(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、および(C)硬化触媒を含有し、前記(B)白色顔料が、以下の特性(a)および(b)を有する液状射出成形用半導体発光装置用樹脂成形体用材料であって、該材料は以下の特性(1)および(2)を有する、樹脂成形体用材料。
(a)一次粒子のアスペクト比が1.2以上4.0以下であること
(b)一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であること
(1)25℃における剪断速度100s-1での粘度が10Pa・s以上10,000Pa・s以下の液状樹脂材料であること
(2)剪断速度100s-1での粘度に対する剪断速度1s-1での粘度の比が15以上であること
請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂成形体用材料を調製する工程、及び前記調製された樹脂成形体用材料を液状射出成形により成形する工程、を含む樹脂成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定される物ではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<1.半導体発光装置用樹脂成形体用材料>
本発明において半導体発光装置用樹脂成形体用材料とは、半導体発光装置用樹脂成形体の成形に用いる材料である。具体的には、(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、および(C)硬化触媒を含有する。
ここで、半導体発光装置用樹脂成形体とは、材料を硬化させた成形体であり、リードフレームなどの導電性金属配線と共に成形することにより半導体発光装置用パッケージとなる。また、半導体発光装置とは、上記半導体発光装置用樹脂成形体に半導体発光素子を含む発光装置である。半導体発光装置の断面の略図を
図1に示す。
【0014】
<1−1.(A)ポリオルガノシロキサン>
本発明におけるポリオルガノシロキサンとは、ケイ素原子が酸素を介して他のケイ素原子と結合した部分を持つ構造に有機基が付加している高分子物質を指す。ここでポリオルガノシロキサンは、常温常圧下において液体であることが好ましい。これは、半導体発光装置用樹脂成形体を成形する際に、材料の扱いが容易となるからである。また、常温常圧下において固体のポリオルガノシロキサンは、一般的に硬化物としての硬度は比較的高いが、破壊に要するエネルギーが小さく靭性が低いものや、耐光性、耐熱性が不十分で光や熱により変色しやすいものが多い傾向にあるからである。
なお、上記常温とは20℃±15℃(5〜35℃)の範囲の温度をいい、常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ一気圧である。また、液体とは流動性の有る状態をいう。
【0015】
上記ポリオルガノシロキサンは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば以下に示す一般組成式(1)で表される化合物や、その混合物が挙げられる。
(R
1R
2R
3SiO
1/2)
M(R
4R
5SiO
2/2)
D(R
6SiO
3/2)
T(SiO
4/2)
Q ・・・(1)
ここで、上記式(1)中、R
1からR
6は独立して、有機官能基、水酸基、水素原子から選択される。またM、D、TおよびQは0以上1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。
主なポリオルガノシロキサンを構成する単位は、1官能型[R
3SiO
0.5](トリオルガノシルヘミオキサン)、2官能型[R
2SiO](ジオルガノシロキサン)、3官能型[RSiO
1.5](オルガノシルセスキオキサン)、4官能型[SiO
2](シリケート)であり、これら4種の単位の構成比率を変えることにより、ポリオルガノシロキサンの性状の違いが出てくるので、所望の特性が得られるように適宜選択し、ポリオルガノシロキサンの合成を行う。
上記構成単位が1〜3官能型のポリオルガノシロキサンは、オルガノクロロシラン(一般式R
nSiCl
4-n(n=1〜3))と呼ばれる一連の有機ケイ素化合物をもとにして合成することができる。例えば、メチルクロロシランは塩化メチルとケイ素SiとをCu触媒下高温で直接反応させて合成することができ、また、ビニル基などの有機基を持つシラン類は、一般の有機合成化学の手法によって合成することができる。
単離されたオルガノクロロシランを、単独で、あるいは任意の割合で混合し、水により加水分解を行うとシラノールが生成し、このシラノールが脱水縮合するとシリコーンの基本骨格であるポリオルガノシロキサンが合成される。
【0016】
ポリオルガノシロキサンは、硬化触媒の存在下で、熱エネルギーや光エネルギー等を与えることにより硬化させる事ができる。ここで硬化とは、流動性を示す状態から、流動性を示さない状態に変化することをいい、例えば、対象物を水平より45度傾けた状態で30分間静置しても流動性がある状態を未硬化状態といい、全く流動性がない状態を硬化状態として判断することができる。
ポリオルガノシロキサンは、硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのポリオルガノシロキサンを挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型ポリオルガノシロキサン)、および縮合硬化タイプ(縮合型ポリオルガノシロキサン)が好適である。中でも、副生成物の発生が無く、また、反応が可逆性でないヒドロシリル化(付加重合)によって硬化するポリオルガノシロキサンのタイプがより好適である。これは、成形加工時に副生成物が発生すると、成形容器内の圧を上昇させたり、硬化材料中に泡として残存したりする傾向にあるからである。
以下、付加型ポリオルガノシロキサン、および縮合型ポリオルガノシロキサンについて説明する。
【0017】
<1−1−1.付加型ポリオルガノシロキサン>
付加型ポリオルガノシロキサンとは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシラン等の(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物と、例えばヒドロシラン等の(C2)ヒドロシリル基を含有する珪素化合物とを総ヒドロシリル基量が0.5倍以上、2.0倍以下となる量比で混合し、(C3)Pt触媒などの付加縮合触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。
【0018】
(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物としては、下記一般式(2)
R
nSiO〔
(4-n)/2〕・・・(2)
で表わされる、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ただし、式(2)中、Rは同一または異種の置換または非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、または水酸基で、nは1≦n<2を満たす正の数である。
上記(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物においてアルケニル基とは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましい。Rが炭化水素基である場合は、メチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、フェニル基等の炭素数1〜20の1価炭化水素基から選択される。好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0019】
それぞれは異なっても良いが、耐UV性が要求される場合には、上記式中Rのうちの65%程度がメチル基であることが好ましく(つまり、Siの個数(mol数)に対してメチル基以外の官能基の含有数として0.35個(mol)以下であることが好ましい。)、上記式中Rのうちの80%以上がメチル基であることがより好ましい。Rは炭素数1〜8のアルコキシ基や水酸基であってもよいが、アルコキシ基や水酸基の含有率は、(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物の10重量%以下であることが好ましい。また、nは1≦n<2を満たす正の数であるが、この値が2以上であると樹脂成形体用材料とリードフレーム等の導電体との接着に十分な強度が得られなくなり、1未満であるとこのポリオルガノシロキサンの合成が困難になる。
【0020】
上記(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物としては、例えばビニルシラン、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率および組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0021】
分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ビニルポリジメチルシロキサン
DMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35、DMS−V41、DMS−V42、DMS−V46、DMS−V52(いずれもGelest社製)
両末端ビニルジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー
PDV−0325、PDV−0331、PDV−0341、PDV−0346、PDV−0525、PDV−0541、PDV−1625、PDV−1631、PDV−1635、PDV−1641、PDV−2331、PDV−2335(いずれもGelest社製)
両末端ビニルフェニルメチルシロキサン
PMV−9925(Gelest社製)
トリメチルシリル基封鎖ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー
VDT−123、VDT−127、VDT−131、VDT−153、VDT−431、VDT−731、VDT−954(いずれもGelest社製)
