特許第5831042号(P5831042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831042
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20151119BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   B60C11/13 B
   B60C11/03 100C
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-182949(P2011-182949)
(22)【出願日】2011年8月24日
(65)【公開番号】特開2012-206706(P2012-206706A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-54618(P2011-54618)
(32)【優先日】2011年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】温品 良介
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/058627(WO,A1)
【文献】 特開2010−105591(JP,A)
【文献】 特開2009−067244(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/041720(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、一対の前記周方向主溝に区画されて成るリブと、前記リブに形成されると共にタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜ラグ溝とを備える空気入りタイヤであって、
前記傾斜ラグ溝が、前記リブを区画する一方の前記周方向主溝に開口すると共に他方の前記周方向主溝(以下、終端側周方向主溝という。)に開口せずに前記リブ内で終端あるいは隣り合う他の前記傾斜ラグ溝に連通し、且つ、
前記リブの前記終端側周方向主溝側のエッジ部を基準としてリブ幅WLの10[%]以上40[%]以下の範囲内にある領域Xと、領域Xにおける前記傾斜ラグ溝の延在範囲にかかるタイヤ周方向の区間Aと、領域Xから区間Aを除いたタイヤ周方向の区間Bとを定義するときに、
前記終端側周方向主溝が、タイヤ周方向に周期的あるいは連続的に配列される複数の凹部を前記リブ側の溝壁面に有すると共に、区間Aに配置された前記凹部の単位体積Vaと、区間Bに配置された前記凹部の単位体積VbとがVa<Vbの関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
区間Aの前記凹部の幅Waが0.3[mm]≦Wa≦1.0[mm]の範囲内にあり、区間Bの前記凹部の幅Wbが0.5[mm]≦Wb≦2.0[mm]の範囲内にある請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
区間Aの前記凹部の深さHaと、区間Bの前記凹部の深さHbとが、0.3[mm]≦Ha≦1.0[mm]、1.3[mm]≦Hb≦3.0[mm]、且つ、Hb−Ha≧1.0[mm]の要件を満たす請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
区間Aの前記凹部の配置間隔Daと、区間Bの前記凹部の配置間隔Dbとが1.5≦Da/Db≦3.0の範囲内にある請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、一対の前記周方向主溝に区画されて成るリブと、前記リブに形成されると共にタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜ラグ溝とを備える空気入りタイヤであって、
前記傾斜ラグ溝が、前記リブを区画する一方の前記周方向主溝に開口すると共に他方の前記周方向主溝(以下、終端側周方向主溝という。)に開口せずに前記リブ内で終端あるいは隣り合う他の前記傾斜ラグ溝に連通し、且つ、
前記リブの前記終端側周方向主溝側のエッジ部を基準としてリブ幅WLの10[%]以上40[%]以下の範囲内にある領域Xと、領域Xにおける前記傾斜ラグ溝の延在範囲にかかるタイヤ周方向の区間Aと、領域Xから区間Aを除いたタイヤ周方向の区間Bとを定義するときに、
区間Aにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝底の曲率半径Raと、区間Bにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝底の曲率半径Rbとが、Ra>Rbの関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項6】
区間Bを中央部と左右の端部とに区分して、前記中央部のタイヤ周方向の長さL2と、左右の前記端部のタイヤ周方向の長さL3とを10[mm]≦L2および3[mm]≦L3≦15[mm]の範囲内とするときに、
区間Aの曲率半径Raと、区間Bの前記中央部における曲率半径Rb_ceとが、4.5[mm]≦Ra≦15.0[mm]、1.5[mm]≦Rb_ce≦5.0[mm]および3.0[mm]≦Ra−Rb_ceの条件を満たす請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
隣り合う区間A、Bにて、区間Aの曲率半径Raと、区間Bの前記中央部の曲率半径Rb_ceと、区間Bの前記端部の曲率半径とが連続する請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、一対の前記周方向主溝に区画されて成るリブと、前記リブに形成されると共にタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜ラグ溝とを備える空気入りタイヤであって、
前記傾斜ラグ溝が、前記リブを区画する一方の前記周方向主溝に開口すると共に他方の前記周方向主溝(以下、終端側周方向主溝という。)に開口せずに前記リブ内で終端あるいは隣り合う他の前記傾斜ラグ溝に連通し、且つ、
前記リブの前記終端側周方向主溝側のエッジ部を基準としてリブ幅WLの10[%]以上40[%]以下の範囲内にある領域Xと、領域Xにおける前記傾斜ラグ溝の延在範囲にかかるタイヤ周方向の区間Aと、領域Xから区間Aを除いたタイヤ周方向の区間Bとを定義するときに、
