(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。本発明のバルブVは、
図1から
図3に示すように、環状であって開口窓1aと内周から当該開口窓1aへ通じる通路1bとを有するディスク1と、環状であってディスク1に積層されて開口窓1aを開閉するリーフバルブ2と、ディスク1の反リーフバルブ側に積層されるシート部材3とを備えて構成されている。そして、バルブVは、流体がディスク1の内周側から通路1bを通過する際に、この流体の流れに通路1bおよびリーフバルブ2で抵抗を与えるようになっている。
【0015】
ディスク1は、
図1から
図3に示すように、円盤状であって、軸方向に貫通する孔で形成される四つの開口窓1aと、内周から外周側へ向けて放射状に形成される複数の孔で形成されてそれぞれが対応する開口窓1aに連通される四つの通路1bとを備えている。そして、このディスク1はシート部材3に積層されていて、開口窓1aと通路1bの
図1中下端がシート部材3によって閉塞されるようになっている。
【0016】
開口窓1aは、図示したところでは、円形とされているが周方向に沿う円弧状とされてもよく、形状は任意であり、通路1bの断面積、すなわち、通路1bの周方向幅にディスク1の厚み(軸方向長さ)を乗じた値よりも、開口窓1aを軸方向から見た面積が大きくなるように設定される。さらに、この場合、ディスク1の内周には、二つの位置決め用の切欠1cが設けられている。
【0017】
なお、通路1bの内周側は軸方向に見て末広がりの形状とされており、内周側から通路1bを通過する流体がスムーズに通路1b内へ導かれるようになっている。
【0018】
また、開口窓1aの設置数と通路1bの設置数は、上記した四つに限られるものではなく、任意に設定することが可能であるが、この場合、開口窓1aと通路1bとがディスク1を軸方向に貫く孔で形成されることから、一つの開口窓1aに対して一つの通路1bが設けられるようになっているが、ディスク1に設ける開口窓1aと通路1bとがディスク1を軸方向に貫通しない溝状とされる場合、つまり、
図4に示すように、この実施の形態におけるディスク1とシート部材3とが一体化されたような形状のディスク1であれば、開口窓1aに複数の通路1bを連通させるようにしてもよい。
【0019】
リーフバルブ2は、環状であって、この場合、必須ではないがバルブVの組立容易性の見地から、その内周径をディスク1の内周径と等しくしてあり、内周にはディスク1に積層した際に、ディスク1の切欠1cと符合する位置に切欠1cと同形状の切欠2aを設けている。つまり、リーフバルブ2は、ディスク1の切欠1cの数と同数の切欠2aを備えている。また、リーフバルブ2の外径は、少なくとも開口窓1aを覆うことができる径に設定されており、リーフバルブ2が撓まずにディスク1に積層する状態では、開口窓1aと通路1bを覆うようになっている。
【0020】
シート部材3は、環状であって、ディスク1が積層される
図1中上端にディスク1の切欠1aおよびリーフバルブ2の切欠2aに嵌合する二つの突起3aが設けられている。突起3aは、ディスク1の切欠1
cおよびリーフバルブ2の切欠2aに嵌合することで、シート部材3に対してディスク1を径方向および周方向に位置決めしている。リーフバルブ2については、突起3aと切欠2aとの嵌合によって、リーフバルブ2を径方向へ位置決めしてディスク1に積層した際にリーフバルブ2が開口窓1aと通路1bとを覆うようにすればよい。このように突起3aでディスク1を位置決めすれば、通路1bを塞ぐことなくディスク1をシート部材3に位置決めすることができる。なお、切欠1a,2aおよび突起3aの形状は任意であり、また、突起3a、切欠1a,2aのそれぞれの設置数は複数であればよい。
【0021】
シート部材3にディスク1およびリーフバルブ2を積層すると、上記したように、ディスク1がシート部材3とリーフバルブ2によって挟持され、ディスク1がシート部材3の端面に当接して開口窓1aと通路1bの
図1中下端がシート部材3によって閉塞され、また、ディスク1の
図1中上面に積層されるリーフバルブ2によって、開口窓1aと通路1bの
図1中上端がリーフバルブ2によって閉塞される。
【0022】
このようにシート部材3にディスク1とリーフバルブ2を組み付けてから、リーフバルブ2の
図1中上面である反ディスク側面に環状の支持部材4を積層する。この支持部材4は、環状の本体部4aと、本体部4aの
図1中の下端外周に設けられてリーフバルブ2の内周側を支持する支持環4bとを備えて構成される。
【0023】
また、支持環4bは、リーフバルブ2の反ディスク側である背面に当接して支持し、その外周縁でリーフバルブ2の外周の
図1中上方側への撓み支点を形成している。支持環4bの内径は、この実施の形態では、突起3aの外周に嵌合可能な径、つまり、突起3aの外周縁を通る仮想円の直径とされ、支持環4bの外径は、ディスク1の各通路1bの終端である開口窓側端が配置される
図3中破線で示す仮想円と同径に設定されており、支持環4bがリーフバルブ2の背面に当接して支持すると、リーフバルブ2の開口窓1aを閉塞する外周側が支持環4bに支持されずに
図1中上方側への撓みが許容されるようになっている。したがって、リーフバルブ2は、外周側のみが撓んで開口窓1aを開閉することができる。
【0024】
支持部材4をリーフバルブ2の
図1中上方に積層すると、支持環4bの内周に突起3aの外周が嵌合し、支持部材4がシート部材3に径方向に位置決めされ、リーフバルブ2の背面の決められた位置を支持することができ、安定した減衰特性を実現できるようになっている。
