特許第5883515号(P5883515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5883515対象物を保持するための支持構造を備えるリソグラフィ装置及びそれに用いられる支持構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883515
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】対象物を保持するための支持構造を備えるリソグラフィ装置及びそれに用いられる支持構造
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160301BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
   H01L21/68 K
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-555244(P2014-555244)
(86)(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公表番号】特表2015-508230(P2015-508230A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】EP2013052154
(87)【国際公開番号】WO2013117518
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】61/595,362
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】カデー、テオドルス ペトルス マリア
(72)【発明者】
【氏名】バニネ、ファディム イエフゲニエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ツァール、コーエン ヤコブス ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】バディー、ラミン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ハーミート
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0291411(US,A1)
【文献】 特表2003−534653(JP,A)
【文献】 米国特許第05563684(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027、21/30
21/67 −21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持するための支持構造を備えるリソグラフィ装置であって、
前記支持構造は、前記支持構造が前記対象物を保持するときに前記対象物に面する第1上部主面を含む第1部分を有し、
前記支持構造は、前記第1部分の第1底部主面に面する第2上部主面を含む第2部分を有し、
前記第2上部主面および前記第1底部主面は、複数の個別の支持壁によって互いに離間し、
前記支持構造は、前記第1上部主面から延びる複数のバールを有し、
前記複数のバールの一つである第1バールは、前記支持構造が前記対象物を保持するときに前記対象物に接するように動作する第1上面を有し、
前記複数のバールの一つである第2バールは、前記支持構造が前記対象物を保持するときに前記対象物に接するように動作する第2上面を有し、
前記第1上面は、前記第2上部主面に対して第1位置を有するとともに、第2主面に対して第1方向を有し、
前記第2上面は、前記第2上部主面に対して第2位置を有するとともに、前記第2上部主面に対して第2方向を有し、
前記リソグラフィ装置は、コントローラを備え、
前記コントローラは、
前記支持構造が前記対象物を保持するときに前記第1位置および前記第2位置を互いに独立に制御することと、
前記支持構造が前記対象物を保持するときに前記第1方向および前記第2方向を互いに独立に制御することと、
の少なくとも一方を行うように構成されるリソグラフィ装置。
【請求項2】
第1下部主面は、前記第1バールの下に位置する第1電極を提供し、
前記第2上部主面は、前記第1電極に対向する第2電極を提供し、
前記コントローラは、前記第1電極および前記第2電極の間に働く静電容量性の力を制御することにより、前記第1位置および前記第1方向の少なくとも一方を制御するように動作する、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記第2電極は、複数の電気的に絶縁された部分を備え、
前記コントローラは、前記複数の電気的に絶縁された部分のそれぞれと前記第1電極との間に働く静電容量性の力のそれぞれの要素を制御することにより、前記第1位置および前記第1方向の少なくとも一方を制御するように動作する、請求項2に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記第1部分は、前記第1位置における第1変化および前記第1方向における第2変化の少なくとも一方を感知するとともに、前記第1変化および前記第2変化の少なくとも一方を表すセンサ出力信号を供給するように構成されるセンサを提供し、
