(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業機と、エンジンと、前記エンジンによって駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、前記走行用油圧ポンプとの間で閉回路を形成し、前記走行用油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧モータと、前記油圧モータによって駆動されて前記作業車両を走行させる駆動輪と、前記エンジンへの燃料供給量を増減操作するアクセル操作部と、前記制御用アクセル操作量に応じて、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、前記制御用アクセル操作量の増加速度が設定された増加速度決定テーブルを記憶する記憶部と、を備える作業車両を制御するにあたって、
今回の制御周期における前記エンジンの回転速度から換算された前記アクセル操作部の変換アクセル操作量と前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量との差分を求めることと、
求めた前記差分から前記増加速度決定テーブルを参照して前記制御用アクセル操作量の増加速度を決定することと、
決定された前記増加速度で、制御用アクセル操作量を前記今回の制御周期の実際の操作量まで変化させることと、
を含む、作業車両の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
<フォークリフト>
図1は、本実施形態に係るフォークリフト1の全体構成を示す図である。
図2は、
図1に示されたフォークリフト1の制御系統を示すブロック図である。フォークリフト1は、駆動輪2a及び操向輪2bを有した車体3と、作業機5と、駆動輪2a及び操向輪2bを制動する機械式ブレーキ9と、を有する。フォークリフト1は、運転席STから操舵部材HLへ向かう側が前であり、操舵部材HLから運転席STへ向かう側が後である。作業機5は、車体3の前方に設けられる。
【0017】
車体3には、内燃機関の一例であるエンジン4、エンジン4を駆動源として駆動する可変容量型の走行用油圧ポンプ10及び作業機油圧ポンプ16が設けられる。エンジン4は、例えばディーゼルエンジンであるが、これには限定されない。走行用油圧ポンプ10及び作業機油圧ポンプ16には、エンジン4の出力軸4Sが連結されている。走行用油圧ポンプ10及び作業機油圧ポンプ16は、出力軸4Sを介してエンジン4に駆動される。駆動輪2aは、油圧モータ20の動力で駆動される。可変容量型の走行用油圧ポンプ10と可変容量型の油圧モータ20とは閉じた油圧回路で連通されて、HSTを形成している。このように、フォークリフト1は、HSTによって走行する。本実施形態において、走行用油圧ポンプ10と作業機油圧ポンプ16とは、いずれも斜板10Sと斜板16Sとを有し、斜板10Sと斜板16Sとの傾転角が変更されることにより、容量が変化する。
【0018】
作業機5は、積荷を載置するフォーク6を昇降させるリフトシリンダ7及びフォーク6をチルトさせるチルトシリンダ8を有する。車体3の運転席には、前後進レバー42a、ブレーキ操作部としてのインチングペダル(ブレーキペダル)40a、アクセル操作部としてのアクセルペダル41a並びに作業機5を操作するためのリフトレバー及びチルトレバーを含む図示しない作業機操作レバーが設けられる。インチングペダル40aは、インチング率を操作する。アクセルペダル41aは、エンジン4への燃料供給量を変更する。インチングペダル40a及びアクセルペダル41aは、フォークリフト1のオペレータが、運転席から足踏み操作できる位置に設けられている。
図1では、インチングペダル40aとアクセルペダル41aとが重なった状態で描かれている。
【0019】
図2に示されるように、フォークリフト1は、主油圧回路100を備えている。主油圧回路100は、走行用油圧ポンプ10と、油圧モータ20と、両者を接続する油圧供給管路10a及び油圧供給管路10bとを含んだ閉回路である。走行用油圧ポンプ10は、エンジン4によって駆動されて作動油を吐出する装置である。本実施形態において、走行用油圧ポンプ10は、例えば、斜板傾転角を変更することによって容量を変更することのできる可変容量型のポンプである。
【0020】
油圧モータ20は、走行用油圧ポンプ10から吐出された作動油によって回転駆動される。油圧モータ20は、例えば、斜板20Sを有し、斜板傾転角を変更することによって容量を変更することのできる可変容量型の油圧モータである。油圧モータ20は、固定容量型の油圧モータであってもよい。油圧モータ20は、その出力軸20aがトランスファ20bを介して駆動輪2aに接続されている。油圧モータ20は、トランスファ20bを介して駆動輪2aを回転駆動することで、フォークリフト1を走行させることができる。
【0021】
