特許第5831650号(P5831650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831650
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/08 20060101AFI20151119BHJP
【FI】
   B60C19/08
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-557274(P2014-557274)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(86)【国際出願番号】JP2014068935
(87)【国際公開番号】WO2015012173
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-153487(P2013-153487)
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-88346(P2014-88346)
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】岸添 勇
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−192876(JP,A)
【文献】 特開平11−170814(JP,A)
【文献】 特開2013−111788(JP,A)
【文献】 特開2010−155549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/08
B60C 9/04
B60C 13/00
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部のリムと接触する箇所に設けられたリムクッションゴムと、
前記リムクッションゴムとともに配置されて前記リムクッションゴムの外面に前記リムと接触するように一端が露出し前記リムクッションゴムに隣接し電気を流し得るタイヤ構成部材に他端が接触して設けられており、前記リムクッションゴムよりも電気抵抗値が低い導電性ゴムと、
を備え、
前記導電性ゴムは、子午断面において、全体が、前記ビード部におけるビードコアのタイヤ径方向内側端を基準とする水平線よりもタイヤ径方向内側に配置され、かつ前記一端の位置における前記ビード部のプロファイルとの法線に対して±45°の範囲に前記他端が配置されることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
ビード部のリムと接触する箇所に設けられたリムクッションゴムと、
前記リムクッションゴムとともに配置されて前記リムクッションゴムの外面に前記リムと接触するように一端が露出し前記リムクッションゴムに隣接し電気を流し得るタイヤ構成部材に他端が接触して設けられており、前記リムクッションゴムよりも電気抵抗値が低い導電性ゴムと、
を備え、
前記導電性ゴムは、前記リムクッションゴムに隣接するタイヤ構成部材であるインナーライナー層に他端が接触して設けられることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端が、前記ビード部におけるビードコアのタイヤ径方向内側端を基準とする水平線よりもタイヤ径方向内側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端の位置における前記ビード部のプロファイルとの法線に対して±45°の範囲に前記他端が配置されることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記導電性ゴムは、前記リムクッションゴムに隣接するタイヤ構成部材であるカーカス層に他端が接触して設けられることを特徴とする請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記導電性ゴムは、子午断面における厚み方向の幅が0.5mm以上10.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記導電性ゴムは、子午断面における厚み方向の幅が0.5mm以上6.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端の厚み方向の幅が、前記他端との間の最大幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記導電性ゴムは、子午断面において、前記他端の厚み方向の幅が、前記一端との間の最大幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端の厚み方向の幅が、前記他端の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記導電性ゴムは、電気抵抗値が1×10Ω以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記導電性ゴムが複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
カーカス層のコートゴムおよびサイドウォール部のサイドゴムの60℃における損失正接tanδが0.12以下であり、かつ前記カーカス層のコートゴムおよび前記サイドウォール部のサイドゴムの電気抵抗値が1×10Ω以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