前記コントローラは、前記センサ出力信号に基づいて前記第1位置および前記第1方向の少なくとも一方を制御するように動作する、請求項1から3のいずれか一項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記第2上部主面は、前記第1位置における第1変化および前記第2位置における第2変化の少なくとも一方を制限するように構成されるストッパを提供する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記第1上部主面は、局所的に熱を発生させるように動作するヒータと、支持構造および対象物の少なくとも一方の局所的な温度を感知するように動作する温度センサの少なくとも一方を提供する、請求項1から5のいずれか一項に記載されるリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記対象物が改善された平坦性を有して前記第1上面および前記第2上面の双方に保持されるように、前記第1位置および前記第1方向の少なくとも一方を制御する、請求項1から6のいずれか一項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のリソグラフィ装置に用いられるように構成される支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年1月30日に出願された米国特許仮出願第61/592,243号の利益を主張し、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、対象物を保持するための支持構造を備えるリソグラフィ装置、及び、リソグラフィ装置に用いられるように構成される支持構造に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板、通常は基板のターゲット部分に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。このような場合、例えばマスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスは、集積回路の個々の層に形成されるべき回路パターンを生成するために使用されうる。このパターンは、基板(例えばシリコンウエハ)のターゲット部分(例えばダイの一部、あるいは一つまたは複数のダイを含む)に転写することができる。パターン転写は、典型的には基板上に形成された放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に、一枚の基板は、連続的に露光される隣接したターゲット部分からなるネットワークを含むであろう。従来のリソグラフィ装置には、いわゆるステッパ及びスキャナが含まれる。ステッパでは、パターン全体をターゲット部分に一度に露光することで各ターゲット部分が照射される。スキャナでは、放射ビームに対してパターンを所与の方向(「スキャン」方向)にスキャンするとともに、この方向に平行または逆平行に基板を同期させてスキャンすることにより各ターゲット部分が照射される。パターンを基板にインプリントすることによって、パターニングデバイスから基板へパターンを転写することも可能である。
【0004】
リソグラフィ装置は、基板またはマスクなどの対象物を厳密な平坦性の条件下で支持するための支持構造を有するかもしれない。温度変化、対象物の変形、支持構造および/または対象物の汚染、支持構造の損耗は、平坦性の条件に有害な影響を与えるかもしれない。
【発明の概要】
【0005】
したがって、リソグラフィ装置における対象物のための支持構造であって、十分な平坦性で対象物を支持する支持構造を提供することが望まれる。
【0006】
本発明の実施の形態は、対象物を保持するための支持構造を備えるリソグラフィ装置に関する。支持構造は、支持構造が対象物を保持するときに対象物に面する第1上部主面を含む第1部分を有する。支持構造は、第1部分の第1底部主面に面する第2上部主面を含む第2部分を有する。第2上部主面および第1底部主面は、複数の個別の支持壁によって互いに離間する。支持構造は、第1上部主面から延びる複数のバールを有する。複数のバールの一つである第1バールは、支持構造が対象物を保持するときに対象物に接するように動作する第1上面を有する。複数のバールの一つである第2バールは、支持構造が対象物を保持するときに対象物に接するように動作する第2上面を有する。第1上面は、第2上部主面に対して第1位置を有するとともに、第2主面に対して第1方向を有する。第2上面は、第2上部主面に対して第2位置を有するとともに、第2上部主面に対して第2方向を有する。リソグラフィ装置は、コントローラを備える。コントローラは、支持構造が対象物を保持するときに第1位置および第2位置を互いに独立に制御することと、支持構造が対象物を保持するときに第1方向および第2方向を互いに独立に制御することと、の少なくとも一方を行うように構成される。
【0007】
別の実施の形態において、第1下部主面は、第1バールの下に位置する第1電極を提供し、第2上部主面は、第1電極に対向する第2電極を提供する。コントローラは、第1電極および第2電極の間に働く静電容量性の力を制御することにより、第1位置および第1方向の少なくとも一方を制御するように動作する。
【0008】
