特許第5929429号(P5929429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929429
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   C23C16/455
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-81729(P2012-81729)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209722(P2013-209722A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 哲也
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−224775(JP,A)
【文献】 特開2008−124424(JP,A)
【文献】 特開2008−251946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C16/00−16/56
H01L21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気である処理室内の基板に対して互いに反応する複数種類の反応ガスを順番に供給し、一の反応ガスの供給と次の反応ガスの供給との間に置換用のガスを供給して成膜処理を行う成膜装置において、
前記処理室に設けられ、基板が載置される載置部と、
前記載置部に対向して設けられ、中央から外周に向けて末広がりの形状の傾斜面構造を有する天井部と、
前記処理室内の真空排気を行う排気部と、
前記載置部に載置された基板の中央部上方に配置され、横方向外側に向けてガスを吐出するように周方向に沿って複数のガス吐出口が形成された中央ガス吐出部と、
前記基板の中央部よりも外周側の部位の上方であって、当該基板の周縁上方よりも中央よりの位置にて前記中央ガス吐出部を囲むように配置された周囲ガス供給部と、を備え、
前記周囲ガス供給部は、平面でみたときに基板の外周側及び中央部側に向けて各々横方向にガスを吐出するように周方向に沿って形成された複数のガス吐出口を有することと、
前記中央ガス吐出部のガス吐出口、及び周囲ガス供給部のガス吐出口は、各ガス吐出口からのガスの吐出方向の延長線と、前記載置部に載置された基板とが交差しない方向へ向けて設けられていることと、を特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記周囲ガス供給部は、前記中央ガス吐出部を囲むように環状に形成された環状部を備え、前記ガス吐出口は、当該環状部の内周面側及び外周面側に各々周方向に沿って間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記環状部は、中空状に形成され、この環状部内に周方向に間隔をおいて設けられた複数のガス分散部を備えていることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記各ガス分散部は、当該ガス分散部の周方向に沿って間隔をおいて設けられ、前記環状部内にガスを流出するための複数のガス吐出口を備えていることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記周囲ガス供給部は、前記中央ガス吐出部を囲むように互いに間隔をおいて配置された複数のガス分散部からなり、前記ガス吐出口は各ガス分散部の周方向に沿って間隔をおいて複数形成されていることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記中央ガス吐出部またはガス分散部は、前記天井部から処理室内へ向けて突出し、周方向に沿って間隔をおいてガス吐出口が複数形成されたヘッド部と、このヘッド部内に、前記ガス吐出口が並ぶ方向に沿って旋回するガスの旋回流を形成する旋回流形成部と、を備えることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して互いに反応する複数種類の反応ガスを順番に供給して膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である例えば半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)に膜を成膜する手法として、互いに反応する複数種類の反応ガスをウエハに対して順番に供給するいわゆるALD(Atomic Layer Deposition)法やMLD(Multi Layer Deposition)法などと呼ばれる方法が知られている。
【0003】
このような成膜方法においてウエハに反応ガスを供給する種々のガス供給機構が提案されている。例えば特許文献1には、中央から外周に向けて末広がりの形状の傾斜面構造を有する分散ガイドの中央部に、円筒型の中間分散体を配置し、この中間分散体の側面及び底面の各々に複数設けられた開孔を介して分散ガイド内にガスを導入する薄膜形成装置が記載されている。
【0004】
