特許第5831692号(P5831692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831692
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20151119BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20151119BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   B41J2/14 301
   B41J2/01 301
   B05C5/00 101
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-190101(P2011-190101)
(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公開番号】特開2013-52512(P2013-52512A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】多田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】原 啓志
【審査官】 鈴木 友子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−260383(JP,A)
【文献】 特開2006−224424(JP,A)
【文献】 特開2002−144590(JP,A)
【文献】 特開2002−337362(JP,A)
【文献】 特開2005−254546(JP,A)
【文献】 特開2002−240289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − B41J 2/215
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッド本体と、
該ヘッド本体の液体を噴射する液体噴射面とは反対面側に設けられた流路部材と、
前記ヘッド本体と前記流路部材との間に設けられて、前記ヘッド本体よりも大きな面積を有する回路基板と、
前記ヘッド本体に前記液体噴射面の外側で周方向に亘って当接すると共に、前記流路部材に当該回路基板の外側で周方向に亘って当接して、前記流路部材及び前記ヘッド本体との間に前記回路基板を密封する空間を画成する蓋部材と、を具備し、
前記蓋部材と前記ヘッド本体との間を封止する内周シール部材が、前記蓋部材及び前記ヘッド本体の何れか一方に2色成形によって形成され、
前記蓋部材と前記流路部材との間を封止する外周シール部材が、前記蓋部材及び流路部材の何れか一方に2色成形によって形成されており、
前記蓋部材と前記ヘッド本体との前記内周シール部材が設けられていない他方には、前記内周シール部材に相対向する位置に当該内周シール部材に当接する内周リブが設けられており、
前記蓋部材と前記流路部材との前記外周シール部材が設けられていない他方には、前記外周シール部材に相対向する位置に当該外周シール部材に当接する外周リブが設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記内周シール部材と前記外周シール部材とは、前記ヘッド本体と前記流路部材との積層方向において、互いに高さの異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持する保持部材と、を具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
前記保持部材が、装置本体に被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドには、ノズル開口と連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせてノズル開口からインク滴を吐出する。
【0003】
ここで、インクジェット式記録ヘッドは、インク滴を吐出するヘッド本体と、ヘッド本体のインク滴が吐出される液体噴射面とは反対側に設けられた流路部材と、ヘッド本体と流路部材との間に設けられた回路基板と、を具備するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このインクジェット式記録ヘッドでは、回路基板がヘッド本体の液体噴射面よりも広いため、ヘッド本体とインクジェット式記録ヘッドが保持されるキャリッジ等の保持部材との間及び流路部材と保持部材との間にゴム等のシール部材が保持されて、保持部材とヘッド本体と流路部材とで画成された空間内に回路基板が密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−190246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような構成では、ヘッド本体と保持部材との間及び流路部材と保持部材との間の2カ所は、部品の公差、積層部材の積層方向の圧力の誤差などによって異なる高さに位置することがあり、異なる高さを1つのシール部材で封止するのは困難であるという問題がある。
【0007】
