特許第5834096号(P5834096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5834096細胞培養容器、それを用いた細胞自動継代培養装置および細胞継代培養方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834096
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】細胞培養容器、それを用いた細胞自動継代培養装置および細胞継代培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20151126BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20151126BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12N5/00 202A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-549009(P2013-549009)
(86)(22)【出願日】2011年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2011078966
(87)【国際公開番号】WO2013088537
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】周 広斌
(72)【発明者】
【氏名】松岡 志津
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−089136(JP,A)
【文献】 特開2010−158185(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/093585(WO,A1)
【文献】 特開2008−048644(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123173(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/136371(WO,A1)
【文献】 特開2000−125848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12N 5/07
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器であって、
密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、
第二の培養領域を形成する前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第一の仕切り部材を備え、
前記第一の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有することを特徴とする細胞培養容器。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養容器であって、更に、
前記第二の培養領域に第三の培養領域を形成する前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、
前記第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有することを特徴とする細胞培養容器。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞培養容器であって、更に、
前記第一の培養領域に前記第二の培養領域とは重なり合わない第三の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、
前記第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有することを特徴とする細胞培養容器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の細胞培養容器において、
前記仕切り部材を上昇、降下させる手段として磁石を用いたことを特徴とする細胞培養容器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の細胞培養容器において、
前記仕切り部材を上昇、降下させる手段として前記仕切り部材に接続した支持部材を用いたことを特徴とする細胞培養容器。
【請求項6】
細胞培養容器であって、
密閉可能な培養容器内に、培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する仕切り部材を備え、
前記培養容器の密閉状態で前記仕切り部材を移動させ前記培養領域の面積を変化させる手段を有することを特徴とする細胞培養容器。
【請求項7】
請求項6に記載の細胞培養容器において、
前記培養容器の密閉状態で、前記仕切り部材を前記培養容器の底面に対して水平方向に移動させる手段を有することを特徴とする細胞培養容器。
【請求項8】
請求項6に記載の細胞培養容器において、
前記仕切り部材を移動させ培養領域の面積を変化させる手段として磁石を用いたことを特徴とする細胞培養容器。
【請求項9】
請求項6に記載の細胞培養容器において、
前記仕切り部材を移動させ培養領域の面積を変化させる手段として前記仕切り部材に接続した支持部材を用いたことを特徴とする細胞培養容器。
【請求項10】
請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の細胞培養容器と、
