(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS K 7210に基づき温度190℃、荷重2.16kgで測定したときのメルトフローレート(MFR)が10g/10min以上、30g/10min以下である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
JIS K 7210に基づき温度190℃、荷重2.16kgで測定したときのメルトフローレート(MFR)が12g/10min以上、30g/10min以下である、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。
【0013】
≪ポリアセタール樹脂組成物≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、
ポリアセタール樹脂(A)100質量部と、導電性カーボンブラック(B)5〜30質量部とを含み、
JIS K 7194に基づき測定した体積抵抗率が10
2Ω・cm以下であり、
JIS K 7210に基づき温度190℃、荷重2.16kgで測定したときのメルトフローレート(MFR)が8g/10min以上、30g/10min以下である。
【0014】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、JIS K 7194に基づき測定した体積抵抗率が10
2Ω・cm以下であり、10
0〜10
2Ω・cmであることが好ましく、10
1〜10
2Ω・cmであることがより好ましい。該体積抵抗率が前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得る方法としては、例えば、用いる導電性カーボンブラック(B)の種類や含有量を調整することなどが挙げられる。また、後述のポリアセタール樹脂組成物の製造方法でも述べるとおり、ポリアセタール樹脂(A)と導電性カーボンブラック(B)とを溶融混練する際の各種条件を調整することによっても、該体積抵抗率が前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0015】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、JIS K 7210に基づき温度190℃、荷重2.16kgで測定したときのメルトフローレート(MFR)が8g/10min以上であり、10g/10min以上であることが好ましく、12g/10min以上であることがより好ましい。該メルトフローレート(MFR)の上限値は30g/10minである。該MFRが前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物は、流動性に優れ、成形不良率が極めて低くなる。該MFRが前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得る方法としては、用いるポリアセタール樹脂(A)の分子量を調整することなどが挙げられる。また、後述のポリアセタール樹脂組成物の製造方法でも述べるとおり、ポリアセタール樹脂(A)と導電性カーボンブラック(B)とを溶融混練する際の各種条件を調整することによっても、該MFRが前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上記の特定範囲の体積抵抗率と特定範囲のMFRとを同時に有する。通常、両者は相反する特性であるが、両者を同時に満足するポリアセタール樹脂組成物とすることによって初めて、寸法精度に優れ、さらに長期に摺動した後も初期の導電レベルを維持できるポリアセタール樹脂組成物及びその成形体を得ることができる。このような特定範囲の体積抵抗率と特定範囲のMFRとを同時に有するポリアセタール樹脂組成物は、導電性カーボンブラック(B)の種類や量を調整すること、及び後述のポリアセタール樹脂組成物の製造方法でも述べるとおり、ポリアセタール樹脂(A)と導電性カーボンブラック(B)とを溶融混練する際の各種条件を調整することによって、得ることができる。
【0017】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、JIS K 7199に基づき、210℃、せん断速度100s
−1条件下で測定した溶融粘度V
1と、210℃、せん断速度1000s
−1条件下で測定した溶融粘度V
2との比V
1/V
2が、1.2以上、2.5以下であることが好ましく、1.3以上、2.3以下であることがより好ましい。該溶融粘度の比V
1/V
2が前記範囲にあるポリアセタール樹脂組成物は、幅広い成形条件での成形が可能となるため、金型のデザインの自由度が大幅に広がり、場所によって厚みが異なったり、複雑な形状を有するような成形品を容易に得ることができる。該溶融粘度の比V
1/V
2が前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得る方法としては、例えば、用いる導電性カーボンブラック(B)の種類や含有量を調整することなどが挙げられる。また、後述のポリアセタール樹脂組成物の製造方法でも述べるとおり、ポリアセタール樹脂(A)と導電性カーボンブラック(B)とを溶融混練する際の各種条件を調整することによっても、該溶融粘度の比V
1/V
2が前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、空気雰囲気500℃条件下で1時間焼却したときの残渣量が10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは12質量%以上である。該残渣量の上限は、特に限定されないが、例えば、40質量%以下である。
該残渣量が前記範囲にあるポリアセタール樹脂組成物は、寸法精度に優れた成形片を得ることができる。該残渣量が前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得る方法としては、例えば、用いる導電性カーボンブラック(B)の種類や含有量を調整することなどが挙げられる。また、後述のポリアセタール樹脂組成物の製造方法でも述べるとおり、ポリアセタール樹脂(A)と導電性カーボンブラック(B)とを溶融混練する際の各種条件を調整することによっても、該残渣量が前記範囲内であるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
〔ポリアセタール樹脂(A)〕
本実施形態で用いるポリアセタール樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリアセタールホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られるポリアセタールコポリマーを代表例として挙げることができる。また、ポリアセタール樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマーや、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。さらに、ポリアセタール樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーや、同じく両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。以上のように、本実施形態においては、ポリアセタール樹脂(A)として、ポリアセタールホモポリマー、ポリアセタールコポリマーいずれも用いることが可能であるが、好ましくはポリアセタールコポリマーである。
