】 特開2010−169624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 21/00
G08G 1/09
G01C 21/00−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行方向前方に位置する、設定されたサービス提供区間内における2以上の交差点にそれぞれ設けられた交通信号機の信号表示情報とその交差点までの距離情報と上記サービス提供区間に設定された規制速度とを少なくとも含む交差点情報を取得する交差点情報取得手段と、
少なくとも自車速を自車両の車両状態として検出する車両状態検出手段と、
上記車両状態検出手段の検出結果に基づき、自車両が走行する道路に予め対応付けられている上記規制速度よりも自車両の車速が大きいか否かを判定する自車速状態判定手段と、
上記交差点情報取得手段が取得した交差点情報、及び車両状態検出手段の検出結果に基づき、上記交差点情報を取得した交差点のうち少なくとも一番最初に接近する交差点を青信号で通過可能な速度が、上記規制速度以下に存在するか否かを判定する交差点通過判定手段と、
上記自車速状態判定手段が自車速は上記規制速度より大きいと判定し、且つ上記交差点通過判定手段が、規制速度以下に交差点を青信号で通過可能な速度が存在すると判定すると、当該交差点を青信号で通過可能な上記規制速度以下の速度を推奨速度として運転者に報知する情報提供手段と、
を備え、
上記規制速度は、対象とするサービス提供区間内に存在する複数の交差点を青信号で通過出来る可能性の高い速度として設定されている速度であることを特徴とする推奨速度提供装置。
【請求項2】
上記交差点通過判定手段は、
上記交差点情報取得手段が取得した各交差点の交差点情報に基づき、交差点を青信号で通過可能な時間範囲からなる通過帯を求める通過帯算出手段と、
通過帯算出手段が求めた各交差点の通過帯に基づき、少なくとも2以上の交差点を青信号で通過可能な速度が、上記規制速度以下に存在するか否かを判定する複数通過判定手段と、
を備え、
上記情報提供手段は、自車速状態判定手段が自車速は上記規制速度より大きいと判定し、且つ上記交差点通過判定手段が、規制速度以下に2以上の交差点を青信号で通過可能な速度が存在すると判定すると、当該2以上の交差点を青信号で通過可能な上記規制速度以下の速度を推奨速度として運転者に報知することを特徴とする請求項1に記載した推奨速度提供装置。
【請求項3】
規制速度以下の速度範囲内において、上記交差点情報を取得した対象とする複数の交差点に対する信号待ちの数が一番少ない速度を求める規制速度通過判定手段と、
を備え、
上記情報提供手段は、上記規制速度通過判定手段が求めた上記信号待ち数が一番少ない速度を推奨速度とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した推奨速度提供装置。
【請求項4】
現在の速度で走行した場合に、走行方向前方の交通信号機に対し青信号で通過出来ず黄色信号になる可能性が高いか否かを判定する黄色信号判定手段と、
上記黄色信号判定手段が青信号で通過出来ず黄色信号になる可能性が高いと判定すると、黄色信号で交差点の通過が困難か否かを推定する黄色通過可能性推定手段と、
上記黄色通過可能性推定手段の判定に基づき、黄色信号で交差点の通過が困難と判定すると、その旨を運転者に対し注意喚起を行う注意喚起手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した推奨速度提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行する道路に適した推奨速度を運転者に提供する推奨速度提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の技術は、自車前方の一番手前にある交差点について、車両の現在位置から信号機設置交差点までの距離と、現在の信号状態の残り時間とを入手する。そして、特許文献1の技術は、入手した距離と現在の信号状態の残り時間とから、現在の車速を維持した場合に青信号で交差点を通過できないと判定した場合には、現在位置から交差点の停止線まで緩やかに減速して停止線で停止させる通行方法を情報提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−373396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、一番手前の交差点に対し現在の速度では青信号で通過出来ないと判定すると、手前の交差点の停止線で停止することを推奨する技術である。