ビニルT−構造ポリマー
VTT−106、MTV−124(いずれもGelest社製)
【0022】
また、(C2)ヒドロシリル基を有する珪素含有化合物としては、例えばヒドロシラン、ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率および組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0023】
分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ヒドロシリルポリジメチルシロキサン
DMS−H03、DMS−H11、DMS−H21、DMS−H25、DMS−H31、DMS−H41(いずれもGelest社製)
両末端トリメチルシリル封鎖メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー
HMS−013、HMS−031、HMS−064、HMS−071、HMS−082、HMS−151、HMS−301、HMS−501(いずれもGelest社製)
【0024】
本発明における上記(C1)アルケニル基を有する珪素化合物および(C2)ヒドロシリル基を有する珪素化合物の使用量は、(C1)アルケニル基を有する珪素化合物1mol(アルケニル基のモル数)に対して、(C2)ヒドロシリル基を有する珪素化合物(ヒドロシリル基のモル数)が通常0.5mol以上であり、好ましくは0.7mol以上、より好ましくは0.8mol以上であり、また、通常2.0mol以下、好ましくは1.8mol以下、より好ましくは1.5mol以下である。アルケニル基に対するヒドロシリル基のモル数をコントロールすることにより硬化後の未反応末端基の残存量を低減し、点灯使用時の着色や剥離等の経時変化が少ない硬化物を得ることができる。
また、ヒドロシリル化を起こす反応点(架橋点)の含有量は、アルケニル基およびヒドロシリル基ともに白色顔料を含まない樹脂自体中において0.1mmol/g以上、20mmol/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.2mmol/g以上、10mmol/g以下である。
【0025】
また、白色顔料添加前の樹脂の粘度としては、取り扱いのし易さから、通常100,000cp以下、好ましくは20,000cp以下、さらに好ましくは10,000cp以下である。下限は特には制限されないが、揮発度(沸点)との関係上一般的には15cp以上である。
【0026】
さらに、樹脂のポリスチレンを標準物質として測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィーでの平均分子量測定値として、樹脂の重量平均分子量は500以上、100,000以下であることが好ましい。より好ましくは700以上50,000以下である。さらに、揮発成分を少なくする(他部材との接着性を維持するため)目的から1,000以上、また、成形前の材料の取扱いのし易さから25,000以下であることがより好ましい。最も好ましくは20,000以下である。
【0027】
<1−1−2.縮合型ポリオルガノシロキサン>
縮合型ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(3)および/若しくは(4)で表わされる化合物、並びに/またはそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0028】
M
m+X
nY
1m-n ・・・(3)
式(3)中、Mは、ケイ素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y
1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。
【0029】
(M
s+X
tY
1s-t-1)
uY
2 ・・・(4)
【0030】
式(4)中、Mは、ケイ素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y
1は、1価の有機基を表わし、Y
2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。
【0031】
縮合型ポリオルガノシロキサンは公知のものを使用することができ、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
【0032】
<1−1−2−1.特に好ましい縮合型ポリオルガノシロキサン>
縮合型ポリオルガノシロキサンの中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
ポリオルガノシロキサンは、一般に半導体発光装置に用いた場合、半導体発光素子や半導体発光素子を配置する基板や、樹脂成形体等との接着性が弱いことがあるが、これらと密着性が高いポリオルガノシロキサンとするため、特に、以下の[1]および[2]のうち1つ以上の特徴を有する縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。
[1]ケイ素含有率が20重量%以上である。
[2]測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)および/または(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
【0033】
(a)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムのジメチルシロキシケイ素を基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムのジメチルシロキシケイ素を基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
【0034】
本発明においては、上記の特徴[1]および[2]のうち、特徴[1]を有する縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴[1]および[2]を有する縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。
なお、縮合型ポリオルガノシロキサンにおいては、縮合反応の進行に伴い脱離成分が発生するが、成形加工方法により、該成分の成形加工性への影響が大きくない場合に用いることができる。その場合には、特に縮合型ポリオルガノシロキサン中のシラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0035】
<1−2.(B)白色顔料>
本発明において白色顔料は、樹脂の硬化を阻害しない公知の顔料を適宜選択する事ができる。白色顔料としては無機および/または有機の材料を用いる事ができる。ここで白色とは、無色であり透明ではない事をいう。すなわち可視光領域に特異な吸収波長を持たない物質により入射光を乱反射させる事ができる色をいう。
【0036】
白色顔料として用いることができる無機粒子としては、アルミナ(以下、「アルミナ微粉」、または「酸化アルミニウム」と称する場合がある。)、酸化珪素、酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属塩;窒化硼素、アルミナホワイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、硼酸アルミニウム、クレー、タルク、カオリン、雲母、合成雲母などが挙げられる。
また、白色顔料として用いることができる有機微粒子としては、弗素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等の樹脂粒子などを挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。中でも白色度が高く少量でも光反射効果が高く変質しにくい点からは、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛などが特に好ましい。また、材料硬化時の熱伝導率向上の点からは、アルミナ、窒化硼素などが特に好ましい。また、近紫外線の光反射効果が高く、近紫外線による変質が小さい観点からも、アルミナは特に好ましい。
これらは、単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。
酸化チタンを用いる場合は、光触媒性、分散性、白色性等の問題が出ない程度に含有する事ができる。
【0037】
酸化チタンとしては具体的には富士チタン工業社製のTAシリーズ、TRシリーズ、石原産業(株)製のTTOシリーズ、MCシリーズ、CR−ELシリーズ、PTシリーズ、STシリーズ、FTLシリーズ等が挙げられ、アルミナとしては具体的には日本軽金属社製A30シリーズ、ANシリーズ、A40シリーズ、MMシリーズ、LSシリーズ、AHPシリーズ、アドマテックス社製「Admafine Alumina」AO−5タイプ、AO−8タイプ、日本バイコウスキー社製CRシリーズ、大明化学工業社製タイミクロン、Aldrich社製10μm
2径アルミナ粉末、昭和電工社製A−42シリーズ、A−43シリーズ、A−50シリーズ、ASシリーズ、AL−43シリーズ、AL−47シリーズ、AL−160SGシリーズ、A−170シリーズ、AL−170シリーズ、住友化学社製AMシリーズ、ALシリーズ、AMSシリーズ、AESシリーズ、AKPシリーズ、AAシリーズ等が挙げられ、ジルコニアとしては具体的には第一希元素化学工業社製UEP−100等が挙げられ、酸化亜鉛としては具体的にはハクスイテック社製酸化亜鉛2種等が挙げられる。
【0038】
(A)ポリオルガノシロキサンの屈折率と(B)白色顔料の屈折率差が大きいほど、少量の白色顔料添加でも白色度がより高く、反射・散乱効率の良い半導体発光装置用樹脂成形体を得ることができる。(A)ポリオルガノシロキサンは屈折率が1.41程度のものが好ましく、屈折率が1.76のアルミナ粒子を(B)白色顔料として好適に用いることができる。(A)ポリオルガノシロキサンの屈折率は、樹脂の硬度の観点から1.40以上が好ましく、アルミナとの屈折率差が小さくなり反射率が下がる傾向にある、耐熱性が下がる傾向にある等の理由により、1.50以下が好ましい。