【0020】
1,3−ジオキソラン等のコモノマーは、一般的にはトリオキサン1molに対して、好ましくは0.1〜60mol%、より好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは0.13〜10mol%用いられる。
【0021】
本実施形態に用いるポリアセタールコポリマーの融点は、好ましくは162℃〜173℃であり、より好ましくは167℃〜173℃であり、さらに好ましくは167℃〜171℃である。融点が167℃〜171℃のポリアセタールコポリマーは、トリオキサンに対して1.3〜3.5mol%程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。なお、本実施形態において、ポリアセタールコポリマーの融点は、DSCにより測定することができる。
【0022】
ポリアセタールコポリマーの重合における重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
【0023】
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては、従来公知の方法、例えば米国特許第3027352号明細書、米国特許第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358号明細書、独国特許発明第3018898号明細書及び特開昭58−98322号公報、特開平7−70267号公報に記載の方法が挙げられる。上記の方法で得られたポリアセタールコポリマーは、熱的に不安定な末端部〔−(OCH
2)
n−OH基〕が存在するため、そのままでは実用に供することはできない場合がある。そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましい。例えば、次に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行なうことが好適である。特定の不安定末端部の分解除去処理とは、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理するものである。
【0024】
[R
1R
2R
3R
4N
+]
nX
-n 式(1)
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基又は置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
【0025】
本実施形態に用いる第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされるものであれば特に限定されないが、一般式(1)におけるR
1、R
2、R
3、及びR
4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、この内更に、R
1、R
2、R
3、及びR
4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。第4級アンモニウム化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH
-)、硫酸(HSO
4-、SO
42-)、炭酸(HCO
3-、CO
32-)、ホウ酸(B(OH)
4-)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用しても何ら差し支えない。
【0026】
用いる第4級アンモニウム化合物の量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
【0027】
P×14/Q 式(2)
(式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
【0028】
第4級アンモニウム化合物の添加量が前記範囲内であると不安定末端部の分解除去速度が向上し、不安定末端部分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調が良好となる。
【0029】
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂(A)の不安定末端部の分解除去処理は、例えば、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理することにより達成される。当該分解除去処理に用いる装置には特に限定されないが、例えば、押出機、ニーダー等が挙げられる。前記分解除去処理としては、前記装置を用いて熱処理することが好適である。また、分解で発生したホルムアルデヒドは減圧下で除去されることが好ましい。第4級アンモニウム化合物の添加方法には特に限定されないが、例えば、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、重合で生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法などが挙げられる。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを熱処理する工程で第4級アンモニウム化合物が添加されていればよく、押出機の中に注入したり、押出機等を用いてフィラーやピグメントの配合を行なう品種であれば、樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物を展着し、その後の配合工程で不安定末端除去操作を実施してもよい。
【0030】
不安定末端除去操作は、重合で得られたポリアセタールコポリマー中の重合触媒を失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行なうことも可能である。重合触媒の失活操作としては、特に限定されないが、例えば、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行なわずに、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にて加熱し、重合触媒を揮発低減した後、本不安定末端除去操作を行なうことも有効な方法である。
【0031】
以上の特定の不安定末端部分解除去処理により、不安定末端部が殆ど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【0032】
〔導電性カーボンブラック(B)〕
本実施形態に用いる導電性カーボンブラック(B)は特に限定されないが、フタル酸ジブチル(DBP)吸油量(ASTM D2415−65T)が100mL/100g以上であり、窒素吸着法によるBET比表面積が20m
2/g以上である導電性カーボンブラックが好ましい。導電性カーボンブラック(B)は、該フタル酸ジブチル吸油量の値が大きいほど、含有量が少なくてもポリアセタール樹脂組成物に高い導電性を付与することができる。高い導電性を維持しつつ、カーボンブラックの含有量を抑えることができる観点からは、該フタル酸ジブチル吸油量は300mL/100g以上であることが好ましく、より好ましくは350mL/100g以上、更に好ましくは400mL/100g以上である。また、この場合、該フタル酸ジブチル吸油量の上限は、特に限定されないが、例えば、600mL/100gである。