区間Aにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝壁角度θaと、区間Bにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝壁角度θbとが、θa>θbの関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項9】
区間Bを中央部と左右の端部とに区分して、区間Bの中央部のタイヤ周方向の長さL2と、左右の端部のタイヤ周方向の長さL3とが、10[mm]≦L2および3[mm]≦L3≦15[mm]に範囲内にあるときに、
区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの前記中央部における溝壁角度θb_ceとが、15[deg]≦θa≦35[deg]、5[deg]≦θb_ce≦10[deg]および10[deg]≦θa−θb_ceの条件を満たす請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
隣り合う区間A、Bにて、区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの前記中央部の溝壁角度θb_ceと、区間Bの前記端部の溝壁角度とが連続する請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記終端側周方向主溝の溝深さGDと溝幅GWとが、5.0[mm]≦GD≦12.0[mm]および5.0[mm]≦GW≦18.0[mm]の条件を満たす請求項1〜10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、リブのエッジ部の偏摩耗を抑制できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気入りタイヤにおいて、リブのエッジ部の偏摩耗を抑制するために、周方向主溝の溝壁にサイプを有する構成が知られている。かかる構成を採用する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−105591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、リブのエッジ部の偏摩耗を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、一対の前記周方向主溝に区画されて成るリブと、前記リブに形成されると共にタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜ラグ溝とを備える空気入りタイヤであって、前記傾斜ラグ溝が、前記リブを区画する一方の前記周方向主溝に開口すると共に他方の前記周方向主溝(以下、終端側周方向主溝という。)に開口せずに前記リブ内で終端あるいは隣り合う他の前記傾斜ラグ溝に連通し、且つ、前記リブの前記終端側周方向主溝側のエッジ部を基準としてリブ幅WLの10[%]以上40[%]以下の範囲内にある領域Xと、領域Xにおける前記傾斜ラグ溝の延在範囲にかかるタイヤ周方向の区間Aと、領域Xから区間Aを除いたタイヤ周方向の区間Bとを定義するときに、前記終端側周方向主溝が、タイヤ周方向に周期的あるいは連続的に配列される複数の凹部を前記リブ側の溝壁面に有すると共に、区間Aに配置された前記凹部の単位体積Vaと、区間Bに配置された前記凹部の単位体積VbとがVa<Vbの関係を有することを特徴とする。
【0006】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、区間Aの前記凹部の幅Waが0.3[mm]≦Wa≦1.0[mm]の範囲内にあり、区間Bの前記凹部の幅Wbが0.5[mm]≦Wb≦2.0[mm]の範囲内にあることが好ましい。
【0007】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、区間Aの前記凹部の深さHaと、区間Bの前記凹部の深さHbとが、0.3[mm]≦Ha≦1.0[mm]、1.3[mm]≦Hb≦3.0[mm]、且つ、Hb−Ha≧1.0[mm]の要件を満たすことが好ましい。
【0008】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、区間Aの前記凹部の配置間隔Daと、区間Bの前記凹部の配置間隔Dbとが1.5≦Da/Db≦3.0の範囲内にあることが好ましい。
【0010】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、一対の前記周方向主溝に区画されて成るリブと、前記リブに形成されると共にタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜ラグ溝とを備える空気入りタイヤであって、前記傾斜ラグ溝が、前記リブを区画する一方の前記周方向主溝に開口すると共に他方の前記周方向主溝(以下、終端側周方向主溝という。)に開口せずに前記リブ内で終端あるいは隣り合う他の前記傾斜ラグ溝に連通し、且つ、前記リブの前記終端側周方向主溝側のエッジ部を基準としてリブ幅WLの10[%]以上40[%]以下の範囲内にある領域Xと、領域Xにおける前記傾斜ラグ溝の延在範囲にかかるタイヤ周方向の区間Aと、領域Xから区間Aを除いたタイヤ周方向の区間Bとを定義するときに、区間Aにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝底の曲率半径Raと、区間Bにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝底の曲率半径Rbとが、Ra>Rbの関係を有する。
【0011】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、区間Bを中央部と左右の端部とに区分して、前記中央部のタイヤ周方向の長さL2と、左右の前記端部のタイヤ周方向の長さL3とを10[mm]≦L2および3[mm]≦L3≦15[mm]の範囲内とするときに、区間Aの曲率半径Raと、区間Bの前記中央部における曲率半径Rb_ceとが、4.5[mm]≦Ra≦15.0[mm]、1.5[mm]≦Rb_ce≦5.0[mm]および3.0[mm]≦Ra−Rb_ceの条件を満たすことが好ましい。
【0012】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、隣り合う区間A、Bにて、区間Aの曲率半径Raと、区間Bの前記中央部の曲率半径Rb_ceと、区間Bの前記端部の曲率半径とが連続することが好ましい。
