特許第5831646号(P5831646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831646
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】スタッドピン及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/16 20060101AFI20151119BHJP
【FI】
   B60C11/16 A
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-544277(P2014-544277)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2014067523
(87)【国際公開番号】WO2015012070
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-153900(P2013-153900)
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢一
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−004906(JP,U)
【文献】 実公昭48−012649(JP,Y1)
【文献】 国際公開第2012/117962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤのトレッド部のスタッドピン取付用孔に装着するためのスタッドピンであって、
一方向に延在し、前記スタッドピン取付用孔内に埋設されたときに、前記スタッドピン取付用孔の側面から押圧されることで前記スタッドピンを前記トレッド部に固定するように構成された埋設基部と、
前記埋設基部が延在する一方向の端部に接続され、前記埋設基部が前記スタッドピン取付用孔内に埋設された状態で前記トレッド部から突出して路面と接触するように構成された先端部と、
を有し、
前記先端部は
前記埋設基部の延在方向に対して垂直な先端面と、
前記先端面から前記埋設基部に向かって延び、前記先端面とのなす角が鈍角となる傾斜側面と、
前記傾斜側面と隣接し、前記先端面又は前記傾斜側面から前記埋設基部に向かって延び、前記先端面に対して垂直な側面と、
を有し、
前記埋設基部と前記先端部との接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による断面積は、前記先端面の面積に比べて大きい、ことを特徴とするスタッドピン。
【請求項2】
前記先端部は、
前記先端面の縁のうち、対向する1対の第1の縁部から前記埋設基部に延び、前記先端面とのなす角が鈍角となる1対の前記傾斜側面と、
前記先端面の縁のうち、前記1対の第1の縁部同士を接続する1対の第2の縁部から前記埋設基部に延びる1対の前記垂直な側面と、
を有する、請求項1に記載のスタッドピン。
【請求項3】
前記先端面は長方形形状であり、
前記傾斜面は、前記先端面の短手方向の一対の辺から前記埋設基部に延び、
前記垂直な側面は、前記先端面の長手方向の一対の辺から前記埋設基部に延びる、ことを特徴とする請求項1に記載のスタッドピン。
【請求項4】
前記先端面は、前記先端面の縁のうち、対向する1対の第1の縁部および前記1対の第1の縁部同士を接続する1対の第2の縁部を有し、
前記先端部は、
前記1対の第1の縁部から前記埋設基部に延びる1対の第1傾斜側面と、
前記1対の第2の縁部から前記埋設基部に延びる1対の第2傾斜側面と、
前記第1傾斜側面又は前記第2傾斜側面の前記先端面に対して傾斜した辺から前記埋設基部に延びる前記垂直な側面と、
を有し、
前記埋設基部と前記先端部の接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は、十字形状である、請求項1に記載のスタッドピン。
【請求項5】
空気入りタイヤのトレッド部のスタッドピン取付用孔に装着するためのスタッドピンであって、
一方向に延在し、前記スタッドピン取付用孔内に埋設されたときに、前記スタッドピン取付用孔の側面から押圧されることで前記スタッドピンを前記トレッド部に固定するように構成された埋設基部と、
前記埋設基部が延在する一方向の端部に接続され、前記埋設基部が前記スタッドピン取付用孔内に埋設された状態で前記トレッド部から突出して路面と接触するように構成された先端部と、
を有し、
前記先端部は前記埋設基部の延在方向に対して垂直な先端面を有し、
前記埋設基部と前記先端部との接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による断面積は、前記先端面の面積に比べて大きく、
前記先端面は四角形状であり、前記埋設基部と前記先端部の接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は、十字形状であり、
前記先端面の4つの各辺から前記十字形状の4つの各端部まで延びる4つの傾斜側面を有する、ことを特徴とするスタッドピン。
【請求項6】
前記埋設基部は、前記先端部側から順に、胴体部と、前記胴体部よりも最大外径が小さいシャンク部と、前記胴体部および前記シャンク部よりも最大外径が大きい底部とを備え、
前記胴体部は外周側面に複数の凹部を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスタッドピン。
【請求項7】
空気入りタイヤのトレッド部のスタッドピン取付用孔に装着するためのスタッドピンであって、
一方向に延在し、前記スタッドピン取付用孔内に埋設されたときに、前記スタッドピン取付用孔の側面から押圧されることで前記スタッドピンを前記トレッド部に固定するように構成された埋設基部と、
前記埋設基部が延在する一方向の端部に接続され、前記埋設基部が前記スタッドピン取付用孔内に埋設された状態で前記トレッド部から突出して路面と接触するように構成された先端部と、
を有し、
前記先端部は凹多角錐台形状であり、前記埋設基部の延在方向に対して垂直な凹多角形状の先端面と、
前記先端面の各辺から前記埋設基部に延びる傾斜側面により形成され、周方向に離間した4つの凹部とを有し、
前記埋設基部と前記先端部の接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は、全体として十字形状の凹多角形であり、
前記切断面の断面積は、前記先端面の面積に比べて大きく、
前記埋設基部は、前記先端部側から順に、胴体部と、前記胴体部よりも最大外径が小さいシャンク部と、前記胴体部および前記シャンク部よりも最大外径が大きい底部とを備え、
前記胴体部の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は略四角形状であり、