別の実施の形態において、第2電極は、複数の電気的に絶縁された部分を備え、コントローラは、複数の電気的に絶縁された部分のそれぞれと第1電極との間に働く静電容量性の力のそれぞれの要素を制御することにより、第1位置および第1方向の少なくとも一方を制御するように動作する。
【0009】
別の実施の形態において、第1部分は、第1位置における第1変化および第1方向における第2変化の少なくとも一方を感知するとともに、第1変化および第2変化の少なくとも一方を表すセンサ出力信号を供給するように構成されるセンサを提供する。コントローラは、センサ出力信号に基づいて第1位置および第1方向の少なくとも一方を制御するように動作する。
【0010】
別の実施の形態において、第2上部主面は、第1位置における第1変化および第2位置における第2変化の少なくとも一方を制限するように構成されるストッパを提供する。
【0011】
別の実施の形態において、第1上部主面は、局所的に熱を発生させるように動作するヒータと、支持構造および対象物の少なくとも一方の局所的な温度を感知するように動作する温度センサと、の少なくとも一方を提供する。
【0012】
別の実施の形態において、支持構造は、リソグラフィの製造方法により製造される。
【0013】
本発明は、また、上述したリソグラフィ装置に用いられるように構成される支持構造に関する。支持構造は、リソグラフィの製造方法を用いて製造されてよい。適切なリソグラフィの製造方法の例は、集積電子回路の製造に用いられる技術であり、言いかえれば、半導体デバイスの製造技術である。このようなリソグラフィの製造技術は、微小電気機械システム(MEMS)の製造に用いられることをここに述べておく。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施の形態は、添付の概略的な図面を参照して以下に示されるが、これらは例示に過ぎない。各図面において、対応する符号は対応する部分を示す。
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【0016】
図2図1に示すリソグラフィ装置に用いられる実施の形態に係る支持構造を示す図である。
【0017】
図3図1のリソグラフィ装置に用いられる別の実施の形態に係る支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係るリソグラフィ装置を概略的に示す。装置は、放射ビームB(例えばUV放射又は他のいかなる適切な放射)を調整するように構成された照明系(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成されるとともに、パターニングデバイスを正確に位置決めして特定のパラメータに一致させるよう構成された第1位置決め装置PMに接続されたマスク支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、を含む。装置は、基板(例えばレジストコーティングされたウェハ)Wを保持するとともに、基板を正確に位置決めして特定のパラメータに一致させるよう構成された第2位置決め装置PWに接続された基板テーブル(例えばウェハテーブル)WTまたは「基板支持構造」を含む。装置は、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数のダイを含む)に投影するよう構成された投影系(例えば屈折投影レンズ系)PSをさらに含む。
【0019】
照明系は、放射の向きや形状を整え、あるいは放射を制御するために、屈折性、反射性、磁気的、電磁気的、静電的、あるいは他の種類の光学要素といった各種の光学要素、またはこれらの組合せを含んでもよい。
【0020】
マスク支持構造は、パターニングデバイスを支持し、言いかえれば、パターニングデバイスの重さに耐える。マスク支持構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、及び例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されるか否か等のその他の条件に応じた方式で、パターニングデバイスを保持する。マスク支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械的固定、真空固定、静電固定、またはその他の固定技術を用いることができる。マスク支持構造は、例えばフレームまたはテーブルであってよく、これらは固定されていてもよいし必要に応じて移動可能であってもよい。マスク支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影系に対して所望の位置にあることを保証してよい。本明細書における「レチクル」または「マスク」の用語のいかなる使用は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義とみなされうる。
【0021】
本明細書において用いられる「パターニングデバイス」の用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するために放射ビーム断面にパターンを与えるために用いることのできる、いかなるデバイスをも表すと広義に解釈すべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板のターゲット部分において所望のパターンと厳密に一致している必要はないことに注意すべきである。例えば、パターンが位相シフトフィーチャまたはアシストフィーチャと言われるものを含む場合である。たいていの場合、放射ビームに付与されるパターンは、ターゲット部分に生成される集積回路等のデバイスにおける特定の機能層に一致するであろう。
