(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924166
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】波長可変単色光光源
(51)【国際特許分類】
G01J 3/10 20060101AFI20160516BHJP
G01J 3/18 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
G01J3/10
G01J3/18
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-153869(P2012-153869)
(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-16247(P2014-16247A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田村 敦子
【審査官】
塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−057706(JP,U)
【文献】
特開昭61−048733(JP,A)
【文献】
特開2000−009533(JP,A)
【文献】
特開2007−148220(JP,A)
【文献】
特開平05−157628(JP,A)
【文献】
特開平01−158788(JP,A)
【文献】
特開昭64−022086(JP,A)
【文献】
特開昭58−153388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
H01S 3/00−3/30
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の発する光を回折格子を用いて赤外域の所定波長の光に単色化する分光部と、前記分光部から出力される赤外域の所定波長の光を2方向に分離し、その一方向の光を出力光とするビームスプリッタと、他方光の光をレンズ系を通して検出することで前記出力光の光強度をモニタするための検出器を有する波長可変単色光光源において、前記分光部は、赤外域の所定波長の光およびその高次波長の光を出力するものであるとともに、前記検出器は前記高次波長の光に感度を持つものであり、前記高次波長の光を検出することで、検出器の測定対象波長外の赤外域の光強度をモニタするよう構成したことを特徴とする波長可変単色光光源。
【請求項2】
前記検出器の前面に、前記所定波長の2次高次光を透過し、それより波長の長い光を遮断するフィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載された波長可変単色光光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変単色光光源、特にその出力強度計測に関する。
【背景技術】
【0002】
波長をある範囲内で任意に選択できる波長可変単色光光源において、単色光光源の照射面における出力強度をモニタするために光路上の光の一部をビームスプリッタで分岐し、その分岐した光を検出器で検出する方法が利用されている。
【0003】
図5に一般に用いられている波長可変単色光光源の基本構成を示す。光源部1の光源としてはキセノンランプやハロゲンランプ等が使用され、光源部1から発した光はレンズ系(図示せず)を通過し、入射スリット(図示せず)に入射し、分光部2に送られる。分光部2内の回折格子3で波長分散された分散光のうち所定波長の単色光が分光部の出射スリット(図示せず)から取り出される。(例えば特許文献1参照)。
【0004】
分光部2から取り出された所定波長の単色光は、光路中に設置された出射レンズ系4を通り光路分割手段であるビームスプリッタ5に入射される。ビームスプリッタ5は大部分の単色光は出力レンズ系6に入射し、集光され出力マスク7に入射される。出力マスク7を通過した単色光は、出力フィルタ8で不要な高次光や迷光を除去後、照射面Aに出射される。また、照射対象に導くために光ファイバ9が用いられる場合が多い。
【0005】
前記分光部2から取り出された単色光は回折格子3で単色化するといっても厳密な意味で単色光になるのではなく、その単色光の整数分の1の波長の光(高次光)を含んだ単色光であり、邪魔な存在である不要な高次光や迷光成分は前記出力フィルタ8で取り除かれる。
【0006】
一方、ビームスプリッタで分岐された単色光の一部は検出器レンズ系11で集光され、検出器スリット12を通り、さらに検出器フィルタ104にて不要な高次光や迷光を除去後に検出器13に入射する。検出器スリット12は省略される場合もある。
【0007】
前記検出器13の出力はビームスプリッタ5に入射する単色光強度に比例し、同時に照射面Aに出射する単色光強度値に比例する。検出器13の出力は制御部15に導かれ、あらかじめ校正された測定器で計測されて導き出された前記照射面Aの出力と前記検出器13の出力との関係を用いて制御部15にて処理され、照射面Aの出力値に換算され制御部15に表示される。
【0008】
照射面Aに出力される単色光出力光は分析、計測等の目的で照射面Aに置かれる被検査対象物(図示せず)に照射される。また、照射対象に導くために多くの場合、光ファイバ9が用いられ、この場合には、出力マスク7の開口は光ファイバ9の入射端面に対応した大きさに設定され、効率良くファイバに入射するように調節される。出力マスク7は省略される場合もある。
【0009】
光ファイバを使用した場合でも前記検出器13の出力と光ファイバ9を通過したファイバ出力光10との間にも一定の関係が成立するので、検出器13の出力を制御部15で処理することでファイバ出力光10の単色光出力強度値を前記制御部15に表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−047270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
波長可変単色光光源の出力計測において、ビームスプリッタで2方向に分離し、その一方向の光を検出器13でモニタすることで、照射面Aの光強度やファイバ出力光10の光強度の計測が行われるが、波長可変単色光光源の可変範囲が紫外域から赤外域までと広範囲である場合に、検出波長感度が紫外域から赤外域まで感度を有する検出器が存在しない。
【0012】
このため、検出器を波長可変単色光光源の出力波長域に合わせて、交換する必要が生じる。しかしながら、検出器の交換を行うと検出器の光学的配置や感度の違いによる測定精度や整合性が問題となる。更に、赤外の検出器は紫外域の検出器に比べサイズが大きくスペース的にも課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、光源の発する光を回折格子を用いて赤外域の所定波長の光に単色化する分光部と、前記分光部から出力される赤外域の所定波長の光を2方向に分離