前記胴体部は、外周側面に周方向に離間し、かつ前記埋設基部の延在方向の全長にわたって延在する4つの凹部を有し、
前記底部の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は略四角形状であり、
前記底部は、外周側面に周方向に離間し、かつ前記埋設基部の延在方向の全長にわたって延在するた4つの凹部を有し、
前記先端部の凹部、前記胴体部の凹部および前記底部の凹部はスタッドピンの中心軸に対して同一方向に配置されるように設けられている、ことを特徴とするスタッドピン。
【請求項8】
前記先端面の面積S1に対する前記接続部分の前記断面積S2の面積比率S2/S1は、1.25以上7.5以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスタッドピン。
【請求項9】
前記傾斜側面の前記埋設基部の平面に対する傾斜角度は30〜60度である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスタッドピン。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のスタッドピンを、前記スタッドピン取付用孔に装着したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスタッドピンを、前記垂直な側面の少なくとも1つがタイヤ周方向と平行となるように、前記スタッドピン取付用孔に装着したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのトレッド部に装着されるスタッドピン及びこのスタッドピンを装着した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の氷雪路用タイヤでは、タイヤのトレッド部にスタッドピンが装着され、氷上路面においてグリップが得られるようになっている。
一般のスタッドピンは、トレッド部に設けられたスタッドピン取付用孔に埋め込まれる。スタッドピン取付用孔にスタッドピンを埋め込むとき、スタッドピン取付用孔の孔径を拡張し、この状態のスタッドピン取付用孔にスタッドピンを挿入することで、スタッドピンがスタッドピン取付用孔にきつく埋め込まれる。これにより、タイヤ転動中に路面から受ける制駆動力や横力によるスタッドピンのスタッドピン取付用孔からの抜け落ちを防いでいる。
【0003】
氷上の引っかき力の向上および軽量化を実現するタイヤ用スパイク(スタッドピン)が知られている(特許文献1)。当該スタッドピンは、中心軸に沿った方向の一端面側からタイヤのトレッド面に形成された有底孔に嵌め込まれてトレッド面に取り付けられる柱体と、前記柱体の中心軸に沿った方向の他端面より前記中心軸に沿った方向に突出するピンとを備える。前記ピンは、前記柱体の他端面より突出して前記柱体の中心軸に沿った方向に延長する円柱体の他端面と周面とに跨る部分を除去した窪み部を備えた異形柱体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/117962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スタッドピンを用いた氷雪路用タイヤは、氷上路面のみならず、コンクリート路面やアスファルト路面上をも転動する場合がある。コンクリート路面やアスファルト路面は氷上路面に比べて表面が硬い。これらの表面が硬い路面から受ける力によって制駆動時やコーナリング時に多くのスタッドピンがタイヤから抜ける場合がある。
【0006】
本発明は、空気入りタイヤの氷上性能を向上しつつ、コンクリート路面やアスファルト路面を走行時に抜けるスタッドピンの数をより一層低減するために、空気入りタイヤから抜け難いスタッドピン、および、このスタッドピンが装着された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、空気入りタイヤのトレッド部のスタッドピン取付用孔に装着されるスタッドピンである。当該スタッドピンは、一方向に延在し、前記スタッドピン取付用孔内に埋設されたときに、前記スタッドピン取付用孔の側面から押圧されることで前記スタッドピンを前記トレッド部に固定するように構成された埋設基部と、前記埋設基部が延在する一方向の端部に接続され、前記埋設基部が前記スタッドピン取付用孔内に埋設された状態で前記トレッド部から突出して路面と接触するように構成された先端部と、を有する。前記先端部は前記埋設基部の延在方向に対して垂直な先端面を有し、前記埋設基部と前記先端部との接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による断面積は、前記先端面の面積に比べて大きい。
【0008】
ここで、前記先端面の面積S1に対する前記接続部分の前記断面積S2の面積比率S2/S1は、1.25以上7.5以下であることが好ましい。
【0009】
前記埋設基部は、前記先端部が突出する平面を有し、前記先端部は、前記先端面から前記埋設基部に延びる傾斜側面を有し、前記傾斜側面の前記埋設基部の平面に対する傾斜角度は30〜60度であることが好ましい。
【0010】
前記先端面の形状は、多角形形状であることが好ましい。例えば、三角形形状、四角形形状、五角形形状等であることが好ましい。特に、前記先端面の形状は、4×n角形形状(nは自然数。例えば四角形形状、八角径形状、十二角形形状、…等。)であることが好ましい。先端面の形状を4×n角形形状とすることで、例えばタイヤ周方向に配置された辺およびタイヤ幅方向に配置される辺によりタイヤの制動性能を高めることができる。
また、前記先端面の形状は、凹多角形形状であることが好ましい。ここで、凹多角形とは、少なくともいずれか1つの内角が180度を超える多角形であり、例えば、十字形状や星形多角形状である。凹多角形の頂点は4n個(nは自然数)であることが好ましい。
なお、多角形の角部は丸みを帯びていてもよい。また、多角形の辺の一部又は全部が弧になっていてもよい。
【0011】
前記先端部は多角錐台形状であることが好ましい。例えば、三角錐台形状、五角錐台形状等であることが好ましい。
特に、前記先端部は四角錐台形状であることが好ましい。
【0012】
先端部は長方形形状であり、対向する2辺から前記埋設基部に延びる1対の傾斜側面を有することが好ましい。多角形の角部は丸みを帯びていてもよい。また、多角形の辺の一部又は全部が弧になっていてもよい。先端部の長方形形状の短手方向の辺から前記埋設基部に延びる1対の傾斜側面を有することが好ましい。長方形形状の長手方向がタイヤ周方向と一致するようにスタッドピン取付用孔に取り付けられることが好ましい。この構成により、傾斜面がタイヤ周方向を向くことでスタッドピンに作用するモーメントを低減することができる一方、長手方向の辺によりタイヤ幅方向の力に対する制動性能を高めることができる。
