(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(HMTB)、2−オキソ−4−メチルチオ酪酸(KMB)、HMTBイソプロピルエステル(HMBI)、およびそれらの塩から選択されることを特徴とする方法。
請求項1に記載の方法であって、前記スルホニウムを形成するため、前記スルホニウムを加水分解するため、および2,4−ジヒドロキシ酪酸(24DHBA)を環化するための反応の少なくとも2つが同時に起こることを特徴とする方法。
【発明の概要】
【0001】
本発明は、2−ヒドロキシブチロラクトン(2HBL)を、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(同等にHMTBA、HMBA、AT88またはRhodimet AT88と略記)、その酸素類似体、2−オキソ−4−メチルチオ酪酸(KMBと略記)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル、ならびにそれらの誘導体から製造する方法に関する。
【0002】
2HBLは、重要な合成中間体である。2HBLは、既知の方法でリンゴ酸から3工程で(DE19735575A1,AU2004200948A)、またはγ−ブチロラクトンから2工程で(WO2008/022953A1,Bull.Soc.Chim.Fr.1971,1,294−301)工業的に製造してもよい。
【0003】
これらの2つの経路により課せられる問題は、一方では2HBLを単離することが困難であること、そして他方では次に除去しなければならない非常に多い塩を生成することである。第1の合成経路は、高価な試薬、すなわちBH
3およびTFAAを要するという欠点をさらに有する。ボランの使用はより特定すれば、特別安全な条件を必要とする。利用し得る第2の経路は、毒性の試薬、すなわちBr
2およびPBr
3を使用し、この戦略により記載されている効率はあまり高くはない(RR=23〜52%)。全体として、これらの手法は両方とも、工業的規模では、依然として非常に費用がかかり、また非常に生産的であるとはいえない。
【0004】
本発明の著者らは、簡単で安価な効率的な方法のままでありながら、これらの欠点がない2HBLの合成法を開発することを追求した。
【0005】
HMTBAは、必須アミノ酸であるメチオニンの類似体であり、特にヒトにおいて栄養補助食品または薬品として、ならびに動物栄養においてはメチオニンの生物が利用可能な供給源として、相当広範な用途を見出している。この類似体の誘導体、特にそのエステルおよびその塩も、同じ指示で使用され、それらのいくつか、例えばHMBAイソプロピルエステルは、HMBAにまさる性質を有する。HMBAは、工業的規模で完全に確立された方法により、数十万メートルトン/年の量で製造されている。したがって、合成基質としてのその使用には、将来がさらに開かれている。
【0006】
本発明の著者らが、上記の合成方法と比較して、工業的量で適用してよいHMTBAおよびその誘導体から2HBLを合成する方法を苦心して作り上げたのは、この関連においてである。開発された方法は、最大3工程で実施され、その反応条件は変更可能であり、高い変換率により特徴づけられる。
【0007】
それは、容易に単離および精製することができる2HBLをもたらし、塩を過剰に生成しない利点をさらに有する。
【0008】
それ故、この方法は、上記の既知の方法が直面する障害を全て解除することによる、2HBLの工業的合成の真の解決である。
【0009】
したがって、本発明の第1の目的は、化合物から、またはその塩もしくはそのオリゴマーから、2−ヒドロキシブチロラクトン(2HBL)を製造する方法であって、前記化合物は、式(I)
CH
3−S−CH
2CH
2CR1R2R3
(式中、
R1はHを表し、
R2は、OH;OR4およびOCOR4(ここで、R4は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲンおよびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から選択される基を表す);およびOSiRR’R”(ここで、R、R’およびR”は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から互いに独立に選択される)から選択される基を表し、またはR1とR2とは一緒になって=Oを表し、
R3は、COOHまたはCOOR5基(ここで、R5は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、ベンジル基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲン、およびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または2個の置換基により置換されている)から選択される基を表す)を表し、またはR3はシアノ基を表す)