油圧モータ20は、走行用油圧ポンプ10からの作動油の供給方向に応じて回転方向を切り替えることが可能である。油圧モータ20の回転方向が切り替えられることにより、フォークリフト1は前進又は後進することができる。以下の説明においては、便宜上、油圧供給管路10aから油圧モータ20に作動油が供給された場合にフォークリフト1が前進し、油圧供給管路10bから油圧モータ20に作動油が供給された場合にフォークリフト1が後進するものとする。
【0022】
走行用油圧ポンプ10は、油圧供給管路10aに接続されている部分がAポート10A、油圧供給管路10bに接続されている部分がBポート10Bである。フォークリフト1の前進時には、Aポート10Aが作動油の吐出側となり、Bポート10Bが作動油の流入側となる。フォークリフト1の後進時には、Aポート10Aが作動油の流入側となり、Bポート10Bが作動油の吐出側となる。
【0023】
フォークリフト1は、ポンプ容量設定ユニット11、モータ容量設定ユニット21及びチャージポンプ15を有する。ポンプ容量設定ユニット11は、走行用油圧ポンプ10に設けられる。ポンプ容量設定ユニット11は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13及びポンプ容量制御シリンダ14を備える。ポンプ容量設定ユニット11は、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12及び後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に、後述する制御装置30から指令信号が与えられる。ポンプ容量設定ユニット11は、制御装置30から与えられた指令信号に応じてポンプ容量制御シリンダ14が作動し、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が変化することによって、走行用油圧ポンプ10の容量が変更される。
【0024】
ポンプ容量制御シリンダ14は、シリンダケース14C内にピストン14aが収納されている。ピストン14aは、シリンダケース14Cとピストン14aとの間の空間に作動油が供給されることによって、シリンダケース14C内を往復する。ポンプ容量制御シリンダ14は、斜板傾転角が0の状態において、ピストン14aが中立位置に保持されている。このため、エンジン4が回転しても、走行用油圧ポンプ10から主油圧回路100の油圧供給管路10a又は油圧供給管路10bへ吐出される作動油の量は0である。
【0025】
走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が0の状態から、例えば、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に対して制御装置30から走行用油圧ポンプ10の容量を増大する旨の指令信号が与えられるとする。すると、この指令信号に応じて前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からポンプ容量制御シリンダ14にポンプ制御圧力が与えられる。その結果、ピストン14aは、
図2において左側に移動する。ポンプ容量制御シリンダ14のピストン14aが
図2において左側に移動すると、この動きに連動して走行用油圧ポンプ10の斜板10Sは、油圧供給管路10aに作動油を吐出する方向へ向けて傾く。
【0026】
前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からのポンプ制御圧力が増大するにしたがって、ピストン14aの移動量が大きくなる。このため、走行用油圧ポンプ10での斜板10Sの傾転角は、その変化量も大きなものとなる。つまり、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に対して制御装置30から指令信号が与えられると、この指令信号に応じたポンプ制御圧力が前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からポンプ容量制御シリンダ14に与えられる。前述したポンプ制御圧力によって、ポンプ容量制御シリンダ14が作動することにより、走行用油圧ポンプ10の斜板10Sが油圧供給管路10aに対して所定量の作動油を吐出できるように傾く。この結果、エンジン4が回転すれば、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10aに作動油が吐出されて、油圧モータ20は前進方向に回転する。
【0027】
前述した状態において、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12に制御装置30から走行用油圧ポンプ10の容量を減少する旨の指令信号が与えられると、この指令信号に応じて前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12からポンプ容量制御シリンダ14に供給されるポンプ制御圧力が減少する。このため、ポンプ容量制御シリンダ14のピストン14aは、中立位置に向かって移動する。この結果、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が減少し、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10aへの作動油の吐出量が減少する。