【0022】
パターニングデバイスは、透過型であってもよいし、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例には、マスクや、プログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいて周知であり、バイナリマスク、レベンソン型位相シフトマスク、減衰型位相シフトマスク、さらには多様なハイブリッド型マスクなどのマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイは例えば、小型ミラーのマトリックス配列で構成され、各ミラーは、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個別に傾けることが可能である。傾けられたミラーは、ミラーマトリックスにより反射された放射ビームにパターンを付与する。
【0023】
本明細書において用いられる「投影系」の用語は、用いられる露光放射や、液浸液の使用または真空環境の使用などの他の要素に応じて、屈折光学系、反射光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系またはこれらのいかなる組合せを含む、いかなる種類の投影システムを包含するものとして広く解釈すべきである。本明細書における「投影レンズ」の用語のいかなる使用は、より一般的な用語である「投影系」と同義とみなされうる。
【0024】
上述したように、装置は透過型の装置である(例えば透過型マスクを用いる)。代替的に、装置は反射型の装置であってもよい(例えば、上述したような種類のプログラマブルミラーアレイまたは反射マスクを用いる)。
【0025】
リソグラフィ装置は、二以上(二つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)の基板テーブルまたは「基板支持構造」(および/または、二以上のマスクテーブルまたは「マスク支持構造」)を有する種類の装置であってもよい。このような「マルチステージ型」の機械において、追加のテーブルまたは支持構造は並行して使用されてもよいし、あるいは一以上のテーブルが露光のために使用されている間に一以上の他のテーブルで準備工程が実行されるようにしてもよい。
【0026】
リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が比較的高い屈折率を有する液体、例えば水により覆われて、投影系と基板の間のスペースが充填される種類の装置であってよい。液浸液は、リソグラフィ装置における別のスペースに適用されてもよく、例えば、マスクと投影系の間に適用されてもよい。液浸技術は、投影系の開口数を増大させるために用いることができる。本明細書にて用いられる「液浸」の語は、基板などの構造が液中に水没しなければならないことを意味するのではなく、むしろ、露光中に投影系と基板の間に液体が存在すればよいことを意味する。
【0027】
図1に示されるように、イルミネータILは、放射源SOからの放射ビームを受け取る。放射源およびリソグラフィ装置は、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、分離して存在してもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の部分を形成するものではないとみなされ、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDの助けにより、ビーム放射源SOからイルミネータILへと通過する。その他の場合、例えば放射源が水銀ランプである場合、放射源はリソグラフィ装置の一体化された部分であってもよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに、投影系とみなされてもよい。
【0028】
イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するように構成されるアジャスタADを含んでもよい。たいていの場合、イルミネータの瞳面における強度分布の外側半径範囲および/または内側半径範囲(それぞれσ-outerおよびσ-innerと通常呼ばれる)の少なくとも一方を調整できる。さらにイルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなどの様々な他の要素を含んでもよい。イルミネータは、放射ビームを調整し、ビーム断面において所望の均一性および強度分布を有するように用いられてもよい。
【0029】