また引用文献2には、中央から外周に向けて末広がりの形状の傾斜面構造を有すると共に、この傾斜面の傾きが異なる2つのホーンを入れ子状に配置し、内側のホーン及び内側のホーンと外側のホーンとに囲まれた空間から各々ガスを下方側へ向けて導入する気相成長装置が記載されている。
【0005】
一方で近年は、ナノメートルのオーダーで成膜される膜のウエハ面内における均一性(例えば後述のM−m値)を5%程度以内とすることが要求される場合がある。しかしながら、引用文献1、2に記載されているように、分散ガイドやホーンの中央部から集中的に反応ガスを供給する手法では、このような高精度な面内均一性を実現することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−113268号公報:段落0071、図1A、1B
【特許文献2】特開平7−22323号公報:段落0003、0018、図1、8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反応ガスの分散性が高く、面内均一性の良好な膜を成膜可能な成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る成膜装置は、真空雰囲気である処理室内の基板に対して互いに反応する複数種類の反応ガスを順番に供給し、一の反応ガスの供給と次の反応ガスの供給との間に置換用のガスを供給して成膜処理を行う成膜装置において、
前記処理室に設けられ、基板が載置される載置部と、
前記載置部に対向して設けられ、中央から外周に向けて末広がりの形状の傾斜面構造を有する天井部と、
前記処理室内の真空排気を行う排気部と、
前記載置部に載置された基板の中央部上方に配置され、横方向外側に向けてガスを吐出するように周方向に沿って複数のガス吐出口が形成された中央ガス吐出部と、
前記基板の中央部よりも外周側の部位の上方であって、当該基板の周縁上方よりも中央よりの位置にて前記中央ガス吐出部を囲むように配置された周囲ガス供給部と、を備え、
前記周囲ガス供給部は、平面でみたときに基板の外周側及び中央部側に向けて各々横方向にガスを吐出するように周方向に沿って形成された複数のガス吐出口を有することと、
前記中央ガス吐出部のガス吐出口、及び周囲ガス供給部のガス吐出口は、各ガス吐出口からのガスの吐出方向の延長線と、前記載置部に載置された基板とが交差しない方向へ向けて設けられていることと、を特徴とする。
【0009】
上述の成膜装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記周囲ガス供給部は、前記中央ガス吐出部を囲むように環状に形成された環状部を備え、前記ガス吐出口は、当該環状部の内周面側及び外周面側に各々周方向に沿って間隔をおいて形成されていること。
)()において前記環状部は、中空状に形成され、この環状部内に周方向に間隔をおいて設けられた複数のガス分散部を備えていること。また各ガス分散部は、当該ガス分散部の周方向に沿って間隔をおいて設けられ、前記環状部内にガスを流出するための複数のガス吐出口を備えていること。
)前記周囲ガス供給部は、前記中央ガス吐出部を囲むように互いに間隔をおいて配置された複数のガス分散部からなり、前記ガス吐出口は各ガス分散部の周方向に沿って間隔をおいて複数形成されていること。
)前記中央ガス吐出部またはガス分散部は、前記天井部から処理室内へ向けて突出し、周方向に沿って間隔をおいてガス吐出口が複数形成されたヘッド部と、このヘッド部内に、前記ガス吐出口が並ぶ方向に沿って旋回するガスの旋回流を形成する旋回流形成部と、を備えること。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、基板の中央部上方に配置された中央ガス吐出部からは横方向外側へ向けて広がるようにガスが吐出され、また前記中央部よりも外周側の上方であって、当該基板の周縁上方よりも中央よりの位置にて前記中央ガス吐出部を囲むように配置された周囲ガス供給部からは、平面でみたときに基板の外周側及び中央部側に向けて各々横方向に広がるようにガスが吐出される。この結果、前記天井部の下方側の空間内に均一に反応ガスが供給されるので、面内均一性の高い膜を基板上に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係わる成膜装置の縦断面図である。
図2】前記成膜装置の一部拡大縦断面図である。
図3】前記成膜装置に設けられている天板部材の斜視図である。
図4】前記天板部材に設けられているガス分散器の断面図である。
図5】前記ガス分散器他の例を示す断面図である。
図6】前記成膜装置の作用を示す第1の説明図である。
図7】前記成膜装置の作用を示す第2の説明図である。
図8】前記成膜装置の作用を示す第3の説明図である。
図9】前記成膜装置の作用を示す第4の説明図である。
図10】前記天板部材に設けられたガス吐出部からガスが供給される様子を示した説明図である。
図11】環状部からなる周囲ガス供給部の他の例を示す平面図である。
図12】他の例に係わる成膜装置の縦断側面図である。
図13】さらに他の例に係わる成膜装置の縦断側面図である。