し、その一方向の光を出力光とするビームスプリッタと
、他方光の光をレンズ系を通して検出することで前記出力光の光強度をモニタするための検出器を有する波長可変単色光光源において、
前記分光部は、赤外域の所定波長の光およびその高次波長の光を出力するものであるとともに、前記検出器は前記高次波長の光に感度を持つものであり、前記高次波長の光を検出することで、検出器の測定対象波長外の赤外域の光強度をモニタするよう構成する。
【0014】
また前記検出器の前面に前記赤外域である所定波長の2次高次光を透過し、それより波長の長い光を遮断するフィルタを備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
赤外域の波長の照射面での出力光または光ファイバ出力光の光強度出力が紫外および可視域検出器を用いてモニタできる。更に、この方法を用いれば紫外域から赤外域までの広範囲の単色光を単一の検出器を用いて計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】制御部に格納するデータの例を示す図である。
【
図4】制御部に格納するデータの別の例を示す図である
【
図5】波長可変単色光光源の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本考案を実施する形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
図1に本発明の一実施形態を示す。本発明は波長可変単色光光源の出力計測(モニタ)の簡易化に関するものである。光源部1の光源としてはキセノンランプやハロゲンランプ等が使用され、光源部1から発した光はレンズ系(図示せず)を通過し分光部2に送られる。分光部2の中の回折格子3で波長分散された光のうち所定波長の単色光が分光部2から取り出される。分光部2から取り出された所定波長の単色光は、光路中に設置された出射レンズ系4を通り光路分割手段であるビームスプリッタ5に入射される。
【0019】
ビームスプリッタ5で分岐された一つの光路上には出力レンズ系6と出力マスク7および出力波長に対応した迷光および高次光を除去する出力フィルタ8が設置され、それらの部品を通過した光束が照射面Aに導かれる。ビームスプリッタ5で分岐されたもう一方の光路上には検出器レンズ系11と検出器スリット12が設置され、それらの部品を通過した光束がフォトダイオードなどの検出器13に入射する。
【0020】
検出器13の測定対象波長が200nmから1200nmの場合、1200nmを超える赤外光、例えば所定波長が1400nmであった場合、測定対象波長外である1400nmに対しては感度をほとんど持たない。しかしながら、回折格子で分光された上記1400nmの単色光の高次光である700nmと350nmの波長の光に対しては十分な感度を有している。
【0021】
本発明は上記に示すように、所定波長1400nmの出力測定に高次光である700nm、350nmを用いるようにする。
【0022】
検出器13に入力する光は所定波長の光およびその高次波長の光である。これらの合成光に対しての検出器13の出力と照射面Aまたはファイバ出力光10の出力強度値との比率は出力光強度を変化させても一定であり、前記検出器13の出力を測定すれば、その測定値から照射面Aまたはファイバ出力光10の出力を測定端末において演算して表示できる。
【0023】
前記検出器13で1400nmの高次光である単色光を検出し、その出力を制御部15に取り込むと同時に1400nmの照射面Aまたはファイバ出力光10の出力強度を校正された測定器であらかじめ計測しておき、前記検出器13の出力と校正された検出器で計測した出力強度値の比率を前記制御部15に記憶しておく。
図3に前記制御部15に記憶されている検出器13の出力と校正された検出器で測定されたファイバ出力光10の計測出力強度値の例を示す。
【0024】
所定波長が1400nmの場合を例に説明すれば、検出器13では700nm、350nmの高次光が主として検出される。この波長における前記検出器13の出力値が1.4Vであったとすれば、
図3の表からファイバ出力光10の出力強度値は125μW×1.4/0.65すなわち269μWであると前記制御部15にて演算され、制御部15上に表示される。
【0025】
上記のように赤外域の波長である出力光を紫外および可視域に感度をもつ検出器でモニタすることが可能である。
【実施例2】
【0026】
図2に本発明の別の実施形態例を示す。この実施形態例では実施例1の装置において、検出器13の前面に高次光透過フィルタ14を配置する。
【0027】
前記高次光透過フィルタ14は所定波長(出力)光である赤外域の2次高次光帯域の光を透過しそれより波長の長い帯域の光を遮蔽する特性を持つ。例えば前記検出器13の測定可能範囲が350nmから1100nmまでである場合には1100nmより長い波長の光をフィルタで除去し、不要な光が検出器に入射しないようにする。
【0028】
所定波長の単色光出力強度とその高次光である波長の比率は出力光強度を変化させても一定であり、前記検出器13の出力を測定すれば、その測定値を用い測定端末にて演算し、照射面Aまたはファイバ出力光10の出力強度値を表示できる。
高次光透過フィルタ14を透過した光に対しての検出器13の出力と照射面Aまたはファイバ出力光10の出力強度値との比率は出力光強度を変化させても一定であり、前記検出器13の出力を測定すれば、その測定値から照射面Aまたはファイバ出力光10の出力を測定端末において演算して表示できる。
【0029】
前記検出器13で1400nmの高次光である単色光を検出し、その出力を制御部15に取り込むと同時に1400nmの照射面Aまたはファイバ出力光10の出力強度を校正された測定器であらかじめ計測しておき、前記検出器13の出力と校正された検出器で計測した出力強度値の比率を前記制御部15に記憶しておく。
図4に前記制御部15に記憶されている検出器13の出力と校正された検出器で測定されたファイバ出力光10の計測出力強度値の例を示す。
【0030】
所定波長が1400nmの場合を例に説明すれば、検出器13には1400nmの高次光が検出される。この波長における前記検出器13の出力値が1.2Vであったとすれば、
図4の表からファイバ出力光10の出力強度値は125μW×1.2/0.5すなわち300μWであると前記制御部15にて演算され、制御部15上に表示される。
【0031】
なお、
図1、2、5において、同一符号で表示されているものは、同一物を表し、同じ機能を有するものである。
【符号の説明】
【0032】
1 光源部
2 分光部
3 回折格子
4 出射レンズ系
5 ビームスプリッタ
6 出力レンズ系
7 出力マスク
8 出力フィルタ
9 光ファイバ
10 ファイバ出力光
11 検出器レンズ系
12 検出器スリット
13 検出器
14 高次光透過フィルタ
15 制御部
104 検出器フィルタ
A 照射面