(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923997
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】光ファイバ用線引炉および光ファイバ線引方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/029 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
C03B37/029
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-13615(P2012-13615)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-151395(P2013-151395A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100099069
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 巌
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正
(72)【発明者】
【氏名】山崎 卓
(72)【発明者】
【氏名】早川 正敏
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 学
(72)【発明者】
【氏名】上ノ山 憲博
【審査官】
田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−008475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ用ガラス母材とは径が異なるダミー棒が上部に接続された前記光ファイバ用ガラス母材を加熱炉で加熱し、光ファイバを線引きする光ファイバ用線引炉であって、
前記光ファイバ用ガラス母材の外周面と前記加熱炉上端の挿通口との隙間をシールする第1のシール部と、前記光ファイバ用ガラス母材上部のテーパ状部を囲い、前記テーパ状部が前記挿通口を通過する際に前記第1のシール部を上から封止し、前記ダミー棒の外周面との隙間をシールする第2のシール部を上部に有するキャップ部材と、を備え、
前記キャップ部材は、前記加熱炉および前記光ファイバ用ガラス母材からの輻射光を透過する石英ガラスにより形成され、
前記キャップ部材の外側を、前記輻射光を反射する反射材で覆うことを特徴とする光ファイバ用線引炉。
【請求項2】
前記反射材は、金属反射材であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用線引炉。
【請求項3】
前記金属反射材は、アルミ箔であることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ用線引炉。
【請求項4】
前記キャップ部材と前記反射材との間に、気体が介在する間隙を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ用線引炉。
【請求項5】
光ファイバ用ガラス母材とは径が異なるダミー棒が上部に接続された前記光ファイバ用ガラス母材を加熱炉で加熱し、光ファイバを線引きする光ファイバ線引方法であって、
前記光ファイバ用ガラス母材の外周面と前記加熱炉上端の挿通口との隙間を第1のシール部でシールし、
前記光ファイバ用ガラス母材上部のテーパ状部が前記挿通口を通過する際に、前記テーパ状部を囲うように配されたキャップ部材で前記第1のシール部を上から封止し、前記ダミー棒の外周面との隙間を前記キャップ部材上部に設置された第2のシール部でシールし、
前記キャップ部材に前記加熱炉および前記光ファイバ用ガラス母材からの輻射光を透過する石英ガラスを用い、
前記キャップ部材の外側を、前記輻射光を反射する反射材で覆って光ファイバを線引きすることを特徴とする光ファイバ線引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用ガラス母材を加熱溶融して、光ファイバを線引きする光ファイバ用線引炉と線引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ用ガラス母材(以下、ガラス母材という)を加熱溶融して光ファイバを線引きする線引炉は、炉内の温度が大よそ2500K位と、非常に高温となる。このため、線引炉の炉心管には、耐熱性に優れたカーボンが用いられるが、このカーボンは、高温の酸素含有雰囲気中では、酸化して消耗する。これを防止するためには、線引炉の内部を、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスや窒素ガス(以下、不活性ガス等という)の雰囲気に保つ必要がある。また、炉外の外気(酸素)が炉内に入り込まないように、ガラス母材の線引炉内への挿通口が気密よく封止されている必要がある。
【0003】
また、ガラス母材は、通常、上端がテーパ状に縮径され、径の小さいダミー棒(支持棒ともいう)を接続し、線引炉内に吊り下げ支持されるが、径が大きく変化するテーパ状の部分およびダミー棒との連結部分のシールが難しい。このため、線引炉の炉心管を上方に延長する形態で上部チャンバを配し、テーパ状の部分及びダミー棒との連結部分を含めてガラス母材を上部チャンバ内に収容し、ダミー棒の導入部分の隙間をシールする方法がある。