【0013】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、一対の前記周方向主溝に区画されて成るリブと、前記リブに形成されると共にタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜ラグ溝とを備える空気入りタイヤであって、前記傾斜ラグ溝が、前記リブを区画する一方の前記周方向主溝に開口すると共に他方の前記周方向主溝(以下、終端側周方向主溝という。)に開口せずに前記リブ内で終端あるいは隣り合う他の前記傾斜ラグ溝に連通し、且つ、前記リブの前記終端側周方向主溝側のエッジ部を基準としてリブ幅WLの10[%]以上40[%]以下の範囲内にある領域Xと、領域Xにおける前記傾斜ラグ溝の延在範囲にかかるタイヤ周方向の区間Aと、領域Xから区間Aを除いたタイヤ周方向の区間Bとを定義するときに、区間Aにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝壁角度θaと、区間Bにおける前記終端側周方向主溝の前記リブ側の溝壁角度θbとが、θa>θbの関係を有することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、区間Bを中央部と左右の端部とに区分して、区間Bの中央部のタイヤ周方向の長さL2と、左右の端部のタイヤ周方向の長さL3とが、10[mm]≦L2および3[mm]≦L3≦15[mm]の範囲内にあるときに、区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの前記中央部における溝壁角度θb_ceとが、15[deg]≦θa≦35[deg]、5[deg]≦θb_ce≦10[deg]および10[deg]≦θa−θb_ceの条件を満たすことが好ましい。
【0015】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、隣り合う区間A、Bにて、区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの前記中央部の溝壁角度θb_ceと、区間Bの前記端部の溝壁角度とが連続することが好ましい。
【0016】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記終端側周方向主溝の溝深さGDと溝幅GWとが、5.0[mm]≦GD≦12.0[mm]および5.0[mm]≦GW≦18.0[mm]の条件を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、傾斜ラグ溝に起因する区間Aと区間Bとの間のリブのエッジ部の剛性差が緩和される。これにより、リブのエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁の凹部を示す説明図である。
図4図4は、図2に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁の凹部を示す説明図である。
図5図5は、図2に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁の凹部を示す説明図である。
図6図6は、図2に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁の凹部を示す説明図である。
図7図7は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
図8図8は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図9図9は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図10図10は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図11図11は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図12図12は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図13図13は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図14図14は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図15図15は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図16図16は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図17図17は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図18図18は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図19図19は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図20図20は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図21図21は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
図22図22は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0020】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
【0021】
この空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16とを備える(図1参照)。一対のビードコア11、11は、環状構造を有し、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周に配置されてビード部を補強する。カーカス層13は、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。ベルト層14は、積層された一対のベルトプライ141、142から成り、カーカス層13のタイヤ径方向外周に配置される。これらのベルトプライ141、142は、スチール材あるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを配列して圧延加工して構成され、ベルトコードをタイヤ周方向に相互に異なる方向に傾斜させることによりクロスプライ構造を構成する。トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。