【0033】
一方、より寸法精度に優れた成形品が得られる観点からは、フタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g未満である導電性カーボンブラックを用いることが好ましい。該フタル酸ジブチル吸油量より好ましくは50mL/100g以上300mL/100g未満、更に好ましくは100mL/100g以上200mL/100g以下である。
【0034】
また、導電性カーボンブラック(B)は、該BET比表面積の値が高いほど、ポリアセタール樹脂組成物中での分散性が向上する。したがって、導電性カーボンブラック(B)の窒素吸着法によるBET比表面積は20m
2/g以上であることがより好ましく、50m
2/g以上であることが更に好ましい。該BET比表面積の上限は、特に限定されないが、例えば、2000m
2/gである。
【0035】
なお、導電性カーボンブラック(B)の窒素吸着法によるBET比表面積及びフタル酸ジブチル吸油量(ASTM D2415−65T)は、導電性カーボンブラックのメーカー各社が開示している情報であり、当業者はそれを基に適宜用いる導電性カーボンブラックを選択することができる。
【0036】
導電性カーボンブラック(B)の一次粒子径は0.05μm以下であることが好ましい。導電性カーボンブラック(B)の一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により1万倍から5万倍の拡大倍率で導電性カーボンブラック(B)を観察し、最低100個の導電性カーボンブラック(B)の粒子について長径と短径とを計測し、その平均値を計算することにより求められる。
【0037】
また、導電性カーボンブラック(B)は、1種類のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、導電性カーボンブラック(B)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して5〜30質量部である。フタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上の導電性カーボンブラックを用いる場合、導電性カーボンブラック(B)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5〜15質量部、より好ましくは5〜10質量部、更に好ましくは6〜9質量部である。一方、フタル酸ジブチル吸油量300mL/100g未満の導電性カーボンブラックを用いる場合、導電性カーボンブラック(B)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは15〜25重量部である。
導電性カーボンブラック(B)の含有量がポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して5質量部以上であることにより、十分な導電性を有したポリアセタール樹脂組成物を得ることが可能となり、30質量部以下であると、諸特性のバランスが取れ、また、成形不良率が極めて低いポリアセタール樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0039】
〔エポキシ化合物(C)〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物にはさらに必要に応じて、エポキシ化合物(C)を含有させることができる。エポキシ化合物(C)としては、モノ又は多官能グリシジル誘導体、或いは不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物であることが好ましい。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、エポキシ化合物(C)の含有量はポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し0.05〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部であるとより好ましい。
【0040】
エポキシ化合物(C)の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
また、エポキシ化合物(C)の他の具体例としては、特に限定されないが、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステルなどが挙げられる。
【0042】
これらのエポキシ化合物(C)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
〔エポキシ化合物(C)の硬化性添加剤〕
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、エポキシ化合物(C)の他にエポキシ化合物(C)の硬化性添加剤を含有させることができる。エポキシ化合物(C)の硬化性添加剤としては、例えば、塩基性窒素化合物及び塩基性リン化合物が通常用いられるが、その他のエポキシ硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物もすべて使用できる。
【0044】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、エポキシ化合物(C)の硬化性添加剤の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。
【0045】
エポキシ化合物(C)の硬化性添加剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール及び1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾールなどの置換イミダゾール、及びオクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミンなどの脂肪族2級アミン、及びジフェニルアミン、ジトリルアミンなどの芳香族2級アミン、及びトリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミンなどの脂肪族3級アミン、及びトリトリルアミン、トリフェニルアミンなどの芳香族3級アミン、及びセチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリンなどのモルホリン化合物、及びジシアンジアミド、メラミン、尿素などへのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1〜20モル)、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのリン化合物などが挙げられる。これらのエポキシ化合物(C)の硬化性添加剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、さらに必要に応じて、ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物、酸化防止剤、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型剤を、本発明の目的達成を損なわない範囲で、好ましくは、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して各々0.01〜10質量部の範囲で含有させてもよい。