トレッド部に、トレッド部の外面に一端が露出しトレッド部の内部に他端が設けられたアーストレッドゴムを有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立することのできる空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1は、トレッド部と、サイドウォール部と、ビード部と、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至るカーカスと、カーカスのタイヤ半径方向外側にブレーカーを備えた空気入りタイヤであって、トレッド部、ブレーカーおよびサイドウォール部にそれぞれ形成されるトレッドゴム、ブレーカーゴムおよびサイドウォールゴムの体積固有抵抗は、いずれも1×10Ω・cm以上であり、さらにカーカスを構成するカーカスプライとサイドウォールゴムとの間、およびブレーカーとトレッド部の間に配置されて厚みが0.2mm〜3.0mmの導電性ゴムと、導電性ゴムと接続し一部がトレッド部の表面に露出するようにトレッド部に埋設される通電ゴムと、導電性ゴムの下端と連結しビード部のリムフランジに接する領域に配置されるクリンチと、を備え、導電性ゴム、通電ゴムおよびクリンチゴムの体積固有抵抗が1×10Ω・cm未満である空気入りタイヤが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−023504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の空気入りタイヤは、転がり抵抗を低く維持しながら路面とタイヤの走行時に発生する静電気を効果的に放出することを目的としている。しかし、特許文献1の空気入りタイヤは、カーカスを構成するカーカスプライとサイドウォールゴムとの間、およびブレーカーとトレッド部の間に配置されて厚みが0.2mm〜3.0mmの導電性ゴムと、導電性ゴムの下端と連結しビード部のリムフランジに接する領域に配置されるクリンチと、を備え、これらの体積固有抵抗が1×10Ω・cm未満とされている。すなわち、特許文献1の空気入りタイヤは、カーカスプライとサイドウォールゴムとの間、およびブレーカーとトレッド部の間の導電性ゴムや、ビード部のリムフランジに接する領域のクリンチゴムが、電気抵抗の低いゴム材で形成されている。この結果、電気抵抗の低いゴム材は、発熱が大きいため、耐転がり抵抗性能や高速耐久性能が低下する傾向となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の発明の空気入りタイヤは、ビード部のリムと接触する箇所に設けられたリムクッションゴムと、前記リムクッションゴムとともに配置されて前記リムクッションゴムの外面に前記リムと接触するように一端が露出し前記リムクッションゴムに隣接するタイヤ構成部材に他端が接触して設けられており、前記リムクッションゴムよりも電気抵抗値が低い導電性ゴムと、を備えることを特徴とする。
【0007】
この空気入りタイヤによれば、リムクッションゴムよりも電気抵抗値が低い導電性ゴムを備えることで、リムから入った電気が導電性ゴム、タイヤ構成部材を通ってトレッド部側に流れる。このため、リムクッションゴムに電気抵抗値を考慮せず低発熱性のゴムを採用することができ、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上することができる。この結果、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立することができる。
【0008】
第2の発明の空気入りタイヤは、第1の発明において、前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端が、前記ビード部におけるビードコアのタイヤ径方向内側端を基準とする水平線よりもタイヤ径方向内側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
水平線よりもタイヤ径方向内側となる範囲では、ビードコアがリムに嵌まり込むためリムとの接触圧が高く、高速走行時でも安定してリムに接触する。従って、この空気入りタイヤによれば、効率よく電気抵抗を低減しながら、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能との両立を図ることができる。
【0010】
第3の発明の空気入りタイヤは、第2の発明において、前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端の位置における前記ビード部のプロファイルとの法線に対して±45°の範囲に前記他端が配置されることを特徴とする。
【0011】
この空気入りタイヤによれば、法線に対して±45°の範囲に導電性ゴムの他端を配置することで、導電性ゴムの体積の増加を抑制するため、発熱を抑えて耐転がり抵抗性能および高速耐久性能をを維持することができる。
【0012】
第4の発明の空気入りタイヤは、第1〜第3のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、子午断面における厚み方向の幅が0.5mm以上10.0mm以下であることを特徴とする。
【0013】
導電性ゴムの幅が0.5mm未満である場合、導電性が低く電気抵抗低減効果が低下する傾向となる。一方、導電性ゴムの幅が10.0mmを超える場合、導電性ゴムの体積が大きく発熱が大きくなるため耐転がり抵抗性能および高速耐久性能が低下する傾向となる。従って、導電性ゴムの幅を0.5mm以上10.0mm以下とすることが、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立するうえで好ましい。
【0014】
第5の発明の空気入りタイヤは、第1〜第3のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、子午断面における厚み方向の幅が0.5mm以上6.0mm以下であることを特徴とする。
【0015】
導電性ゴムの幅が0.5mm未満である場合、導電性が低く電気抵抗低減効果が低下する傾向となる。一方、導電性ゴムの幅を6.0mm以下とすれば、導電性ゴムの体積の増加を抑制して発熱が大きくなることを抑える。従って、導電性ゴムの幅を0.5mm以上6.0mm以下とすることが、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立するうえでより好ましい。
【0016】
第6の発明の空気入りタイヤは、第1〜第5のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端の厚み方向の幅が、前記他端との間の最大幅よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