図14】比較例に係わる成膜装置の縦断側面図である。
図15】実施例及び比較例に係わる成膜結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係わる成膜装置の構成について、図1図4図10を参照して説明する。本成膜装置は、成膜対象となる円形の基板であり、例えば直径が300mmのウエハWの表面に、互いに反応する塩化チタン(TiCl)ガス(原料ガス)とアンモニア(NH)ガス(窒化ガス)とを交互に供給してALD(MLD)法により窒化チタン(TiN)膜を成膜する装置として構成されている。
【0013】
図1図2に示すように成膜装置は、アルミニウム等の金属により構成され、平面形状が概ね円形の真空容器であり、処理室を構成する処理容器1と、この処理容器1内に設けられ、ウエハWが載置される載置台(載置部)2と、載置台2と対向するように設けられ、載置台2との間に処理空間313を形成するための天板部材31と、を備えている。処理容器1の側面には、載置台2との間でウエハWの受け渡しを行う際に、外部の真空搬送路に設けられたウエハ搬送機構を処理容器1内に進入させるための搬入出口11と、この搬入出口11を開閉するゲートバルブ12とが設けられている。
【0014】
前記搬入出口11よりも上部側の位置には、アルミニウム等の金属からなり、縦断面の形状が角型のダクトを円環状に湾曲させて構成した排気ダクト13が、処理容器1の本体を構成する側壁の上に積み重なるように設けられている。排気ダクト13の内周面には、周方向に沿って伸びるスリット状の開口部131が形成されており、処理空間313から流れ出たガスはこの開口部131を介して排気ダクト13内に排気される。排気ダクト13の外壁面には排気口132が形成されており、この排気口132には真空ポンプなどからなる排気部65が接続されている。排気口132や排気部65は、処理空間313内の真空排気を行う排気部に相当する。
【0015】
処理容器1内には、前記排気ダクト13の内側の位置に、載置台2が配置されている。載置台2は、ウエハWよりも一回り大きい円板からなり、例えば窒化アルミニウム(AlN)、石英ガラス(SiO)等のセラミックスやアルミニウム(Al)、ハステロイ(登録商標)等の金属により構成されている。載置台2の内部には、ウエハWを例えば350℃〜450℃の成膜温度に加熱するためのヒーター21が埋設されている。また必要に応じて、ウエハWを当該載置台2の上面側の載置領域内に固定するための図示しない静電チャックを設けても良い。なお、図1以外の縦断面図においてはヒーター21の記載を省略してある。
【0016】
この載置台2には、前記載置領域の外周側の領域、及び載置台2の側周面を周方向に亘って覆うように構成されたカバー部材22が設けられている。カバー部材22は例えばアルミナなどからなり、上下端が各々開口する概略円筒形状に形成されると共に、その上端部は、周方向に亘って、内側に向かって水平方向に屈曲している。この屈曲部は、載置台2の周縁部にて係止されており、当該屈曲部の厚み寸法は、ウエハWの厚み寸法(0.8mm)よりも厚く、例えば1mm〜5mmの範囲内の3mmとなっている。
【0017】
載置台2の下面側中央部には、載置台2の底面を貫通し、上下方向に伸びる支持部材23が接続されている。この支持部材23の下端部は、処理容器1の下方側に水平に配置された板状の支持板232を介して昇降機構24に接続されている。昇降機構24は、搬入出口11から進入してきたウエハ搬送機構との間でウエハWを受け渡す受け渡し位置(図1に一点鎖線で記載してある)と、この受け渡し位置の上方側であって、ウエハWへの成膜が行われる処理位置との間で載置台2を昇降させる。
【0018】
この支持部材23が貫通する載置台2の底面と、支持板232との間には、処理容器1内の雰囲気を外部と区画し、支持板232の昇降動作に伴って伸び縮みするベローズ231が、前記支持部材23を周方向の外部側から覆うように設けられている。
【0019】
載置台2の下方側には、外部のウエハ搬送機構とのウエハWの受け渡し時に、ウエハWを下面側から支持して持ち上げる例えば3本の支持ピン25が設けられている。支持ピン25は、昇降機構26に接続されて昇降自在となっており、載置台2を上下方向に貫通する貫通孔201を介して載置台2の上面から突没することにより、ウエハ搬送機構との間でのウエハWの受け渡しを行う。
【0020】
排気ダクト13の上面側には、円形の開口を塞ぐように円板状の支持板32が設けられており、これら排気ダクト13と支持板32との間には処理容器1内を気密に保つためのOリング133が設けられている。支持板32の下面側には、後述の処理空間313に反応ガスや置換ガスを供給するための金属製の天板部材31が設けられており、天板部材31はボルト323によって支持板32に支持固定されている。
【0021】
天板部材31の下面側には凹部が形成されており、この凹部の中央側の領域は平坦になっている。この平坦な領域の外周側には、中央側から外周側へ向けて末広がりの形状の傾斜面が形成されている。この傾斜面のさらに外側には、平坦なリム314が設けられている。
【0022】