【0028】
制御装置30が、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に対して走行用油圧ポンプ10の容量を増大する旨の指令信号が与えると、この指令信号に応じて後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からポンプ容量制御シリンダ14に対してポンプ制御圧力が与えられる。すると、ピストン14aは、
図2において右側に移動する。ポンプ容量制御シリンダ14のピストン14aが、
図2において右側に移動すると、これに連動して走行用油圧ポンプ10の斜板10Sが油圧供給管路10bに対して作動油を吐出する方向へ向かって傾転する。
【0029】
後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13から供給されるポンプ制御圧力が増大するにしたがってピストン14aの移動量が大きくなるため、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角の変化量は大きくなる。つまり、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に対して制御装置30から指令信号が与えられると、この指令信号に応じたポンプ制御圧力が後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からポンプ容量制御シリンダ14に与えられる。そして、ポンプ容量制御シリンダ14の作動により走行用油圧ポンプ10の斜板10Sが油圧供給管路10bに対して所望量の作動油を吐出できるように傾く。この結果、エンジン4が回転すると、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10bに作動油が吐出されて、油圧モータ20は、後進方向に回転する。
【0030】
後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13に対して制御装置30から走行用油圧ポンプ10の容量を減少する旨の指令信号が与えられると、この指令信号に応じて後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13からポンプ容量制御シリンダ14に供給するポンプ制御圧力が減少し、ピストン14aが中立位置に向けて移動する。この結果、走行用油圧ポンプ10の斜板傾転角が減少するので、走行用油圧ポンプ10から油圧供給管路10bへ吐出される作動油の量が減少する。
【0031】
モータ容量設定ユニット21は、油圧モータ20に設けられる。モータ容量設定ユニット21は、モータ電磁比例制御バルブ22、モータ用シリンダ制御バルブ23及びモータ容量制御シリンダ24を備えている。モータ容量設定ユニット21では、モータ電磁比例制御バルブ22に制御装置30から指令信号が与えられると、モータ電磁比例制御バルブ22からモータ用シリンダ制御バルブ23にモータ制御圧力が供給されて、モータ容量制御シリンダ24が作動する。モータ容量制御シリンダ24が作動すると、モータ容量制御シリンダ24の動きに連動して油圧モータ20の斜板傾転角が変化することになる。このため、制御装置30からの指令信号に応じて油圧モータ20の容量が変更されることになる。具体的には、モータ容量設定ユニット21は、モータ電磁比例制御バルブ22から供給されるモータ制御圧力が増加するにしたがって、油圧モータ20の斜板傾転角が減少するようになっている。
【0032】
チャージポンプ15は、エンジン4によって駆動される。チャージポンプ15は、前述した前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12及び後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13を介してポンプ容量制御シリンダ14にポンプ制御圧力を供給する。チャージポンプ15は、モータ電磁比例制御バルブ22を介してモータ用シリンダ制御バルブ23にモータ制御圧力を供給する機能を有している。
【0033】
本実施形態において、エンジン4は、走行用油圧ポンプ10の他に、作業機油圧ポンプ16を駆動する。この作業機油圧ポンプ16は、作業機5を駆動するための作業用アクチュエータであるリフトシリンダ7及びチルトシリンダ8に作動油を供給する。
【0034】
フォークリフト1は、インチングポテンショメータ(ブレーキポテンショメータ)40、アクセルポテンショメータ41、前後進レバースイッチ42、エンジン回転センサ43、車速センサ46、圧力センサ47A、47B、圧力センサ48及び温度センサ49を備えている。