リム側に接触する導電性ゴムの一端の幅が途中の幅より広く形成されていることで、接触面積の増大により電気の入出が良好となり電気抵抗低減効果を顕著に得ることができる。
【0018】
第7の発明の空気入りタイヤは、第1〜第6のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、子午断面において、前記他端の厚み方向の幅が、前記一端との間の最大幅よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
構成部材側に接触する導電性ゴムの他端の幅が途中の幅より広く形成されているため、接触面積の増大により電気の入出が良好となり電気抵抗低減効果を顕著に得ることができる。
【0020】
第8の発明の空気入りタイヤは、第1〜第7のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、子午断面において、前記一端の厚み方向の幅が、前記他端の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0021】
導電性ゴムの一端の幅が他端の幅よりも広く形成されているため、リム側からの電気の入りがより良好となり電気抵抗低減効果をより顕著に得ることができる。
【0022】
第9の発明の空気入りタイヤは、第1〜第8のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、電気抵抗値が1×10Ω以下であることを特徴とする。
【0023】
この空気入りタイヤによれば、導電性ゴムが電気を通しやすく電気抵抗低減効果が顕著に得られる。一方、リムクッションゴムの電気抵抗値が1×10Ωを超えるため低発熱性のゴムを採用することができ、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上することができる。
【0024】
第10の発明の空気入りタイヤは、第1〜第9のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムが複数箇所に設けられていることを特徴とする。
【0025】
導電性ゴムを複数箇所に設けることで、電気抵抗低減効果を顕著に得ることができる。
【0026】
第11の発明の空気入りタイヤは、第1〜第10のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、前記リムクッションゴムに隣接するタイヤ構成部材であるカーカス層に他端が接触して設けられることを特徴とする。
【0027】
この空気入りタイヤによれば、カーカス層は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコアでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものであるため、このカーカス層に導電性ゴムの他端を接触させることで、リムから入った電気をトレッド部側に適宜流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0028】
第12の発明の空気入りタイヤは、第1〜第10のいずれか一つの発明において、前記導電性ゴムは、前記リムクッションゴムに隣接するタイヤ構成部材であるインナーライナー層に他端が接触して設けられることを特徴とする。
【0029】
この空気入りタイヤによれば、インナーライナー層は、カーカス層の内周面であって、各タイヤ幅方向両端部が一対のビード部のビードコアの下部に至り、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されて貼り付けられているものであるため、このインナーライナー層に導電性ゴムの他端を接触させることで、リムから入った電気をトレッド部側に適宜流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果を顕著に得ることができる。特に、カーカス層のコートゴムおよびサイドウォール部のサイドゴムを上記のごとく規定した場合、カーカス層のコートゴムおよびサイドウォール部のサイドゴムに低発熱性のゴムを採用することになり、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上する効果を顕著に得ることができ、しかも、インナーライナー層に導電性ゴムの他端を接触させることで、リムから入った電気をトレッド部側に適宜流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果をより顕著に得ることができる。この結果、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とをより高い次元で両立することができる。
【0030】
第13の発明の空気入りタイヤは、第1〜第12のいずれか一つの発明において、カーカス層のコートゴムおよびサイドウォール部のサイドゴムの60℃における損失正接tanδが0.12以下であり、かつ前記カーカス層のコートゴムおよび前記サイドウォール部のサイドゴムの電気抵抗値が1×10Ω以上であることを特徴とする。
【0031】
この空気入りタイヤによれば、カーカス層のコートゴムおよびサイドウォール部のサイドゴムを上記のごとく規定することで、カーカス層のコートゴムおよびサイドウォール部のサイドゴムに低発熱性のゴムを採用することになり、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上する効果を顕著に得ることができ、しかも高速操縦安定性能における耐熱ダレ性能の向上も図ることができる。
【0032】
第14の発明の空気入りタイヤは、第1〜第13のいずれか一つの発明において、トレッド部に、トレッド部の外面に一端が露出しトレッド部の内部に他端が設けられたアーストレッドゴムを有することを特徴とする。
【0033】
この空気入りタイヤによれば、アーストレッドゴムを有することで、リムから入った電気をトレッド部のトレッド面から路面に効果的に流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果を顕著に得ることができる。このため、トレッドゴムに低発熱性のゴムを採用することができ、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る空気入りタイヤは、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