【0004】
しかし、この方法は、ガラス母材の線引きが進行するにしたがって上部チャンバ内の空間容積が増大することから、炉内圧力が変動し、チャンバ内のガスの流れが時間的に変化し、ガラス母材の溶融部の熱伝達量が変化し、ガラス径の変動が発生する。さらに、ガラス母材は、上部チャンバの大きさによって制限されるため、ガラス母材の大型化への対応を阻害する要因ともなっている。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1には、線引炉内への挿通口とガラス母材との隙間をシールする第1のシールユニットと、ガラス母材の縮径したテーパ部が前記の挿通口を通過する際にテーパ部を囲うようにしてシールする第2のシールユニットを備えた線引炉が開示されている。
図4は、上記特許文献1に開示の線引炉を模式的に示した図である。ガラス母材1は、直胴部1a(本体部)がテーパ部1bで縮径されて、連結部材3により細径のダミー棒2(シャフトまたは支持棒)に連結され、吊り下げ支持される。線引炉は、炉心管4の外側にヒータ5を配し、その外側を断熱材6で覆い、全体を炉筐体7で囲って構成される。
【0006】
ガラス母材1と該ガラス母材の挿通口4a(炉心管4の上端)との間の隙間は、直胴部1aが挿通口4aを通過する際には第1のシールユニット8によりシールされる。ガラス母材1の上端には、テーパ部1bと連結部材3を囲う円筒部材(キャップ部材)が配されテーパ部1bが挿通口4aを通過する際には、該キャップ部材はその下面が炉心管4の上端に接し、ダミー棒2に対し移動可能とされてダミー棒2との隙間をシールする、第2のシールユニット9とされる。
【0007】
ガラス母材1のテーパ部1bが線引炉の上方から突き出て残っている状態では、ガラス母材1の直胴部1aは、第1のシールユニット8により挿通口4aとの隙間がシールされる。ガラス母材1の線引きが進んで、ガラス母材1のテーパ部1bが挿通口4aに到達すると、第2のシールユニット9が第1のシールユニット8に接して挿通口4aを覆い、ダミー棒2との隙間をシールして、線引炉内に外気が侵入するのを阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−62265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
線引炉のヒータにより炉心管が加熱され、この加熱で生じる輻射光の黒体輻射スペクトルは、3μm以下の波長の範囲でそのスペクトル強度が大きい。また、3μm以下の波長範囲での輻射光は、ガラス母材のような透明な石英ガラスでの吸収係数がほぼゼロであり、輻射光のほとんどは透過する。線引炉のヒータ加熱で生じた上記の輻射光は、ガラス母材内を伝播し、その多くの部分が上方のテーパ部およびダミー棒から外方に向けて放射される。
【0010】
図4の構成において、上記の輻射光は、第2のシールユニットのキャップ部材に向けて放射される。キャップ部材は、耐熱性と強度を要することから、一般的に金属材などで形成される場合が多いが、その場合、放射された輻射光は、キャップ部材で吸収、一部は反射されてガラス母材側に戻される。しかし、全てが反射される訳ではないので、キャップ部材は輻射光により加熱され、温度上昇してガラス母材1との間の温度差(温度勾配)が小さくなる。
発明者らがこの温度差について種々検討した結果、キャップ部材とガラス母材との温度勾配が小さいと、炉内温度、および炉内圧力が時間的に変動し、この結果、線引きされる光ファイバの外径が変化することが判明した。
【0011】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、ガラス母材と、ガラス母材のテーパ状部を囲うキャップ部材間の温度差(温度勾配)を大きくして、炉内温度および炉内圧力の変動を抑制し、光ファイバの外径変化の少ない光ファイバ用線引炉と線引方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による光ファイバ用線引炉は、光ファイバ用ガラス母材とは径が異なるダミー棒が上部に接続された光ファイバ用ガラス母材を加熱炉で加熱し、光ファイバを線引きする光ファイバ用線引炉である。線引炉は、光ファイバ用ガラス母材の外周面と加熱炉上端の挿通口との隙間をシールする第1のシール部と、光ファイバ用ガラス母材上部のテーパ状部を囲い、テーパ状部が上記の挿通口を通過する際に第1のシール部を上から封止し、ダミー棒の外周面との隙間をシールする第2のシール部を上部に有するキャップ部材と、を備える。そして、前記のキャップ部材は、加熱炉および光ファイバ用ガラス母材からの輻射光を透過する石英ガラスにより形成され
、上記のキャップ部材の外側を、輻射光を反射する反射材で覆うことを特徴とする。
また
、該反射材は、金属反射材であり、また、アルミ箔で形成することができる。また、上記のキャップ部材と反射材との間に、気体が介在する間隙を有するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明による光ファイバ線引方法は、光ファイバ用ガラス母材とは径が異なるダミー棒が上部に接続された光ファイバ用ガラス母材を加熱炉で加熱し、光ファイバを線引きする光ファイバ線引方法である。この線引方法は、光ファイバ用ガラス母材の外周面と加熱炉上端の挿通口との隙間を第1のシール部でシールし、光ファイバ用ガラス母材上部のテーパ状部が上記の挿通口を通過する際に、テーパ状部を囲うように配されたキャップ部材で第1のシール部を上から封止し、ダミー棒の外周面との隙間を前記のキャップ部材上部に設置された第2のシール部でシールする。そして、上記のキャップ部材に加熱炉および光ファイバ用ガラス母材からの輻射光を透過する石英ガラスを用い