【0025】
この実施の形態の場合、支持環4bはリーフバルブ2の撓み支点を形成すれば足りるので、リーフバルブ2の内周側の全部を支持していないが、支持環4bでリーフバルブ2の内周側の全部を支持することで、リーフバルブ2の内周側をディスク1へ密着させてリーフバルブ2の内周側の撓みを阻止して、リーフバルブ2の内周側が疲労することを防止してもよく、その場合、支持環4bの内周に突起3aが挿入される切欠溝を設けておくとよい。
【0026】
このようにバルブVを構成すると、ディスク1に設けた通路1bは、ディスク1の内周側の開口のみが開放された状態となっていて、通路1bの
図1中上下端側はリーフバルブ2とシート部材3とで閉塞されて、通路1bは、絞り、つまり、オリフィスとして機能するようになっている。
【0027】
対して、開口窓1aは、リーフバルブ2によって閉塞されているが、ディスク1の内周側から流体が通路1bへ流れ込んで開口窓1a内の圧力が高まると、この圧力によってリーフバルブ2の外周が
図1中上方へ撓み、ディスク1とリーフバルブ2との間に隙間が生じて、開口窓1aは開放される。
【0028】
反対に、リーフバルブ2の背面である反ディスク側(
図1中上方)から流体の圧力が作用してもリーフバルブ2がディスク1へ向けて押しつけられるので、開口窓1aはリーフバルブ2によって閉じられたままとなる。
【0029】
つまり、このバルブVにあっては、ディスク1の内周側からの流体の流れに対してはリーフバルブ2が撓んで開弁し、流体は通路1bおよび開口窓1aを介してディスク1の外周側へ移動することができるが、その反対に、ディスク1の外周側から内周側へ流体が移動しようとしてもリーフバルブ2が開口窓1aを閉塞した状態に維持されて、流体の流れを阻止する一方通行のバルブとなっている。
【0030】
そして、流体がディスク1の内周側から通路1b内に侵入してリーフバルブ2を撓ませて開口窓1aからディスク1の外周側へ流出する際に、流速が低いとオリフィスとして機能する通路1bにおける抵抗は小さく、通路1bによる圧力損失は小さい。この場合、リーフバルブ2が撓んでディスク1との間に形成する隙間は小さく、通路1bが通過する流体の流れに与える抵抗よりもリーフバルブ2とディスク1の間の隙間が通過する流体の流れに与える抵抗の方が大きく、この隙間による圧力損失の方が大きい。そして、このリーフバルブ2とディスク1の間の隙間による圧力損失は、流量に対して比例的な特性となる。他方、流速が高くなると、通路1bはオリフィスであるから通路1bの圧力損失の特性は、流速の二乗に比例し、通路1bにおける圧力損失は、リーフバルブ2とディスク1の間の隙間による圧力損失を追い抜いて大きくなる。
【0031】
よって、バルブVを緩衝器の伸側室と圧側室の間や圧側室とリザーバ室との間に設けるようにすれば、ピストン速度(緩衝器の伸縮速度)が微低速域にある場合では、リーフバルブ2とディスク1の間の隙間による圧力損失が支配的となり、緩衝器の減衰特性は、
図5中の線aに示すようにピストン速度の増加に伴って比例的に増加する特性となり、ピストン速度が微低速域を超えて低速域にある場合には、通路1bによる圧力損失が支配的となって、緩衝器の減衰特性は、
図5中の線bに示すようにピストン速度の増加に伴ってピストン速度の二乗に比例して増加する特性となる。つまり、
図5中破線で示す従来のバルブを利用した緩衝器の減衰特性に比較すると、ピストン速度が微低速時における減衰力を大きくすることができる。
【0032】
よって、このバルブVおよびバルブVを適用した緩衝器によれば、ピストン速度が非常に低い(微低速)場合にも減衰力を充分に発揮することができ、車体の振動を充分に減衰させて搭乗者に不快感を与えることがなく、車両における乗り心地を向上することができる。
【0033】
また、開口窓1aの大きさを変更することでリーフバルブ2の開弁圧を決定することができ、ピストン速度が微低速域にある場合の緩衝器の減衰力の特性を調節することができ、通路1bの断面積を変更することでオリフィスの流路面積を変更することができ、ピストン速度が微低速域を超えて低速域にある場合における緩衝器の減衰特性を調節することができる。したがって、減衰特性を決定づける開口窓1aと通路1bを備えたディスク1をシート部材3と別部品とすることで、ディスク1のみの交換で減衰特性の調節が可能となる。なお、リーフバルブ2の撓み剛性を変更するとピストン速度が微低速域にある場合の緩衝器の減衰力の特性の傾きを調節することができる。上記したところでは、減衰特性の説明を理解しやすくするため、ピストン速度に微低速域、低速域、高速域との区分を設けているが、微低速域と低速域の切換速度はオリフィスとして機能する通路1bとリーフバルブ2の撓み剛性によって任意に設定することができる。
【0034】
上記したところでは、リーフバルブ2の外周が撓んで開口窓1aを開閉する、所謂、外開きのリーフバルブとされているが、
図6に示した他の実施の形態のバルブV1のように、リーフバルブ6のように内周側が撓んでディスク5の開口窓5aを開閉する、所謂、内開きに設定するようにしてもよい。
【0035】
このバルブV1は、
図6から
図8に示すように、環状であって開口窓5aと外周から当該開口窓5aへ通じる通路5bとを有するディスク5と、環状であってディスク5に積層されて開口窓5aを開閉するリーフバルブ6と、ディスク5の反リーフバルブ側に積層されるシート部材7とを備えて構成されている。そして、バルブV1は、流体がディスク5の外周側から通路5bを通過する際に、この流体の流れに通路5bおよびリーフバルブ6で抵抗を与えるようになっている。
