(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925629
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】注出キャップ及びそれを有する容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/18 20060101AFI20160516BHJP
B65D 47/24 20060101ALI20160516BHJP
B65D 47/32 20060101ALI20160516BHJP
B65D 55/02 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
B65D51/18 Z
B65D47/24 Z
B65D47/32 Z
B65D55/02
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-170562(P2012-170562)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28641(P2014-28641A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭46−037475(JP,B1)
【文献】
特表2004−521036(JP,A)
【文献】
特開2012−192975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が天壁に形成された本体と、口筒部の上端に固定される天壁に開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体の天壁との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備え、
当該逆止弁は、本体の天壁に固定される連結筒の内側に、可撓性を有する連結片を介して前記開口部を開閉する弁体を一体に連結し、
当該弁体に、前記開口部を貫通するとともに当該開口部を形作る縁部に抜け止め保持される抜け止め部を設けたものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
請求項1において、本体は、口筒部に対して装着筒をねじ付けるものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2において、逆止弁は、筒部材の内側に、複数の連結片を介して前記開口部を開閉する弁体が一体に設けられたものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項4】
請求項3において、逆止弁は、筒部材に、本体に形成された外気導入路を開閉する外気導入弁が一体に設けられたものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の注出キャップを容器本体に装着してなることを特徴とする容器。
【請求項6】
請求項5において、前記容器本体は、外気導入孔を有する外層体と、その内側に剥離可能に配置された内層体からなる二重容器であることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が天壁に形成された本体と、口筒部の上端に固定される天壁に開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体の天壁との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備える注出キャップ及びそれを有する容器であって、注出キャップの取り外しの有無を確認するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
逆止弁を備える注出キャップには、計量キャップとして構成されたものがあり、その目的とするところは、容器本体に対する外気導入の阻止にある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−31932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした注出キャップは、口筒部に対して強固に螺合させているものの、誤って容器本体から取り外されてしまう場合も想定される。このように、キャップが誤って取り外されてしまった場合、外気の遮断という本来の目的が没却されてしまうことが考えられる。
【0005】