【0022】
[傾斜ラグ溝]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、トレッドパターンの一例を示している。
【0023】
空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝2と、これらの周方向主溝2に区画されて成る複数の陸部31、32とをトレッド部に備える(図2参照)。例えば、この実施の形態では、4本の周方向主溝2により、3本のリブ31がトレッド部センター領域に区画され、また、左右一対の陸部32がトレッド部ショルダー領域に区画されている。これにより、リブを基調としたトレッドパターンが形成されている。
【0024】
また、トレッド部センター領域のリブ31が、傾斜ラグ溝4を有する。傾斜ラグ溝4は、タイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在するラグ溝であり、例えば、円弧形状、屈曲形状、直線形状などの任意の形状を有する。この実施の形態では、傾斜ラグ溝4が円弧形状を有している。また、複数の傾斜ラグ溝4が、所定ピッチを隔てつつ周期的にタイヤ周方向に配列されている。また、傾斜ラグ溝4は、セミクローズド構造を有し、一方の端部にて、リブ31を区画する一方の周方向主溝2に開口し、他方の端部にて、他方の周方向主溝2に開口せずにリブ31の内部で終端する。
【0025】
なお、この実施の形態では、リブ31を区画する一対の周方向主溝2、2のうち、傾斜ラグ溝4が開口する側の周方向主溝2を開口側周方向主溝と呼び、符号2_OPを付す。また、他方の周方向主溝2を終端側周方向主溝と呼び、符号2_CLを付す。
【0026】
[周方向主溝の溝壁の凹部]
図3は、図2に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁の凹部を示す説明図である。図4図6は、図3に記載した周方向主溝の溝壁の凹部を示す拡大図である。これらの図において、図3は、溝壁における凹部の配置構成を示し、図4は、凹部の平面図を示し、図5および図6は、凹部の深さ方向の断面図を示している。また、図3および図4では、凹部にハッチングを付してある。
【0027】
傾斜ラグ溝がセミクローズド構造を有する構成では、終端側周方向主溝側(傾斜ラグ溝が開口しない側)におけるリブのエッジ部の剛性が、タイヤ周方向に不均一となる。具体的には、傾斜ラグ溝の近傍にある区間Aの剛性が他の区間Bの剛性よりも低くなる。このため、高い剛性を有する区間Bが摩耗し易くなり、リブのエッジ部に偏摩耗が発生し易い。
【0028】
そこで、この空気入りタイヤ1は、セミクローズド型の傾斜ラグ溝を有するリブの偏摩耗を抑制するために、以下の構成を採用する(図3参照)。
【0029】
まず、リブ31の終端側周方向主溝2_CL側のエッジ部を基準としてリブ幅WLの10[%]以上40[%]以下の範囲内にある領域Xを定義する。この領域Xの範囲は、傾斜ラグ溝4がリブ31、32のエッジ部の剛性に与える影響を、適正に判断するための範囲である。また、この領域Xにおける傾斜ラグ溝4の延在範囲にかかるタイヤ周方向の区間Aと、領域Xから区間Aを除いたタイヤ周方向の区間Bとを定義する。リブ31の終端側周方向主溝2_CL側のエッジ部は、これらの区間Aおよび区間Bから成る。
【0030】
このとき、終端側周方向主溝2_CLが、複数の凹部5A、5Bをリブ31側の溝壁面に有する。これらの凹部5A、5Bは、例えば、セレーションあるいはローレットであり、タイヤ周方向に周期的あるいは連続的に配列されて繰り返しパターンを構成する。また、凹部5A、5Bは、例えば、直線形状、ジグザグ形状、波形状、所定方向に傾斜した曲線形状などの任意の平面形状を有し得る(図示省略)。
【0031】
また、区間Aに配置された凹部5Aの単位体積Vaと、区間Bに配置された凹部5Bの単位体積VbとがVa<Vbの関係を有する。なお、単位体積Va、Vbは、単位ピッチあたりの凹部5A、5Bの体積である。また、凹部5A、5Bは、例えば、矩形型、V字型、U字型などの任意の断面形状を有し得る。
【0032】
例えば、この実施の形態では、凹部5A、5Bが、タイヤ周方向に対して傾斜した直線状の傾斜細溝であり、相互に同一長さおよび同一幅を有する(図3および図4参照)。また、複数の凹部5A、5Bが、タイヤ周方向に所定間隔で周期的に配置されて、セレーションを構成する。また、これらの凹部5A、5Bが深さ方向に相互に異なる形状を有し、区間Bの凹部5Bの深さHbが、区間Aの凹部5Aの深さHaよりも深い(図5および図6参照)。具体的には、区間Bの凹部5Bの深さHbが、終端側周方向主溝2_CLの溝開口部側にて浅く(区間Aの凹部5Aと同じ)、溝底側にて深い。したがって、区間Bの凹部5Bの単位体積Vbが、区間Aの凹部5Aの単位体積Vaよりも大きい(Va<Vb)。また、これらの凹部5A、5Bが区間Aおよび区間Bにそれぞれ配置されることにより、区間Bにおけるエッジ部の剛性が区間Aにおけるエッジ部の剛性よりも小さく設定される。
【0033】
この空気入りタイヤ1では、傾斜ラグ溝4がセミクローズド構造を有するので、リブ31の終端側周方向主溝2_CL側のエッジ部にて、傾斜ラグ溝4の近傍にある区間Aの剛性が区間Bの剛性よりも低くなる。一方で、区間Aの凹部5Aの単位体積Vaが区間Bの凹部5Bの単位体積Vbよりも小さい(Va<Vb)ので、区間Aの剛性が区間Bの剛性よりも増加する。したがって、リブ31のエッジ部における区間Aの剛性と区間Bの剛性とが均一化されて、エッジ部の偏摩耗が抑制される。
【0034】
なお、この空気入りタイヤ1では、区間Aの剛性と区間Bの剛性とが均一となるように、区間Aの凹部5Aの単位体積Vaと区間Bの凹部5Bの単位体積Vbとが適宜設定される。これらの単位体積Va、Vbは、例えば、凹部5A、5Bの深さHa、Hb、幅Wa、Wbおよび長さLa、Lbにより任意に調整できる。
【0035】
このとき、区間Aの凹部5Aの長さLaが4.0[mm]≦La≦10.0[mm]の範囲内にあり、区間Bの凹部5Bの長さLbが6.0[mm]≦Lb≦12.0[mm]の範囲内にあることが好ましい(図4参照)。これにより、凹部5A、5Bの長さLa、Lbが適正化される。
【0036】
