特許第5920739号(P5920739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920739地盤試料採取装置および地盤試料採取方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5920739
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】地盤試料採取装置および地盤試料採取方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20160428BHJP
   E21B 25/00 20060101ALI20160428BHJP
   G01N 1/08 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   E02D1/04
   E21B25/00
   G01N1/08 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-231811(P2014-231811)
(22)【出願日】2014年11月14日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】506332605
【氏名又は名称】基礎地盤コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】酒井 運雄
(72)【発明者】
【氏名】立川 日出男
(72)【発明者】
【氏名】湯川 浩則
(72)【発明者】
【氏名】奥沢 泰三
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−014960(JP,A)
【文献】 特開2004−045081(JP,A)
【文献】 特開平11−071744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/04
E21B 25/00
G01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に穿設したボーリング孔底に試料収納管をその軸方向に降下させて該試料収納管内に地盤試料を採取する地盤試料採取装置において、ロッドの先端部に取付けられたサンプラーヘッドと、このサンプラーヘッドに上端部が取付けられた四角管状の貫入管と、該貫入管の下端部に固定された外テーパを有するシューと、該シューに下端部が固定され、前記貫入管の内壁面との間に隙間を介して設けられた試料収納管と、前記貫入管の内壁面と試料収納管との間の隙間に設けられ、作動時には前記シュー内壁面から段違いに複数枚突出し、前記試料収納管内に挿入された地盤試料を密閉できる薄板シャッターと、前記試料収納管内部の液体を排出できる液体排出手段とで構成したことを特徴とする地盤試料採取装置。
【請求項2】
地盤に穿設したボーリング孔底に試料収納管をその軸方向に降下させて該試料収納管内に地盤試料を採取する地盤試料採取装置において、ロッドの先端部に取付けられたサンプラーヘッドと、このサンプラーヘッドに上端部が取付けられた四角管状の貫入管と、該貫入管の下端部に固定された外テーパを有するシューと、該シューに下端部が固定され、前記貫入管の内壁面との間に隙間を介して設けられた試料収納管と、前記貫入管の内壁面と試料収納管との間の隙間に設けられ、作動時には前記シュー内壁面から段違いに複数枚突出し、前記試料収納管内に挿入された地盤試料を密閉できる薄板シャッターと、前記試料収納管内部の液体を排出できる液体排出手段と、前記薄板シャッターで地盤試料を密閉した後、地盤試料が地盤中と同等の圧力になるように段違いに突出した複数枚の薄板シャッター間に粘性液体を供給し加圧する加圧手段とで構成したことを特徴とする地盤試料採取装置。
【請求項3】
地盤に穿設したボーリング孔底に試料収納管をその軸方向に降下させて該試料収納管内に地盤試料を採取する地盤試料採取装置において、該地盤試料採取装置をロッドの先端部に取付けられたサンプラーヘッドと、このサンプラーヘッドに上端部が取付けられた四角管状の貫入管と、該貫入管の下端部に固定された外テーパを有するシューと、該シューに下端部が固定され、前記貫入管の内壁面との間に隙間を介して設けられた試料収納管と、前記貫入管の内壁面と試料収納管との間の隙間に設けられ、作動時には前記シュー内壁面および試料収納管の上端部付近からそれぞれ段違いに複数枚突出し、前記試料収納管内に挿入された地盤試料を密閉できる薄板シャッターと、前記試料収納管内部の液体を排出できる液体排出手段と、前記薄板シャッターで地盤試料を密閉した後、地盤試料が地盤中と同等の圧力になるように段違いに突出した複数枚の薄板シャッター間に粘性液体を供給し加圧する加圧手段とで構成したことを特徴とする地盤試料採取装置。
【請求項4】