【0039】
本発明において白色顔料は近紫外線の光反射効果が高く、近紫外線による変質が小さい点でアルミナであることが好ましい。アルミナは、紫外線の吸収能が低いことから、特に、紫外〜近紫外発光の発光素子と共に用いる場合に好適に用いることができる。本発明においてアルミナはアルミニウムの酸化物をいい、その結晶形態は問わないが、化学的に安定、融点が高い、機械的強度が大きい、硬度が高い、電気絶縁抵抗が大きい等の特性を持つαアルミナが好適に使用できる。
【0040】
また、本発明において白色顔料にアルミナを用いる場合、アルミナ結晶の結晶子サイズが500Å以上2,000Å以下であることが好ましく、700Å以上1,500Å以下であることがより好ましく、900Å以上1,300Å以下であることが特に好ましい。結晶子とは、単結晶とみなせる最大の集まりをいう。
アルミナの一次粒子径が上記の範囲であり、かつ、アルミナ結晶の結晶子サイズが上記の範囲であるということは、一次粒子のサイズと結晶子のサイズが異なること、即ち、一次粒子が複数の結晶子によって構成されることを意味する。
アルミナ結晶の結晶子サイズが上記範囲である場合には、成形時に配管、スクリュー、金型などの磨耗が少なく、磨耗による不純物が混入しにくい点で、好ましい。
上記結晶子サイズは、X線回折測定により確認することができる。X線回折測定では、アルミナが結晶性を有している場合、結晶型に応じて決まった位置にピークが出る。そして、このピークの半値幅からScherrerの式にしたがって結晶子径(結晶子サイズ)を計算することができる。
【0041】
また、アルミナ中にアルミニウム、酸素以外の元素を不純物として含むと可視光領域に吸収を持つために着色し、好ましくない。例えばわずかでもクロムを含有すると一般にルビーと呼ばれ赤色を呈し、鉄やチタンを不純物として含有すると一般にサファイアと呼ばれ青色を呈する。本発明におけるアルミナは、クロム、鉄、チタンの含有量がそれぞれ0.02重量%以下、好ましくは0.01重量%以下のものを使用することが好ましい。
本発明の樹脂成形体用材料の硬化時の熱伝導率は、前述のとおり高い方が好ましいが、熱伝導率を高くするためには、純度が98%以上のアルミナを用いることが好ましく、純度99%以上のアルミナを用いることがより好ましく、特に低ソーダアルミナを用いることが好ましい。また、熱伝導率を高くするためには、窒化硼素を用いることも好ましく、純度が99%以上の窒化硼素を用いることが特に好ましい。
【0042】
また、特に、発光ピーク波長が420nm以上の発光素子を使用する半導体発光装置では、白色顔料として酸化チタンも好適に使用することができる。酸化チタン(チタニア)は紫外線吸収能を持つが、屈折率が大きく光散乱性が強いため、420nm以上の波長の光の反射率が高く、少ない添加量でも高反射を発現しやすい。本発明の白色顔料としては、紫外線吸収能や光触媒能が大きく高温で不安定なアナターゼ型よりも、高温で安定であり、屈折率が高く、比較的耐光性が高いルチル型が好ましく、光活性を抑える目的で表面にシリカやアルミナの薄膜コートが施されたルチル型が特に好ましい。
酸化チタンは屈折率が高く、ポリオルガノシロキサンとの屈折率差が大きいため少ない添加量でも高反射となりやすいことから、アルミナと酸化チタンを併用してもよい。例えば、アルミナに対する酸化チタンの重量比(アルミナ:酸化チタン)が、50:50〜95:5となる割合で混合することができる。アルミナに酸化チタンを少量添加することで、アルミナを単独で使用した場合よりも420nm以上の波長の光の反射率が高くなる可能性があり、さらに、材料中の白色顔料の割合が小さい場合や、材料の厚みが薄い場合にも反射率が下がりにくい傾向がある。チタニアの併用により材料中の白色顔料の割合を小さくできるため、材料組成の自由度が上がり、白色顔料以外の成分の充填量を上げることができる。また、薄い材料の反射率が高いことは、樹脂成形体の形状の自由度が上がる点で非常に有利である。また、厚みを大きくできない薄い樹脂成形体や細かい構造の樹脂成形体でも材料の反射率が高いことで、半導体発光装置の明るさを増す効果が期待できる。
【0043】
なお、白色顔料をシランカップリング剤などで表面処理を行なってもよい。シランカップリング剤で表面処理した白色顔料を用いると、樹脂成形体用材料全体の硬度を向上させることができる。
【0044】
<1−2−1.(B)白色顔料の好ましい形状>
本発明における(B)白色顔料の一次粒子のアスペクト比は1.2以上4.0以下であることを特徴としている。
上記(B)白色顔料のアスペクト比は、1.25以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましい。一方、上限は、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.2以下であることが更に好ましく、2.0以下であることが特に好ましく、1.8以下であることが最も好ましい。
アスペクト比が上記範囲である場合には、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光の反射が大きい。これにより、かかる樹脂成形体を用いた半導体発光装置において、LED出力を向上させることができる。
また、アスペクト比が上記範囲である白色顔料を使用することは、金型の磨耗が少ないなど、成形性の観点からも好ましい。アスペクト比が上記範囲よりも大きい場合、顔料粒子の角部との接触により金型の磨耗が激しくなることがあり、逆に、アスペクト比が小さい白色顔料を使用する場合にも材料中の顔料の充填密度を上げられるため金型と顔料との接触頻度が上がり、金型が磨耗しやすい傾向になる。さらに、アスペクト比が上記範囲である白色顔料を使用すると、材料粘度の調整が容易となり、成形に適した粘度に調整することで、成形サイクルを短縮することができたり、バリを抑えることができたり、成形性に優れた材料となる。
特にアスペクト比が4.0よりも大きい場合には、高反射になりにくく、また、成形時に配管、スクリュー、金型等の磨耗が発生しやすく、磨耗による不純物の混入により成形した樹脂成形体の反射率低下や、絶縁破壊が起こりやすい傾向にある。
【0045】
アスペクト比は、粒子等の形状を定量的に表現する簡便な方法として一般に用いられており、本発明ではSEMなどの電子顕微鏡観察により計測した粒子の長軸長さ(最大長径)を短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)で除して求めるものとする。軸長さにばらつきがある場合は、複数点(例えば10点)をSEMで計測し、その平均値から算出することができる。あるいは、30点、100点を計測しても同様の算出結果を得ることができる。
【0046】
アスペクト比は、粒子の形状が繊維状や棒状か、あるいは球状かの指標となり、粒子が繊維状の場合はアスペクト比が大きくなり、粒子が球状の場合は、1.0となる。
本発明では、アスペクト比が上記範囲であることにより、(B)白色顔料の好ましい形状からは、球状、真球状に形成されたものが除かれる。また、極端に細長い形状のものも、かえって反射率を低下させてしまうため、本発明に係る(B)白色顔料からは除かれる。アスペクト比が上記範囲である場合、白色顔料が金型の隙間に詰まりやすく、バリが発生しにくいが、球状では金型の隙間を素通りしバリが発生しやすい傾向がある。
本発明では、アスペクト比が上記範囲に含まれる粒子が(B)白色顔料全体の60体積%以上、より好ましくは70体積%以上、特に好ましくは80体積%以上を占めることが好ましく、必ずしも全ての(B)白色顔料が上記アスペクト比の範囲を満たさなければいけないわけではないことは当業者が当然に理解できる事項である。
【0047】
アスペクト比を上記範囲とするためには、白色顔料の表面処理をしたり、研磨したりする等の一般的な方法を採ってもよい。また、白色顔料を破砕(粉砕)して微細化することや、白色顔料を焼成により生成することによっても、達成できる。
【0048】
本発明における(B)白色顔料とは、化学組成としては前記1−2.で例示した無機微粒子・有機微粒子を包含するものである。加えて、形状が(c)破砕形状であることが好ましい。
ここで(c)破砕形状とは、主に白色顔料を破砕(粉砕)によって微細化した形状をいい、破砕後の処理により結晶の角が少ない丸みを帯びた形状となったもの、焼成などによって生成した球状でない顔料の形状も含まれる。すなわち、製造工程の性格上、球状、真球状に形成されたものを除く趣旨である。破砕形状の白色顔料を使用した材料では、球状の白色顔料を使用した材料に比べ、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光(特に、波長360nm〜460nmの光)の反射が大きい。また、球状の顔料に比べて、経済面でも有利な場合がある。これにより、かかる樹脂成形体を用いた半導体発光装置において、LED出力を向上させることができる。
【0049】
また、本発明における(B)白色顔料の一次粒子径は、0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。下限値については好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.25μm以上であり、上限値については好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
一次粒子径が上記範囲である場合には、後方散乱傾向と散乱光強度を兼ね備えることで材料が高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域等の短波長の光に対する反射が大きくなり、好ましい。
白色顔料は、一次粒子径が小さすぎると散乱光強度が小さいため反射率は低くなる傾向にあり、一次粒子径が大きすぎると散乱光強度は大きくなるが、前方散乱傾向になるため反射率は小さくなる傾向にある。
また、一次粒子径が上記範囲である場合には、成形に適した粘度への調整が容易である、金型の磨耗が少ないなど、成形性の観点からも好ましい。一次粒子径が上記範囲よりも大きい場合、顔料粒子との接触による金型への衝撃が大きく金型の磨耗が激しくなる傾向があり、一次粒子径が上記範囲よりも小さい白色顔料を使用する場合には、材料が高粘度になりやすく、白色顔料の充填量を上げられないため、高反射等の材料特性と成形性との両立が難しくなる傾向にある。
