(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明は、片面または両面にガス流路が形成された流路部と、流路部を取り囲むように形成された外周部とからなる燃料電池用セパレータの製造方法であって、
該方法は、熱可塑性樹脂100質量部に対し130〜3200質量部の炭素質材料を含む熱可塑性樹脂シートAと、熱可塑性樹脂100質量部に対し3〜280質量部の炭素質材料を含み、該炭素質材料のうち50〜100質量%が繊維状炭素である熱可塑性樹脂シートBとを、それぞれ少なくとも1枚ずつ積層した状態で圧縮成形する工程を含む。
熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBを、それぞれのバインダー成分の融点のうち、いずれか高い方の融点+60℃の温度、面圧20MPaおよび加圧時間60秒の成形条件で、シート厚さ1mmから、圧縮したときの熱可塑性樹脂シートAの厚み残量d
Aと熱可塑性樹脂シートBの厚み残量d
Bの比が、d
A/d
B≧2を充たす。ここでバインダー成分とは、それぞれのシートに含まれる熱可塑性樹脂のほか、後述するエラストマー、およびこれらに溶解する成分の混合物を言う。
【0015】
燃料電池用セパレータは、片面または両面にガス流路が形成された流路部と、流路部を取り囲むように形成された外周部からなる。
図1は、燃料電池用セパレータの一例を示す。
図1(a)は平面図を示し、
図1(b)は底面図を示す。
図1において、1は燃料電池用セパレータであり、2はガス流路であり、3は流路部であり、4は外周部である。流路の配置や断面形状には特に制限はなく、
図1に示すものの他にも、燃料電池用セパレータとして公知のものを用いることができる。流路部の断面形状の一例としては
図2のような波形形状や、
図3のような表裏対称の形状、
図4のような中空流路6を有する形状を挙げることができる。
また外周部には、流路にガスや冷却水を導入し、また不要になったガスや生成水を排出するための内部マニホールド5が設けられていてもよい。
【0016】
(燃料電池用セパレータの製造方法)
燃料電池用セパレータは、熱可塑性樹脂および炭素質材料を含む熱可塑性樹脂シートAと、熱可塑性樹脂および繊維状炭素を含む炭素質材料を含む熱可塑性樹脂シートBとを、それぞれ少なくとも1枚ずつ積層した状態で圧縮成形することにより製造する。熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBの少なくとも一方を2枚以上積層する場合は、熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBを交互に積層し、最外層は熱可塑性樹脂シートBとすることが好ましい。
以下、「熱可塑性樹脂シートA」を単に「シートA」ともいい、「熱可塑性樹脂シートB」を単に「シートB」ともいう。
【0017】
(シートAの組成)
熱可塑性樹脂シートAは、熱可塑性樹脂および炭素質材料を含み、熱可塑性樹脂100質量部に対し炭素質材料を130〜3200質量部、好ましくは300〜2500質量部、より好ましくは500〜900質量部含む。熱可塑性樹脂シートAがこのような組成であると、流路部の導電性が良好な燃料電池用セパレータとすることができる。
【0018】
(シートBの組成)
熱可塑性樹脂シートBは、熱可塑性樹脂および炭素質材料を含み、熱可塑性樹脂100質量部に対し炭素質材料を3〜280質量部、好ましくは10〜120質量部、より好ましくは60〜80質量部含む。熱可塑性樹脂シートBに含まれる炭素質材料のうち50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%が繊維状炭素である。熱可塑性樹脂シートBがこのような組成であると、機械特性に優れた燃料電池用セパレータとすることができる。
【0019】
(熱可塑性樹脂シートの圧縮厚み残量)
熱可塑性樹脂シートA、熱可塑性樹脂シートBの等圧縮加重下での厚み残量d
A、d
Bの比は、後述する成形条件においてd
A/d
B≧2であり、より好ましくはd
A/d
B≧5であり、さらに好ましくはd
A/d
B≧7である。これにより、熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBを重ねて圧縮成形した際に、熱可塑性樹脂シートAはほとんどひずまず、熱可塑性樹脂シートBはひずんで外側へ押し出される。その結果、導電性が必要とされる流路部は、体積固有抵抗の低い熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aを主として形成され、外からの衝撃が加わりやすい外周部は、曲げ特性の良好な熱可塑性シートB由来の領域Bを主として形成されるので、機械特性と、流路部の導電性が両立された燃料電池用セパレータを容易に得ることができる。加えて、成形時に流動しやすい熱可塑性樹脂シートBが存在するため、金型の隅々まで材料が充填され、寸法精度の良好な燃料電池用セパレータを得ることができる。また好ましくはd
A/d
B≦50であり、より好ましくはd
A/d
B≦10である。
得られる燃料電池用セパレータの流路部の導電性を高める観点からは、シートAの圧縮厚み残量は後述する測定条件で、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。また流路部の寸法精度の観点からは、シートAの圧縮厚み残量は後述する測定条件で、0.7mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。
得られる燃料電池用セパレータの外周部に、シートBが行きわたりやすいようにする観点から、シートBの圧縮厚み残量は後述する測定条件で、0.08mm以下であることが好ましく、0.05mm以下であることがより好ましい。得られる燃料電池用セパレータの機械特性の観点から、シートBの圧縮厚み残量は0.005mm以上であることが好ましく、0.01mm以上であることがより好ましい。
d
A/d
B≧2の要件は、熱可塑性樹脂シートAおよび熱可塑性樹脂シートBを構成する熱可塑性樹脂および炭素質材料の種類および含有量を適宜選択することによって得ることができる。例えば、以下の通りである。
炭素質材料の含有量:熱可塑性樹脂シートAの炭素質材料の含有量を熱可塑性樹脂シートBの炭素質材料の含有量より多くすることにより、d
A/d
Bの値を大きくすることができ、具体的には、シートAおよびシートBの炭素質材料の含有量をそれぞれ上述の通りとすることが好ましい。
炭素質材料の種類:熱可塑性樹脂シートBに、繊維状炭素以外の炭素質材料を併用する場合、ケッチェンブラックの含有量は、シートBの炭素質材料中、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%とすると、シートBの流動性が向上し、d
A/d
Bの値を大きくすることができる。
熱可塑性樹脂の融点または軟化点:熱可塑性樹脂シートAに、融点または軟化点の高い熱可塑性樹脂を用い、熱可塑性樹脂シートBに、融点または軟化点の低い熱可塑性樹脂を用いることにより、d
A/d