本発明の目的とするところは、容器本体から取り外されたかどうかを確認することができる注出キャップ及び、それを有する容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の注出キャップは、容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が天壁に形成された本体と、口筒部の上端に固定される天壁に開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体の天壁との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備え、
当該逆止弁は、本体の天壁に固定される連結筒の内側に、可撓性を有する連結片を介して前記開口部を開閉する弁体を一体に連結し、
当該弁体に、前記開口部を貫通するとともに当該開口部を形作る縁部に抜け止め保持される抜け止め部を設けたものであることを特徴とするものである。
【0007】
本発明では、本体は、口筒部に対して装着筒をねじ付けるものであることが好ましい。また、本発明では、逆止弁は、筒部材の内側に、複数の連結片を介して前記開口部を開閉する弁体が一体に設けられたものとすることができる。この場合、筒部材に、
本体に形成された外気導入
路を開閉する外気導入弁を一体に設けることができる。加えて、本発明は、上記注出キャップを容器本体に装着してなることを特徴とする容器である。この容器本体としては、外気導入孔を有する外層体と、その内側に剥離可能に配置された内層体からなる二重容器が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、本体を口筒部から取り外そうとすると、逆止弁は本体とともに上昇する。次いで、本体の上昇が所定の高さまで達すると、逆止弁の弁体が中栓に引っ掛かって動かなくなる。これにより、本体を無理に取り外そうとすると、弁体を繋ぐ連結片が伸びてしまう、又は切れてしまうことで、弁体の機能が失われる。また、確認のために本体を取り外そうとするときに、その取り外しがスムースになされたり、本体を取り外して、連結片が伸びてしまっている、或いは切れてしまっていることを視認することでも、注出キャップが容器本体から取り外されたかどうかを確認することができる。従って、本発明によれば、容器本体から取り外されたかどうかを確認することができる注出キャップ及び、それを有する容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるヒンジキャップを二重容器に採用してなるスクイズ容器の要部を示す断面図である。
【
図3】同ヒンジキャップの取り外し作業の初期状態を示す断面図である。
【
図4】同ヒンジキャップの取り外しが完了した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるヒンジキャップを、同ヒンジキャップを採用してなるスクイズ容器とともに詳細に説明する。
【0011】
図1中、符号1は、容器本体としての二重容器(剥離容器)である。符号2は、二重容器1を構成する外層体である。外層体2は、合成樹脂製等の可撓性材料で成形されており、変形及び復元が可能である。外層体2は、口筒部2aを有したボトル形状を有する。口筒部2aには、ねじ部S2が形成されている。符号3は、外層体2とともに、二重容器1を構成する内層体である。内層体3は、外層体2の内側に剥離可能に設けられた薄肉の袋体である。内層体3の内側には、内容物を充填するための空間Rが形成されている。内層体3は、口筒部2aの上端側に固定されることで、内容物の減少とともに外層体2の内側から剥離する。内層体3は、口筒部2aに形成された貫通孔(外気導入孔)2hを通して、内層体3との間に外気が導入されることで剥離が促進される。
【0012】
符号10は、本発明の一実施形態であるヒンジキャップである。符号11は、ヒンジキャップ10を構成する本体である。本体11は、取出し口A1が形成された天壁11aとともに、天壁11aの外縁から一体に伸びる装着筒11bを有する。装着筒11bは、天壁11aから口筒部2aを取り囲むように垂下する。装着筒11bには、口筒部のねじ部S2にねじ付けられるねじ部S1が形成されている。装着筒11bの下端部11b
1は、本体11が口筒部2aに装着されたとき、図示のように、外層体2に設けた頚部2bに密封保持される。なお、本実施形態では、下端部11b
1に環状のシール突起11sが設けられているとともに、このシール突起11sが嵌合する環状の凹部2sが頚部2bに設けられている。これにより、下端部11b
1と頚部2bとの間は強固に密封保持されている。
【0013】
また、本体11には、ヒンジ12を介して蓋体13が一体に設けられている。蓋体13は、天壁11aから間隔を置いて配置される天壁13aとともに、天壁13aの外縁から垂下する周壁13bが一体に設けられている。これにより、蓋体13は、
図1に示すように、本体11に対して閉じたときに、この本体11との間に空間を形成する。この空間には、天壁13aからシャフト13cが一体に垂下する。シャフト13cは、取出し口A1を形成する天壁11aに設けられた筒体部11dを密封する。