図3図3は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図4図4は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図5図5は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図6図6は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図7図7は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図8図8は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図9図9は、リム組時にビード部に掛かる圧力を示すグラフである。
図10図10は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図11図11は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図12図12は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図13図13は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図14図14は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図15図15は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図16図16は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図17図17は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図18図18は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
図19図19は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図20図20は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0037】
図1および図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
【0038】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0039】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1および図2に示すように、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8と、インナーライナー層9とを備えている。
【0040】
トレッド部2は、トレッドゴム2Aからなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延びるリブ状の陸部23が複数形成される。なお、主溝22は、タイヤ周方向に沿って延在しつつ屈曲や湾曲して形成されていてもよい。また、トレッド面21は、陸部23において、主溝22に交差する方向に延在するラグ溝24が設けられている。本実施形態では、ラグ溝24をタイヤ幅方向最外側の陸部23に示す。ラグ溝24は、主溝22に交差していてもよく、またはラグ溝24は、少なくとも一端が主溝22に交差せず陸部23内で終端していてもよい。ラグ溝24の両端が主溝22に交差する場合、陸部23がタイヤ周方向で複数に分割されたブロック状の陸部が形成される。なお、ラグ溝24は、タイヤ周方向に対して傾斜して延在しつつ屈曲や湾曲して形成されていてもよい。
【0041】
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。すなわち、ショルダー部3は、トレッドゴム2Aからなる。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。このサイドウォール部4は、サイドゴム4Aからなる。図1に示すように、サイドゴム4Aは、タイヤ径方向外側の端部が、トレッドゴム2Aの端部のタイヤ径方向内側に配置され、タイヤ径方向内側の端部が、後述するリムクッションゴム5Aの端部のタイヤ幅方向外側に配置されている。また、図2に示すように、サイドゴム4Aは、タイヤ径方向外側の端部が、トレッドゴム2Aの端部のタイヤ径方向外側に配置されてショルダー部3まで延在していてもよい。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。このビード部5は、リムR(図3図8に二点鎖線で示す)と接触する外側部分に露出するリムクッションゴム5Aを有する。リムクッションゴム5Aは、ビード部5の外周をなすもので、ビード部5のタイヤ内側から下端部を経てタイヤ外側のビードフィラー52を覆う位置(サイドウォール部4)まで至り設けられている。なお、図3図8において、空気入りタイヤ1をリムRに装着した場合、リムクッションゴム5Aは、ビード部5のタイヤ内側のビードトウのタイヤ径方向内側部分がリムRに押圧されて変形する。
【0042】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。なお、図1および図2において、カーカス層6は、折り返された端部がビードフィラー52全体を覆うように設けられているが、折り返された端部がビードフィラー52の途中までを覆い、ビードフィラー52とリムクッションゴム5Aとが接触するように設けられていてもよい(図5参照)。また、カーカス層6の折り返された部分のタイヤ幅方向外側であって、リムクッションゴム5Aとの間に、スチールコードがコートゴムで被覆されたスチール補強層10(図6参照)が設けられていてもよい。
【0043】