【0047】
(ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物)
ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体(例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等)が挙げられる。また他に、例えば、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的にはアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。その他の例として、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物が挙げられる。
【0048】
アミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。
【0049】
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン(メラミン)、N−ブチルメラミン、N− フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン等が挙げられる。
【0050】
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンが挙げられる。
【0051】
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
【0052】
尿素誘導体の例としては、特に限定されないが、例えば、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物が挙げられる。N−置換尿素の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アラントイン等が挙げられる。
【0053】
ヒドラジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ヒドラジド化合物が挙げられる。ヒドラジド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられ、更に具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。
【0054】
イミダゾール化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0055】
イミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドが挙げられる。
【0056】
これらのホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
これらホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物としてはメラミンが特に好ましい。
【0058】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。これらの中では、好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。これらの酸化防止剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0059】
(ギ酸捕捉剤)
ギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、上記のアミノ置換トリアジン化合物やアミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。他のギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩又はアルコキシドが挙げられ、より具体的には、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩が挙げられる。これらのギ酸捕捉剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0060】
(耐候(光)安定剤)
耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤並びにヒンダードアミン系光安定剤の中から選ばれる1種以上であると好ましい。
【0061】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、好ましくは2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらのベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらヒンダードアミン系光安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
(離型剤)
離型剤としては、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物が好ましく用いられる。
【0064】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、脂肪族アルコール、及び/又は脂肪酸と脂肪族アルコールとからなるエステルをさらに含むことが好ましい。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、前記脂肪族アルコール、及び/又は前記エステルの含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜7質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。脂肪族アルコール、及び/又は脂肪酸と脂肪族アルコールとからなるエステルを前記範囲内で含むポリアセタール樹脂組成物は、離型性がより向上する傾向にある。
【0065】
(その他)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的達成を損なわない範囲で、更に公知の添加剤を必要に応じて含有してもよい。そのような添加剤として、具体的には、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料及びワックスが挙げられる。
【0066】
結晶核剤としては、特に限定されないが、例えば窒化ホウ素などが挙げられる。
【0067】
導電剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、人造又は天然黒鉛、単層又は多層カーボンナノチューブ、金属粉末及び金属繊維が挙げられる。ただし、ここに記載の導電剤は、上記導電性カーボンブラック(B)は除かれる。