載置台2を処理位置まで上昇させたとき、天板部材31は、載置台2に設けられたカバー部材22の上面と、リム314の下面とが隙間を介して互いに対向するように配置される。天板部材31の凹部と載置台2の上面とによって囲まれた空間は、ウエハWに対する成膜が行われる処理空間313となる。前記凹部が設けられた天板部材31は、本成膜装置の天井部を構成している。
【0023】
また図2に示すように、天板部材31のリム314の下面と、カバー部材22の屈曲部の上面との間には高さhの隙間が形成されるように処理位置の高さ位置が設定されている。前記排気ダクト13の開口部131は、この隙間に向けて開口している。リム314とカバー部材22との隙間の高さhは、例えば0.2mm〜10.0mmの範囲の0.5mmに設定される。
【0024】
天板部材31を下方側から平面でみたとき、凹部の中央部には処理空間313内へガスを吐出する中央ガス吐出部4bが設けられており、またこの中央ガス吐出部4bの周囲には、例えば8個のガス分散部4aが間隔をおいて円環状に配置されている。本成膜装置において、これら中央ガス吐出部4b、ガス分散部4aは共通の構造を有するガス分散器4によって構成されている。以下、図4(a)〜(c)の断面図を参照しながらガス分散器4の構造を説明する。ここで、図4(a)〜(c)には、後述の周囲ガス供給部5によって覆われたガス分散部4aの断面図を示しているが、本例の中央ガス吐出部4bは周囲ガス供給部5によって覆われていない点以外は、ガス分散部4aと共通の構成を備えている。
【0025】
図4(b)に示すようにガス分散器4は、内部が中空の円筒形状のヘッド部41と、ヘッド部41の上面側に形成された開口を塞ぐようにヘッド部41上に設けられ、ガスを旋回流にしてヘッド部41内に導入する旋回流形成部40と、を備えている。
【0026】
ヘッド部41は、扁平な円筒形状の金属製の部材であり、天板部材31の下面から下方側へ向けて突出するように前記凹部内に設けられている。円筒形状のヘッド部41の側面には、周方向に間隔をおいて設けられた複数のガス吐出口42が形成されている。ガス吐出口42は例えば3個以上設けることが好ましく、本例では8個設けられている。また、ヘッド部41の下面は塞がれていてガス吐出口42が設けられていない一方、ヘッド部41の上面側は開口していて、旋回流形成部40に接続されている。
【0027】
旋回流形成部40は、筒状の外筒部43の内側に、この外筒部43よりも直径の小さな内筒部44を配置した二重円筒形状の金属製の部材であり、外筒部43の下端部と内筒部44の下端部とは連結部451によって連結されている。また、内筒部44の上端部は外筒部43の上端部よりも上方側に伸び出すように突出している。一方、天板部材31側には内筒部44の上端部や外筒部43の外面形状に沿うように形成された挿入孔が設けられている。
【0028】
そして、外筒部43及び内筒部44を天板部材31の挿入孔内に挿入することにより、予め設定された位置に各ガス分散器4が配置される。例えば外筒部43の外周面と前記挿入孔の内周面には各々、不図示の雄ネジ、雌ネジが切ってあり、これにより挿入孔内に挿入された外筒部43が天板部材31に支持、固定される。
【0029】
内筒部44の上面は、天板部材31内に形成されたガス供給路312に向けて開口しており、この開口部を介して内筒部44内にガスが流れ込む。一方、内筒部44の下端部から内筒部44の長さ方向3分の1程度の上方側の高さ位置には仕切板441が設けられており、内筒部44内に流れ込んだガスが直接、ヘッド部41へと流れ出ないようになっている。
【0030】
仕切板441の上方側の内筒部44の壁部には、内筒部44と外筒部43との間に形成される環状空間45にガスを導入するための上部側導入路442が設けられている。環状空間45は、内筒部44の外周面と外筒部43の内周面と連結部451の上面と挿入孔の壁面(天板部材31)とに囲まれた空間であり、仕切板441から上部側導入路442を介して環状空間45内にガスが導入される。
【0031】
前記仕切板441の下方側の内筒部44の壁部には、環状空間45内のガスを仕切板441の下方側に導入するための下部側導入路46が形成されている。図4(a)に、下部側導入路46が形成されているA-A’位置の横断面を示すように、下部側導入路46は内筒部44の内壁の接線方向に沿ってガスを導入するように、例えば4本形成されている。下部側導入路46から内筒部44内に進入したガスは、内筒部44の内壁に沿って仕切板441の下方側の空間を流れ、これにより旋回流が形成される。ここで、図4(a)の横断面図には、上部側導入路442が形成される位置を破線で示してある。なお、下部側導入路46は複数本設けなくてもよく、例えば1本の下部側導入路46にて、内筒部44の内壁の接線方向に沿ってガスを導入するだけでも旋回流を形成することはできる。
【0032】
仕切板441の下方側の内筒部44には、下方側へ向けて次第に広がる末広がりの形状の案内壁47が形成されており、下部側導入路46から導入されたガスの旋回流は、この案内壁47に案内されてその径を徐々に広げながらヘッド部41内に流れ込む。この結果、ヘッド部41内に流れ込んだガスは、図4(c)に示すようにガス吐出口42の並ぶ方向に沿ってヘッド部41の側壁の内側を旋回し、各ガス吐出口42から横方向へ向けて均一にガスが吐出される。なお、ガス分散器4に旋回流形成部40を設けることは必須ではなく、例えば図5に示すようにガス供給路312の下端の開口部から直接ヘッド部41内にガスを導入してもよい。
