特許第5869780号(P5869780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869780
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】防水工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 7/00 20060101AFI20160210BHJP
【FI】
   E04D7/00 F
【請求項の数】17
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2011-118370(P2011-118370)
(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公開番号】特開2012-246665(P2012-246665A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】板野 雄
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/046235(WO,A1)
【文献】 特開2011−084750(JP,A)
【文献】 特開平10−298488(JP,A)
【文献】 特開2009−143969(JP,A)
【文献】 特開2007−113268(JP,A)
【文献】 特開2011−094454(JP,A)
【文献】 特開2005−299103(JP,A)
【文献】 特開2008−303650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する有機重合体(A)、エポキシ樹脂(D)および可塑剤(K)を含有する硬化性組成物であり、前記硬化性組成物中の可塑剤(K)の含有量が、有機重合体(A)100重量部に対して、20重量部以下である硬化性組成物を建築物の下地に塗布する防水工法であって、前記硬化性組成物を硬化させてなる塗膜の上に、トップコートを塗布することを特徴とする防水工法。
【請求項2】
シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する有機重合体(A)、エポキシ樹脂(D)および可塑剤(K)を含有する硬化性組成物であり、前記硬化性組成物中の可塑剤(K)の含有量が、有機重合体(A)100重量部に対して、20重量部以下である硬化性組成物を建築物の下地に塗布する防水工法であって、前記硬化性組成物を建築物の下地に直接塗布することを特徴とする防水工法。
【請求項3】
前記有機重合体(A)の主鎖骨格が、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることを特徴とする請求項またはに記載の防水工法。
【請求項4】
前記有機重合体(A)の主鎖骨格が、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の防水工法。
【請求項5】
前記可塑剤(K)を含有しない請求項のいずれかに記載の防水工法。
【請求項6】
前記硬化性組成物を硬化させてなる塗膜の厚みが、0.1〜3.0mmであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防水工法。
【請求項7】
前記硬化性組成物が、更にシラノール縮合触媒(B)を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防水工法。
【請求項8】
前記硬化性組成物が、更にシランカップリング剤(C)を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防水工法。
【請求項9】
前記硬化性組成物が、更にエポキシ樹脂用硬化剤(E)を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防水工法。
【請求項10】
前記硬化性組成物が、更に水(F)を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防水工法。
【請求項11】
前記硬化性組成物が、前記有機重合体(A)、シラノール縮合触媒(B)、シランカップリング剤(C)、および、エポキシ樹脂用硬化剤(E)を含有する脱水されたA剤と、エポキシ樹脂(D)、および、水(F)を含有するB剤とからなる2液型硬化性組成物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の防水工法。
【請求項12】
前記硬化性組成物が、更に充填材(G)を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の防水工法。
【請求項13】
前記硬化性組成物が、更に難燃剤(H)を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の防水工法。
【請求項14】
前記硬化性組成物が、更に分散剤(I)を含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の防水工法。
【請求項15】
前記硬化性組成物が、更に消泡剤(J)を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の防水工法。
【請求項16】
前記硬化性組成物中の溶剤(L)の含有量が、有機重合体(A)100重量部に対して、5重量部以下であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の防水工法。
【請求項17】
屋根または屋上に適用される請求項1〜16のいずれかに記載の防水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基(以下、「反応性ケイ素基」ともいう。)を有する有機重合体を硬化してなる防水塗膜を、建築物の下地に積層する防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗膜防水は、建築物の下地に、1成分または多成分からなる合成ゴムや合成樹脂の溶液またはエマルションを塗布して、所定の厚さの連続皮膜化した防水層を形成させる防水工法である。塗膜防水には、JIS A 6021に記載されているように、ウレタンゴム系、アクリルゴム系、クロロプレンゴム系、ゴムアスファルト系、FRP系、シリコーンゴム系など、各種の材料が使用されているが、ウレタン系塗膜防水材が、主要な材料となっている。
【0003】
一般に、建築物の下地へのウレタン塗膜防水の施工方法は、(i)下地にプライマーおよび/または接着剤を塗布する工程、(ii)不織布マットまたはガラスメッシュなどの補強材(繊維補強密着工法)あるいは ポリエチレンシート等の通気緩衝シート(通気緩衝シート複合工法)を敷いた後、ウレタン防水材を塗布する工程、(iii)さらにウレタン防水材を塗布する工程、(iv)トップコートを塗布する工程、からなり、多くの工程からなることが知られている。
【0004】
また、(特許文献1)に開示されているように、防水性と断熱性が要求される建物に対して、建築物の外側に断熱材を設置し、塗膜防水と組合せた外断熱防水工法が実施される場合がある。
【0005】
更に、(特許文献2)に開示されているように、塩ビ系や加硫ゴム系等のシート防水あるいはアスファルト防水と、ウレタン系やFRP系等の塗膜防水を組合せた各種の複合防水工法が検討されている。
【0006】
一方、分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を含有する有機重合体は、室温においても湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状硬化物が得られるという性質を有することが知られている。
【0007】
これらの反応性ケイ素基を有する重合体の中でも、主鎖骨格がポリオキシアルキレン系重合体やポリアクリル酸エステル系重合体である有機重合体は、(特許文献3)、(特許文献4)、などに開示されており、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料などの用途に広く使用されている。
【0008】
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物を、塗膜防水材に使用する検討は、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−12023号公報
【特許文献2】特開2001−303723号公報
【特許文献3】特開昭52−73998号公報
【特許文献4】特開平11−130931号公報(US6552118)
【特許文献5】特開昭55−160077号公報
【特許文献6】特開平6−316692号公報
【特許文献7】特開2000−319642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の様に、ウレタン塗膜防水材は多くの工程からなる為、施工期間が長期に及び工賃が高いという課題がある。
【0011】
塗膜防水工法において、補強材や通気緩衝シートを挿入したり、塗膜防水材を複数回塗布する理由の一つは、下地の亀裂による防水層のゼロスパン破断に対する信頼性を高める為である。従って、塗膜防水材をより高強度化すれば、ゼロスパン破断に対する信頼性が向上すると考えられる。別の言い方をすると、塗膜防水材をより高強度化すれば、塗膜防水材の塗布回数を減らしてもゼロスパン破断に対する信頼性が維持できると考えられる。
【0012】
また、塗膜防水工法において、最初に、下地にプライマーおよび/または接着剤を塗布する工程が存在する理由は、コンクリートなどの難接着な多孔質下地への接着性を確保するためである。従って、塗膜防水材の接着性を高めれば、下地に直接塗膜防水材を塗布することが可能となり、下地にプライマーおよび/または接着剤を塗布する工程を削除できると考えられる。
【0013】
また、下地とウレタン塗膜防水材の間に断熱材を敷設する場合には、(特許文献1)に開示されているように、断熱層の為に防水層の温度が上昇し、ウレタン系材料では防水層の耐熱性が不足する問題があった。
【0014】
更に、(特許文献2)に開示されているように、ウレタン塗膜防水材は、下地面がアスファルト防水等である場合には接合適性に問題があり、ウレタン塗膜防水層がアスファルト防水層から剥離してしまう場合がある。
【0015】
本発明は、反応性ケイ素基を有する有機重合体を主成分とする硬化性組成物を塗膜防水材として使用し、該硬化性組成物を硬化してなる防水塗膜を、建築物の下地に積層した防水工法であって、以下の様な特徴を有する防水工法を提供することを目的とする。
・耐候性に優れる塗膜防水材の使用により、トップコート不要とし、工程簡略化により、施工費が低く、施工期間が短い。
・強度に優れる塗膜防水材の使用により、塗膜防水材の塗布回数を減らし、工程簡略化により、施工費が低く、施工期間が短い。
・下地への接着性に優れる塗膜防水材の使用により、下地にプライマーおよび/または接着剤を塗布する工程を不要とし、工程簡略化により、施工費が低く、施工期間が短い。
・耐熱性の良好な塗膜防水材とし、断熱材の上に施工しても経時での塗膜防水層の熱劣化が少ない。
・可塑剤や溶剤の移行の少ない塗膜防水材とし、塗膜防水材とアスファルト防水材との接合適性が良好で、剥離が少ない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、このような問題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する有機重合体を含有する塗膜防水材を用いることで、得られる硬化塗膜の耐候性、耐熱性、可塑剤や溶剤の移行性を顕著に改善し、上記課題を改善できることを見出し、本発明を完成させた。また、特定の構造を有する有機重合体を含有する塗膜防水材を用いることで、工程簡略化を可能とし、上記課題を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本願発明は、
(I).シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する有機重合体(A)として(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)を含有する硬化性組成物を建築物の下地に塗布する防水工法であって、前記硬化性組成物を硬化させてなる塗膜が、外気と接する最外層に形成されることを特徴とする防水工法、
(II).シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する有機重合体(A)およびエポキシ樹脂(D)を含有する硬化性組成物を建築物の下地に塗布する防水工法であって、前記硬化性組成物を硬化させてなる塗膜の上に、トップコートを塗布することを特徴とする防水工法、
(III).シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する有機重合体(A)およびエポキシ樹脂(D)を含有する硬化性組成物を建築物の下地に塗布する防水工法であって、前記硬化性組成物を建築物の下地に直接塗布することを特徴とする防水工法、
(IV).シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する有機重合体(A)を含有する硬化性組成物を建築物の下地に塗布する防水工法であって、前記下地上に敷設された発泡断熱材層の上に前記硬化性組成物を塗布することを特徴とする防水工法、
(V).シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する有機重合体(A)100重量部に対して、5重量部以下の溶剤(L)を含有する硬化性組成物を建築物の下地に塗布する防水工法であって、前記下地上に敷設されたアスファルト系防水層の上に前記硬化性組成物を塗布することを特徴とする防水工法、
(VI).前記硬化性組成物を硬化させてなる塗膜の厚みが、0.1〜3.0mmであることを特徴とするI〜Vのいずれかに記載の防水工法、
(VII).前記有機重合体(A)の主鎖骨格が、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることを特徴とするII〜VIのいずれかに記載の防水工法、
(VIII).前記有機重合体(A)の主鎖骨格が、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることを特徴とするII〜VIIのいずれかに記載の防水工法、
(IX).前記有機重合体(A)の主鎖骨格が、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であって、重合体(A1)と重合体(A2)との重量比が、90/10〜10/90であることを特徴とするI〜VIIIのいずれかに記載の防水工法、
(X).前記硬化性組成物が、更にシラノール縮合触媒(B)を含有することを特徴とするI〜IXのいずれかに記載の防水工法、
(XI).前記硬化性組成物が、更にシランカップリング剤(C)を含有することを特徴とするI〜Xのいずれかに記載の防水工法、
(XII).前記硬化性組成物が、更にエポキシ樹脂(D)を含有することを特徴とするI〜XIのいずれかに記載の防水工法、
(XIII).前記硬化性組成物が、更にエポキシ樹脂用硬化剤(E)を含有することを特徴とするI〜XIIのいずれかに記載の防水工法、
(XIV).前記硬化性組成物が、更に水(F)を含有することを特徴とするI〜XIIIのいずれかに記載の防水工法、
(XV).前記硬化性組成物が、前記有機重合体(A)、シラノール縮合触媒(B)、シランカップリング剤(C)、および、エポキシ樹脂用硬化剤(E)を含有する脱水されたA剤と、エポキシ樹脂(D)、および、水(F)を含有するB剤とからなる2液型硬化性組成物であることを特徴とする請求項I〜XIVのいずれかに記載の防水工法、
(XVI).前記硬化性組成物が、更に充填材(G)を含有することを特徴とするI〜XVのいずれかに記載の防水工法、
(XVII).前記硬化性組成物が、更に難燃剤(H)を含有することを特徴とするI〜XVIのいずれかに記載の防水工法、
(XVIII).前記硬化性組成物が、更に分散剤(I)を含有することを特徴とするI〜XVIIのいずれかに記載の防水工法、
(IXX).前記硬化性組成物が、更に消泡剤(J)を含有することを特徴とするI〜XVIIIのいずれかに記載の防水工法、
(XX).前記硬化性組成物中の可塑剤(K)の含有量が、有機重合体(A)100重量部に対して、20重量部以下であることを特徴とするI〜IXXのいずれかに記載の防水工法、
(XXI).前記硬化性組成物中の溶剤(L)の含有量が、有機重合体(A)100重量部に対して、5重量部以下であることを特徴とするI〜IVおよびVI〜XXのいずれかに記載の防水工法、
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の防水工法は、工程簡略化により、施工費が低く、更には、施工期間を短くすることができる。また、本発明の防水工法は、耐熱性の良好な塗膜防水材である為、断熱材の上に施工しても熱劣化が少ない。更に、本発明の防水工法は、可塑剤や溶剤の移行の少ない塗膜防水材である為、塗膜防水材とアスファルト防水材との接合適性が良好で、剥離が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0020】
本発明では、以下の5つの防水工法 (1)〜(5)を開示する。本発明の防水工法は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)を必須成分とする硬化性組成物を塗膜防水材として建築物の下地に塗布する防水工法であって、更に、以下の特徴を有するものである。
【0021】
<防水工法(1)>
本発明の第一の防水工法は、有機重合体(A)の主鎖骨格として、耐候性に優れる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)を含有する硬化性組成物を使用し、該硬化性組成物を硬化してなる塗膜が、外気と接する最外層に形成されることによりトップコート不要とし、工程簡略化により、施工費が低く、施工期間が短い防水工法である。
【0022】
硬化性組成物の作業性(低粘度)および硬化塗膜の強度と耐候性のバランスから、防水工法(1)の有機重合体(A)の主鎖骨格は、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)を併用することが好ましく、特に、重合体(A1)と重合体(A2)との重量比が、90/10〜10/90であることが好ましい。
【0023】
更に、防水工法(1)はトップコートレスであるために、最外層の硬化塗膜は歩行可能な程度に高強度であることが好ましく、その為、硬化性組成物には更にエポキシ樹脂(D)を含有することが好ましい。
【0024】
<防水工法(2)>
本発明の第二の防水工法は、(A)成分とエポキシ樹脂(D)を含有する硬化性組成物を使用し、該硬化性組成物を硬化してなる塗膜の上に、トップコートを塗布する防水工法である。(A)成分と(D)成分を含有する硬化性組成物を硬化してなる塗膜は高強度を示すために、下地の亀裂に伴うゼロスパン破断に対する信頼性が向上した防水工法である。塗膜防水材をより高強度化したこの工法においては、塗膜防水材の塗布回数を減らしても高い防水信頼性が維持できる。塗布回数低減に伴う工程簡略化により、施工費が低く、施工期間が短い防水工法とすることも可能である。
