(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856568
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】殺菌液ガス化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20160128BHJP
B65B 55/10 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
A61L2/20 106
B65B55/10 F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-547693(P2012-547693)
(86)(22)【出願日】2011年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2011006733
(87)【国際公開番号】WO2012077307
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2010-273639(P2010-273639)
(32)【優先日】2010年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰昌
(72)【発明者】
【氏名】西尾 陽次
(72)【発明者】
【氏名】西内 和正
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−020744(JP,A)
【文献】
特開昭63−011163(JP,A)
【文献】
特開2003−339829(JP,A)
【文献】
特開2001−276189(JP,A)
【文献】
特開平07−033122(JP,A)
【文献】
特開平09−286416(JP,A)
【文献】
特開平09−272515(JP,A)
【文献】
特開2012−075578(JP,A)
【文献】
特開2010−194301(JP,A)
【文献】
特開2005−065882(JP,A)
【文献】
実開昭56−059134(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0007916(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00− 2/28
A61L 11/00−12/14
B65B 55/10
B01J 4/00− 7/02
B01B 1/00− 1/08
B01D 1/00− 8/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に熱風入口と他端に熱風出口とを有する熱風管と、熱風入口に殺菌液をガス化しうる温度の熱風を供給する熱風源と、熱風出口から噴出する熱風の流れと逆向きに殺菌液を噴霧し、噴霧され微粒子化した殺菌液を熱風と衝突させるための噴霧ノズルと、少なくとも熱風管の熱風出口及び噴霧ノズルの先端の噴出部を取り囲んでいる密閉状のガス化タンクとを備えており、ガス化タンクにおける熱風出口を挟んで噴霧ノズルの先端の噴出部と反対側にガス排出口が形成されており、ノズルの先端の噴口部の位置を熱風管の開口部である熱風出口の下方とし、熱風出口から噴出する熱風の流れと逆向きに殺菌液を噴霧し、噴霧され微粒子化した殺菌液を熱風と衝突させることを特徴とする殺菌液ガス化装置。
【請求項2】
噴霧ノズルが、気液混合二重管構造の噴霧ノズルであることを特徴とする請求項1記載の殺菌液ガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、容器包材を殺菌するために用いられる殺菌液をガス化するガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳や清涼飲料等の液体食品を、紙容器やPETボトル等のプラスチック容器に充填するにあたって、製品の棚寿命を延ばす目的で、液体食品充填前の容器を過酸化水素等の殺菌剤を用いて殺菌している。容器を殺菌する方法としては、容器を殺菌剤液槽に浸漬する方法や、容器にガス状又は液状の殺菌剤を噴霧する方法が知られている。過酸化水素をガス化して容器等の包材を殺菌あるいは滅菌する場合、噴霧ノズルにより微粒子状又は滴下ノズルにより液滴状で発熱体に接触させ、高温雰囲気中でガス化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