また、インクジェット式記録ヘッドがインクジェット式記録装置に搭載された際に、ヘッド本体の液体噴射面は紙等の被記録媒体に近接して設ける必要があるものの、被記録媒体の搬送方向においてヘッド本体の液体噴射面の前後には被記録媒体を搬送するローラー等の搬送手段が配置されるため、ヘッド本体の液体噴射面の前後、特に保持部材の回路基板に相対向する領域には空間が必要となる。このため、ヘッド本体と保持部材との間及び流路部材と保持部材との間の封止する2カ所は異なる高さに配置する必要がある。
【0008】
さらに、シール部材は、単体で2つの領域を封止するため、複雑な形状を有し、且つシール部材を位置決めする必要があるため、組み立て作業が煩雑であると共に、シール部材の位置決め不良によるインク漏れが発生する虞があるなどの問題がある。
【0009】
ちなみに、回路基板をヘッド本体よりも小さい面積として、ヘッド本体の液体噴射面とは反対面側に収まるようにすることも考えられるものの、回路基板を小さい面積にするには、多層に積層した回路基板を用いる必要があり、コストが高くなってしまうという問題がある。
【0010】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、部品点数を減少させて材料コスト及び組み立てコストを低減することができると共に、液体漏れを抑制することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するヘッド本体と、該ヘッド本体の液体を噴射する液体噴射面とは反対面側に設けられた流路部材と、前記ヘッド本体と前記流路部材との間に設けられて、前記ヘッド本体よりも大きな面積を有する回路基板と、前記ヘッド本体に前記液体噴射面の外側で周方向に亘って当接すると共に、前記流路部材に当該回路基板の外側で周方向に亘って当接して、前記流路部材及び前記ヘッド本体との間に前記回路基板を密封する空間を画成する蓋部材と、を具備し、前記蓋部材と前記ヘッド本体との間を封止する内周シール部材が、前記蓋部材及び前記ヘッド本体の何れか一方に2色成形によって形成され、前記蓋部材と前記流路部材との間を封止する外周シール部材が、前記蓋部材及び流路部材の何れか一方に2色成形によって形成されており、前記蓋部材と前記ヘッド本体との前記内周シール部材が設けられていない他方には、前記内周シール部材に相対向する位置に当該内周シール部材に当接する内周リブが設けられており、前記蓋部材と前記流路部材との前記外周シール部材が設けられていない他方には、前記外周シール部材に相対向する位置に当該外周シール部材に当接する外周リブが設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、蓋部材を設けることによって、回路基板が外部に露出されることがなく、液体噴射ヘッドのハンドリング時などに回路基板に接触するのを抑制することができると共に、回路基板に液体や塵埃などの異物が付着するのを抑制することができる。また、蓋部材又はヘッド本体及び流路部材と、内周シール部材及び外周シール部材とが、2色成形によって一体化されることで、部品点数を減らすことができる。また、蓋部材とヘッド本体及び流路部材とに対して外周シール部材及び内周シール部材の位置決めが不要となり、組み立てを簡略化することができると共に外周シール部材及び内周シール部材の位置ずれによる液体の侵入を抑制することができる。また、リブとシール部材とを当接させて封止することで、所望の領域をさらに確実に封止することができる。
ここで、前記内周シール部材と前記外周シール部材とは、前記ヘッド本体と前記流路部材との積層方向において、互いに高さの異なる位置に設けられていることが好ましい。これによれば、液体噴射ヘッドの無理な設計が不要となり、小型化を図ることができると共に、液体噴射面の周囲に空間を確保することができ、液体噴射装置に搭載した際に搬送手段等の邪魔になることがなく、被記録媒体に液体噴射面を近づけることができる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持する保持部材と、を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体噴射ヘッドは保持部材に保持される前に蓋部材によって回路基板が封止されているため、液体噴射ヘッド単体での回路基板に異物が付着する等の不具合を抑制することができる。また、小型化及び液体の侵入による回路基板の破壊を抑制した液体噴射装置を実現できる。
また、前記保持部材が、装置本体に被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動可能に設けられていてもよい。