【0025】
防水工法(2)はトップコートを塗布する工法であるために、硬化塗膜には耐候性は不要であり、低粘度で高強度な硬化塗膜を得るためには、有機重合体(A)の主鎖骨格は、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることが好ましい。
【0026】
<防水工法(3)>
本発明の第三の防水工法は、(A)成分とエポキシ樹脂(D)を含有する硬化性組成物を使用し、該硬化性組成物をプライマーレスで建築物の下地に直接塗布する防水工法である。通常、ウレタン系等の塗膜防水材では、建築物の下地、特にコンクリートなどの多孔質被着体に対する接着性を確保するために、塗膜防水材を塗布する前にプライマーまたは接着剤を予め下地に塗布することが一般的である。本発明の(A)成分と(D)成分を含有する硬化性組成物は下地に対し良好な接着性を示すために、下地にプライマーまたは接着剤を塗布する工程が不要となる。この工程簡略化により、施工費が低く、施工期間が短い防水工法である。
【0027】
防水工法(3)はプライマーレスで下地に直接塗布する工法であるために、下地、特にコンクリートへの接着性が重要であり、接着性の良好な硬化塗膜を得るため、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることが好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることがより好ましい。
【0028】
<防水工法(4)>
本発明の第四の防水工法は、(A)成分を含有する硬化性組成物を、発泡断熱材層の上に塗布する防水工法である。(A)成分の有機重合体はシロキサン結合により架橋する為、ウレタン結合により架橋するウレタン系塗膜防水材よりも耐熱性が良好であり、蓄熱しやすい断熱材の上に施工しても経時での塗膜防水層の熱劣化が少ない防水工法である。
【0029】
特に耐熱性の高く高強度な硬化塗膜を得るためには、有機重合体(A)の主鎖骨格は、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることがより好ましい。
【0030】
<防水工法(5)>
本発明の第五の防水工法は、(A)成分を含有する硬化性組成物を、アスファルト系防水層の上に塗布する防水工法である。硬化性組成物中の溶剤や可塑剤の移行による、アスファルト系防水層への汚染性を抑制するためには、溶剤や可塑剤の使用量を低減する事が必要であり、硬化性組成物に低粘度と高強度を両立させることが必要である。その為、有機重合体(A)の主鎖骨格は、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることが好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることがより好ましい。
【0031】
更に低粘度と高強度を両立させる為に、硬化性組成物はエポキシ樹脂(D)を含有することが好ましい。
【0032】
本発明の各防水工法が適用される建物の部位は、特に限定されることはなく、防水が必要な場所に施工できる。具体的には、屋根、屋上、バルコニー、ベランダ、開放廊下、人口地盤、外壁など、降雨水に対する防水が必要な場所;地下部分(地下街習癖、地下底盤) など、地下水に対する防水が必要な場所;浴室、厨房、便所、受水槽、汚水槽、消防水槽など、生活用水に対する防水が必要な場所;蓄熱層、雑排水槽、人工池、プール、廃液処理槽など産業用水に対する防水が必要な場所などが挙げられる。本発明の各防水工法により防水信頼性の高い防水層が得られるため、これらのなかでも、屋根または屋上に使用した場合に特に有用である。
【0033】
本発明の各防水工法が適用される下地層は特に限定されることはなく、新規な防水層の形成、既存防水層の改修、室内の防水など種々のケースに施工することができる。具体的には、現場打ちコンクリート、鉄筋コンクリート、プレキャストコンクリート、ALC、モルタル、石膏、サイディングボード、スレートなどの無機系下地や、無垢材、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、ファイバーボード、ランバーコアボード、単板積層材、野地板などの木質系下地、鉄骨母屋、金属パネル、デッキプレートなどの金属系下地などが挙げられる。
【0034】
本発明の各防水工法において、下地への施工方法は特に限定されることはなく、公知の方法により施工可能である。例えば、通気緩衝シート工法、繊維補強密着工法、一般密着工法などが本発明の工法にも適用可能である。
【0035】
本発明の各防水工法は、新築および改修において有効であるが、本発明の防水工法(5)は、既存の露出仕上げアスファルト防水層への改修の場合に特に有効である。
【0036】
本発明の各防水工法で適用できる施工面としては、例えば、既存または新築のコンクリートスラブ面、既存のコンクリート押さえ防水層面、既存の砂つき仕上げ防水層面や断熱押さえ防水層面などが挙げられる。
【0037】
本発明の防水工法(3)〜(5)で適用できる保護仕上げとしては、特に限定はなく、一般に公知の種々の保護仕上げを実施できる。保護仕上げ仕様を具体的に例示すると、アクリルウレタンエマルション系保護仕上塗料(水系2成分タイプ)、アクリルウレタン系保護仕上塗料(溶剤系2成分タイプ)、アクリルウレタン系保護仕上塗料(溶剤系1成分タイプ)、エマルション系保護仕上塗料(水系1成分タイプ)、エマルション系粗面仕上材入り保護仕上塗料、エマルション系防火保護仕上塗料、粗熱保護仕上塗料、(フッ素系、シリコン系、HALSハイブリッド系)高耐久性保護仕上塗料などのトップコート仕上;ウレタン弾性舗装材、ウレタン床材などの舗装材仕上;保護モルタル仕上;などが挙げられる。また、保護仕上げを行わない仕様も選択できる。
【0038】
一方、本発明の防水工法(1)は、保護仕上げを行わないトップコートレスであることが必須であり、本発明の防水工法(2)は、保護仕上げとしてトップコート必須の仕様である。防水工法(2)で用いるトップコートの具体例は、前述の各種の保護仕上塗料が挙げられる。
【0039】
本発明の防水工法(5)は、(A)成分を含有する硬化性組成物を硬化してなる塗膜防水層とアスファルト防水層との複合防水工法である。防水工法(5)で積層されるアスファルト防水層は、特に限定はなく、各種の市販アスファルトルーフィングを使用することができる。具体的には、熱工法で施工されたアスファルトルーフィング類(アスファルトルーフィング、ストレッチルーフィング、改質アスファルトルーフィング)、トーチ工法で施工された改質アスファルトルーフィング、改質アスファルトルーフィングを常温型アスファルト塗材で貼り付けた冷工法アスファルトルーフィング、液状のアスファルトを補強材などにより補強された塗膜工法アスファルトルーフィングなどが挙げられる。
【0040】
本発明の防水工法(1)〜(4)においても、(A)成分を含有する硬化性組成物を硬化してなる塗膜防水層と、アスファルト防水層やシート防水層との複合防水工法を実施することは可能である。アスファルト防水層の具体例としては、前述の各種のアスファルトルーフィングが挙げられる。シート防水層は、特に限定はなく、各種の市販シート防水層を使用することができる。具体的には、加硫ゴム系シート、塩化ビニル樹脂系シート、エチレン酢酸ビニル系シート、ポリオレフィン系シートなどが挙げられる。
【0041】
本発明の各防水工法において、(A)成分を含有する硬化性組成物を硬化してなる塗膜防水層と、公知の塗膜防水層との複合防水工法を実施することも可能である。複合する塗膜防水層は、特に限定はなく、各種の市販塗膜防水材を使用することができる。具体的には、ウレタンゴム系塗膜防水材、ゴムアスファルト系塗膜防水材、アクリルゴム系塗膜防水材、FRP系塗膜防水材、ポリマーセメント系塗膜防水材などが挙げられる。
【0042】
また、本発明の工法により施工される防水積層構造は特に限定されることはなく、公知の防水構造から適宜選択して施工される。例えば、露出防水工法、コンクリート押さえ防水工法、断熱露出防水工法、コンクリート押さえ断熱防水工法と同様な積層構造が本発明の工法にも適用可能である。
【0043】
<<硬化性組成物>>
以下に、本発明において塗膜防水材として使用する硬化性組成物について説明する。
【0044】
本発明の硬化性組成物には、(A)成分として反応性ケイ素基を有する有機重合体を使用する。
【0045】
本発明に用いる反応性ケイ素基を有する有機重合体の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができる。
【0046】
具体的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体(A1);エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル及びスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、または、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2);(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;前記有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体や、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)は比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることからより好ましい。
【0047】
(A)成分である有機重合体のガラス転移温度は、特に限定は無いが、20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が20℃を上回ると、冬季または寒冷地での粘度が高くなり作業性が悪くなる場合があり、また、硬化物の柔軟性が低下し、伸びが低下する場合がある。前記ガラス転移温度はDSC測定による値を示す。
【0048】
また、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)は、透湿性が高く1液型組成物にした場合に深部硬化性に優れ、更に接着性にも優れることから特に好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)は最も好ましい。
【0049】
本発明の第一の防水工法(1)においては、トップコートレスである為に有機重合体(A)の主鎖骨格として、耐候性に優れる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)を含有することが必須である。更に、硬化性組成物の作業性(低粘度)および硬化塗膜の強度と耐候性のバランスから、防水工法(1)の有機重合体(A)の主鎖骨格は、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)を併用することが好ましく、重合体(A1)と重合体(A2)との重量比が、90/10〜10/90がより好ましく、80/20〜30/70が更に好ましく、75/25〜40/60が特に好ましく、70/30〜50/50が最も好ましい。
【0050】
本発明の第二の防水工法(2)において用いる有機重合体(A)の主鎖骨格は、特に制限はないが、防水工法(2)はトップコートを塗布する工法であるために、硬化塗膜には耐候性は不要であり、低粘度で高強度な硬化塗膜を得るため、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることが好ましい。
【0051】
本発明の第三の防水工法(3)において用いる有機重合体(A)の主鎖骨格は、特に制限はないが、防水工法(3)はプライマーレスで下地に直接塗布する工法であるために、下地、特にコンクリートへの接着性が重要であり、接着性の良好な硬化塗膜を得るため、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることが好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることがより好ましい。
【0052】
本発明の第四の防水工法(4)において用いる有機重合体(A)の主鎖骨格は、特に制限はないが、防水工法(4)は、蓄熱しやすい断熱材の上に施工する工法であるために、耐熱性の良好なポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることがより好ましい。
【0053】
本発明の第五の防水工法(5)において用いる有機重合体(A)の主鎖骨格は、特に制限はないが、防水工法(5)は、アスファルト系防水層の上に塗布する防水工法であり、アスファルト系防水層への汚染性を抑制するためには、溶剤や可塑剤の使用量を低減する事が必要な為、有機重合体(A)の主鎖骨格には、低粘度と高強度の両立に適した、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であることが好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体(A1)であることがより好ましい。
【0054】
前記反応性ケイ素基を有する有機重合体中に含有される反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シラノール縮合触媒によって加速される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。反応性ケイ素基としては、一般式(1):
−SiR3−a (1)
(式中、Rは、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基または(R’)SiO−(R’は、それぞれ独立に、炭素原子数1から20の置換あるいは非置換の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Xは、それぞれ独立に、水酸基または加水分解性基である。さらに、aは1、2、3のいずれかである)で表される基があげられる。
【0055】
加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。
【0056】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、硬化性の点から2個または3個が好ましい。加水分解性基や水酸基がケイ素原子に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。ケイ素原子上に3つの水酸基又は加水分解性基を有する反応性ケイ素基は、活性が高く良好な硬化性が得られること、また、得られる硬化物の復元性、耐久性、耐クリープ性に優れることから好ましい。一方、ケイ素原子上に2つの水酸基又は加水分解性基を有する反応性ケイ素基は、貯蔵安定性に優れ、また、得られる硬化物が高伸び、高強度であることから好ましい。
【0057】
また上記一般式(1)におけるRの具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、 R’がメチル基、フェニル基等である(R’)SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が特に好ましい。
【0058】
反応性ケイ素基のより具体的な例示としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基が挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0059】
また、貯蔵安定性の点からはジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。また、トリエトキシシリル基およびジエトキシメチルシリル基は、反応性ケイ素基の加水分解反応に伴って生成するアルコールが、エタノールであり、より高い安全性を有することから特に好ましい。
【0060】
反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行えばよい。すなわち、例えば以下の方法が挙げられる。
【0061】
(イ)分子中に水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有する有機重合体を得る。もしくは、不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により不飽和基含有有機重合体を得る。ついで得られた反応生成物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
【0062】
(ロ)(イ)法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体にメルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0063】
(ハ)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0064】
以上の方法のなかで、(イ)の方法、または(ハ)のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られる為に好ましい。更に、(イ)の方法で得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体は、(ハ)の方法で得られる有機重合体よりも低粘度で作業性の良い硬化性組成物となること、また、(ロ)の方法で得られるポリオキシアルキレン系重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(イ)の方法が特に好ましい。
【0065】
(イ)の方法において用いるヒドロシラン化合物の具体例としては、たとえば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランのようなハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランのようなアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランのようなケトキシメートシラン類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちではとくにハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類が好ましく、特にアルコキシシラン類は、得られる硬化性組成物の加水分解性が穏やかで取り扱いやすいために最も好ましい。アルコキシシラン類の中で、メチルジメトキシシランは、入手し易く、得られる有機重合体を含有する硬化性組成物の硬化性、貯蔵安定性、伸び特性、引張強度が高い為に特に好ましい。また、トリメトキシシランは、得られる硬化性組成物の硬化性および復元性の点から特に好ましい。
【0066】
(ロ)の合成法としては、たとえば、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、有機重合体の不飽和結合部位に導入する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、たとえば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