、上記キャップ部材の外側を、輻射光を反射する反射材で覆って光ファイバを線引きすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャップ部材が、輻射光を透過する石英ガラスで形成されることにより、ガラス母材との間の温度差を大きくして、炉内温度および炉内圧力の変動を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1,2により本発明の
参考例を説明する。
図1は、光ファイバの線引開始〜中間の状態を示し、
図2は光ファイバの線引終盤の状態を示す図である。図において、10は線引炉、11はガラス母材、11aはテーパ状部、11bは下端部、12は光ファイバ、13はダミー棒、14は連結部材、15は炉心管、15aは上端部の開口、16はヒータ、17は断熱材、18は炉筐体、19は下部延長管、20は第1のシール部、21はキャップ部材、21aは上壁、21bは開口、21cは下端、22は第2のシール部を示す。
【0017】
光ファイバの線引きでは、
図1に示すように、吊下げ支持される光ファイバ用ガラス母材11(以下、ガラス母材という)の下部を加熱し、加熱溶融により下端部11bからガラスの光ファイバ12を溶融垂下させて所定の外径となるように線引きして行われる。ガラス母材11は、その上端部分に縮径されたテーパ状部11aを有し、ガラス母材11と同種のガラスロッドからなるダミー棒13に、連結部材14により連結される。そして、ガラス母材11は、ダミー棒13の上端部を支持装置(図示省略)で把持することで、上下方向に移動可能に吊り下げ支持され、線引炉10内に収容される。
【0018】
線引炉10の主体となる加熱炉は、ガラス母材11が挿入供給される炉心管15を囲むようにして、加熱用のヒータ16を配し、このヒータ16の熱が外部に放散されないようにカーボンフェルト等の断熱材17で囲い、その外側全体を炉筐体18で囲って構成される。炉筐体18の上端には、ガラス母材11が挿入される挿通口を有し、該挿通口とガラス母材11との間の隙間をシールするように第1のシール部20が設けられる。なお、図においては、上記の挿通口は、炉心管15の上端部の開口15aであり、上記の隙間は、炉心管15の内壁とガラス母材11の外周面との間に生じる隙間で示される。また、炉筐体18の下部には下部延長管19が配され、線引直後のガラスの光ファイバ12が導出される。
【0019】
ガラス母材11の上部には、そのテーパ状部11aとダミー棒13を連結する連結部材14とを囲うキャップ部材21が配される。このキャップ部材21は、その上壁21aにダミー棒13が挿通される開口21bを有し、該開口21bを連結部材14で塞ぐようにし、連結部材14の上方への移動が可能なように連結部材14の上に載置される。開口部21bは、キャップ部材21が上方へ移動できるようにダミー棒13との間に若干の隙間を持たせているため、キャップ部材21の上壁21aには、ダミー棒13と開口21bとの隙間をシールするように第2のシール部22が設けられる。
【0020】
なお、開口21bとダミー棒13との間の気密が十分取れるのであれば、第2のシール部22は、必ずしも必要ではない。また、本実施形態では、第2のシール部22が連結部材14の上部でシールするようにしているが、テーパ状部11aと連結部材14との間の長さが十分取れるのであれば、連結部材14の下部でシールするようにしても良い。
【0021】
上記のように構成された線引炉では、
図1のガラス母材11のテーパ状部11aが線引炉の上方から突き出ている状態(線引開始〜線引中盤)では、第1のシール部20によりガラス母材11の本体部分とその挿通口である開口15aとの隙間がシールされる。ガラス母材11の線引きが進んで線引終盤になると、ガラス母材11のテーパ状部11aが第1のシール部20に接近し、キャップ部材21もガラス母材11と一緒に下降して、その下端21cが第1のシール部20の上端に接する状態となる。
【0022】
この後、さらに線引きが進行すると、
図2に示すように、キャップ部材21はその下端21cが第1のシール部20に接触して、キャップ部材21は第1のシール部20を上から覆って封止する。そして、キャップ部材21に設けられた第2のシール部22が機能して、ダミー棒13とキャップ部材の上壁21aの開口21bとの隙間をシールする。
この結果、ガラス母材11のテーパ状部11aが第1のシール部20に近接し通過する際に、第1のシール部20によるシール機能が失われても、キャップ部材21上の第2のシール部22により、引き続いて炉内のシールが確保され、炉心管内に外気が入り込むのを防止することができる。
【0023】
線引炉10が、
図2の状態に変化すると、キャップ部材21の内面は、外気から遮断されて炉心管内からの熱伝導と熱輻射により熱せられて温度上昇する。また、ガラス母材を透過した波長3μm以下の輻射光の影響も受け、キャップ部材21が従来の金属材等で形成される場合には、キャップ部材21が輻射光の一部を吸収し、さらに温度は上昇する。