【0035】
インチングポテンショメータ40は、インチングペダル(ブレーキペダル)40aが操作された場合に、その操作量を検出して出力する。インチングペダル40aの操作量は、インチング操作量Isである。インチングポテンショメータ40が出力するインチング操作量Isは、制御装置30に入力される。以下において、インチング操作量IsをインチングストロークIsと称することもある。
【0036】
アクセルポテンショメータ41は、アクセルペダル41aが操作された場合に、アクセルペダル41aの操作量Aopを出力するものである。アクセルペダル41aの操作量Aopは、アクセル操作量Aop又はアクセル開度Aopともいう。アクセルポテンショメータ41が出力するアクセル開度Aopは、制御装置30に入力される。
【0037】
前後進レバースイッチ42は、フォークリフト1の進行方向を前進又は後進に切り替えるための選択スイッチである。本実施形態では、運転席から選択操作できる位置に設けた前後進レバー42aの操作により、前進と、中立と、後進との3つの進行方向を選択して、フォークリフト1の前進と後進とを切り換えることができる前後進レバースイッチ42を適用している。前後進レバー42aは、フォークリフト1の進行方向を前進又は後進に切り替えるための進行方向切替装置である。前後進レバースイッチ42によって選択されたフォークリフト1の進行方向を示す情報は、進行方向指令値DRとして前後進レバースイッチ42から制御装置30に与えられる。進行方向指令値DRは、Fが前進、Nが中立、Rが後進を示す。前後進レバースイッチ42が選択するフォークリフト1の進行方向は、これからフォークリフト1が進行する方向と、フォークリフト1が実際に進行している方向との両方を含む。
【0038】
エンジン回転センサ43は、エンジン4の実際の回転速度を検出するものである。エンジン回転センサ43によって検出されたエンジン4の回転速度は、実際のエンジン4の回転速度Nrである。エンジン4の回転速度Nrを示す情報は、制御装置30に入力される。エンジン4の回転速度は、単位時間あたりにおけるエンジン4の出力軸4Sの回転数である。車速センサ46は、フォークリフト1が走行するときの速度、すなわち車速Vcを検出する装置である。
【0039】
圧力センサ47Aは、油圧供給管路10aに設けられて、油圧供給管路10a内の作動油の圧力を検出する。圧力センサ47Bは、油圧供給管路10bに設けられて、油圧供給管路10b内の作動油の圧力を検出する。圧力センサ47Aが検出する圧力は、走行用油圧ポンプ10のAポート10A内における作動油の圧力に相当する。圧力センサ47Bが検出する圧力は、走行用油圧ポンプ10のBポート10B内における作動油の圧力に相当する。制御装置30は、圧力センサ47A及び圧力センサ47Bの検出値を取得し、本実施形態に係る作業車両の制御方法に用いる。圧力センサ48は、リフトシリンダ7内のリフト圧力、すなわちリフトシリンダ7内の作動油の圧力を検出するリフト圧力検出装置である。温度センサ49は、HST内の作動油の温度を検出する温度検出装置である。
【0040】
制御装置30は、処理部30Cと記憶部30Mとを含む。制御装置30は、例えば、コンピュータを備え、フォークリフト1の制御に関する各種の処理を実行する装置である。処理部30Cは、例えば、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組合せた装置である。処理部30Cは、記憶部30Mに記憶されている、主油圧回路100を制御するためのコンピュータプログラムを読み込んでこれに記述されている命令を実行することにより、主油圧回路100の動作を制御する。記憶部30Mは、前述したコンピュータプログラム及び主油圧回路100の制御に必要なデータ等を記憶している。記憶部30Mは、例えば、ROM(Read Only Memory)、ストレージデバイス又はこれらを組合せた装置である。
【0041】
制御装置30には、インチングポテンショメータ40、アクセルポテンショメータ41、前後進レバースイッチ42、エンジン回転センサ43、車速センサ46及び圧力センサ47A、47Bといった各種センサ類が電気的に接続されている。制御装置30は、これらの各種センサ類からの入力信号に基づいて、前進用ポンプ電磁比例制御バルブ12、後進用ポンプ電磁比例制御バルブ13の指令信号を生成し、かつ生成した指令信号をそれぞれの電磁比例制御バルブ12、13、22に与える。
【0042】
<制御装置30の制御ブロック>
図3は、制御装置30の制御ブロック図である。制御装置30、より具体的には処理部30Cは、アクセルペダル41aが操作されたときに、本実施形態に係る作業機械の制御方法を実行する。制御装置30の処理部30Cは、変換部31と、回転速度差計算部32と、増加速度決定部33とを含む。制御装置30は、予め定められた制御周期で、本実施形態に係る作業機械の制御方法を実行して、制御用アクセル操作量Aopaを生成する。
【0043】