【0036】
詳細には、ディスク5は、
図7および
図8に示すように、円盤状であって、軸方向に貫通する孔で形成される四つの開口窓5aと、外周から内周側へ向けて放射状に形成される複数の孔で形成されてそれぞれが対応する開口窓5aに連通される四つの通路5bとを備えている。そして、このディスク5はシート部材7に積層されていて、開口窓5aと通路5bの
図1中下端がシート部材7によって閉塞されるようになっている。
【0037】
開口窓5aは、図示したところでは、円形とされているが周方向に沿う円弧状とされてもよく、形状は任意であり、通路5bの断面積、すなわち、通路5bの周方向幅にディスク5の厚みを乗じた値よりも、開口窓5aを軸方向から見た面積が大きくなるように設定される。
【0038】
なお、通路5bの外周側は軸方向に見て末広がりの形状とされており、外周側から通路5bを通過する流体がスムーズに通路5b内へ導かれるようになっている。
【0039】
また、開口窓5aの設置数と通路5bの設置数は、上記した四つに限られるものではなく、任意に設定することが可能であるが、この場合、開口窓5aと通路5bとがディスク5を軸方向に貫く孔で形成されることから、一つの開口窓5aに対して一つの通路5bが設けられるようになっているが、ディスク5に設ける開口窓5aと通路5bとがディスク5を軸方向に貫通しない溝状とされる場合、つまり、この実施の形態におけるディスク5とシート部材7とが一体化されたような形状のディスク5であれば、開口窓5aに複数の通路5bを連通させるようにしてもよい。
【0040】
リーフバルブ6は、環状であって、この場合、必須ではないがバルブV1の組立容易性の見地から、その内周径をディスク5の内周径と等しくしてあり、外周径については、後述する支持部材8による径方向の位置決めのため、ディスク5の外周径に一致させてある。よって、リーフバルブ6が撓まずにディスク5に積層する状態では、開口窓5aと通路5bを覆うようになっている。
【0041】
シート部材7は、環状であって、ディスク5が積層される
図6中上端の外周に環状切欠7aが設けられており、ディスク5を
図6中上端に積層した状態では、通路5bの始端である外周側端が環状切欠7aに対向して通路5bの始端が開放される。
【0042】
シート部材7にディスク5およびリーフバルブ6を積層すると、上記したように、ディスク5がシート部材7とリーフバルブ6によって挟持され、ディスク5がシート部材7の端面に当接して開口窓5aと通路5bの
図6中下端の殆どがシート部材7によって閉塞され、また、ディスク5の
図6中上面に積層されるリーフバルブ6によって、開口窓5aと通路5bの
図6中上端がリーフバルブ6によって閉塞される。
【0043】
このようにシート部材7にディスク5とリーフバルブ6を組み付けてから、リーフバルブ6の
図6中下面である反ディスク側面に環状の支持部材8を積層する。この支持部材8は、環状の本体部8aと、本体部8aの
図6中の下端外周に設けられてディスク5、リーフバルブ6およびシート部材7の外周に嵌合してこれらディスク5、リーフバルブ6およびシート部材7を径方向に位置決めする位置決め筒8bと、本体部8aの
図6中下端に設けられてリーフバルブ6の外周側を支持する支持環8cと、位置決め筒8bを貫く切欠8dとを備えて構成される。
【0044】
また、支持環8cは、リーフバルブ6の反ディスク側である背面に当接して支持し、その内周縁でリーフバルブ6の内周の
図6中上方側への撓み支点を形成している。支持環8cの内径は、この実施の形態では、ディスク5の各通路1bの終端である開口窓側端が配置される
図8中破線で示す仮想円と同径に設定されており、支持環8cがリーフバルブ6の背面に当接して支持すると、リーフバルブ6の開口窓5aを閉塞する内周側が支持環8cに支持されずに
図6中上方側への撓みが許容されるようになっている。したがって、リーフバルブ6は、内周側のみが撓んで開口窓5aを開閉することができる。なお、位置決め筒8bによって、支持部材8に対してディスク5およびリーフバルブ6が径方向に位置決めされるので、支持環8cでリーフバルブ6の背面の決められた位置を支持でき、安定した減衰特性を実現できるようになっている。
【0045】
この実施の形態の場合、支持環8cはリーフバルブ6の撓み支点を形成すれば足りるので、リーフバルブ6の外周側の全部を支持していないが、支持環8cでリーフバルブ6の外周側の全部を支持することで、リーフバルブ6の外周側をディスク5へ密着させてリーフバルブ6の外周側の撓みを阻止して、リーフバルブ6の内周側が疲労することを防止してもよい。
【0046】
また、本体部8aの内周径は、少なくともリーフバルブ6の内径よりも大きく、リーフバルブ6の内周が
図6中上方へ撓んだ際に、当該リーフバルブ6の内周に干渉しないよう配慮されている。
【0047】
このようにバルブV1を構成すると、ディスク5に設けた通路5bは、ディスク5の内周側の開口のみが開放された状態となっていて、通路5bの
図1中上下端側はリーフバルブ6とシート部材7とで閉塞されて、通路5bは、絞り、つまり、オリフィスとして機能するようになっている。なお、ディスク5は、外周が支持部材8の位置決め筒8bに嵌合しているが、位置決め筒8bにシート部材7の外周に設けた環状切欠7aを介して通路5dに通じる切欠8dが設けられており、ディスク5の外周側から通路5d内への流体の流入が許容されている。このように、環状切欠7aを設けることで通路5dと切欠8dが周方向へ位置ずれしてもこれらが連通されるのであるが、別途の手段で、通路5dと切欠8dとを対向させることができれば、環状切欠7aを廃止してもよい。また、位置決め筒8bを支持部材8にではなく、シート部材7に設けるようにすることも可能である。