このように、従来技術は、現在の車速で手前の交差点を通過出来ない場合、自車両前方の1又は2以上の交差点をより適切に通過するための情報を提供することが出来ないという課題がある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、自車両前方の1又は2以上の交差点を通過するための推奨速度を提供することにより、より円滑な走行を実現可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両の走行方向前方に位置する2以上の交差点に係る交差点情報を取得すると共に、少なくとも自車速を自車両の車両状態として検出する。そして、本発明は、自車両の速度が、対象とするサービス提供区間内に存在する複数の交差点を青信号で通過出来る可能性の高い速度として設定されている規制速度より大きく、且つ上記交差点を青信号で通過可能な速度が規制速度以下に存在すると判定すると、その速度を推奨速度として運転者に報知する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車両が現在の速度で交差点を青信号で通過可能でない場合であっても、当該交差点を青信号で通過可能な推奨速度を運転者に提供出来る場合がある。このように、本発明によれば、自車両前方の1又は2以上の交差点を通過するための推奨速度を情報として運転者に提供することにより、より円滑な走行を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に基づく実施形態に係るシステム構成を説明する図である。
図2】推奨速度提供処理部の処理を説明するフローチャート図である。
図3】残り距離の演算を説明する図である。
図4】走行距離を説明する図である。
図5】推奨速度提供処理の例を説明するフローチャート図である。
図6】通行帯マップを説明する概念図である。
図7】ジレンマ領域を説明する図である。
図8】通行帯マップを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る推奨速度提供装置を装備した自車両MM、及びインフラシステムの構成を説明する図である。
先ずインフラシステムについて説明する。
交通信号機1は各交差点にそれぞれ設置されている。交通信号機1は、信号制御機2からの信号に応じて各種信号の表示を行う。
【0009】
情報提供判定装置3は、交通信号機1を制御する信号制御機2からの信号に基づき、提供する信号表示情報、予め登録された交差点の道路線形に関する情報その他の交差点情報を生成、更新する。その交差点情報は情報送信部4から発信される。
ここで、予め定められているサービス提供区間内に存在する複数の交差点の交通信号機1は系統制御されている。
【0010】
上記信号表示情報は、例えば、対応する各交通信号機1の灯色予定時間(、黄、赤の各スプリット時間(各信号表示に割り当てられた時間)、現在灯色とその残秒時間など)や隣接する交通信号機1間における交通信号機灯色のズレ時間(オフセット)を含む。また、交差点の道路線形に関する情報は、対応する交差点までの距離情報、隣り合う交差点間の道路に予め設定されている規制速度の情報などを含む。
【0011】
本実施形態の情報送信部4は、光ビーコンやDSRCビーコンなどからなる路上の通信インフラである。情報送信部4は、それぞれ設定されている送信エリアに向けて、上記情報提供判定装置3で生成、更新した交差点情報を送信する。
ここで、情報送信部4は、予め設定したサービス提供区間に設定されている複数の交差点の交差点情報を送信可能となっている。
また上記規制速度は、上記オフセット時間などを考慮して、対象とするサービス提供区間内に存在する複数の交差点を青信号で適切に通過出来る可能性の高い速度として法規その他で設定されている速度である。
【0012】
次に、推奨速度提供装置を装備した自車両MMについて説明する。
符号10はブレーキペダルを示す。ブレーキペダル10は、運転者が制動指示を行う操作子である。ブレーキセンサ11は、ブレーキペダル10の状態を検出する。
符号12は車輪速センサである。車輪速センサ12は、車輪速を検出する。この車輪速から自車両MMの車速を求めることができる。
【0013】
符号13はシフト位置センサである。シフト位置センサ13は、シフトレバーで指示される変速機に対する変速指令(シフト指令)を検出する。