に相当し、
前記方法は、
前記化合物のスルホニウムを得、前記スルホニウムは、式(II)
[CH
3][CH
2CH
2CR1R2CR3][CR6R7R8]S
+X
-
(式中、R1、R2およびR3は、上の定義を有し、R6およびR7は、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲン化物およびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から互いに独立に選択され;R8は、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、および電子吸引性基、特に、酸官能基、エステル官能基、シアノ官能基から選択される官能基を含む電子吸引性基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から選択され、Xは対イオンを表す)
に相当し、
それにより得られたスルホニウムを加水分解し、
2,4−ジヒドロキシ酪酸またはその塩を2−ヒドロキシブチロラクトンに環化する方法である。
【0010】
本発明をさらに詳細に説明する前に、この説明および請求項で使用する用語の定義を以下に示す。
【0011】
定義
式Iの化合物の塩は、カルボキシル基の水素が金属、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属により置き換えられた任意の式Iの化合物を意味する。この金属は、優先的にはNa、Ca、Mn、Mg、Crから選択される。それは単一でも複数でもよい。したがって、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸のカルシウム塩は、nが2〜10で様々である式(HMTBA)
nCaの塩から選択することができる。塩のこの概念は、いうまでもなく、上の定義に入る塩の全ての混合物を包含する。
【0012】
式Iの化合物のオリゴマーは、前記化合物が完全に精製されない状態で使用される場合、前記化合物と共存してもよいので(微量を含んで)、任意のオリゴマーおよび特にダイマーを意味する。
【0013】
2−ヒドロキシブチロラクトン(2HBL)の製造により、単独または混合物としてのいずれかの2HBLの全ての形態、特にその立体異性体およびその互変異性体を包含することが意図される。求められる形態に応じて、当業者は、当初の酸の対応する1または複数の形態を選択するであろう。
【0014】
本発明の範囲内において、
・アルキル基は、直鎖状、環式、脂環式または分枝状の飽和炭化水素の1価のラジカルを意味する。示したように、それは1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル基等がこの定義に入る。
【0015】
・アリール基は、芳香族炭化水素の1価のラジカルを意味する。例としてフェニル、ベンジル、トリル、ナフチル、ビフェニル基がこの定義に入る。
【0016】
・アルコキシ基はO−アルキルラジカルを意味し、その場合アルキルという用語は上の定義を満足させる。
【0017】
・対イオンXは、式(II)のスルホニウムの電気的中性を確保する存在である。
【0018】
この方法は、スルホニウムを得るための工程、スルホニウム24DHBAに加水分解するための工程、および24DHBAを2HBLに環化するための工程を含む。これは下に示すように、これらの工程は使用する試薬に応じて連続的または同時的である。
【0019】
第1の工程は、前記化合物またはその塩の活性化形態を得ることからなり、著者らは、スルホニウム型が、特に後で述べる条件下で、上で示した2HBLの形成をもたらし得ることを思いがけなく見出した。
【0020】
文献FR2150605A1およびDE2161991A1は、2−ヒドロキシ−4−アルキルチオ酪酸および特にHMTBAから、水の存在下、10〜100℃に含まれる温度において、好ましくは過剰のハロゲン化アルキルを前記酸に対して作用させ、次に水を除去した後アルコールを用いてスルホニウムを抽出して単離することにより、スルホニウムを製造することを記載している。本発明によれば、スルホニウムは、このようにして、または化合物(I)もしくはその塩に対する任意の他の適切な、いわゆるアルキル化反応により得てもよい。
【0021】