【0013】
前記先端面は四角形状であり、前記埋設基部と前記先端部の接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は、十字形状であり、
前記先端面の4つの各辺から前記十字形状の4つの各端部まで延びる4つの傾斜側面を有することが好ましい。4つの傾斜側面のうち、1対の傾斜側面はタイヤ周方向を向くように配置され、他の1対の傾斜側面はタイヤ幅方向を向くように配置されることが好ましい。
【0014】
前記先端面の形状、および、前記埋設基部と前記先端部の接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は、十字形状であり、
前記先端面の十字形状の4つの各端部から前記埋設基部まで延びる4つの傾斜側面を有することが好ましい。4つの傾斜側面のうち、1対の傾斜側面はタイヤ周方向を向くように配置され、他の1対の傾斜側面はタイヤ幅方向を向くように配置されることが好ましい。
【0015】
前記埋設基部は、前記先端部側から順に、胴体部と、前記胴体部よりも最大外径が小さいシャンク部と、前記胴体部および前記シャンク部よりも最大外径が大きい底部とを備え、
前記胴体部は外周側面に複数の凹部を有することが好ましい。
【0016】
前記先端部は凹多角錐台形状であり、周方向に離間した4つの凹部を有し、
前記先端面、および、前記埋設基部と前記先端部の接続部分の、前記埋設基部の延在方向と直交する平面による切断面の形状は、全体として十字形状の凹多角形であり、
前記埋設基部は、前記先端部側から順に、胴体部と、前記胴体部よりも最大外径が小さいシャンク部と、前記胴体部および前記シャンク部よりも最大外径が大きい底部とを備え、
前記胴体部は外周側面に周方向に離間した4つの凹部を有し、
前記先端部の凹部と前記胴体部の凹部はスタッドピンの中心軸に対して同一方向に配置されるように設けられていることが好ましい。
また、前記底部は外周側面に周方向に離間した4つの凹部を有し、
前記先端部の凹部と前記底部の凹部はスタッドピンの中心軸に対して同一方向に配置されるように設けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の一態様は、空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤでは、前記スタッドピンが、空気入りタイヤのトレッド部の前記スタッドピン取付用孔に装着される。
【発明の効果】
【0018】
上述の態様によれば、空気入りタイヤの氷上性能を向上しつつ、空気入りタイヤから抜け難いスタッドピンを提供することができる。また、従来に比べて抜け落ちるスタッドピンの数が少なく、氷上性能が向上するスタッドピンを装着した空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の空気入りタイヤの断面を示すタイヤ断面図である。
図2】本実施形態のタイヤのトレッドパターンを平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。
図3】本発明の第1の実施形態のスタッドピン50Aの外観斜視図である。
図4】トレッド部に装着されたスタッドピン50Aの側面図である。
図5】従来のスタッドピン150に路面Sから作用する力を説明するための模式図である。
図6】スタッドピン50Aに路面Sから作用する力を説明するための模式図である。
図7】本発明の第2の実施形態のスタッドピン50Bの外観斜視図である。
図8】本発明の第3の実施形態のスタッドピン50Cの外観斜視図である。
図9】本発明の第4の実施形態のスタッドピン50Dの外観斜視図である。
図10】本発明の第5の実施形態のスタッドピン50Eの外観斜視図である。
図11】本発明の第6の実施形態のスタッドピン50Fの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(タイヤの全体説明)
以下、本実施形態の空気入りタイヤについて説明する。図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以降、タイヤという)10の断面を示すタイヤ断面図である。タイヤ10は、トレッド部にスタッドピンが埋め込まれたスタッドタイヤである。
タイヤ10は、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2012(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
以降で具体的に説明する各パターン要素の寸法の数値は、乗用車用タイヤにおける数値例であり、本発明である空気入リタイヤはこれらの数値例に限定されない。
【0021】
以降で説明するタイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心にタイヤ10を回転させたとき、トレッド面の回転する方向(両回転方向)をいう。タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に対して直交して延びる放射方向をいう。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸からタイヤ径方向に離れる方向をいう。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸方向に平行な方向をいう。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ10のタイヤセンターラインCLから離れる両方の方向をいう。
【0022】
(タイヤ構造)
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ層12と、ベルト層14と、ビードコア16とを有する。タイヤ10は、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
【0023】
図1に示すタイヤ10では、カーカスプライ層12は、一対の円環状のビードコア16の間にトロイダル形状に巻いたカーカスプライ材12a,12bを含む。カーカスプライ材12a,12bは、有機繊維をゴムで被覆してなる。カーカスプライ層12は、1つのカーカスプライ材で構成されてもよい。