前記細胞培養容器に培地を供給する培地供給機構と、
前記細胞培養容器に混合ガスを供給する混合ガス供給機構と
前記細胞培養容器の培養面を観察する細胞観察機構と、を有することを特徴とする自動継代培養装置。
【請求項11】
密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、第二の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第一の仕切り部材を備え、前記第一の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、
前記第一の仕切り部材を下降させた状態で、前記第二の培養領域において細胞を培養するステップと、
前記第一の仕切り部材を上昇させて、前記第二の培養領域で培養した細胞を、前記第一の培養領域に分散させるステップと、
前記第一の培養領域および前記第二の培養領域において細胞を培養するステップとから成る細胞継代培養方法。
【請求項12】
密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、第二の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第一の仕切り部材を備え、前記第一の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有し、更に、前記第二の培養領域に第三の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、前記第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、
前記第二の仕切り部材を下降させた状態で、前記第三の培養領域において細胞を培養するステップと、
前記第一の仕切り部材を下降させた状態で前記第二の仕切り部材を上昇させて、前記第三の培養領域で培養した細胞を、前記第二の培養領域に分散させるステップと、
前記第一の仕切り部材を下降させた状態で、前記第三の培養領域および前記第二の培養領域において細胞を培養するステップと、
前記第一の仕切り部材を上昇させて、前記第三の培養領域および前記第二の培養領域で培養した細胞を、前記第一の培養領域に分散させるステップと、
前記第一の培養領域および前記第二の培養領域および前記第三の培養領域において細胞を培養するステップとから成る細胞継代培養方法。
【請求項13】
密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、第二の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第一の仕切り部材を備え、前記第一の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有し、更に、前記第一の培養領域に前記第二の培養領域とは重なり合わない第三の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、前記第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、
前記第一の仕切り部材および前記第二の仕切り部材を下降させた状態で、前記第二の培養領域および第三の培養領域において細胞を培養するステップと、
前記第一の仕切り部材および前記第二の仕切り部材を上昇させて、前記第二の培養領域および第三の培養領域で培養した細胞を、前記第一の培養領域に分散させるステップと、
前記第一の培養領域および前記第二の培養領域および第三の培養領域において細胞を共培養するステップとから成る細胞継代培養方法。
【請求項14】
密閉可能な培養容器内に、培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する仕切り部材を備え、前記培養容器の密閉状態で前記仕切り部材を移動させ前記培養領域の面積を変化させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、
記仕切り部材を初期位置に配置して前記培養領域において細胞を培養するステップと、
記仕切り部材を移動させて前記培養領域の面積を拡大するステップと、
面積が拡大された前記培養領域に、培養した細胞を分散させるステップと、
積が拡大された前記培養領域において細胞を培養するステップと、を有する細胞継代培養方法。
【請求項15】
密閉可能な培養容器内に、培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する仕切り部材を備え、前記培養容器の密閉状態で前記仕切り部材を前記培養容器の底面に対して水平方向に移動させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、
前記仕切り部材を初期位置に配置して前記培養領域において細胞を培養するステップと、
前記仕切り部材を前記培養容器の底面に対して水平方向に移動させて前記培養領域の面積を拡大するステップと、
面積が拡大された前記培養領域に、培養した細胞を分散させるステップと、
面積が拡大された前記培養領域において細胞を培養するステップと、を有する細胞継代培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の細胞の継代培養を行う細胞培養容器、細胞自動継代培養装置および細胞継代培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の細胞(浮遊系細胞、接着性細胞)の継代培養が行われている。特に、接着依存性細胞は、培養容器の底面(培養面)に接着して増殖するため、細胞密度が常に一定の範囲になるように配慮する必要がある。細胞密度が低すぎ、隣接する細胞間の距離が大きくなると、接着依存性細胞は、増殖速度が低下し死滅することがある。一方、細胞密度が高すぎ、隣接する細胞間の距離が小さくなると、接着依存性細胞は、細胞の増殖を停止し、そのまま死滅することがある。従って、接着依存性細胞を培養する場合には、順次培養容器へ植え継ぐ継代培養を行う必要がある。