Bの値を大きくすることができる。熱可塑性樹脂の融点はJIS K7121に準拠して、また軟化点は、JIS K2531に準拠して測定することができる。
熱可塑性樹脂の分子量:熱可塑性樹脂シートAに高分子量成分を多く含む熱可塑性樹脂を用い、熱可塑性樹脂シートBに低分子量成分を多く含む熱可塑性樹脂を用いることにより、d
A/d
Bの値を大きくすることができる。
熱可塑性樹脂のメルトフローレート:シートAに用いる熱可塑性樹脂のメルトフローレートを小さくし、シートBに用いる熱可塑性樹脂のメルトフローレートを大きくすることにより、d
A/d
Bの値を大きくすることができる。具体的には、ISO 1873−2.2:95に準拠して測定したシートAの熱可塑性樹脂シートのメルトフローレートが、0.1〜50g/10minであることが好ましく、0.2〜40g/10minであることがより好ましい。また、同様にして測定したシートBのメルトフローレートは、1〜70g/10minであることが好ましく、20〜50g/10minであることがより好ましい。
なおこれらの条件は、必ずしも同時に全てを充たす必要はなく、d
A/d
B≧2を充たすように、適宜選択し、組み合わせることができる。
d
Aの異なる熱可塑性樹脂シートAを複数枚積層する場合は、各熱可塑性樹脂シートAのd
Aを各熱可塑性樹脂シートAの厚みで加重平均した値をd
Aとする。同様に、d
Bの異なる熱可塑性樹脂シートBを複数枚積層する場合は、各熱可塑性樹脂シートBのd
Bを各熱可塑性樹脂シートBの厚みで加重平均した値をd
Bとする。たとえば、たとえば、圧縮厚み残量d
A1、厚みt
A1の熱可塑性樹脂シートA1と圧縮厚み残量d
A2、厚みt
A2の熱可塑性樹脂シートA2とを1枚ずつ積層する場合は、d
A=(t
A1d
A1+t
A2d
A2)/(t
A1+t
A2)である。
【0020】
(熱可塑性樹脂シートの圧縮厚み残量の測定)
圧縮厚み残量は、熱可塑性樹脂シートA、熱可塑性樹脂シートBをそれぞれφ50mm、厚み1mmのサイズに調整し、その試験片をφ50mm、厚さ5mmの超硬プレート2枚の間に仕込み、熱プレス機を用いて所定の成形条件で圧縮し、圧縮後の試験片の厚みをノギスまたはマイクロメーターなどで測定して比率を求める。成形条件は、熱可塑性樹脂シートAおよび熱可塑性樹脂シートBに含まれるバインダー成分の融点のうち、いずれか高い方の融点より60℃高い温度で、設定温度になるまで十分に予熱し、面圧20MPa、加圧時間60秒の条件で成形する。
【0021】
(炭素質材料)
熱可塑性樹脂シートAおよび熱可塑性樹脂シートBに含まれる炭素質材料としては、燃料電池用セパレータに用いられる公知の炭素質材料を用いることができる。具体的には、カーボンブラック、炭素繊維、アモルファスカーボン、膨張黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン等を挙げることができる。中でも、シートAに用いる炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、および膨張黒鉛から選ばれる1種以上が、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%を占める。特に異方性がない導電性の燃料電池用セパレータを得るためには、シートAの炭素質材料として、人造黒鉛を用いることが好ましい。
【0022】
天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛の粒径は、好ましくは体積基準の累積粒径D
10が3〜15μm、D
50が5〜60μm、D
90が60〜100μmであり、より好ましくはD
10が5〜12μm、D
50が5〜50μm、D
90が60〜90μm、さらに好ましくはD
10が7〜10μm、D
50が10〜50μm、D
90が60〜80μmである。3μm以下の粒子が多いと、炭素質材料を高充填した際に、導電性及び機械的特性が低下するので好ましくない。また、100μm以上の粒子が多いと、成形品の外観が悪く、割れやすくなるので好ましくない。炭素質材料の粒径は、所定量の蒸留水に、所定量のサンプルと界面活性剤とを加えて分散させ、レーザー回折散乱法にて粒度分布を測定することにより、求めることができる。
【0023】
炭素質材料の粉体抵抗は、粉体密度を1.5g/cm
3としたときに、加圧方向に対して直角方向の粉末電気比抵抗ができるだけ低いことが望ましく、0.1Ω・cm以下であることが好ましく、さらに0.03Ω・cm以下であることが、高い導電性が得られるので好ましい。粉体抵抗は特許第3937962号公報に記載の方法で測定できる。
【0024】
炭素質材料の真密度は、好ましくは1.6〜2.25g/cm
3であり、より好ましくは1.7〜2.25g/cm
3であり、さらに好ましくは1.9〜2.25g/cm
3である。炭素質材料の真密度が高いほど、黒鉛化が発達しており導電性が良好である。真密度は液相置換法、または気相置換法により測定できる。例えば、マウンテック社製のピクノマチックや、セイシン企業社製のVM−100、MAT−7000を用いることで測定できる。
【0025】
炭素質材料の嵩密度(タッピング密度)は、好ましくは0.3〜1.5g/cm
3であり、より好ましくは、0.5〜1.5g/cm
3であり、さらに好ましくは0.6〜1.5g/cm
3である。嵩密度が高いほど高充填することができ、高い導電性を発現しやすいので好ましい。
タッピング密度の測定は市販の嵩密度測定装置を用いて川北式評価法により測定できる。市販の嵩密度測定装置としては、例えばパウダテスタPT−S(ホソカワミクロン社製)、タップデンサーKYT−4000(セイシン企業社製)などが挙げられる。タップ回数は任意に決めることができるが、嵩減りが停止するまでタッピングすることが好ましい。その他USP(the United States Pharmacopeia)章<616> 方法2、またはEP(European Pharmacopeia)章2.9.15等に準拠した方法で測定しても構わない。
【0026】
(ホウ素含有炭素質材料)
さらに炭素質材料にはホウ素が0.01〜4質量%、より好ましくは0.05〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%含まれると、得られる燃料電池用セパレータの流路部の体積固有抵抗が小さくなるため好ましい。ホウ素を含む炭素質材料は特開2002−60639号公報、特開2005−281690号公報に記載の方法で製造することができる。また含有率の測定法についても上述の特許公報に記載されている。
【0027】
(繊維状炭素)
熱可塑性樹脂シートBに含まれる炭素質材料のうち50〜100質量%が繊維状炭素である。
繊維状炭素としては、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。