変換部31は、エンジン回転センサ43が検出したエンジン4の回転速度Nrを取得し、アクセル操作量Aopcに変換する。アクセル操作量Aopcは、式(1)によって求めることができる。アクセル操作量Aopcは百分率、すなわち%で表される。式(1)中のNiはエンジン4のアイドリング時における回転速度であり、Nmaxは、エンジン4の回転速度の最大値である。式(1)は、
図2に示される記憶部30Mに記憶されている。変換部31は、エンジン回転センサ43が検出したエンジン4の回転速度Nrを式(1)に与えてアクセル操作量Aopcを求めて、回転速度差計算部32に出力する。以下において、アクセル操作量Aopcを、適宜変換アクセル操作量Aopcと称する。
Aopc=(Nr−Ni)/(Nmax−Ni)×100・・(1)
【0044】
回転速度差計算部32は、変換部31から取得した変換アクセル操作量Aopcと、増加速度決定部33から出力される制御用アクセル操作量Aopaのうち、前回の制御周期における制御用アクセル操作量Aopabとから、回転速度差ΔAopを求める。回転速度差ΔAopは、今回の制御周期におけるエンジン4の回転速度Nrから換算されたアクセルペダル41aの操作量である変換アクセル操作量Aopcと前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量Aopabとの差分である。前回の制御周期における制御用アクセル操作量Aopabの初期値は0%である。回転速度差ΔAopは、式(2)で求めることができる。式(2)は、
図2に示される記憶部30Mに記憶されている。回転速度差計算部32は、変換アクセル操作量Aopcと前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量Aopabとを式(2)に与えて回転速度差ΔAopを求めて、回転速度差計算部32に出力する。
ΔAop=Aopc−Aopab・・(2)
【0045】
増加速度決定部33は、アクセル操作量生成手段である。増加速度決定部33は、アクセルペダル41aの実際のアクセル操作量Aopから、エンジン4を制御するための制御用アクセル操作量Aopaを生成する。このとき、増加速度決定部33は、回転速度差ΔAopと、増加速度決定テーブルである第1増加速度決定テーブル50又は第2増加速度決定テーブル51とから増加速度Vaを決定する。すなわち、増加速度決定部33は、回転速度差ΔAopから、第1増加速度決定テーブル50又は第2増加速度決定テーブル51を参照して増加速度Vaを決定する。そして、増加速度決定部33は、決定された増加速度Vaで、今回の制御周期の制御用アクセル操作量Aopaを今回の制御周期の実際のアクセル操作量Aopまで変化させる。増加速度Vaは、制御用アクセル操作量Aopaが単位時間あたりに増加する量である。増加速度決定部33は、入力されるアクセルペダル41aの実際のアクセル操作量Aopまで、制御用アクセル操作量Aopaを増加速度Vaで増加させる。本実施形態において、増加速度決定部33は、アクセルポテンショメータ41からアクセルペダル41aの実際のアクセル操作量Aopを取得するが、実際のアクセル操作量Aopは、例えば、一次遅れのフィルタを通過したものであってもよいし、実際のアクセル操作量Aopの上限値が制限されたものであってもよい。
【0046】
図4及び
図5は、増加速度Vaを決定するための増加速度決定テーブルの一例を示す図である。第1増加速度決定テーブル50及び第2増加速度決定テーブル51は、いずれも
図2に示す制御装置30の記憶部30Mに記憶されている。第1増加速度決定テーブル50には、複数の回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopm毎に複数の増加速度Vaa1、Vaa2、・・・Vaamが設定される。第2増加速度決定テーブル51には、複数の回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopm毎に複数の増加速度Vab1、Vab2、・・・Vabmが設定される。mは2以上の整数である。複数の回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopmを区別しない場合、回転速度差ΔAopと称する。複数の増加速度Vaa1、Vaa2、・・・Vaam、Vab1、Vab2、・・・Vabmを区別しない場合、増加速度Vaa又は増加速度Vabと称する。
【0047】
第1増加速度決定テーブル50は、回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopmの順に、それぞれ増加速度Vaa1、Vaa2、・・・Vaamが設定されている。第2増加速度決定テーブル51は、回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopmの順に、それぞれ増加速度Vab1、Vab2、・・・Vabmが設定されている。
【0048】