放射ビームBは、マスク支持構造構造(例えばマスクテーブルMT)に保持されるパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射し、パターニングデバイスによりパターンが付与される。マスクMAを通過して、放射ビームBは基板Wのターゲット部分Cにビームを集光させる投影系PSを通過する。第2位置決め装置PWおよび位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)の助けを借りて、例えば放射ビームBの経路上に異なるターゲット部分Cを位置させるように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め装置PMおよび別の位置センサ(図1に図示せず)を用いて、例えばマスクライブラリの機械検索後やスキャン中において、放射ビームの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1位置決め装置PMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現されてもよい。同様に、基板テーブルWTまたは「基板支持構造」の移動は、第2位置決め装置PWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを用いて実現されてもよい。(スキャナと対照的に)ステッパを用いる場合、マスクテーブルMTは、ショートストロークアクチュエータのみに接続されてもよく、もしくは、固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせされてもよい。基板アライメントマークは、図示されるように専用のターゲット部分を占めているが、ターゲット部分の間のスペースに位置していてもよい(これは、スクライブラインアライメントマークとして知られている)。同様に、マスクMAに一以上のダイが設けられる場合には、マスクアライメントマークはダイの間に位置してもよい。
【0030】
図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも一つで使用することができる。
1.ステップモードでは、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回の照射で一つのターゲット部分Cに投影される間、マスクテーブルMTまたは「マスク支持構造」及び基板テーブルWTまたは「基板支持構造」は実質的に静止状態とされる(すなわち単一静的露光)。そして、基板テーブルWTまたは「基板支持構造」はX方向および/またはY方向に移動され、異なるターゲット部分Cが露光される。ステップモードにおいて、露光フィールドの最大サイズは、単一静的露光にて結像されるターゲット部分Cのサイズを制限する。
2.スキャンモードでは、放射ビームに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、マスクテーブルMTまたは「マスク支持構造」及び基板テーブルWTまたは「基板支持構造」は同期してスキャンされる(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMTまたは「マスク支持構造」に対する基板テーブルWTまたは「基板支持構造」の速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)率および像反転特性により定められる。スキャンモードにおいて、スキャン動作の長さがターゲット部分の高さ(スキャン方向)を決定する一方で、露光フィールドの最大サイズは、単一動的露光におけるターゲット部分の幅(非スキャン方向)を制限する。
3.別のモードでは、放射ビームに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、マスクテーブルMTまたは「マスク支持構造」はプログラマブルパターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、基板テーブルWTまたは「基板支持構造」は移動またはスキャンされる。このモードにおいて、一般的にパルス放射源が用いられ、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTまたは「基板支持構造」が移動するたびに、または連続する放射パルスの間に必要に応じてスキャン中に更新される。この動作モードは、上記のプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに直ちに適用できる。
【0031】
上記のモードを組み合わせて動作させてもよいし、モードに変更を加えて動作させてもよく、さらに全く別のモードを用いてもよい。本発明は、その中でも、支持構造を有するリソグラフィ装置に関する。支持構造は、対象物を保持するためのバールを備える。支持構造またはその一部は、例えば、MEMS技術などのリソグラフィの製造方法により加工され、その方向または位置が電気的に個別に制御可能なバールが作られる。
【0032】
リソグラフィ装置におけるマスクや基板といった対象物を保持するための支持構造は、リソグラフィの製造方法により製造されうる。この方法は、支持構造の第1面上に放射感応性層を堆積するステップと、支持構造の第1面上の放射感応性層に放射ビームを投影するステップと、を備えてもよい。このステップは、例えば、支持構造の第1面上に導電性材料を堆積させた後になされてもよい。その次に、レジストが現像され、放射に露光された(ポジ型の)レジストがデベロッパにより洗い流されてもよい。次のステップにおいて、現像されたレジストにより覆われていない導電性材料がエッチング除去されてもよい。このようにして、支持構造の第1面上に導電性パターンが形成されうる。ビームがレジストに与えたパターンに応じて、導電性層は異なる機能を有してもよい。
【0033】