繊維状炭素の平均繊維径(D)は、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.1〜15μm、さらに好ましくは1〜10μmであり、平均繊維長(L)は好ましくは1μm〜20mm、より好ましくは5μm〜10mm、さらに好ましくは1〜10mmである。ただし繊維状炭素のL/Dは、好ましくは5〜1000、より好ましくは100〜1000、さらに好ましくは500〜1000である。L/Dを5以上とすることで、十分な繊維補強効果を得ることが出来、また1000以下とすることで、熱可塑性樹脂シートを製造する際の原料となる、繊維状炭素を含む樹脂組成物の流動性が良好になる。
上記繊維状炭素の平均繊維径および平均繊維長は走査型電子顕微鏡(SEM)などにより任意の100〜200本の繊維径と繊維長を測定し、算術平均値として算出することができる。また、0.7〜160μmの範囲であれば、ホソカワミクロン社製のFPIA−3000を用いて測定することができる。
【0028】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂シートAおよび熱可塑性樹脂シートBに含まれる熱可塑性樹脂としては、燃料電池用セパレータに用いられる公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、以下のものを挙げることができる。
アクリル樹脂:アクリロニトリルブタジエンスチレン重合体、ポリメタクリル酸メチル樹脂など
ポリ塩化ビニル
ポリイミド
液晶ポリマー
ポリエーテルエーテルケトン
フッ素樹脂:ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマーなど
ポリオレフィン:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリブテン−1など
ポリアセタール
ポリアミド
ポリエステル:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど
ポリカーボネート
ポリシクロオレフィン
ポリフェニレンスルフィド
ポリエーテルスルホン
ポリフェニレンオキシド
ポリフェニレンスルホン
【0029】
上記熱可塑性樹脂は、好ましくはポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリシクロオレフィン、およびポリエーテルスルホンのうち融点が100℃以上であるもの、ならびにポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンオキシドのうちガラス転移点温度が100℃以上であるものからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは結晶性のポリオレフィンであり、最も好ましくは結晶性のポリプロピレンであると、燃料電池運転時にクリープしにくく、また耐加水分解性が良好な燃料電池用セパレータが得られる。
熱可塑性樹脂の融点およびガラス転移点温度は、JIS K7121に従って、試験片を標準状態で調整し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、融点は融解ピーク温度として、ガラス転移点温度は中間点ガラス転移温度として測定することができる。
【0030】
(シートBの熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂シートBの熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂シートAの熱可塑性樹脂と同一であってもよいし、異なっていてもよいが、燃料電池用セパレータ成形後に熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBが分離するのを防ぐため、熱可塑性樹脂シートBの熱可塑性樹脂中、20質量%以上を、熱可塑性樹脂シートAの熱可塑性樹脂と同じ種類の樹脂、若しくは熱可塑性樹脂シートAの樹脂と相溶性を有する樹脂とすることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂シートAの熱可塑性樹脂および熱可塑性樹脂シートBの熱可塑性樹脂を、それぞれポリプロピレン、ポリブテン−1、エチレンプロピレンゴム、水添スチレンブタジエンゴム、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種とすると、熱可塑性樹脂シートAの熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂シートBの熱可塑性樹脂が互いに相溶するため好ましい。
ここで相溶性があるとは、部分的に溶け合うことが可能な異種ポリマー同士を、混合混練して分散したとき、ポリマーの平均粒子径が5μm以下のサイズで分散できる組み合わせ、または相分離せずに溶け合うことができる異種ポリマーの組み合わせである。
熱可塑性樹脂シートBの熱可塑性樹脂は、繊維状フィラー表面と化学結合できる、または濡れ性が良好な、変性処理された熱可塑性樹脂が10質量%以上含まれていると、繊維状炭素や、後述する繊維状フィラーとの界面強度が強固となり、好ましい。熱可塑性樹脂シートB中の、変性処理された熱可塑性樹脂の量は、熱可塑性樹脂中、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。変性処理によって導入される官能基としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸などの酸無水物と反応させることにより導入される酸無水物基、グリシジルアクリレートや、グリシジルメタクリレートによって導入される基、アミノ基、アミド基、ビニル基、水酸基、カルボキシル基およびチオール基からなる群より選ばれる1種以上の官能基が好ましく、酸無水物基やカルボキシル基を導入したもの、すなわち、酸変性されたものであることがより好ましい。変性処理としては、変性剤とポリマーをブレンドして押出機によりグラフト変性する方法や、溶液中で変性処理する方法などがある。市販の変性樹脂を使用することもでき、具体的には、三菱化学社製商品名モディック(登録商標)、三井化学社製商品名アドマー(登録商標)、三洋化成社製商品名ユーメックス、東ソー社製商品名メルセンM、住友化学社製商品名ボンドファースト(登録商標)などが挙げられる。
【0031】
(エラストマー)
熱可塑性樹脂シートAおよびBは、炭素質材料、熱可塑性樹脂の他に、常温付近でゴム状弾性を有するエラストマーを含むと、燃料電池用セパレータが割れにくくなるため好ましい。エラストマーの含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部につき、好ましくは0.05〜40質量部、より好ましくは1〜40質量部であり、さらに好ましくは2〜10質量部であると、割れにくく、流路が変形しにくく、ガス不透過性が良好なセパレータとなる。
【0032】
エラストマーは、好ましくは炭素質材料の平均粒子径以下かつ5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下の平均粒子径で前記熱可塑性樹脂中に分散していると、導電性が良好で割れにくい燃料電池用セパレータとなる。