符号14はアクセルペダルである。アクセルペダル14は、運転者が加速指示を行う操作子である。アクセルセンサ16は、アクセルペダル14の状態を検出する。
また自車両MMは、情報受信部20、車両制御部21、及び情報提供部30が搭載されている。
【0014】
情報受信部20は、上記情報送信部4からの交差点情報を受信する。すなわち、情報受信部20は、情報送信部4との間で路車間通信を行う。この情報受信部20は、例えばビーコンアンテナやDSRCアンテナで構成され、車両のダッシュボード上などに設置されている。ここで、ビーコンアンテナは光ビーコンからのデータを受信する。この光ビーコンからの情報は、指向性があるために狭い範囲にスポット的に送信されることから、情報の精度が高い。
情報提供部30は、ナビ装置の表示部や音声発生部から構成され、車両制御部21からの信号に基づき、運転者に対し表示や音声などによって報知を実行する。
また、車両制御部21は、1又は2以上のコンピュータから構成される。その車両制御部21は、車両状態検出部21A、推奨速度提供処理部21Bを備える。
【0015】
車両状態検出部21Aは、CAN通信を通じて入力した信号によって自車両MMの状態を検出するプログラムである。車両状態検出部21Aは、少なくとも自車両MMの車速を車両状態として検出する。
推奨速度提供処理部21Bは、情報受信部20が受信した交差点情報、車両状態検出部21Aが検出した車両情報に基づき推奨速度が存在するか否かを判定し、現在の自車速未満の推奨速度が存在する場合には、その推奨速度を上記情報提供部30を通じて運転者に提供するプログラムである。
【0016】
次に、上記推奨速度提供処理部21Bの処理を、図2を参照しつつ説明する。
推奨速度提供処理部21Bは、まずステップS10にて、情報受信部20が受信した交差点情報を入力する。その後ステップS20に移行する。
ステップS20では、入力した交差点情報からサービス提供区間であることを認識する。その後ステップS30に移行する。サービス提供区間でない場合には処理を終了する。
【0017】
ステップS30では、交差点情報内の道路線形情報から自車の位置標定を行い、自車位置から停止線までの残り距離Lrの算出を開始する。すなわち、交差点情報を受信した時点での道程距離に基づき残り距離Lrを演算し更新を開始する。残り距離Lrの更新は、予め設定した演算周期で実施する。残り距離Lrの演算及び更新の処理例については、後述する。
【0018】
ステップS40では、上記ステップS30と同期をもって開始し、交差点情報を受信した時点からの交通信号機1の信号残秒数のカウントダウンを開始する。
次に、ステップS50では、道路線形情報と自車の進行方向等から、自車両が現在対象としているサービス対象道路からの途中逸脱をしたか否かを判定し、途中逸脱をしたと判定した場合には、処理を終了する。途中逸脱していない場合にはステップS60に移行する。
【0019】
ステップS60では、自車の現在速度が、交差点情報中の規制速度よりも大きいか否かを判定する。自車の現在速度が規制速度よりも大きい場合にはステップS70に移行する。自車の現在速度が規制速度以下の場合には処理を終了する。
ステップS70では、推奨速度提供処理を実施する。すなわち、ステップS70では、停止線までの残り距離Lr、走行速度、規制速度、信号灯色状態及び残秒数より、交差点を通過するための適切な走行速度を算出し、必要に応じて情報提供部30を介して情報提供の処理を実施する。推奨速度提供処理については後述する。
【0020】
次に、上記残り距離Lrの算出及び更新の処理例を図3を参照して説明する。
この処理は、路上の光ビーコンを通過してからの走行距離Lpを算出し始める。すなわち、光ビーコンを通過したタイミングから移動距離Lpの計算を開始する。また、ビーコンの真下の位置を0m地点として算出する。
そして、下記処理を予め設定した演算周期(例えば100msec)毎に実施する。
【0021】
先ずステップS31では、路上のビーコンを通過してからの走行距離Lpを算出及び更新する。すなわち、図4のように、予め設定した演算周期(例えばt=100msec)毎に、その演算周期tでの自車速に対し演算周期tを乗算して単位時間当たりの移動距離を求める。そして、下記式(1)に基づき、この単位時間当たりの移動距離を累積することで走行距離Lpとする。
【0022】
【数1】
【0023】
ここで、
Vnowi:車両状態検出部21Aが検出した現在速度(自車速)