カーカスプライ層12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト層14が設けられている。ベルト材14a,14bは、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材である。下層のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅は上層のベルト材14bの幅に比べて広い。ベルト材14aのスチールコードと、ベルト材14bのスチールコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆方向に傾斜し、互いに交錯する。ベルト層14は、タイヤ10とリムとで囲まれるタイヤ空洞領域に充填される空気の圧力によるカーカスプライ層12の膨張を抑制する。
【0024】
ベルト層14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム部材18が設けられる。トレッドゴム部材18の両端部には、サイドゴム部材20が接続されてサイドウォール部が形成されている。
トレッドゴム部材18は、タイヤ径方向外側に設けられる上層トレッドゴム部材18aと、タイヤ径方向内側に設けられる下層トレッドゴム部材18bとの2層のゴム部材からなる。
サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられる。リムクッションゴム部材24はタイヤ10を装着するリムと接触する。
ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわしたカーカスプライ層12に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム部材26が設けられている。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側面を覆うベルトカバー層28を備える。ベルトカバー層28は、有機繊維をゴムで被覆してなる。
【0025】
タイヤ10は、このようなタイヤ構造を有するが、本発明の空気入りタイヤのタイヤ構造は、図1に示すタイヤ構造に限定されない。
【0026】
(トレッドパターン)
図2は、タイヤ10のトレッドパターン30を平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。タイヤ10は図2に示されるように、タイヤ周方向の一方の向きを示す回転方向Rが指定されている。回転方向Rの向きは、タイヤ10のサイドウォール表面に設けられた数字、記号等によって表示され指定されている。図2では、トレッド部に装着されるスタッドピンは省略されている。スタッドピン(図3参照)は、図2に示されるピン取付用孔に装着される。
【0027】
トレッドパターン30は、複数の第1傾斜溝31と、複数の第1ラグ溝32と、複数の第2傾斜溝33と、複数の第3傾斜溝34と、第2ラグ溝35と、第4傾斜溝36とを備えている。図2において、符号CLはタイヤのセンターラインを示す。
【0028】
第1傾斜溝31は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第1傾斜溝31は、センターラインCLから離間した位置を開始端とし、開始端からタイヤ回転方向Cと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向外側に向かって傾斜して延びている。第1傾斜溝31は、タイヤ幅方向外側に向かって溝幅が徐々に広くなり、開始端に向かって溝幅が徐々に狭くなる形状をしている。
【0029】
第1ラグ溝32は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第1ラグ溝32は、第1傾斜溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側端部からタイヤ回転方向Cと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向外側に向かって傾斜して接地端よりもタイヤ幅方向外側まで延びている。
【0030】
第2傾斜溝33は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第2傾斜溝33は、第1傾斜溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側端部からタイヤ回転方向Cと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向内側に向かって傾斜して、隣接する他の第1傾斜溝31まで延在している。
【0031】
第3傾斜溝34は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第3傾斜溝34は、第1ラグ溝32のそれぞれの途中からタイヤ回転方向Rと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向外側に向かって傾斜して延びている。第3傾斜溝34は、タイヤ幅方向外側に向かって溝幅が徐々に狭くなり、タイヤ幅方向内側に向かって溝幅が徐々に広くなる形状をしている。
【0032】
第2ラグ溝35は、タイヤ周方向に隣接する2つの第1ラグ溝32の間に、第1傾斜溝31および第2傾斜溝33と交差しない範囲で、第1ラグ溝32と平行に延在している。
【0033】
第3傾斜溝34は、第2ラグ溝35を突き抜けて延びている。第2ラグ溝35の第3傾斜溝34との交差部よりもタイヤ幅方向内側の部分35aの幅は、第3傾斜溝34との交差部よりもタイヤ幅方向外側の部分35bの幅よりも狭い。

第4傾斜溝36は、第1傾斜溝31の途中から、タイヤ周方向の一方向に向かうとともに、タイヤ幅方向内側に傾斜して延在している。
【0034】
第1傾斜溝31、第1ラグ溝32、第2傾斜溝33及びトレッド接地端により囲まれる陸部41には、サイプ43が設けられている。第1傾斜溝31および第2傾斜溝33よりもタイヤ幅方向内側の陸部42には、サイプ44が設けられている。サイプ44はタイヤ幅方向とほぼ平行に延在している。サイプ43はサイプ44に対して傾斜している。サイプ43がサイプ44に対して傾斜していることで、タイヤ10の旋回性能を高めることができる。
【0035】
図2に示すように、第1傾斜溝31、第1ラグ溝32、第2傾斜溝33及びトレッド接地端により囲まれる陸部41には、スタッドピン取付用孔45が設けられている。スタッドピン取付用孔45に後述するスタッドピン50Aが装着されることで、タイヤ10はスタッドタイヤとして機能し、氷上制動、氷上旋回といった氷上性能が高まる。
【0036】
(スタッドピン)
図3は、本発明の第1の実施形態のスタッドピン50Aの外観斜視図である。図4は、トレッド部のトレッドゴム部材18に設けられたスタッドピン取付用孔45に装着されたスタッドピン50Aの側面図である。