また、他の態様は、液体を噴射するヘッド本体と、該ヘッド本体の液体を噴射する液体噴射面とは反対面側に設けられた流路部材と、前記ヘッド本体と前記流路部材との間に設けられて、前記ヘッド本体よりも大きな面積を有する回路基板と、前記ヘッド本体に前記液体噴射面の外側で周方向に亘って当接すると共に、前記流路部材に当該回路基板の外側で周方向に亘って当接して、前記流路部材及び前記ヘッド本体との間に前記回路基板を密封する空間を画成する蓋部材と、を具備し、前記蓋部材と前記ヘッド本体との間を封止する内周シール部材が、前記蓋部材及び前記ヘッド本体の何れか一方に2色成形によって形成され、前記蓋部材と前記流路部材との間を封止する外周シール部材が、前記蓋部材及び流路部材の何れか一方に2色成形によって形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、蓋部材を設けることによって、回路基板が外部に露出されることがなく、液体噴射ヘッドのハンドリング時などに回路基板に接触するのを抑制することができると共に、回路基板に液体や塵埃などの異物が付着するのを抑制することができる。また、蓋部材又はヘッド本体及び流路部材と、内周シール部材及び外周シール部材とが、2色成形によって一体化されることで、部品点数を減らすことができる。また、蓋部材とヘッド本体及び流路部材とに対して外周シール部材及び内周シール部材の位置決めが不要となり、組み立てを簡略化することができると共に外周シール部材及び内周シール部材の位置ずれによる液体の侵入を抑制することができる。
【0013】
ここで、前記内周シール部材と前記外周シール部材とは、前記ヘッド本体と前記流路部材との積層方向において、互いに高さの異なる位置に設けられていることが好ましい。これによれば、液体噴射ヘッドの無理な設計が不要となり、小型化を図ることができると共に、液体噴射面の周囲に空間を確保することができ、液体噴射装置に搭載した際に搬送手段等の邪魔になることがなく、被記録媒体に液体噴射面を近づけることができる。
【0014】
また、前記蓋部材と前記ヘッド本体との前記内周シール部材が設けられていない他方には、前記内周シール部材に相対向する位置に当該内周シール部材に当接する内周リブが設けられており、前記蓋部材と前記流路部材との前記外周シール部材が設けられていない他方には、前記外周シール部材に相対向する位置に当該外周シール部材に当接する外周リブが設けられていることが好ましい。これによれば、リブとシール部材とを当接させて封止することで、所望の領域をさらに確実に封止することができる。
【0015】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを保持する保持部材と、を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体噴射ヘッドは保持部材に保持される前に蓋部材によって回路基板が封止されているため、液体噴射ヘッド単体での回路基板に異物が付着する等の不具合を抑制することができる。また、小型化及び液体の侵入による回路基板の破壊を抑制した液体噴射装置を実現できる。
【0016】
また、前記保持部材が、装置本体に被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動可能に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部を拡大した断面図である。
図6】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を分解した斜視図であり、図3は、インクジェット式記録ヘッドの平面図であり、図4は、図3のA−A′線の断面図であり、図5は、図4の要部を拡大した断面図である。
【0019】
図示するように、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド10は、流路部材20と、流路部材20の一方面側に設けられたヘッド本体30と、流路部材20とヘッド本体30との間に設けられた回路基板40と、流路部材20のヘッド本体30側に設けられた蓋部材50と、を具備する。
【0020】
流路部材20は、外部の液体としてインクが貯留されたインクタンクやインクカートリッジなどの液体貯留手段が直接又はチューブ等を介して接続され、液体貯留手段からのインクをヘッド本体30に供給するものである。具体的には、流路部材20には、図1に示すように、液体貯留手段(図示なし)が接続される導入口21が一方面に形成されている。そして、導入口21から導入されたインクは、図示しない内部の液体流路に供給され、液体供給路のインクは図2に示す供給口22からヘッド本体30に供給される。
【0021】
なお、特に図示していないが、流路部材20の内部には、インクに含まれる気泡や異物を除去するフィルター、下流側の液体流路の圧力に応じて開閉して上流から下流に向かうインクの流れを制御する弁機構及び液体流路内のインクを加熱する加熱手段等を設けてもよい。
【0022】
また、図2に示すように、流路部材20の供給口22が開口する面側には、流路部材20の外周側の周方向に亘って連続する外周リブ23が設けられている。この外周リブ23は、流路部材20の外周側に周方向に亘って連続して設けることで、詳しくは後述する流路部材20とヘッド本体30との間に挟持された回路基板40の外側に周方向に亘って連続して設けられている。このような外周リブ23は、詳しくは後述する蓋部材50の外周シール部材52に圧接して、流路部材20と蓋部材50との間を封止する。
【0023】