【0068】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーネート系樹脂、及び未硬化のエポキシ系樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物を熱可塑性樹脂として用いてもよい。特に、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、オレフィン系樹脂をさらに含むことが好ましい。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、オレフィン系樹脂の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましく、1〜17質量部であることがより好ましく、2〜15質量部であることがさらに好ましい。オレフィン系樹脂を前記範囲内で含むポリアセタール樹脂組成物は、摺動試験前後の導電性の変化が小さくなり、好ましい。
【0069】
熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
【0070】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料が挙げられる。ここで、無機系顔料としては、樹脂の着色用として一般的に用いられているものが挙げられ、特に限定されないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、アセチレンブラック、ランプブラックが挙げられる。また、有機系顔料としては、特に限定されないが、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系の顔料が挙げられる。
【0071】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物への顔料の添加割合は、求められる色調により大幅に変化するため明確に規定することは困難であるが、一般的には、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0072】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、及びポリアミドワックスからなる群より選ばれる1種以上をさらに含むことが好ましい。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、前記ワックスの含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがより好ましく、0.3〜3質量部であることがさらに好ましい。これらのワックスを前記範囲内で含むポリアセタール樹脂組成物は、摺動試験前後の導電性の変化が小さくなり、好ましい。
【0073】
≪ポリアセタール樹脂組成物の製造方法≫
次に本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の好適な製造方法について説明する。なお、ここでは説明の簡略化のために、ポリアセタール樹脂(A)、導電性カーボンブラック(B)、エポキシ化合物(C)をそれぞれ、単に成分(A)、成分(B)、成分(C)と表記する場合がある。
【0074】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用でき、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が好ましい。
【0075】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、例えば、成分(A)及び成分(B)、必要に応じて成分(C)やその他の成分を、押出機を用いて溶融混練することにより得ることができる。
【0076】
押出機を用いて溶融混練する方法としては、特に限定されないが、例えば、すべての成分を押出機トップのフィーダー(以下「トップフィーダー」とも表記する)から供給して溶融混練する方法、成分(B)以外の成分の全部又は一部をトップフィーダーから供給し、残りの成分と成分(B)とを押出機途中のサイドフィーダーから供給して溶融混練する方法、成分(A)の全部又は一部をトップフィーダーから供給し、成分(A)の残りと成分(B)と成分(C)をサイドフィーダーから供給して溶融混練する方法等が挙げられる。サイドフィーダーからの供給は一つのサイドフィーダーから、あるいは異なる複数のサイドフィーダーから供給することができる。
【0077】
上記方法のうち、本発明の目的を達成するという観点から、成分(B)以外の成分の一部をトップフィーダーから供給し、残りの成分と成分(B)とを同一のサイドフィーダーから供給して溶融混練する方法が好ましい。ここで、成分(B)と同時に添加される成分(A)の量は、ポリアセタール樹脂組成物に含有される成分(A)全体の10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、15質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。また、成分(B)を供給する際に、トップフィーダーから供給された成分(A)が、押出機の中で溶融状態であるとさらに好ましい。
【0078】
成分(B)は単独で供給してもよいが、成分(B)が成分(A)中に予め分散されているマスターバッチを供給する方法が好ましい。マスターバッチ中の成分(B)の含有割合は、目的とするポリアセタール樹脂組成物中の成分(B)の含有割合の1.5〜3倍の範囲であることが好ましい。
【0079】
以下、押出機を用いた溶融混練について述べるが、溶融混練における諸条件は、特に導電性カーボンブラック(B)の分散性を適度に制御すること及び、溶融混練時に発生する揮発性のガスを十分に脱気する観点から選択される。
【0080】
(運転条件)
溶融混練の温度は、用いるポリアセタール樹脂(A)の融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には、溶融混練の温度は160℃〜240℃であると好ましい。ポリアセタール樹脂(A)の融点は、JIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求めることができる。また、混練機でのスクリュー回転数は100rpm以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は、30秒間〜1分間が好ましい。
【0081】
(押出機のスクリューデザイン)
押出機のスクリューデザインは、押出機吐出口から樹脂が吐出される際に各成分が完全溶融状態であれば特に限定されないが、少なくとも2か所に、それぞれ1つ又は複数のニーディングスクリュー及び/又は逆送りフライトを含む混練ゾーンがあることが好ましい。(B)成分をサイドフィーダーから供給する場合には、複数の混練ゾーンがあることが好ましく、そのうち上流側の混練ゾーンが(B)成分などを供給するサイドフィーダーよりも上流にあり、下流側の混練ゾーンが最下流のサイドフィーダーよりも下流側にあることが好ましい。上流側の混練ゾーンが、逆送りニーディングスクリュー又は逆送りフライトを含まないとさらにより好ましい。
【0082】
(ベント)
押出機に脱気する装置を設けることにより、溶融混練時に発生する揮発性のガスを効率的に排気することができる。脱気する方法としては、押出機にベント口を設けて大気開放する方法、ベント口から真空脱気する方法、(B)成分などを供給するサイドフィーダーの他に更に別のサイドフィーダーを設ける方法等が挙げられ、これらの方法を適宜、組み合わせて使用することもできる。