前記試料収納管は、試料収納管内に密封された地盤試料の飽和度を計測できる飽和度計測装置を備えることを特徴とする請求項2又は3いずれかに記載の地盤試料採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として液状化検討地盤を対象とし、地中から固・液・気の三相を原地盤に近い状態で試料として採取できる地盤試料採取装置および地盤試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主たる液状化対象地盤は、緩い乃至中密程度の未固結粒状体(砂質・礫)系地盤で、サンプリング時の試料の脱落・流出を防止するためには、鋸状の円筒形キャッチャを折り曲げながら試料の下端部に圧入して、放射状の隙間は出来るがほぼ閉塞された状態で、試料の品質保持と落下を防止する特許文献1の方法などが開発され実用化さられてきた。しかしながら、試料の脱落・流出防止、特に微細な非粘着性土粒子の場合、従来の鋸状円筒形キャッチャを折り曲げながら試料下端部に圧入する方法ではキャッチャの隙間から細粒土が流出することがある。
【0003】
これに対し、特許文献2によると、通常、円形であったものを四角筒を地盤に圧入してから、その先端部を可撓性プレートからなるシャッターをワイヤーで引き込むことで開口部を閉鎖して試料の脱落を防ぐ工法が記載されているが、その後、文献などによる実施例は報告されていない。
【0004】
液状化の対象となる砂質系地盤では、飽和度が100%より少しでも小さい(空気が混入している)と液状化強度は大きくなるので、液状化対策に空気混入法が考案されてきた(例:特許文献3)。そのため、原位置の飽和度を求める要求が出てきたが、確立された手法は未だ存在していないのが現状である。
【0005】
上記のような常温サンプリングではなく、凍結法が一部で行われてきたが、常温から0℃に地温を下げると間隙流体中の気泡は縮小され、その体積分だけ飽和度は大きくなる。さらに0℃の間隙流体が凍結すると、凍結フロントからH2O以外の物質は排出される。気泡は土粒子の形状によって異なるが、尖ったところに気泡は付着する性質があるので排出量は不定である。さらに、凍結により水は1/11分だけ膨脹するなどの理由で飽和度の測定精度は不明である。しかし、室内液状化強度試験では飽和度を100%にしてから試験をする基準になっているため、土粒子の骨格にのみ着目され、凍結サンプリング試料が高品質とされてきた経緯があり、飽和度測定でも凍結サンプリングが推奨される間違ったケースがある。
【0006】
特許文献4では原位置と保水状態を変えないことに注目した常温工法が提案されている。しかし、地下水面下での間隙流体の飽和度と地上とでは空気と水の圧力による膨張率が大きく異なるため、見かけ上、保水状態を保っても飽和度は当然変化することになる。
間隙流体の体積変化と流体圧の関係から飽和度を求めるための要素技術としては、体積変化を発生させる方法として、特許文献5では金属製メンブレンを流体圧で変形させる手法があり、世界中で広く使われている。一方、土中の間隙流体圧を測定する手法としては特許文献6がラバーディスクと注射針付の間隙圧計で測定する方法が良く使われている。
採取試料内の圧力保持の方法については、特許文献1の封入潤滑剤としての粘性液体の使用とフレキシブルホースによる水中での試料引揚手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平03−295922号公報
【特許文献2】特開平11−71744号公報
【特許文献3】特開2001−193048号公報
【特許文献4】特開2014−29297号公報
【特許文献5】特開平3−189537号公報
【特許文献6】特開昭56−500581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、サンプラーを引揚げる時、試料収納管から試料が脱落しやすい軟い・緩い地盤試料であっても土粒子骨格の品質を原状地盤に近い状態の高品質試料を確実に採取でき、間隙流体の飽和度を原状地盤に近い状態で確実に採取できる地盤試料採取装置および地盤試料採取方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は地盤に穿設したボーリング孔底に試料収納管をその軸方向に降下させて該試料収納管内に地盤試料を採取する地盤試料採取装置において、ロッドの先端部に取付けられたサンプラーヘッドと、このサンプラーヘッドに上端部が固定あるいはスライド移動可能に取付けられた四角管状の貫入管と、該貫入管の下端部に固定された外テーパを有するシューと、該シューに下端部が固定され、前記貫入管の内壁面との間に隙間を介して設けられた試料収納管と、前記貫入管の内壁面と試料収納管との間の隙間に設けられ、作動時には前記シュー内壁面から段違いに複数枚突出し、前記試料収納管内に挿入された地盤試料を密閉できる薄板シャッターと、前記試料収納管内部の液体を排出できる液体排出手段とで地盤試料採取装置を構成している。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1の発明では、複数枚の薄板シャッターが段違いに左右から試料収納管の下端部を閉塞するので、細粒土も脱落・流出することはない。
(2)試料収納管内から液体を排出できる液体排出手段を有するので、ボーリング孔底に泥水等が溜まっていても、試料収納管圧入する際に液体排出手段から排出できるので、試料に負荷がかかることなく、原状の状態で採取することができる。