ヘッド本体30は、流路部材20に固定される面とは反対側に、液体としてインク滴を吐出するノズルが開口する液体噴射面31が設けられている。また、ヘッド本体30の図示しない内部にはノズルに連通する液体流路及び液体流路内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段等が設けられている。かかる圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって液体流路の容積を変化させて液体流路内のインクに圧力変化を生じさせて、ノズルからインク滴を吐出させるものや、液体流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルからインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルからインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0024】
また、ヘッド本体30の液体噴射面31とは反対面側には、液体噴射面31の面方向に突出するフランジ部32が設けられている。このフランジ部32は、ヘッド本体30の側面(液体噴射面31とは交差する面)から、液体噴射面31の周囲に亘って液体噴射面31の面方向に突出して設けられている。
【0025】
このようなフランジ部32の液体噴射面31側の面には、液体噴射方向に向かって突出する内周リブ33が、外周に沿って周方向に亘って連続して設けられている。
【0026】
この内周リブ33は、詳しくは後述する蓋部材50の内周シール部材55に圧接して、ヘッド本体30と蓋部材50との間を封止する。
【0027】
また、ヘッド本体30の液体噴射面31とは反対面側、すなわちフランジ部32側には回路基板40が設けられている。回路基板40は、ヘッド本体30の図示しない圧力発生手段と電気的に接続されると共に、外部からの印刷信号等を供給する外部配線が電気的に接続されるものであり、配線や各種電子部品等が搭載されている。
【0028】
このような回路基板40は、ヘッド本体30よりも大きな面積を有する。ここで、回路基板40がヘッド本体30よりも大きな面積を有するとは、ヘッド本体30の液体噴射面31とは反対側の回路基板40が設けられたフランジ部32側の面積よりも回路基板40の面積が大きいことを言う。これにより、ヘッド本体30の液体噴射面31及び回路基板40が設けられた面とは交差する一側面から回路基板40の一部が突出して設けられている。
【0029】
このように、回路基板40を比較的大きな面積で設けることで、多数の配線を積層された回路基板を用いるのに比べて、比較的少ない積層された回路基板40に多数の配線を設けることができるため、コストを低減することができる。すなわち、回路基板40を構成する基板の積層数が多くなればそれだけ配線を多段に設けることができるため、回路基板40の面積を小さくすることができるが、基板の積層数が多い回路基板40は高価となってしまう。
【0030】
なお、ヘッド本体30は、比較的小型に形成するのが好ましい。これは、樹脂材料として耐熱性に優れた熱可塑性の樹脂を用いてヘッド本体30を形成する場合、回路基板40を覆う大きな樹脂部材を成形するのが困難であると共にコストが高くなってしまうからである。このため、ヘッド本体30はできるだけ小型とし、回路基板40としてヘッド本体30よりも広い面積のものを用いることで、ヘッド本体30を構成する樹脂部材の成形不良の抑制や、ヘッド本体30及び回路基板40の高コスト化を抑制することができる。
【0031】
また、回路基板40のヘッド本体30から突出した領域には、外部配線が接続されるコネクター41が形成されている。コネクター41は、ヘッド本体30とは反対面側に、インク滴の吐出方向に向かって外部配線が挿入されて接続される向きに設けられている。
【0032】
なお、図3に示すように、流路部材20には、コネクター41に相対向する位置に、厚さ方向に貫通する差込口24が設けられており、外部配線は流路部材20の差込口24を介してコネクター41に接続される。
【0033】
そして、ヘッド本体30と流路部材20とは、回路基板40を間に挟んだ状態で固定される。このとき、回路基板40と流路部材20との間には、供給口22とヘッド本体30の液体流路との間を封止するシール部材45が設けられる。このシール部材45は、ゴムやエラストマーなどの材料で形成された板形状を有し、流路部材20の供給口22とヘッド本体30の液体流路とを接続した際に接続部分からインクが漏出しないようにするためのものである。
【0034】
このように間にシール部材45を介して一体化された流路部材20とヘッド本体30との組み立て体には、蓋部材50が設けられている。
【0035】
蓋部材50は、樹脂材料を成形した板状部材からなり、流路部材20のヘッド本体30が固定される面側と略同じ大きさを有し、流路部材20のヘッド本体30が固定される面に固定される。
【0036】
図4及び図5に示すように、蓋部材50の流路部材20側の面には、流路部材20側に突出する壁部51が設けられている。壁部51は、蓋部材50の外周に沿って、外周の周方向に亘って連続して設けられている。
【0037】
また、蓋部材50には、壁部51の内側、つまり内周面には、壁部51に沿って外周シール部材52が設けられている。
【0038】
外周シール部材52は、ゴム、エラストマー等で形成されており、壁部51の内側(内周面)に壁部51と同様に蓋部材50の外周に沿って周方向に亘って連続して設けられている。また、外周シール部材52は、流路部材20側に突出する壁部51と略同じ高さで形成されている。