【0083】
ベント口を設ける部位については適宜選択できるが、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を安定的に生産するという観点から、(B)成分などを供給するサイドフィーダーの上流側と下流側とに少なくとも1つのベント口を設けることが好ましい。ここで前記の上流側のベント口は大気開放型のものであることが好ましい。一方、下流側のベント口は、真空脱気型若しくはサイドフィーダーを設けることが好ましい。サイドフィーダーを設ける際は、更に下流に真空脱気型のベント口を設けるとより好ましい。
【0084】
真空脱気する際の減圧度は特に限定されないが、0〜0.07MPaが好ましい。
【0085】
また、サイドフィーダーを設ける場合は、サイドフィーダー内のスクリューを動かしても動かさなくてもよい。また、サイドフィーダーから添加剤等を配合してもよいし、何も配合せずにスクリューのみ動かしてもよい。
【0086】
≪成形体≫
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を含む。
【0087】
本実施形態の成形体は寸法精度に優れ、さらに長期に摺動した後も初期の導電レベルを維持できるポリアセタール樹脂組成物を含む成形体である。「寸法精度に優れる」ことにより、本実施形態の成形体は、他の材料(金属など)との一体化が可能となる。また「長期に摺動した後も初期の導電レベルを維持できる」ことにより、本実施形態の成形体を用いた部品の設計を容易にすることができる。
【0088】
長期摺動後に導電レベルが初期の導電レベルより大きく低下してしまう場合は、部品設計時に導電レベルの低下を見越した設計(初期の導電レベルで考えるとオーバースペックとなる)を行う必要があるが、本実施形態の成形体は初期の導電レベルを維持しているため、オーバースペックとなるような設計を行う必要がない。
さらに、設計上目標とする導電性よりもオーバースペックとなるような設計が必要となった場合、使用の初期において、設計上の目標よりも成形体の導電性が高すぎる場合があり、本組成物からなる導電部材が内部に組み込まれているОA機器の故障の原因となる場合がある。
【0089】
本実施形態の成形体は、例えば、上述のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得ることができる。上述のポリアセタール樹脂組成物を成形して成形体を製造する方法は、従来のポリアセタール樹脂組成物を成形する方法と同様であればよく特に限定されない。その方法としては、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)が挙げられる。
【0090】
当該成形方法によって上述のポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体、例えば、射出成形によって得られる射出成形体は、複雑な形状にすることができるため、様々な用途の成形品として使用することが可能である。そのような成形品として、特に限定されないが、例えば、歯車(ギア)、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品;インサート成形の樹脂部品;シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器内部の機構部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器;携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品が挙げられる。
【0091】
また、本実施形態の成形体は、自動車用の部品などとしても用いることも可能である。自動車用の部品としては、特に限定されないが、例えば、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類及び、クリップ類の部品などが挙げられる。本実施形態の成形体は、さらにシャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台並びに排水口及び排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター及びボタン、散水用のノズル及び散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び床材の支持具である建築用品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に用いられる。
【0092】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例よって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0094】
本実施例に用いた各成分は、下記のものを用いた。
【0095】
〔ポリアセタール樹脂(A)〕
(A−1)
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)の温度を80℃に調整した。該重合機に、トリオキサンを4kg/hrで連続的に添加し、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)で連続的に添加し、連鎖移動剤としてメチラールを、得られるポリアセタール樹脂のメルトフローレートが30g/10minとなるような量に調整して連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10
-5molで連続的に添加し重合を行なった。前記重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1質量%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。重合触媒の失活を行なったポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過することにより分取した。分取したポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合することにより混合水溶液を得て、該混合水溶液を120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度により調整し、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で溶融混練することにより不安定末端部分の分解除去を行なった。不安定末端部分の分解除去を行なったポリアセタールコポリマーを、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮し、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズすることによりポリアセタール樹脂が得られた。このようにして得られたポリアセタール樹脂100質量部に対し、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりポリアセタール樹脂(A−1)のペレットを製造した。
【0096】
(A−2)