特に、液状射出成形に好適に使用できる材料とするためには材料にある程度以上のチキソトロピー性を持たせることが必要である。一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の白色顔料を組成物中に添加するとチキソトロピー性付与効果が大きく、バリやショートが少なく成形しやすい組成物とするために、粘度とチキソトロピー性を容易に調整することができる。
なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、一次粒子径が2μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。
【0050】
本発明における一次粒子とは粉体を構成している粒子のうち、他と明確に分離できる最小単位の個体をいい、一次粒子径はSEMなどの電子顕微鏡観察により計測した一次粒子の粒子径をいう。一方、一次粒子が凝集してできる凝集粒子を二次粒子といい、二次粒子の中心粒径は粉体を適当な分散媒(例えばアルミナの場合は水)に分散させて粒度分析計等で測定した粒径を言う。一次粒子径にばらつきがある場合は、数点(例えば10点)をSEM観察し、その平均値を粒子径としてもとめることができる。また、測定の際、個々の粒子径が球状でない場合はもっとも長い、すなわち長軸の長さを粒子径とする。
白色顔料のアスペクト比と一次粒子径は、成形後(硬化後)であっても測定することができる。SEMなどの電子顕微鏡によって成形品の断面を観察し、断面に露出した白色顔料の一次粒子径とアスペクト比を計測すればよい。
本発明ではSEMなどの電子顕微鏡観察により計測した粒子の長軸長さ(最大長径)を短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)で除して求めるものとする。軸長さにばらつきがある場合は、複数点(例えば10点)をSEMで計測し、その平均値から算出することができる。あるいは、30点、100点を計測しても同様の算出結果を得ることができる。
【0051】
一方、上記白色顔料は、二次粒子の中心粒径(以下、「二次粒径」と称する場合がある。)が、0.2μm以上であるものが好ましく、0.3μm以上であるものがより好ましい。上限は10μm以下であるものが好ましく、5μm以下であるものがより好ましく、2μm以下であるものが更に好ましい。
二次粒径が上記範囲である場合には、成形性の観点で好ましい材料が得られ易い。また、成形に適した粘度への調整が容易で、金型の磨耗が少ない。加えて、白色顔料が金型の隙間を通過しにくいためバリが発生しにくく、かつ、金型のゲートに詰まりにくいため成形時のトラブルが起こりにくい。二次粒径が上記範囲よりも大きい場合には、白色顔料の沈降により材料が不均一となる傾向にあり、金型の磨耗やゲートの詰まりにより成形性が損なわれたり、材料の反射の均一性が損なわれたりすることがある。
なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、二次粒径が10μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。なお、中心粒径とは積算%の体積基準粒度分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子径を言い、一般的に50%粒子径(D
50)、メディアン径と呼ばれるものを指す。
【0052】
また、本発明における(B)白色顔料の一次粒子径xと二次粒子の中心粒径yの比y/xは、通常1以上、好ましくは1より大きく、特に好ましくは1.2以上であり、また、通常10以下、好ましくは5以下である。
ここで、一次粒子径xと二次粒子の中心粒径yの比y/xが上記範囲であることにより、(B)白色顔料の好ましい形状からは、球状、真球状に形成されたもの(即ち、一次粒子がほとんど凝集しておらず、一次粒子径と二次粒子の中心粒径がほぼ等しいもの)が除かれる。
一次粒子径xと二次粒子の中心粒径yの比y/xが上記範囲である場合には、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光の反射が大きい。これにより、かかる樹脂成形体を用いた半導体発光装置において、LED出力を向上させることができる。また、成形に適した材料粘度への調整も容易である。
【0053】
<1−2−2.(B)白色顔料の添加量>
本発明において半導体発光装置用樹脂成形体材料中の(B)白色顔料の含有量は、使用する顔料の粒径や種類、ポリオルガノシロキサンと顔料の屈折率差により適宜選択される。(A)ポリオルガノシロキサン100重量部に対し通常20重量部以上、好ましくは50重量部以上、更に好ましくは100重量部以上であり、通常900重量部以下、好ましくは600重量部以下、更に好ましくは400重量部以下である。
上記範囲内であると反射率、成形性等が良好である。上記下限未満である場合には光線が透過してしまい半導体発光装置の反射効率が低下する傾向にあり、上限よりも大きい場合には材料の流動性が悪化することにより成形性が低下する傾向にある。
特に、液状射出成形に好適に使用できる材料とするためには材料にある程度以上のチキソトロピー性を持たせることが必要である。一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の白色顔料を組成物中に配合すると著しい増粘が起こり、チキソトロピー性付与効果が大きいが、そのような形状の白色顔料を組成物全体の30重量%以上含有させることで、バリやショートが少なく成形しやすい材料にすることができ、さらに、粘度とチキソトロピー性を調整することが容易となる。
また、後述する樹脂成形体用材料の熱伝導率を0.4以上3.0以下の範囲に制御するためには、(B)白色顔料としてアルミナを樹脂成形体用材料全体量に対して40重量部以上90重量部以下添加することが好ましい。あるいは、(B)白色顔料として窒化硼素を樹脂成形体用材料全体量に対して30重量部以上90重量部以下添加することが好ましい。なお、アルミナと窒化硼素を併用してもよい。
【0054】
<1−3.(C)硬化触媒>
本発明における(C)硬化触媒とは、(A)のポリオルガノシロキサンを硬化させる触媒である。ポリオルガノシロキサンは触媒により重合反応が早まり硬化する。この触媒はポリオルガノシロキサンの硬化機構により付加重合用触媒、縮合重合用触媒がある。
【0055】
付加重合用触媒としては、(C1)成分中のアルケニル基と(C2)成分中のヒドロシリル基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加重合触媒の例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この(C3)付加重合触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(C1)および(C2)成分の合計重量に対して通常1ppm以上、好ましくは2ppm以上であり、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。これにより触媒活性を高いものとすることができる。
【0056】
縮合重合用触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸などの酸、アンモニア、アミン類などのアルカリ、金属キレート化合物などを用いることができ、好適なものとしてTi、Ta、Zr、Al、Hf、Zn、Sn、Ptのいずれか1以上を含む金属キレート化合物を用いることができる。なかでも、金属キレート化合物は、Ti、Al、Zn、Zrのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましく用いられる。
これらの触媒は半導体発光装置用樹脂成形体材料として配合した際の安定性、被膜の硬度、無黄変性、硬化性などを考慮して選択される。
【0057】
縮合重合用触媒の配合量は、上記式(3)および/または(4)で表される成分の合計重量に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、一方上限は通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下である。
添加量が上記範囲であると半導体発光装置用樹脂成形体材料の硬化性、保存安定性が良好であり、加えて成形した樹脂成形体の品質が良好である。添加量が上限値を超えると樹脂成形体材料の保存安定性に問題が生じる場合があり、下限値未満では硬化時間が長くなり樹脂成形体の生産性が低下し、未硬化成分により樹脂成形体の品質が低下する傾向にある。
【0058】
<1−4.(D)硬化速度制御剤>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体用材料は、さらに(D)硬化速度制御剤を含有することが好ましい。ここで硬化速度制御剤とは、樹脂成形体用材料を成形する際に、その成形効率を向上させるために硬化速度を制御するためのものであり、硬化遅延剤または硬化促進剤が挙げられる。
【0059】
硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。脂肪族不飽和結合を含有する化合物の中でも、三重結合を有する化合物が好ましい。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用する(C)硬化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10
-1mol以上、より好ましくは1mol以上であり、好ましい添加量の上限は10
3mol以下、より好ましくは50mol以下である。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0060】
硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられ、中でも高い反応促進性を示す点でイミダゾール類を用いるのが好ましい。
上記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、商品名としては、2E4MZ、2PZ−CN、2PZ−CNS(四国化成工業株式会社)等がある。硬化促進剤の添加量は、(A)ポリオルガノシロキサン熱硬化性樹脂と(C)硬化触媒の合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0061】