殺菌液を噴霧して発熱体に接触させる方法は、ガス化効率は良いが、異物、もしくは殺菌液に含まれている安定剤の析出により噴霧ノズルに目詰まりが発生する場合がある。これらの問題点を避けるため、本発明者らは、上端に入口を、下端に出口をそれぞれ有する垂直状熱風管と、入口に殺菌液をガス化しうる温度の熱風を供給する熱風発生機と、熱風管内に殺菌液を噴霧する噴霧ノズルと、出口と相対させられるようにこれの下方に配置されているプレートヒータとを備え、熱風管の出口を含む下部及びプレートヒータを密閉状ガス化タンクが取り囲み、ガス化タンクの上部にガス排出口が形成されている殺菌液ガス化装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、一端に入り口と他端に出口をそれぞれ有する熱風管と、入り口に殺菌液をガス化しうる温度の熱風を供給する熱風源と、熱風管内に殺菌液を噴霧する噴霧手段とを備えている殺菌剤ガス化装置において、前記噴霧手段が噴口を熱風管内に臨ませた気液混合二重管構造の噴霧ノズルを有する、気泡の発生を抑制しつつ、過酸化水素送液ポンプの負荷が軽減され、送液状況の安定化を図ることができ、ガス化効率を高めることができる殺菌剤ガス化装置を提案している(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
その他、液状の殺菌剤を貯留するタンクと、該タンクから輸送された殺菌剤を殺菌対象物に噴霧する噴霧手段と、前記タンク及び噴霧手段を連通してタンク内の液状の殺菌剤を噴霧手段に案内する案内パイプと、タンクの上流又は案内パイプに設けられ、タンクから案内パイプを通じて噴霧手段へ液状の殺菌剤を輸送するための輸送手段と、輸送手段の下流であって案内パイプに設けられた、その上流側の案内パイプ内を所定圧力に維持するための絞り手段と、輸送手段及び絞り手段の間に設けられた圧力検出手段とを備えた、液状の殺菌剤の流量を監視することができる殺菌装置を提案している(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、熱風中に殺菌剤をスプレーし、その下流側に数個の温度センサーを設置し、個々の温度差によりガス化効率をモニタリングする、大量のガス化装置が提案されている(例えば、特許文献5参照)。このガス化装置では、隣接する温度センサーの値の差が大きければガス化が不十分であるとし、熱風の温度を上げるため電気ヒータの出力をアップさせるシステムを採用しているが、このシステムでは制御システムが複雑で、また温度センサーを数個設置するだけのスペースが必要となり、装置が大型化する上に、殺菌剤と熱風が均一に混合していなければ温度センサーが感知する温度が安定せず、結局安定したガスの発生が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−224469号公報
【特許文献2】特開2001−276189号公報
【特許文献3】特開2007−20744号公報
【特許文献4】特開2005−200027号公報
【特許文献5】特開2003−339829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