また、区間Aの凹部5Aの幅Waが0.3[mm]≦Wa≦1.0[mm]の範囲内にあり、区間Bの凹部5Bの幅Wbが0.5[mm]≦Wb≦2.0[mm]の範囲内にあることが好ましい(図4参照)。これにより、凹部5A、5Bの幅Wa、Wbが適正化される。なお、凹部5A、5Bの幅Wa、Wbは、凹部5A、5Bの全域における最大値として測定される。
【0037】
また、区間Aの凹部5Aの深さHaと、区間Bの凹部5Bの深さHbとが、0.3[mm]≦Ha≦1.0[mm]、1.3[mm]≦Hb≦3.0[mm]、且つ、Hb−Ha≧1.0[mm]の要件を満たすことが好ましい(図5および図6参照)。これにより、凹部5A、5Bの深さHa、Hbが適正化される。なお、凹部5A、5Bの深さHa、Hbは、終端側周方向主溝2_CLの溝壁面を基準として測定される。なお、凹部5A、5Bの深さHa、Hbは、凹部5A、5Bの全域における最大値として測定される。
【0038】
なお、この実施の形態では、区間Aの凹部5Aと区間Bの凹部5Bとが平面視にて同一長さ(La=Lb)かつ同一幅(Wa=Wb)の直線形状を有している(図4参照)。また、区間Aの凹部5Aの深さHaが一定であり、区間Bの凹部5Bの深さHbが終端側周方向主溝2_CLの溝底側に向かうに連れて増加している(図5および図6参照)。そして、これらの深さHa、Hbの差により、区間Aの凹部5Aの単位体積Vaと区間Bの凹部5Bの単位体積Vbとの間に差が形成されている。これにより、区間Aの剛性と区間Bの剛性とが均一化されている。
【0039】
また、この実施の形態では、区間Aの凹部5Aの配置間隔Daと、区間Bの凹部5Bの配置間隔Dbとが一定(Da=Db)に設定されている(図4参照)。このため、各凹部5A、5Bの単位体積Va、Vbのみが調整されて、区間Aの剛性と区間Bの剛性とが均一化されている。
【0041】
また、上記の構成では、区間Aの凹部5Aの配置間隔Daと、区間Bの凹部5Bの配置間隔Dbとが、1.5≦Da/Db≦3.0の関係を有することが好ましい。また、配置間隔Daが2.5[mm]≦Da≦5.0[mm]であり、配置間隔Dbが1.5[mm]≦Db≦3.0[mm]であることが好ましい。
【0042】
[周方向主溝の溝底の曲率半径]
図8図10は、図1に記載した空気入りタイヤ1の変形例を示す説明図である。これらの図において、図8および図9は、終端側周方向主溝2_CLのタイヤ子午線方向の断面図を示し、図10は、終端側周方向主溝2_CLの溝底の曲率半径Ra、Rbの変化を示している。これらの図において、図1図6の空気入りタイヤ1と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図2の構成では、終端側周方向主溝2_CLが、複数の凹部5A、5Bをリブ31側の溝壁面に有し(図3参照)、区間Aにおける凹部5Aの単位体積Vaと区間Bにおける凹部5Bの単位体積VbとがVa<Vbの関係を有することにより(図5および図6参照)、傾斜ラグ溝4に起因する区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が緩和されている。
【0044】
これに対して、図8および図9の構成では、区間Aにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝底の曲率半径Raと、区間Bにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝底の曲率半径Rbとが、Ra>Rbの関係を有する。かかる構成としても、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が緩和される。
【0045】
ここで、溝底の曲率半径とは、溝長さ方向に垂直な断面視にて、溝底の最大深さ位置と、リブの溝壁との接続部の曲率半径をいう。
【0046】
なお、区間Aのタイヤ周方向の長さL1は、10[mm]≦L1の範囲内にあることが好ましい。10[mm]≦L1となる構成では、傾斜ラグ溝4に起因して、区間Aにおけるリブ31のエッジ部の剛性が低下し易い。したがって、かかる構成に上記の構成が適用されることにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が効果的に緩和される。なお、L1の上限は、傾斜ラグ溝4のタイヤ周方向の長さにより制約を受ける。
【0047】
また、区間Bを中央部と左右の端部とに区分する。また、中央部のタイヤ周方向の長さL2と、左右の端部のタイヤ周方向の長さL3とを10[mm]≦L2および3[mm]≦L3≦15[mm]の範囲内とする(図10参照)。このとき、区間Aの曲率半径Raと、区間Bの中央部における曲率半径Rb_ceとが、4.5[mm]≦Ra≦15.0[mm]、1.5[mm]≦Rb_ce≦5.0[mm]および3.0[mm]≦Ra−Rb_ceの条件を満たす。なお、L2の上限は、傾斜ラグ溝4の配置間隔により制約を受ける。
【0048】
かかる構成では、2.0[mm]≦Raとすることにより、リブ31の剛性が適正に確保され、Ra≦15.0[mm]とすることにより、終端側周方向主溝2_CLの排水性が適正に確保される。また、1.5[mm]≦Rb_ceとすることにより、溝底におけるクラックの発生が抑制され、Rb_ce≦5.0[mm]とすることにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性バランスが適正化される。また、3.0[mm]≦Ra−Rb_ceとすることにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が適正化される。
【0049】
また、隣り合う区間A、Bにて、区間Aの曲率半径Raと、区間Bの中央部の曲率半径Rb_ceと、区間Bの端部の曲率半径とが連続する(図10参照)。すなわち、上記のように、区間Aの曲率半径Raと区間Bの中央部の曲率半径Rb_ceとは、相互に異なる範囲を有する。そこで、終端側周方向主溝2_CLの溝底に段差が生じないように、溝底の曲率半径を滑らかに変化させる。これにより、区間Aと区間Bとの接続部にて、リブ31のエッジ部の剛性を滑らかに変化させ得る。
【0050】
上記の構成としては、例えば、図10に示すように、区間Aにて、溝底の曲率半径Raが一定であり、区間Bの中央部にて、溝底の曲率半径Rbが最小値Rb_ceをとり、区間Bの両端部(曲率半径Rbが最小値Rb_ceをとる位置から区間Bの左右の区間A、Aとの境界位置までの部分)にて、溝底の曲率半径が単調増加あるいは単調減少する構成が挙げられる。
【0051】
なお、曲率半径の連続とは、数学的な連続をいうものとする。
【0052】
また、この空気入りタイヤ1では、図2の構成と図8および図9の構成とが併用されても良いし、図8および図9の構成のみが単独で用いられても良い。