(ハ)の合成法のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、たとえば、特開平3−47825号公報に示される方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、たとえば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
トリメトキシシラン等の一つのケイ素原子に3個の加水分解性基が結合しているシラン化合物は不均化反応が進行する場合がある。不均化反応が進むと、ジメトキシシランやテトラヒドロシランのようなかなり危険な化合物が生じる。しかし、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランでは、このような不均化反応は進行しない。このため、ケイ素含有基としてトリメトキシシリル基など3個の加水分解性基が一つのケイ素原子に結合している基を用いる場合には、(ロ)または(ハ)の合成法を用いることが好ましい。
【0069】
一方、一般式(2):
H−(SiRO)SiR−R−SiX (2)
(式中、Xは前記に同じ。2×m+2個のRは、それぞれ独立に、炭化水素基または−OSi(R’’)(R’’は、それぞれ独立に、炭素原子数1から20の置換あるいは非置換の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基であり、入手性およびコストの点から、炭素原子数1から20の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1から8の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数1から4の炭化水素基が特に好ましい。Rは2価の有機基であり、入手性およびコストの点から、炭素原子数1から12の2価の炭化水素基が好ましく、炭素原子数2から8の2価の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数2の2価の炭化水素基が特に好ましい。また、mは、0から19の整数であり、入手性およびコストの点から、1が好ましい)で表されるシラン化合物は、不均化反応が進まない。このため、(イ)の合成法で、3個の加水分解性基が1つのケイ素原子に結合している基を導入する場合には、一般式(2)で表されるシラン化合物を用いることが好ましい。一般式(2)で示されるシラン化合物の具体例としては、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−[2−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−[2−(トリメトキシシリル)ヘキシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0070】
反応性ケイ素基を有する有機重合体は直鎖状、または分岐を有してもよく、その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において500〜100,000程度、より好ましくは1,000〜50,000であり、特に好ましくは3,000〜30,000である。数平均分子量が500未満では、硬化物の伸び特性の点で不都合な傾向があり、100,000を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0071】
高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物を得るためには、有機重合体に含有される反応性ケイ素基は重合体1分子中に平均して少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が平均して1個未満になると、硬化性が不充分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなる。反応性ケイ素基は、有機重合体分子鎖の主鎖の末端あるいは側鎖の末端にあってもよいし、また、両方にあってもよい。特に、反応性ケイ素基が分子鎖の主鎖の末端にあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる有機重合体成分の有効網目鎖長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0072】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A1)は、本質的に一般式(3):
−R−O− (3)
(式中、Rは、炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である。)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、一般式(3)におけるRは、炭素原子数1から14の、さらには2から4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。一般式(3)で示される繰り返し単位の具体例としては、
−CHO−、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CHC(CHO−、−CHCHCHCHO−
等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、プロピレンオキシド重合体を主成分とする重合体から成るものが非晶質であることや比較的低粘度である点から好ましい。
【0073】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11−060722号に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等、があげられるが、特に限定されるものではない。
【0074】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法は、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同55−13468号、同57−164123号、特公平3−2450号、米国特許3632557、米国特許4345053、米国特許4366307、米国特許4960844等の各公報に提案されているもの、また特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−218632号、特開平3−72527号、特開平3−47825号、特開平8−231707号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体が例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0075】
上記の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0076】
前記飽和炭化水素系重合体は芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、その骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1ーブテン、イソブチレンなどのような炭素原子数2から6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物とを共重合させた後、水素添加するなどの方法により得ることができるが、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましく、イソブチレン系重合体が特に好ましい。
【0077】
主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体であるものは、耐熱性、耐候性、耐久性、及び、湿気遮断性に優れる特徴を有する。
【0078】
イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、他単量体との共重合体でもよいが、ゴム特性の面からイソブチレンに由来する繰り返し単位を50重量%以上含有するものが好ましく、80重量%以上含有するものがより好ましく、90〜99重量%含有するものが特に好ましい。
【0079】
飽和炭化水素系重合体の合成法としては、従来、各種重合方法が報告されているが、特に近年多くのいわゆるリビング重合が開発されている。飽和炭化水素系重合体、特にイソブチレン系重合体の場合、Kennedyらによって見出されたイニファー重合(J.P.Kennedyら、J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed. 1997年、15巻、2843頁)を用いることにより容易に製造することが可能であり、分子量500〜100,000程度を、分子量分布1.5以下で重合でき、分子末端に各種官能基を導入できることが知られている。
【0080】
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体の製法としては、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開平1−197509号、特許公報第2539445号、特許公報第2873395号、特開平7−53882号の各明細書などに記載されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0081】
上記の反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0082】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルジエトキシメチルシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとともに、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。該ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーからなる重合体が好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーからなる(メタ)アクリル系重合体であり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーからなるアクリル系重合体である。一般建築用等の用途においては配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル系モノマーが更に好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途にはその比率は40%以下にするのが好ましく、更には30%以下にするのがより好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸−2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は40%以下にするのが好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(重量比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体が挙げられる。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
【0083】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の合成法としては、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。但し、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いる通常のフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るためには、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。
【0084】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁などが挙げられる。
【0085】
反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製法としては、たとえば、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に、連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法を用いた製法が開示されている。また、特開平9−272714号公報等に、原子移動ラジカル重合法を用いた製法が開示されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0086】
上記の反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0087】
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。具体的には、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体、からなる群から選択される2種以上をブレンドしてなる有機重合体も使用できる。
【0088】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体の製造方法は、特開昭59−122541号、特開昭63−112642号、特開平6−172631号、特開平11−116763号公報等に提案されているが、特にこれらに限定されるものではない。好ましい具体例は、反応性ケイ素基を有し分子鎖が実質的に、下記一般式(4):
−CH−C(R)(COOR)− (4)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素原子数1から8のアルキル基を示す)で表される炭素原子数1から8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記一般式(5):
−CH−C(R)(COOR)− (5)
(式中、Rは前記に同じ、Rは炭素原子数10以上のアルキル基を示す)で表される炭素原子数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体に、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体をブレンドして製造する方法である。
【0089】
前記一般式(4)のRとしては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素原子数1から8、好ましくは1から4、さらに好ましくは1から2のアルキル基があげられる。なお、Rのアルキル基は単独でもよく、2種以上混合していてもよい。
【0090】
前記一般式(5)のRとしては、たとえばラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素原子数10以上、通常は10から30、好ましくは10から20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、Rのアルキル基はRの場合と同様、単独でもよく、2種以上混合したものであってもよい。
【0091】
該(メタ)アクリル酸エステル系重合体の分子鎖は実質的に式(4)及び式(5)の単量体単位からなるが、ここでいう「実質的に」とは該共重合体中に存在する式(4)及び式(5)の単量体単位の合計が50重量%をこえることを意味する。式(4)及び式(5)の単量体単位の合計は好ましくは70重量%以上である。
【0092】
また式(4)の単量体単位と式(5)の単量体単位の存在比は、重量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
【0093】
該共重合体に含有されていてもよい式(4)及び式(5)以外の単量体単位としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
【0094】
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体は、特開平1−168764号、特開2000−186176号公報等に提案されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0095】
さらに、反応性ケイ素官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体の製造方法としては、他にも、反応性ケイ素基を有する有機重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行う方法が利用できる。この製造方法は、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報に具体的に開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0096】
一方、有機重合体の主鎖骨格中には本発明の効果を大きく損なわない範囲でウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。
【0097】
前記ウレタン結合成分としては特に限定されないが、イソシアネート基と活性水素基との反応により生成する基(以下、アミドセグメントともいう)を挙げることができる。
【0098】
前記アミドセグメントは一般式(6):
−NR−C(=O)− (6)
(Rは水素原子または1価の有機基であり、好ましくは炭素原子数1から20の置換あるいは非置換の1価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1から8の置換あるいは非置換の1価の炭化水素基である)で表される基である。
【0099】
前記アミドセグメントとしては、具体的には、イソシアネート基と水酸基との反応により生成するウレタン基;イソシアネート基とアミノ基との反応により生成する尿素基;イソシアネート基とメルカプト基との反応により生成するチオウレタン基などを挙げることができる。また、本発明では、上記ウレタン基、尿素基、及び、チオウレタン基中の活性水素が、更にイソシアネート基と反応して生成する基も、一般式(6)の基に含まれる。
【0100】
アミドセグメントと反応性ケイ素基を有する有機重合体の工業的に容易な製造方法を例示すると、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて、ポリウレタン系主鎖の末端にイソシアネート基を有する重合体とした後、あるいは同時に、該イソシアネート基の全部または一部に一般式(7)
W−R−SiR3−a (7)