この第1の工程のために、試薬は、好ましくは式[CR6R7R8]X(式中、R6、R7およびR8は、上で定義した通りであり、XはハロゲンおよびOH、サルフェート、スルホネートおよびホスフェート基から選択される)の作用物質である。Xがハロゲンを表す場合、本発明の方法を工業的規模で適用するために好ましい作用物質は、ヨウ化メチル、ブロモ酢酸および臭化ベンジルから選択される。XがOHを表す場合、作用物質は2〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルコールから選択され、好ましくは酸媒体中、例えば硫酸の存在下で使用する。特に工業的工程に関して有利な作用物質は、tert−ブタノールである。作用物質がアルコール特にtert−ブタノールである場合、有利な反応媒体は酸性の水性アルコール媒体である。
【0022】
他の代替法によれば、スルホニウムは、式[CR6R7R8]
+X
-(式中、[CR6R7R8]
+は対応する2〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルケンから、酸の存在下で形成されたカルボカチオンである)の作用物質の化合物に対する反応により得られる。この酸は、当業者により彼らのカルボカチオンの形成についての一般的知識から選択されるであろう。これは、好ましくは鉱酸、例えば硫酸または塩酸である。
【0023】
優先的には、作用物質は、式[C(CH
3)
2H]
+X
-(式中、XはHSO
4またはClを表す)のものであり、プロペンから、硫酸または塩酸の存在下で、それぞれ形成される。他の有利な代替法によれば、作用物質は、式[C(CH
3)
3]
+X
-(式中、XはHSO
4またはClを表す)のものであり、イソブテンから、硫酸または塩酸の存在下で、それぞれ形成される。
【0024】
スルホニウムの形成をもたらす全ての他の作用物質は、いうまでもなく使用してよい。その上、アルキル化作用物質も許容してよい。
【0025】
本発明の方法にしたがってスルホニウムを加水分解する工程は、全ての適当な条件下で考慮してよい。一例として、それは、その前のアルキル化工程から直ちに反応媒体を単に加熱することにより実施される。pHは好ましくは高すぎず、6程度の値に保つのが有利である。
【0026】
本発明の方法の最後の工程は、24DHBの2HBLへの環化であり、それは、当業者により、例えば、上記の文献AU2004200948AおよびWO2008/022953A1に記載された条件下で達成されてもよい。
【0027】
スルホニウムを形成し、スルホニウムを24DHBAに加水分解して24DHBAを環化するための少なくとも2つの、またはさらには全ての工程が同時であってもよい。30〜150℃、優先的には60〜100℃で様々である温度まで加熱するための条件が十分である。著者らは、ハロゲン化物塩、例えばNaBrを添加することにより、これらの反応の反応性および選択性を増大させることが可能であることを、さらに観察している。
【0028】
前に示したように、それにより形成された2HBLは、反応媒体から容易に精製して単離することができる。以下の例はこのことを例示するが、当業者は、この分野における彼らの一般的知識を頼りにそれらを続行するであろう。したがって、デカンテーション、蒸留等による全ての周知の技法を応用してよい。
【0029】
本発明およびその利点を以下の例に例示する。
【0030】
この後の実験の部において、TTは変換率を意味し、RRは試薬に対する収率、SAAT88はAT88酢酸スルホニウムを意味し、SBAT88はAT88ベンジルスルホニウム、MHACaはAT88のカルシウム塩、SBMHACaはMHACaベンジルスルホニウム、T
DEおよびT
MRは、それぞれジャケットおよび反応媒体の温度、DCMはジクロロメタンを意味する。
【0031】
例1:ブロモ酢酸の反応により得られたスルホニウムを経由する、HMTBA(またはAT88)から2HBLの製造
1.1.24DHBAの製造:
反応スキーム:
【化1】
【0033】
操作条件および結果:
1.1.1.アルキル化
凝縮器、温度計および4傾斜ブレード付き機械的攪拌機を備えた、500mLのジャケット付き反応器に、20℃で、50gのHMTBAおよび200mLの脱イオン水(T
DE=20℃)を続けて導入する。媒体を400rpmで攪拌し(乳状溶液)、次にブロモ酢酸を(45.4g、1.1当量、発熱なし)を5分以内で加えて、50mLの脱イオン水ですすぐ。BrCH
2CO
2H添加後8分で、橙色を帯びた澄んだ媒体(400rpmで攪拌)が得られ、明確な発熱はない(T
MR=20℃、T
DE=20℃、ブロモ酢酸添加後10分)。
【0034】
媒体を攪拌しながら(400rpm)80〜85℃まで加熱する(設定値T
MR=80℃に30分以内に到達、T
DE=95℃)。
【0035】
加熱および攪拌を1時間30分の間80〜85℃で(T
DE=80℃(30分)および次にT
DE=85℃(1時間))継続する。橙色を帯びた澄んだ液体が得られる。
【0036】