t:Vnowの演算周期
である。
次に、ステップS32では、「ビーコンを通過してからの走行距離Lp」と、情報受信部20が取得した「停止線までの道程距離L」をもとに、式(2)に基づき、停止線までの残り距離Lrを算出する。その後、復帰し、次の制御周期で上記ステップS31を実施する。
Lr = L − Lp ・・・式(2)
【0024】
次に、上記ステップS70で実施する、推奨速度提供処理の処理例について、図5を参照して説明する。
推奨速度提供処理では、まずステップS100にて、各交差点の信号情報(データを受信した時点の灯色とその残秒数、赤、青、黄の各スプリット、オフセット)に基づき、対象とする交差点を青信号で通過可能な時間範囲を示す通過帯を交差点毎に求める。赤、青、黄の各スプリットは、各色を表示する時間であって、例えば青色15秒、黄色3秒、赤25秒に設定される。ただし、スプリットの時間は交通信号機1毎に異なる時間が設定されている場合もある。また、各交通信号機1の現在灯色とその残秒数は、各交通信号機1毎に取得しても良いが、各交通信号機1間の灯色のオフセットが設定されている場合には、そのオフセットを使用して次の交通信号機1のデータを受信した時点の灯色とその残秒数を求める。また、上記各交差点の時間範囲からなる通過帯の起点は、例えば交差点情報を受信したタイミング、例えば光ビーコンの真下を通過したタイミングとする。
【0025】
次に、ステップS105にて、上記交差点情報を受信した時点からの各交差点までの残り距離Lrを取得する。そして、各交差点毎の通過帯CS1〜CS4を、図6に示すような、距離及び時間の変数とした通過帯マップとして作成する。
次に、ステップS110では、上記通過帯マップに基づき、現在の車速で一番手前の交差点を青色で通過可能か否かを判定する。現在の車速で一番手前の交差点を青色で通過可能と判定した場合には、処理を終了する。現在の車速で一番手前の交差点を青色で通過可能でないと判定した場合にはステップS120及びS200の処理を実行する。
【0026】
ここで、上記通過帯マップに基づき現在の速度で対象とする交差点を青色で通過可能か否かの判定方法について説明する。上記通過帯マップは、図6に示すように、横軸が距離で、縦軸が時間となっている。図6中CSi(i=1〜4)は、各時間範囲からなる各交差点の通過帯CS1〜CS4を示す。
【0027】
そして、図6に示す通過帯マップでは、横軸が距離で縦軸が時間のため、傾き(勾配)が自車両の速度に対応する。したがって、現在の速度を傾きとした直線が上記通過帯マップ中の対応した通過帯CS1〜CS4を通過している場合には、その通過帯の交差点を青色で通過可能と判定することができる。他の速度についても同様にして、対象とする交差点を青色で通過可能か否かを判定することが出来る。後述のように、複数の交差点を青色で通過可能かについての判定も、その対象とする複数の交差点の通過帯CS1〜CS4を通る直線の傾き(勾配)に対応した速度が、その対象とする交差点を全部青信号で通過可能な速度となる。
【0028】
ステップS120では、上記通過帯マップに基づき、規制速度以下の速度範囲で一番手前の交差点を青色で通過可能か判定する。判定方法は、上述の方法で判定可能である。規制速度以下の速度範囲で現在の車速で一番手前の交差点を青色で通過可能な速度が無い場合には、処理を終了する。規制速度以下の速度範囲で現在の車速で一番手前の交差点を青色で通過可能な速度が存在する場合には、ステップS130に移行する。
ステップS130では、規制速度以下の速度範囲で一番手前の交差点を青色で通過可能な速度のうち、規制速度との偏差が一番小さな速度を推奨速度として決定する。そして、ステップS130は、その推奨速度を、情報提供部30を通じて運転者に通知する。その後処理を終了する。
【0029】
一方、ステップS200では、車両状態検出部21Aが検出する現在速度(Vnow)に基づき、下記式(3)のように、現在の速度Vnowにおいて、車両が停止に必要な距離Lnを求める周期的な演算を開始する。周期演算の演算周期は、例えば100msecとする。その後ステップS210に移行する。
Ln = Vnow ×(Tp+Td) + Vnow2 /(2×D)
・・・式(3)
【0030】
ここで
Tp:車載機処理時間(秒)
(Tpの初期値は2秒で、設定可能値:0秒〜10秒を1秒刻みで設定可能となっている。)
Td:運転者反応時間(秒)
(Tdの初期値は3秒で、設定可能値:0秒〜10秒を1秒刻みで設定可能となっている。)