例えば、パターンは、支持構造Sに電極E1を設けるために用いられてもよい(図2参照)。電極E1は、別の電極E2と協働してもよい。電極E1、E2の帯電(チャージ)により、静電容量性の力が電極間に与えられてもよい。この力は、バールの上端で対象物Wが改善された平坦性を有して保持されるようにして支持構造Sを変形させるために用いられてもよい。電極E2は、バールBRの好適な制御を与えるために、バールBRに近接した柔軟な板に設けられてもよい。支持構造Sは、電極が互いに対して動きうるように、電極E1、E2の間のスペースを形成する支持壁SWを備えてもよい。バールBRに近い電極E2が受動的である一方で、電極E1は配線CLまたは無線リンクを介してチャージされてもよい。電極E1は、バールBRへの力Fを3自由度で制御するために、三つの部分(E13参照)または四つの部分(E14参照)を備えてもよい。バールBRへの力Fを制御するために、例えば容量性センサCNおよび/または加速度センサASといったセンサが用いられてもよい。パターンは、電極E1、E2の少なくとも一つおよび加速度センサASもしくは容量性センサCNの一つに支持構造Sの中で接続され、フィードバックループにより静電力を特定の目標値へと制御するコントローラを設けるために用いられてもよい。ストッパSMは、バールBRが最大値まで移動するのを制限するために用いられてもよい。
【0034】
パターンは、支持構造SにヒータHT(図3参照)を設けるため、および/または、ヒータHTに電流を供給するために用いられてもよい。ヒータHTは、支持構造Sおよび/または対象物Wを(局所的に)加熱するために用いられてもよい。加熱は、過剰な冷却を妨げるため、または、支持構造Sおよび/または対象物Wの形状を熱膨張により調整するために用いられもよい。パターンは、支持構造SにセンサSNを設けるために用いてもよく、例えば、支持構造Sおよび/または対象物Wの温度を計測するための温度センサSNが支持構造Sに設けられてもよい。センサSNは、双方が支持構造Sの異なる側に設けられるように、ヒータHTに近接して、もしくは、ヒータHTの上端に設けられてもよい。ヒータHTは、対象物Wを加熱する赤外線放射体であってもよく、センサSNは、対象物の温度を測定するIRセンサであってもよい。代替的に、センサDSは、例えば193nmの露光放射またはEUV放射を計測するためのドーズ量センサであってもよい。パターンは、ヒータHTおよび温度センサに支持構造Sの中で接続され、フィードバックループにより温度を特定の目標値へと制御するコントローラを設けるために用いられてもよい。支持構造Sと対象物Wの間のスペースSPは、ヒータHTと対象物Wの間の熱伝導を高めるために、例えば水素やアルゴンなどのガスを備えてもよい。
【0035】
リソグラフィの方法で製造される支持構造は、支持構造に設けられる静電的な固定手段(クランプ)を有してもよい。静電的なクランプは、クランプ力の調整により、基板、マスクまたはミラーなどの対象物の形状が調整されるように制御されてもよい。支持構造は、その結果、柔軟であり、かつ、クランプ力の調整により対象物の位置調整が可能なバールを備えてもよい。
【0036】
リソグラフィの方法で製造される支持構造は、フィールド曲率を補正するために用いられうる。対象物の形状の調整により、フィールド曲率の影響が最小化されうる。この目的のために、クランプ力が調整されてもよいし、および/または、対象物の形状が調整されるようにバールが調整されてもよい。
【0037】
リソグラフィの方法で製造される支持構造は、圧電素子(ピエゾ)を備えてもよく、ピエゾは、バールの形状を調整するために用いられてもよい。
【0038】
リソグラフィ装置においてマスクや基板などの対象物を保持するための支持構造に設けられるバールBRもリソグラフィの製造方法を用いて作成されてよい。この方法は、支持構造の第1面上に放射感応性層を堆積するステップと、支持構造の第1面上の放射感応性層に放射ビームを投影するステップと、を備えてもよい。その次に、レジストが現像され、放射に露光された(ポジ型の)レジストがデベロッパにより洗い流されてもよい。次のステップにおいて、現像されたレジストにより覆われていない支持構造の一部が部分的にエッチング除去されてバールBRが形成されてもよい。この方法は、支持構造と対象物との間の粘着力を低減させるような小さなトレンチをバールBRの上端に設けるために用いられてもよい。バールは、バールに起伏をつけるため、バールの上端にレジストを設けることなく放射されてもよい。
【0039】
支持構造は、窒化クロム、窒化チタン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイアモンドライクカーボン、または、SiSiCなどの耐摩耗層で覆われてもよい。
【0040】
支持構造は、反転されてもよく、放射感応性層は、支持構造の第2面に堆積されてもよい。放射ビームは、支持構造の第2面に設けられた放射感応性層に露光されてもよい。
【0041】
ある実施の形態において、対象物を保持するための支持構造と、対象物を取り扱うためのオブジェクトハンドラとを備え、オブジェクトハンドラによって支持構造の取り扱いが可能となるリソグラフィ装置が提供される。支持構造は、上述のいかなる特徴を有してもよい。これは、リソグラフィ装置から支持構造を容易に交換できるという利点を有する。使用中に、支持構造は損耗し、汚染されうる。所定量の損耗または汚染に達した場合、対象物にとって適切な支持構造を維持するために支持構造の交換が必要となりうる。オブジェクトハンドラを用いて支持構造を交換することで、支持構造の交換を素早く完了でき、オペレータが装置を開けて支持構造を手作業で取り除く必要がなくなる。これにより、装置の非稼働時間をより少なくできる。