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
【0044】
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1および図2で示すベルト補強層8は、ベルト層7全体を覆うように配置され、かつベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように積層配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、例えば、2層で、ベルト層7全体を覆うように配置されていたり、ベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されていたりしてもよい。また、ベルト補強層8の構成は、図には明示しないが、例えば、1層で、ベルト層7全体を覆うように配置されていたり、ベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されていたりしてもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
【0045】
インナーライナー層9は、タイヤ内面、すなわち、カーカス層6の内周面であって、各タイヤ幅方向両端部が一対のビード部5のビードコア51の位置まで至り、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されて貼り付けられている。インナーライナー層9は、タイヤ外側への空気分子の透過を抑制するためのものである。なお、インナーライナー層9は、図1および図2に示すようにビードコア51の下部(タイヤ径方向内側)に至り設けられているが、図8または図10に示すようにビード部5のタイヤ内側であってビードコア51の間近に至り設けられていてもよい。
【0046】
図3図8は、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である。
【0047】
上述した空気入りタイヤ1において、図3図8に示すように、リムクッションゴム5Aは、導電性ゴム11が設けられている。導電性ゴム11は、リムクッションゴム5Aとともに配置されてリムクッションゴム5Aの外面(タイヤ外側:ビード部5のタイヤ幅方向外側)であってリムRと接触する部分に一端11aが露出し、リムクッションゴム5Aに隣接するタイヤ構成部材に他端11bが接触して設けられている。また、導電性ゴム11は、リムクッションゴム5Aよりも電気抵抗値が低いゴム材からなる。この導電性ゴム11は、タイヤ周方向で連続して設けられていても、断続して設けられていてもよい。
【0048】
リムクッションゴム5Aに隣接するタイヤ構成部材とは、図3および図8ではカーカス層6を示し、図4および図7ではインナーライナー層9を示し、図5ではビードフィラー52を示し、図6ではスチール補強層10を示している。
【0049】
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、ビード部5のリムRと接触する箇所に設けられたリムクッションゴム5Aと、リムクッションゴム5Aとともに配置されてリムクッションゴム5Aの外面にリムRと接触するように一端11aが露出しリムクッションゴム5Aに隣接するタイヤ構成部材に他端11bが接触して設けられており、リムクッションゴム5Aよりも電気抵抗値が低い導電性ゴム11と、を備える。
【0050】
この空気入りタイヤ1によれば、リムクッションゴム5Aよりも電気抵抗値が低い導電性ゴム11を備えることで、リムRから入った電気が導電性ゴム11、タイヤ構成部材を通ってトレッド部2側に流れる。このため、リムクッションゴム5Aに電気抵抗値を考慮せず低発熱性のゴムを採用することができ、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上することができる。この結果、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立することができる。
【0051】
なお、導電性ゴム11は、図3図8に示すように、リムクッションゴム5Aに隣接するタイヤ構成部材に接触するが、複数のタイヤ構成部材に接触してもよく、リムRから入った電気を導電性ゴム11、タイヤ構成部材を通ってトレッド部2側に流す効果をより顕著に得ることができる。また、導電性ゴム11の位置は、リムクッションゴム5Aの外面に一端11aが露出しリムクッションゴム5Aに隣接するタイヤ構成部材に他端11bが接触する距離がより短い最短距離の位置に配置することが、リムRから入った電気を導電性ゴム11、タイヤ構成部材を通ってトレッド部2側に流す効果をより顕著に得るうえで好ましい。
【0052】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図4図7および図8に示すように、導電性ゴム11は、子午断面において、一端11aが、ビード部5におけるビードコア51のタイヤ径方向内側端を基準とする水平線Hよりもタイヤ径方向内側に配置されていることが好ましい。
【0053】
水平線Hは、子午断面カットサンプルを後述する正規リムのリム幅相当に固定した場合に、タイヤ赤道面CLに直交し、タイヤ幅方向に平行なものである。また、図4図7および図8において、範囲A−Bは、空気入りタイヤ1をリムRに組み込んだときに、ビード部5がリムRに接触する範囲である。そして、範囲A−B内において、位置Cはビードコア51のタイヤ内側端のタイヤ径方向内側であり、位置Dはビードコア51のタイヤ外側端のタイヤ径方向内側であり、位置Eは水平線H上であり、位置Fはビードコア51のタイヤ径方向外側のタイヤ外側であり、位置Gはビード部5のタイヤ外側の変曲点である。リム組時にビード部5に掛かる圧力を示すグラフである図9では、この範囲A−B内における各位置の圧力を示している。また、図9において、実線は静的時(車両の停止時または低速走行時)であり、破線は高速走行時(150km/h以上)のビード部5に掛かる圧力を示す。
【0054】