キャップ部材の温度上昇により、キャップ内面と、ガラス母材1との間の温度差(温度勾配)が小さくなると、炉内温度および炉内圧力が変動し、この結果、線引きされる光ファイバの外径が変化する虞がある。
【0024】
本発明は、上記のキャップ部材21を、ガラス母材11と同種の石英ガラスで、炉筐体内からの輻射光を透過する透明な石英ガラスで形成されていることを特徴としている。
キャップ部材21を透明な石英ガラスで形成することにより、ガラス母材11を透過してキャップ部材21に向けて放射される輻射光(波長3μ以下の輻射光)は、ガラス母材と同様にキャップ部材21で吸収されることなく透過し、外部(大気中)に放射される。
【0025】
この結果、キャップ部材21は、炉心管及びガラス母材11からの熱伝導による温度上昇のみで、ガラス母材1との間の温度差(温度勾配)を大きくとることができる。これにより、炉内温度や炉内圧力の変動を抑制することができ、光ファイバの外径変化を低減することができる。
【0026】
図3は、
本発明の実施形態を説明する図である。この実施形態は、
図1,2の
参考例に対して、石英ガラスからなるキャップ部材21の外側に、反射材23を配している点が異なる。キャップ部材21を石英ガラスで形成すると、加熱炉からの輻射光が透過してしまうため、熱としては逃げてしまいエネルギーロスとなる。キャップ部材21の外周を断熱材で覆っても、断熱材で熱を吸収・放出するだけであるので、キャップ部材21を透過する輻射光のエネルギーが有効に活用されることにはならない。
なお、反射材はキャップ部材21の内側にあってもエネルギーロスに対しては効果があるが、反射材が汚染源となって光ファイバ用ガラス母材にロス増などの悪影響を与えるため、キャップ部材21の外側に配する方が望ましい。
【0027】
本例による
図3(A)の線引炉10aも、
図1,2で説明したものと同様な線引炉の構成である。すなわち、炉筐体18の上端には、ガラス母材11が挿入される開口15aを有し、該開口15aとガラス母材11との間の隙間をシールするように第1のシール部20が設けられる。なお、上記の開口15aは、炉心管15の上端部の開口であり、上記の隙間は、炉心管15の内壁とガラス母材11の外周面との間に生じる隙間で示される。
【0028】
ガラス母材11の上部には、そのテーパ状部11aとダミー棒13を連結する連結部材14とを囲うキャップ部材21が配される。このキャップ部材21は、炉筐体内からの輻射光を透過する透明な石英ガラスで形成され、その上壁21aにダミー棒13が挿通される開口21bを有し、該開口21bを連結部材14で塞ぐようにして連結部材14の上に載置される。また、キャップ部材21の上壁21aには、ダミー棒13と開口21bとの隙間をシールするように第2のシール部22が設けられる。
【0029】
上記のキャップ部材21の外側には、金属などの反射材23を配して、キャップ部材21の外側を覆う。反射材23としては、金属などの耐熱性のあるもの、例えば、ステンレス、インコネル、アルミ等の金属を用いることができる。反射材23は、上記したような金属を予め円筒状に成形し、キャップ部材21の外側に嵌合させる形態としてよいが、金属箔をキャップ部材の外側に配する形態であってもよい。成形した金属を用いる場合は、反射材23のキャップ部材の外面に対向する内面に、鏡面加工や反射膜が付されていることが好ましい。
反射材としてアルミ箔を用いると、価格的にも安価である。なお、このアルミ箔をキャップ部材21の外側に配しただけでも、10%程度の省エネを図ることができた。
【0030】
反射材23として予め金属を成形したものを用いる場合は、
図3(B)に示すようにキャップ部材21と反射材23との間に間隙24(例えば、1cm程度)を有するようにして、この間隙24に空気または不活性ガスを流すようにすることが好ましい。この間隙24を設けることにより、反射材23がキャップ部材21に接触して熱伝導で加熱されるのを低減することができるので、熱で反射材23の反射面が酸化して反射効率が低下するのを抑制することができる。また、流れを作ることにより、反射材23とキャップ部材21との間に熱をこもらせないようにすることができ、ガラス母材とキャップ部材21との温度差が縮まるのを抑制することができる。
間隙24には、空気または不活性ガスを強制的に流すようにしても良いが、自然対流による流れがあるだけでも良い。
【0031】
上記のように、加熱炉からの輻射光を透過する石英ガラスからなるキャップ部材21の外側を、当該輻射光を反射する反射材23で囲うことにより、キャップ部材21を透過した輻射光を、反射材23でキャップ部材側に反射させる。キャップ部材21に向けて反射された輻射光は、再度、炉内のガラス母材11に向けて放射され、炉内の加熱に供することができ、エネルギーロスを軽減して、省エネ化することができる。
【符号の説明】
【0032】
10,10a,10b…線引炉、11…ガラス母材、11a…テーパ状部、11b…下端部、12…光ファイバ、13…ダミー棒、14…連結部材、15…炉心管、15a…上端部の開口、16…ヒータ、17…断熱材、18…炉筐体、19…下部延長管、20…第1のシール部、21…キャップ部材、21a…上壁、21b…キャップ部材の開口、21c…下端、22…第2のシール部、23…反射材、24…間隙。