(3)請求項2の発明も前記(1)、(2)と同様な効果が得られるとともに、試料の下端部の二重シャッターに粘性液体を供給し試料内の間隙圧と同等な圧力を加圧することができるので、試料の間隙圧が保たれた状態で、飽和度をボーリング孔地上部で測定できる。
(4)請求項3の発明も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、ボーリングによりボーリング孔底が荒れ、原状の地盤と飽和度等が異なっていても、試料の上部にもシャッターを圧入し、ボーリング孔底部付近の地盤試料を隔離でき、上部の薄板シャッターと下部の薄板シャッターとの間の原状に近い地盤試料を取得する事ができる。
(5)請求項4の発明も前記(1)〜(4)と同様な効果が得られるとともに、地盤試料採取装置を引き上げなくても地中で飽和度の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施するための第1の形態の工程図。
図2】本発明を実施するための第1の形態の地盤試料採取装置の縦断面図。
図3図2の3−3線断面図。
図4図2の4−4線断面図。
図5】本発明を実施するための第1の形態の試料収納管挿入工程の説明図。
図6】本発明を実施するための第1の形態の地盤試料密閉工程の説明図。
図7】本発明を実施するための第1の形態の加圧工程の説明図。
図8】本発明を実施するための第2の形態の工程図。
図9】本発明を実施するための第2の形態の地盤試料採取装置の縦断面図。
図10】本発明を実施するための第2の形態の試料収納管挿入工程の説明図。
図11】本発明を実施するための第3の形態の工程図。
図12】本発明を実施するための第3の形態の地盤試料採取装置の縦断面図。
図13】本発明を実施するための第3の形態の試料収納管挿入工程の説明図。
図14】本発明を実施するための第4の形態の工程図。
図15】本発明を実施するための第4の形態の地盤試料採取装置の縦断面図。
図16図15の16−16線断面図。
図17図15の17−17線断面図。
図18】本発明を実施するための第4の形態の地盤試料密閉工程の説明図。
図19】本発明を実施するための第5の形態の工程図。
図20】本発明を実施するための第5の形態の地盤試料採取装置の縦断面図。
図21】飽和度測定工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図7に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は地盤に穿設したボーリング孔底2に試料収納管3をその軸方向に降下させて該試料収納管内に地盤試料4を採取する地盤試料採取装置で、該地盤試料採取装置1は、ロッド5の先端部に取付けられたサンプラーヘッド6と、このサンプラーヘッド6に上端部が取付けられた四角管状の貫入管7と、該貫入管7の下端部に固定された外テーパを有するシュー8と、該シュー8に下端部が固定され、前記貫入管7の内壁面との間に隙間9を介して設けられた試料収納管3と、前記貫入管7の内壁面と試料収納管3との間の隙間9に設けられ、作動時には前記シュー内壁面から段違いに複数枚突出し、前記試料収納管内に挿入された地盤試料4を密閉できる薄板シャッター10、10と、地盤試料4に貫入管7および試料収納管3を貫入する際に前記試料収納管3の内部から泥水等の液体を排出できる液体排出手段12と、前記薄板シャッター10、10で地盤試料4を密閉した後、地盤試料4が地盤中と同等の圧力になるように段違いに突出した複数枚の薄板シャッター間に粘性液体11を供給し加圧する加圧手段13とで構成されている。
【0015】
貫入管7は断面四角形で管状に形成されており、上端部は前記サンプラーヘッド6に固定され、下端部はシュー8に固定されている。
【0016】
試料収納管3は、断面円形で管状に形成されており、上端部は前記サンプラーヘッド6に固定され、下端部はシュー8に固定されている。
シュー8は、テーパ状の外形、前記試料収納管3の内壁と略同形状の内壁を有し、シュー8の内壁面8aには、前記貫入管7と試料収納管3との隙間9に連通するとともに、薄板シャッター10、10が試料を密封できるようにガイドするシャッター誘導スリット14、14と、このシャッター誘導スリットと対向するシュー内壁面8aにシャッター係合溝15、15が形成されている。
【0017】
薄板シャッター10、10は、サンプラーヘッド3内に移動可能に設けられたシャッター作動用ヘッド16と、該シャッター作動用ヘッド16を上下に移動させることができ、ロッド5に固定されたシャッター作動用ネジ17と、前記シャッター作動用ヘッド16に固定された荷重伝達板18と、該荷重伝達板18の下端部に取り付けられた前記試料収納管3の直径よりも幅広のバネ鋼製の薄板シャッター本体19、19とで構成されている。
【0018】
液体排出手段12としては、サンプラーヘッド6の側面に試料収納管3の内部に連通するように形成された液体通過孔20が設けられており、貫入管7等を地盤試料4に圧入する際に、この液体通過孔20から泥水等の液体を排出するものである。
【0019】