【0053】
[周方向主溝の溝壁角度]
図11図15は、図1に記載した空気入りタイヤ1の変形例を示す説明図である。これらの図において、図11および図12は、終端側周方向主溝2_CLのタイヤ子午線方向の断面図を示し、図13は、終端側周方向主溝2_CLの溝壁角度θa、θbの変化を示している。また、図14は、リブ31がエッジ部に面取部を有する構成を示し、図15は、溝壁が多段構造を有する構成を示している。これらの図において、図1図6の空気入りタイヤ1と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図11および図12の構成では、区間Aにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝壁角度θaと、区間Bにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝壁角度θbとが、θa>θbの関係を有する。かかる構成としても、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が緩和される。
【0055】
ここで、溝壁角度は、タイヤ子午線方向の断面視にて、リブのエッジ部を通りリブの踏面に垂直な直線と、溝壁面とのなす角として測定される。なお、図14のように、リブ31がエッジ部に面取部を有する場合には、リブ31の踏面を延長した仮想線と、溝壁面を延長した仮想線との交点をとり、この交点を通りリブの踏面に垂直な直線と、溝壁面とのなす角が溝壁角度となる。また、図15のように、溝壁が溝深さ方向に傾斜角を変化させる多段構造を有する構成では、最も溝開口部側にある溝壁部分の溝壁角度が用いられる。
【0056】
なお、区間Aのタイヤ周方向の長さL1は、10[mm]≦L1の範囲内にあることが好ましい。
【0057】
また、区間Bを中央部と左右の端部とに区分する。また、中央部のタイヤ周方向の長さL2と、左右の端部のタイヤ周方向の長さL3とを10[mm]≦L2および3[mm]≦L3≦15[mm]の範囲内とする(図13参照)。このとき、区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの中央部における溝壁角度θb_ceとが、15[deg]≦θa≦35[deg]、5[deg]≦θb_ce≦10[deg]および10[deg]≦θa−θb_ceの条件を満たす。なお、L2の上限は、傾斜ラグ溝4の配置間隔により制約を受ける。
【0058】
かかる構成では、15[deg]≦θaとすることにより、リブ31の剛性が適正に確保され、θa≦35[deg]とすることにより、終端側周方向主溝2_CLの排水性が適正に確保される。また、5[deg]≦θb_ceとすることにより、溝底におけるクラックの発生が抑制され、θb_ce≦10[deg]とすることにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性バランスが適正化される。また、10[deg]≦θa−θb_ceとすることにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が適正化される。
【0059】
また、隣り合う区間A、Bにて、区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの中央部の溝壁角度θb_ceと、区間Bの端部の溝壁角度とが連続する(図13参照)。すなわち、上記のように、区間Aの溝壁角度θaと区間Bの中央部の溝壁角度θb_ceとは、相互に異なる範囲を有する。そこで、終端側周方向主溝2_CLの溝底に段差が生じないように、溝壁角度を滑らかに変化させる。これにより、区間Aと区間Bとの接続部にて、リブ31のエッジ部の剛性を滑らかに変化させ得る。
【0060】
上記の構成としては、例えば、図13に示すように、区間Aにて、溝壁角度θaが一定であり、区間Bの中央部にて、溝壁角度θbが最小値θb_ceをとり、区間Bの両端部(溝壁角度θbが最小値θb_ceをとる位置から区間Bを左右の区間A、Aとの境界位置までの部分)にて、溝壁角度が単調増加あるいは単調減少する構成が挙げられる。
【0061】
なお、溝壁角度の連続とは、数学的な連続をいうものとする。
【0062】
また、この空気入りタイヤ1では、図2の構成と図11および図12の構成とが併用されても良いし、図11および図12の構成のみが単独で用いられても良い。また、図2の構成と、図8および図9の構成と、図11および図12の構成とが併用されても良い。
【0063】
[適用例]
図16図20は、図1に記載した空気入りタイヤ1の変形例を示す説明図である。これらの図において、図16は、図2とは異なる傾斜ラグ溝4を有するトレッドパターンの一例を示し、図17は、領域Xおよび区間A、Bを示している。また、図18図20は、図2とは異なる傾斜ラグ溝4の一例を示している。
【0064】
図2の構成では、傾斜ラグ溝4が、リブ31を区画する一方の周方向主溝2_OPに開口すると共に、他方の終端側周方向主溝2_CLに開口せずにリブ31内で終端している(図3参照)。
【0065】
これに対して、図16のトレッドパターンでは、傾斜ラグ溝4が、リブ31を区画する一方の周方向主溝2_OPに開口すると共に、他方の終端側周方向主溝2_CLに開口せずに隣り合う他の傾斜ラグ溝4に連通している。具体的には、1つのリブ31が円弧形状を有する複数の傾斜ラグ溝4を有し、これらの傾斜ラグ溝4がタイヤ周方向に向きを揃えて連続的に配置されている。また、傾斜ラグ溝4が、一方の周方向主溝2_OPに開口し、リブ31内をタイヤ周方向に円弧状に湾曲しつつ延在して、隣り合う他の傾斜ラグ溝4にリブ31内にて開口している。これにより、タイヤ周方向に隣り合う傾斜ラグ溝4、4が相互に連通している。空気入りタイヤ1は、かかるトレッドパターンを有しても良い。
【0066】
また、図16のトレッドパターンにおいても、図2の構成と同一の定義により、領域Xおよび区間A、Bが規定される(図17参照)。
【0067】
また、図2のトレッドパターンでは、傾斜ラグ溝4が、円弧形状を有し、一方の端部にて周方向主溝2_OPに開口し、他方の端部にてリブ31内で終端している。
【0068】
しかし、これに限らず、図2のトレッドパターンにおいて、傾斜ラグ溝4が、屈曲形状を有しても良いし(図18および図19参照)、波状あるいは蛇行形状を有しても良い(図20参照)。
【0069】