複数の回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopmは、この順に大きくなっている。増加速度Vaは、異なるアクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3毎に設定されている。Aop1<Aop2<Aop3である。アクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3以外のアクセル開度Aopに対応する増加速度Vaは、アクセル操作量Aop1に設定された増加速度Va及びアクセル操作量Aop2に設定された増加速度Va又はアクセル操作量Aop2に設定された増加速度Va及びアクセル操作量Aop3に設定された増加速度Vaを用いた補間によって求められる。第1増加速度決定テーブル50又は第2増加速度決定テーブル51に、回転速度差ΔAop及び現在の制御周期におけるアクセル操作量Aopが与えられることにより、これらに対応する増加速度Vaが選択される。増加速度Vaa及び増加速度Vabの大きさは限定されるものではなく、フォークリフト1の仕様に応じて、適宜変更することができる。
【0049】
第1増加速度決定テーブル50及び第2増加速度決定テーブル51は、回転速度差ΔAopが0未満の場合、増加速度Vaaを同一の値にしてアクセルペダル41aの操作に対するタイムラグを低減する。また、第1増加速度決定テーブル50及び第2増加速度決定テーブル51は、回転速度差ΔAopが0以上の場合は前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量Aopab毎に増加速度Vaaを変更してフォークリフト1の加速感を変化させる。具体的には、エンジン4の回転速度が低い場合はフォークリフト1の加速度を低くして滑らかに発進させ、徐々に加速度を上昇させる。
【0050】
増加速度決定部33は、今回の制御周期におけるアクセルペダル41aの実際のアクセル操作量Aopが増加する場合、回転速度差ΔAop及び現在の制御周期におけるアクセル操作量Aopを第1増加速度決定テーブル50又は第2増加速度決定テーブル51に与えて、増加速度Vaを決定する。そして、増加速度決定部33は、今回の制御周期の制御用アクセル操作量Aopaを、決定された増加速度Vaで、今回の制御周期の実際のアクセル操作量Aopまで変化させる。
【0051】
なお、第1増加速度決定テーブル50及び第2増加速度決定テーブル51は、異なるアクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3毎に増加速度Vaが設定されているが、アクセル操作量Aopによらず、回転速度差ΔAopに対して増加速度Vaが設定されていてもよい。この場合、増加速度決定部33は、回転速度差ΔAopを第1増加速度決定テーブル50又は第2増加速度決定テーブル51に与えて、増加速度Vaを決定する。
【0052】
増加速度決定部33は、今回の制御周期におけるアクセルペダル41aの実際のアクセル操作量Aopが前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量Aopab以上である場合、今回の制御周期における実際のアクセル操作量Aopは増加すると判定する。増加速度決定部33は、今回の制御周期におけるアクセルペダル41aの実際のアクセル操作量Aopが前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量Aopabよりも小さい場合、今回の制御周期における実際のアクセル操作量Aopは減少すると判定する。
【0053】
増加速度決定部33は、今回の制御周期におけるアクセルペダル41aの実際のアクセル操作量Aopが増加する場合、フォークリフト1が荷役状態又は走行荷役状態である場合と、走行状態である場合とで、第1増加速度決定テーブル50又は第2増加速度決定テーブル51を使い分ける。具体的には、フォークリフト1が荷役状態又は走行荷役状態である場合に第1増加速度決定テーブル50が用いられ、フォークリフト1が走行状態である場合に第2増加速度決定テーブル51が用いられる。
【0054】
第1増加速度決定テーブル50と第2増加速度決定テーブル51とは、同一の回転速度差ΔAop同士で比較すると、第1増加速度決定テーブル50の増加速度Vaaは、第2増加速度決定テーブル51の増加速度Vabよりも大きくなっている。このようにすることで、フォークリフト1が走行のみの場合は、エンジン4の回転速度の上昇を遅くし、発進時の飛出し抑制できるとともに、必要以上のフォークリフト1の加速を抑制して燃料の消費量を抑制できる。フォークリフト1が荷役状態又は走行荷役状態である場合は、荷役作業に瞬発性が必要とされるため、エンジン4の回転速度の上昇を速くすることができる。
【0055】
増加速度決定部33は、インチングポテンショメータ40及び前後進レバースイッチ42の検出値を取得し、インチングストロークIsが予め定められた大きさ以上又は前後進レバー42aが中立である場合に、荷役状態又は走行荷役状態であると判定する。増加速度決定部33は、インチングストロークIsが予め定められた大きさ未満かつ前後進レバー42aが前進又は後進である場合に、走行状態であると判定する。