硬化速度制御剤の種類や配合量を上記のように設定とすることにより、樹脂成形体用材料の成形が容易となる。例えば、金型への充填率が高くなったり、射出成形による成形時に金型からの漏れがなく、バリが発生しにくくなったりするメリットが得られる。
【0062】
<1−5.その他の成分>
半導体装置用樹脂成形体用材料中には、上記(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、(C)硬化触媒、(D)硬化速度制御剤以外に、本発明の要旨を損なわない限り、必要に応じて他の成分を1種、または2種以上を任意の比率および組み合わせで含有させることができる。
例えば、半導体発光装置用樹脂成形体用材料の流動性コントロールや白色顔料の沈降抑制の目的で、固体粒子を流動性調整剤(E)として含有させることができる。流動性調整剤(E)としては、含有させることで樹脂成形体用材料の粘度が高くなる常温から成形温度付近で固体の粒子であれば特に限定されないが、発光素子からの光や蛍光体により波長変換された光を吸収する性質が無いか非常に小さく、材料の反射率を極端に低下させないもので、光や熱による変色、変質が小さく耐久性が高いものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子、石英ビーズ、ガラスビーズ、ガラス繊維などの無機物繊維、窒化ホウ素、窒化アルミ等が挙げられる。また、例えば、繊維状アルミナのように、以下の特性(a)および(b)のいずれか、もしくは両方を満たさない白色顔料を前述の白色顔料とは別に含有させることができる。
(a)一次粒子のアスペクト比が1.2以上4.0以下であること
(b)一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であること
中でもチキソトロピー性付与効果が大きいシリカ微粒子は、組成物の粘度やチキソトロピー性をコントロールしやすく、好適に使用できる。石英ビーズ、ガラスビーズ、ガラス繊維などは、流動性調整剤としての効果のみならず、材料の熱硬化後の強度、靭性を高める効果や材料の線膨張係数を下げる効果も期待できるため好ましく、シリカ微粒子と併用するか単独で使用してもよい。
本発明に使用するシリカ微粒子は、特に限定されるものではないが、BET法による比表面積が、通常50m
2/g以上、好ましくは80m
2/g以上、さらに好ましくは100m
2/g以上である。また、通常300m
2/g以下、好ましくは200m
2/g以下である。比表面積が小さすぎるとシリカ微粒子の添加効果が認められず、大きすぎると樹脂中への分散処理が困難になる。シリカ微粒子は、例えば親水性のシリカ微粒子の表面に存在するシラノール基と表面改質剤を反応させることにより表面を疎水化したものを使用してもよい。
【0063】
表面改質剤としては、アルキルシラン類の化合物が挙げられ、具体例としてジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン、ジメチルシリコーンオイルなどが挙げられる。
シリカ微粒子としては、例えばフュームドシリカを挙げることができる。フュームドシリカは、H
2とO
2との混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎でSiCl
4ガスを酸化、加水分解させることにより作製される。フュームドシリカの一次粒子は、平均粒径が5〜50nm程度の非晶質の二酸化ケイ素(SiO
2)を主成分とする球状の超微粒子であり、この一次粒子がそれぞれ凝集し、粒径が数百nmである二次粒子を形成する。フュームドシリカは、超微粒子であるとともに、急冷によって作製されるため、表面の構造が化学的に活性な状態となっている。
具体的には、例えば日本アエロジル株式会社製「アエロジル」(登録商標)が挙げられ、親水性アエロジル(登録商標)の例としては、「90」、「130」、「150」、「200」、「300」、疎水性アエロジル(登録商標)の例としては、「R8200」、「R972」、「R972V」、「R972CF」、「R974」、「R202」、「R805」、「R812」、「R812S」、「RY200」、「RY200S」「RX200」が挙げられる。
【0064】
また、樹脂成形体用材料の粘度を調整するため、液状増粘剤としての効果を持つポリオルガノシロキサンを(A)ポリオルガノシロキサンに一部配合することができる。液状増粘剤としては、25℃における粘度が、通常、0.001Pa・s以上3Pa・s以下、好ましくは0.001Pa・s以上1Pa・s以下、より好ましくは0.001Pa・s以上0.7Pa・s以下であり、ヒドロキシル価が、通常、1.0×10
-2〜7.7×10
-5mol/g、好ましくは1.0×10
-2〜9.5×10
-5mol/g、より好ましくは1.0×10
-2〜10.3×10
-5mol/gであり、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合したヒドロキシル基(すなわち、シラノール基)を含有する、直鎖状オルガノポリシロキサンを配合することができる。
この液状増粘剤としてのヒドロキシル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子中にアルケニル基および/またはSiH基等のヒドロシリル化付加反応に関与する官能性基を含有しないものであり、分子中のヒドロキシル基は分子鎖末端のケイ素原子に結合したものであっても、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したものであっても、これらの両方に結合したものであってもよいが、好ましくは分子鎖両末端のケイ素原子に結合したヒドロキシル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン(すなわち、α、ω‐ジヒドロキシジオルガノポリシロキサン)であることが望ましい。
このケイ素原子に結合した有機基としてはメチル、エチル、プロピル等のアルキル基やフェニル基等のアリル基などの一価炭化水素基が挙げられ、該オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するジオルガノシロキサン繰返し単位としてはジメチルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位等の一種または二種以上の組み合わせであることが好ましい。具体的には、α、ω‐ジヒドロキシジメチルポリシロキサン、α、ω‐ジヒドロキシジフェニルポリシロキサン、α、ω‐ジヒドロキシメチルフェニルポリシロキサン、α、ω‐ジヒドロキシ(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン)共重合体、α、ω‐ジヒドロキシ(ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン)共重合体等が挙げられる。
液状増粘剤としてのポリオルガノシロキサンの配合量は(A)ポリオルガノシロキサン全体を100重量部とした時、通常、0〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部程度とすることができる。
【0065】
また、材料の熱硬化後の強度、靭性を高める目的で、ガラス繊維などの無機物繊維を含有させてもよく、また、熱伝導性を高めたるため、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミ、繊維状アルミナ等を前述の白色顔料とは別に含有させることができる。その他、硬化物の線膨張係数を下げる目的で、石英ビーズ、ガラスビーズ等を含有させることができる。
これらの添加する場合の含有量は、少なすぎると目的の効果か得られず、多すぎると半導体装置用樹脂成形体用材料の粘度が上がり、加工性に影響するので、十分な効果が発現し、材料の加工性を損なわない範囲で適宜選択できる。通常、ポリオルガノシロキサン100重量部に対し500重量部以下、好ましくは200重量部以下である。
【0066】
また、上記樹脂成形体用材料中には、その他、イオンマイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)防止剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを本発明の目的および効果を損なわない範囲において含有させることができる。
なお、カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性および接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0067】
上記(A)乃至(E)成分の、本発明の半導体発光装置用樹脂成形体用材料中の好ましい含有量は以下のとおりである。
本発明の樹脂成形体用材料中における(A)ポリオルガノシロキサンの含有量は、通常樹脂成形体用材料として用いることができる範囲であれば限定されないが、通常材料全体の15重量%以上、50重量%以下であり、好ましくは20重量%以上、40重量%以下であり、より好ましくは25重量%以上、35重量%以下である。なお、材料中に含まれる(D)硬化速度制御剤やその他成分である液状増粘剤がポリオルガノシロキサンである場合は上記(A)の含有量に含まれるものとする。
本発明の樹脂成形体用材料中における(B)白色顔料の含有量は、通常樹脂成形体用材料として用いることができる範囲であれば限定されないが、通常材料全体の30重量%以上、85重量%以下であり、好ましくは40重量%以上80重量%以下であり、より好ましくは45重量%以上、70重量%以下である。
本発明の樹脂成形体用材料中における(E)流動性調整剤の含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば限定されないが、通常材料全体の55重量%以下であり、好ましくは2重量%以上50重量%以下であり、より好ましくは5重量%以上、45重量%以下である。