【0003】
継代培養では、培養の初期に、培養面積の小さい培養容器で培養を行い、接着依存性細胞の密度が低くなりすぎないようにする。そこで、接着依存性細胞がある程度まで増殖したら、より培養面積の大きい培養容器、または同じ培養面積を有する複数の培養容器へ植え継ぐ。この作業を繰り返し、目的細胞数まで接着依存性細胞を増殖させる。従来、このような継代培養を含む細胞培養操作は、熟練オペレーターによりピペットを用いて、初期培養容器内の細胞を複数の継代培養容器に分配しなければならない。従来、この作業が煩雑であるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、第1培養ユニットと第2培養ユニットを配管で接続し、細胞培養プログラムにより培地交換操作、継代培養操作をタイミングよく自動的に行う細胞培養装置が提案されている。また、特許文献2には、継代培養容器中に初期培養用の固定仕切り片で仕切られた培養領域を有する培養容器と自動継代培養装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−275659号公報
【特許文献2】特開2006−6219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されている細胞培養装置では、細胞を継代するとき、移動ポンプを用いて、細胞懸濁液を継代培養領域へ移動させるため、移動に伴う細胞のロスや細胞に与えるストレス、また装置の構造が複雑になるなどの課題があった。また、特許文献2の固定仕切り構造では、継代培養時に細胞を均一に播種することが困難である。
【0007】
本発明は、ピペットを用いた分配作業を行うことなく細胞の継代を行うことができ、しかも、細胞の継代時に培養容器内に雑菌が混入することを防止することができる細胞培養容器、自動継代培養装置および細胞継代培養方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものを挙げれば、次の通りである。
【0009】
本発明の細胞培養容器は、密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、第二の培養領域を形成する前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第一の仕切り部材を備え、前記第一の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有するものである。
【0010】
また、本発明の細胞培養容器は、更に、前記第二の培養領域に第三の培養領域を形成する前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、前記第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有するものである。
【0011】
また、本発明の細胞培養容器は、更に、前記第一の培養領域に前記第二の培養領域とは重なり合わない第三の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、前記第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有するものである。
【0012】
本発明の他の細胞培養容器は、密閉可能な培養容器内に、培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する仕切り部材を備え、前記培養容器の密閉状態で前記仕切り部材を移動させ前記培養領域の面積を変化させる手段を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、細胞培養容器の継代培養効率を向上することができ、また細胞の継代時に培養容器内に雑菌が混入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1の細胞培養容器の構成例を示す図である。
図2】本発明の実施例1の細胞培養容器による継代培養を示す図である。
図3】磁石の原理を示す図である。
図4】本発明の実施例1の細胞培養容器の変形例を示す図である。
図5】本発明の実施例2の細胞培養容器の構成例を示す図である。
図6】本発明の実施例3の細胞培養容器の構成例を示す図である。
図7】本発明の実施例3の細胞培養容器による継代培養を示す図である。
図8】本発明の実施例4の細胞培養容器の構成例を示す図である。
図9】本発明の実施例4の細胞共培養容器による細胞培養を示す図である。
図10】本発明の実施例5の自動細胞継代培養システムを示す図である。
図11】本発明の実施例5の自動細胞継代培養システムの制御フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。各図面において、同一の構成要素には同一の番号を付与し、繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1の細胞培養容器の一構成例を、図1に基づいて説明する。
【0017】