加圧手段13は、サンプラーヘッド6に圧力調整用の粘性液体貯留槽21が設けられており、この粘性液体貯留槽21に地上の圧力調整装置(図示せず)から粘性液圧調整孔34を通して粘性液体11を所定圧力で供給することにより、粘性液体11を前記隙間9およびシャッター誘導スリット14を通過させて、地盤試料4に段違いに圧入されたシャッター間10aに粘性液体11を到達させて、試料収納管3の内部の地盤試料4を所定圧力で加圧するものである。なお、加圧後は前記隙間9から粘性液体11が逆流し、圧力が低下することを防止するため、粘性液体貯留槽21内部を粘性液体11で満たした状態で、粘性液体貯留槽21を密封することが好ましい。
【0020】
本発明の地盤試料採取方法22は前記地盤試料採取装置1を用いて行われ、地盤試料採取方法22は、地盤に穿設したボーリング孔底2に試料収納管3を、該試料収納管3の内部に粘性液体11を供給しながら挿入する試料収納管挿入工程23と、前記試料収納管3の内部に挿入された地盤試料4の下部に複数枚の薄板シャッター10、10を段違いに圧入し試料収納管3の内部に密閉する地盤試料密閉工程24と、前記圧入した複数枚の薄板シャッター10、10の間に粘性液体11を供給して加圧し、密閉された地盤試料4を地盤中と同等の圧力に保持する加圧工程25とで構成される。
【0021】
本発明の地盤試料採取装置1を使用する場合には、基本構想は回転切削せずに静かに貫入管7等を所定長さ地中に圧入し、ロッド5の上下動を固定した状態で回転力をシャッター作動用ネジ17に伝達することでシャッター作動用ヘッド16は荷重伝達板18と共に下降し、薄板シャッター10、10をシャッター誘導スリット14、14にそって折り曲がりながら地盤試料4を貫通して底蓋を形成する。
このとき、薄板シャッター10、10は略水平ないし45度程度の角度で地盤試料を貫通し、シュー内壁面8aのシャッター誘導スリット14、14とほぼ対向する位置に形成されたシャッター係合溝15、15に係合し、地盤試料4を密封する。
【0022】
貫入管7等を所定長さ地中に圧入する際には、圧入が進むに従って、試料収納管3上部のサンプラーヘッド6の液体通過孔20から泥水等の液体が排出され地盤試料4と置換される。
【0023】
なお、シャッター作動用ネジ17の下端部はサンプラーヘッド3に設けられた回転自在ジョイント26に取り付けられており、サンプラーヘッド3等に回転力が伝達されることを阻止している。
【0024】
地盤試料4を地上に引揚げると地下水面下での間隙流体圧が大気圧まで減少し、間隙流体内の気体が膨脹し飽和度が低下するので、これを防ぐために全ての空間を脱気した粘性液体で充填し、試料を内管に取り込むとその体積分、粘性液体がシャッターと側壁の隙間、2枚のシャッターに挟まれた試料の間隙、2重パイプの間隙、試料の上部ピストン上面を通ってサンプラー頭部に設けた粘性液体貯留槽21に貯留され、採取試料の外周から粘性液で加圧できるように構成している。
【0025】
なお、本発明の地盤試料採取装置1および地盤試料採取方法22で地盤試料を採取した後、原地盤と同等の間隙圧下で、間隙流体の体積を変化させ、土粒子と水の体積変化は無視できるので、間隙流体中の気体の体積のみが変化することになり、その体積変化量と間隙流体圧を測定することでボイルの法則から間隙量に対する気体の割合が計測できることになる。
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図8ないし図21に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0026】
図8ないし図10に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、試料収納管3内部に上下に摺動可能にピストン27を備え、該ピストン27で閉塞された空間に粘性液体11を充填しておき、地盤試料4に圧入する際にピストン27を上方に移動させながら粘性液体11を液体通過孔20から排出し、粘性液体11と地盤試料4を置換する液体排出手段12Aおよび試料収納管挿入工程23Aにした点で、このような地盤試料採取装置1Aおよび地盤試料採取方法22Aを用いても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0027】
なお、前記ピストン27はシュー内壁面8aに設けられた微少段差(図示せず)により落下しないように設けられている。
【0028】
図11ないし図13に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第2の形態と主に異なる点は、粘性液体貯留槽21と連通するように液体通過孔20を設け、粘性液体11を粘性液体貯留槽21から試料収納管3内部に供給でき、粘性液体貯留槽21へ排出して粘性液体11と地盤試料4を置換する液体排出手段12Bおよび試料収納管挿入工程23Bにした点で、このような地盤試料採取装置1Bおよび地盤試料採取方法22Bを用いても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0029】
