特許第5913824号(P5913824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913824
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】カムキャリアの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01L 3/24 20060101AFI20160414BHJP
   F01L 1/04 20060101ALI20160414BHJP
   B23B 41/12 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F01L3/24 D
   F01L1/04 D
   B23B41/12
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-78575(P2011-78575)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-211570(P2012-211570A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2013年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】浅見 雅彦
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−164216(JP,A)
【文献】 特開2003−326407(JP,A)
【文献】 特開2009−028936(JP,A)
【文献】 特開2007−154865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/04−1/46
F01L 3/24
B23B 35/00
B23B 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド本体にボルト部材を用いて固定されるカムキャリアに、カムシャフトを支持するカム孔を形成するカムキャリアの製造装置であって、
前記カムキャリアが設置されるワーク支持台に設けられ、前記ボルト部材が案内される前記カムキャリアのボルト孔部を支持する複数の支持凸部と、
前記支持凸部の反対側から前記ボルト孔部に接触するアーム部材を備え、前記ボルト孔部を前記支持凸部に押し付ける複数のクランプ機構と、
前記クランプ機構によって前記ボルト孔部を押し付けて前記カムキャリアを変形させた状態のもとで、回転工具を軸方向に移動させて前記カム孔を加工する工具駆動機構と、を有し、
前記複数の支持凸部のうち対角に配置される2つの支持凸部は、前記ボルト孔部に挿入される位置決めピンを備える、ことを特徴とするカムキャリアの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載のカムキャリアの製造装置において、
前記支持凸部の少なくとも1つは、他の前記支持凸部と高さ寸法が異なることを特徴とするカムキャリアの製造装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のカムキャリアの製造装置において、
前記ワーク支持台と前記支持凸部との間には薄板部材が設けられ、前記薄板部材を変更して前記支持凸部の高さ寸法が調整されることを特徴するカムキャリアの製造装置。
【請求項4】
シリンダヘッド本体にボルト部材を用いて固定されるカムキャリアに、カムシャフトを支持するカム孔を形成するカムキャリアの製造方法であって、
複数の支持凸部を備えるワーク支持台に前記カムキャリアを設置することにより、前記ボルト部材が案内される前記カムキャリアのボルト孔部を複数の支持凸部によって支持し、前記複数の支持凸部のうち対角に配置される2つの支持凸部に設けられる位置決めピンを前記ボルト孔部に挿入する設置ステップと、
前記支持凸部の反対側から前記ボルト孔部に接触するアーム部材を備える複数のクランプ機構により、前記カムキャリアの前記ボルト孔部を前記支持凸部に押し付ける押付ステップと、
前記クランプ機構によって前記ボルト孔部を押し付けて前記カムキャリアを変形させた状態のもとで、回転工具を軸方向に移動させて前記カム孔を加工する加工ステップと、を有することを特徴とするカムキャリアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムキャリアにカム孔を形成するカムキャリアの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動弁機構を有する複雑なシリンダヘッドの加工作業や組立作業の簡単にするため、シリンダヘッドをシリンダヘッド本体およびカムキャリアに分割する分割式のシリンダヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシリンダヘッドを構成するカムキャリアには、カムシャフトを支持するカム孔が形成されている。しかしながら、シリンダヘッド本体に組み付ける際に、カムキャリアが変形してしまうことから、カム孔を高精度に加工するためには、カムキャリアの変形状態を再現しながら加工することが必要となっている。