図1において、1は細胞培養容器、2は培養容器1の天井基板、3は培養容器1の底面基板である。培養容器1の枠で仕切った底面基板3上の領域は第一の培養領域(継代培養領域)である。4は可動仕切り、4Aは可動仕切り4中に嵌め込む磁石である。可動仕切り4は、培養容器1の壁面より低く、仕切った培養容器1の底面基板3上の領域は第二の培養領域(初期培養領域)である。5、6は培養容器1の天井基板外部にある支持機構、5A、6Aはそれぞれ支持機構5、6内に嵌め込む磁石、5B、6Bはそれぞれ支持機構5、6を回転させる回転機構である。7は第一目的細胞、8は細胞の栄養成分を供給する培地である。9は培地8の入口と出口、10は混合ガス(5%CO、湿度90%以上の空気)の入口、11は混合ガスの出口である。12は、均一播種や細胞剥離のために培養容器1を揺らしたり、培地などの排出のために傾斜させたりする駆動機構である。13は、細胞を観察する観察機構である。
【0018】
以下、図1図2を用いて、本実施例の継代培養の流れを説明する。まず、目的細胞の初期培養は、図1に示すように、可動仕切り4内の初期培養領域に培地8を培地入口出口9より供給したあと、目的細胞の懸濁液を注入する。この時、支持機構5、6中の磁石5A、6Aは、可動仕切り4中の磁石4Aと同極性(N極対N極)が対向する状態であり、可動仕切り4が底面基板3に密着している。この状態で、駆動機構12により培養容器1全体を揺らして細胞を均一に播種することができる。さらに、培養容器1に細胞培養用に必要とされる混合ガス(5%CO、湿度90%以上の空気)を混合ガス入口10より供給して初期培養する。可動仕切り4は、培養容器1の壁面より低いため、混合ガスを初期培養領域に供給することができる。細胞の培養過程を観察機構13により観察し計測する。
【0019】
初期培養面における細胞増殖限界に到達する頃に、初期培養領域の培地を排出し、PBS(生理食塩水)で細胞を洗浄する。続いて初期培養領域にトリプシンを注入し、細胞を培養面から剥離させたあと、培地を注入し細胞を培地に浮遊させる。次に、図2に示すように、回転機構5B、6Bにより支持機構5、6を180°回転させ、支持機構5、6中の磁石5A、6Aが可動仕切り4中の磁石4Aと異極性(S極対N極)が対向する状態にする。その結果、磁石の引力により、培養容器外の支持機構5、6により、可動仕切り4を底面基板3から離脱させ培養容器の天井基板2まで上昇させる。仕切り4が底面基板3から離脱することにより、底面基板3との間に隙間ができ、初期培養領域中にある細胞懸濁液は、初期培養領域より大きな培養面をもつ細胞培養容器1の継代培養領域に拡散する。さらに、培地入口出口9より、継代培養領域に培養面積に合う培地を注入し、駆動機構12による揺動で細胞を継代培養領域に均一に分散させる。細胞が培養面に接着したあと、トリプシンを除去するために、培地を交換して継代培養を実施する。継代培養後、上記過程と同様な操作でより多い細胞を含む細胞懸濁液を回収することができる。
【0020】
上述した継代培養は、磁石機構を利用して、閉鎖系培養容器内の操作を非接触で実現することによって、細胞継代時に培養容器内に雑菌が混入することを防止することができる。さらに、継代操作時、移動ポンプは必要ないため、ポンプによる移動に伴う細胞のロスや細胞にストレス与えることがない。
【0021】
上述の可動仕切り4の部材は、ポリカーボン、ポリスチレンなど細胞培養に適する材料を使用することが望ましい。
【0022】
上述の培養容器1の天井基板2および底面基板3は、ガラス、シリコン、石英、またはプラスチック類およびポリマー類等の固体基板を基材として形成することが可能である。より望ましくは光学顕微鏡等での観察が可能な程度の光透過性を有し、さらに底面基板3は細胞を表面に付着させる前に、清浄化、前処理により基板の表面改質を行える材質を備えることが望ましい。
【0023】
本実施例においては、仕切り部材を上昇、降下させる手段として磁石を用いた。磁石を用いた移動の原理について、図3に基づいて説明する。磁石は、2つの磁極(N極、S極)をもち、双極性の磁場を発生させる源となる物体である(図3の左側)。磁石の磁極は単独で存在することはなく、必ず両極が一緒になって磁石を構成する。磁石同士を近づけると、異なる極は引き合う力(引力)(図3の右側)、同じ極は反発し合う力(斥力)(図3の中央)が働く。永久磁石(フェライト磁石、ネオジム磁石等)の他に、コイルを巻き通電することによって一時的に磁力を発生させる電磁石もある。
【0024】
なお、上記実施例では、培養容器の外枠と仕切りの形状について四角形のものを説明したが、円形状や多角形などの形状でもよいことは言うまでもない。
【0025】
また、本実施例では、培養容器1内の仕切り4を上下させる支持機構5、6を天井基板の上部に設けると説明したが、支持機構5、6を培養容器1の側面の外側に設けてもよい。この場合は、回転機構の代わりに、磁石5A,6Aを上下に移動する上下移動機構を設けることで実現できる。
【0026】
さらに、培養容器1に穴を設け、この穴を通して、仕切り4に支持部材を接続し、この支持部材を移動することにより仕切り4を移動するようにしても良い。この場合は、穴と支持部材との密閉性を確保する必要がある。
【0027】
さらに、本実施例では、接着性細胞の継代培養を用いて培養容器による継代培養を説明したが、本実施例の培養容器は浮遊性細胞の継代培養にも適用できる。
【0028】
また、本実施例では、初期培養から継代培養までの操作は自動的に行うと述べたが、図4に示すように、本実施例の培養容器は手作業による継代培養にも適用できる。
【0029】
実施例1の細胞継代培養方法は、密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、第二の培養領域を形成する前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する仕切り部材を備え、当該仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、前記仕切り部材を下降させた状態で、前記第二の培養領域において細胞を培養するステップと、前記仕切り部材を上昇させて、前記第二の培養領域で培養した細胞を、前記第一の培養領域に分散させるステップと、前記第一の培養領域および前記第二の培養領域において細胞を培養するステップとから成るものである。