1HNMR分析(100μLの粗溶液+500μLのD
2O)のためのサンプリング。
【0037】
停止基準:残留AT88<1mol%(三重線δ=2.4ppm、2H、D
2O)⇒順当な結果。
【0038】
1.1.2.pH6における加水分解
先の粗反応混合物を、攪拌しながら30℃に冷却する(300rpm、設定値T
MR=30℃に20分以内に到達、T
DE=20℃)。pHプローブを同じ反応器に導入する。媒体が30℃になったら、固体NaHCO
3(39g、1.6当量)を小分けして30分以内に加える。強い「遅延」泡立ちがある。添加終了時に25℃で測定されたpH=3.1。橙色を帯びた澄んだ溶液。
【0039】
媒体を90℃に加熱する(設定値T
MR=90℃に30分以内に到達、T
DE=95℃)。400rpmで攪拌する。
【0040】
T
MR=90℃で(加熱開始後30分;測定されたpH=3.0)、8.7%NAHCO
3水溶液の添加により(コンピュータにより制御される注射器ポンプにより)、設定値pH=6でpHの調節を開始する。
【0041】
3時間30分の調節後、添加されたNaHCO
3量は410mLである(pH=6.0)。攪拌を100rpmに落として加熱を終夜継続する(T
DE=95℃、T
MR=90℃)。
【0042】
19時間調節後、媒体のpHは6.1である。
1HNMR分析のために水性相(100μL+500μL D
2O)をサンプリングする。
【0043】
停止基準:SAAT88の特性シグナル(一重線δ=2.81ppmおよびδ=3.33ppmにおける多重線、D
2O)の消失⇒順当な結果(SAAT88検出されず)
軽く攪拌して1時間30分以内に25℃に戻す。
【0045】
結果:
・TT
AT88>99%(工程1、
1HNMRにより推定)
・RR
24DHB=95%(
1HNMRにより分析)
・RR
MTANa=95%(
1HNMRにより分析)
・残留AT88:<2mol%(
1HNMRにより推定)
1.2 24DHBからの2HBLの合成および単離
反応スキーム:
【化2】
【0047】
操作条件および結果:
a)酸性化
250mLの三口フラスコに、マグネチックスターラーを入れてpH電極を取り付け、24DHB水溶液74.8gを導入し、次に37%HCl水溶液をpH=0.5になるまで滴下添加する(6mL添加)。澄んだ橙色を帯びた溶液になる。
【0048】
b)濃縮およびCH
3CNによるストリッピング
先に調製した酸性化溶液を、250mLフラスコ中に導入して減圧下で濃縮する(20ミリバール、60℃)。粗濃縮物(油状物+固体)を100mLのアセトニトリルに取り込ませ、得られた懸濁液を次に濃縮する(60℃、20ミリバール)。この操作をもう一度繰り返して、次に100mLのアセトニトリルを加え、得られた懸濁液を空孔率No.3のフリットで濾過する。塩および不溶物を2×10mLのアセトニトリルですすぎ、次に濾液を濃縮する(17ミリバール、60℃)。6.6gの淡黄橙色を帯びた油状物が得られる。
【0049】
c)Na
2SO
4による乾燥
100mLのSchottチューブにマグネチックスターラーを入れて、1.0gの先に得られた粗油状物を40mLのジクロロメタンにより溶解し(曇った乳状溶液および僅かなゴム状残渣の存在)、次に2gのNa
2SO
4を攪拌しながら添加する。攪拌を30分間続けた後、空孔率No.3のフリットで濾過して(澄んだ濾液)、塩を40mLのDCMですすぐ。濾液を減圧下で濃縮する(19ミリバール、35℃)。
【0050】
0.75gの淡黄色油状物が得られる。
1HNMR分析(CDCl
3)
結果(
1HNMRにより分析):
・RR
2HBL=82%;2HBL力価=47%(24DHBから)
・RR
MTA=81%;MTA力価=48%(MTANaから)
例2:HMTBA(またはAT88)から臭化ベンジルの反応により得られたスルホニウムを経由する2HBLの製造
2.1.24DHBAの製造:
反応スキーム:
【化3】
【0052】
操作条件および結果:
1)アルキル化
凝縮器、温度計および4ブレード機械的攪拌機を備えた250mLジャケット付き反応器に、25℃で60gのAT88および60mLの脱イオン水(T
DE=25℃)を続けて導入する。媒体を500rpmで攪拌し(ベージュのエマルション)、次に臭化ベンジル(46mL、1.1当量)を3分以内で加える。十分乳化した媒体(淡褐色乳状媒体)を得るために、二相性媒体を1,000rpmで攪拌する。BNBrの添加は発熱的である(BnBR添加後6分:T
MR=36℃、T
DE=25℃)。
【0053】
媒体を攪拌しながら(1,000rpm)62℃まで加熱する(設定値T
MR=62℃に30分以内に到達、T
DE=65℃)。
【0054】
加熱および攪拌を1時間30分の間、62℃(T
DE=65℃)で続ける。橙色を帯びた澄んだ溶液が得られる。