D:減速度(m/s2
(Dの初期値は0.3Gで、設定可能値:0G〜0.5Gを0.05G刻みで設定可能となっている。)
である。
【0031】
ステップS210では、停止線までの残り距離Lrと現在速度Vnowに基づき、例えば下記(4)式によって、停止線までの到着予測時間(Tt)を算出する。なお、光ビーコン真下を走行していたときに受信したデータによって、上記残り距離Lrを適宜修正することが好ましい。光ビーコンからスポット的に受信した距離情報の方が精度が高いためである。
Tt = Lr ÷ Vnow ・・・式(4)
【0032】
ステップS220では、青の残秒時間(Sb-s)と上記到着予測時間(Tt)に基づき、停止線到着までに信号が黄色になる可能性があるか否かを確認する。具体的には、青残秒時間(Sb-s)から到着予測時間(Tp)を減じた値が予め設定した設定値(Tγ)よりも小さいとき、つまり下記式(5)を満足する場合には、黄色になる可能性があると判定する。黄色になる可能性があると判定した場合には、ステップS230に移行する。黄色になる可能性があると判定しなかった場合には、処理を終了する。
Sb−S −Tp < Tγ ・・・式(5)
【0033】
ステップS230では、自車両MMの位置と自車速とに基づき黄色信号で交差点の通過が困難か否かを判定するためのジレンマ領域の特定を行う。
上記ジレンマ領域は、黄色信号で対象とする交差点の通過が困難と推定される領域である。
すなわち、ステップS230では、ステップS220で黄色になる可能性があると判定したときの車速と自車位置とによって、下記式(6)及び式(7)を決定し、図7に示すように、この式(5)及び式(6)で囲まれる領域(図7中斜線部分)をジレンマ領域とする。
X1=Y×V ・・・式(6)
ここで、
Y:黄色時間長(例えば3秒)
V:黄色になる可能性があると判定したときの車速(秒)
である。
【0034】
X2=τV+V2/2D ・・・式(7)
ここで、
V:黄色になる可能性があると判定したときの車速(秒)
τ:ドライバ反応時間
(τの初期値は3秒で、0〜10秒まで、1秒刻みで変更可能である。)
D:減速度
(Dの初期値は0.3Gで、0.05G〜0.5Gまで、0.05G刻みで変更可能である。)
である。
【0035】
そして、ステップS240では、上記黄色になる可能性があると判定してから、演算周期で1周期若しくは予め設定した数周期後における自車速及び車両位置が、上記ジレンマ領域内に位置しているか判定する。ジレンマ領域内に位置していると判定した場合には、黄色信号での交差点の通過が困難と判定する。そして、ステップS240で、自車速及び車両位置が、上記ジレンマ領域内に位置していると判定した場合には、ステップS250に移行して、情報提供部30を通じて運転者に注意喚起の報知を実施する。その後処理を終了する。一方、困難と判定しなかった場合には、そのまま処理を終了する。
【0036】
(動作その他について)
上記推奨速度提供処理部21Bは、サービス提供区間内についての交差点情報を入力すると、現在の車速が規制速度よりも大きい場合には、現在の車速で一番手前の交差点を青色で通過できるか判定する。推奨速度提供処理部21Bは、現在の車速で一番手前の交差点を青色で通過できないと判定すると、一番手前の交差点を青色で通過できる車速が、現在の道路に対して設定されている規制速度以下の速度範囲に存在するか否かを判定する。推奨速度提供処理部21Bは、一番手前の交差点を青色で通過できる規制速度以下の車速が存在する場合には、規制速度に対する偏差が一番小さな速度を推奨速度として運転者に報知する。すなわち、規制速度が一番手前の交差点を青色で通過できる車速である場合には、規制速度を推奨速度として運転者に報知する。
【0037】
上記推奨速度を報知された運転者が、自車両MMの速度を推奨速度に変更する運転操作を実施することで、一番手前の交差点を青色で通過することが可能となる。
ここで、上記規制速度は、対象とするサービス提供区間の複数の交差点を適切に青色で通過する確率が高い設定速度である。このため、上記推奨速度が規制速度若しくは規制速度に近い速度の場合には、運転者が自車両MMの速度を推奨速度に変更することで、一番手前の交差点を青色で通過すると共に、その後のサービス提供区間内の交差点についても青色で通過する可能性が高くなる。
【0038】