【0039】
さらに、蓋部材50には、ヘッド本体30に相対向する領域にヘッド本体30の液体噴射面31を挿通可能な挿通孔53が設けられている。
【0040】
挿通孔53は、ヘッド本体30の液体噴射面31よりも大きな開口面積を有し、且つヘッド本体30のフランジ部32よりも小さな開口面積を有する。これにより、蓋部材50の挿通孔53内にヘッド本体30を挿通して、蓋部材50を流路部材20に固定した際に、ヘッド本体30のフランジ部32は蓋部材50の挿通孔53の周囲に当接する。
【0041】
また、蓋部材50の流路部材20側の面には、挿通孔53の内周に沿って内周の周方向に亘って挿通孔53に連通する溝部54が設けられている。
【0042】
この溝部54内には、挿通孔53の内周に沿って挿通孔53の周方向に亘って内周シール部材55が設けられている。本実施形態では、内周シール部材55は、溝部54に充填されて設けられている。すなわち、内周シール部材55は、溝部54内に挿通孔53の内周面と略面一となる幅で、蓋部材50の流路部材20側の面と略面一となる厚さで形成されている。
【0043】
内周シール部材55は、外周シール部材52と同様に、ゴム、エラストマー等で形成されている。
【0044】
このように、内周シール部材55は、蓋部材50の溝部54内に充填して設けられ、外周シール部材52は、流路部材20側に突出して設けられた壁部51の内周面に設けられているため、内周シール部材55と外周シール部材52とは、蓋部材50に高さの異なる位置に設けられていることになる。ここで、蓋部材50の高さとは、流路部材20、ヘッド本体30及び蓋部材50の積層方向での厚さ方向のことを言う。したがって、内周シール部材55及び外周シール部材52が蓋部材50の積層方向で異なる位置に設けられていることになる。
【0045】
このような蓋部材50を流路部材20とヘッド本体30とが組み立てられた組み立て体に固定すると、蓋部材50の内周シール部材55は、ヘッド本体30のフランジ部32に設けられた内周リブ33に圧接し、蓋部材50とヘッド本体30との境界を封止する。また、同時に蓋部材50の外周シール部材52は、流路部材20の外周側に設けられた外周リブ23に圧接し、流路部材20と蓋部材50との外周の継ぎ目を封止する。これにより、流路部材20とヘッド本体30と蓋部材50との間には、内周シール部材55と外周シール部材52とによって密封された空間が画成され、この密封された空間内に回路基板40が保持される。
【0046】
これにより、ヘッド本体30よりも広い面積を有する回路基板40は、外部に露出されることなく、蓋部材50によって密封された空間内に保持される。したがって、回路基板40に接触して、回路基板40の配線が断線するなどの破壊が発生したり、インク等の液体や塵埃などの異物が付着して短絡するなどの不具合を抑制することができる。
【0047】
なお、蓋部材50と、外周シール部材52及び内周シール部材55とは、2色成形によって一体的に形成することができる。これにより、蓋部材50とは別体となる板状の内周シール部材55、外周シール部材52を用いた場合に比べて、部品点数を低減することができ、製造コストを低減することができる。
【0048】
また、蓋部材50と、外周シール部材52及び内周シール部材55とを2色成形によって一体的に形成することで、蓋部材50を流路部材20及びヘッド本体30に対して位置決めするだけで、内周シール部材55及び外周シール部材52の流路部材20及びヘッド本体30に対する位置決めが行われる。したがって、インクジェット式記録ヘッド10の組み立て作業を簡略化して、コストを低減することができる。すなわち、蓋部材50とは別体となる板状の内周シール部材55及び外周シール部材52を用いた場合、蓋部材50又は流路部材20及びヘッド本体30に対して内周シール部材55及び外周シール部材52を位置決めしなくてはならず、組み立て作業が繁雑となってしまう。特に、高さの異なる位置に外周シール部材52と内周シール部材55とを設ける場合、外周シール部材52と内周シール部材55とを別体として設けなくてはならない場合があるが、外周シール部材52と内周シール部材55とを別体とした場合には、それぞれを蓋部材50に対して位置決めしなくてはならず、位置決め作業が繁雑になると共に外周シール部材52及び内周シール部材55の位置ずれが発生し易く、外周シール部材52及び内周シール部材55の位置ずれによってインクや異物が内部に侵入してしまう虞がある。本実施形態では、高さが異なる位置に設けた外周シール部材52と内周シール部材55とを一体的に又は別体で設けたとしても、外周シール部材52と内周シール部材55とが蓋部材50に2色成形によって一体的に形成されることで、外周シール部材52及び内周シール部材55の位置決め作業が不要となって作業を簡略化することができると共に外周シール部材52及び内周シール部材55の位置ずれを抑制することができ、回路基板40が保持された空間へのインクや塵埃の侵入を抑制することができる。
【0049】