殺菌液をガス化して容器等の包材を殺菌あるいは滅菌する場合、既製噴霧ノズルにより殺菌液を微粒子状又は滴下ノズルにより液滴状で発熱体を有する高温雰囲気中でガス化を行う方法が用いられている。殺菌液を噴霧して発熱体に接触させる方法は、ガス化効率は良いが、異物、もしくは殺菌液に含まれている安定剤の析出により目詰まりが発生する場合がある。これらの問題点を避けるため、ノズル先端内径2mmのノズル(パイプ)を使用している。本発明者らは、途中にチーズ配管を組込み、一方から微粒子化用圧縮エアー供給、他方から過酸化水素をプランジャーポンプにて圧送して混合し、ノズル末端からはエアーと過酸化水素が混合されたミスト状で噴出させ、このミストが熱風によりガス化される装置を開発した。しかし、この方法で圧縮エアーと過酸化水素を混合する場合、過酸化水素送液ポンプに少なくともエアー圧力以上の負荷がかかる。例えば、先端が2mmで瞬間蒸発が可能な細かいミストを形成させるには50L/分以上のエアー供給が必要で、そのときのエアー圧は0.1MPa程度である。過酸化水素は発泡性の液体であり、送液中の管内摩擦、自然分解により気泡を発生し成長させる。この気泡がポンプのヘッドに流入するとエアークッション(いわゆるガスロック現象)となり送液しない状況が発生する。ポンプの定量性が欠けることはすなわち殺菌不良の危険性と隣り合わせであるとともに、充填機の異常停止となり、稼働率低下にもなってしまう。
【0009】
この問題点を解決するために、本発明者らは特許文献3(特開2007−20744号公報)に開示された殺菌液ガス化装置を開発・実用化しているが、この殺菌液ガス化装置では噴霧ノズルにより微粒子化した殺菌液が熱風管に衝突し、事前に微粒子化した殺菌液が再び液滴状に戻ってしまうことがある。すなわちガス化の効率が低下してしまうことがある。そのため、補助的にガス化装置底面に発熱体(プレートヒータ)を設置し、完全に気化させた状態で容器に搬送せざるを得なかった。またガス化量をアップさせるために熱風管の長さを延長することで熱風との接触時間を延ばしている。これらは必然的に装置の大型化を招き、ガス化効率が悪いため電気エネルギー消費量も大きい。
【0010】
本発明の課題は、殺菌液のガス化効率に優れ、消費電気エネルギーが少なく、かつ、コンパクトでメンテナンスが容易な殺菌液ガス化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、プレートヒータを備えた従来の殺菌液ガス化装置における消費電気エネルギーの節減を図るべく検討を始めた。微粒子化した殺菌液を噴霧した場合、再び液滴状に戻ってしまうという経験から、従来のこの種の殺菌液ガス化装置においてはプレートヒータは不可欠とされていたが、検討の一環として、プレートヒータを必要としないガス化装置の開発に取り組むこととした。殺菌液ガス化装置のガス化タンク底面に配設されていたプレートヒータを取り外した場合を想定したとき、微粒子化した殺菌液(例えば過酸化水素水)を熱風に対向衝突するように噴霧ノズルをガス化タンクの低板中央部を貫通するように装着するアイディアが閃いた。そこで、噴霧ノズルをガス化タンクの低板中央部を貫通するように装着し、ノズルの先端の噴口部を熱風管内に位置するように調整して実験を行ったところ、やはり噴霧ノズルにより微粒子化した殺菌液が熱風管に衝突し、事前に微粒子化した殺菌液が再び液滴状に戻ってしまうことがわかり、この衝突方向噴霧タイプのガス化構想をあきらめかけたとき、たまたまノズルの先端の噴口部の位置を熱風管の開口部である熱風出口の下方とし、熱風出口から噴出する熱風の流れと逆向きに殺菌液を噴霧し、噴霧され微粒子化した殺菌液を熱風と衝突させたところ、熱風管の熱風出口の管壁が濡れることなく、完全にガス化した殺菌液をガス排出口に導出しうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、(1)一端に熱風入口と他端に熱風出口とを有する熱風管と、熱風入口に殺菌液をガス化しうる温度の熱風を供給する熱風源と、熱風出口から噴出する熱風の流れと逆向きに殺菌液を噴霧し、噴霧され微粒子化した殺菌液を熱風と衝突させるための噴霧ノズルと、少なくとも熱風管の熱風出口及び噴霧ノズルの先端の噴出部を取り囲んでいる密閉状のガス化タンクとを備えており、ガス化タンクにおける熱風出口を挟んで噴霧ノズルの先端の噴出部と反対側にガス排出口が形成されて
おり、ノズルの先端の噴口部の位置を熱風管の開口部である熱風出口の下方とし、熱風出口から噴出する熱風の流れと逆向きに殺菌液を噴霧し、噴霧され微粒子化した殺菌液を熱風と衝突させることを特徴とする殺菌液ガス化装置や、(2)噴霧ノズルが、気液混合二重管構造の噴霧ノズルであることを特徴とする上記(1)記載の殺菌液ガス化装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