スタッドピン50Aは、埋設基部52と、先端部60Aと、を主に有する。埋設基部52は、装着される空気入りタイヤのトレッド部内に埋設される。埋設基部52の側面がスタッドピン取付用孔45の側面からトレッドゴム部材18に押圧されることによりスタッドピン50Aがトレッド部に固定される。スタッドピン50Aは、埋設基部52及び先端部60Aが、方向Xに沿ってこの順に形成されている。なお、方向Xは、埋設基部52の先端部60に向けて延びる延在方向であり、スタッドピン50Aをスタッドピン取付用孔45に装着したときに、トレッド部のトレッド面に対する法線方向と一致する。
埋設基部52は、底部54と、シャンク部56と、胴体部58と、を有する。底部54、シャンク部56、および胴体部58は、方向Xに沿ってこの順に形成されている。
【0037】
底部54は、先端部60Aと反対側の端部に位置している。底部54は円盤形のフランジ状である。底部54は、スタッドピン50Aが路面から受ける力によりスタッドピン50Aがスタッドピン取付用孔45内で回転することを防止する。
【0038】
シャンク部56は、胴体部58と底部54とを接続する。シャンク部56は円錐台形状である。シャンク部56の径は底部54および胴体部58の最大外径よりも小さい。このため、シャンク部56は胴体部58および底部54に対して凹んでおり、底部54および胴体部58がフランジ形状を成している。
【0039】
胴体部58は円筒形状である。胴体部58はシャンク部56と先端部60Aとの間に位置する。胴体部58は先端部60Aと接続されたフランジ状の部分である。胴体部58は、タイヤ10に装着されるとき、上端面58aをトレッド面と略面一に露出させた状態でトレッドゴム部材18内に埋設される。
【0040】
図4に示すように、先端部60Aは、トレッド部に装着された状態でトレッド面から突出する。先端部60Aは、路面と接触し、または氷を引っ掻く部分である。先端部60Aは、埋設基部52の上端面58aから円錐台形状に突出した部分である。先端部60Aは埋設基部52の延在方向(方向X)に対して垂直な先端面60a(方向X側の端面)を有する。先端部60Aは、先端面60aの外周部から埋設基部52の上端面58aに延びる傾斜側面60bを有している。傾斜側面60bの、胴体部58の上端面58aに対する傾斜角度θは鋭角であり、30〜60度であることが好ましい。本発明の実施形態においては、後述するように、傾斜側面60bが路面から受ける垂直抗力によりスタッドピン50Aに作用するモーメントを低減させることで、スタッドピン50Aのトレッド部からの抜けを抑制している。
【0041】
先端部60Aは、埋設基部52と同じ金属材料で作られてもよく、異なる金属材料でつくられてもよい。例えば、埋設基部52および先端部60Aがアルミニウムで構成されてもよい。また、埋設基部52はアルミニウムで構成され、先端部60Aはタングステンカーバイドで構成されてもよい。埋設基部52と先端部60Aとが異なる金属材料で構成される場合、先端部60Aに設けられた図示されない突出部を埋設基部52の胴体部58の上端面58aに形成された図示されない穴に打ち込んで嵌合させることにより、先端部60Aを埋設基部52に固定することができる。
【0042】
先端面60aの形状は円形である。埋設基部52と先端部60Aとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの断面の形状は円形である。図4に示すように、先端面60aの半径rよりも、接続部分の断面の半径rのほうが大きい。したがって、先端面60aの面積をS1とし、埋設基部52と接続する先端部60Aの接続部分を、方向Xと直交する方向に切断したときの断面積をS2とすると、S2>S1である。このため、先端部60Aのタイヤ周方向側の側面が、タイヤ周方向に対して傾斜する。このため、以下に説明するように、先端部60Aが路面から受ける力によって作られるモーメントを低減することができ、スタッドピン50Aのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0043】
図5は従来のスタッドピン150の先端部160が路面Sを引っ掻く状態を示す模式図である。従来の先端部160の側面は先端面158aと垂直である。このため、先端部160を方向Xと直交する方向に切断したときの切断面の面積は、切断位置に関わらず一定である。先端部160の側面が路面Sから力Fを受けるとき、この力Fによって底部154の端点Cを中心としてスタッドピン150が回転し、スタッドピン取付用孔45から抜けようとする。このとき端点Cから力Fまでの距離(ベクトル)をRとすると、端点Cの周りに働くモーメントN
=R×F
で表される。モーメントNが大きくなるほど、スタッドピンがトレッド部から抜け落ちやすくなる。
【0044】
図6は本実施形態のスタッドピン50Aの先端部60Aが路面Sを引っ掻く状態を示す模式図である。本実施形態のスタッドピン50Aでは、先端部60Aの傾斜側面60bが、上端面58aに対して傾斜している。このため、傾斜側面60aが路面Sから受ける力Fは、垂直抗力Fと、傾斜側面60bと路面Sとの静止摩擦力Fとに分解される。
ここで、傾斜側面60bと上端面58aとのなす角をθとすると、
=Fsinθ
となる。
また、力Fの傾斜側面60bに沿った分力Fcosθが傾斜側面60bと路面Sとの最大静止摩擦力以下の範囲では、摩擦力Fは分力Fcosθに等しくなる。すなわち、
=Fcosθ
となる。
【0045】
ここで、力Fにより端点Cの周りに働くモーメントNは、垂直抗力Fにより端点Cの周りに働くモーメントNと、摩擦力Fにより端点Cの周りに働くモーメントNとに分解される。このとき、
=N+N
が成立する。
端点Cから垂直抗力Fまでの距離(ベクトル)をRとすると、垂直抗力Fによって、端点Cに働くモーメントN
=R×F
となる。端点Cから摩擦力Fまでの距離(ベクトル)をRとすると、摩擦力Fによって、端点Cに働くモーメントN
=R×F
となる。
【0046】
一方、力Fが大きくなり、分力Fcosθが最大摩擦力を超える範囲では、傾斜側面60bが路面Sに対して僅かに滑る。なお、傾斜側面60bが路面Sに対する滑り量は、傾斜側面60bのタイヤ周方向の長さに比べて僅かである。このときの摩擦力F
=μF=μFsinθ(<F
となる。ここで、μは路面Sと傾斜側面60bとの動摩擦係数である。
【0047】
しかし、力Fが大きくなり、分力Fcosθが最大摩擦力を超えると、上述のように摩擦力Fが力Fの傾斜側面60と平行な分力(F=Fcosθ)よりも小さくなる。
摩擦力Fによって端点Cに働くモーメントN
=R×Fであるため、N<Nとなる。よって、
+N<N+N=N
となる。
したがって、スタッドピン50Aが抜ける程に大きな力が作用するときは、分力Fcosθは最大摩擦力を超えるので、路面から受ける力によるモーメントN+Nを、従来のスタッドピン150が受けるモーメントNと比較して低減することができ、スタッドピン50Aのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0048】