前述のポリアセタール樹脂(A−1)の製造方法において、連鎖移動剤のメチラールの量を、得られるポリアセタール樹脂のメルトフローレートが45g/10minとなる量に調整した以外は、ポリアセタール樹脂(A−1)と同様にしてポリアセタール樹脂(A−2)のペレットを得た。
【0097】
(A−3)
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)の温度を80℃に調整した。該重合機に、トリオキサンを4kg/hrで連続的に添加し、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)で連続的に添加し、連鎖移動剤としてメチラールを、得られるポリアセタール樹脂のメルトフローレートが30g/10minとなるような量に調整して連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して2.0×10
-5molで連続的に添加し重合を行なった。前記重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1質量%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。重合触媒の失活を行なったポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過することにより分取した。分取したポリアセタールコポリマー100質量部に対して、2質量%のトリエチルアミンを含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合することにより混合水溶液を得て、該混合水溶液を120℃で乾燥した。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で溶融混練することにより不安定末端部分の分解除去を行なった。不安定末端部分の分解除去を行なったポリアセタールコポリマーを、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮し、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズすることによりポリアセタール樹脂が得られた。このようにして得られたポリアセタール樹脂100質量部に対し、メラミン0.3質量部を添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりポリアセタール樹脂(A−3)のペレットを製造した。
【0098】
〔導電性カーボンブラック(B)〕
(B−1)DBP吸油量420mL/100g、BET比表面積1000m
2/gのカーボンブラック
(B−2)DBP吸油量385mL/100g、BET比表面積800m
2/gのカーボンブラック
(B−3)DBP吸油量180mL/100g、BET比表面積51m
2/gのカーボンブラック
(B−4)DBP吸油量76mL/100g、BET比表面積85m
2/gのカーボンブラック
【0099】
なお、本実施例において、DBP吸油量は、ASTM D2415−65Tに準じて測定し、また、BET比表面積は、窒素吸着法により測定した。
【0100】
〔エポキシ化合物(C)、エポキシ化合物(C)の硬化促進剤〕
エポキシ化合物(C)としてクレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(旭化成イーマテリアルズ(株)製、ECN−1299)を用い、エポキシ化合物(C)の硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製、以下「TPP」とも記す。)を用いた。
【0101】
〔その他の成分〕
〔脂肪族アルコール〕
脂肪族アルコールとして、ベヘニルアルコールを用いた。
【0102】
〔オレフィン系樹脂〕
オレフィン系樹脂として、1−ブテン含有率90質量%、エチレン含有率10質量%のオレフィン共重合体を用いた。JIS K7210(190℃、2.16kg条件)に基づく該オレフィン共重合体のMFRは40g/10minであった。
【0103】
〔ワックス〕
ワックスとして、エチレンビスステアリルアミド(ポリアミドワックス)を用いた。
【0104】
(押出機(
図1)の説明)
本実施例では、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−48SS押出機(L/D=58.4、ベント付き)を用いてポリアセタール樹脂組成物を製造した。該2軸押出機のメインスクリューの径は、48mmであった。本押出機の概略図を
図1に示す。
【0105】
(ポリアセタール樹脂組成物の製造方法)
<製造方法I>
図1に示す2軸押出機において、サイドフィーダーを設けず、バレルゾーン1を冷却水により冷却し、バレルゾーン2〜6を220℃に、バレルゾーン7〜14を190℃に、ダイヘッド15を210℃に設定した。前記2軸押出機に、ポリアセタール樹脂(A)、及び必要に応じてエポキシ化合物(C)、エポキシ化合物(C)の硬化促進剤(トリフェニルホスフィン)の固相状態での混合物(以下、この混合物を「混合物M」とも記す。)を定量フィーダー17より供給し、導電性カーボンブラック(B)を定量フィーダー18より供給し、押出機モーター16のスクリュー回転数300rpm、押出量200kg/hの条件で溶融混練することにより混練物を得た。なお、脱気ベント22より真空ポンプで脱気した。得られた混練物をストランドバスで固化した後にペレタイズし、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0106】
<製造方法II>
2軸押出機において、サイドフィーダー1(定量フィーダー19)をバレルゾーン7の1か所に設置し、該サイドフィーダー1のスクリューを50rpmで回転させるのみで該サイドフィーダー1からは何も供給しない状態とした以外は製造方法Iと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0107】
<製造方法III>
2軸押出機において、サイドフィーダー1(定量フィーダー19)をバレルゾーン7の1か所に設置し、該サイドフィーダー1のスクリューを350rpmで回転させ、導電性カーボンブラック(B)の供給位置を定量フィーダー19とした以外は製造方法Iと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0108】
<製造方法IV>
2軸押出機において、サイドフィーダー1(定量フィーダー19)とサイドフィーダー3(定量フィーダー21)とを、順にバレルゾーン7とバレルゾーン10との2か所に設置し、バレルゾーン7に設置したサイドフィーダー1のスクリューを50rpmで回転させ、バレルゾーン10に設置したサイドフィーダー3のスクリューを350rpmで回転させ、サイドフィーダー1からは何も供給せず、導電性カーボンブラック(B)の供給位置をサイドフィーダー3とした以外は製造方法IIIと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0109】
<製造方法V>
2軸押出機において、サイドフィーダー1(定量フィーダー19)のスクリューを350rpmで回転させ、サイドフィーダー3(定量フィーダー21)のスクリューを50rpmで回転させ、サイドフィーダー3からは何も供給しない状態とし、導電性カーボンブラック(B)の供給位置をサイドフィーダー1とした以外は製造方法IVと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0110】