【0056】
本実施形態において、制御装置30の処理部30Cは、燃料噴射量演算部34を備える。エンジン制御手段である燃料噴射量演算部34は、増加速度決定部33が求めた今回の制御周期の制御用アクセル操作量Aopaと、エンジン回転センサ43が検出したエンジン4の回転速度Nrとに基づいて、エンジン4の燃料噴射インジェクタ4Iが噴射する燃料の量を演算する。燃料噴射量演算部34は、燃料噴射量Qfの指令値を燃料噴射インジェクタ4Iに出力する。燃料噴射インジェクタ4Iは、燃料噴射量演算部34から出力された燃料噴射量Qfに対応した燃料をエンジン4に噴射する。
【0057】
本実施形態において、制御用アクセル操作量Aopaの増加速度Vaを十分小さい値に制限することにより、フォークリフト1のオペレータがアクセルペダル41aを100%踏み込むことでフォークリフト1に最大の加速を要求しても、エンジン4の無駄な吹き上がりが抑制される。また、フォークリフト1の飛び出し感も低減される。
【0058】
第1増加速度決定テーブル50は、回転速度差ΔAopが大きくなるにしたがって、増加速度Vaaが大きくなっている。回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopmは、この順に大きくなっているので、増加速度Vaa1、Vaa2、・・・Vaamもこの順に大きくなっている。第2増加速度決定テーブル51も、回転速度差ΔAopが大きくなるにしたがって、増加速度Vabが大きくなっている。回転速度差ΔAop1、ΔAop2、・・・ΔAopmは、この順に大きくなっているので、増加速度Vab1、Vab2、・・・Vabmもこの順に大きくなっている。
【0059】
本実施形態においては、回転速度差ΔAopが大きくなるにしたがって、増加速度Vaa、Vabが大きくなっているので、増加速度決定部33は、回転速度差ΔAopが大きいほど、制御用アクセル操作量Aopaを今回の制御周期の実際のアクセル操作量Aopまで短い時間で変化させることができる。このため、制御装置30は、フォークリフト1のオペレータがアクセルペダル41aを踏み込む操作をした状態からアクセルペダル41aを一旦開放し、エンジン4の回転速度Nrが0ではない状態で再度アクセルペダル41aを操作した場合、エンジン4の回転速度Nrを上昇させるために必要な制御用アクセル操作量Aopaを得るための時間を短縮できる。このため、制御装置30は、アクセルペダル41aの踏み込み操作に対するエンジン4の回転速度Nrの上昇遅れを抑制して、フォークリフト1のオペレータの意思に沿ったエンジン4の応答を実現できる。
【0060】
図6は、実際のアクセル操作量Aopと、エンジン4の回転速度Nrと、制御用アクセル操作量Aopaとの関係を示す図である。
図6に示す例において、フォークリフト1のオペレータは、時間t1でアクセルペダル41aを操作し、時間t2で一旦アクセルペダル41aを開放する。制御用アクセル操作量Aopaは、制御周期毎に時間t2まで段階的に増加し、エンジン4の回転速度Nrも、時間t2まで上昇する。
【0061】
時間t2でアクセルペダル41aが開放されると、制御用アクセル操作量Aopaは0%なので、エンジン4の回転速度Nrは時間の経過とともに低下する。時間t3では、エンジン4の回転速度Nrが0ではない状態である。オペレータが、時間t3で再度アクセルペダル41aを操作する。
【0062】
本実施形態は、今回の制御周期におけるエンジン4の回転速度Nrから換算されたアクセルペダル41aの操作量である変換アクセル操作量Aopcと前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量Aopabとの差分である回転速度差ΔAopを用いて増加速度Vaが決定され、かつ回転速度差ΔAopが大きくなるにしたがって、増加速度Vaが大きくなっている。このため、回転速度差ΔAopが大きいとき、すなわち、オペレータが、時間t3で再度アクセルペダル41aを操作した場合、本実施形態の制御用アクセル操作量Aopaは、大きい増加速度Vaで増加する。その結果、時間t3で再度アクセルペダル41aが操作されてからエンジン4の回転速度Nrが上昇を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0063】
本実施形態において、第1増加速度決定テーブル50は、同じ回転速度差ΔAopの異なるアクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3に対して、異なる増加速度Vaaが設定されていてもよいし、同じ増加速度Vaa又同じ増加速度Vabが設定されていてもよい。同様に、第2増加速度決定テーブル51も、同じ回転速度差ΔAopの異なるアクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3に対して、異なる増加速度Vabが設定されていてもよいし、同じ増加速度Vabが設定されていてもよい。