なお、内周シール部材55と外周シール部材52とは、一部で連続して設けられていてもよく、また、内周シール部材55と外周シール部材52とは、完全に独立した不連続となるように設けてもよい。本実施形態では、図1に示すように、内周シール部材55と外周シール部材52とを挿通孔53の開口縁部で一部が連続するようにした。これにより、蓋部材50と内周シール部材55及び外周シール部材52とを2色成形する際に、金型内で溶融したゴム又はエラストマーが内周シール部材55及び外周シール部材52となる領域に充填し易くすることができ、充填不良の発生を抑制することができる。
【0050】
また、蓋部材50の流路部材20及びヘッド本体30に対する位置決めは、本実施形態では、図1に示すように、蓋部材50の流路部材20側の面にヘッド本体30のフランジ部32の一対の側面(回路基板40が突出した側の側面と、その反対側の側面)に当接する一対の位置決め突起56を設け、一対の位置決め突起56の間にヘッド本体30のフランジ部32を挟み込むことで流路部材20とヘッド本体30とが一体化した組み立て体に対して蓋部材50を位置決めしている。ちなみに、一対の位置決め突起56と、ヘッド本体30のフランジ部32との間には、クリアランスが設けられている。このクリアランスは、蓋部材50を流路部材20及びヘッド本体30の組み立て体に位置決めする際に、一対の位置決め突起56の間にヘッド本体30のフランジ部32を挿入しやすくするためのものである。つまり、流路部材20、ヘッド本体30及び蓋部材50等の寸法公差によって一対の位置決め突起56の間にヘッド本体30のフランジ部32が挿入できなくなる虞があるからである。そして、このクリアランスは、内周リブ33が内周シール部材55に当接する範囲内で且つ外周リブ23が外周シール部材52に当接する範囲内で移動可能な大きさで設けられている。つまり、位置決め突起56とフランジ部32とのクリアランスが大きすぎると、内周リブ33と内周シール部材55とが当接せず、また外周リブ23と外周シール部材52とが当接せずに、封止されないからである。
【0051】
さらに、蓋部材50の回路基板40に相対向する領域には、回路基板40側に向かって突出して設けられた補強部57が設けられている。そして、蓋部材50の回路基板40に相対向する領域の液体噴射面31側の面には、凹部58が設けられており、蓋部材50は、ヘッド本体30を封止する領域に比べて、回路基板40(ヘッド本体30よりも突出した回路基板40の領域)に相対向する領域が薄く形成されている。この凹部58によってインクジェット式記録ヘッド10は、インクジェット式記録装置に搭載された際に、液体噴射面31の回路基板40がヘッド本体30よりも突出する側に被記録媒体との間に比較的広い空間が画成されて、搬送ローラー等の搬送手段などを配置することができる。
【0052】
また、蓋部材50を流路部材20に固定する方法は、特に限定されないが、本実施形態では、雄ねじ等の締結部材60によって蓋部材50を流路部材20に固定している。
【0053】
このように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10では、蓋部材50を設けることで、ヘッド本体30よりも広い面積を有する回路基板40を用いたとしても、回路基板40が外部に露出されることがなく、ハンドリング時に回路基板40に接触するのを抑制することができると共に、回路基板40にインクや塵埃などの異物が付着するのを抑制することができる。
【0054】
また、流路部材20と蓋部材50とを封止する領域と、ヘッド本体30と蓋部材50とを封止する領域との高さが異なる位置に設けられていても、蓋部材50に外周シール部材52と内周シール部材55とを2色成形によって形成することで、高さの異なる2つの領域を確実に封止することができる。また、蓋部材50に外周シール部材52と内周シール部材55とを2色成形によって形成することで、蓋部材50と流路部材20及びヘッド本体30との間で外周シール部材52と内周シール部材55とを位置決めする必要がなく、組み立て作業を簡略化することができると共に、外周シール部材52と内周シール部材55との位置ずれを抑制して、封止不良によるインクの侵入を抑制することができる。
【0055】
このようなインクジェット式記録ヘッド10は、インクジェット式記録装置に搭載される。図6は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略斜視図である。図6に示すように、本実施形態のインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10が保持部材であるキャリッジ2に搭載されている。そして、インクジェット式記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ2は、装置本体7に取り付けられたキャリッジ軸2aに軸方向移動可能に設けられている。
【0056】
また、装置本体7には、インクが貯留されたタンクからなる貯留手段3が設けられており、貯留手段3からのインクは、キャリッジ2に搭載されたインクジェット式記録ヘッド10(流路部材20)に供給管4を介して供給される。
【0057】