従来のこの種の殺菌液ガス化装置においてプレートヒータを使用しない場合、大量のガス化を行うため必然的に熱風の温度を高く設定する必要があり、その結果ガス温度も高くなっていたが、本発明の殺菌液ガス化装置によると、殺菌液のガス化効率が向上し、多量のガス化が可能となり、充填機に搭載するガス化ユニット台数が低減でき、省スペース化が図れる上に、熱風温度が低くても所定の殺菌液のガス化が可能となるため低温のガスの発生も可能となる。また、従来のこの種の殺菌液ガス化装置において不可欠とされていたプレートヒータを必要としないため、ガス化装置がコンパクトになる上に、自動洗浄が可能となり(プレートヒータがあると防水性のため自動洗浄ができない)、さらに安価でエコ(ヒータエネルギー不要)を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の殺菌液ガス化装置(衝突方向噴霧タイプ)の縦断面図である。
【
図2】本発明の殺菌液ガス化装置(衝突方向噴霧タイプ)への殺菌液及びエアーの供給方法を示す系統図である。
【
図3】本発明の殺菌液ガス化装置(衝突方向噴霧タイプ)における気液混合二重管構造の噴霧ノズルの拡大断面図である。
【
図4】従来の殺菌液ガス化装置(水平方向噴霧タイプ;比較例1及び比較例2/対照)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の殺菌液ガス化装置としては、一端に熱風入口と他端に熱風出口とを有する熱風管と、熱風入口に殺菌液をガス化しうる温度の熱風を供給する熱風源と、熱風出口から噴出する熱風の流れと逆向きに殺菌液を噴霧し、噴霧され微粒子化した殺菌液を熱風と衝突させるための噴霧ノズルと、少なくとも熱風管の熱風出口及び噴霧ノズルの先端の噴出部を取り囲んでいる密閉状のガス化タンクとを備えており、ガス化タンクにおける熱風出口を挟んで噴霧ノズルの先端の噴出部と反対側にガス排出口が形成され、プレートヒータを使用していない装置であれば特に制限されず、上記噴霧ノズルとしては、気液混合二重管構造の噴霧ノズル、特に前記特許文献3(特開2007−20744号公報の
図3)記載の気液混合二重管構造の噴霧ノズルであることが好ましい。
【0016】
本発明の殺菌液ガス化装置において、熱風管への供給エアー量は0.1〜1m
3/min、気液混合二重管構造の噴霧ノズルへの供給圧縮エアー圧は0.1〜0.4MPaとすることができる。また、気液混合二重管構造の噴霧ノズルの供給エアー量を1m
3/min、圧縮エアー圧を0.3MPaとした場合、過酸化水素水(H
2O
2)等の殺菌液の供給量を50〜100ml、熱風入口温度240〜440℃とすることが好ましい。
【0017】
ガス化タンクの形状は、垂直筒状とすることが好ましいが、垂直二段筒状とすることもできる。垂直二段筒状のガス化タンクとする場合、垂直短筒状大径ロアタンクと、これの頂壁に直立状に設けられている垂直筒状小径アッパタンクとよりなる。熱風管はガス化タンクと同心円状に配設することが好ましく、また、ガス化タンクと熱風管との直径比は20:10〜20:16、特に20:12〜20:15程度とすることが好ましい。また、熱風管の熱風出口と噴霧ノズルの先端との間隔は、近すぎると熱風管の熱風出口の管壁が濡れることがあり、遠すぎると熱風出口を出た熱風がガス排出口に流れてしまうので、例えば、熱風管の直径が約60mmのときなど、熱風管の熱風出口と噴霧ノズルの先端との間隔は、50〜150mm、特に90〜110mm程度とすることが好ましい。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明をより詳しく説明する。
図1は本発明の殺菌液ガス化装置(衝突方向噴霧タイプ)の縦断面図である。
図2は本発明の殺菌液ガス化装置(衝突方向噴霧タイプ)への殺菌液及びエアーの供給方法を示す系統図である。
図3は本発明の殺菌液ガス化装置(衝突方向噴霧タイプ)における気液混合二重管構造の噴霧ノズルの拡大断面図である。
【0019】