また、この空気入りタイヤ1では、図2および図16のトレッドパターンにおいて、終端側周方向主溝2_CLの溝深さGDと溝幅GWとが、5.0[mm]≦GD≦12.0[mm]および5.0[mm]≦GW≦18.0[mm]の条件を満たすことが好ましい。かかる終端側周方向主溝2_CLでは、傾斜ラグ溝4に起因して、区間Aにおけるリブ31のエッジ部の剛性が低下し易い。したがって、かかる構成において、上記した図2の構成、図8および図9の構成、図11および図12の構成、または、これらの組み合わせにかかる構成が適用されることにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が効果的に緩和される。
【0070】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝2、2と、これらの周方向主溝2、2に区画されて成るリブ31と、リブ31に形成されると共にタイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在する傾斜ラグ溝4とを備える(図2参照)。また、傾斜ラグ溝4が、リブ31を区画する一方の周方向主溝2_OPに開口すると共に他方の周方向主溝(終端側周方向主溝)2_CLに開口せずにリブ31内で終端する(図3参照)、あるいは、隣り合う他の傾斜ラグ溝4に連通する(図17参照)。また、終端側周方向主溝2_CLが、タイヤ周方向に周期的あるいは連続的に配列される複数の凹部5A、5Bをリブ31側の溝壁面に有する。また、区間Aに配置された凹部5Aの単位体積Vaと、区間Bに配置された凹部5Bの単位体積VbとがVa<Vbの関係を有する(図5および図6参照)。
【0071】
かかる構成では、区間Bの凹部5Bの単位体積Vbが区間Aの凹部5Aの単位体積Vaよりも大きいので(Va<Vb)、傾斜ラグ溝4に起因する区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が緩和される。これにより、リブ31のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0072】
また、この空気入りタイヤ1では、区間Aの凹部5Aの幅Waが0.3[mm]≦Wa≦1.0[mm]の範囲内にあり、区間Bの凹部5Bの幅Wbが0.5[mm]≦Wb≦2.0[mm]の範囲内にある(図4参照)。これにより、凹部5A、5Bの幅Wa、Wbが適正化される。例えば、Wa<0.3[mm]となると、凹部5Aによる放熱効果が得られず、また、1.0[mm]<Waとなると、リブ31の剛性が低くなり過ぎるため、好ましくない。また、Wb<0.5[mm]となると、区間Aにおけるリブ31のエッジ部の剛性を低減できず、2.0[mm]<Wbとなると、溝壁にクラックが発生し易くなり、好ましくない。
【0073】
また、この空気入りタイヤ1では、区間Aの凹部5Aの深さHaと、区間Bの凹部5Bの深さHbとが、0.3[mm]≦Ha≦1.0[mm]、1.3[mm]≦Hb≦3.0[mm]、且つ、Hb−Ha≧1.0[mm]の要件を満たす(図5および図6参照)。これにより、凹部5A、5Bの深さHa、Hbが適正化される。例えば、Ha<0.3[mm]となると、凹部5Aによる放熱効果が得られず、また、1.0[mm]<Haとなると、リブ31の剛性が低くなり過ぎるため、好ましくない。また、Hb<1.0[mm]となると、区間Aにおけるリブ31のエッジ部の剛性を低減できず、3.0[mm]<Hbとなると、溝壁にクラックが発生し易くなり、好ましくない。また、Hb−Ha<1.0[mm]となると、区間Aおよび区間Bにおけるエッジ部の剛性差の均一化が難しくなり、好ましくない。
【0074】
また、この空気入りタイヤ1では、区間Aの凹部5Aの配置間隔Daと、区間Bの凹部5Bの配置間隔Dbとが1.5≦Da/Db≦3.0の範囲内にある(図4参照)。これにより、区間Bにおけるエッジ部の剛性が低減して、区間Aと区間Bとの間のエッジ部の剛性差が緩和される利点がある。
【0075】
また、この空気入りタイヤ1では、区間Aにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝底の曲率半径Raと、区間Bにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝底の曲率半径Rbとが、Ra>Rbの関係を有する(図8および図9参照)。これにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が緩和されて、リブ31のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0076】
また、この空気入りタイヤ1では、区間Aの曲率半径Raと、区間Bの中央部における曲率半径Rb_ceとが、4.5[mm]≦Ra≦15.0[mm]、1.5[mm]≦Rb_ce≦5.0[mm]および3.0[mm]≦Ra−Rb_ceの条件を満たす(図10参照)。これにより、区間Aの曲率半径Raと区間Bの曲率半径Rbとの関係が適正化されて、リブ31のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。

【0077】
また、この空気入りタイヤ1では、隣り合う区間A、Bにて、区間Aの曲率半径Raと、区間Bの中央部の曲率半径Rb_ceと、区間Bの前記端部の曲率半径とが連続する(図10参照)。これにより、区間Aと区間Bとの接続部にて、リブ31のエッジ部の剛性を滑らかに変化させ得るので、リブ31のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0078】
また、この空気入りタイヤ1では、区間Aにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝壁角度θaと、区間Bにおける終端側周方向主溝2_CLのリブ31側の溝壁角度θbとが、溝壁角度θa>θbの関係を有する(図11および図12参照)。これにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が緩和されて、リブ31のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0079】
また、この空気入りタイヤ1では、区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの中央部における溝壁角度θb_ceとが、15[deg]≦θa≦35[deg]、5[deg]≦θb_ce≦10[deg]および10[deg]≦θa−θb_ceの条件を満たす(図13参照)。これにより、区間Aの溝壁角度θaと区間Bの溝壁角度θbとの関係が適正化されて、リブ31のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0080】