(ただし、式中、R、X、aは前記と同じ。Rは、2価の有機基であり、より好ましくは炭素原子数1から20の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基である。Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれた活性水素含有基である。)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法により製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特公昭46−12154号(米国特許3632557号)、特開昭58−109529号(米国特許4374237号)、特開昭62−13430号(米国特許4645816号)、特開平8−53528号(EP0676403)、特開平10−204144号(EP0831108)、特表2003−508561(米国特許6197912号)、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平11−100427号、特開2000−169544号、特開2000−169545号、特開2002−212415号、特許第3313360号、米国特許4067844号、米国特許3711445号、特開2001−323040号、などが挙げられる。
【0101】
また、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に一般式(8)
O=C=N−R−SiR3−a (8)
(ただし、式中R、R、X、aは前記に同じ。)で示される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物とを反応させることにより製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特開平11−279249号(米国特許5990257号)、特開2000−119365号(米国特許6046270号)、特開昭58−29818号(米国特許4345053号)、特開平3−47825号(米国特許5068304号)、特開平11−60724号、特開2002−155145号、特開2002−249538号、WO03/018658、WO03/059981、などが挙げられる。
【0102】
末端に活性水素含有基を有する有機重合体としては、末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体(ポリエーテルポリオール)、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する飽和炭化水素系重合体(ポリオレフィンポリオール)、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、および、ポリオレフィンポリオールは、得られる有機重合体のガラス転移温度が比較的低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。特に、ポリエーテルポリオールは、得られる有機重合体の粘度が低く作業性が良好であり、深部硬化性および接着性が良好である為に特に好ましい。また、ポリアクリルポリオールおよび飽和炭化水素系重合体は、得られる有機重合体の硬化物の耐候性・耐熱性が良好である為により好ましい。
【0103】
ポリエーテルポリオールとしては、いかなる製造方法において製造されたものでも使用することが出来るが、全分子平均で分子末端当り少なくとも0.7個の水酸基を末端に有するものが好ましい。具体的には、従来のアルカリ金属触媒を使用して製造したオキシアルキレン重合体や、複合金属シアン化物錯体やセシウムの存在下、少なくとも2つの水酸基を有するポリヒドロキシ化合物などの開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて製造されるオキシアルキレン重合体などが挙げられる。
【0104】
上記の各重合法の中でも、複合金属シアン化物錯体を使用する重合法は、より低不飽和度で、Mw/Mnが狭く、より低粘度でかつ、高耐酸性、高耐候性のオキシアルキレン重合体を得ることが可能であるため好ましい。
【0105】
前記ポリアクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を骨格とし、かつ、分子内にヒドロキシル基を有するポリオールを挙げることができる。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。
【0106】
前記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0107】
一般式(7)のケイ素化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、等のアミノ基含有シラン類;γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等のヒドロキシ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;等が挙げられる。また、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平10−204144号(EP0831108)、特開2000−169544号、特開2000−169545号に記載されている様に、各種のα,β−不飽和カルボニル化合物と一級アミノ基含有シランとのMichael付加反応物、または、各種の(メタ)アクリロイル基含有シランと一級アミノ基含有化合物とのMichael付加反応物もまた、一般式(7)のケイ素化合物として用いることができる。
【0108】
一般式(8)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−トリエキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルメチルイソシアネート等が挙げられる。また、特開2000−119365号(米国特許6046270号)に記載されている様に、一般式(7)のケイ素化合物と、過剰の前記ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる化合物もまた、一般式(8)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物として用いることができる。
【0109】
本発明の(A)成分である有機重合体の主鎖骨格中にアミドセグメントが多いと、有機重合体の粘度が高くなり、作業性の悪い組成物となる場合がある。一方、(A)成分の主鎖骨格中のアミドセグメントによって、本発明の組成物の硬化性が向上する傾向がある。従って、(A)成分の主鎖骨格中にアミドセグメントを含む場合、アミドセグメントは1分子あたり平均で、1〜10個が好ましく、1.5〜7個がより好ましく、2〜5個が特に好ましい。1個よりも少ない場合には、硬化性が十分ではない場合があり、10個よりも大きい場合には、有機重合体が高粘度となり作業性の悪い組成物となる場合がある。
【0110】
一方、本発明の(A)成分である有機重合体の主鎖骨格中にアミドセグメントが多いと耐熱性が悪い傾向がある。その為、本発明の防水工法(5)においては、1分子あたりのアミドセグメントの個数は少ないほうが好ましい。アミドセグメントは1分子あたり平均で、2個以下が好ましく、1.5個以下がより好ましく、1個以下が更に好ましく、0.5個以下が特に好ましく、アミドセグメントを含まないことが最も好ましい。2個よりも多い場合には、本発明の硬化性組成物を断熱材の上に塗布してなる硬化塗膜は、経時での熱劣化による物性低下が大きくなる場合がある。
【0111】
本発明の硬化性組成物には(B)成分としてシラノール縮合触媒を使用することができる。シラノール縮合触媒としては、特に限定されず、通常使用される加水分解性ケイ素基の反応を促進するシラノール縮合触媒が挙げられ硬化触媒を添加することができる。具体例としては、2−エチルヘキサン酸錫、バーサチック酸錫、2−エチルヘキサン酸ビスマス等のカルボン酸金属塩;2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫ジラウレート等のジアルキル錫ジカルボキシレートとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物;テトライソプロポキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などの有機チタネート類;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二級アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミン、などの脂肪族不飽和アミン類;ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;および、その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5(DBN)等が挙げられる。
【0112】
(B)成分のシラノール縮合触媒は(A)成分100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、より好ましくは0.5〜4重量部の範囲で使用される。
【0113】
本発明の硬化性組成物には(C)成分として、シランカップリング剤を添加することができる。具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン、(イソシアネートメチル)トリエトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジエトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N‘−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等のアミノ基含有シラン類;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン型シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。シランカップリング剤の反応物としては、上記アミノシランとエポキシシランの反応物、アミノシランとイソシアネートシランの反応物、各種シランカップリング剤の部分縮合体等を挙げる事ができる。
【0114】
(C)成分のシランカップリング剤は(A)成分100重量部に対して、0.1〜15重量部程度が好ましく、1〜10重量部程度がより好ましく、3〜7重量部程度が特に好ましい。配合量がこの範囲を下回ると、接着性や貯蔵安定性が十分ではない場合がある。一方、配合量がこの範囲を上回ると、硬化物の伸びが低下したり、深部硬化性が十分ではない場合がある。
【0115】
本発明の硬化性組成物には(D)成分として、エポキシ樹脂を添加することができる。エポキシ樹脂としては、分子内に一個以上のエポキシ基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、各種のものを用いることができる。具体例としては例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;上記ビスフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を水添して得られる水添ビスフェノール型ジグリシジルエーテル(例えば水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,2−プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)プロパン、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)エタン、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)メタン、1,1,1,1−テトラ(グリシジルオキシメチル)メタン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル;プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールに2種以上のアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、イソプロピリデンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,2−エポキシ−2−エポキシエチルシクロヘキサン等の脂環式エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのニ塩基酸のグリシジルエステル;フッ素化エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ポリブタジエンあるいはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのような不飽和重合体のエポキシ化物などが例示されるが、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。これらエポキシ樹脂は単独で用いても良く2種以上併用しても良い。
【0116】
上記エポキシ樹脂としては市販のものを用いることもでき、例えば、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200、UVR−6228、ERL−4299、ERL−4221(以上、ユニオンカ−バイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマ−A200、サイクロマ−M100、サイクロマ−M101、エポリ−ドGT−301、エポリ−ドGT−302、エポリ−ドGT−401、エポリ−ドGT−403、EHPE3150、エポリ−ドHD300ETHB、エポブレンド(以上、ダイセル化学工業社製)、アデカレジンEP−4000、アデカレジンEP−4003S、アデカレジンEP−4010S、アデカレジンEP−4011S、アデカレジンEPR−4030、アデカレジンEPR−4033、アデカレジンEP−4080、アデカレジンEP−4085、アデカレジンEP−4088、アデカレジンEP−4100、アデカレジンEP−4100G、アデカレジンEP−4100E、アデカレジンEP−4100TX、アデカレジンEP−4300E、アデカレジンEP−4340、アデカレジンEP−4400、アデカレジンEP−4500A、アデカレジンEP−4520S、アデカレジンEP−4520TX、アデカレジンEP−4530、アデカレジンEP−4900、アデカレジンEP−4901、アデカレジンEP−4901F、アデカレジンEP−4950、アデカレジンEP−5100−75X、アデカレジンED−505、アデカレジンED−506、アデカレジンEPU−78−13S、アデカレジンEP−49−23、アデカレジンEP−49−25、アデカレジンKRM−2110、アデカレジンKRM−2199、アデカレジンKRM−2720、アデカグリシロールED−509S、アデカグリシロールED−518S、アデカグリシロールED−501、アデカグリシロールED−502S、アデカグリシロールED−509E、アデカグリシロールED−529、アデカグリシロールED−518、アデカグリシロールED−503、アデカグリシロールED−506、アデカグリシロールED−523T、アデカグリシロールED−515、アデカグリシロールED−505、アデカグリシロールED−505R(以上、旭電化工業社製)、jER190P、jER191P、jERYX310、jERDX255、jER517、jER545、jERYX8000、jERYX8034、jERYX4000、jERYL6121H、jERYL6640、jERYL6677、jER604、jER801、jER825、jER827、jER828、jER834、jER801、jER801P、jER802、jER815、jER816A、jER819、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1004、jER1007、jER1009、jER1010、jER1003F、jER1004F、jER1005F、jER806、jER806L、jER807、jER4004P、jER4007P、jER4010P、jER4110、jER4210、jER1256、jER4250、jER4275、jER1255HX30、jER5580BPX40、jERYX8100BH30、jER152、jER154、jER157S70、jER180S70、jER1031S、jER1032H60、jER604、jER630、jER871、jER872、jER872X75、jER1031、jERRXE15、jERYDE−205、jERYDE−305、jERBGE、jERYED111、jERYED111A、jERYED111E、jERYED122、jERYED205、jERYED216(以上、ジャパンエポキシレジン社製)PY−306、0163、DY−022(以上、チバガイギ−社製)、エポライトM−1230、エポライトEHDG−L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR−1500(以上、共栄社化学社製)、R−508、R−531、R−710(三井化学社製)、スミエポキシELM−120、スミエポキシELM−434(住友化学社製)、デナコールEX−111、デナコールEX−121、デナコールEX−141、デナコールEX−145、デナコールEX−146、デナコールEX−147、デナコールEX−171、デナコールEX−192、デナコールEM−150、デナコールEX−201、デナコールEX−211、デナコールEX−212、デナコールEX−252、デナコールEX−313、デナコールEX−314、デナコールEX−321、デナコールEX−322、デナコールEX−411、デナコールEX−421、デナコールEX−512、デナコールEX−521、デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−622、デナコールEX−711、デナコールEX−721、デナコールEX−731、デナコールEX−810、デナコールEX−811、デナコールEX−821、デナコールEX−830、デナコールEX−832、デナコールEX−841、デナコールEX−850、デナコールEX−851、デナコールEX−861、デナコールEX−911、デナコールEX941、デナコールEX−920、デナコールEX−931(以上、ナガセケムテックス社製)、エピオールB、エピオールEH、エピオールL−41、エピオールSK、エピオールA、エピオールP、エピオールSB、エピオールTB、エピオールBE−200、エピオールOH、エピオールG−100、エピオールE−100、エピオールE−400、エピオールE−1000、エピオールNPG−100、エピオールTMP−100、マープルーフG−0115S、マープルーフG−0130S−P、マープルーフG−0150M、マープルーフG−0250S、マープルーフG−1005S、マープルーフG−1005SA、マープルーフG−1010S、マープルーフG−2050M、マープルーフG−01100、マープルーフG−017581、ニューサイザー510R、ニューサイザー512(以上、日油社製)、PY−306、0163、DY−022(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、エポトートYD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−014、エポトートYD−017、エポトートYD−019、エポトートYD−020G、エポトートYD−115、エポトートYD−118T、エポトートYD−127、エポトートYD−128、エポトートYD−134、エポトートYD−171、エポトートYD−172、エポトートYD−175X75、エポトートYD−6020、エポトートYD−716、エポトートYD−7011R、エポトートYD−901、エポトートYD−902、エポトートYD−903N、エポトートYD−904、エポトートYD−907、エポトートYD−6020、エポトートYDF−170、エポトートYDF−2001、エポトートYDF−2004、エポトートYDF−2005RL、エポトートYD−8125、エポトートYDF−8170C、エポトートZX−1059、エポトートYD−825GS、エポトートYD−870GS、エポトートPG−207GS、エポトートZX−1658GS、エポトートZX−1542、エポトートYDPN−638、エポトートYDCN−700−2、エポトートYDCN−700−3、エポトートYDCN−700−5、エポトートYDCN−700−7、エポトートYDCN−700−10、エポトートYDCN−704、エポトートYH−300、エポトートYH−300、エポトートYH−301、エポトートYH−315、エポトートYH−324、エポトートYH−325、ネオトートPG−202、ネオトートPG−207N、ネオトートPP−101、ネオトートS、エポトートST−3000、エポトートST−4000D(以上、東都化成社製)BREN−S、EPPN−201、EPPN−501N、EOCN−1020、GAN、GOT(日本化薬社製))、SB−20(岡村製油社製)、エピクロン720(大日本インキ化学社製)、ARUFON UG−4000、ARUFON UG−4010、ARUFON UG−4030、ARUFON UG−4040、ARUFON UG−4070(以上、東亞合成製)等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0117】
これらのエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、硬化に際し、反応性が高く硬化物が3次元的網目を作りやすいなどの点から好ましい。また、本発明の有機重合体(A)とエポキシ樹脂とを含有する硬化性組成物を硬化させた時の硬化物が透明であるためには、該エポキシ樹脂は有機重合体と相溶することが好ましく、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂は各種有機重合体と相溶し易く、透明な硬化物を得易い上に、得られる硬化物の耐候性に優れる点からもより好ましい。
【0118】
本発明の硬化性組成物において、有機重合体(A)とエポキシ樹脂(D)の混合比は、重量比で100/1〜1/100の範囲が好ましいが、100/5〜5/100の範囲にあることがより好ましく、100/10〜10/100の範囲にあることが更に好ましいが、その混合比は限定されるものではなく、目的に応じて設定できる。エポキシ樹脂の混合比は多過ぎると硬化物が硬くなって低伸びの硬化塗膜となる。逆に少な過ぎると、下地への接着強度や耐水接着性、塗膜強度が低下する。
【0119】
エポキシ樹脂を添加する場合、本発明の硬化性組成物には(E)成分として、エポキシ樹脂用硬化剤を添加することができる。エポキシ樹脂用硬化剤としては、従来公知のものを広く使用することができる。例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、グアニジン、テトラメチルグアニジン、オレイルアミン等の脂肪族アミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、BASF社製ラミロンC−260、CIBA社製Araldit HY−964、ロームアンドハース社製メンセンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリシクロヘキシルポリアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)等の脂環族アミン類;m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン類;(CHN(CHN(CH(式中nは1〜10の整数)で示される直鎖状ジアミン、(CH−N(CH)n−CH(式中nは0〜10の整数)で示される直鎖第3級アミン、N{(CH)nCH(式中nは1〜10の整数)で示されるアルキル第3級モノアミン;ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミン類;3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(ATU)、モルホリン、N−メチルモルホリン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のエーテル結合を有するアミン類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の水酸基含有アミン類;トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、ジアザビシクロウンデセン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸等の酸無水物類;ダイマー酸にジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン等のポリアミンを反応させて得られるポリアミドや各種ポリアミド樹脂、ダイマー酸以外のポリカルボン酸を使ったポリアミド等のポリアミドアミン類;2−エチル−4−メチルイミダゾール等の各種イミダゾール類;ジシアンジアミドおよびその誘導体;ポリオキシプロピレン系ジアミン,ポリオキシプロピレン系トリアミン等のポリオキシプロピレン系アミン類;フェノール類;上記アミン類にエポキシ化合物を反応させて得られるエポキシ変性アミン、上記アミン類にホルマリン、フェノール類を反応させて得られるマンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、アミン化合物とカルボニル化合物との縮合反応により得られるケチミンといった変性アミン類;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘキサン酸塩等のアミン塩;特開平7−242737公報段落[0021]〜[0026]に例示されるようなケチミン化合物、等が挙げられる。
【0120】
上記エポキシ樹脂用硬化剤としては市販のものを用いることもでき、例えば、アンカミンAD、アンカミンT−1、アンカミン1644、アンカミン1769、アンカミン1833、アンカミン1856、アンカミン2089M、アンカミン2089J、アンカミン2390、アンカミン2410、アンカミン2422、アンカミン2432、アンカミン2606、アンカミン2049、アンカミン2167、アンカミン2264、アンカミンMCA、アンカミン1618、アンカミン1732、アンカミン1884、アンカミン1943、アンカミン2074、アンカミン2143、アンカミン2199、アンカミン2280、アンカミン2558、アンカミン2559、アンカミン2596、アンカミン2631、アンカミン2632、アンカミン2228、アンカミン2489、アンカミン2558、アンカミン2597、アンカミン2620、アンカミンハードナーPH−815、ハードナーPH−816、ハードナーPH−821、ハードナーPH−826、ハードナーPH−875、ハードナーPH−895、(以上ピーティアイジャパン社製)が挙げられる。また、EH−426−1、EH−433、EH−427、EH−267S、EH−427E、EH−424B、EH−267W、EH−425、EH458、EH−471、EH−451D、EH−451B、EH−451BA、EH−451K、EH−455、EH−253−9、EH−253−9A、EH−227B、EH−406A−2、EH−464EH−262W−4C、EH−4198−1、EH−4199−4、EH−4199−4B、EH−461、EH−273、EH−233W、EH−233B、EH−3895、EH−404(以上、ADEKA社製)、エポメートB001、エポメートB002、エポメートB002W、エポメートB002R、エポメートC002、エポメートN001、エポメートN002、エポメートP002、エポメートRX2、エポメートRX221、エポメートRX3、エポメートRX32、エポメートQX2、エポメートQX3、エポメートLX1N、エポメートLX1S、エポメートLX1SW、エポメートRD1、エポメートLX2S、エポメートLX2W、エポメートSA1、(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、トーマイド210、トーマイド215X、トーマイド225E、トーマイド225X、トーマイド225R、トーマイド225ND、トーマイド235A、トーマイド235R、トーマイド235S、トーマイド241、トーマイド245、トーマイド245S、トーマイド245HS、トーマイド245LP、トーマイド252A、トーマイド255A、トーマイド275FA、トーマイド280C、トーマイド290CA、トーマイド290FA、トーマイド292A、トーマイド296、トーマイド2151、トーマイド2400、トーマイド2500、トーマイド2510、トーマイド2602、トーマイドRS640、トーマイドHR11、トーマイドTXE524、トーマイド410N、トーマイド215−70X、トーマイド423、トーマイド437、トーマイドTXC636A、トーマイドTXS53C、トーマイドTXH674B、フジキュアー5000、フジキュアー5001、フジキュアー5003、フジキュアー5100、フジキュアー5260F、フジキュアー5300、フジキュアー5400、フジキュアー5405、フジキュアー5410、フジキュアー5420A、フジキュアー5420F、フジキュアーZS4、フジキュアー4233F、フジキュアー6300、フジキュアーFXU822、フジキュアーFXU848、フジキュアーFXU870、フジキュアー4011、フジキュアー4025、フジキュアー4030、フジキュアーFXI919、フジキュアーFXH927、フジキュアーFXR1020、フジキュアー1030、フジキュアー1081(以上、富士化成製)が挙げられる。
【0121】
これらの硬化剤は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。特に限定はされないが、これらエポキシ樹脂用硬化剤の中では、硬化物の強度に優れる点から、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミン類が好ましく、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが特に好ましい。また、硬化物の透明性や非着色性に優れる点から脂肪族アミン系硬化剤が好ましく、硬化性組成物の硬化性やビニル系重合体との相溶性の観点から、変性脂肪族アミンであることがさらに好ましい。このような変性脂肪族アミンとしては、例えばフジキュアーFXU870やフジキュアー5420Fが挙げられる。
【0122】
またエポキシ樹脂に対する硬化剤の配合量は活性水素当量から配合量を決めることができるが、さらに低粘度化と低温反応性を考慮し、硬化剤を過剰に用いても、また当量に不足した量でもかまわない。エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂の配合量にもよるが、有機重合体(A)100重量部に対し、通常0.5〜60重量部程度の範囲、好ましくは1〜50重量部程度の範囲で使用されるのが良い。0.5重量部未満ではエポキシ樹脂の硬化が不十分となり硬化物の強度が低下する。また、60重量部を超えると硬化物表面へのブリード等により外観を損ねる等の問題が生じることがある。
【0123】
本発明の硬化性組成物には(F)成分として、水を添加することができる。水は、(A)成分の硬化過程における加水分解反応に必要であり、一般的な水道水や工業用水、純水等が用いられる。また、冬場における使用では、凝固点降下作用のある各種塩類やアルコール等を添加することも可能である。添加量は、(A)成分100重量部に対し、通常0.1〜5重量部程度の範囲、好ましくは0.2〜4重量部の範囲が良い。0.1重量部未満では内部硬化性が不十分であり、5重量部を超えると接着性の低下等が起こり好ましくない。
【0124】
本発明の硬化性組成物には(G)成分として、充填材を添加することができる。充填材としては、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックの如き補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末など樹脂粉末の如き充填材;石綿、ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填材等が挙げられる。充填材を使用する場合、その使用量は(A)成分の重合体100重量部に対して1〜250重量部、好ましくは10〜200重量部である。
【0125】
前記充填材は、特開2001−181532号公報に記載されているように、酸化カルシウムなどの脱水剤と均一に混合した後、気密性素材で構成された袋に封入し、適当な時間放置することにより予め脱水乾燥することも可能である。この低水分量充填材を使用することにより、特に一液型組成物とする場合、貯蔵安定性を改良することができる。
【0126】
また、透明性の高い組成物を得る場合には、特開平11−302527号公報に記載されているように、メタクリル酸メチルなどの重合体を原料とした高分子粉体や、非晶質シリカなどを充填材として使用することができる。また、特開2000−38560号公報に記載されているように、その表面に疎水基が結合した二酸化珪素微粉末である疎水性シリカなどを充填材として使用することにより透明性の高い組成物を得ることができる。二酸化珪素微粉末の表面は、一般的にシラノール基(−SiOH)となっているが、このシラノール基に有機珪素ハロゲン化物やアルコール類等を反応させることによって、(−SiO−疎水基)を生成させたものが疎水性シリカである。具体的には、二酸化珪素微粉末の表面に存在するシラノール基に、ジメチルシロキサン,ヘキサメチルジシラザン,ジメチルジクロルシラン,トリメトキシオクチルシラン,トリメチルシラン等を反応結合させたものである。なお、表面がシラノール基(−SiOH)で形成されている二酸化珪素微粉末は、親水性シリカ微粉末と呼ばれる。
【0127】
これら充填材の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填材が好ましく、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対し、1〜200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で破断伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填材を、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して5〜200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。なお、一般的に炭酸カルシウムは、比表面積の値が大きいほど硬化物の破断強度、破断伸び、接着性の改善効果は大きくなる。もちろんこれら充填材は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。炭酸カルシウムを使用する場合、表面処理微細炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムなどの粒径が大きい炭酸カルシウムを併用することが望ましい。表面処理微細炭酸カルシウムの粒径は0.5μm以下が好ましく、表面処理は脂肪酸や脂肪酸塩で処理されていることが好ましい。また、粒径が大きい炭酸カルシウムの粒径は1μm以上が好ましく表面処理されていないものを用いることができる。
【0128】
組成物の作業性(キレなど)向上や硬化物表面を艶消し状にするために、有機バルーン、無機バルーンの添加が好ましい。これらの充填材は表面処理することもでき、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用することもできる。作業性(キレなど)向上には、バルーンの粒径は0.1mm以下が好ましい。硬化物表面を艶消し状にするためには、5〜300μmが好ましい。
【0129】
バルーンは、球状体充填材で内部が中空のものである。このバルーンの材料としては、ガラス、シラス、シリカなどの無機系の材料、および、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サランなどの有機系の材料があげられるが、これらのみに限定されるものではなく、無機系の材料と有機系の材料とを複合させたり、また、積層して複数層を形成させたりすることもできる。無機系の、あるいは有機系の、またはこれらを複合させるなどしたバルーンを使用することができる。また、使用するバルーンは、同一のバルーンを使用しても、あるいは異種の材料のバルーンを複数種類混合して使用しても差し支えがない。さらに、バルーンは、その表面を加工ないしコーティングしたものを使用することもできるし、またその表面を各種の表面処理剤で処理したものを使用することもできる。たとえば、有機系のバルーンを炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどでコーティングしたり、無機系のバルーンをシランカップリング剤で表面処理することなどがあげられる。
【0130】
砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感がある表面を得るには、バルーンは粒径が0.1mm以上であることが好ましい。0.2mm〜5.0mm程度や0.5mm〜5.0mm程度のものも使用可能である。0.1mm未満のものでは、多量に配合しても組成物の粘度を上昇させるだけで、ざらつき感が発揮されない場合がある。バルーンの配合量は目的とする砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感の程度によって容易に定めることができる。通常、粒径が0.1mm以上のものを組成物中の容積濃度で5〜25vol%の範囲となる割合で配合することが望ましい。バルーンの容積濃度が5vol%未満であるとざらつき感がなく、また25vol%を超えると、硬化性組成物の粘度が高くなり作業性が悪く、硬化物のモジュラスも高くなり、硬化性組成物の基本性能が損なわれる傾向にある。バランスが特に好ましい容積濃度は8〜22vol%である。
【0131】
バルーンを用いる際には特開2000−154368号公報に記載されているようなスリップ防止剤、特開2001−164237号公報に記載されているような硬化物の表面を凹凸状態に加えて艶消し状態にするためのアミン化合物、特に融点35℃以上の第1級および/または第2級アミンを添加することができる。