<製造方法VI>
2軸押出機において、混合物Mの供給位置を定量フィーダー17(トップフィーダー1)及び定量フィーダー20(サイドフィーダー2)の2か所とし、混合物Mの定量フィーダー17及び20からの供給割合(質量)を95:5(定量フィーダー17:定量フィーダー20)とした以外は製造方法Vと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0111】
<製造方法VII>
混合物Mの定量フィーダー17及び20からの供給割合(質量)を70:30(定量フィーダー17:定量フィーダー20)とした以外は製造方法VIと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0112】
<製造方法VIII>
2軸押出機において、22のベント口を大気開放型とした以外は製造方法VIIと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0113】
<製造方法IX>
2軸押出機において、サイドフィーダー3(定量フィーダー21)のスクリューを回転させない状態とした以外は製造方法VIIと同様に、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0114】
<製造方法X>
まず、製造方法VIIにより、ポリアセタール樹脂組成物中のカーボンブラックの濃度が目的とする濃度の2倍であるポリアセタール樹脂とカーボンブラックとのマスターバッチペレット(以降「CB−MB」とも表記する)を作製した。その後、前記2軸押出機に、混合物Mを定量フィーダー17より供給し、CB−MBを定量フィーダー18より供給し、押出機モーター16のスクリュー回転数300rpm、押出量200kg/hの条件で溶融混練することにより混練物を得た。なお、脱気ベント22より真空ポンプで脱気した。得られた混練物をストランドバスで固化した後にペレタイズすることにより、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
【0115】
(メルトフローレート(MFR)の測定方法)
ポリアセタール樹脂組成物について、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で、JIS K 7210に則りメルトフローレート(MFR)の測定を行った。
【0116】
(溶融粘度の測定方法)
JIS K 7199に基づき、210℃、せん断速度100s
−1条件下で測定した溶融粘度V
1と、210℃、せん断速度1000s
−1条件下で測定した溶融粘度V
2との比V
1/V
2を求めた。
【0117】
(摺動試験前後の体積抵抗率の測定方法)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、ポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベルを得た。このダンベルから、30×20×4mmの平板を切り出し、この平板を体積抵抗率測定用サンプルとした。該体積抵抗率測定用サンプルを用いてJIS K 7194に則り摺動試験前後の体積抵抗率の測定を以下のとおり行った。
【0118】
体積抵抗率(導電性)の測定には、三菱化学製ロレスタ−GPを用いた。プローブとしては四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194対応)を用い、印加電圧90Vの条件で前記サンプル(平板)の体積抵抗率の測定を行った。このときの測定値を「摺動試験前の体積抵抗率」とした。
【0119】
上記要領で前記サンプル(平板)の体積抵抗率を測定した後、前記サンプル(平板)を往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製 AFT−15MS型)にセットし、荷重2kg、線速度30mm/sec、往復距離20mmの条件下、相手材料をSUS球(SUS304、直径2.5mm)として環境温度23℃で10000回の往復試験を行った。この往復試験の後、前記サンプル(平板)についた摺動痕部に四探針のプローブが接触するようにし、上記と同様に前記サンプル(平板)の体積抵抗率を測定した。このときの測定値を「摺動試験後の体積抵抗率」とした。
【0120】
(成形性試験)
ポリアセタール樹脂組成物の成形性試験を以下のとおり行った。
東芝機械(株)製IS−100GN射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度70℃に設定し、射出時間15秒、冷却時間10秒の射出条件で、ポリアセタール樹脂組成物から100×100×1.5mmの平板を連続100ショット成形した。射出圧力は成形するポリアセタール樹脂組成物により調節し、上述の金型にポリアセタール樹脂組成物が充填するようにした。この際、金型からの突出ピンの突出し速度を500mm/secに設定した。この成形性試験において、100ショットのうち成形片(平板)にヒビ・割れ・欠け等の欠損が生じなかった成形片の数を数えた。欠損が生じなかった成形片の数が多いほど、成形性に優れると判断した。なお、突出しピンの位置は
図2に示すとおりとした。
【0121】
(寸法精度の測定方法)
住友重機工業(株)製の射出成形機(商品名「SH−75」)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件にて、ポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、右ねじれ方向、ピッチ円直径80mm、モジュール1、ねじれ角20度、歯幅12mm、ウエッブの厚さ2mm、リブの数12本のはすば歯車を作製した。このようにして得られたはすば歯車について、大阪精密機械機械(株)製の歯車精度測定器を用い、JIS B 1702−1に準拠して、90度の間隔の4歯における歯形誤差、及び歯筋誤差を測定した。その歯形誤差と歯筋誤差との数値(μm)が小さいほど、はすば歯車の精度が優れていると判断した。
【0122】
(残渣量)
ポリアセタール樹脂組成物を空気雰囲気500℃条件下で1時間焼却したときの残渣量(焼却後の重量/焼却前の重量×100)を測定した。
【0123】
[
参考例1〜8、実施例9〜37]
表1及び2に示す量の割合で各成分を配合し、表1及び2に示す製造方法によりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造し、得られたペレットの物性評価を上述の方法で行った。結果を表3及び4に示す。
【0124】
[比較例1〜32]
表5及び6に示す量の割合で各成分を配合し、表5及び6に示す製造方法によりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造し、得られたペレットの物性評価を上述の方法で行った。結果を表7及び8に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
本出願は、2012年1月17日出願の日本特許出願(特願2012−007424号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。