【0048】
対して、開口窓5aは、リーフバルブ6によって閉塞されているが、ディスク5の外周側から流体が通路5bへ流れ込んで開口窓5a内の圧力が高まると、この圧力によってリーフバルブ6の内周が
図6中上方へ撓み、ディスク5とリーフバルブ6との間に隙間が生じて、開口窓5aは開放される。
【0049】
反対に、リーフバルブ6の背面である反ディスク側(
図6中上方)から流体の圧力が作用してもリーフバルブ6がディスク5へ向けて押しつけられるので、開口窓5aはリーフバルブ6によって閉じられたままとなる。
【0050】
つまり、このバルブV1にあっては、ディスク5の内周側からの流体の流れに対してはリーフバルブ6が撓んで開弁し、流体は通路5bおよび開口窓5aを介してディスク5の外周側へ移動することができるが、その反対に、ディスク5の内周側から外周側へ流体が移動しようとしてもリーフバルブ6が開口窓5aを閉塞した状態に維持されて、流体の流れを阻止する一方通行のバルブとなっている。
【0051】
そして、流体がディスク5の外周側から通路5b内に侵入してリーフバルブ6を撓ませて開口窓5aからディスク5の内周側へ流出する際に、流速が低いとオリフィスとして機能する通路5bにおける抵抗は小さく、通路5bによる圧力損失は小さい。この場合、リーフバルブ6が撓んでディスク5との間に形成する隙間は小さく、通路5bが通過する流体の流れに与える抵抗よりもリーフバルブ6とディスク5の間の隙間が通過する流体の流れに与える抵抗の方が大きく、この隙間による圧力損失の方が大きい。そして、このリーフバルブ6とディスク5の間の隙間による圧力損失は、流量に対して比例的な特性となる。他方、流速が高くなると、通路5bはオリフィスであるから通路5bの圧力損失の特性は、流速の二乗に比例し、通路5bにおける圧力損失は、リーフバルブ6とディスク5の間の隙間による圧力損失を追い抜いて大きくなる。
【0052】
よって、バルブV1を緩衝器の伸側室と圧側室の間や圧側室とリザーバ室との間に設けるようにすれば、ピストン速度(緩衝器の伸縮速度)が微低速域にある場合では、リーフバルブ6とディスク5の間の隙間による圧力損失が支配的となり、上記したバルブVを利用した緩衝器と同様にバルブV1を利用した緩衝器の減衰特性も
図5中の線aおよび線bに示した特性となる。
【0053】
よって、このバルブV1およびバルブV1を適用した緩衝器によれば、ピストン速度が非常に低い(微低速)場合にも減衰力を充分に発揮することができ、車体の振動を充分に減衰させて搭乗者に不快感を与えることがなく、車両における乗り心地を向上することができる。
【0054】
また、開口窓5aの大きさを変更することでリーフバルブ6の開弁圧を決定することができ、ピストン速度が微低速域にある場合の緩衝器の減衰力の特性を調節することができ、通路5bの断面積を変更することでオリフィスの流路面積を変更することができ、ピストン速度が微低速域を超えて低速域にある場合における緩衝器の減衰特性を調節することができる。したがって、減衰特性を決定づける開口窓5aと通路5bを備えたディスク5をシート部材7と別部品とすることで、ディスク5のみの交換で減衰特性の調節が可能となる。なお、リーフバルブ6の撓み剛性を変更するとピストン速度が微低速域にある場合の緩衝器の減衰力の特性の傾きを調節することができる。
【0055】
つづいて、
図9に示した別の実施の形態のバルブV2を説明する。このバルブV2は、環状の第一シート部材10と、環状であって第一開口窓11aと内周から第一開口窓11aへ通じる第一通路11bとを有して第一シート部材10に積層される第一ディスク11と、環状であって内周が第一シート部材10に径方向に位置決めされるとともに第一ディスク11に積層されて第一開口窓11aを開閉する第一リーフバルブ12と、環状の第二シート部材13と、環状であって第二開口窓14aと外周から第二開口窓14aへ通じる第二通路14bとを有して第二シート部材13に積層される第二ディスク14と、環状であって第二ディスク14に積層されて第二開口窓14aを開閉する第二リーフバルブ15と、環状であって第一リーフバルブ12と第二リーフバルブ15との間に介装されるとともに第一リーフバルブ12を外周撓み可能に支持し、且つ、第二リーフバルブ15を内周撓み可能に支持する支持部材16とを備えて構成されており、そして、バルブV2は、内周側からの流体の流れに対しては、第一通路11bおよび第一リーフバルブ12で抵抗を与え、反対に、外周側からの流体の流れに対しては、第二通路14bおよび第二リーフバルブ15で抵抗を与えるようになっている。
【0056】
この他の実施の形態のバルブV2は、丁度、上記したバルブVを天地逆にしてバルブV1に向い合せ、上記したバルブVの支持部材4とバルブV1の支持部材8を一体化して一つの支持部材16としたような構造を備えている。そして、このバルブV2にあっては、バルブVを構成する部材であるディスク1に第一ディスク11が、リーフバルブ2に第一リーフバルブ12が、シート部材3に第一シート部材10がそれぞれ対応しており、バルブV1を構成する部材であるディスク5に第二ディスク14が、リーフバルブ6に第二リーフバルブ15が、シート部材7に第二シート部材13がそれぞれ対応し、基本的には、バルブV2の上記した各部材は、バルブV,V1の対応する各部材と同様の構成を備えている。以下、各部について詳細に説明するが、上記したようにバルブV2の各部材は、対応する上記バルブV,V1の各部材と同様の構成とされていて説明が重複するため、バルブV2の各部材が対応するバルブV,V1の各部材と異なる部分のみを詳細に説明することとする。