図9に示すように、水平線Hよりもタイヤ径方向内側となる位置Aから位置Eの範囲では、ビードコア51がリムRに嵌まり込むためリムRとの接触圧が高く、高速走行時でも安定してリムRに接触する。従って、ビードコア51のタイヤ径方向内側端を基準とする水平線Hよりもタイヤ径方向内側に導電性ゴム11の一端11aを配置することで、効率よく電気抵抗を低減しながら、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能との両立を図ることができる。なお、図9に示すように、位置Fから位置Gの範囲では、静的時はリムRとの接触圧が高いが、高速走行時はビードコア51を中心としてビード部5が変位し易く、リムRとの接触圧が低下する傾向となる。
【0055】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1および図2に示す空気入りタイヤ1の要部拡大図である図10に示すように、導電性ゴム11は、子午断面において、一端11aの位置Pにおけるビード部5のプロファイルとの法線Nに対して±45°の範囲に他端11bが配置されることが好ましい。
【0056】
図10に示すように、子午断面カットサンプルを後述する正規リムのリム幅相当に固定した状態において、一端11aの位置Pは、一端11aの厚み方向の幅の中心位置である。法線Nは、ビード部5のプロファイルの位置Pにおける接線Tに直交する。そして、この法線Nに対して±45°の範囲に他端11bを配置することで、導電性ゴム11の体積の増加を抑制するため、発熱を抑えて耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を維持することができる。
【0057】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1および図2に示す空気入りタイヤ1の要部拡大図である図11図16に示すように、導電性ゴム11は、子午断面における厚み方向の幅W1,W2,W3が0.5mm以上10.0mm以下であることが好ましい。
【0058】
幅W1は導電性ゴム11の一端11aと他端11bとの中間の最大(中間が広くなる場合)または最小寸法(中間が狭くなる場合)であり、幅W2は導電性ゴム11の一端11aの寸法であり、幅W3は導電性ゴム11の他端11bの寸法である。
【0059】
導電性ゴム11の幅W1,W2,W3の最小寸法が0.5mm未満である場合、導電性が低く電気抵抗低減効果が低下する傾向となる。一方、導電性ゴム11の幅W1,W2,W3の最大寸法が10.0mmを超える場合、導電性ゴム11の体積が大きく発熱が大きくなるため耐転がり抵抗性能および高速耐久性能が低下する傾向となる。従って、導電性ゴム11の幅W1,W2,W3を0.5mm以上10.0mm以下とすることが、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立するうえで好ましい。
【0060】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1および図2に示す空気入りタイヤの要部拡大図である図11図16に示すように、導電性ゴム11は、子午断面における厚み方向の幅W1,W2,W3が0.5mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
【0061】
導電性ゴム11の幅W1,W2,W3の各寸法が0.5mm未満である場合、導電性が低く電気抵抗低減効果が低下する傾向となる。一方、導電性ゴム11の幅W1,W2,W3の各寸法を6.0mm以下とすれば、導電性ゴム11の体積の増加を抑制して発熱が大きくなることを抑える。従って、導電性ゴム11の幅W1,W2,W3を0.5mm以上6.0mm以下とすることが、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とを両立するうえでより好ましい。
【0062】
ここで、図11では一端11aから他端11bに至り導電性ゴム11の幅W1,W2,W3が均等に形成された形態を示している。また、図12では、一端11aから他端11bに至り導電性ゴム11の幅W1が途中で広く形成された形態を示している。この図12に示す形態では、一端11aおよび他端11bの幅W2,W3が0.5mm以上あればよく、途中の広い幅W1が10.0mm(好ましくは6.0mm)以下であればよい。図12に示す形態は、導電性ゴム11の幅W1が途中で広く形成されているため、電気を通しやすく電気抵抗低減効果が顕著に得られる。また、図13では、導電性ゴム11の一端11aおよび他端11bの幅W2,W3が均等で途中の幅W1よりも広く形成された形態を示している。また、図14および図15では、導電性ゴム11の一端11aの幅W2または他端11bの幅W3の一方が広く形成された形態を示している。また、図16では、導電性ゴム11の一端11aおよび他端11bの幅W2,W3が途中の幅W1よりも広く形成され、かつ一端11aの幅W2が他端11bの幅W3よりも広く形成された形態を示している。この図13図16に示す形態では、途中の幅W1が0.5mm以上あればよく、一端11aおよび他端11bの幅W2,W3が10.0mm(好ましくは6.0mm)以下であればよい。図13図16に示す形態は、リムR側やタイヤ構成部材側に接触する導電性ゴム11の一端11aの幅W2や他端11bの幅W3が途中の幅W1より広く形成されているため、接触面積の増大により電気の入出が良好となり電気抵抗低減効果が顕著に得られる。しかも、図16に示す形態は、導電性ゴム11の一端11aおよび他端11bの幅W2,W3が途中の幅W1よりも広く形成され、かつ一端11aの幅W2が他端11bの幅W3よりも広く形成されているため、リムR側からの電気の入りがより良好となり電気抵抗低減効果がより顕著に得られる。
【0063】
従って、本実施形態の空気入りタイヤ1では、導電性ゴム11は、子午断面において、一端11aの厚み方向の幅W2が、他端11bとの間の最大幅W1よりも大きいことが好ましい。また、導電性ゴム11は、子午断面において、他端11bの厚み方向の幅W3が、一端11aとの間の最大幅W1よりも大きいことが好ましい。さらに、導電性ゴム11は、子午断面において、一端11aの厚み方向の幅W2が、他端11bの幅W3よりも大きいことが好ましい。
【0064】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、導電性ゴム11は、電気抵抗値が1×10Ω以下であることが好ましい。