【0132】
バルーンの具体例は特開平2−129262号、特開平4−8788号、特開平4−173867号、特開平5−1225号、特開平7−113073号、特開平9−53063号、特開平10−251618号、特開2000−154368号、特開2001−164237号、WO97/05201号などの各公報に記載されている。
【0133】
また、特開2004−51701号公報または特開2004−66749号公報などに記載の熱膨張性微粒中空体を使用することができる。熱膨張性微粒中空体とは、炭素原子数1から5の炭化水素などの低沸点化合物を高分子外殻材(塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、または塩化ビニリンデン−アクリロニトリル共重合体)で球状に包み込んだプラスチック球体である。本組成物を用いた接着部分を加熱することによって、熱膨張性微粒中空体の殻内のガス圧が増し、高分子外殻材が軟化することで体積が劇的に膨張し、接着界面を剥離させる役割を果たす。熱膨張性微粒中空体の添加により、不要時には加熱するだけで簡単に材料の破壊を伴わずに剥離でき、且つ有機溶剤を一切用いないで加熱剥離可能な接着性組成物が得られる。
【0134】
本発明の硬化性組成物には(H)成分として、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および、熱膨張性黒鉛などの難燃剤を添加することができる。上記難燃剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
前記ポリリン酸アンモニウムとしては、従来公知のものを広く使用することができる。これらの中でも、耐水性の観点から、樹脂により被覆し、マイクロカプセル化されたポリリン酸アンモニウムや表面改質されたポリリン酸アンモニウム等の表面処理されたポリリン酸アンモニウムが好ましく、更に好ましくは表面をメラミンホルムアルデヒド樹脂で被覆されたものが好ましい。
ポリリン酸アンモニウムは単独で用いても良く、多価アルコール及び含窒素化合物と併用しても良い。
多価アルコールの具体例としてはモノ、ジ、又はトリペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレングリコール、グリセリンが挙げられ、含窒素化合物としてはメラミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、リン酸メラミン、グアニジン、ベンゾグアナミン、尿素、ジシアンジアミドなどが挙げられる。
ここで多価アルコールは加熱により膨張し、脱水触媒により炭化され、発泡炭化層を形成する作用があり、含窒素化合物は発泡剤として作用する。
【0135】
難燃剤は(A)成分100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部の範囲で使用される。
特に、ポリリン酸アンモニウムを単独で用いる場合は、(A)成分100重量部に対し、20〜100重量部用いる事が好ましく、40〜100重量部が更に好ましい。ポリリン酸アンモニウムを多価アルコールおよび/または含窒素化合物と併用する場合は、(A)成分100重量部に対し、ポリリン酸アンモニウム1〜20重量部、多価アルコール1〜20重量部および/または含窒素化合物1〜20重量部用いることが好ましい。
【0136】
本発明の硬化性組成物には(I)成分として、分散剤を添加することができる。該分散剤は、顔料とともに公知の方法に従って混合分散して得られる顔料分散ペーストを配合することも可能である。分散剤としては、市販されているものを使用することができる。市販品としては、例えば、ANTI−TERRA−U、ANTI−TERRA−U100、ANTI−TERRA−204、ANTI−TERRA−205、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−110、DISPERBYK−111、DISPERBYK−112、DISPERBYK−116、DISPERBYK−130、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−180、DISPERBYK−182、DISPERBYK−183、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2008、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2022、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2070、DISPERBYK−2096、DISPERBYK−2150、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2163、DISPERBYK−2164、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−P105、BYK−9076、BYK−9077、BYK−220S、ANTI−TERRA−250、DISPERBYK、DISPERBYK−187、DISPERBYK−190、DISPERBYK−191、DISPERBYK−192、DISPERBYK−193、DISPERBYK−194、DISPERBYK−198、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2012、DISPERBYK−2015、DISPERBYK−2090、DISPERBYK−2091、DISPERBYK−2095(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON 2150、DISPARLON KS−860、DISPARLON KS−873N、DISPARLON 7004、DISPARLON 1831、DISPARLON 1850、DISPARLON 1860、DISPARLON DA−1401、DISPARLON PW−36、DISPARLON DA−1200、DISPARLON DA−550、DISPARLON DA−703−50、DISPARLON DA−7301、DISPARLON DN−900、DISPARLON DA−325、DISPARLON DA−375、DISPARLON DA−234(いずれも楠本化成社製)、EFKAPOLYMER4550(EFKA社製)、ソルスパース27000、ソルスパース41000、ソルスパース53095(いずれもアビシア社製)等を挙げることができる。これらの中でも、ANTI−TERRA−U100、DISPERBYK−102、DISPERBYK−106、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−111、DISPERBYK−116、DISPERBYK−145、DISPERBYK−180、DISPERBYK−185、DISPERBYK−2008、DISPERBYK−2096、DISPERBYK−2155、BYK−P105、BYK−9076、BYK−9077、DISPERBYK−191、DISPERBYK−192、DISPERBYK−2090、DISPERBYK−2095、DISPARLON DA−550、DISPARLON DA−325、DISPARLON DA−375、DISPARLON DA−234は不揮発分含量が高く好ましい。この分散剤の数平均分子量は、1000〜10万であることが好ましい。1000未満であると十分な分散安定性が得られないおそれがあり、10万を超えると粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがある。より好ましくは、2000〜5万であり、更に好ましくは、4000〜5万である。
【0137】
分散剤(I)は(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜3重量部、より好ましくは0.3〜1重量部の範囲で使用される。
【0138】
本発明の硬化性組成物には(J)成分として、消泡剤を添加することができる。消泡剤としては、市販されているものを使用することができる。市販品としては、例えば、BYK−051、BYK−052、BYK−053、BYK−054、BYK−055、BYK−057、BYK−1752、BYK−1790、BYK−060N、BYK−063、BYK−065、BYK−066N、BYK−067A、BYK−077、BYK−088、BYK−141、BYK−354、BYK−392、BYK−011、BYK−012、BYK−017、BYK−018、BYK−019、BYK−020、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−038、BYK−044、BYK−093、BYK−094、BYK−1610、BYK−1615、BYK−1650、BYK−1730、BYK−1770などのビックケミー社製消泡剤や、DISPARLON OX−880EF、DISPARLON OX−881、DISPARLON OX−883、DISPARLON OX−883HF、DISPARLON OX−70、DISPARLON OX−77EF、DISPARLON OX−60、DISPARLON OX−710、DISPARLON OX−720、DISPARLON OX−720EF、DISPARLON OX−750HF、DISPARLON LAP−10、DISPARLON LAP−20、DISPARLON LAP−30等のアクリル系消泡剤、DISPARLON OX−66、DISPARLON OX−715等のシリコーン系アクリル系複合型消泡剤、DISPARLON 1950、DISPARLON 1951、DISPARLON 1952、DISPARLON P−410EF、DISPARLON P−420、DISPARLON P−450、DISPARLON P−425、DISPARLON PD−7等のビニル系消泡剤、DISPARLON 1930N、DISPARLON 1934等のシリコーン系消泡剤(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0139】
消泡剤(J)は(A)成分100重量部に対して、0.05〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部の範囲で使用される。
【0140】
<可塑剤>
本発明の硬化性組成物には(K)成分として、可塑剤を添加することができる。可塑剤の添加により、硬化性組成物の粘度やスランプ性および組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸びなどの機械特性が調整できる。可塑剤の例としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類をあげることができる。
【0141】
また、高分子可塑剤を使用することができる。高分子可塑剤を使用すると重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持する。また、低分子可塑剤を使用した場合に比較して、硬化性組成物中の可塑剤の移行による、アスファルト系防水層への汚染が少ない為、本発明の防水工法(5)においては、高分子可塑剤を使用することが好ましい。更に、該硬化物にアルキド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良できる。高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;分子量500以上、さらには1000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールあるいはこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
これらの高分子可塑剤のうちで、(A)成分の重合体と相溶するものが好ましい。この点から、ポリエーテル類やビニル系重合体が好ましい。また、ポリエーテル類を可塑剤として使用すると、表面硬化性および深部硬化性が改善され、貯蔵後の硬化遅延も起こらないことから好ましく、中でもポリプロピレングリコールがより好ましい。また、相溶性および耐候性、耐熱性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でもアクリル系重合体および/又はメタクリル系重合体が好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステルなどアクリル系重合体がさらに好ましい。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001−207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温、高圧で連続塊状重合によって得た、いわゆるSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。
【0143】
高分子可塑剤の数平均分子量は、好ましくは500〜15000であるが、より好ましくは800〜10000であり、さらに好ましくは1000〜8000、特に好ましくは1000〜5000である。最も好ましくは1000〜3000である。分子量が低すぎると熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できず、アルキド塗装性が改善できない。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が悪くなる。高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.80未満が好ましい。1.70以下がより好ましく、1.60以下がなお好ましく、1.50以下がさらに好ましく、1.40以下が特に好ましく、1.30以下が最も好ましい。
【0144】
数平均分子量はビニル系重合体の場合はGPC法で、ポリエーテル系重合体の場合は末端基分析法で測定される。また、分子量分布(Mw/Mn)GPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0145】
可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また低分子可塑剤と高分子可塑剤を併用してもよい。なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0146】
可塑剤の使用量が多いほど硬化性組成物の硬化物の強度が低下するため、可塑剤の使用量を低減する事が好ましく、可塑剤の使用量は、(A)成分の重合体100重量部に対して100重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、30重量部以下が更に好ましく、10重量部以下が特に好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0147】
また、本発明の防水工法(5)においては、硬化性組成物中の可塑剤の移行による、アスファルト系防水層への汚染を抑制するため、可塑剤の使用量を低減する事が必要となる。その為、可塑剤の使用量は、(A)成分の重合体100重量部に対して20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下が更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0148】
<溶剤>
本発明の硬化性組成物には、組成物の粘度を低減し、チクソ性を高め、作業性を改善する目的で、(L)成分として溶剤を使用することができる。溶剤としては、特に限定は無く、各種の化合物を使用することができる。具体例としては、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、石油系溶媒等の炭化水素系溶剤、トリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤が例示される。溶剤を使用する場合、外気への汚染の問題から、溶剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0149】
但し、溶剤の配合量が多い場合には、環境への影響や人体への毒性が高くなる場合がある。また、本発明の防水工法(5)においては、硬化性組成物中の溶剤の移行による、アスファルト系防水層への汚染を抑制するため、溶剤の使用量を低減する事が必要となる。その為、溶剤の配合量は、(A)成分の有機重合体100重量部に対して、5重量部以下であることが必須であり、3重量部以下であることが好ましく、1重量部以下であることがより好ましく、溶剤を含まないことが更に好ましい。
【0150】
<粘着性付与剤>
本発明の組成物には粘着性付与剤を添加することができる。粘着性付与樹脂としては、特に限定されないが、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものを使用することができる。具体例としては、スチレン系ブロック共重合体、その水素添加物、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂(例えば、カシューオイル変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂等)、テルペンフェノール樹脂、キシレン−フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、DCPD樹脂石油樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレ−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)等が挙げられる。上記粘着性付与樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0151】
粘着性付与樹脂は有機重合体(A)100重量部に対して、5〜1,000重量部、好ましくは10〜100重量部の範囲で使用される。
【0152】
<レベリング剤>
本発明の組成物にはレベリング剤を添加することができる。レベリング剤としては市販されているものを使用することができる。市販品としては、例えば、BYKETOL−OK、BYKETOL−SPECIAL、BYKETOL−AQ、BYKETOL−WS(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON 1970、DISPARLON 230、DISPARLON LF−1980、DISPARLON LF−1982、DISPARLON LF−1983、DISPARLON LF−1984、DISPARLON LF−1985(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0153】