【0042】
オブジェクトハンドラは、リソグラフィ装置の中へ対象物および支持構造を装填(ロード)し、もしくは、リソグラフィ装置の中から対象物および支持構造をアンロードするように構成されてもよく、その両者がなされるように構成されてもよい。リソグラフィ装置は、複数のオブジェクトハンドラを備えてもよく、例えば、対象物をロードするためのものと、対象物をアンロードするためのものと、を備えてもよい。これにより、基板のロードおよびアンロードに必要な時間が低減されうる。ロードおよびアンロードの双方のための単一のオブジェクトハンドラのみを用いることで、装置のコストを低減しうる。
【0043】
支持構造は、基板のように、実質的に同じサイズを有してもよい。これは、支持構造を取り扱うために、オブジェクトハンドラを実質的に交換する必要がないという利点を有する。ハンドリングの視点からすると、支持構造と対象物の間に差が存在しない。さらに、支持構造を作成するための出発材料として、通常の基板を用いることができるという利点を有するかもしれない。
【0044】
対象物は、基板であってよく、支持構造は、基板の露光中において基板の位置を決めるための基板位置決め装置PWに接続されてよい。支持構造は、基板位置決め装置PWを備え、基板に対してパターンを正確に投影できるように、投影システムに対して基板を正確に移動させる基板ステージの一部であってよい。支持構造を交換する場合、ウェハステージの一部、例えばモータおよび/またはセンサを含む一部は、装置内に残される。
【0045】
本明細書では、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について特に言及してきたが、ここに記載されるリソグラフィ装置は、他の応用形態も有していることを理解すべきである。例えば、集積された光学システム、磁気領域メモリのためのガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造といった応用である。当業者は、このような代替的な応用形態の文脈において、本明細書における「基板」または「ダイ」という用語のいかなる使用も、より一般的な用語である「基板」、「ターゲット部分」または「ミラー」のそれぞれと同義とみなすことができることが認められよう。本明細書で参照された基板は、露光の前後において、例えばトラック(通常、レジスト層を基板に付加し、露光されたレジストを現像するツール)、計測ツール及び/または検査ツールで処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示は、そのような基板処理工具または他の工具に対しても適用することができる。さらに、例えば多層ICを作製するために二回以上基板が処理されてもよく、その結果、本明細書で用いられる基板という用語は、複数回処理された層を既に含む基板のことも指してもよい。
【0046】
上記では、光学リソグラフィとの関連で本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、インプリントリソグラフィなどの他の用途においても使用可能であり、文脈上許されれば、光学リソグラフィに限定されないことが理解される。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスの微細構造によって、基板上に生成されるパターンが画定される。パターニングデバイスの微細構造を基板に設けられたレジストの層に押しつけ、その後、電磁放射、熱、圧力またはその組合せにより、レジストを硬化する。レジストを硬化した後、パターニングデバイスがレジストから除去され、パターンが残される。
【0047】
本明細書で用いられる「放射」および「ビーム」の用語は、いかなる種類の電磁的な放射を包含し、紫外(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nmもしくは126nm、または、その近傍の波長を有する)および極端紫外(EUV)放射(例えば、5−20nmの範囲の波長を有する)を含むとともに、イオンビームや電子ビームといった粒子ビームをも含む。
【0048】
「レンズ」という用語は、文脈上許されれば、屈折性、反射性、磁気的、電磁気的および静電的な光学要素を含む、様々なタイプの光学要素のいずれか、またはその組合せを指してもよい。
【0049】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の一つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、または、そうしたコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)の形式をとってもよい。
【0050】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。したがって、以下に述べる請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、当業者には明らかなことである。
図1
図2
図3