なお、面積比率S2/S1は、1.25以上7.5以下であることが好ましい。Sは、2.5mm以上7.0mm以下であることが好ましい。上端面58aから先端面60aまでの高さは、0.8mm〜1.5mmであることが好ましい。この場合に面積比率S2/S1を1.25よりも小さくすると、先端部60Aが路面から受ける力によりスタッドピン50Aに作用するモーメントが大きくなり、スタッドピン50Aがトレッドゴム部材18から抜け落ちやすくなる。一方、S2/S1を7.5よりも大きくするためには、Sを小さくする必要があり、Sが小さいと先端部60Aが路面と接触することで得られる引っ掻き力が不充分になる。先端部60Aと路面との接触により充分な引っ掻き力を得るために、S2/S1を3.0よりも小さくすることがより好ましい。
ここで、先端面60aの縁は面取りされて丸くなっている場合がある。この場合、先端面60aの面積Sは、埋設基部58の上端面58aから突出する先端部60Aの最大高さの95%以上の高さを有する部分の面積をいう。
また、θは鋭角であることが好ましく、30〜60度であることが好ましい。θが30度未満であると、先端部60Aが路面と接触することで得られる引っ掻き力が小さくなる。一方、θが60度よりも大きいと、先端部60Aが路面から受ける力によりスタッドピン50Aに作用するモーメントが大きくなる。
【0049】
このように、本発明の実施形態に係るスタッドピン50Aによれば、路面から受ける力によりスタッドピン50Aに作用するモーメントを、従来よりも低減することができ、スタッドピン50Aのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0050】
図7は本発明の第2の実施形態に係るスタッドピン50Bの斜視図である。本実施形態のスタッドピン50Bの埋設基部52の形状は第1の実施形態に係るスタッドピン50Aと同様であるが、先端部60Bの形状が先端部60Aの形状と異なる。
先端部60Bの形状は、四角錐台形状である。先端部60Bは、埋設基部52の延在方向(方向X)に対して垂直な先端面60a(方向X側の端面)と、先端面60aの各辺から胴体部58の上端面58aまで傾斜して延在する4つの傾斜側面60bとを有する。4つの傾斜側面60bの傾斜角度は全て同一であってもよいし、それぞれ独立に傾斜角度を変更してもよい。先端面60aの対向する1対の辺から延在する1対の傾斜側面60bの延在方向がタイヤ周方向に一致するようにスタッドピン50Bをスタッド部に装着してもよい。
【0051】
先端面60aの面積をS1とし、埋設基部52と先端部60Bとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの断面積をS2とすると、S2>S1である。このため、第1の実施形態の先端部60Aと同様に、タイヤ周方向側の側面が、タイヤ周方向に対して傾斜する。このため、第1の実施形態の先端部60Aと同様に、先端部60Bが路面から受ける垂直抗力のモーメントを低減することができ、スタッドピン50Bのトレッド部からの抜けを低減することができる。
なお、先端部60Bの形状は、円錐台形状や四角錐台形状に限らず、三角錐台形状や五角錐台形状等、埋設基部52の延在方向(方向X)に対して垂直な断面積が接続部分から先端に行くにしたがって小さくなるような多角錐台形状としてもよい。
【0052】
図8は本発明の第3の実施形態に係るスタッドピン50Cの斜視図である。本実施形態のスタッドピン50Cの埋設基部52の形状は第1の実施形態に係るスタッドピン50Aと同様であり、先端部60Cの形状が異なる。
本実施形態に係るスタッドピン50Cの先端部60Cの先端面60aは、長方形形状である。埋設基部52と先端部60Cとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの切断面の形状は、長方形の形状である。先端部60Cの長手方向および方向Xと垂直な方向から見た先端部60Cの形状は、台形形状である。先端部60Cの先端面60aの形状は、長方形の形状であり、短手方向の1対の辺が外側に凸となるように湾曲していもよい。この短手方向の1対の辺から胴体部58の上端面58aまでタイヤ周方向へ傾斜して2つの傾斜側面60bが延在している。傾斜側面60bは、先端面60aと上端面58aとの間に傾斜して延在する側辺を有する。この側辺、および、先端面60aの長手方向の1対の辺と、上端面58aとの間に、先端部60Cは台形形状の側面60dを有する。側面60dは上端面58aに対して略垂直であってもよいし、傾斜側面60bと同様に上端面58aに対して傾斜していてもよい。スタッドピン50Cは、側面60dの延在方向、すなわち、長方錐台形状の先端部60Cの底面(埋設基部52と先端部60Cとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの切断面)の長手方向がタイヤ周方向と一致するようにスタッドピン取付用孔に取り付けられることが好ましい。すなわち、1対の傾斜側面60bがタイヤ周方向を向くようにスタッドピン50Cをトレッド部に取り付けることが好ましい。これにより、傾斜側面60bが路面から受ける力によりスタッドピン50Cに作用するモーメントを、従来よりも低減することができ、スタッドピン50Cのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0053】
本実施形態においても、先端面60aの面積をS1とし、埋設基部52と先端部60Cとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの断面積をS2とすると、S2>S1である。さらに、先端部60Cをタイヤ幅方向から見ると台形形状であり、先端部60Cのタイヤ周方向側の側面が、タイヤ周方向に対して傾斜している。したがって、この傾斜した側面が路面から受ける垂直抗力のモーメントを低減することができ、スタッドピン50Cのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0054】
図9は本発明の第4の実施形態に係るスタッドピン50Dの斜視図である。本実施形態のスタッドピン50Dでは、埋設基部52の形状は第1の実施形態に係るスタッドピン50Aと同様であるが、先端部60Dの形状が異なる。