【0055】
1HNMR分析(50μLの粗溶液+500μLのD
2O)のためのサンプリング。
【0056】
停止基準:AT88の特性シグナル(三重線δ=2.4ppm、D
2O)の消失⇒順当な結果(AT88検出されず)。
【0057】
2) pH6における加水分解
pHプローブを同じ反応器に導入する。媒体を90℃に加熱する(設定値T
MR=91℃に30分以内に到達、T
DE=100℃および次に93℃)。700rpmで攪拌する。
【0058】
T
MR=85℃で(加熱開始後24分;測定したpH=−0.6)、調節開始の前にAT88の形成を調べるために、媒体のサンプリングを
1HNMR分析のために実施し(50μL+500μL D
2O)、⇒AT88の存在を確認した(特性シグナル:三重線δ=2.4ppmおよび一重線δ=1.87ppm)。
【0059】
pH調節は、サンプリング後に設定値pH=6で30%ソーダを加えることにより(コンピュータにより制御された注射器ポンプにより)開始する。pH=3.5で、反応媒体は濁って乳状になる(3分の調節)。7分の調節後(pH=6.0、設定値に到達)、浮遊する橙色を帯びた油状物が形成される。1時間の調節後には、油性上清が多く存在する。400rpmで攪拌する。
【0060】
5時間調節後、添加するソーダの量がほとんど変化しなくなる(pH=6.13)。攪拌を100rpmに落として加熱を終夜継続する(T
DE=93℃、T
MR=90℃)。
【0061】
19時間調節後、媒体のpHは6.04である。
1HNMR分析のための水性相(50μL+500μL D
2O)および浮遊油状物(30mg+600μL CDCl
3)のサンプリング。
【0062】
停止基準:SBAT88の特性シグナル(一重線δ=2.58ppm、D
2O)の消失⇒順当な結果(SBAT88検出されず)。
【0063】
軽く攪拌しながら3時間以内に25℃に戻す。両相を簡単なデカンテーションおよび抜き出しにより分離する。
【0064】
142gの褐色油状物および245gの水性粗媒体が得られる。
【0065】
結果:
・TT
AT88=100%(工程1、
1HNMRにより推定)
・RR
24DHB=83%(
1HNMRにより分析)
・RR
AT88=8%(
1HNMRにより分析)
2.2.24DHBから2HBLの合成および単離
反応スキーム:
【化4】
【0067】
操作条件および結果:
a)AcOETによる洗浄
100mlのSchottチューブに、加水分解からの反応粗媒体の簡単なデカンテーションにより単離した50gの粗水性相、次に続いて15mLの酢酸エチルを導入する。
【0068】
強力に攪拌してデカンテーションする。有機相を除去する。水性相のAcOEtによる洗浄を2回繰り返す。
【0069】
49.1gの水性粗媒体が澄んだ橙色を帯びた溶液として得られる。
1HNMR分析(100μL+500μL D
2O)。
【0070】
停止基準:ベンジル残留物<1mol%ベンジルの特性シグナル(バルク、δ=7.3ppm、D
2O)を24DHB(特性シグナル δ=3.62ppm)のシグナルと比較して評価する。⇒順当な結果(ベンジル残留物<1mol%)。
【0071】
b)酸性化
100mLの三口フラスコに、マグネチックスターラーを入れてpH電極を取り付け、49gの先の水溶液を導入し、次に37%HCl水溶液をpH=−0.5になるまで滴下添加する(6mL添加)。澄んだ橙色を帯びた溶液になる。
【0072】
c)濃縮およびCH
3CNストリッピング
12.3gの酸性化した溶液を100mLのフラスコに導入して、減圧下で(20ミリバール、65℃)濃縮する。濃縮した粗生成物(油状物+固体)を50mLのアセトニトリルに取り込ませ、得られた懸濁液を次に濃縮する(65℃、20ミリバール)。この操作を3回繰り返し、次に50mLのアセトニトリルを加えて、得られた懸濁液を空孔率No.3のフリットで濾過し、塩および不溶物を2×5mLのアセトニトリルですすぎ、次に濾液を濃縮する(20ミリバール、65℃)。1.73gの淡黄橙色を帯びた油状物が得られる。
【0073】
d)Na
2SO
4による乾燥
100mLの三口フラスコに、マグネチックスターラーを入れ、先に得られた1.73gの粗油状物を50mLのジクロロメタンにより溶解し(曇った溶液、オフホワイトのフレークが僅かに生成して澄んでくる)、次に2gのNa
2SO
4を攪拌しながら添加する。攪拌を30分間継続した後、空孔率No.3のフリットで濾過して(僅かに曇った濾液)、塩を2×25mLのDCMですすぐ。濾液を減圧下で(18ミリバール、35℃)濃縮する。
【0074】
1.52gの淡黄色油状物が得られる。
1HNMR分析(CDCl
3)
結果(
1HNMRにより分析):
・RR
2HBL=81%;2HBL力価=80%
・RR
AT88=8%;AT88力価=14%