<シラノール含有化合物>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物を添加しても良い。この化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特開平5−117521号公報に記載されている化合物をあげることができる。また、ヘキサノール、オクタノール、デカノールなどのアルキルアルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物、特開平11−241029号公報に記載されているトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトールなどの水酸基数が3以上の多価アルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物をあげることができる。
【0154】
また、特開平7−258534号公報に記載されているようなオキシプロピレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物もあげることができる。さらに特開平6−279693号公報に記載されている架橋可能な加水分解性ケイ素含有基と加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基を有する重合体を使用することもできる。
【0155】
加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の範囲で使用される。
【0156】
<チクソ性付与剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて垂れを防止し、作業性を良くするためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加しても良い。垂れ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。また、特開平11−349916号公報に記載されているような粒子径10〜500μmのゴム粉末や、特開2003−155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な組成物が得られる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。チクソ性付与剤は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲で使用される。
【0157】
本発明の組成物においては1分子中にエポキシ基を含有する化合物を使用できる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物及びそれらの混合物等が例示できる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビス(2−エチルヘキシル)−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカーボキシレート(E−PS)、エポキシオクチルステアレ−ト、エポキシブチルステアレ−ト等があげられる。これらのなかではE−PSが特に好ましい。エポキシ化合物は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.5〜50重量部の範囲で使用するのがよい。
【0158】
<光硬化性物質>
本発明の組成物には光硬化性物質を使用できる。光硬化性物資を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや耐候性を改善できる。光硬化性物質とは、光の作用によってかなり短時間に分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物等多くのものが知られており、市販の任意のものを採用し得る。代表的なものとしては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が使用できる。不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系又はメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー或いはそれ等の混合物であって、プロピレン(又はブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の単量体又は分子量10,000以下のオリゴエステルが例示される。具体的には、例えば特殊アクリレート(2官能)のアロニックスM−210,アロニックスM−215,アロニックスM−220,アロニックスM−233,アロニックスM−240,アロニックスM−245;(3官能)のアロニックスM−305,アロニックスM−309,アロニックスM−310,アロニックスM−315,アロニックスM−320,アロニックスM−325,及び(多官能)のアロニックスM−400などが例示できるが、特にアクリル官能基を含有する化合物が好ましく、また1分子中に平均して3個以上の同官能基を含有する化合物が好ましい。(以上アロニックスはいずれも東亜合成化学工業株式会社の製品である。)。
【0159】
ポリケイ皮酸ビニル類としては、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂でありポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル誘導体が例示される。アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はジアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液の他、「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、第93頁〜、第106頁〜、第117頁〜)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類などの促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。光硬化性物質は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の範囲で使用するのがよく、0.1重量部以下では耐候性を高める効果はなく、20重量部以上では硬化物が硬くなりすぎて、ヒビ割れを生じる傾向がある。
【0160】
<酸素硬化性物質>
本発明の組成物には酸素硬化性物質を使用することができる。酸素硬化性物質には空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示でき、空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成し表面のべたつきや硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止するなどの作用をする。酸素硬化性物質の具体例には、キリ油、アマニ油などで代表される乾性油や、該化合物を変性してえられる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどのジエン系化合物を重合または共重合させてえられる1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5〜C8ジエンの重合体などの液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させてえられるNBR、SBRなどの液状共重合体や、さらにはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうちではキリ油や液状ジエン系重合体がとくに好ましい。又、酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果が高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩や、アミン化合物等が例示される。酸素硬化性物質の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。前記使用量が0.1重量部未満になると汚染性の改善が充分でなくなり、20重量部をこえると硬化物の引張り特性などが損なわれる傾向が生ずる。特開平3−160053号公報に記載されているように酸素硬化性物質は光硬化性物質と併用して使用するのがよい。
【0161】
<酸化防止剤>
本発明の組成物には酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できるが、特にヒンダードフェノール系が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARK LA−57,MARK LA−62,MARK LA−67,MARK LA−63,MARK LA−68(以上いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS−770,サノールLS−765,サノールLS−292,サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上いずれも三共株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。
【0162】
<光安定剤>
本発明の組成物には光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。光安定剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも記載されている。
【0163】
本発明の組成物に光硬化性物質を併用する場合、特に不飽和アクリル系化合物を用いる場合、特開平5−70531号公報に記載されているようにヒンダードアミン系光安定剤として3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが組成物の保存安定性改良のために好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としてはチヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB119FL(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARK LA−57,LA−62,LA−67,LA−63(以上いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS−765,LS−292,LS−2626,LS−1114,LS−744(以上いずれも三共株式会社製)などの光安定剤が例示できる。
【0164】
<紫外線吸収剤>
本発明の組成物には紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。フェノール系やヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用して使用するのが好ましい。
【0165】
<アスファルト>
本発明の硬化性組成物にはアスファルトを添加することができる。アスファルトとしては、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、防水工事用アスファルト、改質アスファルト、溶剤脱瀝アスファルトなどが挙げられる。特に、針入度が40から250のストレートアスファルト、針入度が10から40のブローンアスファルト、針入度が20から50の防水工事用アスファルト、針入度が30から60の改質アスファルトなどが使用されるが、好適には、針入度が80〜250のストレートアスファルトが使用できる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用される。例えばJIS K 2207に規定されるストレートアスファルトを使用することが出来るが、中でも針入度が高い150−200の使用が好ましく、180−200の使用がさらに好ましい。
【0166】
針入度が小さいものは、(A)成分の有機重合体への分散性が悪く、分散性を改善するためにより多くの可塑剤、あるいは分散安定剤を必要とし、硬化塗膜の物性を低下させ、また被着体への接着界面にブリード物を発生させる。
【0167】
アスファルトの使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して10〜200重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは20〜100重量部である。10重量部より少ないとアスファルト添加による耐水性が得られないことがある。また200重量部を上回ると粘度が著しく上昇し、かつアスファルトが凝集しやすくなり製品として安定しない。
【0168】
<水性分散体>
本発明の硬化性組成物には水性分散体を添加することができる。水性分散体の添加により接着改善効果をもたらす。例としては、0.001〜5μm程度の油脂または合成樹脂を強制的に分散させたサスペンジョン、強制乳化により得られた熱可塑性樹脂例えばスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体などが挙げられるが、乳化重合または乳化分散工程により得られた合成樹脂エマルジョンからなる粒子が安定性、経済性の上で有利である。
【0169】
合成樹脂エマルジョンから成る粒子としては、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体エマルジョン、スチレンブタジエン共重合体エマルジョン、アクリロニトリルブタジエン共重合体エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、ポリクロロプレンエマルジョン、ビニルピリジン共重合体エマルジョン、ポリイソプレンエマルジョン、ポリブタジエンエマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、塩化ビニリデン系エマルジョン、ワックスエマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系エマルジョンなどから得られる樹脂粒子が挙げられるが、好ましくはスチレンブタジエン共重合体エマルジョンである。これらは単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0170】
前記スチレンブタジエン共重合体エマルジョンは、必要に応じて以下の単量体を共重合することができる。すなわち、共重合可能な単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、シアン化ビニル系単量体などが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、その総和がスチレンブタジエン共重合成分に対し30%を上回らない範囲で使用することができる。
【0171】
乳化剤としては、例えば脂肪酸石鹸、ロジン酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性乳化剤を用いることができる。必要に応じて、前記アニオン性乳化剤にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル及びポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性乳化剤などの公知のものを使用することができる。また、親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性二重結合を導入した反応性界面活性剤も使用でき、更に、ベタイン型などの両性乳化剤及びポリビニルアルコールなどの水溶性高分子の保護コロイド乳化剤なども必要に応じて用いることができる。
【0172】
スチレンブタジエン共重合体エマルジョンは、ガラス転移点が10〜−50℃の範囲であるものが好ましく、特に−10〜−50℃であるものがより好ましい。ガラス転移点が10℃を超えると20℃以上の気温では接着付与効果が発現しづらく、−50℃を下回ると製造工程時に均一に分散しないことがある。
【0173】
水性分散体の配合量としては、有機重合体(A)100重量部に対し、5〜30重量部が好ましい。5重量部を下回ると接着改善効果が得られず、30重量部を上回ると、粘度が著しく上昇し、かつエマルジョンが凝集しやすくなり製品として安定しない。
【0174】
水性分散体を配合する場合、有機重合体(A)と水性分散体とを均一混合し、水性分散体に含有される水分を加熱脱水することによって有機重合体(A)中に水性分散体を微細に分散させることができる。
【0175】
<その他各種添加剤>
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防蟻剤、防かび剤などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本明細書にあげた添加物の具体例以外の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開2001−72854号の各公報などに記載されている。
【0176】
<硬化性組成物中の揮発成分>
本発明の硬化性組成物には、95重量%以上の固形分と5重量%以下の揮発成分を含有することが好適である。揮発成分を5重量%超えて含有すると、硬化性組成物が硬化した後に残留する揮発成分のアスファルトルーフィング層への移行による膨れや密着不良、また、トップコートへの揮発成分の移行によるトップコートの軟化、変色や埃付着の原因となる恐れがある、また、揮発成分による健康障害の危険性がある。
【0177】
本発明の硬化性組成物を用いて防水施工を実施するにあったっては、火炎を用いる必要がなく、常温で作業することが可能であるが、この硬化性組成物には引火点が100℃以下の揮発成分を含まないようにすることにより、引火および火災の危険性を確実に回避することができる。
【0178】
<硬化性組成物の調整方法>
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。作業性の点からは、1成分型が好ましい。硬化性組成物を硬化してなる塗膜の強度の発現速度の点からは、2成分型が好ましい。
【0179】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。前記硬化性組成物が2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体を含有する主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合剤中には若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、生石灰、酸化マグネシウムなどを使用した脱水法が好適である。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。また、3−エチル−2−メチル−2−(3−メチルブチル)−1,3−オキサゾリジンなどのオキサゾリジン化合物を配合して水と反応させて脱水してもよい。かかる脱水乾燥法に加えてメタノール、エタノールなどの低級アルコール;n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。
【0180】