先端部60Dの先端面60aの形状は、外側に凸となるように湾曲した各辺を有する略四角形状である。先端面60aの各辺から胴体部58の上端面58aまで胴体部58の外周方向へ傾斜して4つの傾斜側面60bが延在している。先端部60Dはタイヤ径方向から見て全体として略十字形状に形成されている。埋設基部52と先端部60Dとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの切断面の形状は、全体として十字形状の凹多角形である。4つの傾斜側面60bの傾斜角度は全て同一であってもよいし、それぞれ独立に傾斜角度を変更してもよい。先端面60aの対向する1対の辺から延在する1対の傾斜側面60bの延在方向がタイヤ周方向に一致するようにスタッドピン50Bをスタッド部に装着してもよい。これにより、傾斜側面60bが路面から受ける力よりスタッドピン50Dに作用するモーメントを、従来よりも低減することができ、スタッドピン50Dのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0055】
傾斜側面60bの、先端面60aと上端面58aとの間に傾斜して延在する側辺から、上端面58aまで延在する側面60dが形成され、隣接する側面60d同士により凹部60cが形成されている。側面60dは上端面58aに対して略垂直に設けてもよいし、傾斜側面60bと同様に、上端面58aに対して傾斜させてもよい。凹部60cを形成することで、先端部60Dの路面を引っ掻くエッジを増やすことができ、スタッドピン50Dが路面から受ける引っ掻き力を増やすことができる。
【0056】
本実施形態においても、先端部60Dの先端面の面積をS1とし、埋設基部52と先端部60Dとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの断面積をS2とすると、S2>S1である。このため、先端部60Dのタイヤ周方向側の側面が、タイヤ周方向に対して傾斜する。したがって、第1の実施形態に係るスタッドピン50Aと同様に、先端部60Dが路面から受ける垂直抗力によりスタッドピン50Dに作用するモーメントを低減することができ、スタッドピン50Dのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0057】
図10は本発明の第5の実施形態に係るスタッドピン50Eの斜視図である。本実施形態のスタッドピン50Eでは、埋設基部52の形状は第1の実施形態に係るスタッドピン50Aと同様であるが、先端部60Eの形状が異なる。
【0058】
先端部60Eは、図4に示すように、トレッド部に装着された状態でトレッド面から突出し、路面と接触し、または氷を引っ掻く部分である。先端部60Eは、凹多角錐台形状であり、埋設基部52の上端面58aから断面台形状に突出している。先端部60Eは、埋設基部52の延在方向(方向X)に対して垂直な先端面60a(方向X側の端面)を有する。
【0059】
なお、先端面60aの形状、および、埋設基部52と先端部60Eとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの切断面の形状は、少なくともいずれか1つの内角が180度を超える、凹多角形状であることが好ましい。特に、先端面60aの形状、および、埋設基部52と先端部60Eとの接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの切断面の形状は、全体として十字形状の凹多角形であることが好ましい。凹多角形は同一面積の円や凸多角形よりも辺の長さの総和が多いため、先端面60aの形状を凹多角形状とすることで、先端部60Eの路面を引っ掻くエッジを増やすことができ、スタッドピン50Eが路面から受ける引っ掻き力を増やすことができる。例えば、先端面60aの形状を十字形状や星形多角形状とすることができる。
先端部60Eの、方向Xと直交する方向の断面形状は、先端面60aの形状と異なる形状であってもよいが、先端面60aの形状と相似形状であることが好ましい。
【0060】
本実施形態においても、先端面60aの面積をS1とし、埋設基部52と先端部60との接続部分を、方向Xと直交する平面により切断したときの断面積をS2とすると、S2>S1である。このため、先端部60Eのタイヤ周方向側の側面が、タイヤ周方向に対して傾斜する。このため、上記の実施形態と同様に、先端部60が路面から受ける垂直抗力のモーメントを低減することができ、スタッドピン50Aのトレッド部からの抜けを低減することができる。
【0061】
先端面60aの各辺から胴体部58の上端面58aまで傾斜して12面の傾斜側面60bが延在している。先端面60aの180度を超える内角を形成する辺から延在する少なくとも1対の傾斜側面60bにより、凹部60cが形成されている。凹部60cを形成することで、先端部60Eの路面を引っ掻くエッジを増やすことができ、スタッドピン50Aが路面から受ける引っ掻き力を増やすことができる。
【0062】
図11は本発明の第6の実施形態に係るスタッドピン50Fの斜視図である。本実施形態のスタッドピン50Fでは、先端部60Fの形状が第5の実施形態のスタッドピン50Eの先端部60Eと同様であるが、埋設基部52Fの形状が異なる。
スタッドピン50Fの埋設基部52Fは、底部54Fと、シャンク部56Fと、胴体部58Fと、を有し、底部54F、シャンク部56F、および胴体部58Fが、方向Xに沿ってこの順に形成されている。
【0063】
底部54Fのスタッドピン取付用孔45の側面と接触する外周側面には、凹部54aが形成されている。具体的には、底部54Fの断面は、角が丸くなった略4角形形状であり、この略4角形形状の4辺が凹んで4つの凹部54aがつくられている。底部54Fの断面は、角が丸くなった略4角形形状でなくてもよく、略3角形形状、5角形形状、6角形形状等の略多角形形状であってもよい。底部54Fが略多角形形状であることで、方向Xと平行なスタッドピン50Fの中心軸に対する回転運動が抑制される。なお、角を丸くすることで、スタッドピン取付用孔45の側面が底部54の尖った角により傷つくことを防ぐことができる。この場合、略多角形形状の少なくとも1辺において辺が凹んで凹部54aがつくられているとよい。勿論、略多角形形状の一部の辺あるいは全ての辺、すなわち、2辺、3辺、4辺、5辺、6辺等において辺が凹んで複数の凹部54aがつくられてもよい。凹部54aがつくられることで、底部54Fの単位体積当たりの表面積を増やすことができ、トレッド部のトレッドゴム部材18との接触面積を増やし、スタッドピン50Fの動きを拘束する摩擦力を増やすことができる。また、凹部54aにトレッドゴム部材18が入りこむことで、方向Xと平行なスタッドピン50Fの中心軸に対する回転運動が抑制される。
【0064】
シャンク部56Fは、胴体部58Fと底部54Fとを接続する部分である。シャンク部56Fは円筒形状であり、シャンク部56Fの径は底部54Fおよび胴体部58Fの最大外径よりも小さい。このため、シャンク部56は胴体部58および底部54Fに対して凹部を形成し、底部54Fおよび胴体部58Fがフランジ形状を成している。シャンク部56Fの外周側面には凹部が形成されていない。
【0065】