例3:HMTBAのカルシウム塩からスルホニウムを経由する2HBLの製造
【化5】
【0075】
2HBL(または誘導された開環型)の形成は、アルキル化粗生成物を90℃まで延長して加熱(4時間30分)した後でさえ観察されない。逆に、水および炭酸水素ナトリウムをアルキル化粗生成物に添加した後(必要十分量でpH8)、加熱した効果が、24DHBの有意の形成により示される。試験した条件では、それ故、水の存在は、スルホニウムの置換にとって必要である。
【0076】
例4:2HBLの「1ポット」製造および塩(NaBr)添加の効果
【化6】
【表5】
【0077】
試験Bに使用される条件は以下の成績で再現された(
1HNMR分析、135℃で3時間後):完全なTT
SAAT88、RR
2HBL=33〜39%。
【0078】
例5:HMBAメチルスルホニウムの製造
【化7】
【0079】
操作条件:5mLのミニ反応器;25℃で、AT88(644mg)、D
2O(3mL)、MeI(478μL)の導入および次に40℃に24時間加熱。反応媒体全体の濃縮(18ミリバール、65℃)。
【0080】
結果(
1HNMRにより分析):TTAT88>95%、単離RR(スルホニウム)=89%、(スルホニウム)力価=70%
例6:HMBA tert−ブチルスルホニウムの製造
【化8】
【0081】
操作条件:30mLのSchottチューブ;25℃で、AT88(3.4g)、D
2O(3.2mL)、tBuOH(7.64mL)を導入して、次に10℃に冷却し、温度T<15℃を保つことによって20分間でH
2SO
4(5.2mL、5当量)を添加;酸添加終了後に20℃に戻し、20℃を2時間保つ。
【0082】
結果(
1HNMRにより推定):完全なTTAT88、分析されたRR(スルホニウム)>90%
以下に、本願の種々の実施態様を付記する。
[1]
化合物から、またはその塩もしくはそのオリゴマーから、2−ヒドロキシブチロラクトン(2HBL)を製造する方法であって、前記化合物は、式(I)
CH3−S−CH2CH2CR1R2R3
(式中、
R1はHを表し、
R2は、OH;OR4およびOCOR4(ここで、R4は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲンおよびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から選択される基を表す);およびOSiRR’R”(ここで、R、R’およびR”は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から互いに独立に選択される)から選択される基を表し、またはR1とR2とは一緒になって=Oを表し、
R3は、COOHまたはCOOR5(ここで、R5は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、ベンジル基、およびベンジル基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲンおよびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または2個の置換基により置換されている)から選択される基を表す)を表し、またはR3はシアノ基を表す)
に相当し、
前記方法は、
前記化合物のスルホニウムを得、前記スルホニウムは、式(II)
[CH3][CH2CH2CR1R2CR3][CR6R7R8]S+X-(式中、R1、R2およびR3は、上の定義を有し、R6およびR7は、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲン化物およびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から互いに独立に選択され;R8は、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、および電子吸引性基、特に、酸官能基、エステル官能基、シアノ官能基から選択される官能基を含む電子吸引性基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から選択され、Xは対イオンを表す)
に相当し、
それにより得られたスルホニウムを加水分解し、
2,4−ジヒドロキシ酪酸またはその塩を2−ヒドロキシブチロラクトンに環化する方法。
[2]
[1]に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(HMTB)、2−オキソ−4−メチルチオ酪酸(KMB)、HMTBイソプロピルエステル(HMBI)、それらの塩およびそれらのオリゴマーから選択されることを特徴とする方法。
[3]