図1に示されるように、殺菌液ガス化装置は、垂直筒状のガス化タンク1と、ガス化タンク1内に熱風源2により熱風を供給する熱風管3と、熱風管3に向かって殺菌液を噴霧する気液混合二重管構造の噴霧ノズル4とを備えている。噴霧ノズル4は、ガス化タンク1の低板中央部を貫通している垂直筒状ノズル本体と、ノズル本体の先端の噴口部とを備えている。熱風源2の下部に連通状態で連結されている熱風管3は、ガス化タンク1の頂板を貫通してガス化タンク1内に垂設され、その下端(熱風出口)は噴霧ノズル4の先端の噴口部近くまで達しており、そこに出口を開口している。ガス化タンク1の周壁上端には殺菌ガスの排出口8が形成されている。排出口8には誘導管の入口端が接続され、誘導管の出口端は、容器の上方に配置されたガスノズルに接続されている(図示せず)。また、Aは、排出口8から排出されるガス状殺菌液の温度(ガス温度)を測定する温度センサを、Bは、熱風源2より熱風管3に供給される熱風の温度(ヒータ温度)を測定する温度センサを示す。
【0020】
また、
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る噴霧手段は、液状の殺菌剤を貯留する殺菌剤タンク12と、殺菌剤タンク12から輸送された殺菌剤を前記熱風管内に噴霧する気液混合二重管構造の噴霧ノズルと、殺菌剤タンク12及び噴霧ノズルを連通する案内パイプ13と、案内パイプ13の上流部に設けられたプランジャーポンプ(輸送手段)14と、プランジャーポンプ14の下流側の案内パイプ13に設けられた絞り手段15と、絞り手段15の上流側近傍に設けられた圧力センサ16と、プランジャーポンプ14と絞り手段15の間の案内パイプ13に設けられたエアチャンバー17とを備えている。殺菌剤タンク12は、例えば、耐薬品性のあるステンレスからなり、所定量の殺菌剤を貯留しておくことができる。この殺菌剤タンク12内の殺菌剤は、レベルセンサによって液面制御されており、殺菌剤タンク12内の殺菌剤の量が減少すると、レベルセンサがこれを検知して、異物を濾し取るストレーナを介して殺菌剤源から殺菌剤タンク12内に殺菌剤が供給される。かかる殺菌剤タンク12に接続された案内パイプ13は、例えば、耐薬品性の樹脂製又はステンレス製の管で、上流側(殺菌剤タンク12側)からドレンバルブ30、ストレーナ31、プランジャーポンプ14、ダイヤフラムバルブ32、エアチャンバー17、圧力センサ16、絞り手段15が設けられ、他端は、
図3に示すように、継手部11において、気液混合二重管構造の噴霧ノズルの内管10に連通状態で接続されている。このとき、プランジャーポンプ14から絞り手段15にかけての案内パイプ13は、その下流側を下方に指向させず、少なくとも水平又は上方に指向させて設置されており、これにより、気泡の滞留を防止している。エアー供給管18は、下流側の一端が、
図3に示すように、継手部11において、気液混合二重管構造の噴霧ノズルの外管9に連通状態で接続され、上流側の他端が、図示しない圧力エアー源に接続されており、エアー源側から、電磁弁19、減圧弁33、圧力センサ20及び逆止弁34を備えている。図示しないエアー源から供給される殺菌剤微粒子化用の圧縮エアーは、減圧弁で制圧され、逆止弁を通過し、噴霧ノズルの外管9を通過した後、前記熱風管内で、案内パイプ13内を輸送され、噴霧ノズルの内管10を通過してきた殺菌剤と混合され微粒子化され、ミストとなる。
【0021】
熱風源2により熱風管3に熱風を送り込み、同時に、噴霧ノズル4から殺菌液のミストを、熱風出口から噴出する熱風の流れと逆向きに噴霧すると、噴霧され微粒子化したミスト状殺菌液は、熱風管3の熱風出口から噴出する熱風と衝突し、効率よくほぼ完全にガス化される。こうして、ほぼ完全にガス化された殺菌液は、分散上昇させられ、ガス排出口8を通じてガス化タンク1から排出される。排出口8から排出されたガス状殺菌液は、誘導管によって容器のところまで導かれ、ガスノズルによって容器内に噴射される。
【0022】
以下、実施例により本発明の殺菌液ガス化装置の性能についてより具体的に説明する。殺菌液ガス化性能試験には、本発明の殺菌液ガス化装置と2種類の従来の殺菌液ガス化装置の計3種類の殺菌液ガス化装置を供試した。
【0023】
[殺菌液ガス化装置(本発明)]