また、この空気入りタイヤ1では、隣り合う区間A、Bにて、区間Aの溝壁角度θaと、区間Bの中央部の溝壁角度θb_ceと、区間Bの前記端部の溝壁角度とが連続する(図13参照)。これにより、区間Aと区間Bとの接続部にて、リブ31のエッジ部の剛性を滑らかに変化させ得るので、リブ31のエッジ部の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0081】
また、この空気入りタイヤ1では、終端側周方向主溝2_CLの溝深さGDと溝幅GWとが、5.0[mm]≦GD≦12.0[mm]および5.0[mm]≦GW≦18.0[mm]の条件を満たす(図3および図17参照)。かかる構成を適用対象とすることにより、リブ31のエッジ部の偏摩耗の抑制効果を効果的に得られる利点がある。
【実施例1】
【0082】
図7は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
【0083】
この実施例では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、耐偏摩耗性能に関する評価が行われた(図7参照)。これらの性能試験では、タイヤサイズ205/55R16の空気入りタイヤがリムサイズ16×6.5Jのリムに組み付けられ、この空気入りタイヤに空気圧230[kPa]およびJATMA規定の負荷能力が付与される。また、試験車両として、排気量1.4[L]の前輪駆動車両が用いられる。
【0084】
また、試験車両が所定の走行路を10000[km]走行し、その後に、リブの終端側周方向主溝(傾斜ラグ溝が開口しない側の周方向主溝)側のエッジ部に発生した偏摩耗が観察される。そして、この観察結果に基づいて5点法による評価が行われる。この評価は、点数が大きい方ほど偏摩耗が目立たず、好ましい。また、評価が4以上であれば、優位性があると認められる。
【0085】
また、この実施例では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、操縦安定性能に関する評価が行われた(図7参照)。この評価では、試験車両が1周2[km]の周回路を走行し、専門のテストドライバーがレーンチェンジ性能やコーナリング性能などに関してフィーリング評価を行う。この評価は、5点法で行われ、その数値が大きいほど好ましい。また、評価が4以上であれば、優位性があると認められる。
【0086】
実施例1〜6の空気入りタイヤ1は、セミクローズド構造を有する傾斜ラグ溝4を備える(図2および図3参照)。また、終端側周方向主溝2_CLが、ローレット状に配置された複数の凹部5A、5Bをリブ31側の溝壁面に有する(図4参照)。また、区間Aの凹部5Aの単位体積Vaと、区間Bの凹部5Bの単位体積VbとがVa<Vbの関係を有する(図5および図6参照)。これにより、区間Aと区間Bとの間のリブ31のエッジ部の剛性差が均一化されている。
【0087】
比較例1の空気入りタイヤは、実施例1の空気入りタイヤ1において、区間A、Bの凹部5A、5Bの単位体積Va、Vbが等しい(Va=Vb)。また、比較例2の空気入りタイヤは、区間Aの凹部5Aの単位体積Vaと、区間Bの凹部5Bの単位体積VbとがVa>Vbの関係を有する。
【0088】
試験結果に示すように、実施例1〜6の空気入りタイヤ1では、タイヤの耐偏摩耗性能が向上することが分かる(図7参照)。また、実施例1、2を比較すると、凹部5A、5Bの単位体積Va、VbをVa<Vbの関係を維持しつつ調整しても、同様の効果が得られることが分かる。また、実施例3〜5をみると、各区間A、Bの凹部5A、5Bの幅Wa、Wb、深さHa、Hbおよび配置間隔Da、Dbにより、凹部5A、5Bの単位体積Va、Vbの関係(Va<Vb)を調整できることが分かる。同様に、実施例6をみると、各区間A、Bの凹部5A、5Bの単位体積Va、Vbのみ(実施例6)により、凹部5A、5Bの単位体積Va、Vbの関係(Va<Vb)を調整できることが分かる。
【0089】
また、実施例1〜6の空気入りタイヤ1では、タイヤの操縦安定性能が向上することが分かる(図7参照)。
【実施例2】
【0090】
図21および図22は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
【0091】
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、耐偏摩耗性能および操縦安定性能に関する評価が行われた(図21および図22参照)。これらの評価方法は、上記の実施例1と同一なので、その記載を省略する。
【0092】
実施例7〜12の空気入りタイヤ1は、図2のトレッドパターンを有している。ただし、終端側周方向主溝2_CLが、凹部5A、5B(図5および図6参照)に代えて、図8および図9に記載した構成を有している。また、区間Aのタイヤ周方向の長さL1および区間Bの中央部のタイヤ周方向の長さL2が、L1=20[mm]およびL2=15[mm]に設定されている。また、区間Bの端部の溝底の曲率半径が単調増加あるいは単調減少することにより、区間Aの溝底の曲率半径Raと区間Bの中央部の溝底の曲率半径Rb_ceとが連続して滑らかに接続されている(図10参照)。
【0093】
実施例13〜18の空気入りタイヤ1は、図2のトレッドパターンを有している。ただし、終端側周方向主溝2_CLが、凹部5A、5B(図5および図6参照)に代えて、図11および図12に記載した構成を有している。また、区間Aのタイヤ周方向の長さL1および区間Bの中央部のタイヤ周方向の長さL2が、L1=20[mm]およびL2=10[mm]に設定されている。また、区間Bの端部の溝壁角度が単調増加あるいは単調減少することにより、区間Aの溝壁角度θaと区間Bの中央部の溝壁角度θb_ceとが連続して滑らかに接続されている(図13参照)。
【0094】
試験結果に示すように、実施例7〜18の空気入りタイヤ1では、タイヤの耐偏摩耗性能および操縦安定性能が向上することが分かる(図21および図22参照)。
【符号の説明】
【0095】
1 空気入りタイヤ、2_OP 開口側周方向主溝、2_CL 終端側周方向主溝、31 センター陸部(リブ)、32 ショルダー陸部、4 傾斜ラグ溝、5A、5B 凹部、11 ビードコア、12 ビードフィラー、13 カーカス層、14 ベルト層、141、142 ベルトプライ、15 トレッドゴム、16 サイドウォールゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22