以上のように、上記推奨速度が存在する場合には、一番手前の交差点を青色で通過できる可能性が高まり、また、上記推奨速度が規制速度若しくは規制速度に近い速度の場合には、一番手前の交差点を青色で通過すると共に、その後の交差点についても青色で通過する可能性が高くなる。すなわち、推奨速度提供装置は、信号交差点を通過する際に不要な停止と不要な加減速を少なくすることが可能な運転者の走行支援を実現できる。この結果、自車両MMはより円滑な走行の実現が可能となり、これによって、排出ガス削減や燃費効率向上につながり、地球環境負荷の軽減に貢献できる。
【0039】
また現在の車速を維持した場合、手前の交差点において、青信号で通過出来ず黄色信号になる可能性が高く、しかも黄色信号で該交差点の通過が困難なジレンマを運転者が引き起こす可能性のある状況においては、推奨速度提供装置は、現在の車速のままでは、そのようなジレンマを引き起こす可能性のあることを運転者の注意喚起をする。これによって、運転者は、事前にジレンマを解消するような運転変更を採用することが可能となる。例えば、運転者は、事前に推奨速度を採用する動機付けとなる。
ここで、図6による模式図では、簡略化のために、規制速度が一定の場合を例示しているが、交差点間で設定されている規制速度が異なる場合もある。この場合には、図のように、その区間の規制速度に対応する線の傾きを変えて折れ線形状となっている。
【0040】
(変形例)
(1)上記説明では、S110及びS120の処理によって、それぞれ現在の車速及び規制車速以下について、対象とする交差点を青色で通過可能か否かを個別に判定する場合を例示した。これに代えて、次のようにしても良い。すなわち、先に、通過帯マップに基づき対象とする交差点を青色で通過可能な速度範囲を算出する(図6参照)。その後、算出した通過可能な速度範囲内に、現在の車速や規制車速以下の速度が存在するか否かによって、対象とする交差点を青色で通過可能か判定しても良い。
【0041】
(2)上記説明では、ステップS120の処理において、通過帯マップに基づき、規制速度以下の速度範囲で一番手前の交差点を青色で通過可能か判定する場合を例示している。これに代えて、ステップS120の処理において、通過帯マップに基づき、規制速度以下の速度範囲で青色で通過可能か交差点数を判定するようにしても良い。
この場合には、規制速度以下の速度範囲のうち、通過可能か交差点数が多い速度であって、規制速度との偏差が小さな速度を推奨速度とする。そして、その推奨速度を運転者に報知すればよい。
なおこのとき、ステップS110で現在の車速についても青色で通過可能か交差点数を判定し、ステップS130において、現在の車速で通過可能な交差点数が、上記ステップS120の処理で求めた推奨速度の交差点数よりも多い場合には、その推奨速度は運転者に報知しないようにする。
【0042】
以上の処理においては、通過可能か交差点数が対象とするサービス提供区間の複数の交差点と同じ場合には、対象とするサービス提供区間の全ての交差点を青色で通過可能であることを示す。
この変形例を採用した場合には、更に、信号交差点を通過する際に不要な停止と不要な加減速を少なくすることが可能な運転者の走行支援を実現できる。
ここで、青色で通過可能か交差点数は、連続して青色で通過可能な交差点数でも良いし、青色で通過可能な交差点が飛び飛びに存在する場合であっても良い。
【0043】
(3)また、上記変形例(2)のように、青色で通過可能か交差点数を判定する代わりに、通過できずに信号待ちする回数を判定しても良い。この場合には、規制速度以下であって、且つ信号待ちする回数が少ない速度を推奨速度とすればよい。但し、現在の車速での信号待ちする回数が推奨速度での信号待ちする回数よりも小さい場合には、推奨速度を運転者に報知しない。例えば、対象とする速度の線を通過帯マップに引いたときに、完全に通過しない通過帯の数を信号待ちの数とする。
【0044】
ここで、情報受信部20は交差点情報取得手段を構成する。車両状態検出部21Aは車両状態検出手段を構成する。ステップS60は、自車速状態判定手段を構成する。ステップS120は、交差点通過判定手段、複数通過判定手段を構成する。情報提供部30及びステップS130は、情報提供手段を構成する。ステップS100は通過帯算出手段を構成する。ステップS220は黄色信号判定手段を構成する。ステップS230及びS240は黄色通過可能性推定手段を構成する。情報提供部30及びステップS240は注意喚起手段を構成する。
【0045】
(本実施形態の効果)