【0033】
上記構成を備えたガス分散器4は、図3図10に示すように、中央部に1個設けられた中央ガス吐出部4bと、この中央ガス吐出部4bを周方向に沿って囲むように互いに間隔をおいて円環状に配置された8個のガス分散部4aとを各々構成している。そして円環状に配置されたガス分散部4aは、共通の周囲ガス供給部5によって覆われている。本例では、8個のガス分散部4aが設けられているが、ガス分散部4aは、少なくとも3個設けられていればよい。
【0034】
周囲ガス供給部5は、当該周囲ガス供給部5の内周壁52及び外周壁53を備える扁平な二重円筒状の部材(環状部)であり、これら内周壁52と外周壁53とに挟まれた空間の下面は、底板54で塞がれている。一方、内周壁52と外周壁53とに挟まれた空間の上面は開口しており、内周壁52の上端及び外周壁53の上端部は、各々天板部材31の下面側に形成された溝部内に挿入されている。例えば内周壁52の上端部の内周面や外周壁53の上端部の外周面には雄ネジが切ってあり、これら内周壁52、外周壁53の上端部が挿入される溝部には雌ネジが切ってあって、これにより溝部内に挿入された内周壁52や外周壁53が天板部材31に支持、固定される。
【0035】
図3図10に示すように、内周壁52及び外周壁53は、これらの周壁52、53によって挟まれた空間の平面形状が、ガス分散部4aが円環状に配置された領域に対応した形状となるように形成されている。そして、周囲ガス供給部5を天板部材31の下面に取り付けることにより、中空状の周囲ガス供給部5の内側(内周壁52、外周壁53、底板54及び天板部材31で囲まれた空間内)に各ガス分散部4aが配置される(図2図4(b))。
【0036】
図3図4(b)、図10に示すように、内周壁52、外周壁53には、天板部材31に支持された基端部側(上部側)の位置に、横方向に伸びるスリット状のガス吐出口511、512が、各周壁52、53の周方向に沿って、互いに間隔をおいて複数形成されている。各ガス分散部4aから周囲ガス供給部5内に流入したガスは、この周囲ガス供給部5内を拡散し、各ガス吐出口511、512から横方向に吐出されて処理空間313に流れ込む。
【0037】
ここで図2に示すように、中央ガス吐出部4bの中心から、周囲ガス供給部5の内周壁52までの水平方向の距離をx、外周壁53までの水平方向の距離をx(x>x)、ウエハWの半径をrとしたとき、x/rの値が0.13〜0.6の範囲、x/rの値が0.26〜0.73の範囲となるように周囲ガス供給部5を構成することが好ましい。中央ガス吐出部4b、周囲ガス供給部5の内周壁52側、外周壁53側に各々設けられたガス吐出口42、511、512より、ウエハWの直径方向に離れた位置にガスが吐出されることにより、広い範囲に均一にガスを供給することができる。
【0038】
また、載置台2上のウエハWの上面から、中央ガス吐出部4bのガス吐出口42までの高さt、及び周囲ガス供給部5のガス吐出口511、512までの高さtは、10〜50mm程度であり、より好ましくは15〜20mm程度に設定される。この高さが50mmよりも大きくなると、ガスの置換効率が低下する一方、10mmよりも小さくなると、中央ガス吐出部4bや周囲ガス供給部5を設けるスペースがなくなったり、処理空間313内をガスが流れにくくなったりする。
【0039】
中央ガス吐出部4b、ガス分散部4aが設けられた天板部材31には、図2に示すように、各ガス分散器4(中央ガス吐出部4b、ガス分散部4a)へガスを供給するためのガス供給路312が形成されている。これらのガス供給路312は、天板部材31の上面と支持板32の下面との間に形成されたガスの拡散空間311に接続されている。
【0040】
図1に示すように支持板32には、前記拡散空間311にアンモニアガス及び置換用の窒素ガスを供給するためのアンモニア供給路321、及び同じく拡散空間311に塩化チタンガス及び置換用の窒素ガスを供給するための塩化チタン供給路322が形成されている。アンモニア供給路321及び塩化チタン供給路322は、配管を介してアンモニアガス供給部62、塩化チタンガス供給部64に接続されており、これらの配管は、各々途中で分岐して窒素ガス供給部61、63に接続されている。各配管には、ガスの給断を行う開閉バルブ602と、ガス供給量の調整を行う流量調整部601とが設けられている。なお図示の便宜上、図1においては窒素ガス供給部61、63を別々に示したが、これらは共通の窒素供給源を用いてもよい。
【0041】
以上に説明した構成を備えた成膜装置は、図1に示すように制御部7と接続されている。制御部7は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には成膜装置の作用、即ち載置台2上に載置されたウエハWを処理位置まで上昇させ、処理空間313内に予め決められた順番で反応ガス及び置換用のガスを供給してTiNの成膜を実行し、成膜が行われたウエハWを搬出するまでの制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0042】