図14ないし図18に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第2の形態と主に異なる点は、角管状に形成した試料収納管3Aの上部にシャッター誘導スリット14、14を形成し、該シャッター誘導スリット14、14から突出するように上部薄板シャッター28、28を備え、薄板シャッター10、10および上部薄板シャッター28、28で地盤試料を上下で密封する地盤試料密閉工程24Aにした点で、このような地盤試料採取装置1Cおよび地盤試料採取方法22Cを用いても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0030】
また、サンプリング試料の上部、即ち孔底付近では間隙流体もボーリング時の循環流体の影響を受け、原状とは異なることが多いが、本実施の形態の地盤試料採取装置および地盤試料採取方法を用いることにより、試料の上部にもシャッターを圧入して、試料下部のシャッターとの間の地盤試料4(原状に近い地盤試料)を取得する事ができ、この地盤試料のみを試験に利用することも出来る。
【0031】
図19ないし図21に示す本発明を実施するための第5の形態において、前記本発明を実施するための第4の形態と主に異なる点は、試料収納管3の内壁に間隙圧計29を備え、反対側の内壁にはメタル製のメンブレン30を装着し、地上の圧力調整装置(図示せず)からホース31を介しての流体をメンブレン30に提供し、流体圧を増減させることでメンブレン30を凹凸変形させ間隙体積の増減を行うもので、測定深度で体積の変化と間隙圧の変化を測定でき、内外圧の一致と地温の変化による影響をなくした測定を可能とする飽和度測定装置32を備え、加圧工程後に飽和度測定工程33を行う点で、このような本発明の地盤試料採取装置1Dおよび地盤試料採取方法22Dにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、本発明の地盤試料採取装置1Dを調査地盤に圧入後、メンブレン30に加圧し、飽和度測定装置32で飽和度を測定することにより、地盤試料採取装置1Dの試料収納管3の内部に採取された地盤試料4を地上に引揚げることなく飽和度を測定することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態においては、加圧工程を行う形態について説明したが、本発明はこれに限られず、加圧工程を行わずに地盤試料を採取しても、段違いに複数枚突出し、前記試料収納管内に挿入された地盤試料4を密閉できる薄板シャッター10、10により、地盤試料4が脱落することなく、確実に採取することができる。
【0033】
また、本発明の実施の形態においては、シャッター作動用ネジ17によりシャッター作動用ヘッド16を下降させて薄板シャッター10を作動させているが、本発明はこれに限られず、水圧によりシャッター作動用ヘッド16を下降させて薄板シャッター10を作動させたり、シャッター作動用ヘッド16に荷重をかけて薄板シャッター10を作動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は脱落・流出し易い地盤の原位置状態での各種室内試験や原地盤状態での液状化強度試験や液状化対策前後の飽和度測定などを行う産業に利用される。
【符号の説明】
【0035】
1、1A、1B、1C、1D:地盤試料採取装置、
2:ボーリング孔底、 3、3A:試料収納管、
4:地盤試料、 5:ロッド、
6:サンプラーヘッド、 7:貫入管、
8:シュー、 9:隙間、
10:薄板シャッター、 11:粘性液体、
12、12A、12B:液体排出手段、
13:加圧手段、 14:シャッター誘導スリット、
15:シャッター係合溝、 16:シャッター作動用ヘッド、
17:シャッター作動用ネジ、
18:荷重伝達板、 19:薄板シャッター本体、
20:液体通過孔、 21:粘性液体貯留槽、
22、22A、22B、22C、22D:地盤試料採取方法、
23、23A、24B:試料収納管挿入工程、
24、24A:地盤試料密閉工程、
25:加圧工程、 26:回転自在ジョイント、
27:ピストン、 28:上部薄板シャッター、
29:間隙圧計、 30:メンブレン、
31:ホース、 32:飽和度測定装置、
33:飽和度測定工程、 34:粘性液圧調整孔。
【要約】
【課題】 本発明は主として液状化検討地盤を対象とし、地中から固・液・気の三相を原地盤に近い状態で試料として採取できる地盤試料採取装置および地盤試料採取方法を得るにある。
【解決手段】 地盤に穿設したボーリング孔底に試料収納管をその軸方向に降下させて該試料収納管内に地盤試料を採取する地盤試料採取装置において、ロッドの先端部に取付けられたサンプラーヘッドと、このサンプラーヘッドに上端部が固定あるいはスライド移動可能に取付けられた四角管状の貫入管と、該貫入管の下端部に固定された外テーパを有するシューと、該シューに下端部が固定され、前記貫入管の内壁面との間に隙間を介して設けられた試料収納管と、前記貫入管の内壁面と試料収納管との間の隙間に設けられ、作動時には前記シュー内壁面から段違いに複数枚突出し、前記試料収納管内に挿入された地盤試料を密閉できる薄板シャッターと、前記試料収納管内部の液体を排出できる液体排出手段とで地盤試料採取装置を構成している。
【選択図】 図1
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