また、樹脂成形体用材料全体に対する、(B)白色顔料及び(E)流動性調整剤の合計量の比が、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、65重量%以上であることが特に好ましく、また、85重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましい。
【0068】
<1−6.樹脂成形体用材料の粘度>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体用材料は、25℃における剪断速度100s
-1での粘度が10Pa・s以上10,000Pa・s以下であることが好ましい。上記粘度は、半導体装置用樹脂成形体を成形する際の成形効率の観点から、50Pa・s以上5,000Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以上2,000Pa・s以下であることがさらに好ましく、150Pa・s以上1,000Pa・s以下であることが特に好ましい。
加えて、後述するようにチキソトロピー性の観点から、本発明の半導体発光装置用樹脂成形体用材料は25℃での剪断速度100s
-1での粘度に対する25℃での剪断速度1s
-1での粘度の比(1s
-1/100s
-1)が15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが特に好ましい。一方、上限は、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましい。
また、本発明の半導体発光装置用樹脂成形体用材料の粘度としては、特に、25℃における剪断速度100s
-1での粘度が1,000Pa・s以下であり、かつ、25℃での剪断速度100s
-1での粘度に対する25℃での剪断速度1s
-1での粘度の比(1s
-1/100s
-1)が15以上であることが好ましい。
成形性のよい材料とするためには、材料に一定以上のチキソトロピー性を持たせることが必要であるが、25℃における剪断速度100s
-1での粘度が10Pa・s以上10,000Pa・s以下であり、剪断速度100s
-1での粘度に対する剪断速度1s
-1での粘度の比が15以上である場合、バリやショートモールド(未充填)の発生が少なく、成形時の材料の計量時間や成形サイクルを短縮でき、成形も安定しやすく、成形効率の高い材料となる。
特に液状樹脂材料を用いたLIM成形では、金型の微小隙間から材料が染み出すことに起因するバリが発生しやすく、バリを除去する後処理工程が必要であった。一方、バリの発生を抑えるために金型の隙間を小さくするとショートモールド(未充填)が発生しやすくなる等の問題があった。樹脂成形体用材料の粘度が上記範囲にある場合、このような問題を解決することができ、樹脂成形体のLIM成形を容易に、成形性良く行うことができる。剪断速度100s
-1での粘度が10,000Pa・sより大きいと、樹脂の流れが悪いため金型への充填が不十分となったり、射出成形を行う際に材料供給に時間がかかるため成形サイクルが長くなったりするなどして、成形効率が低下する傾向にある。また、上記粘度が10Pa・sより小さいと、金型の隙間から材料が漏れてバリが発生したり、金型の隙間に射出圧力が逃げやすくなるため成形が安定しにくくなったり、やはり成形効率が低下する傾向にある。特に成形体が小さい場合にはバリを除去するための後処理も困難になるため、バリの発生を抑えることは成形性には重要である。
25℃における剪断速度100s
-1での粘度に対する25℃における剪断速度1s
-1での粘度の比が15未満の場合、つまり剪断速度1s
-1での粘度が比較的小さい場合は、成形機や金型の隙間にも材料が入り込みやすくなったり、バリが非常に発生しやすくなったり、ノズル部で液ダレしやすくなったり、射出圧力が材料に伝わりにくく成形が安定しにくくなったりするなど、成形のコントロールが難しくなることがある。LIM成形ではスプルー部のパーティングラインの樹脂漏れが問題になりやすいが、本発明の粘度範囲に調整することは樹脂漏れ抑制にも効果がある。
これらの25℃における剪断速度100s
-1での粘度と剪断速度1s
-1での粘度は、例えばARES−G2−歪制御型レオメータ(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて測定することができる。
【0069】
上記粘度を制御し、液状射出成形(LIM成形)に好適に使用できる材料とするためには材料に一定以上のチキソトロピー性を持たせることが必要である。微細領域(一次粒径0.1μm以上2.0μm以下)の微粒子を材料中に配合すると著しい増粘が起こり、チキソトロピー性付与効果が大きい。そのため、一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の(B)白色顔料や、比表面積が大きいフュームドシリカのような微細領域の(E)流動性調整剤を使用すると、組成物のチキソトロピー性をコントロールしやすい。具体的には、一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の(B)白色顔料を30重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは(B)白色顔料と、フュームドシリカや石英ビーズのような白色顔料以外の(E)流動性調整剤とを組み合わせ合計で50〜85重量%含有させることで、材料の粘度を上記範囲に制御することができる。
二次粒子の中心粒径が2μmよりも大きい白色顔料を用いる場合、特に中心粒径が5μm以上のものを用いる場合には、チキソトロピー性付与効果が大きい微細領域の流動性調整剤を併用することが好ましいが、(B)白色顔料自体の一次粒径が十分小さい場合には、流動性調整剤と併用せず白色顔料のみでも使用でき、更に中心粒径が比較的大きい数μm程度以上の流動性調整剤と組み合わせても良い。
【0070】
<1−7.樹脂成形体用材料の熱伝導率>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体用材料は、硬化時の熱伝導率が0.4以上3.0以下であることが好ましく、0.6以上2.0以下であることがより好ましい。硬化時の熱伝導率は、例えばアイフェイズ・モバイル(アイフェイズ社製)を用いて測定することができる。
ここで硬化時とは、180℃で4分間熱硬化させた時をいう。
【0071】
半導体発光装置においては、半導体発光素子から発せられる光により発熱が生じ、特に該素子の出力が大きい場合は発熱量がより大きくなる。この場合、発熱により樹脂成形体に隣接する蛍光体層の劣化が生じ、該装置の耐久性を低下させてしまう。
かかる問題に対し、本発明者らは、硬化時の、すなわち成形により樹脂成形体とした時の熱伝導率が上記範囲であることにより、樹脂成形体およびそれを用いて構成した半導体発光装置において半導体発光素子から発せられる光による発熱に対する放熱性が向上するため、該装置の耐久性が向上することを見出した。
上記熱伝導率が0.4より小さいと、該装置において半導体発光素子から発せられる光による発熱により該装置に含まれる蛍光体層が熱劣化する傾向にある。
上記熱伝導率は、半導体発光装置用樹脂成形体用材料に含有させる(B)白色顔料としてアルミナや窒化硼素を用いることにより上記範囲に制御することができる。
【0072】
<1−8.樹脂成形体の反射率>
また、本発明の樹脂成形体用材料を用いた樹脂成形体は、可視光について高反射率を維持することができることが好ましい。具体的には、460nmの光の反射率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、波長400nmの光の反射率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
ここで、樹脂成形体の反射率は、本発明の樹脂成形体用材料を熱硬化させて、厚さ0.4mmに成形した成形体を測定した場合の反射率をいう。前記熱硬化は、例えば、10kg/cm
2の圧力下、180℃で4分間、硬化させることにより行うことができる。
樹脂成形体の反射率は、樹脂の種類(例えば、樹脂の屈折率を変えることにより反射率を制御することができる。)やフィラーの種類、フィラーの粒径や含有量などにより制御することができる。
【0073】
<2.半導体発光装置用樹脂成形体の成形方法>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体の成形方法として圧縮成形法、トランスファー成形法、および射出成形法を例示する事ができる。これらのうち、好ましい成形方法としては、無駄な硬化物が発生せず二次加工が不要である(すなわちバリが発生しにくい)点から、樹脂成形体の成形工程の自動化、成形サイクルの短縮化、成形品のコスト削減が可能になる等大きなメリットがある、射出成形法、特に液状射出成形法(LIM成形)が挙げられる。LIM成形とトランスファー成形とを比較すると、LIM成形は、成形形状の自由度が高く、成形機および金型が比較的安価であるというメリットがある。
【0074】
射出成形法では射出成形機を用いて行う事ができる。シリンダー設定温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは、60℃以下である。金型温度は80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、120℃以上、200℃以下である。射出時間は材料によって変わるが、通常数秒あるいは1秒以下である。成形時間は材料のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、600秒以下、好ましくは5秒以上、200秒以下、さらに好ましくは10秒以上、60秒以下である。
【0075】
液状射出成形(LIM成形)で樹脂を成形する際には、冷えた樹脂を熱い金型に送り込み化学反応を伴い粘度を上げていくため、通常は粘度上昇不十分なまま金型に到達する。すなわち、温度条件に対する粘度上昇に遅れが生じるため、樹脂の粘度の制御に加えて金型間やリードフレームと金型との隙間の精度が高いことも要求される。樹脂が金型に到達する際の粘度上昇が不十分な場合には、樹脂が金型の隙間やリードフレームと金型との隙間から漏れ出ることがあり、バリが発生しやすい。通常は10μm以下、好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下の金型隙間精度が要求される。金型に入る前にリードフレームを予熱することも、リードに沿ったバリの発生を抑えるのに効果がある。