脱水剤、特にビニルトリメトキシシランなどの水と反応し得るケイ素化合物の使用量は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0181】
本発明の硬化性組成物の調製法には特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、ミキサーやロールやニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が採用されうる。
【0182】
2成分型とする場合、有機重合体(A)、シラノール縮合触媒(B)、シランカップリング剤(C)、および、エポキシ樹脂用硬化剤(E)を含有する脱水されたA剤と、エポキシ樹脂(D)、および、水(F)を含有するB剤とからなる2液型硬化性組成物とすることが好ましい。この場合、A剤の脱水方法は、前述の1成分型の脱水方法と同様な方法で脱水することができる。
【0183】
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状弾性を有する固体へと硬化する。
<硬化塗膜の厚み>
本発明の硬化性組成物を硬化して得られる塗膜の厚みは、0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.2〜2.5mmであることがより好ましく、0.3〜2.0mmであることが更に好ましく、0.4〜1.5mmであることが特に好ましい。塗膜の厚みがこの範囲を下回ると、塗膜の長期耐久性、防水性、引き裂き抵抗性等の塗膜物性が低下する傾向がある。塗膜の厚みがこの範囲を上回ると、高コストになる傾向がある。
【0184】
<塗布方法>
本発明の硬化性組成物の塗付方法としては特に限定は無いが、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアレススプレーなどの公知の塗布方法により行うことができる。
【実施例】
【0185】
以下に、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0186】
下記合成例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、合成例1の(メタ)アクリル酸エステル系重合体の場合は、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804;昭和電工製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。合成例2〜3のポリオキシアルキレン系重合体の場合は、送液システムとして東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK−GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定した。
【0187】
(合成例1)
窒素雰囲気下、250L反応機に、CuBr(1.03kg)、アセトニトリル(11.6kg)、アクリル酸n−ブチル(16.3kg)、アクリル酸エチル(4.76kg)、アクリル酸ステアリル(4.94kg)及び2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(2.13kg)を加え、70〜80℃で30分程度撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミンを加え、反応を開始した。反応開始30分後から2時間かけて、アクリル酸n−ブチル(65.2kg)、アクリル酸エチル(19.0kg)、アクリル酸ステアリル(19.8kg)の混合液を連続的に追加した。反応途中、ペンタメチルジエチレントリアミンを適宜添加し、内温70℃〜90℃となるようにした。ここまでで使用したペンタメチルジエチレントリアミン総量は208gであった。反応開始から4時間後、80℃で減圧下、加熱攪拌することにより揮発分を除去した。これにアセトニトリル(46.8kg)、1,7−オクタジエン(26.0kg)、ペンタメチルジエチレントリアミン(416g)を添加して、8時間撹拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
【0188】
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、ろ過助剤として珪藻土を加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温100℃で加熱攪拌した。混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を内温100℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。さらにこの濃縮物に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイト、熱劣化防止剤を加え、減圧下、加熱攪拌した(平均温度約175℃、減圧度10Torr以下)。さらに吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを追加し、酸化防止剤を加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温150℃で加熱攪拌した。
【0189】
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を減圧下で加熱攪拌して揮発分を除去し、アルケニル基を有する重合体を得た。
【0190】
このアルケニル基を有する重合体100kgに対し、ジメトキシメチルシラン(2.6kg)、オルトギ酸メチル(0.8kg)、白金含量3wt%の白金ビニルシロキサン錯体イソプロパノール溶液200ppmを混合し、窒素雰囲気下100℃で加熱攪拌した。アルケニル基が消失したことをH−NMRによって確認し、反応混合物を濃縮して、末端にジメトキシシリル基を有するアクリル酸エステル系重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)の数平均分子量は約26000、分子量分布は1.3であった。重合体1分子当たりに導入された平均のシリル基の数をH−NMR分析により求めたところ、約1.7個であった。
【0191】
(合成例2)
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約14,500のポリプロピレンオキシドを得た。続いて、この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。以上により、末端がアリル基である数平均分子量約14,500のポリプロピレンオキシドを得た。
【0192】
得られた未精製のアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去し、精製されたアリル基末端ポリプロピレンオキシド(これを重合体Pとする)を得た。重合体P100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.8重量部と90℃で5時間反応させ、メチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキシド(A−2)を得た。H−NMR(日本電子製JNM−LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)による測定により、末端のメチルジメトキシシリル基は1分子あたり平均して約1.5個であった。
【0193】
(合成例3)
重合体P100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、トリメトキシシラン2.1重量部と90℃で5時間反応させ、末端に平均1.5個のトリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(A−3)を得た。
(実験例1〜12)
表1に示す処方にしたがって、合成例1〜3で得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体(A−1〜A−3)、可塑剤、溶剤、エポキシ樹脂用硬化剤、シランカップリング剤、脱水剤、シラノール縮合触媒をそれぞれ計量し、脱水条件下にて実質的に水分の存在しない状態で混練した後、防湿性の容器に密閉し、2液型組成物のA剤を得た。次に、表1に示す処方にしたがって、エポキシ樹脂、充填材、水、各種安定剤、シラノール縮合触媒、分散剤および消泡剤をそれぞれ計量し、ミキサーを用いて、よく混練した後、容器に密閉し、2液型組成物のB剤を得た。表1の2液型組成物は、使用時にA剤とB剤の各容器から所定量取り出し、後述の評価を行った。なお、実験例12では、市販の2液型ウレタン系塗膜防水剤の主剤と硬化剤を50/100の重量比で混合し、同様の評価を行った。
【0194】
各種配合剤は、以下に示すものを使用した。
<可塑剤>PPG3000(分子量3000のジオール型ポリプロピレングリコール)、DIDP(ジイソデシルフタレート)
<溶剤>IPソルベント2835(出光興産製、イソパラフィン系溶剤)
<エポキシ樹脂用硬化剤>アンカミンK−54(エアープロダクツ製、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)
<シランカップリング剤>A−1120(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)
<脱水剤>A-171(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、ビニルトリメトキシシラン)
<シラノール縮合触媒>MSCAT−02(日本化学産業製、ジブチル錫オキサイドとDOPの混合物)、ネオスタンU-220H(日東化成製、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート)、ネオスタンU-810(日東化成製、ジオクチル錫ジラウレート)
<エポキシ樹脂>エポライト4000(共栄社化学製、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、エポライトM1230(共栄社化学製、C12C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)
<充填材>タイペークR−820(石原産業製、酸化チタン)、M−300(丸尾カルシウム製、湿式重質炭酸カルシウム)、旭#70(旭カーボン製、カーボンブラック)
<紫外線吸収剤>チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
<光安定剤>チヌビン770(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、チヌビン123(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
<酸化防止剤>イルガノックス245(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ナウガード445(Crompton製、アミン系酸化防止剤)
<分散剤>BYK−9076(ビックケミー製、高分子共重合体のアルキルアンモニウム塩)、ディスパロン DA−375(楠本化成製、ポリエーテル燐酸エステル)
<消泡剤>ディスパロン PA-420(楠本化成製、ビニル系消泡剤)。
【0195】
(耐候性試験)表1の2液型硬化性組成物のA剤とB剤をよく混合し、23℃×3日+50℃×4日養生して厚さ約3mmの硬化塗膜を作成した。これらの硬化塗膜に、市販のアクリルウレタンエマルション系保護仕上塗料(水系2成分タイプ)を0.2kg/mの割合で塗布した場合(トップコート塗布仕様)と、塗布しない場合(トップコートレス仕様)に分けて以下のキセノン耐候性試験を行った。アトラス社のキセノンウェザーメーターを使用し、照射エネルギー60W/m、ブラックパネル温度=63℃、水スプレー条件120試験時間中18分で、硬化塗膜に照射した。光照射エネルギーが1000MJに達するまで照射した後取り出し、硬化塗膜の表面を目視で観察し、クラックの有無を確認した。クラックが無い場合○とし、クラックが存在した場合×とした。評価結果を表1に示す。
【0196】
(硬化塗膜の引張物性、および、耐熱性)
表1の2液型硬化性組成物のA剤とB剤をよく混合し、23℃×3日+50℃×4日養生して厚さ約3mmの硬化塗膜を作成した。この硬化塗膜を3号ダンベル型に打ち抜いて、引っ張り速度200mm/分で引張試験を行い、破断時強度(MPa)、を測定した。また、この硬化塗膜を90℃で14日間オーブン中で放置した後の3号ダンベルの引張試験を行った。耐熱試験後の破断時強度と耐熱試験前の破断時強度との比から、強度保持率を算出した。強度保持率が70%以上の場合○とし、70%未満の場合×とした。結果を表1に示す。
【0197】
(アスファルトへの密着試験)
表1の2液型硬化性組成物のA剤とB剤をよく混合し、市販の砂つきアスファルトシートに2.0kg/mの割合で塗布し、砂つきアスファルトシートに厚さ約2mmの硬化塗膜を積層した。23℃×1日+60℃×4日養生した後、アスファルトシートと硬化塗膜との密着性を評価した。よく密着している場合○とし、アスファルトシートが軟化して容易に硬化塗膜がアスファルトシートから剥がれる場合×とした。アスファルトシートが軟化しているが、ある程度の剥離強度を示した場合△とした。結果を表1に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
表1の耐候試験結果から、本発明の(A1)成分である反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有する実験例1〜3、5、6、8〜11の各組成物はトップコートを塗布しなくても良好な耐候性を示すことがわかる。
【0200】
表1の硬化塗膜の引張試験結果より、本発明の(A)成分と(D)成分を含有する実験例1〜7の各組成物は、非常に高い強度を示すことがわかる。
【0201】
表1の耐熱性試験結果より、本発明の(A)成分を含有する実験例1〜11の各組成物は、市販のウレタン系塗膜防水剤よりも高い耐熱性を示すことがわかる。
【0202】
表1のアスファルトへの密着性試験結果より、本発明の(A)成分を含有し、溶剤を含有しない実験例1〜10の各組成物は、アスファルトとの優れた密着性を示すことがわかる。
【0203】
(実施例1)
新築コンクリート、既存保護コンクリート、または、既存合成高分子防水層を下地とし、本発明の第一の防水工法(1)を適用した。最初に、各下地に適した市販のプライマーを0.2kg/mの割合で塗布した。プライマーが乾燥した後、表1の実験例7の2液型硬化性組成物を、1.0kg/mの割合で塗布し、第1層目の硬化塗膜を得た。次に、市販の補強材あるいは通気緩衝シートを敷いた後、表1の実験例6の2液型硬化性組成物を、1.0kg/mの割合で塗布し、第2層目の硬化塗膜を得た。形成された防水積層構造は、水密性が高く、優れた防水性能を示した。また、トップコートレスであるにもかかわらず、最外層の硬化塗膜の耐候性が優れていた。さらに、工程数は少なく、施工費が低く、施工期間が短い防水工法であった。なお、通気緩衝シートを用いた工法においては、プライマーと第1層目の硬化塗膜の代わりに、市販の接着剤を用いても同様に良好な結果を得た。
【0204】
(実施例2)
新築コンクリート、既存保護コンクリート、または、既存合成高分子防水層を下地とし、本発明の第二の防水工法(2)を適用した。最初に、各下地に適した市販のプライマーを0.2kg/mの割合で塗布した。プライマーが乾燥した後、表1の実験例7の2液型硬化性組成物を、1.5kg/mの割合で塗布し、硬化塗膜を得た。次に、この硬化塗膜に市販のアクリルウレタンエマルション系保護仕上塗料(水系2成分タイプ)を0.2kg/mの割合で塗布した。形成された防水積層構造は、水密性が高く、優れた防水性能を示した。また、トップコートにより、外観に優れ、耐候性が優れていた。さらに、工程数は少なく、施工費が低く、施工期間が短い防水工法であった。
【0205】
(実施例3)
新築コンクリート、または、既存保護コンクリートを下地とし、本発明の第三の防水工法(3)を適用した。コンクリート下地に市販のプライマーを塗布することなく、表1の実験例7の2液型硬化性組成物を、1.0kg/mの割合で塗布し、第1層目の硬化塗膜を得た。次に、市販の補強材あるいは通気緩衝シートを敷いた後、表1の実験例5の2液型硬化性組成物を、1.0kg/mの割合で塗布し、第2層目の硬化塗膜を得た。形成された防水積層構造は、水密性が高く、優れた防水性能を示した。また、プライマーレスであるにもかかわらず、下地との接着性が優れていた。さらに、工程数は少なく、施工費が低く、施工期間が短い防水工法であった。なお、通気緩衝シートを用いた工法においては、第1層目の硬化塗膜の代わりに、市販の接着剤を用いても同様に良好な結果を得た。
【0206】
(実施例4)
新築コンクリート、既存保護コンクリート、既存アスファルト防水層、または、既存合成高分子防水層を下地とし、本発明の第四の防水工法(4)を適用した。最初に、各下地に適した市販のプライマー及び/または接着剤を0.2kg/mの割合で塗布し、市販の厚さ35mmのウレタン系断熱材を張り付けた。この上に、表1の実験例5の2液型硬化性組成物を、1.5kg/mの割合で塗布し、硬化塗膜を得た。形成された防水積層構造は、水密性が高く、優れた防水性能を示した。断熱材の上に塗布しているにもかかわらず、硬化塗膜は耐熱性に優れ、経時での物性変化が少なかった。更に、工程数は少なく、施工費が低く、施工期間が短い防水工法であった。なお、市販の厚さ35mmのウレタン系断熱材をプライマー及び/または接着剤で固定する代わりに、機械固定した場合も同様に良好な結果を得た。
【0207】
(実施例5)
砂付きアスファルトルーフィング仕上げの露出防水層からなる既存防水層上に本発明の第五の防水工法(5)を適用した。まず、既存防水層の表面を清掃し、表1の実験例5の2液型硬化性組成物を、通常の接着剤の塗布に使用するクシ目刷毛やスポンジ刷毛を用いて、既存防水層上に1.5kg/mの割合で塗布し、硬化塗膜を得た。硬化後に得られたこの防水積層構造は、既存アスファルトシートとの密着性が良好で、水密性が高く、優れた防水性能を示した。また、トップコートレスであるにもかかわらず、最外層の硬化塗膜の耐候性が優れていた。さらに、工程数は少なく、施工費が低く、施工期間が短い防水工法であった。
【0208】
(比較例1)
新築コンクリート、既存保護コンクリート、または、既存合成高分子防水層を下地とし、従来のウレタン系塗膜防水工法を適用した。最初に、各下地に適した市販のプライマーを0.2kg/mの割合で塗布した。プライマーが乾燥した後、市販の2液型ウレタン系塗膜防水材を、0.3kg/mの割合で塗布し、第1層目の硬化塗膜を得た。次に、市販の補強材あるいは通気緩衝シートを敷いた後、市販の2液型ウレタン系塗膜防水材を、1.5kg/mの割合で塗布し、第2層目の硬化塗膜を得た。更に、市販の2液型ウレタン系塗膜防水材を、1.7kg/mの割合で塗布し、第3層目の硬化塗膜を得た。最後に、市販のアクリルウレタンエマルション系保護仕上塗料(水系2成分タイプ)を0.2kg/mの割合で塗布した。形成された防水積層構造は、水密性が高く、優れた防水性能を示したが、工程数は多く、施工費が高く、施工期間が長い防水工法であった。