(1)情報受信部20は、自車両MMの走行方向前方に位置する1又は2以上の交差点にそれぞれ設けられた交通信号機1の信号表示情報とその交差点までの距離情報とを少なくとも含む交差点情報を取得する。推奨速度提供処理部21Bは、上記車両状態検出部21Aの検出結果に基づき、自車両MMが走行する道路に予め対応付けれている規制速度よりも自車両MMの車速が大きいか否かを判定する。推奨速度提供処理部21Bは、上記情報受信部20が取得した交差点情報、及び車両状態検出部21Aの検出結果に基づき、上記交差点情報を取得した交差点のうち少なくとも一番最初に接近する交差点を青信号で通過可能な速度が、上記規制速度以下の速度範囲内に存在するか否かを判定する。推奨速度提供処理部21Bは、上記自車速状態判定部が自車速は上記規制速度より大きいと判定し、且つ上記交差点通過判定部が、規制速度以下の速度範囲内に交差点を青信号で通過可能な速度が存在すると判定すると、当該交差点を青信号で通過可能な上記規制速度以下の速度を推奨速度として情報提供部30を通じて運転者に報知する。
【0046】
自車両MMの現在の速度で交差点を青信号で通過可能でない場合であっても、当該交差点を青信号で通過可能な推奨速度を運転者に提供出来る場合がある。また、規制速度は、対象とするサービス提供区間の複数の交差点を青色で通過する確率が高い速度である。したがって、上記推奨速度が規制速度若しくは規制速度に近い速度の場合には、運転者が自車両MMの速度を推奨速度に変更することで、一番手前の交差点を青色で通過すると共に、その後の交差点についても青色で通過する可能性が高くなる。
このように、自車両MM前方の1又は2以上の交差点を通過するための推奨速度を提供することにより、より円滑な走行を実現することが可能となる。
【0047】
(2)推奨速度提供処理部21Bは、上記情報受信部20が取得した各交差点の交差点情報に基づき、各交差点位置について青信号で通過可能な時間範囲からなる通過帯CS1〜CS4を求める。推奨速度提供処理部21Bは、各交差点の通過帯CS1〜CS4に基づき、少なくとも2以上の交差点を青信号で通過可能な速度が、上記規制速度以下の速度範囲内に存在するか否かを判定する。推奨速度提供処理部21Bは、自車速は上記規制速度より大きいと判定し、且つ規制速度以下の速度範囲内に2以上の交差点を青信号で通過可能な速度が存在すると判定すると、当該2以上の交差点を青信号で通過可能な上記規制速度以下の速度を推奨速度として運転者に報知する。
複数の交差点を青信号で通過可能な規制速度以下の速度を推奨速度として運転者に提供可能となる。これによって、信号交差点を通過する際に不要な停止と不要な加減速を更に少なくすることが可能な運転者の走行支援を実現できる。
【0048】
(3)推奨速度提供処理部21Bは、規制速度以下の速度範囲内において、上記対象とする複数の交差点に対する信号待ちの数が一番少ない速度を求める。推奨速度提供処理部21Bは、上記規制速度通過判定部が求めた上記信号待ち数が一番少ない速度を推奨速度とする。
これによって、信号交差点を通過する際に不要な停止と不要な加減速を更に少なくすることが可能な運転者の走行支援を実現できる。
【0049】
(4)推奨速度提供処理部21Bは、現在の速度で走行した場合に、走行方向前方の交通信号機1に対し青信号で通過出来ず黄色信号になる可能性が高いか否かを判定する。推奨速度提供処理部21Bは、青信号で通過出来ず黄色信号になる可能性が高いと判定すると、黄色信号で交差点の通過が困難か否かを推定する。推奨速度提供処理部21Bは、上記黄色通過可能性推定部の判定に基づき、黄色信号で交差点の通過が困難と判定すると、その旨を運転者に対し注意喚起を行う。
【0050】
現在の車速では手前の交差点において、青信号で通過出来ず黄色信号になる可能性が高く、しかも黄色信号で該交差点の通過が困難なジレンマを引き起こす可能性のある状況において、現在の車速のままでは、そのようなジレンマを引き起こす可能性のあることを運転者の注意喚起をすることができる。これによって、運転者は、事前にジレンマを解消するような運転変更を採用することが可能となる。そして、推奨速度を報知した場合には、その推奨速度を採用する可能性が増大する。
【符号の説明】
【0051】
1 交通信号機
2 信号制御機
3 情報提供判定装置
4 情報送信部
20 情報受信部
21 車両制御部
21A 車両状態検出部
21B 推奨速度提供処理部
30 情報提供部
CS1〜CS4 通過帯
Lr 残り距離
MM 自車両
Vnow 自車速
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8