エラストマーの平均粒子径は、ウルトラミクロトームを用いて、液体窒素により凍結させたサンプルの断面から超薄切片を作製し、オスミウム染色後、TEMにより分散相の粒子径を観察し、100個程度の粒子の数平均粒子径として求めることができる。
【0033】
エラストマーの例としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレンプロピレンジエン三元共重合ゴム、エチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン・プロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ノルボルネンゴム、ブチルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、軟質アクリル樹脂等の中からなる群より選ばれる1種以上を挙げることができる。
上記エラストマーの中でも、好ましくは炭化水素系エラストマーであるスチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる1種以上であると、エラストマーの耐加水分解性が良好であるため好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーであることが特に好ましい。
【0034】
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、水添スチレンブタジエンラバー、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックコポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー等が挙げられ、中でも、水添スチレンブタジエンラバー、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロックコポリマーであることが好ましい。
【0035】
(シートAの他の成分)
熱可塑性樹脂シートAには、上記材料の他、酸化防止剤、熱安定剤、ハロゲン捕捉剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、無機充填材、滑剤、可塑剤、難燃剤、界面活性剤、親水性付与剤、撥水性付与剤、摺動性付与剤などの表面改質剤などの添加剤を適宜含ませることができる。これら添加剤の添加量は、合計で熱可塑性樹脂シートA中、0〜20質量%であることが好ましい。
【0036】
(繊維状フィラー)
熱可塑性樹脂シートBは、繊維状炭素以外の繊維状フィラーを含んでもよい。「繊維状炭素以外の繊維状フィラー」および「繊維状炭素」を合わせて「繊維状フィラー」という。熱可塑性樹脂シートBは、繊維状フィラーを、3〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜50質量%含むと、燃料電池用セパレータの機械特性を向上することができる。
繊維状炭素以外の繊維状フィラーの例としては、ガラスファイバー、金属繊維、有機繊維、セラミック繊維、金属酸化物系のウィスカーの群より選ばれる1種以上が挙げられ、燃料電池用セパレータの導電性や耐腐食性の観点から、好ましくは繊維状炭素である。
【0037】
繊維状フィラーの平均繊維径(D)、平均繊維長(L)およびL/Dの好ましい範囲は、上述の繊維状フィラーの好ましい範囲と同様であり、その理由も同様である。
上記繊維状フィラーの平均繊維径および平均繊維長は走査型電子顕微鏡(SEM)などにより任意の100〜200本の繊維径と繊維長を測定した平均で算出することができる。また、0.7〜160μmの範囲であれば、ホソカワミクロン社製のFPIA−3000を用いて測定することができる。
【0038】
上記繊維状フィラーは、表面に導電性を付与する目的で、カーボンや金属などがコーティングされていてもよい。コーティングは蒸着法(化学気相蒸着、有機金属気相成長法、真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティングなど)、無電解メッキ法、電気めっき法、塗工、化成処理などにより行うことができる。
【0039】
また上記繊維状フィラーには、樹脂との密着性を向上させるため、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、グリシジル基、イソシアネート基、チオール基、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基の群より選ばれる一種以上の官能基を表面処理によって付与することが好ましい。例えば、シランカップリング処理、強酸処理、プラズマ処理、コロナ処理、その他化成処理などにより官能基を付与することができる。
【0040】
(シートBの他の成分)
熱可塑性樹脂シートBには、上記各成分のほか、熱可塑性樹脂シートに含有させることができるものとして列挙したのと同様の添加剤や、繊維状フィラー以外の充填材を1種以上含有させることができ、その添加量は熱可塑性樹脂シートB中、合計で0〜80質量%である。
【0041】
(熱可塑性樹脂シートAの製造方法)
熱可塑性樹脂シートAを製造するには、初めに上記各材料を混合する。混合の方法は特に制限されないが、例えば、ロールミル、押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練機を用いることができ、なるべく均一に混合させる。
次いで、混合した材料をシート状に成形する。なお、材料を混合した後、シート成形を行う前に、成形機や金型への材料の供給を容易にするため、混合された材料を粉砕あるいは造粒することもできる。
シート成形は、押出機による方法、押出機と圧延ロールの組合せによる方法、粉末状の前記混合された材料をロールに供給する方法などによる行うことができる。圧延ロールの温度はシート中のバインダー成分の固化温度以下にすることが好ましい。
【0042】
(熱可塑性樹脂シートAの体積固有抵抗)
熱可塑性樹脂シートAの体積固有抵抗値は、23℃において、50mΩ・cm以下であることが好ましく、10mΩ・cm以下であることがより好ましい。これにより、熱可塑性樹脂シートAを用いて得られる燃料電池用セパレータの流路部の導電性が向上する。また熱可塑性樹脂シートAの体積固有抵抗値は、23℃において、0.1Ω・cm以上であることが好ましく、1mΩ・cm以上であることがより好ましい。
体積固有抵抗値は、JIS K7194に準拠し、四探針法により測定する。
【0043】
(熱可塑性樹脂シートBの製造方法)
熱可塑性樹脂シートBは、熱可塑性樹脂シートAと同様に上記各材料を混合し、シート成形することによって製造できるが、市販の炭素繊維含有樹脂をシート成形して使用することもできる。具体的には、三菱レイヨン社製商品名パイロフィル(登録商標)ペレット、東レ社製商品名トレカ(登録商標)ペレット、ダイセルポリマー社製商品名プラストロンなどが挙げられる。
【0044】
(熱可塑性樹脂シートBの機械特性)