そして、駆動モーター8の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト8aを介してキャリッジ2に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したキャリッジ2はキャリッジ軸2aに沿って移動される。一方、装置本体7にはキャリッジ軸2aに沿ってプラテン9が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン9に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0058】
このようなインクジェット式記録装置1では、キャリッジ2がキャリッジ軸2aに沿って移動されると共にインクジェット式記録ヘッド10のヘッド本体30によってインクが吐出されて記録シートSに印刷される。
【0059】
このように、本実施形態では、インクジェット式記録ヘッド10がインクジェット式記録装置1のキャリッジ2に搭載される前に、蓋部材50によって回路基板40が密封された空間に保持される。したがって、インクジェット式記録ヘッド10をインクジェット式記録装置1に搭載する前に、接触によって回路基板40の配線が切断されることや、液体や塵埃等の異物が回路基板40に付着することで短絡するなどの不具合が発生するのを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、インクジェット式記録ヘッド10に蓋部材50を設け、蓋部材50を設けたインクジェット式記録ヘッド10をキャリッジ2に搭載するようにしたため、インクジェット式記録ヘッド10の修理や交換時にキャリッジ2からインクジェット式記録ヘッド10を着脱しても、蓋部材50と流路部材20及びヘッド本体30との封止状態が解除されることがない。ちなみに、蓋部材50を設けずに、キャリッジ2が蓋部材50を兼ねるようにした場合、キャリッジ2と流路部材20及びヘッド本体30とを内周シール部材55及び外周シール部材52で封止すると、一度封止した内周シール部材55及び外周シール部材52は弾性変形しているため、キャリッジ2から流路部材20及びヘッド本体30を一度取り外したら、同じキャリッジ2には流路部材20及びヘッド本体30を再度取り付けることができない。つまり、インクジェット式記録ヘッド10をキャリッジ2から取り外す度に内周シール部材55及び外周シール部材52の交換、すなわちキャリッジ2の交換が必要になって高コストになってしまう。本実施形態では、インクジェット式記録ヘッド10に蓋部材50を設けることで、キャリッジ2からインクジェット式記録ヘッド10を取り外しても、封止状態が解除されず、キャリッジ2の交換等が不要となって、コストを低減することができる。
【0061】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、内周シール部材55及び外周シール部材52を蓋部材50に2色成形により一体的に形成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、内周シール部材55及び外周シール部材52をそれぞれヘッド本体30及び流路部材20に2色成形によって一体的に形成し、内周リブ33及び外周リブ23を蓋部材50側に設けるようにしてもよい。もちろん、内周シール部材55及び外周シール部材52の何れか一方を蓋部材50に2色成形によって形成し、他方をヘッド本体30又は流路部材20に2色成形によって形成するようにしてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態1では、インクジェット式記録ヘッド10に蓋部材50を設け、蓋部材50を設けたインクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ2に搭載されるようにしたが、特にこれに限定されず、インクジェット式記録ヘッド10に蓋部材50を設けずに、蓋部材50と同様に外周シール部材52及び内周シール部材55が設けられたキャリッジ2が実施形態1の蓋部材50を兼ねるようにしてもよい。
【0063】
また、上述したインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ2に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が装置本体7に固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。このようなライン式記録装置には、キャリッジ2が設けられていないが、キャリッジ2に相当するものとして、インクジェット式記録ヘッド10を装置本体7に保持する保持部材が設けられている。
【0064】
なお、上記した例では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド10を、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置1を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 20 流路部材、 30 ヘッド本体、 31 液体噴射面、 40 回路基板、 41 コネクター、 50 蓋部材、 52 外周シール部材、 55 内周シール部材、 60 締結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6