続いて、本成膜装置の作用について図6図10を参照しながら説明する。はじめに、予め処理容器1内を真空雰囲気に減圧した後、載置台2を受け渡し位置まで降下させる。そして、ゲートバルブ12を開放し、ウエハ搬送機構の搬送アームを進入させ、支持ピン25との間でウエハWの受け渡しを行う。しかる後、支持ピン25を降下させ、ヒーター21によって既述の成膜温度に加熱された載置台2上にウエハWを載置する。
【0043】
次いで、ゲートバルブ12を閉じ、載置台2を処理位置まで上昇させると共に、処理容器1内の圧力調整を行った後、塩化チタンガス供給部64より塩化チタンガスを供給する(図6)。供給された塩化チタンガスは、塩化チタン供給路322→拡散空間311→ガス供給路312を介して、各ガス分散部4a、中央ガス吐出部4bへ流れ込む。
【0044】
中央ガス吐出部4b内に流れ込んだ塩化チタンガスは、ガス吐出口42を介して処理空間313に供給される。一方、各ガス分散部4a内に流れ込んだ塩化チタンガスは、ヘッド部41を介して周囲ガス供給部5内に流入し、さらに周囲ガス供給部5に形成されたガス吐出口511、512を介して処理空間313内に供給される。
【0045】
処理空間313に供給された塩化チタンガスは、天板部材31の中央部側から外周部側へ向け、処理空間313を径方向に放射状に広がっていく。また、処理空間313内を流れる塩化チタンガスは、下方側に向けても広がり、載置台2上のウエハWの表面に接触すると、塩化チタンガスはウエハWに吸着する。そして、処理空間313内を流れ、リム314とカバー部材22との間の隙間に到達した塩化チタンガスは、当該隙間から処理容器1内に流れ出た後、排気ダクト13を介して外部へ排出される。
【0046】
次に、塩化チタンガスの供給を停止すると共に、窒素ガス供給部63から置換用のガスである窒素ガスを供給する(図7)。窒素ガスは、塩化チタンガスと同様の経路を通って処理空間313内に供給され、当該経路及び処理空間313内の塩化チタンガスが窒素ガスと置換される。
【0047】
その後、窒素ガスの供給を停止し、アンモニアガス供給部62からアンモニアガスを供給する(図8)。供給されたアンモニアガスは、アンモニア供給路321→拡散空間311→ガス供給路312を介して、各ガス分散部4a、中央ガス吐出部4bへ流れ込む。そして、中央ガス吐出部4bからは直接、ガス分散部4aからは周囲ガス供給部5を介して処理空間313内にアンモニアガスが供給される点は、塩化チタンガスの場合と同様である。
【0048】
処理空間313内を流れるアンモニアガスがウエハWの表面に到達すると、先にウエハWに吸着している塩化チタンガスの成分を窒化して窒化チタンが形成される。しかる後、ガス供給路312に供給されるガスを窒素ガス供給部61からの置換用の窒素ガスに切り替えて、アンモニアガスの供給経路及び処理空間313内のアンモニアガスを窒素ガスと置換する(図9)。
【0049】
このようにして、塩化チタンガス→窒素ガス→アンモニアガス→窒素ガスの順番で反応ガス(塩化チタンガス、アンモニアガス)と置換用のガス(窒素ガス)とを繰り返し供給することにより、ウエハWの表面に窒化チタン(TiN)の分子層が積層され、窒化チタンの膜が成膜される。
【0050】
次に、図10を参照しながら、これら反応ガスや置換用のガスの供給時における中央ガス吐出部4b、ガス分散部4a及び周囲ガス供給部5の作用を説明する。まず、ガス供給路312から中央ガス吐出部4bに供給されたガスは、ヘッド部41の周方向に沿って間隔をおいて設けられた複数のガス吐出口42から、横方向外側へ向けて処理空間313内に均一に吐出される。
【0051】
一方、ガス供給路312から各ガス分散部4aに供給されたガスは、中央ガス吐出部4bの場合と同様にヘッド部41の周方向に沿って間隔をおいて設けられたガス吐出口42から、横方向外側へ向けて周囲ガス供給部5内に均一に流出する。
【0052】
周囲ガス供給部5内に流出したガスは、当該周囲ガス供給部5の空間内を広がり、内周壁52(内周面)の周方向に沿って間隔をおいて設けられたガス吐出口511からは、中央ガス吐出部4bが配置されている方向へ向けて横方向に均一にガスが吐出される。また外周壁53(外周面)の周方向に沿って間隔をおいて設けられたガス吐出口512からは、ウエハWの外周側へ向けて横方向に均一にガスが吐出される。
【0053】
図10には、天板部材31を下面側からみたとき、中央ガス吐出部4b、ガス分散部4a及び周囲ガス供給部5からガスが吐出される様子を破線で示し、またこの天板部材31の下方側に配置されるウエハWの外縁を一点鎖線で示してある。ウエハWとの位置関係に基づいて説明すると、中央ガス吐出部4bは、載置台2上のウエハWの中央部の上方に配置され、この位置から横方向外側へ向けてガスを吐出する。周囲ガス供給部5はウエハWの中央部よりも外周側の部位の上方であって、当該ウエハWの周縁上方よりも中央よりの位置にて、内周面(内周壁52)側のガス吐出口511はウエハWの中央部側に向けて横方向にガスを吐出し、外周面(外周壁53)側のガス吐出口512はウエハWの外周側に向けて横方向にガスを吐出する。