【0057】
第一ディスク11は、
図9に示すように、ディスク1と同様の構造を採用しており、円盤状であって、軸方向に貫通する孔で形成される四つの第一開口窓11aと、内周から外周側へ向けて放射状に形成される複数の孔で形成されてそれぞれが対応する第一開口窓1aに連通される四つの第一通路11bと、内周に設けた二つの位置決め用の切欠(図示せず)とを備えている。そして、この第一ディスク11は第一シート部材10に積層されていて、第一開口窓11aと第一通路11bの
図9中上端が第一シート部材10によって閉塞されるようになっている。
【0058】
第一リーフバルブ12は、環状であって、内周に第一ディスク11に積層した際に、第一ディスク11の切欠と符合する位置に第一ディスク11の切欠と同形状の切欠(図示せず)を設けている。第一リーフバルブ2の外径は、リーフバルブ2と同様に、少なくとも第一開口窓11aを覆うことができる径に設定され、第一リーフバルブ12が撓まずに第一ディスク11に積層する状態では、開口窓11aと通路11bを覆うようになっている。
【0059】
第一シート部材10は、環状であって、第一ディスク11の切欠および第一リーフバルブ12の切欠に嵌合する二つの突起(図示せず)を備え、第一ディスク11および第
一リーフバルブ12をシート部材3同様に位置決めしている。
【0060】
第一シート部材10に第一ディスク11および第一リーフバルブ12を積層すると、第一ディスク11が第一シート部材10と第一リーフバルブ12によって挟持され、第一通路11bがオリフィスとして機能する。
【0061】
第二ディスク14は、ディスク5と同様の構造を採用しており、円盤状であって、軸方向に貫通する孔で形成される四つの第二開口窓14aと、外周から内周側へ向けて放射状に形成される複数の孔で形成されてそれぞれが対応する第二開口窓14aに連通される四つの第二通路14bとを備えている。そして、この第二ディスク14は第二シート部材13に積層されていて、第二開口窓14aと第二通路14bの
図9中下端が第二シート部材13によって閉塞されるようになっている。
【0062】
第二リーフバルブ15は、環状であって、この場合、外周径を後述する支持部材16による径方向の位置決めのため、第二ディスク14の外周径に一致させてある。よって、第二リーフバルブ15が撓まずに第二ディスク14に積層する状態では、第二開口窓14aと第二通路14bを覆うようになっている。
【0063】
第二シート部材13は、環状であって、第二ディスク14が積層される
図9中上端の外周に環状切欠13aが設けられており、第二ディスク14を
図9中上端に積層した状態では、第二通路14bの始端である外周側端が環状切欠13aに対向して第二通路14bの始端が開放される。
【0064】
第二シート部材13に第二ディスク14および第二リーフバルブ15を積層すると、上記したように、第二ディスク14が第二シート部材13と第二リーフバルブ15によって挟持され、第二ディスク14が第二シート部材13の端面に当接して第二開口窓14aと第二通路14bの
図9中下端の殆どが第二シート部材1
3によって閉塞され、また、第二ディスク14の
図9中上面に積層される第二リーフバルブ15によって、第二開口窓14aと第二通路14bの
図9中上端が
第二リーフバルブ
15によって閉塞され、これにより第二通路14bがオリフィスとして機能する。
【0065】
支持部材16は、環状の本体部16aと、本体部16aの
図9中の上端外周に設けられて第一リーフバルブ12の内周側を支持する第一支持環16bと、本体部16aの
図9中の下端外周に設けられて第二ディスク14、第二リーフバルブ15および第二シート部材13の外周に嵌合してこれら第二ディスク14、第二リーフバルブ15および第二シート部材13を径方向に位置決めする位置決め筒16cと、本体部16aの
図9中下端に設けられて第二リーフバルブ15の外周側を支持する第二支持環16dと、位置決め筒16
cを貫く切欠16eとを備えて構成される。
【0066】
第一支持環16bは、第一リーフバルブ12の反ディスク側である背面に当接して支持し、その外周縁で第一リーフバルブ12の外周の
図9中下方側への撓み支点を形成している。支持部材16を第一リーフバルブ12の
図9中下方に積層すると、第一支持環16bの内周に突起10aの外周が嵌合し、支持部材16が第一シート部材10に径方向に位置決めされ、第一リーフバルブ12の背面の決められた位置を支持することができ、安定した減衰特性を実現できる。
【0067】
第二支持環16dは、第二リーフバルブ15の反ディスク側である背面に当接して支持し、その内周縁で第二リーフバルブ15の内周の
図9中上方側への撓み支点を形成している。なお、位置決め筒16cによって、支持部材16に対して第二ディスク14および第二リーフバルブ15が径方向に位置決めされるので、第二支持環16dで第二リーフバルブ15の背面の決められた位置を支持でき、安定した減衰特性を実現できるようになっている。
【0068】
また、本体部16aの内周径は、第一シート部材10の内径、第二シート部
材13の内径よりも大径に設定されていて、支持部材16の内周側であって第一シート部材10と第二シート部
材13との間に空間Mが形成される。そして、本体部16aの内周径は、少なくとも第二リーフバルブ15の内径よりも大きく、第二リーフバルブ15の内周が