そこで、カムキャリアをシリンダヘッド本体に組み付けることにより、カムキャリアを変形させた状態のもとで孔あけ加工が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−8603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シリンダヘッド本体に対してカムキャリアを組み付ける際には、複数本のボルト部材を締め付ける必要があることから、孔あけ加工における作業コストを増大させる要因となっていた。また、孔あけ加工のためにボルト部材を締結することは、ボルト部材やネジ孔を摩耗させてしまう要因となることから、孔あけ加工方法の改善が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、作業コストを増大させることなくカムキャリアに対してカム孔を高精度に加工することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカムキャリアの製造装置は、シリンダヘッド本体にボルト部材を用いて固定されるカムキャリアに、カムシャフトを支持するカム孔を形成するカムキャリアの製造装置であって、前記カムキャリアが設置されるワーク支持台に設けられ、前記ボルト部材が案内される前記カムキャリアのボルト孔部を支持する複数の支持凸部と、前記支持凸部の反対側から前記ボルト孔部に接触するアーム部材を備え、前記ボルト孔部を前記支持凸部に押し付ける複数のクランプ機構と、前記クランプ機構によって前記ボルト孔部を押し付けて前記カムキャリアを変形させた状態のもとで、回転工具を軸方向に移動させて前記カム孔を加工する工具駆動機構と、を有し、前記複数の支持凸部のうち対角に配置される2つの支持凸部は、前記ボルト孔部に挿入される位置決めピンを備える、ことを特徴とする。
【0007】
本発明のカムキャリアの製造装置は、前記支持凸部の少なくとも1つは、他の前記支持凸部と高さ寸法が異なることを特徴とする。
【0008】
本発明のカムキャリアの製造装置は、前記ワーク支持台と前記支持凸部との間には薄板部材が設けられ、前記薄板部材を変更して前記支持凸部の高さ寸法が調整されることを特徴する。
【0009】
本発明のカムキャリアの製造方法は、シリンダヘッド本体にボルト部材を用いて固定されるカムキャリアに、カムシャフトを支持するカム孔を形成するカムキャリアの製造方法であって、複数の支持凸部を備えるワーク支持台に前記カムキャリアを設置することにより、前記ボルト部材が案内される前記カムキャリアのボルト孔部を複数の支持凸部によって支持し、前記複数の支持凸部のうち対角に配置される2つの支持凸部に設けられる位置決めピンを前記ボルト孔部に挿入する設置ステップと、前記支持凸部の反対側から前記ボルト孔部に接触するアーム部材を備える複数のクランプ機構により、前記カムキャリアの前記ボルト孔部を前記支持凸部に押し付ける押付ステップと、前記クランプ機構によって前記ボルト孔部を押し付けて前記カムキャリアを変形させた状態のもとで、回転工具を軸方向に移動させて前記カム孔を加工する加工ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クランプ機構によってカムキャリアのボルト孔部を支持凸部に押し付けた状態のもとで、回転工具を軸方向に移動させてカムキャリアにカム孔を加工している。これにより、カムキャリアを変形させながらカム孔を加工することができ、カム孔の真円度を高めることが可能となる。しかも、クランプ機構を用いるようにしたので、煩雑な作業を伴うことなくカムキャリアを変形させることができ、作業コストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シリンダヘッドの構成を示す部分断面図である。
図2】シリンダヘッドの構成を示す分解図である。
図3】(a)は図2のカムキャリアを上方から示す平面図であり、(b)は図2のカムキャリアを下方から示す底面図である。
図4】は本発明の一実施の形態であるカムキャリアの製造装置を示す平面図である。
図5図4のA−A線に沿って製造装置を示す断面図である。
図6】カムキャリアが設置された状態の製造装置を示す平面図である。
図7図6のA−A線に沿ってカムキャリアおよび製造装置を示す断面図である。
図8】(a)〜(c)は本発明の一実施の形態であるカムキャリアの製造方法の手順を示す説明図である。
図9】(a)はカム孔を加工した後のカムキャリアを単体で示す概略図であり、(b)はシリンダヘッド本体にカムキャリアを組み付けた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はシリンダヘッド10の構成を示す部分断面図である。また、図2はシリンダヘッド10の構成を示す分解図である。図1および図2に示すように、エンジンの構成部品であるシリンダヘッド10は、図示しない吸気バルブや排気バルブ等が組み付けられるシリンダヘッド本体11と、このシリンダヘッド本体11に複数本のキャリアボルト(ボルト部材)12を用いて締結されるカムキャリア13とを有している。すなわち、図示するシリンダヘッド10は、シリンダヘッド本体11およびカムキャリア13によって構成される分割式のシリンダヘッドとなっている。また、カムキャリア13には貫通孔14が形成されており、シリンダヘッド本体11には貫通孔14に対向するネジ孔15が形成されている。シリンダヘッド本体11に対してカムキャリア13を組み付ける際には、キャリアボルト12が貫通孔14を通過してネジ孔15に対して締め付けられる。
【0013】