熱可塑性樹脂シートBは、70℃における曲げひずみが好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.5%以上であり、70℃における曲げ強度が好ましくは25MPa以上、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは35MPa以上である。これにより、熱可塑性樹脂シートBを用いて得られる燃料電池用セパレータの機械特性が向上する。また熱可塑性樹脂シートBは、70℃における曲げひずみが好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であり、70℃における曲げ強さが好ましくは500MPa以下、より好ましくは200MPa以下である。
曲げひずみおよび曲げ強度はテンシロン試験機を用いて測定する。50mm×10mm×所定の厚さに切り出した熱可塑性樹脂シートBを、スパン間隔24mm、曲げ速度1mm/min、温度70℃の条件で3点式曲げ試験により測定する。
【0045】
(熱可塑性樹脂シート中のバインダー成分の融点)
熱可塑性樹脂シートA中のバインダー成分の融点Tm
Aと熱可塑性樹脂シートB中のバインダー成分の融点Tm
Bの差(Tm
A−Tm
B)は、好ましくは0≦(Tm
A−Tm
B)≦80℃、より好ましくは2≦(Tm
A−Tm
B)≦70℃、さらに好ましくは2≦(Tm
A−Tm
B)≦60℃である。これにより、短い成形サイクルで、流路部の導電性が高い燃料電池用セパレータを得ることができる。また融点Tm
Aが融点Tm
Bより大きく、熱可塑性樹脂シートBが表面に設置されていると燃料電池用セパレータ同士を熱溶着し、発電部の接触抵抗を低減できるので好ましい。
熱可塑性樹脂シート中のバインダー成分の融点は、市販の示差走査熱量分析装置により、適宜切り出した熱可塑性樹脂シートを試料として試料容器中に設置し、上述の熱可塑性樹脂の融点の測定と同様に測定して、得られる。ただし、2つ以上の融解ピークが観察される場合には、より低い温度で観察されるピークの融解ピーク温度を、バインダー成分の融点とする。
【0046】
(シートの積層法)
燃料電池用セパレータは、熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBを少なくとも1枚ずつ重ねた状態で圧縮成形して得られる。なお、シートの積層の仕方に特に制限はなく、例えばA/Bのように1枚ずつ積層してもよいし、A/B/AあるいはB/A/Bのように一方のシートを他方のシートで挟むようにしてもよいし、もっと多くのシートを積層することもできるが、好ましくはB/A/Bである。熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBの少なくとも一方を2枚以上積層する場合は、熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBを交互に積層することが好ましい。
圧縮成形する際に積層するシートは本発明に記載の熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBだけに限定されるものではなく、特性が異なる別のシートCなどを、例えばC/B/A/B/C、C/A/Bのように任意に積層して圧縮成形することもできる。
さらには、流路部を取り囲む外周部の強度向上、寸法安定性の向上などを目的に外周部に基材(ガラス繊維、有機繊維、炭素繊維、セラミック繊維などからなる基布、または不織布、樹脂シート、金属網、樹脂網、金属板など)を設置して成形することもできる。
【0047】
(シートの設置法)
本発明の燃料電池用セパレータは、流路部が、熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aを主とし、外周部が、熱可塑性樹脂シートB由来の領域Bを主とし、端部は領域Bのみで構成されることが好ましい。燃料電池用セパレータがこのような構成であると、流路部は炭素質材料が多く、導電性が良好となり、外力が加わりやすい外周部、特に端部は、炭素繊維を含み、機械特性が良好となる。
これを実現するための、熱可塑性樹脂シートAおよび熱可塑性樹脂シートBの、金型への設置のしかたについて、
図5を参照しながら説明する。
図5は燃料電池用セパレータの圧縮成形に用いる金型の一例と、熱可塑性樹脂シートAおよび熱可塑性樹脂シートBの、金型内への好ましい設置のしかたを示す模式断面図である。金型101は、上金型102と下金型103からなり、得られる燃料電池用セパレータに対応する形状である型部104を有し、該型部は、得られる燃料電池用セパレータの流路部に対応する流路部相当部105と、外周部に対応する外周部相当部106を有する。なお、
図5では流路部相当部105に台形状断面のパターンが形成されているが、所望の流路の形状に応じて、矩形状断面、鋸歯状断面、半円状断面など、他の形状のパターンでもよい。また外周部相当部106には、マニホールドに相当するパターンなどが形成されていてもよい。
熱可塑性樹脂シートA107は、流路部相当部105を覆うことの出来る形状、かつ、得られる燃料電池用セパレータの流路部に占める、熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aの割合が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上になるような形状で、金型に設置する。シートA107が流路部相当部105を覆うことのできる形状であれば、流路部に占める領域Aの割合は、金型に設置するときの、シートA107の厚みによって調整することができる。熱可塑性樹脂シート中の微細なボイドの存在などにより、圧縮成形の前後で熱可塑性樹脂シートの体積は変化する場合があり、その程度もボイドの存在の度合いなどによって異なるため、シートA107を金型に設置するときの厚みを一律に決めることは難しいが、通常は、シートA107を流路部相当部105を覆う形状で金型101に設置する場合に、流路部に占める領域Aの体積が70%以上となるためには、シートA107を金型に設置するときの厚みt
Aは下記式を充たす。ただし、式中、V
Fは流路部の体積であり、S
Fは流路部の投影面積である。燃料電池用セパレータの流路が、
図1(a)(b)に示すような略長方形の領域に形成されている場合、S
Fは流路部に形成された流路のうち、最も外周部寄りの部分に接する長方形の面積で近似でき、V
Fは同じ長方形で囲まれた部分の体積で近似できる。また流路が渦巻き状に形成されている場合は、S
Fは、流路の最も外周部寄りの部分に接する円の面積で近似できる。
t
A≧0.7V
F/S
F
同様に、流路部に占める領域Aの体積が80%以上となるためには、t
Aは通常下記式を充たし、
t
A≧0.8V
F/S
F
同様に、流路部に占める領域Aの体積が90%以上となるためには、t
Aは通常下記式を充たす。
t
A≧0.9V
F/S
F
熱可塑性樹脂シートAは、得られる燃料電池用セパレータの流路部に占める、シートA由来の領域Aの体積が70%以上になれば、2枚以上積層することもできる。この場合は、上記の各式中t
Aは、金型に設置する際の、各シートAの厚みの合計とする。
熱可塑性樹脂シートAがこれらの条件を充たすと、得られる燃料電池用セパレータの流路部に占める領域Aの割合が大きくなり、また流路部の全体にわたって、領域Aを主として構成されるようになり、結果として流路部の導電性が向上する。