図9中上方へ撓んだ際に、当該第二リーフバルブ15の内周に干渉しないよう配慮されている。
【0069】
このようにバルブV2を構成すると、バルブV2の内周から空間M内に流体が流入すると、流体は、第一ディスク11に設けた第一通路11bを通じて、第一リーフバルブ12を押し開いて第一開口窓11aからバルブV2の外周へ流出し、この流体の流れに対して第一通路11bと第一リーフバルブ12で抵抗を与えることができる。このバルブV2の内周から外周へ向かう流体の流れに対しては、第二リーフバルブ15は第二ディスク14に押しつけられるので第二開口窓14aを閉塞して、流体は第二通路14bを通過することはない。
【0070】
反対に、バルブV2の外周から流体が第二通路14bに流入すると、流体は、第二リーフバルブ15を押し開いて第二開口窓14aから空間Mを通ってバルブV2の外周へ流出し、この流体の流れに対して第二通路14bと第二リーフバルブ15で抵抗を与えることができる。このバルブV2の外周から内周へ向かう流体の流れに対しては、第一リーフバルブ12は第一ディスク11に押しつけられるので第一開口窓11aを閉塞して、流体は第一通路11bを通過することはない。
【0071】
よって、このバルブV2にあっては、バルブVとバルブV1を並列して設けた構造となっていて、バルブV,V1と同様の作用効果を奏するだけでなく、流体の双方向通行を許容するので、緩衝器の伸側室と圧側室との間に設けると、伸側室から圧側室へ向かう流体の流れに対してだけでなく、圧側室から伸側室へ向かう流体の流れに対しても抵抗を与えるので、バルブV,V1と同様に、緩衝器の伸長作動時のみならず収縮作動時にも、
図5に示したような減衰特性を発揮する。また、バルブV2は、一方通行のバルブVとバルブV1を並列して設けた構造を採用しているから、流体が内周から外周へ通過する際の減衰特性と、流体が外周から内周へ通過する際の減衰特性を、別個独立に設定することができる。
【0072】
さらに、第一リーフバルブ12と第二リーフバルブ15との間に支持部材16を設けることで、第一リーフバルブ12を支持する機能と第二リーフバルブ15を支持する機能を一つの支持部材16に集約することができ、バルブV2の部品点数を少なくすることができるとともに、全長も短くすることが可能である。
【0073】
さて、上記のように構成されたバルブV2を緩衝器Dに組み込むには、たとえば、
図10に示すように、緩衝器Dのピストンロッド22の先端に、ピストン21とともに取り付けることができる。
【0074】
緩衝器Dは、シリンダ20と、シリンダ20内に摺動自在に挿入されてシリンダ20内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン21と、シリンダ20内に移動自在に挿入されるとともに一端がピストン21に連結されるピストンロッド22と、ピストンロッド22に取り付けたバルブV2とを備えて構成されており、伸側室R1と圧側室R2には、流体、たとえば、作動油が充填されている。流体としては、作動油の他、水、水溶液の液体、気体を使用することも可能である。なお、図示はしないが、流体が液体である場合、シリンダ20内にピストンロッド22が出入りすることで、シリンダ20内で液体の過不足が生じるが、これを補償するため、気室やリザーバが別途設けられる。
【0075】
また、ピストン21は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する主減衰通路21a,21bを備えている。ピストン21の
図10中上方には、主減衰通路21aの上端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる圧側減衰バルブ23が積層され、ピストン21の
図10中下方には、主減衰通路21bの下端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる伸側減衰バルブ24が積層されている。
【0076】
そして、これらピストン21、圧側減衰バルブ23および伸側減衰バルブ24は、ピストンロッド22の
図1中下端に設けた小径部22aの外周に組付けられて、当該小径部22aの最下端に螺着されるピストンナット25によって固定されている。
【0077】
ピストンロッド22は、
図10中下端から開口する中空孔22bと、ピストン21よりも
図10中上方側から開口して中空孔22bに通じる透孔22cとを備えている。
【0078】
そして、上記バルブV2は、圧側減衰バルブ23の上方に積層されて、ピストンロッド22の小径部22aの外周に装着されており、ピストン21、圧側減衰バルブ23および伸側減衰バルブ24と同様に、ピストンナット25によってピストンロッド22に固定されている。
【0079】
バルブV2における支持部材16の内径は、ピストンロッド22の小径部22aの外径よりも大径に設定されており、空間Mがピストンロッド22によって埋まることが無いようになっていて、ピストンロッド22にバルブV2を上記のように組み付けると、丁度、空間Mが透孔22cに対向して中空孔22bに連通されるようになっている。したがって、空間Mは、透孔22cおよび中空孔22bを介して圧側室R2に連通される。また、バルブV2は、ピストン21よりも
図10中上方に配置されるため、外周側は伸側室R1になっている。
【0080】