【0064】
異なるアクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3に対して、増加速度Vaa又は増加速度Vabを異ならせる場合、アクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3が大きくなるにしたがって、増加速度Vaa又は増加速度Vabを大きくすることができる。オペレータは、フォークリフト1を加速させたい場合にオペレータがアクセルペダル41aを大きく踏み込む。増加速度Vaa又は増加速度Vabを前述したように設定すれば、アクセルペダル41aが大きく踏み込まれた場合ほど、増加速度Vaa又は増加速度Vabが大きくなる。このため、制御装置30は、アクセルペダル41aの踏み込み操作に対するエンジン4の回転速度Nrの上昇遅れを抑制できるので、フォークリフト1のオペレータの意思に沿ったエンジン4の応答を実現できる。
【0065】
本実施形態において、アクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3が大きくなるにしたがって、増加速度Vaa又は増加速度Vabを小さくすることを除外するものではない。また、アクセル操作量Aop1、Aop2、Aop3の代わりに、前回の制御周期における制御用アクセル操作量Aopab1、Aopab2、Aopabが用いられてもよい。
【0066】
<変形例>
図7及び
図8は、フォークリフト1の機種毎に、増加速度Vaを決定するためのテーブルを用意した例を示す図である。フォークリフト1の機種Aには第1増加速度決定テーブル50及び第2増加速度決定テーブル51が用いられ、機種Bには第1増加速度決定テーブル52及び第2増加速度決定テーブル53が用いられるとする。第1増加速度決定テーブル50、52は、フォークリフト1が荷役状態又は走行荷役状態で用いられ、第2増加速度決定テーブル51、53は、フォークリフト1が走行荷役状態で用いられる。第1増加速度決定テーブル50には増加速度Vaaが設定され、第2増加速度決定テーブル51には増加速度Vabが設定され、第1増加速度決定テーブル52には増加速度Vacが設定され、第2増加速度決定テーブル53には増加速度Vadが設定される。
【0067】
図3に示される増加速度決定部33は、
図7及び
図8に示す小選択部33aを備える。本変形例において、増加速度決定部33は、第1増加速度決定テーブル50から得られた増加速度Vaaと第1増加速度決定テーブル52から得られた増加速度Vabとの小さい方を小選択部33aで選択する。また、増加速度決定部33は、第2増加速度決定テーブル51から得られた増加速度Vacと第2増加速度決定テーブル53から得られた増加速度Vadとの小さい方を小選択部33aで選択する。このようにすることで、異なる機種Aと機種Bとで、制御ロジックを共通にすることができる。
【0068】
<制御例>
フォークリフト1、具体的にはエンジン4を制御するにあたって、制御装置30の回転速度差計算部32は、回転速度差ΔAopを求める。次に、増加速度決定部33は、得られた回転速度差ΔAopと、第1増加速度決定テーブル50又は第2増加速度決定テーブル51とから増加速度Vaa又は増加速度Vabを決定する。そして、増加速度決定部33は、決定した増加速度Vaa又は増加速度Vabで、今回の制御用アクセル操作量Aopaを、今回の制御周期における実際のアクセル操作量Aopまで変化させる。燃料噴射量演算部34は、今回の制御用アクセル操作量Aopaを用いて燃料噴射量Qfを決定する。エンジン4の燃料噴射インジェクタ4Iは、決定された燃料噴射量Qfの燃料をエンジン4に噴射する。
【0069】
以上、本実施形態を説明したが、前述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組合せることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。作業車両は、ホイールを備えた作業車両であれば、例えばホイールローダーであってもよく、フォークリフト1に限定されない。
作業機を備えた作業車両であり、エンジンへの燃料供給量を増減操作するアクセル操作部の実際のアクセル操作量を入力し、制御用アクセル操作量を生成するアクセル操作量生成手段と、前記制御用アクセル操作量に応じて、前記エンジンを制御するエンジン制御手段と、前記制御用アクセル操作量の増加速度が設定された増加速度決定テーブルを記憶する記憶部と、を備え、前記アクセル操作量生成手段は、今回の制御周期における前記エンジンの回転速度から換算された前記アクセル操作部の変換アクセル操作量と前回の制御周期で得られた制御用アクセル操作量との差分を求め、求めた前記差分から前記増加速度決定テーブルを参照して前記制御用アクセル操作量の増加速度を決定し、決定された前記増加速度で、制御用アクセル操作量を前記今回の制御周期の実際の操作量まで変化させる。