【0065】
この空気入りタイヤ1によれば、導電性ゴム11が電気を通しやすく電気抵抗低減効果が顕著に得られる。一方、リムクッションゴム5Aの電気抵抗値が1×10Ωを超えるため低発熱性のゴムを採用することができ、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上することができる。
【0066】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、導電性ゴム11が複数箇所に設けられていることが好ましい。
【0067】
導電性ゴム11を複数箇所に設けることで、電気抵抗低減効果を顕著に得ることができる。この場合、図9に示すように、リムRへの接触圧が比較的高い位置A〜位置Eの範囲や位置Fから位置Gの範囲に導電性ゴム11の少なくとも一端11aを配置することが電気抵抗低減効果を図るうえで好ましい。特に、リムRへの接触圧が常に高い位置A〜位置Eの範囲の複数箇所に導電性ゴム11の少なくとも一端11aを配置することが電気抵抗低減効果を図るうえでより好ましい。さらに、リムRへの接触圧が常に高いビードコア51の下部(タイヤ径方向外側)である位置C〜位置Dの範囲の複数箇所に導電性ゴム11の少なくとも一端11aを配置することが電気抵抗低減効果を図るうえでさらに好ましい。
【0068】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、導電性ゴム11は、リムクッションゴム5Aに隣接するタイヤ構成部材であるカーカス層6に他端11bが接触して設けられることが好ましい。
【0069】
この空気入りタイヤ1によれば、カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものであるため、このカーカス層6に導電性ゴム11の他端11bを接触させることで、リムRから入った電気をトレッド部2側に適宜流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、カーカス層6のコートゴムおよびサイドウォール部4のサイドゴム4Aの60℃における損失正接tanδが0.12以下であり、かつカーカス層6のコートゴムおよびサイドウォール部4のサイドゴム4Aの電気抵抗値が1×10Ω以上であることが好ましい。なお、60℃における損失正接tanδは、空気入りタイヤ1から採取したサンプルの測定によるものとする。
【0071】
この空気入りタイヤ1によれば、カーカス層6のコートゴムおよびサイドウォール部4のサイドゴム4Aを上記のごとく規定することで、カーカス層6のコートゴムおよびサイドウォール部4のサイドゴム4Aに低発熱性のゴムを採用することになり、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上する効果を顕著に得ることができ、しかも高速操縦安定性能における耐熱ダレ性能の向上も図ることができる。
【0072】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、導電性ゴム11は、リムクッションゴム5Aに隣接するタイヤ構成部材であるインナーライナー層9に他端11bが接触して設けられることが好ましい。
【0073】
この空気入りタイヤ1によれば、インナーライナー層9は、カーカス層6の内周面であって、各タイヤ幅方向両端部が一対のビード部5のビードコア51の下部に至り、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されて貼り付けられているものであるため、このインナーライナー層9に導電性ゴム11の他端11bを接触させることで、リムRから入った電気をトレッド部2側に適宜流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果を顕著に得ることができる。特に、カーカス層6のコートゴムおよびサイドウォール部4のサイドゴム4Aを上記のごとく規定した場合、カーカス層6のコートゴムおよびサイドウォール部4のサイドゴム4Aに低発熱性のゴムを採用することになり、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上する効果を顕著に得ることができ、しかも、インナーライナー層9に導電性ゴム11の他端11bを接触させることで、リムRから入った電気をトレッド部2側に適宜流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果をより顕著に得ることができる。この結果、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能とをより高い次元で両立することができる。
【0074】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1および図2に示す空気入りタイヤ1の要部拡大図である図17および図18に示すように、トレッド部2に、トレッド部2の外面であるトレッド面21に一端12aが露出しトレッド部2の内部に他端12bが設けられたアーストレッドゴム12を有することが好ましい。
【0075】
この空気入りタイヤ1によれば、アーストレッドゴム12を有することで、リムRから入った電気をトレッド部2のトレッド面21から路面に効果的に流すことができ、電気抵抗低減性能を向上する効果を顕著に得ることができる。このため、トレッドゴム2Aに低発熱性のゴムを採用することができ、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0076】
ここで、図17および図18に示すように、トレッド部2をなすトレッドゴム2Aは、トレッド面21に露出するキャップトレッドゴム2Aaと、キャップトレッドゴム2Aaのタイヤ径方向内側であってベルト補強層8やベルト層7に隣接するアンダートレッドゴム2Abとを有する。そして、アーストレッドゴム12は、図17に示すように、キャップトレッドゴム2Aaに設けられ、他端12bがアンダートレッドゴム2Abに接触して配置されている。また、アーストレッドゴム12は、図18に示すように、アンダートレッドゴム2Abを貫通して他端12bがベルト補強層8やベルト層7に接触して配置されていてもよい。なお、キャップトレッドゴム2Aaは、近年ではシリカ配合量が増加する傾向にある。シリカは絶縁性のため電気を通しにくい。このため、図18に示すように、アンダートレッドゴム2Abを貫通して他端12bがベルト補強層8やベルト層7に接触して配置すれば、リムRから入った電気をトレッド部2のトレッド面21から路面により効果的に流すことができる。