[1]または[2]に記載の方法であって、R2がOHを表し、R6およびR7が、HおよびCH3から独立に選択され、R8が、HおよびCH3、フェニルおよびCOOH基から選択されることを特徴とする方法。
[4]
[1]〜[3]のいずれかに記載の方法であって、前記スルホニウムが、式[CR6R7R8]X(式中、XはハロゲンおよびOH、サルフェート、スルホネートおよびホスフェート基から選択される)の作用物質から選択される作用物質の前記化合物に対する反応により得られることを特徴とする方法。
[5]
[4]に記載の方法であって、前記作用物質が、ブロモ酢酸および臭化ベンジルから選択されることを特徴とする方法。
[6]
[4]に記載の方法であって、前記作用物質が、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルコールから選択され、酸媒体中で使用されることを特徴とする方法。
[7]
[4]に記載の方法であって、前記スルホニウムが、式[CR6R7R8]+X-(式中、[CR6R7R8]+は2〜10個の炭素原子を有する対応する直鎖状または分枝したアルケンから酸の存在下で形成されるカルボカチオンである)の作用物質の前記化合物に対する反応により得られることを特徴とする方法。
[8]
[7]に記載の方法であって、前記作用物質が、式[C(CH3)2H]+X-(式中、XはHSO4またはClを表し、それぞれ硫酸または塩酸の存在下でプロペンから形成される)のものであることを特徴とする方法。
[9]
[7]に記載の方法であって、前記作用物質が、式[C(CH3)3]+X-(式中、XはHSO4またはClを表し、それぞれ硫酸または塩酸の存在下でイソブテンから形成される)のものであることを特徴とする方法。
[10]
[1]に記載の方法であって、前記スルホニウムを形成するため、前記スルホニウムを加水分解するため、および2,4−ジヒドロキシ酪酸(24DHBA)を環化するための反応の少なくとも2つが同時に起こることを特徴とする方法。
[11]
[10]に記載の方法であって、反応温度が30〜150℃で変化することを特徴とする方法。
[12]
[10]または[11]に記載の方法であって、ハロゲン化物塩、例えばNaBrが添加されることを特徴とする方法。
[13]
[1]から[12]のいずれかに記載の方法であって、工業的規模で適用されることを特徴とする方法。
[14]
2−ヒドロキシブチロラクトンを製造するための、式(II)
[CH3][CH2CH2CR1R2CR3][CR6R7R8]S+X-に相当するスルホニウムの使用。
(式中、
R1はHを表し、
R2は、OH;OR4およびOCOR4(ここで、R4は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲンおよびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から選択される基を表す);およびOSiRR’R”(ここで、R’およびR”は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から互いに独立に選択される)から選択される基を表し、またはR1とR2とは一緒になって=Oを表し、
R3は、COOHまたはCOOR5基(ここで、R5は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、ベンジル基、およびベンジル基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲンおよびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または2個の置換基により置換されている)から選択される基を表す)を表し、またはR3はシアノ基を表し、
R6およびR7は、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝したアルキル基、ハロゲン化物およびヒドロキシル、アミノ、ニトロおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から互いに独立に選択され;R8は、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環式、脂環式または分枝したアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基(これは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分枝したアルキル基、および電子吸引性基、特に、酸官能基、エステル官能基、シアノ官能基から選択される官能基を含む電子吸引性基から選択される1または複数の置換基により任意に置換されていてもよい)から選択され、Xは対イオンを表す)