【0014】
符号14は、ヒンジキャップ10を構成する中栓である。中栓14は、
図2に示すように、開口部A2が形成された天壁14aを有し、固定部C1によって口筒部2aに強固かつ液密状態に固定されている。固定部C1としては、例えば、同図のように、口筒部2aに形成された環状の突起2cと、この突起2cを嵌合させる天壁14aに形成された環状の凹部14c
1が挙げられる。なお、本実施形態では、固定部C1は更に、突起2cに凸部2f
1を設けるとともに、凹部14c
1に凸部14f
1を設け、これら凸部2f
1及び14f
1を互いに引っ掛けることで、係止されている。これにより、本実施形態では、中栓14は、口筒部2aに対して、より強固かつ液密状態に固定されている。また、本実施形態では、天壁14aからシール筒14sが一体に垂下する。シール筒14sは、口筒部2aの内側(内層体3)を更に、強固かつ液密状態に固定保持する。
【0015】
また、中栓14は、天壁14aの外縁から伸びる筒壁14bを有する。筒壁14bは、天壁14aから一体に起立する。筒壁14bは、
図2に示すように、本体11に組み付けたとき、筒壁14bの上端14e
2が環状の凹所11c
1に接触するとともに、装着筒11bの内側に設けられた環状の膨出部11b
2に密封保持される。これにより、中栓14は、
図1に示すように、本体11に組み付けることができる。
【0016】
符号15は、ヒンジキャップ10を構成する逆止弁である。逆止弁15は、合成樹脂製等の可撓性材料で成形されており、変形及び復元が可能である。逆止弁15は、本体の天壁11aと中栓の天壁14aとの間に配置されている。逆止弁15は、筒部材としての連結筒15aを有し、その下端部15a
1が固定部C2によって中栓14に強固かつ液密状態に固定されているとともに、その上端部15a
2が固定部C3によって本体11に強固かつ液密状態に固定されている。固定部C2としては、例えば、
図2のように、連結筒の下端部15a
1と、この下端部15a
1を嵌合させる中栓の天壁14aに設けられた環状の凹部14c
2が挙げられる。更に、本実施形態では、連結筒の下端部15a
1に環状凸部15f
1を設けるとともに、この凸部15f
1を嵌合させる環状凸部14f
2を凹部14c
2に設けることで、より強固かつ液密状態に固定されている。
【0017】
また、固定部C3としては、例えば、
図2のように、連結筒の上端部15a
2と、この上端部15a
2を嵌合させる本体の天壁11aに設けられた環状の凹部11c
2が挙げられる。更に、本実施形態では、上端部15a
2に環状凸部15f
2を設けるとともに、この凸部15f
2を嵌合させる環状凸部11f
1を凹部11c
2に設けることで、より強固かつ液密状態に固定されている。これにより、逆止弁15は、本体11及び中栓14に対して抜け止め保持される。なお、本実施形態では、本体の天壁11aからシール筒11eが一体に垂下する。シール筒11eは、上端部15a
2をより強固に液密状態に保持する。
【0018】
加えて、本実施形態では、固定部C3の保持力が固定部C2よりも強固になるように設定する。保持力は、例えば、上述の凸部の形状等を設定することで調整することができる。これにより、固定部C2は、本体11が強く引き上げられると、固定部C3に先んじて、その固定を解除する。すなわち、本実施形態では、本体11が強く引き上げられると、逆止弁の連結筒15aは中栓14から分離して、本体11とともに取り外される。
【0019】
また、連結筒15aの内側には、開口部A2を開閉する弁体15bが配置されている。弁体15bは、軸線O周りに配置された複数の連結片15cを介して連結筒15aに一体に設けられている。これにより、二重容器1内の圧力が上昇すると、弁体15bは、連結片15cに抗して開口部A2を開放し、二重容器1内の圧力が低下すると、連結片15cの復元力によって開口部A2を封止する。
【0020】
加えて、弁体15bには、抜け止め部16が設けられている。抜け止め部16は、開口部A2を貫通する中空部16aを有する。中空部16aは、弁体15bに一体に設けられている。中空部16aの末端には、爪部16bが設けられている。爪部16bは、開口部A2を形作る縁部14a
1に引っ掛かることで係止される。これにより、弁体15bは、中栓14に対して抜け止め保持される。すなわち、弁体15bは、本体11とともに、爪部16bまでの長さLまで引き出された後は、この長さLのまま、中皿14に抜け止め保持される。なお、抜け止め部16には、中空部16aにその先端から軸線に対して対向する位置にそれぞれスリットを形成し、中空部16aに可撓性を持たせることで、開口部A2への挿入を容易することができる。
【0021】
一方、連結筒15aの外側には、本体の天壁11aに形成された貫通孔11hを封止する環状の弾性舌片15tが一体に設けられている。弾性舌片15tは、二重容器1内の圧力が低下しない状態では、