よって、バルブV2は、主減衰通路21a,21bに並列して伸側室R1と圧側室R2との間に設けられており、緩衝器Dが伸長する場合には、伸側室R1から第二通路14bに流入した液体は、第二リーフバルブ15を押し開き、第二開口窓14aから空間Mへ移動し、さらに、透孔22cおよび中空孔22bを介して圧側室R2に流出する。緩衝器Dが収縮する場合には、圧側室R2から透孔22cおよび中空孔22bを介して空間Mへ流入した液体は、第一通路11bを通過して第一リーフバルブ12を押し開き、第一開口窓11aから伸側室R1に流出する。
【0081】
他方、圧側減衰バルブ23および伸側減衰バルブ24は、緩衝器Dのピストン速度が高速域になると開弁するようになっており、緩衝器Dのピストン速度が低速域にある際には、緩衝器Dは、バルブV2を液体が通過することによる圧力損失に応じた減衰力を発揮する。
【0082】
よって、
図11に示すように、緩衝器Dの減衰特性は、ピストン速度が微低速域にある場合には、第一リーフバルブ12による特性(
図11中線c)または第二リーフバルブ15による特性(
図11中線f)となり、ピストン速度が微低速域を超えて低速域にある場合には、オリフィスとして機能する第一通路11bによる特性(
図11中線d)またはオリフィスとして機能する第二通路14bによる特性(
図11中線g)となり、さらに、ピストン速度が高速域になると、圧側減衰バルブ23による特性(
図11中線e)または伸側減衰バルブ24による特性(
図11中線h)となる。
【0083】
なお、第一リーフバルブ12による特性(
図11中線c)と第一通路11bによる特性(
図11中線d)の特性切換点におけるピストン速度と、第二リーフバルブ15による特性(
図11中線f)と第二通路14bによる特性(
図11中線g)の特性切換点におけるピストン速度は、互いに独立しており、両者を一致させることもできるし、一致させないようにすることも可能であり、このことは、第一通路11bによる特性(
図11中線d)と圧側減衰バルブ23による特性(
図11中線e)の特性切換点におけるピストン速度と、第二通路14bによる特性(
図11中線g)と伸側減衰バルブ24による特性(
図11中線h)の特性切換点におけるピストン速度の関係にも当てはまる。具体的には、たとえば、緩衝器Dの収縮行程時における微低速域の減衰特性と低速域の減衰特性の切換速度はオリフィスとして機能する第一通路11bと第一リーフバルブ12の撓み剛性によって任意に設定することができ、緩衝器Dの収縮行程時における低速域の減衰特性と高速域の減衰特性の切換速度はオリフィスとして機能する第一通路1bと圧側減衰バルブ23の開弁圧によって任意に設定することができ、緩衝器Dの伸長行程時における微低速域の減衰特性と低速域の減衰特性の切換速度はオリフィスとして機能する第二通路14bと第二リーフバルブ15の撓み剛性によって任意に設定することができ、緩衝器Dの伸長行程時における低速域の減衰特性と高速域の減衰特性の切換速度はオリフィスとして機能する第二通路14bと伸側減衰バルブ24の開弁圧によって任意に設定することができる。
【0084】
また、バルブV2は、ピストン21よりも下方である圧側室R2側に配置することもできる。この場合、バルブV2の空間Mをピストンロッド22に設けた中空孔で伸側室R1に連通すればよい。具体的には、
図10の中空孔22bの下端を閉塞し、別途、ピストンロッド22の先端側に中空孔22bに連通する透孔を設けて、空間Mに連通すればよい。このような配置にする場合、バルブV2の第二シート部材13がピストンロッド22の下端に配置されるので、第二シート部材13をピストンナットとしても機能させる構造を採用すれば、部品点数を削減できる。なお、この場合、第一リーフバルブ12および第一通路11bは、緩衝器Dが伸長する際に減衰力を発揮することになり、第二リーフバルブ15および第二通路14bは、緩衝器Dが収縮する際に減衰力を発揮することになる。
【0085】
最後に、上記バルブV2を減衰力調整型の緩衝器D1に組み込む例について、説明する。この緩衝器D1は、たとえば、
図12に示すように、シリンダ30と、シリンダ30内に摺動自在に挿入されてシリンダ30内を伸側室R3と圧側室R4とに区画するピストン31と、シリンダ30内に移動自在に挿入されるとともに一端がピストン21に連結されるピストンロッド32と、ピストン31に設けられて伸側室R3と圧側室R4とを連通する主減衰通路31a,31bと、ピストンロッド32の先端から開口して圧側室に通じる中空孔32bと、ピストンロッド32の外周であってピストン31より伸側室側に装着される仕切部材33と、ピストンロッド32の外周であってピストン31と仕切部材33との間に介装されるバルブV2と、バルブV2における第一シート部材17に設けられ筒状であって仕切部材33の外周に嵌合するキャップ部17bと、仕切部材33と第一シート部材17とで形成される部屋Lと、仕切部材33に形成されて部屋Lを伸側室R3へ連通する副減衰通路33a,33bと、ピストンロッド32に設けられて中空孔32bと部屋Lとを連通する第一バイパスポート32cと、ピストンロッド32に設けられて中空孔32bとバルブV2の空間Mとを連通する第二バイパスポート32dと、中空孔32b内に周方向に回動可能であって第一バイパスポート32cおよび第二バイパスポート32dを開閉するロータリバルブRVとを備えて構成されている。なお、伸側室R3と圧側室R4には、緩衝器Dと同様に、流体、たとえば、作動油が充填され、シリンダ30内にピストンロッド32が出入りする際の体積を補償するため、気室やリザーバが別途設けられる。
【0086】
ピストン31の