【0030】
本実施例によれば、細胞培養容器の継代培養効率を向上することができ、また細胞の継代時に培養容器内に雑菌が混入することを防止することができる。
【実施例2】
【0031】
図5に、本発明の実施例2の細胞培養容器の構成例を示す。実施例2は2回継代構造の細胞培養容器である。
【0032】
図5において、可動仕切り14、可動仕切り14に嵌め込む磁石14A以外の部分については実施例1と同様である。
【0033】
本実施例の培養容器は、密閉可能な第一の培養領域(2回目継代培養領域)を形成する培養容器1内に、第三の培養領域(初期培養領域)を形成する前記培養容器1の壁面よりも低く形成された壁面を有する可動仕切り4を備え、当該仕切りを密閉状態で上昇、下降させる手段を有し、また、前記第一の培養領域に第二の培養領域(1回目継代培養領域)を形成する前記培養容器1の壁面よりも低く形成された壁面を有する可動仕切り14を備え、当該仕切りを前記培養容器1の密閉状態で上昇、下降させる手段を有するものである。
【0034】
実施例2の細胞継代培養方法は、密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、第二の培養領域を形成する前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第一の仕切り部材を備え、当該第一の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有し、更に、前記第二の培養領域に第三の培養領域を形成する前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、当該第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、前記第二の仕切り部材を下降させた状態で、前記第三の培養領域において細胞を培養するステップと、前記第一の仕切り部材を下降させた状態で前記第二の仕切り部材を上昇させて、前記第三の培養領域で培養した細胞を、前記第二の培養領域に分散させるステップと、前記第一の仕切り部材を下降させた状態で、前記第三の培養領域および前記第二の培養領域において細胞を培養するステップと、前記第一の仕切り部材を上昇させて、前記第三の培養領域および前記第二の培養領域で培養した細胞を、前記第一の培養領域に分散させるステップと、前記第一の培養領域および前記第二の培養領域および前記第三の培養領域において細胞を培養するステップとから成るものである。
【0035】
本実施例の培養容器は、一つの閉鎖区間内で初期培養および2回の継代培養を実施することができ、細胞継代時に培養容器内に雑菌が混入することを防止することができる。さらに、継代操作時、移動ポンプは必要ないため、ポンプによる移動に伴う細胞のロスや細胞にストレス与えることがない。
【実施例3】
【0036】
図6図7を用いて、本発明の実施例3の細胞培養容器を説明する。実施例3は、直線仕切り構造の仕切りを備えたものである。
【0037】
ここで、図6図7の可動仕切り15、可動仕切り15に嵌め込む磁石15A以外の部分については実施例1と同様である。
【0038】
本実施例の培養容器は、培養容器1の枠内において、図6に示すように、面積の狭い初期培養領域で初期培養後、細胞継代に応じて、図7に示すように、可動仕切り15を適切な位置に移動させ細胞継代領域を確保するものである。可動仕切り15の移動は、実施例1に示すような、培養容器の外側に設けた磁石により行っても良いし、また、培養容器の側面に穴を設け、この穴を通して可動仕切り15に支持部材を接続し、この支持部材を移動することにより可動仕切り15を移動するようにしてもよい。
【0039】
この構造によれば、細胞種や播種濃度に応じて自由に初期培養および継代培養(数回でも可)用の培養領域を設けることができ、また、閉鎖系培養容器内の操作を非接触で実現できることによって、細胞継代時に培養容器内に雑菌が混入することを防止することができる。さらに、継代操作時、移動ポンプは必要ないため、ポンプによる移動に伴う細胞のロスや細胞にストレス与えることがない。
【0040】
実施例3の細胞継代培養方法は、密閉可能な培養容器内に、培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する仕切り部材を備え、前記培養容器の密閉状態で前記仕切り部材を移動させ前記培養領域の面積を変化させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、前記仕切り部材を初期位置に配置して前記培養領域において細胞を培養するステップと、前記仕切り部材を移動させて前記培養領域の面積を拡大するステップと、面積が拡大された前記培養領域に、培養した細胞を分散させるステップと、面積が拡大された前記培養領域において細胞を培養するステップと、を有するものである。
【実施例4】
【0041】
図8図9を用いて、本発明の実施例4の細胞培養容器を説明する。実施例4は、共培養構造の細胞培養容器に関するものである。
【0042】
ここで、図8および図9の可動仕切り16、可動仕切り16に嵌め込む磁石16A、第二目的細胞17、第二目的細胞用培地18以外の部分については実施例1と同様である。
【0043】