【0054】
このように処理空間313には、ウエハWの径方向に互いに離れた位置に設けられた中央ガス吐出部4bとこの中央ガス吐出部4bを囲む周囲ガス供給部5とから分散して均一にガスが供給される。そして、このように多数のガス吐出口42、511、512から分散して横方向にガスを供給することにより、反応ガス(塩化チタンガス、アンモニアガス)の場合には、各ガス吐出口42、511、512から吐出されるガスの流量が小さくなる。この結果、ウエハWの表面に到達する際の反応ガスの流速が低くなり、膜厚の面内均一性が向上する。
【0055】
一方、置換用のガス(窒素ガス)の場合には、処理空間313内の容量に対して十分な流量を供給することで、広い領域に予め分散させた状態でガスが供給されるので、処理空間313内の反応ガスを速やかに排除し、置換用のガスと置換することができる。
【0056】
こうして塩化チタンガスの供給とアンモニアガスの供給とを例えば数十回〜数百回繰り返し、所望の膜厚の窒化チタンの膜を成膜したら、置換用の窒素ガスを供給して最後のアンモニアガスを排出した後、載置台2を受け渡し位置まで降下させる。そしてゲートバルブ12を開いて搬送アームを進入させ、搬入時とは逆の手順で支持ピン25から搬送アームにウエハWを受け渡し、成膜後のウエハWを搬出させた後、次のウエハWの搬入を待つ。
【0057】
本実施の形態に係わる成膜装置によれば以下の効果がある。ウエハWの中央部上方に配置された中央ガス吐出部4bからは横方向外側へ向けてガスを吐出し、また前記中央部よりも外周側の上方であって、ウエハWの周縁上方よりも中央よりの位置にて、中央ガス吐出部4bを囲むように配置された周囲ガス供給部5からは、平面でみたときにウエハWの外周側及び中央部側に向けて各々横方向にガスを吐出する。この結果、天板部材31の下方側の処理空間313内に均一に低速の反応ガスが供給されるので、面内均一性の高い膜をウエハW上に成膜することができる。
【0058】
ここで図11に示した例のように、周囲ガス供給部5aは周方向に分割された平面形状が扇型の分割ユニット50を周方向に環状に並べた構成としてもよい。また、図10図11には、これら周囲ガス供給部5、5aを1つの仮想円の周上に設けた例を示したが、これら周囲ガス供給部5、5aを同心円状に複数個配置し、各周囲ガス供給部5、5a内に複数のガス分散部4aを円環状に配置してもよい。
【0059】
また周囲ガス供給部5、5aとして、扁平な二重円筒状の部材(環状部)を設けることは、必須の要件ではなく、図12の成膜装置に示すように、中央ガス吐出部4bを周方向に囲むように互いに間隔をおいて円環状に配置されたガス分散部4aを処理空間313内に剥き出しの状態で設けてもよい。この場合には、これらガス分散部4aが周囲ガス供給部5に相当する。また、これとは反対に、周囲ガス供給部5の内側にガス分散部4a設けずに、ガス供給路312の下端の開口部から直接、周囲ガス供給部5の内部の空間に向けてガスを供給してもよい(図13)。
【0060】
この他、ガス分散器4のヘッド部41に設けられた吐出口42の構成は、図4に例示したものに限られない。例えばヘッド部41の側面の周方向に伸びる1本のスリットを形成し、このヘッド部41の側面を網目状の部材で覆い、各網目をガス吐出口として構成してもよい。さらに、中央ガス吐出部4bを複数個のガス分散器4にて構成してもよく、ウエハWの中央部上方であって周囲ガス供給部5の内側の集中した領域に、複数個のガス分散器4を配置することにより中央ガス吐出部4bを構成してもよい。
【0061】
また、ガス分散器4にヘッド部41を設けることも必須の要件ではなく、図4(a)、(b)に示した旋回流形成部40だけを用いてガス分散器を構成してもよい。このように旋回流形成部40のみからなるガス分散器を中央ガス吐出部として用いる場合には、下部側導入路46の出口(ガス)から吐出されたガスは、旋回流を形成しながら横方向外側に向けて広がる。またこのガス分散器(旋回流形成部40)を、環状部の設けられていない周囲ガス供給部のガス分散部として用いる場合には、中央ガス吐出部を囲むように互いに間隔をおいて配置された複数のガス分散器の各々から旋回流を形成しながらガスが吐出される。そして、各旋回流のガスが横方向に広がって合流し、平面でみたときにウエハWの外周側および中央部側に向けてガスが広がることになる。これらの場合には、旋回流形成部40の下端の開口がガス吐出口となる。
【0062】
この他、天板部材31の形状についても図1図2等に示した例に限定されず、例えば凹部の中央に平坦な領域を設けず、凹部の中心から周縁へ向け広がる傾斜面に周囲ガス供給部5を設けてもよい。また、リム314が形成されていない天板部材31を用いてもよいことは勿論である。
【0063】