また、樹脂の成形の際、金型を真空雰囲気下に置くことで、狭い空間への材料の浸透が促進され、成形品内にエアボイドの発生を防ぐことができる。
液状射出成形(LIM成形)における硬化時間については、硬化度をグラフで表した際に、グラフの形がS字に立ち上がると良い。初期の硬化の立ち上がりが早すぎると金型への未充填が発生する場合がある。バリの発生を抑え、かつ金型への未充填を防止するには、材料の硬化速度のコントロールと粘度調整が非常に重要である。金型に樹脂材料が充填された後は、成形サイクルを短縮でき、硬化収縮により離型性が上がるので、硬化は早いほど良い。
硬化終了までの時間は通常60秒以内、好ましくは30秒以内、さらに好ましくは10秒以内である。必要に応じてポストキュアを行ってもよい。硬化速度は白金触媒種の選択、触媒量、硬化速度制御剤の使用、ポリオルガノシロキサンの架橋度のほか、金型温度、充填速度、射出圧力等の成形条件によっても調節できる。
【0076】
圧縮成形法ではコンプレッション成形機を用いて行う事ができる。成形温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、120℃以上、200℃以下である。成形時間は材料の硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、900秒以下、さらに好ましくは10秒以上、600秒以下である。
【0077】
トランスファー成形法ではトランスファー成形機を用いて行う事ができる。成形温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、120℃以上、200℃以下である。成形時間は材料のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、900秒以下、さらに好ましくは10秒以上、600秒以下である。
【0078】
いずれの成形法でも必要に応じて後硬化を行う事ができ、後硬化温度は100℃以上、300℃以下、好ましくは150℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、170℃以上、200℃以下である。後硬化時間は通常3分間以上、24時間以下、好ましくは5分以上、10時間以下、さらに好ましくは10分間以上、5時間以下である。
【0079】
<3.半導体発光装置パッケージ、及び半導体発光装置>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、通常半導体発光素子を搭載して半導体発光装置として用いられる。半導体発光装置は、例えば
図1に示す様に、半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤ3、封止材4、リードフレーム5等から構成される。この場合、リードフレーム5等の導電性材料と絶縁性の樹脂成形体からなるものを、パッケージと称する。
【0080】
半導体発光素子1は、近紫外領域の波長を有する光を発する近紫外半導体発光素子、紫領域の波長の光を発する紫半導体発光素子、青領域の波長の光を発する青色半導体発光素子などを用いることが可能であり、350nm以上520nm以下の波長を有する光を発する。
図1においては半導体発光素子が1つのみ搭載されているが、後述する
図2のように複数個の半導体発光素子を線状に、あるいは平面状に配置することも可能である。半導体発光素子1を平面状に配置することで、面照明とすることができ、このような実施形態はより出力を強くしたい場合に好適である。
【0081】
パッケージを構成する樹脂成形体2は、リードフレーム5と共に成形される。パッケージの形状は特段限定されず平面型でもカップ型でもよい。樹脂成形体2は、そのすべてが本発明の樹脂成形体材料からなるものであってもよく、その一部が本発明の樹脂成形体材料からなるものであってもよい。樹脂成形体2の一部が本発明の樹脂成形体材料からなるものである場合の具体例としては、後述する
図2のように、リフレクター部102の樹脂成形体を本発明の樹脂成形体材料から成形する態様が挙げられる。
【0082】
リードフレーム5は導電性の金属からなり、半導体発光装置外から電源を供給し、半導体発光素子1に通電する役割を果たす。
ボンディングワイヤ3は、半導体発光素子1をパッケージに固定する役割を有する。また、半導体発光素子1が電極となるリードフレームと接触していない場合には、導電性のボンディングワイヤ3が半導体発光素子1への電源供給の役割を担う。ボンディングワイヤ3は、リードフレーム5に圧着し、熱及び超音波の振動を与えることで接着させる。
本発明の樹脂成形体用材料からなる樹脂成形体2は、リードフレーム5の露出面積を極めて小さくすることが可能である。本発明の樹脂成形体材料を成形した樹脂成形体は、リードフレームの材料(例えば銀など)と反射率が同等乃至は高い傾向にあるため、樹脂成形体の露出面積を大きくしても、パッケージの高い反射率を維持することができる。そのため、本発明の樹脂成形体用材料からなるパッケージを用いることで、従来型のパッケージとは異なる構成の半導体発光装置を得ることもできる。例えば、
図3には従来型のパッケージを備えた半導体発光装置200を示す。
図3の半導体発光装置は、リードフレーム204の露出面積が大きい。これは、樹脂成形体201の反射率がリードフレーム204と比較して低いため、半導体発光装置が高輝度を実現するためには、反射率の高い材料を用いているリードフレーム204の表面積を大きくする必要があった。このようなリードフレーム204の露出面積が大きい場合には、パッケージを発光装置に備えて使用した場合にリードフレームの変色が生じることで発光効率が低下する場合があるが、
図1のように、リードフレーム5の露出面積を小さくすることで、このようなリードフレームの変色に起因する発光効率の低下を防ぐことができる。
【0083】
パッケージを構成する樹脂成形体2は、半導体発光素子1が搭載され、蛍光体を混合した封止材4により封止されている。封止材4は、バインダー樹脂に蛍光体を混合した混合物であり、蛍光体は半導体発光素子1からの励起光を変換し、励起光と波長の異なる蛍光を発する。本実施形態においては、封止材が蛍光体層の役割を兼ねている。封止材4に含まれる蛍光体は、半導体発光素子1の励起光の波長に応じ、適宜選択される。白色光を発する半導体発光装置(白色LED)において、青色光を発する半導体発光素子を励起光源とする場合には、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。紫色光を発する半導体発光素子の場合には、青色及び黄色の蛍光体を蛍光体層に含ませること、または青色、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。
封止材4に含まれるバインダー樹脂は、通常封止材に用いられることが知られている透光性の樹脂を適宜選択すればよい。具体的にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0084】
本発明の半導体発光装置の別の態様を
図2を用いて説明する。
本実施形態の半導体発光装置1Cは、窓部を有する筐体101、リフレクター部102、光源部103、ヒートシンク104から構成されている。光源部103は配線基板上に発光部105を備えており、配線基板106に直接半導体発光素子が実装されたCOB(Chip on Board)形式、
図1のような半導体発光装置が表面実装された形式のいずれでも良い。光源部103がCOB形式である場合は、半導体発光素子はドーム状又は平板状に成形された封止樹脂により枠材を使用せず封止されていても良い。また、配線基板106上に実装される半導体発光素子は1個でも複数個でもよい。リフレクター部102及びヒートシンク104は筐体101と一体型であっても別々であってもよく、必要に応じて用いることが出来る。放熱の観点から光源部103、筐体101、ヒートシンク104は一体構造もしくは高熱伝導性シートやグリースなどを介し隙間なく接していることが好ましい。窓部107は公知の透明樹脂や光学ガラスなどを用いることが出来、平板状であっても曲面を有していてもよい。
【0085】
蛍光体部を設け白色LEDとする場合には蛍光体部を光源部103に設けても窓部107に設けてもよいが、窓部107に設けると発光素子から離れた位置に蛍光体を配置することが出来、熱や光で劣化しやすい蛍光体の劣化を抑制し、長期にわたり均一で高輝度な白色光を得ることが出来るメリットがある。
【0086】
窓部107に蛍光体層を設ける場合は、透明な窓材の上(図示せず)に蛍光体層をスクリーン印刷やダイコーティング、スプレー塗布などの方法で製造することができる。このような態様の場合、半導体発光素子と蛍光体層とが距離をあけて配置されているため、蛍光体層が半導体発光素子からの光のエネルギーにより劣化することを防ぐことができ、また発光装置の出力も向上させることができる。半導体発光素子と窓部107の蛍光体層との距離は、5〜50mmであることが好ましい。
図2における蛍光体層は、蛍光の自己再吸収とRGB各色蛍光体間の再吸収を低減するため、用いる蛍光体各色ごとに塗り分けた多層構造としたり、ストライプ状、あるいはドット状などのパターンを形成したりしても良い。
上記半導体発光装置1Cの各部の形状は図に示す限りではなく、曲面部を有していたり必要に応じ調光装置や回路保護装置など付属の装置がついていても良い。
【0087】
以上説明した本発明の半導体発光装置において、本発明に係る樹脂成形体(以下、単に「光学部材」と称する。)を適用する箇所は、すでに説明したとおり特に制限されない。例えば
図2で示す半導体発光装置1Cにおいては、筐体101、リフレクター部102、光源部103、発光部105、配線基板106の各部材に用いることができる。本発明に係る樹脂成形体は紫外〜可視光の反射率が高く耐熱性、耐光性に優れるため、必要な半導体発光素子の個数を抑え安価で高輝度、高耐久な照明装置を供することが出来る。 特に本発明の樹脂成形体は紫外〜青色光の反射率が高いことにより蛍光体により波長変換される前の半導体発光素子から発せられる光を有効に反射できることになり、蛍光体層を光源部から離れた位置に設置する実施態様に適している。半導体発光素子の発光色が紫外〜近紫外である場合には反射材フィラーはアルミナを主成分とすることが好ましく、青色である場合にはアルミナ及び/又はチタニアを主成分とすることが好ましい。