【実施例】
【0077】
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、電気抵抗低減性能であるタイヤ電気抵抗値、耐転がり抵抗性能、高速耐久性能(キャンバー付)、高速操縦安定性能(耐熱ダレ性能)に関する性能試験が行われた(図19および図20参照)。
【0078】
この性能試験では、タイヤサイズ225/45R17 91Wの空気入りタイヤ(試験タイヤ)を、17×7.5Jの正規リムに組み付け、正規内圧(250kPa)を充填した。
【0079】
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0080】
電気抵抗低減性能であるタイヤ電気抵抗値の評価方法は、気温23℃、湿度50%の条件下にて1000[V]の電圧を印加して、トレッド面とリム間の抵抗値の電気抵抗値Ωが測定される。この評価は、数値が小さいほど放電性が優れ、電気抵抗低減性能が優れていることを示している。
【0081】
耐転がり抵抗性能の評価方法は、室内ドラム試験機が用いられ、荷重4kNおよび速度50km/h時における抵抗力が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、耐転がり抵抗性能が優れていることを示している。
【0082】
高速耐久性の評価方法は、試験タイヤを、規定内圧の120%増した内圧とし、温度80℃の環境下で5日間乾燥劣化させた後、規定内圧とし、ドラム径1707mmのキャンバー付ドラム試験機にて、速度120km/h、荷重負荷5kNで走行開始し、24時間ごとに速度を10km/hずつ増加させながら、タイヤが破損するまで試験を行ない、破損したときの走行距離を測定する。そして、この測定に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が大きいほど高速耐久性に優れていることを示している。
【0083】
高速操縦安定性能の評価方法は、試験タイヤを試験車両に装着して速度60km/h〜100km/hで走行させレーンチェンジ時およびコーナリング時における旋回安定性、剛性感、操舵性の項目について、熟練のドライバーによる官能評価により操縦安定性能を評価した。そして、この官能評価に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が大きいほど操縦安定性能が優れていることを示している。
【0084】
図19において、従来例および比較例の空気入りタイヤは、導電性ゴムを有していない。一方、実施例1〜実施例12の空気入りタイヤは、図3図5に参照する配置で、図11に参照する形状の導電性ゴムを有している。そして、実施例4〜実施例12の空気入りタイヤは、導電性ゴムの幅が規定の範囲である。実施例8〜実施例12の空気入りタイヤは、導電性ゴムの電気抵抗値が規定の範囲である。実施例10〜実施例12の空気入りタイヤは、カーカス層のコートゴムおよびサイドゴムの60℃における損失正接tanδや電気抵抗値が規定の範囲である。実施例3〜実施例12の空気入りタイヤは、導電性ゴムの他端がタイヤ構成部材としてのカーカス層に接触している。実施例11および実施例12の空気入りタイヤは、アーストレッドゴムを有し、実施例11の空気入りタイヤは、アーストレッドゴムがキャップトレッドゴムまで配置され、実施例12の空気入りタイヤは、アーストレッドゴムがアンダートレッドゴムまで貫通して配置されている。
【0085】
図20において、実施例13〜実施例27の空気入りタイヤは、図7図8に参照するように一端がビードコアのタイヤ径方向内側端の水平線よりもタイヤ径方向内側に配置され、他端が図8に参照するようにタイヤ構成部材としてのカーカス層に接触している導電性ゴムを有し(実施例13〜実施例24)、または他端が図7に参照するようにタイヤ構成部材としてのインナーライナー層に接触している導電性ゴムを有している(実施例25〜実施例27)。そして、実施例15〜実施例27の空気入りタイヤは、導電性ゴムの幅が規定の範囲である。実施例18〜実施例27の空気入りタイヤは、導電性ゴムの電気抵抗値が規定の範囲である。実施例19、実施例22〜実施例27の空気入りタイヤは、導電性ゴムの幅について一端が途中よりも大きい。実施例20、実施例22〜実施例27の空気入りタイヤは、導電性ゴムの幅について他端が途中よりも大きい。実施例21〜実施例27の空気入りタイヤは、導電性ゴムの幅について一端が他端よりも大きい。実施例24〜実施例27の空気入りタイヤは、カーカス層のコートゴムおよびサイドゴムの60℃における損失正接tanδや電気抵抗値が規定の範囲である。実施例26および実施例27の空気入りタイヤは、アーストレッドゴムを有し、実施例26の空気入りタイヤは、アーストレッドゴムがキャップトレッドゴムまで配置され、実施例27の空気入りタイヤは、アーストレッドゴムがアンダートレッドゴムまで貫通して配置されている。
【0086】
図19および図20の試験結果に示すように、実施例1〜実施例27の空気入りタイヤは、耐転がり抵抗性能および高速耐久性能と、電気抵抗低減性能であるタイヤ電気抵抗値とが両立され、実施例11、実施例12、実施例24〜実施例27の空気入りタイヤは、さらに高速安定性能が改善されていることが分かる。
【符号の説明】
【0087】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
21 トレッド面
2A トレッドゴム
2Aa キャップトレッドゴム
2Ab アンダートレッドゴム
4 サイドウォール部
4A サイドゴム
5 ビード部
5A リムクッションゴム
6 カーカス層
9 インナーライナー層
11 導電性ゴム
11a 一端
11b 他端
12 アーストレッドゴム
R リム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20