さらに本発明の成膜装置では、既述のTiN膜の成膜の他に、金属元素、例えば周期表の第3周期の元素であるAl、Si等、周期表の第4周期の元素であるTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge等、周期表の第5周期の元素であるZr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag等、周期表の第6周期の元素であるBa、Hf、Ta、W、Re、lr、Pt等の元素を含む膜を成膜してもよい。ウエハW表面に吸着させる金属原料としては、これらの金属元素の有機金属化合物や無機金属化合物などを反応ガス(原料ガス)として用いる場合が挙げられる。金属原料の具体例としては、上述のTiClの他に、BTBAS((ビスターシャルブチルアミノ)シラン)、DCS(ジクロロシラン)、HCD(ヘキサジクロロシラン)、TMA(トリメチルアルミニウム)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)などが挙げられる。
【0064】
また、ウエハWの表面に吸着した原料ガスを反応させて、所望の膜を得る反応には、例えばO、O、HO等を利用した酸化反応、H、HCOOH、CHCOOH等の有機酸、CHOH、COH等のアルコール類等を利用した還元反応、CH、C、C、C等を利用した炭化反応、NH、NHNH、N等を利用した窒化反応等の各種反応を利用してもよい。
【0065】
更に、反応ガスとして、3種類の反応ガスや4種類の反応ガスを用いてもよい。例えば3種類の反応ガスを用いる場合の例としては、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)を成膜する場合があり、例えばSr原料であるSr(THD)(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)と、Ti原料であるTi(OiPr)(THD)(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)と、これらの酸化ガスであるオゾンガスが用いられる。この場合には、Sr原料ガス→置換用のガス→酸化ガス→置換用のガス→Ti原料ガス→置換用のガス→酸化ガス→置換用のガスの順でガスが切り替えられる。また、成膜処理を行う基板として円形のウエハWについて説明したが、例えば矩形のガラス基板(LCD用基板)に対して本発明を適用してもよい。
【実施例】
【0066】
(実験)
異なるタイプの天板部材31を備えた成膜装置を用い、処理空間313内に塩化チタンガスとアンモニアガスを供給して窒化チタンの膜を成膜し、その面内均一性を測定した。
A.実験条件
(実施例1) 図2図10に示したように、中央ガス吐出部4b、ガス分散部4a、及び環状部からなる周囲ガス供給部5を備えた天板部材31を用いて窒化チタンの膜を成膜した。成膜された膜の膜厚を分光エリプソメトリー式の膜厚計により測定し、下記(1)式により面内均一性(M−m値)を計算した。
(M−m値)={(最大膜厚(M値)−最小膜厚(m値))
/(2×平均膜厚)}×100(%)…(1)
(実施例2) 図12に示すように、周囲ガス供給部5として環状部を設けずに、中央ガス吐出部4bと、ガス分散部4aからなる周囲ガス供給部5とが配置された天板部材31を用いて窒化チタンの膜を成膜し、実施例1と同様の手法により面内均一性を計算した。天板部材31を平面でみたときのガス分散部4aの配置は、図10に示したガス分散部4aと同様である。
(比較例1) 図14に示すように、下面側の中央部に向けて開口する1本のガス供給路312を備えた天板部材31を用いて成膜し、実施例1と同様の手法により面内均一性を計算した。
【0067】
B.実験結果
実施例1、2及び比較例1にて成膜された膜の膜厚の変位を図15(a)〜(c)に各々示す。各図の横軸は、ウエハWの直径方向の位置であり、縦軸は、M−m値に対する膜厚の相対的な変化を示している。
【0068】
図15(a)、(b)に示した結果によれば、環状部からなる周囲ガス供給部5内にガス分散部4aを配置した実施例1ではM−m値が2.2%となる一方、ガス分散部4aを円環状に配置して周囲ガス供給部5を構成した実施例2ではM−m値が4.1%となり、いずれも5%以内の高い面内均一性が達成された。また、実施例1と実施例2とを比較すると、周囲ガス供給部5の内側にガス分散部4aを配置した実施例1の面内均一性が高くなっている。
【0069】
一方、天板部材31の中央部に設けられた開口からガスを供給した比較例1では、ガスが供給される開口部の下方位置の膜厚が最も厚く、ウエハWの外周側へ向かうに従って、膜厚が急激に薄くなる山状の膜厚分布が確認された。そして、比較例1のM−m値は、11%となり、要求値(5%)の2倍以上になった。これは、反応ガスが高速でウエハWに到達する領域と、その外側の領域との間で原料ガスの吸着量が変化してしまったためであると考えられる。
【符号の説明】
【0070】
W ウエハ
1 処理容器
31 天板部材
311 拡散空間
4 ガス分散器
4a 中央ガス吐出部
4b ガス分散部
40 旋回流形成部
41 ヘッド部
42 ガス吐出口
5、5a 周囲ガス供給部
511、512
ガス吐出口
52 内周壁
53 外周壁
65 排気部
7 制御部
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図11
図12
図13
図14
図15
図1
図10