図1に示すように、弾性舌片15tの付勢力によって貫通孔11hを封止する。これに対し、内容物の排出により二重容器1(内層体3)内の圧力が減少すると、外層体2と内層体3との間に生じる負圧が口筒部2aに形成された貫通孔2hを通して弾性舌片15tの背面を引き離すことで、弾性舌片15tは、その付勢力に抗して貫通孔11hを開放する。これにより、貫通孔11hを通して外気が外層体2と内層体3との間に導入されることで、内層体3を外層体2に対して容易に剥離させることができる。すなわち、弾性舌片15tは、外気導入弁として機能する。なお、本実施形態では、中栓の天壁14aと筒壁14bの間に、装着筒11bとの間での外気を容易に行うために、貫通孔14hが形成されている。
【0022】
ここで、ヒンジキャップ10を二重容器1から取り外すときに起きる現象の一例を説明する。
【0023】
本実施形態では、ヒンジキャップ10は、
図1に示すように、二重容器1の口筒部2aに対してねじ付けられている。使用者等が何らかの目的で、ヒンジキャップ10を回すと、ヒンジキャップ10は、口筒部2aに沿って上昇する。すると、固定部C2の固定が解除されることで、逆止弁15は、
図3に示すように、本体11とともに上昇する。次いで、本体11の上昇が所定の高さLまで達すると、同図に示すように、弁体15bに設けられた抜け止め部16の爪部16bが開口部A2を形作る縁部14a
1に引っ掛かることで係止される。このように、爪部16bが縁部14a
1に引っ掛かると、弁体15bのみ中栓14に引っ掛かって動かなくなる。これにより、更に本体11を無理に取り外そうとすると、
図4に示すように、弁体15bを繋ぐ連結片15cが伸びてしまうことで、連結片15c(弁体15b)の機能が失われる。また、弁体15bを繋ぐ連結片15cが切れてしまった場合でも同様のことが言える。
【0024】
また、本実施形態では、例えば、使用者が確認のために本体11を取り外そうとするときに、取出し口A1からの内容物の取り外しがスムースになされたり、本体11を取り外して、連結片15cが伸びてしまったり、連結片15cが切断されることで本体11が取り外されたところを視認することでも、ヒンジキャップ10が二重容器1から取り外されたかどうかを確認することができる。従って、本実施形態によれば、二重容器1から取り外されたかどうかを確認することができるヒンジキャップ10及び、それを有するスクイズ容器を提供することができる。
【0025】
特に、本実施形態のように、本体11が口筒部2aに対して装着筒11bをねじ付けられる容器の場合、ヒンジキャップ10が比較的容易に取り外されてしまうことが考えられる。このため、こうしたスクリューキャップに本発明を採用すれば有効である。
【0026】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、本発明に従えば、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明の注出キャップは、本体11と中栓14との間に逆止弁15を配置したものであるため、密閉性が要求される容器に採用されるのが好ましい。このため、スクイズ容器のような二重容器に採用することが好ましいが、密閉性が要求される容器であれば単層の容器に採用することもできる。このため、本発明に従えば、貫通孔2h,11h,14h等の外気導入路は省略することができる。蓋体13は、ヒンジ式のものに限定されることなく、ねじ式等の様々なものを採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が天壁に形成された本体と、当該本体の天壁と口筒部の上端との間に固定される天壁に開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体の天壁との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備える注出キャップであれば、様々なキャップに適用させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 二重容器(容器本体)
2 外層体
2a 口筒部
2b 頚部
2h 貫通孔(外気導入孔)
3 内層体
10 ヒンジキャップ(注出キャップ)
11 本体
11a 天壁
11b 装着筒
11b
1 下端部
11b
2 上端部
11c
1 凹所
11c
2 凹部
11d 筒体部
11h 貫通孔(外気導入路)
12 ヒンジ
13 蓋体
14 中栓
14a 天壁
14b 筒壁
14e
1 下端
14e
2 上端
14h 貫通孔(外気導入路)
15 逆止弁
15a 連結筒
15b 弁体
15c 連結片
15t 弾性舌片(外気導入弁)
16 抜け止め部
16a 中空部
16b 爪部
A1 取出し口
A2 開口部
C1 固定部
C2 固定部
C3 固定部