殺菌液ガス化装置として、微粒子化用の気液混合二重管構造の噴霧ノズル(外部混合−外気形;内管の内径が2mm、外管の内径が3mm、内管が外管より2mm長く突出)が装着され、熱風管下端(熱風出口)と噴霧ノズル先端(噴口)との間隔が100mmに設定されている、ガス化タンク容量1500cm
3の
図1〜
図3に示される装置を用いた。
【0024】
[殺菌液ガス化装置(比較例1)]
比較例1の殺菌液ガス化装置として、
図3に示される微粒子化用の気液混合二重管構造の噴霧ノズル(外部混合−外気形;内管の内径が2mm、外管の内径が3mm、内管が外管より3mm長く突出)が装着された、
図4に示される装置(水平方向噴霧タイプ)を用いた。
図4に示される殺菌液ガス化装置は、ガス化タンク1’と、ガス化タンク1’内に熱風源2’により熱風を供給する熱風管3’と、熱風管3’内に殺菌剤を噴霧する噴霧ノズル4’とを備えている。ガス化タンク1’は、垂直短筒状大径ロアタンク5と、これの頂壁に直立状に設けられている垂直筒状小径アッパタンク6とよりなり、ロアタンク5の底面にはプレートヒータ7が備えられている。アッパタンク6の周壁上端には殺菌ガスの排出口8’が形成されている。熱風源2’の下部に連通状態で連結されている熱風管3’は、アッパタンク6の頂板を貫通してアッパタンク6内に垂設され、その下端はロアタンク5のプレートヒータ7の近くまで達しており、そこに出口を開口している。なお、プレートヒータ7の電源はオフ状態で使用した。
【0025】
[殺菌液ガス化装置(比較例2/対照)]
比較例2の殺菌液ガス化装置としては、注射針を備えた噴霧ノズル(あらかじめ空気と殺菌液が混合される内部混合型;内径0.3mm長さ30mmの注射針;特許文献4参照)が装着された、
図4に示される装置(水平方向噴霧タイプ)を用いた。なお、プレートヒータの電源はオフ状態で使用した場合を比較例2とし、プレートヒータの温度を300℃の状態で使用した場合を対照とした。
【0026】
[ガス化性能試験]
殺菌液として35質量%の過酸化水素水を用いた。殺菌液は以下の表1〜3に「H
2O
2量」として示される40〜100ml/minの範囲で用い、殺菌液の噴出し速度に相当する「圧縮エアー圧」は0.3MPa(対照のみ0.3MPaに加えて0.2MPa)とした。また、熱風管への供給エアー量は1m
3/minとし、熱風管入り口の「ヒータ温度」は以下の表1〜3に示される温度範囲に制御した。ガス排出口における「ガス温度」を測定し、以下の表1〜3に示した。そしてまた、本発明と比較例の「判定」における○と×の意味は、○:熱風管の熱風出口の管壁が濡れていない状態を表し、×:熱風管の熱風出口の管壁が濡れ、ガス化タンクの底へのボタ落ちが発生する状態を表す。
【0027】
殺菌液ガス化装置(本発明)を用いた殺菌液ガス化性能試験の結果を表1に、殺菌液ガス化装置(比較例1)を用いた殺菌液ガス化性能試験の結果を表2に、殺菌液ガス化装置(比較例2/対照)を用いた殺菌液ガス化性能試験の結果を表3に、それぞれ示す。
【0031】
これらの結果から、本発明の殺菌液ガス化装置を用いると、プレートヒータを備えていないにもかかわらず、プレートヒータを備えた従来の殺菌液ガス化装置(対照)と同程度のガス化効率を達成することができる他、「H
2O
2量」が比較的少ない50〜60ml/minでは、低温ガスを得ることができることがわかる。また、本発明の殺菌液ガス化装置を用いると、プレートヒータを備えていない従来の殺菌液ガス化装置(比較例1及び2)と比べて、ガス化効率に優れ、特に低温ガスを得ることができる上に、「H
2O
2量」が比較的多い場合であっても、完全なガス化を達成しうることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の殺菌液ガス化装置は、牛乳やジュース等の液体の充填機械の分野において有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 ガス化タンク
2 熱風源
3 熱風管
4 噴霧ノズル
8 ガス排出口
A ガス状殺菌液の温度(ガス温度)を測定する温度センサ
B 熱風の温度(ヒータ温度)を測定する温度センサ