さらに熱可塑性樹脂シートA107は、その主面の形状を、流路部相当部105から、型部の外端109への距離の好ましくは95%、より好ましくは90%、さらに好ましくは85%より内側に入るようにして金型101に設置する。また、熱可塑性樹脂シートA107を金型101に設置する際の厚さは、得られる燃料電池用セパレータの、流路部の肉厚の最大値より小さいことが好ましい。なお、セパレータの肉厚とは、セパレータの一方の主面から、他方の主面へ貫通する最短距離を言う。熱可塑性樹脂シートAがこのような形状であると、得られる燃料電池用セパレータのうち、外力が加わりやすい外周部において、熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aの割合が小さくなり、結果として熱可塑性樹脂シートB由来の領域Bの割合が大きくなるため、機械特性に優れた燃料電池用セパレータを得ることができる。
熱可塑性樹脂シートB108は、その圧縮成形前の厚みが、熱可塑性樹脂シートA107の圧縮成形前の厚みより小さく、かつその主面が、金型の型部の内側に収まる形状で金型に設置することが好ましい。なお、シートA107およびシートB108のいずれか一方、もしくは両方を2枚以上積層する場合、ここでいう「厚み」とはシートA107およびシートB108それぞれの厚みの合計を言う。熱可塑性樹脂シートB108がこのような形状であると、得られる燃料電池用セパレータの流路部に占める、熱可塑性樹脂シートB由来の領域Bの割合が小さくなり、結果として、熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aの割合が大きくなるため、流路部の導電性が向上する。
また
図9に示すように、流路部に相当する部分に穴をあけた形状として、熱可塑性樹脂シートB31を金型に設置することによっても、得られる燃料電池用セパレータの流路部に占める領域Bの割合を小さくすることができる。このときの熱可塑性樹脂シートA32の形状は上記の通りである。熱可塑性樹脂シートA32の端部と、熱可塑性樹脂シートB31にあけた穴の端部とは、互いに少し重なるようにすることが好ましい。このとき、熱可塑性樹脂シートB31の厚みは、セパレータの肉厚の最大値以下であれば、特に制限はない。このようにして得られる燃料電池用セパレータの流路部および外周部はいずれも実質的に単層構造である。
さらに熱可塑性樹脂シートBは、その主面の形状を、熱可塑性樹脂シートAの主面を覆うことのできる形状として、かつ、その圧縮成形後の体積が、得られる燃料電池用セパレータの全体積Vと、燃料電池用セパレータ全体に占める前記領域Aの体積との差分以上になるように、金型に設置することが好ましい。前述の通り、圧縮成形の前後でシートの体積は若干変わることがあるが、通常、圧縮成形後に上記の条件を充たすには、シートBを金型に設置する際の体積V
Bが、セパレータの全体積V、シートAの圧縮成形前の体積V
Aとして、V
B≧V−V
Aである。熱可塑性樹脂シートBをこのような形状で金型に設置すると、得られる燃料電池用セパレータの外周部に占める、熱可塑性樹脂シート由来の領域Bの体積が大きくなり、好ましい。より好ましくは、シートBの圧縮成形後の体積が、燃料電池用セパレータの全体積と、前記熱可塑性樹脂シートAの圧縮成形後の体積との差分より大きくなるようにシートを仕込み、わざとバリが出るようにすると、得られる燃料電池用セパレータの端の厚みが薄くなったり、端の密度が低かったり、寸法が短かったりといった不良率を下げることができる。この場合、通常はV
B>V−V
Aである。
熱可塑性樹脂シートAおよび熱可塑性樹脂シートBは、その中心が、金型の型部の中心とおおよそ一致するように、金型内に設置することが好ましい。
【0048】
(成形法)
圧縮成形の方法は特に制限はないが、例えば、
図6に示したようなシステムを用い、セパレータ金型11に予め熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBからなるセパレータ材料シート12をセットし、加熱エリア13で熱可塑性樹脂シートAと熱可塑性樹脂シートBの融点以上まで予熱し、温度10〜120℃に維持されるように冷却水等で温度コントロールされている冷却盤14が設置された出力50〜1000tの冷却プレス機15で一定時間金型を加圧冷却することによって材料賦形し、その後金型を開いて燃料電池用セパレータ1を取出して得られる。なお、
図6において、黒い矢印は金型等の移動の方向を示し、白い矢印は加圧の方向を示す。加熱手段は電気、誘導加熱、赤外線、熱媒などが挙げられるが、熱プレス成形機を用いて加熱賦形してから、冷却プレス機で加圧冷却することもできる。プレス機は所要により数台並べて、工程を分割することで成形サイクルを短くすることもできる。
また、媒体流路を有し高温流体と低温流体を交互に入れ替えて加熱冷却できる金型、あるいはシリコーンオイルのような熱媒体と冷却水を流せる流路が2系列ある金型、または電熱ヒータと冷却水で加熱冷却ができる金型を用いて、融点以上にシートを加熱し、所定の圧力で賦形し、加圧保持したまま冷却し、所定の温度で金型を開いて燃料電池用セパレータを得ることもできる。
また、熱可塑性樹脂シートを金型にセットし、誘導加熱装置によって金型表面だけを加熱して、金型を閉じ、加圧冷却をしてセパレータを得ることもできる。
金型には所要により離型剤を塗布してから熱可塑性樹脂シートを投入し、成形してもよい。
成形後の燃料電池用セパレータは所要によりマニホールドを切削加工で形成させるなど、形状を2次加工してもよい。
成形後の燃料電池用セパレータは表面を均一化、表面改質、スキン層除去などの目的でブラストやその他研磨装置により表面粗さをコントロールしてもよい。または、燃料電池のフラッディング現象を抑制する目的で表面を親水化処理することもできる。親水化処理法としては、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理、強酸処理、フッ素ガス処理、親水性塗料の塗布、親水性フィラーのコーティングなどが挙げられる。
【0049】
(溶着)
さらに、燃料電池用セパレータは所要により2枚を重ねて接合することによって、
図4に示したような流路部断面の厚み方向のほぼ中央に中空流路6がある燃料電池用セパレータを得ることができる。流路部を溶着することによって、発電部の接触抵抗を大幅に小さくできる。溶着方法は特に制限はないが、熱プレスを用いて所定の圧力を加え、表面層だけが溶ける温度で熱溶着する方法が好ましい。その他、導電性接着剤を用いて接合する方法、表面を溶剤で溶解して接合する方法、レーザーを用いて接合する方法、高周波や超音波を用いて接合する方法などが挙げられる。
【0050】
(燃料電池用セパレータの諸特性)
本発明の方法により得られる燃料電池用セパレータは、熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aと、熱可塑性樹脂シートB由来の領域Bとを含む。領域Aの組成は上述の熱可塑性樹脂シートAの組成と同様であり、領域Bの組成は上述の熱可塑性樹脂シートBの組成と同様であり、その好ましい範囲や、好ましい材料の種類、特性についても同様である。