図12中上方には、主減衰通路31aの上端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる主圧側減衰バルブ34が積層され、ピストン31の
図12中下方には、主減衰通路31bの下端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる主伸側減衰バルブ35が積層されている。
【0087】
ピストン31の
図12中上方には、主減衰通路31aの上端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる主圧側減衰バルブ34が積層され、ピストン31の
図12中下方には、主減衰通路31bの下端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる主伸側減衰バルブ35が積層されている。
【0088】
仕切部材33の
図12中上方には、副減衰通路33aの上端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる副圧側減衰バルブ36が積層され、仕切部材33の
図12中下方には、副減衰通路33bの下端開口部を開閉する環状の積層リーフバルブでなる副伸側減衰バルブ37が積層されている。
【0089】
バルブV2は、主圧側減衰バルブ34と副伸側減衰バルブ37との間に配置されており、第一シート部材17の形状がバルブV2と少々異なる。具体的には、バルブV2における第一シート部材17は、上記した第一シート部材10と同形状のシート本体17aの背面に筒状のキャップ部17bを設けた構成であり、キャップ部17bの内周に仕切部材33が嵌合されている。
【0090】
また、副伸側減衰バルブ37と第一シート部材17におけるシート本体17aとの間には、有底筒状に形成されるスペーサ38が介装されており、スペーサ38は、部屋Lをスペーサ38内に連通する連通孔38aを備えている。
【0091】
これらピストン31、主圧側減衰バルブ34、主伸側減衰バルブ35、バルブV2、スペーサ38、副圧側減衰バルブ36、仕切部材33および副伸側減衰バルブ37は、積層された状態で、ピストンロッド32の下端に設けた小径部32aの外周に装着されてピストンナット39によって、上記各部材がピストンロッド32に固定されている。
【0092】
そして、ピストンロッド32は、下端から開口する中空孔32bを備え、この中空孔32bは、ピストンロッド32の側方から開口する第一バイパスポート32cによって部屋Lに通じ、さらには、ピストンロッド32の側方から開口する第二バイパスポート32dによって空間Mに通じている。
【0093】
これによって、副減衰通路33a,33bは、伸側室R3と圧側室R4との間に主減衰通路31a,31bに並列に設けられ、バルブV2にあっても、伸側室R3と圧側室R4との間に主減衰通路31a,31bに並列に設けられている。
【0094】
中空孔32b内に周方向摺動自在に挿入されるロータリバルブRVは、筒状であって、第一バイパスポート32cに対向可能な位置に設けられて内外を連通するバルブポート40,41と、第二バイパスポート32dに対向可能な位置に設けられて内外を連通するバルブポート42,43とを備えており、バルブポート40とバルブポート42とが軸方向に同一線上に穿設されており、バルブポート41とバルブポート43は、互いに周方向にずれた位置であって、ともに、バルブポート40,42に対しても周方向にずれた位置に穿設されている。
【0095】
そのため、ロータリバルブRVを周方向に回転させて、第一バイパスポート32cにバルブポート40を対向させつつ第二バイパスポート32dにバルブポート42を対向させることで、副減衰通路33a,33bへ通じる第一バイパスポート32cとバルブV2へ通じる第二バイパスポート32dを開放させることで、主減衰通路31a,31bに並列される副減衰通路33a,33bとバルブV2を有効に機能させることができる。
【0096】
また、ロータリバルブRVを周方向に回転させて、第一バイパスポート32cにバルブポート41を対向させるとともに第二バイパスポート32dをロータリバルブRVの側面にて閉塞させることができ、この場合には、バルブV2へ通じる流路が遮断されるので主減衰通路31a,31bと副減衰通路33a,33bのみを有効とすることができる。さらに、ロータリバルブRVを周方向に回転させて、第一バイパスポート32cをロータリバルブRVの側面にて閉塞させるとともに第二バイパスポート32dにバルブポート43を対向させることができ、この場合には、副減衰通路33a,33bへ通じる流路が遮断されるので主減衰通路31a,31bとバルブV2のみを有効とすることができる。そして、さらに、ロータリバルブRVを周方向に回転させて、第一バイパスポート32cと第二バイパスポート32dをロータリバルブRVの側面にて閉塞させることができ、この場合には、副減衰通路33a,33bおよびバルブV2へ通じる流路が遮断されるので主減衰通路31a,31bのみを有効とすることができる。
【0097】
このように、ロータリバルブRVを操作することで、副減衰通路33a,33bおよびバルブV2の死活を選択して減衰力を調節することができ、このような緩衝器D1にバルブV2を適用することができる。なお、バルブV2の第一シート部材17にキャップ部17bを一体化しているので、別途、部屋Lを形成するキャップを設ける必要が無く、部品点数を削減することができる。
【0098】
以上で、緩衝器Dの一実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。