本実施例の培養容器は、培養容器1の枠内において、図8に示すように、可動仕切り4および可動仕切り16を用いて、それぞれの初期培養領域で第一目的細胞および第二目的細胞を培養し、継代培養時、図9に示すように、可動仕切り4および可動仕切り16を開いて共培養を実施することによって、お互いに増殖を促進できる細胞培養を実現できる。
【0044】
実施例4の細胞継代培養方法は、密閉可能な第一の培養領域を形成する培養容器内に、第二の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第一の仕切り部材を備え、前記第一の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有し、更に、前記第一の培養領域に前記第二の培養領域とは重なり合わない第三の培養領域を形成する、前記培養容器の壁面よりも低く形成された壁面を有する第二の仕切り部材を備え、前記第二の仕切り部材を前記培養容器の密閉状態で上昇、下降させる手段を有する細胞培養容器を用いた細胞継代培養方法であって、前記第一の仕切り部材および前記第二の仕切り部材を下降させた状態で、前記第二の培養領域および第三の培養領域において細胞を培養するステップと、前記第一の仕切り部材および前記第二の仕切り部材を上昇させて、前記第二の培養領域および第三の培養領域で培養した細胞を、前記第一の培養領域に分散させるステップと、前記第一の培養領域および前記第二の培養領域および第三の培養領域において細胞を共培養するステップとから成るものである。
【実施例5】
【0045】
図10を用いて本発明の実施例5の自動細胞継代システムを説明する。以下、前記実施例と同じ部品には同符号を付してその説明を省略し、異なる部品のみを説明する。
【0046】
ここで、19は制御処理器、20はモニターである。21は混合ガス発生装置、22はガス用ポンプ、23は培養細胞懸濁液タンク、24は培地タンク、25はトリプシンタンク、26はPBSタンク、23A、24A、25A、26Aはそれぞれ対応するタンクに接続する電磁弁、27は液体用ポンプである。なお、図10中の破線は制御処理器19と各電気制御部品に繋ぐ電気信号線である。その制御フローチャートを図11に示す。
【0047】
まず、目的細胞の初期培養は、図1に示すように、可動仕切り4内の初期培養領域に培地8を培地入口出口9より供給したあと(ST1)、目的細胞の懸濁液を培養細胞懸濁液タンクから注入する(ST2)。この時、支持機構5、6中の磁石5A、6Aは可動仕切り4中の磁石4Aと同極性(N極対N極)が向き合う状態である。駆動機構12で培養容器全体を揺らして細胞を均一に播種する(ST3)。さらに、培養容器に細胞培養用に必要とされる混合ガス(5%CO、湿度90%以上の空気)を混合ガス入口10より供給して(ST4)、初期培養する(ST5)。可動仕切り4は、培養容器1の壁面より低いため、混合ガスを初期培養領域に供給することができる。細胞の培養過程を観察機構13により観察計測する。初期培養面における細胞増殖限界に到達する頃に、初期培養領域の培地を排出させ(ST6)、PBSタンク26からPBS(生理食塩水)を注入し細胞を洗浄する(ST7)。続いて初期培養領域にトリプシンタンク25からトリプシンを注入し、細胞を培養面から剥離させたあと(ST8)、培地を注入し細胞を培地に浮遊させる(ST9)。
【0048】
次に、図2に示すように、回転機構5B、6Bにより支持機構5、6を180°回転させ、支持機構5、6中の磁石5A、6Aを可動仕切り4中の磁石4Aと異極性(S極対N極)が向き合う状態にする。その結果、磁石の引力により、培養容器外の支持機構5、6により、可動仕切り4を底面基板3から離脱させ培養容器天井基板2までに上昇させる。仕切り4が底面基板3から離脱することにより、底面基板3との間に隙間ができ、初期培養領域中にある細胞懸濁液は初期培養領域より大きな培養面をもつ細胞培養容器1の継代培養領域に拡散する(ST10)。さらに、培地入口出口9より、継代培養領域に培養面積に合う培地を注入し、駆動機構12による揺動で細胞を継代培養領域に均一に分散させる(ST11)。細胞が培養面に接着したあと、トリプシンを除去するため、培地を交換して(ST12)継代培養を実施する(ST13)。継代培養後、上記過程と同様な操作でより多い細胞を含む細胞懸濁液を回収できる(ST17)。
【0049】
実施例1を用いた、細胞培養の一例を説明する。実施例1と同様構造の初期培養領域面積100cm、継代培養面積1000cmの培養容器を用いた。また、細胞は3T3細胞(マウスの皮膚に由来する繊維芽細胞培養細胞株)、培地はDMEMにコウシ血清と抗生物を添加したものを用いた。なお、3T3細胞の播種密度は2×10cells/cmである。
実施例1の手順で初期培養を3日培養し、培養面から約2×10cells細胞が確認できた。さらに、継代培養では3日培養して培養面から約2×10cells細胞を回収することができた。
【0050】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1‥培養容器
2‥培養容器天井基板
3‥培養容器底面基板
4‥可動仕切り
4A‥磁石
5‥支持機構
5A‥磁石
5B‥回転機構
6‥支持機構
6A‥磁石
6B‥回転機構
7‥第一目的細胞
8‥培地
9‥培地入口出口
10‥混合ガス入口
11‥混合ガス出口
12‥駆動機構
13‥観察機構
14‥可動仕切り
14A‥磁石
15‥可動仕切り
15A‥磁石
16‥可動仕切り
16A‥磁石
17‥第二目的細胞
18‥第二目的細胞用培地
19‥制御処理器
20‥モニター
21‥混合ガス発生装置
22‥ガス用ポンプ
23‥培養細胞懸濁液タンク
23A‥電磁弁
24‥培地タンク
24A‥電磁弁
25‥トリプシンタンク
25A‥電磁弁
26‥PBSタンク
26A‥電磁弁
27‥液体用ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11