本発明の方法により得られる燃料電池用セパレータの1つの実施態様では、燃料電池用セパレータの断面を走査型電子顕微鏡などで観察すると、領域Aは、視野の35〜90%を炭素質材料の像が、5〜60%を熱可塑性樹脂の像が占める領域として観察され、領域Bは、視野の3〜60%を炭素質材料の像が、35〜95%を熱可塑性樹脂の像が占め、炭素質材料の像のうち、50〜100面積%を、繊維状炭素の像が占める領域として観察される。
本発明の方法により得られる燃料電池用セパレータの1つの実施態様の模式断面図を
図7に示す。
図7中、41は領域Aであり、42は領域Bである。
なお、
図7には、コルゲート形状の流路を有する燃料電池用セパレータを例として示したが、
図8のように、非コルゲート形状の流路を有する燃料電池用セパレータであってもよい。
本発明の方法により得られる燃料電池用セパレータは、流路部が主に熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aからなり、外周部が主に熱可塑性樹脂シートB由来の領域Bからなるため、その特性はそれぞれのシートの特性を反映して、以下の通りとなる。
【0051】
(流路部の構成)
流路部は、大部分、好ましくは流路部の体積の70%〜100%、より好ましくは80%〜95%、さらに好ましくは90〜95%が、熱可塑性樹脂シートA由来の領域Aからなる。また好ましくは、流路部の表面に熱可塑性樹脂シートB由来の領域Bを有する。本発明の1つの実施態様では、得られた燃料電池用セパレータの主面に略垂直な断面で、SEMなどを用いて流路部を観察したときに、燃料電池用セパレータの厚みの60%以上が領域Aの像であり、好ましくは流路部の表面に、シートBに由来する繊維状炭素の像が観察される。
【0052】
(流路部3の体積固有抵抗)
流路部の23℃における体積固有抵抗は、好ましくは50mΩ・cm以下であり、より好ましくは30mΩ・cm以下であり、さらに好ましくは20mΩ・cm以下である。これにより、流路部の導電性が向上する。体積固有抵抗値は、JIS K7194に準拠し、四探針法により測定する。なお、JIS K7194に記載の大きさで流路部から試験片を切り出すことが難しい場合は、適宜試験片の大きさおよび測定位置を変更して同様に測定を行う。
【0053】
(流路部3のホウ素含有量)
流路部にはホウ素が0.001〜3質量%、より好ましくは0.01〜2質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%含まれると、得られる燃料電池用セパレータの流路部の体積固有抵抗が小さくなるため好ましい。ホウ素含有率の測定は特開2002−60639号公報、特開2005−281690号公報に記載の方法で測定できる。
【0054】
(外周部の構成)
外周部は主に領域Bからなり、流路部と接する部分に一部、領域Aを含んでもよい。本発明の1つの実施態様では、得られた燃料電池用セパレータの端部、すなわち、流路部から最も遠い部分から内側に1mm以内の領域をSEMなどで観察したときに、燃料電池用セパレータの主面に略平行な面、セパレータの主面に略垂直な面のいずれにおいても、領域Aの像は認められない。
さらに外周部は、繊維状炭素を流路部よりも多く含むことが、燃料電池用セパレータの強度向上には好ましい。
【0055】
(密度)
本発明の製造方法により得られた燃料電池用セパレータは、流路部が多くの炭素質材料を含む領域A、外周部がより多くのバインダー成分を含む領域Bを主としている。従って通常、流路部の密度D
Fと外周部の密度D
Oは、D
F≧D
Oを充たす。流路部および外周部の密度がこのようであると、導電性が向上し、好ましい。燃料電池用セパレータの密度は、JIS K7112に従って測定する。
【0056】
(燃料電池用セパレータの機械特性)
本発明の燃料電池用セパレータは、70℃における曲げひずみが好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上、最も好ましくは1.5%以上であり、70℃における曲げ強度が好ましくは25MPa以上、より好ましくは30MPa以上、最も好ましくは35MPa以上である。また70℃における曲げひずみが好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であり、70℃における曲げ強度が好ましくは500MPa以下、より好ましくは200MPa以下である。
曲げひずみおよび曲げ強度はテンシロン試験機を用いて測定する。セパレータから所定の幅、長さ、厚さに切り出した試験片を、所定のスパン間隔で、曲げ速度1mm/min、温度70℃の条件で3点式曲げ試験により測定する。
【0057】
(燃料電池用セル)
燃料電池用セルは、固体高分子型燃料電池用セルであることが好ましい。通常、固体高分子型燃料電池用セルは、燃料電池用セパレータと、MEA(膜−電極接合体)とが積層されてなる。より具体的には1つのMEAの両面に各々燃料電池用セパレータを配した積層構造からなる単セル構造を有する。
ここで用いられるMEAは通常、固体高分子電解質膜の両面に触媒層を接合させ、さらにその触媒層の両面をガス拡散層となるカーボンペーパー等で挟んだ5層構造である。
本発明の燃料電池は、前記の燃料電池用セパレータを含む燃料電池である。本発明の燃料電池は、前記の燃料電池用セパレータを含む燃料電池用セルの1つまたは複数からなる。本発明の燃料電池は、好ましくは、固体高分子型燃料電池である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。
【0059】
(熱可塑性樹脂シートA1の製造)
人造黒鉛として、特開2005−281690号公報記載のホウ素含有黒鉛粉(粉体抵抗0.007Ω・cm、ホウ素含有量0.9質量%)を用いた。
黒鉛粉746質量部、ポリプロピレン(サンアロマー社製、商品名サンアロマーPX201N、融点:163℃)100質量部、およびスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマー(シェル・ケミカル(Shell Chemical)社製、商品名KRATON G 1652)2質量部を、加圧式ニーダー(モリヤマ社製、ミックスラボ)により温度230℃、30rpmで15分間混練し黒鉛樹脂組成物(PA1)を得た。
その黒鉛樹脂組成物を、φ65単軸押出機(トミー機械社製)を用いて、幅95mm、厚さ3mmのシートを成形温度210℃で成形した。さらに、その210℃に加熱されたシートを150℃の圧延ロールへ送り、幅100mm、厚さ1mmまたは0.5mmに圧延して熱可塑性樹脂シートA1を得た。シートA1中のバインダー成分の融点を測定したところ167℃であった。
【0060】
(熱可塑性樹脂シートA2の製造)
表1に示す材料を用いたほかは、熱可塑性樹脂シートA1と同様にして、熱可塑性樹脂シートA2を得た。シートA2中のバインダー成分の融点を測定したところ133℃であった。
【0061】
(熱可塑性樹脂シートB1の製造)