また、カムシャフト16を支持するカムキャリア13は、キャリア本体17とこれに組み付けられるカムキャップ18とを備えている。キャリア本体17およびカムキャップ18には半円形の軸受部17a,18aが形成されており、対向する軸受部17a,18aによってカムシャフト16を支持するカム孔19が形成されている。カムシャフト16のジャーナル部16aは、キャリア本体17とカムキャップ18との間に挟まれており、カムキャリア13のカム孔19に回転自在に支持されている。なお、カムキャップ18には貫通孔20が形成されており、キャリア本体17には貫通孔20に対向するネジ孔21が形成されている。キャリア本体17に対してカムキャップ18を組み付ける際には、キャップボルト22が貫通孔20を通過してネジ孔21に対して締め付けられる。
【0014】
図3(a)は図2のカムキャリア13を上方から示す平面図であり、図3(b)は図2のカムキャリア13を下方から示す底面図である。図3(a)および(b)に示すように、カムキャリア13のキャリア本体17は、カムシャフト16の軸方向に平行となる2本のフレーム30a,30bを有するとともに、カムシャフト16の軸方向に直交する3本のフレーム30c〜30eを有している。また、カムシャフト16に直交する3本のフレーム30c〜30eには、それぞれ2つのカムキャップ18が取り付けられており、3本のフレーム30c〜30eによって2本のカムシャフト16が支持される。さらに、各フレーム30a〜30eには、キャリアボルト12を案内するための貫通孔14が形成されるとともに、この貫通孔14の表側と裏側の開口端の周囲には平滑面31a,31bが形成されている。この貫通孔14および平滑面31a,31bによって貫通孔部(ボルト孔部)32が形成されている。なお、外側に配置される4本のフレーム30a〜30c,30eによって外枠が形成され、この外枠はシリンダヘッド本体11の外縁形状とほぼ一致している。
【0015】
図4は本発明の一実施の形態であるカムキャリア13の製造装置40を示す平面図である。また、図5図4のA−A線に沿って製造装置40を示す断面図である。なお、図5においては図4に示す構成の一部を省略して図示している。図4および図5に示すように、製造装置40はワーク支持台41を有しており、このワーク支持台41には複数の基準パッド(支持凸部)42が設けられている。ワーク支持台41に締結ボルト43を用いて組み付けられる基準パッド42は、上部に接触面44aを備えたパッド本体44と、薄板状のシム(薄板部材)45とを有している。このように、ワーク支持台41とパッド本体44との間にはシム45が挟み込まれており、このシム45の厚みを変更することで所定の基準高さ位置に対する接触面44aの高さ位置を調整することが可能となっている。これらの基準パッド42は、カムキャリア13の貫通孔部32に対応する位置に取り付けられている。すなわち、基準パッド42の接触面44aがカムキャリア13の貫通孔14および平滑面31a,31bに対向するように配置されている。また、対角上に配置される基準パッド42には、接触面44aから上方に突出するノックピン46が固定されている。
【0016】
また、図4および図5に示すように、ワーク支持台41には、各基準パッド42に隣接して回動型のクランプシリンダ50および傾動型のクランプシリンダ51が設置されている。回動型のクランプシリンダ(クランプ機構)50は、油圧シリンダ52に連結される回動アーム(アーム部材)53を有しており、この回動アーム53の先端には押付部材54が固定されている。図5に矢印αで示すように、回動アーム53を下降させることにより、図4に矢印αで示すように、回動アーム53を回動させることが可能となっている。すなわち、回動アーム53は、押付部材54を基準パッド42の接触面44aに近づけるように、回動しながら下降することになる。また、傾動型のクランプシリンダ(クランプ機構)51は、油圧シリンダ55に連結される傾動アーム(アーム部材)56を有しており、この傾動アーム56の先端には押付部材57が固定されている。油圧シリンダ55を作動させることにより、クランプシリンダ51の傾動アーム56は、押付部材57を基準パッド42の接触面44aに近づけるように傾動することになる。なお、油圧シリンダ52,55はエアシリンダであっても良い。
【0017】
また、図4および図5に示すように、製造装置40には、カムキャリア13にカム孔19を切削加工するため、一対のリーマー(回転工具)58を備えた工具駆動機構59が設けられている。この工具駆動機構59には図示しない電動モータや油圧シリンダが組み込まれており、リーマー58を回転させながら軸方向に前後移動させることが可能となっている。
【0018】
図6はカムキャリア13が設置された状態の製造装置40を示す平面図である。図7図6のA−A線に沿ってカムキャリア13および製造装置40を示す断面図である。なお、図7においては図6に示す構成の一部を省略して図示している。また、図8(a)〜(c)は本発明の一実施の形態であるカムキャリア13の製造方法の手順を示す説明図である。なお、図8(b)および(c)に記載される白抜きの矢印は、クランプシリンダ50,51のクランプ力を示している。図6図7および図8(a)に示すように、ワーク支持台41には、基準パッド42の接触面44aにカムキャリア13の貫通孔部32が接するようにカムキャリア13が設置される。すなわち、基準パッド42の接触面44aが平滑面31bに接するように、ワーク支持台41にカムキャリア13が設置される。この設置ステップにおいては、一部の基準パッド42に設けられるノックピン(位置決めピン)46が、カムキャリア13の貫通孔14に挿入されることにより、ワーク支持台41に対するカムキャリア13の位置決めが為されるようになっている。なお、カムキャリア13のカム孔19が形成される部位には予め下孔60が加工されている。