胴体部58Fは、シャンク部56Fと先端部60Fとの間に位置し、先端部60Fと接続されたフランジ状の部分である。胴体部58Fのスタッドピン取付用孔の側面から押圧される外周側面には、凹部58bが形成されている。この外周側面は、トレッド部のトレッドゴム部材18と接触して押圧されるので、スタッドピン50Fの動きを摩擦力により拘束する。
胴体部58Fを具体的に説明すると、胴体部58の方向Xと垂直な断面は、角が丸くなった略4角形形状であり、4辺が凹んで4つの凹部58bがつくられている。本実施形態では、凹部58bは外周側面に4つ設けられるが、凹部58bは少なくとも1つ以上、すなわち、1つ、2つ、あるいは3つ等設けられてもよい。胴体部58Fの断面は、角が丸くなった略4角形形状でなくてもよく、略3角形形状、5角形形状、6角形形状等の略多角形形状であってもよい。胴体部58Fが略多角形形状であることで、方向Xと平行な軸を中心とするスタッドピン50Fの回転運動が抑制される。なお、角を丸くすることで、スタッドピン取付用孔の側面がスタッドピン50Fの胴体部58Fの尖った角により傷つくことを防ぐことができる。
この場合、略多角形形状の少なくとも1辺において辺が凹んで凹部58bがつくられているとよい。勿論、略多角形形状の一部の辺あるいは全ての辺、すなわち、2辺、3辺、4辺、5辺、6辺等において辺が凹んで複数の凹部58bがつくられてもよい。凹部58bがつくられることで、胴体部58Fの単位体積当たりの表面積を増やすことができ、トレッド部のトレッドゴム部材18との接触面積を増やし、スタッドピン50Fの動きを拘束する摩擦力を増やすことができる。また、凹部58bにトレッドゴム部材18が入りこむことで、方向Xと平行なスタッドピン50Fの中心軸に対する回転運動が抑制される。
胴体部58Fは、タイヤ10に装着されるとき、上端面58aをトレッド面と略面一に露出させた状態でトレッドゴム部材18内に埋設される。
【0066】
本実施形態によれば、第5の実施形態に係るスタッドピン50Eと同様の効果が得られるとともに、埋設基部52Fの方向Xと平行な軸を中心とする回転運動を抑制することができ、スタッドピン50Fのトレッド部からの抜けを低減することができる。
なお、図11に示すように、凹部54、凹部58bおよび凹部60cは、スタッドピン50Fの中心軸に対して、同一方向に配置されるように設けられていることが好ましい。
【0067】
[実験例]
本実施形態のスタッドピンによる効果を確認するために、以下の比較例および実施例1〜9のスタッドピンを図1図2に示すタイヤ10に取り付けた。先端部60の先端面60aの面積S1をいずれも4.0mmとし、埋設基部52の上端面58aから先端面60aまでの高さをいずれも1.2mmとした。埋設基部52の形状は同一(図3図7図10の形状)とした。
次に、上記タイヤ10を乗用車に装着して、氷上性能を代表して氷上制動性能を調べるとともに、スタッドピンの抜け耐性(抜けにくさ)を調べた。
作製したタイヤのタイヤサイズは、205/55R16とした。乗用車は、排気量2000ccの前輪駆動のセダン型乗用車を用いた。タイヤの内圧条件は、前輪、後輪ともに230(kPa)とした。各タイヤの荷重条件は、前輪荷重を450kg重、後輪荷重を300kg重とした。
【0068】
比較例および実施例1〜6では、先端部と埋設基部との接続部分の断面積S2を変えることでS2/S1を変動させた。
〔比較例〕
比較例のスタッドピンには、図5に示す円筒形状の先端部を用いた。すなわち、先端面の形状(以下、「先端の形状」という)を円形とした。また、S2/S1=1.00とした。
〔実施例1〜9〕
実施例1〜9は、図3に示すように、円錐台形状の先端部を用いた。すなわち、先端面の形状(以下、「先端の形状」という)を円形とした。
2/S1は、実施例1では1.10、実施例2では1.25、実施例3では1.50、実施例4では2.50、実施例5では3.00、実施例6では3.25、実施例7では6.50、実施例8では7.00、実施例9では7.5とした。
【0069】
〔実施例10〜12〕
実施例10〜12では、S2/S1を一定(2.00)とし、先端の形状を変更した。すなわち、実施例10では、図3に示すように、先端の形状を円形とし、実施例11では、図7に示すように、先端の形状を四角形状とし、実施例12では、図10に示すように、先端の形状を十字形状とした。実施例11では、一対の傾斜側面60bの向きがタイヤ周方向となるようにスタッドピンをトレッド部に取付けた。実施例12では、いずれか一対の傾斜側面60bの向きがタイヤ周方向となるようにスタッドピンをトレッド部に取付けた。
【0070】
〔氷上制動性能〕
氷上制動性能は、走行速度40km/時から、ブレーキぺダルを最深位置まで一定の力で踏み込んで乗用車が停止するまでの距離(制動距離)を複数回(5回)測定し、測定値の平均値を算出した。
上記制動距離の測定値の平均値の逆数を、比較例における制動距離の測定値の平均値の逆数を基準として(指数100として)、指数化した。
結果を表1、表2に示す。
【0071】
〔スタッドピンの抜け耐性〕
スタッドピンの抜け耐性は、アスファルト路面あるいはコンクリート路面を含む乾燥路面上を車両が1000km走行したときの、装着した全スタッドピンの数に対するトレッド部に残ったスタッドピンの数の比率を求めた。
上記残ったスタッドピンの数の比率を、比較例における残ったスタッドピンの数の比率を基準として(指数100として)、指数化した。
結果を表1〜表3に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表1、表2の比較例、実施例1〜9の比較より、S2/S1>1とすることにより、氷上制動性能が向上するとともに、スタッドピンの抜け耐性が向上することがわかる。特に、1.25≦S2/S1≦7.00とすることで、氷上制動性能およびスタッドピンの抜け耐性をさらに向上させることができ、1.25≦S2/S1≦3.00とすることで、氷上制動性能およびスタッドピンの抜け耐性をより一層向上させることができる。
また、表3の実施例10〜実施例12の比較より、先端の形状を円形とするよりも四角形とするほうが氷上制動性能およびスタッドピンの抜け耐性が向上することがわかり、先端の形状を四角形とするよりも十字形とするほうが、氷上制動性能およびスタッドピンの抜け耐性がさらに向上することがわかる。
【0076】
以上、本発明のスタッドピン及び空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明の空気入りタイヤは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
図1
図2
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図8
図9
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図11