ポリプロピレン(サンアロマー社製、商品名サンアロマーPM900A、融点:163℃)77質量部、酸変性ポリプロピレン(三洋化成社製、商品名ユーメックス1010)23質量部、水添スチレンブタジエンラバー(JSR社製、商品名ダイナロン1320P)5質量部、炭素繊維(東邦テナックス社製、商品名テナックス チョップドファイバー C205 6mm、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm、L/D 850)45質量部となる比率で、2軸同方向押出機(神戸製鋼社製KTX30)により温度230℃、回転数300rpmで混練して樹脂組成物(PB1)を得た。その樹脂組成物はφ65単軸押出機(トミー機械社製)を用いて、幅95mm、厚さ1mmまたは0.5mmのシートを成形温度210℃で成形し、熱可塑性樹脂シートB1を得た。シートB1中のバインダー成分の融点を測定したところ162℃であった。
【0062】
(熱可塑性樹脂シートB2の製造)
用いる材料の混合比を、表1に示す通りとしたほかは、熱可塑性樹脂シートB1と同様にして、熱可塑性樹脂シートB2を得た。シートB2中のバインダー成分の融点を測定したところ135℃であった。
【0063】
(熱可塑性樹脂シートB3の製造)
用いる材料を表1に示す通りとしたほかは、熱可塑性樹脂シートB1と同様にして、熱可塑性樹脂シートB3を得た。シートB3中のバインダー成分の融点を測定したところ165℃であった。
【0064】
各シートの融点は示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、商品名DSC7)を用いて測定した。
【0065】
(圧縮厚み残量測定)
各シートをφ50mm、厚み1mmのサイズに調整し、それをφ50mm、厚さ5mmの超鋼プレート2枚の間に仕込み、熱プレス機を用いて、温度230℃、面圧20MPa、加圧保持時間60秒の条件で圧縮し、圧力を開放して23℃まで冷却して、厚み残量をマイクロメーターで測定した。測定結果は次のとおりであった。
シートA1の厚み残量d
A1=0.24mm
シートA2の厚み残量d
A2=0.19mm
シートB1の厚み残量d
B1=0.031mm
シートB2の厚み残量d
B2=0.028mm
シートB3の厚み残量d
B3=0.21mm
【0066】
【表1】
【0067】
(試験片作製法)
燃料電池用セパレータの基本特性を評価するために、50t圧縮成形機を用いて平板を成形した。
【0068】
(実施例1)
シートA1をサイズ60×60×1mm、シートB1をサイズ80×80×0.5mmに切出し、成形品サイズ100×100×1mmとなる金型のキャビティ中央にB1/A1/B1の順序でセットした。次に50t圧縮成形機で、温度230℃、面圧20MPaで1分間加圧し、その後30℃の冷却プレスで、面圧20MPaで2分間加圧冷却することによって試験片を得た。
燃料電池用セパレータ流路部に相当する試験片の中心の体積固有抵抗を、JIS K7194に準拠し、四探針法により測定した。
流路部に相当する部分の曲げ試験、および密度測定を行うために、
図10に示すように、得られた試験片の中央部60×60mmの範囲から、50×10×1mmのサイズの流路部試験片21を切出した。また、外周部の曲げ試験は平板の端から20mmの範囲内で、50×10×1mmのサイズに切出した外周部試験片22を用いた。
曲げ強度および曲げ歪は、オリエンテック社製、商品名TENSILON UTM−5Tを用いて測定を行った。上記の流路部試験片および外周部試験片をスパン間隔24mm、曲げ速度1mm/min、温度23℃および70℃の条件で3点式曲げ強度測定法により測定した。
また、密度はJIS K7112に準拠し、水中置換法より測定した。
成形した試験片の厚み精度は、
図11に示した厚み測定ポイントをマイクロメーターにより測定して評価した。
それらの結果を表2に示した。
【0069】
(実施例2)
実施例1においてシートB1に代えてシートB2を用い、それ以外は実施例1と同様に試験片を作成した。実施例1と同様に特性を評価して、それらの結果を表2に示した。
【0070】
(実施例3)
シートA1をサイズ60×60×1mm、シートB1をサイズ95×95×0.6mmに切出し、シートA2をサイズ95×95×0.15mmに圧延して、成形品サイズ100×100×1mmとなる金型のキャビティ中央にA2/A1/B1の順序でセットした。次に50t圧縮成形機で、温度230℃、面圧20MPaで1分間加圧し、その後30℃の冷却プレスで、面圧20MPaで2分間加圧冷却することによって試験片を得た。実施例1と同様に特性を評価して、それらの結果を表2に示した。
【0071】
(比較例1)
実施例1においてシートB1に代えてシートB3を用い、それ以外は実施例1と同様に試験片を作製した。実施例1と同様に特性を評価して、それらの結果を表2に示した。
【0072】
(比較例2)
シートA1をサイズ95×95×1.2mmに切出し、成形品サイズ100×100×1mmとなる金型のキャビティ中央にセットし、実施例1と同様な成形条件で試験片を得た。
さらに、実施例1と同様に試験片を切出して、同様な特性評価を行い、それらの結果を表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
(実施例4)
シートA1を、圧延ロールを用いて160×120×0.6mmに調整し、そのシートから120×80×0.6mmのサイズに切り出してシートA1′とした。
また、シートA2を、圧延ロールを用いて160×120×0.1mmに調整し、そのシートから140×90×0.6mmのサイズに切り出してシートA2′とした。
さらに、シートB1で用いた熱可塑性樹脂組成物PB1を、シート押出成形機を用いて、幅180mm、厚さ0.2mmに成形し、そのシートから140×90×0.3mmのサイズに切り出してシートB1′とした。
図1に示した形状の燃料電池用セパレータは、サイズ150×110×1mm、流路部サイズ110×70、溝幅1mm、溝深さ(表0.5mm、裏0.3)、溝ピッチ2mmであるが、このセパレータ用金型のキャビティ中央へ、A2′/A1′/B1′の順序でシート3枚をセットした。次に50t圧縮成形機で、温度240℃、面圧30MPaで1分間加圧し、その後30℃の冷却プレスで、面圧30MPaで2分間加圧冷却することによって燃料電池用セパレータを得た。
図2は成形したセパレータの流路断面である。
さらに、この燃料電池用セパレータ2枚を、A2′側を合わせるように重ねて、熱プレス機で温度142℃、面圧5MPa、加圧時間30秒保持し、次に冷却プレス機で温度30℃、面圧5MPa、加圧時間60秒保持して2枚の燃料電池用セパレータを溶着した。
図4は溶着した流路断面である。
溶着した燃料電池用セパレータを均等に25分割して寸法精度をマイクロメーターで測定した結果2±0.015mmであった。また、溶着界面の接触抵抗は、面圧0.5MPaで1.2mΩ・cm
2であった。一方、溶着せずに接触抵抗を測定した結果、面圧0.5MPaで3.5mΩ・cm
2であった。
接触抵抗の測定は、流路部を20×20の大きさに切り出し、一定電流1Aの条件で、プローブを溶着界面近傍に当てて電圧を測定して求めた(参考文献:特開2008−91097号公報)。