【0088】
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体用材料を用いて形成された半導体発光装置用樹脂成形体は、好ましいものとして以下の特徴を有する。
【0089】
<3−1.半導体発光装置パッケージの反射率>
本発明の半導体発光装置パッケージは、可視光のみならず、紫色よりも短い波長の近紫外光、紫外光についても高反射率を維持することができることが特徴である。波長360、400および460nmの光の反射率が、それぞれ通常60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。紫外光領域から可視光領域まで高反射率を有する本発明の樹脂成形体を備えた半導体発光装置パッケージは、従来の半導体発光装置パッケージに認められないきわめて優れた特性を有する。特にポリシロキサン等の樹脂製の半導体発光装置パッケージにおいては、これまで当業者が容易に想到できなかった特性であり、技術的意義が極めて高い。
【0090】
<3−2.半導体発光装置パッケージの厚み>
本発明の半導体発光装置パッケージは、通常、チップ装着面と前記チップ装着面と反対側に底面を有する。この場合、前記チップ装着面と底面の間の距離、すなわち半導体発光装置パッケージの厚みは、通常100μm以上、好ましくは200μm以上である。また、通常3000μm以下であり好ましくは2000μm以下である。厚みが薄すぎると底面に光が透過して反射率が低下する、パッケージの強度が不十分で取り扱い上変形する、などの問題が生じるおそれがあり、厚すぎるとパッケージ自体も厚く嵩高くなるため、半導体発光装置の適用用途が限られる。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定される物ではない。
【0092】
<実施例1>
[ポリオルガノシロキサン(1)の合成]
ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ビニル基:1.2mmol/g含有、シリカ微粒子を添加して粘度を1000mPa・sに調整したもの。また、白金錯体触媒6.8ppmを含有。)とヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサン(ビニル基:0.3mmol/g含有、ヒドロシリル基:1.8mmol/g含有、シリカ微粒子を添加して粘度を2100mPa・sに調整したもの。)とを1:1で混合し、粘度1500mPa・s、白金濃度3.4ppmの液状熱硬化性ポリオルガノシロキサン(1)を得た。
なお、シリカ微粒子は、(E)流動性調整剤に相当し、上記の粘度となるようにポリオルガノシロキサン:シリカ微粒子(重量比)が、80:20から、89.5:10.5となるように添加した。
【0093】
[ポリオルガノシロキサン(2)の合成]
ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ビニル基:0.3mmol/g含有、粘度3500mPa・s。白金錯体触媒8ppm含有。)と、ヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサン(ビニル基:0.1mmol/g含有、ヒドロシリル基:4.6mmol/g含有、粘度600mPa・s)と、硬化遅延成分((D)硬化速度制御剤)含有ポリジメチルシロキサン(ビニル基:0.2mmol/g含有、ヒドロシリル基:0.1mmol/g含有、アルキニル基:0.2mmol/g含有、500mPa・s)とを、100:10:5で混合し、白金濃度7ppmの液状熱硬化性ポリオルガノシロキサン(2)を得た。
なお、この液状熱硬化性ポリオルガノシロキサン(2)の屈折率は、1.41であった。
【0094】
[樹脂成形体用材料の調製、試験片の作製]
(A)上記で得られた液状熱硬化性ポリオルガノシロキサン(1)、(B)白色顔料(後掲の表1参照)、(E)流動性調整剤としてシリカ微粒子「AEROSIL RX200」(比表面積140m
2/g)を表2に示す重量比で配合し、攪拌により白色顔料とシリカ微粒子を前記(1)に分散させ、白色の樹脂成形体用材料を得た。これらの材料を、熱プレス機にて180℃、10kg/cm
2、硬化時間240秒の条件で硬化させ、直径13mmの円形の試験片(テストピース)を得た。なお、各試験片の厚みは、表2に記載の通りである。
【0095】
[白色顔料の一次粒子径、および一次粒子のアスペクト比の測定]
実施例で用いた白色顔料(アルミナ粉体)のSEM観察により一次粒子径を計測した。粒子径にばらつきがある場合は、数点(例えば10点)をSEM観察し、その平均値を粒子径としてもとめた。特にばらつきが大きく、例えば、極微量含まれる微小粒子や粗大粒子を除き、小粒径と大粒径の差が5倍程度以上あるような場合には、その最大値および最小値を記録した。また、長軸長さ(最大長径)と短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)も計測し、一次粒子径については長軸の長さを採用し、長軸長さ(最大長径)を短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)で除した値をアスペクト比とした。結果を表1に示す。
【0096】
[白色顔料の二次粒子の中心粒径D
50の測定]
10〜20mgの白色顔料(アルミナ粉体)に0.2%のポリリン酸ナトリウム水溶液10gを加え、超音波振動でアルミナを分散させた。この分散液を用いて白色顔料の二次粒子の体積基準の中心粒径D
50を日機装株式会社製 マイクロトラックMT3000IIにて測定した。なお、中心粒径D
50は、積算%の体積基準粒度分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子径を言う。結果を表1に示す。
【0097】
[白色顔料の結晶子サイズの測定]
PANalytical社製 X´Pert Pro MPDにてアルミナ粉体のX線回折測定を行ない、結晶系を求めた。さらに、α−アルミナについては(113)結晶子サイズをScherrerの式より算出した。
【0098】
<実施例2〜9、および比較例1〜7>
白色顔料として、表2に記載のものを用い、(A)液状熱硬化性ポリオルガノシロキサン(1)又は(2)、(B)白色顔料、(E)流動性調整剤としてシリカ微粒子「AEROSIL RX200」の配合を表2に示す重量比で配合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、表2に記載の厚さの試験片を得た。
なお、表2において、白色顔料A〜Jは、表1に記載のものである。
【0099】
【表1】
白色顔料Iのチタニアは表面にシリカとアルミナの薄膜コートが施されたものである。
なお、表中で「−」は未測定であることを表す。
【0100】
【表2】
【0101】
一次粒子径が0.1μm未満のアルミナを使用した比較例3の材料では、粘度が上がり、白色顔料の分散が困難で、49%しかアルミナを充填させることができなかった。
【0102】
[試験片の反射率測定]
上記実施例1〜9および比較例1〜7の各試験片について、コニカミノルタ社製SPECTROPHOTOMETER CM−2600dを用いて測定径6mmにて360nmから740nmの波長における反射率を測定した。結果を表3、および
図4に示す。なお、実施例2、実施例9及び比較例5の各試験片については、試験片が極端に薄い場合の反射率も併せて測定した。
【0103】
【表3】
【0104】
表3によれば、球状ではなく、一次粒子径およびアスペクト比が特定の値である白色顔料を使用した実施例1〜9では、460nmでの反射率が極めて高いことが判明した。加えて
図3によれば、白色顔料がアルミナである場合には、紫外領域から可視光領域までの広い範囲で高い反射率を維持した。一方、球状の白色顔料を使用した比較例1、2では、460nmでの反射率が若干低くなることが判明した。また、白色顔料がアルミナである場合であっても、400nmでの反射率では低下の度合が顕著に表れることが判明した。一方、一次粒子径が0.1μm未満のアルミナを使用した比較例3、7、および一次粒径が2μmを超えるアルミナを使用した比較例4、5、6は、ともに反射率が低かった。
また、試験片の厚み120μmでの460nm光の反射率は、実施例2、9では比較例5に比べて高く、薄い材料でも比較的高い反射率を維持した。特にアルミナにチタニアを配合した実施例9では、試験片の厚みを薄くしたときの反射率の低下が小さいことが判明した。
【0105】
[樹脂成形体用材料の粘度測定]
実施例1〜7、比較例2、比較例4、比較例5、及び比較例6の各樹脂成形体用材料について、レオメトリクス社製RMS−800にてパラレルプレートを用い、測定温度25℃で粘度測定を行った。
その結果を表4、および
図5に示す。実施例1〜7の何れの材料も、25℃における剪断速度1s
-1および100s
-1での粘度、並びにその傾きが樹脂成形体の成形に適していることがわかる。一方比較例では、粘度の値が実施例と大きくことなることがわかる。なお、比較例6では粘度が高すぎて、パラレルプレートとサンプル間ですべりが生じ、正確な測定ができなかった。
【0106】
【表4】
【0107】
[実施例10]
実施例3の材料を用いて、全面銀メッキした銅リードフレームと共に液状射出成形により半導体発光装置用パッケージを成形した。該パッケージは、樹脂部が縦3.2mm×横2.7mm×高さ1.4mm、開口部の直径2.4mmの凹部を有するカップ状の表面実装型パッケージであった。成形は金型温度170℃、硬化時間20秒の条件で行った。成形したパッケージを観察したところ、バリの発生はなく、ショートモールドの無いパッケージであった。
【0108】
[実施例11]
実施例3の材料を用いて、全面銀メッキした銅リードフレームと共に液状射出成形により半導体発光装置用パッケージを成形した。該パッケージは、縦5mm×横5mm×高さ1.5mm、開口部の直径3.6mmの凹部を有するカップ状の表面実装型パッケージであった。成形は金型150℃、硬化時間180秒の条件で行った。成形したパッケージを液体窒素で凍結した状態でミクロトームにより切削し、パッケージ断面のSEM観察を行った。断面に露出したアルミナの一次粒子径は0.3μm、一次粒子のアスペクト比は1.42であった。