【0019】
続いて、図6図7および図8(b)に示すように、各クランプシリンダ50,51を作動させることにより、回動アーム53や傾動アーム56の押付部材が下降し、基準パッド42に対してカムキャリア13が押し付けられる(押付ステップ)。ここで、ワーク支持台41に設置される各基準パッド42においては、シリンダヘッド本体11にカムキャリア13を組み付けたときの変形形状に基づいて、所定の基準高さ位置に対する接触面44aの高さ位置が調整されている。すなわち、各クランプシリンダ50,51を作動させてカムキャリア13を基準パッド42の接触面44aに押し付けることにより、シリンダヘッド本体11にカムキャリア13を組み付けたときと同様の形状となるように、カムキャリア13を変形させることが可能となる。なお、本実施の形態においては、中央の基準パッド42の接触面44aのみが、他の8個の基準パッド42の接触面44aよりも、数十マイクロメートル高くなるように設定されている。
【0020】
続いて、図6図7および図8(c)に示すように、クランプシリンダ50,51によってカムキャリア13が変形状態に保持されると、工具駆動機構59を作動させることによりカムキャリア13に向けてリーマー58が前進移動する。これにより、カムキャリア13を変形させた状態のもとで、カムキャリア13にカム孔19を加工することが可能となる。すなわち、シリンダヘッド本体11に組み付けた状態で真円度や真直度が高くなるように、カムキャリア13に対してカム孔19を加工することが可能となる。ここで、図9(a)はカム孔19を加工した後のカムキャリア13を単体で示す概略図であり、図9(b)はシリンダヘッド本体11にカムキャリア13を組み付けた状態を示す概略図である。図9(a)に示すように、カム孔19を加工した後にカムキャリア13をワーク支持台41から取り外すと、カムキャリア13の拘束状態が解かれることから、カムキャリア13が当初の形状に戻ってカム孔19の真円度等が低下することになる。しかしながら、図9(b)に示すように、カムキャリア13をシリンダヘッド本体11に対して組み付けることにより、孔あけ加工時と同様の変形状態が再現されることから、カムキャリア13の変形に伴ってカム孔19の真円度等が向上することになる。しかも、キャリアボルト12が案内される貫通孔部32を基準パッド42およびクランプシリンダ50,51によって拘束したので、シリンダヘッド本体11に組み付けた状態におけるカムキャリア13の変形状態を精度良く再現することが可能となる。このような手順によってカムキャリア13にカム孔19を加工することにより、シリンダヘッド本体11に組み付けた状態でのカム孔19の真円度等を高めることができ、カムキャリア13に支持されるカムシャフト16を滑らかに回転させることが可能となる。
【0021】
また、前述したように、基準パッド42にはシム45が組み付けられており、このシム45を変更(交換,増加,削減)することで、所定の基準高さ位置に対する基準パッド42の接触面44aの高さ位置を微調整することが可能である。このように、基準パッド42の高さ寸法を調整することができるため、容易にカムキャリア13の変形量を調整することができ、シリンダヘッド本体11に対してカムキャリア13を組み付けたときの変形状態を精度良く再現することが可能となる。また、最初に各基準パッド42の高さ寸法を決定する際には、各基準パッド42の高さ寸法を調整しながらカム孔19の加工・計測が繰り返される。すなわち、ワーク支持台41上でカムキャリア13にカム孔19を加工した後に、このカムキャリア13をシリンダヘッド本体11に取り付けてカム孔19の形状が計測される。そして、カム孔19の形状が所定の許容範囲から外れる場合には、各基準パッド42の高さ寸法が再調整される。このような各基準パッド42の調整作業は、シリンダヘッド本体11にカムキャリア13を組み付けた状態でのカム孔19の形状が所定の許容範囲に含まれるまで繰り返されることになる。
【0022】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、設置ステップ、押付ステップ、加工ステップを一連の加工作業として自動的に実行しても良く、ステップ毎に作業者が開始ボタン等を操作して実行しても良い。また、前述の説明では、回転工具としてリーマー58を挙げているが、これに限られることはなく、他の回転工具を用いるようにしても良い。また、前述の説明では、カムキャリア13に設けられる全ての貫通孔部32をクランプシリンダ50,51によって押し込んでいるが、これに限られることはなく、一部の貫通孔部32をクランプシリンダ50,51によって押し込むようにしても良い。
【符号の説明】
【0023】
11 シリンダヘッド本体
12 キャリアボルト(ボルト部材)
13 カムキャリア
16 カムシャフト
19 カム孔
32 貫通孔部(ボルト孔部)
40 製造装置
41 ワーク支持台
42 基準パッド(支持凸部)
45 シム(薄板部材)
50 クランプシリンダ(クランプ機構)
51 クランプシリンダ(クランプ機構)
53 回動アーム(アーム部材)
56 回動アーム(アーム部材)
58 リーマー(回転工具)
59 工具駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9